JP3947678B2 - 接着性エチレン系樹脂組成物、その製造方法及びそれから得られる押出成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性エチレン系樹脂組成物、その製造方法及びそれから得られる押出成形品に関し、さらに詳しくは、優れた接着性と接着性の経時劣化が小さく、加工性、機械的特性等の良好な押出成形品を得ることのできる接着性エチレン系樹脂組成物、その製造方法、並びにそれから得られる押出成形品、電線・ケーブル及び海底光ファイバーケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン系樹脂は、電気絶縁性、高周波特性などの電気特性や、耐摩耗性、強度、低温脆性などの機械的特性、及び押出成形性などの加工性に優れており、例えば電線や通信ケーブルの絶縁被覆材として広く用いられている。
ところが、エチレン系樹脂は、接着性が充分ではなく、すなわち、金属導体や光ファイバーなどの芯線、また、ポリエステル、ポリアミドなどの極性基を持つ樹脂とは、充分接着せず問題があった。
【0003】
このため、特開昭61−153612号公報及び特開平4−13744号公報に記載されているように、エチレン系樹脂を不飽和カルボン酸、酸無水物、エポキシ化合物、ヒドロキシ化合物、有機酸金属塩、シラン化合物などでグラフト変性し、接着性を向上させた変性エチレン系樹脂が開発され、広く使用されている。
しかしながら、これらの技術は、グラフト変性のため加熱処理の工程が必要であり、温度の調整がうまく行かず温度が上がりすぎると、有機過酸化物が過度に反応し、例えば、分解臭が発生したり、部分的に架橋が発生し「ブツ」が生成して押出成形された外被に凹凸が認められたりし、接着性にも影響することがあった。
【0004】
そのため、本願出願人が出願した特願2001−234570号では、エチレン系樹脂に特定の有機過酸化物を配合することにより、エチレン系樹脂に接着性が付与されるという知見から、グラフト変性が必要なく、よって有機過酸化物による分解臭やエチレン系樹脂の架橋の懸念がない接着性エチレン系樹脂組成物を提案したが、例えば、海底光ファイバーケーブルの被覆層などの過酷な条件で使用すると、接着性が経時的に劣化することが認められ、接着性の経時劣化をさらに改善することが求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、エチレン系樹脂を用いて、その優れた電気特性、機械的特性、加工性を確保し、高い接着性を持ち、かつ過酷な条件下でも接着性の経時劣化が小さく改善された接着性エチレン系樹脂組成物、その製造方法、並びにそれから得られる押出成形品、電線・ケーブル及び海底光ファイバーケーブルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、シリコーンマクロマーに注目し、これを、特定の有機過酸化物を配合したエチレン系樹脂組成物に更に配合することにより、エチレン系樹脂組成物の過酷な環境条件下における接着性の経時劣化の問題点が大きく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によると、エチレン系樹脂(A)に、式(1)で示されるヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、及び式(2)で示されるシランカップリング剤(c−1)、式(3)で示されるアルキルアルコキシシラン(c−2)、及び式(4)で示されるポリアルキルシリケート(c−3)からなる部分縮重合物であるシリコーンマクロマー(C)を配合してなることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物が提供される。
R1−O−O−H (1)
(式中、R1は、アルキル基又はシクロアルキル基を表わし、それらのアルキル基は、フェニル基、アルキルフェニル基、シクロアルキル基、又はアルキルシクロアルキル基で置換されていてもよい。)
X−Si(R 2 ) a (OR 3 ) b (2)
(式中、Xは、エチレン性不飽和基、R 2 は、炭素数1〜3のアルキル基、R 3 は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、aは0又は1、bは3又は2、a+b=3である。)
R 4 −Si(R 5 ) c (OR 6 ) d (3)
(式中、R 4 は、炭素数4〜10のアルキル基、R 5 は、炭素数1〜3のアルキル基、R 6 は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、cは0又は1、dは3又は2、c+d=3である。)
Si n O n−1 (OR 7 ) 2n+2 (4)
(式中、R 7 は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、nは平均値で2〜10である。)
さらに、本発明の第2の発明によると、第1の発明において、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、及びシリコーンマクロマー(C)の配合量は、エチレン系樹脂(A)100重量部に対して、それぞれ0.005〜2重量部、及び0.005〜2重量部であることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によると、第1又は2の発明において、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)は、1分間半減期を得るための分解温度が170℃以上のものであることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によると、第1〜3のいずれかの発明において、シリコーンマクロマー(C)は、シランカップリング剤(c−1)1モル当たりに対して、アルキルアルコキシシラン(c−2)を0.01〜5モル、及びポリアルキルシリケート(c−3)を0.05〜25モル(ケイ素原子換算)との部分縮重合物であることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0009】
一方、本発明の第5の発明によると、エチレン系樹脂(A)、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)を密閉容器中で、室温以上且つエチレン系樹脂(A)の溶融温度以下の温度で混合し、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)をエチレン系樹脂(A)中に浸透・含浸させることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の接着性エチレン系樹脂組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によると、エチレン系樹脂(A)、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)を、エチレン系樹脂(A)の溶融温度以上且つヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)の1分間半減期を得るための分解温度よりも低い温度で溶融・混練することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の接着性エチレン系樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第7の発明によると、第1〜4のいずれかの発明の接着性エチレン系樹脂組成物を押出成形して得られることを特徴とする押出成形品が提供される。
また、本発明の第8の発明によると、第1〜4のいずれかの発明の接着性エチレン系樹脂組成物を押出成形して得られる被覆層をもつことを特徴とする電線・ケーブルが提供される。
さらに、本発明の第9の発明によると、第1〜4のいずれかの発明の接着性エチレン系樹脂組成物を押出成形して得られる絶縁層をもつことを特徴とする海底光ファイバーケーブルが提供される。
【0011】
本発明は、上記した如く、エチレン系樹脂(A)に、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、及びシリコーンマクロマー(C)を配合してなることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
【0012】
(1)第1の発明において、エチレン系樹脂(A)は、高圧法低密度ポリエチレンであることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物。
(2)第1の発明において、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)は、p−メンタンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−へキシルヒドロパーオキシド、又はt−ブチルヒドロパーオキシドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物。
(3)第1の発明において、シランカップリング剤(c−1)は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、又はγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランから選ばれるものであることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物。
(4)第1の発明において、アルキルアルコキシシラン(c−2)は、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、又はn−オクチルトリエトキシシランから選ばれるアルキルトリアルコキシシランであることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物、その製造方法、並びにそれから得られた押出成形品、それから得られた被覆層をもつ電線・ケーブル、及びそれから得られた絶縁層をもつ海底光ファイバーケーブルについて、各項目毎に詳細に説明する。
【0014】
1.エチレン系樹脂(A)
本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)は、特に限定されるものでなく、種類、分子量なども限定されない。エチレン系樹脂(A)としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜12)共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸(あるいはそのエステル誘導体)共重合体、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体等が挙げられる。
【0015】
具体的には、高圧ラジカル重合法で製造される高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を例示できる。
また、温度0〜250℃、圧力50MPa以上(高圧の場合)、10〜50MPa(中圧の場合)あるいは常圧〜10MPa(低圧の場合)のいずれかの条件で、溶液重合法、懸濁重合法、スラリー重合法、気相重合法などの方法で、チグラー触媒、フィリップス触媒、スタンダード触媒、又はシングルサイト触媒(メタロセン触媒)等を用いて製造される直鎖状低密度(あるいは超低密度)エチレン−α−オレフィン共重合体であるエチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等を例示できる。その他、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンも使用することができる。これらの中では、高圧法低密度ポリエチレンを好適に使用することができる。
さらに、エチレン系樹脂(A)は、1種あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
また、エチレン系樹脂(A)のメルトマスフローレートとしては、加工性や成形品の機械的強度から、0.05〜50g/10分程度、好ましくは0.1〜10g/10分、さらに好ましくは0.1〜1g/10分(190℃で測定)であり、これらのものを好適に使用できる。
【0016】
2.ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)
本発明で使用されるヒドロパーオキシ基(hydroperoxy ヒドロペルオキシ基とも呼ばれる。)を持つ有機過酸化物(B)とは、その化学構造中に次の式(1)で示されるヒドロパーオキシ基を持つ過酸化水素の誘導体類である。
R1−O−O−H (1)
(式中、R1は、アルキル基又はシクロアルキル基であり、それらのアルキル基は、フェニル基、アルキルフェニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基で置換されていてもよい。)
【0017】
具体的には、p−メンタンヒドロパーオキシド(199.5℃)、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド(232.5℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド(246.6℃)、クメンヒドロパーオキシド(254.0℃)、t−へキシルヒドロパーオキシド(250.9℃)、t−ブチルヒドロパーオキシド(260.7℃)や2,5−ジメチルへキサン2,5−ジヒドロパーオキシド等を挙げることができる。なお、括弧内の数値は、1分間半減期を得るための分解温度(℃)である。
ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)は、その1分間半減期を得るための分解温度が170℃以上のものを好適に使用することができる。
また、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
さらに、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)が、エチレン系樹脂に接着性を付与する詳細な機構については、明らかではないが、水素結合に起因するものと推察されている。
【0018】
本発明において、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)の配合量は、エチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.03〜0.25重量部である。
この配合量が、0.005重量部未満であると、接着性付与が不充分となり、一方、2重量部を超えると、接着性付与に対する効果が飽和するとともに、エチレン系樹脂(A)が多量の有機過酸化物と接触すると、有機過酸化物の分解温度に比べて比較的低温であっても、その接触部分で不均質に架橋反応が起こることも考えられ、成形時に「焼け」や「ブツ」を生じたり、樹脂組成物の可撓性等の機械的特性に影響がでることもあり得るので望ましくない。
【0019】
3.シリコーンマクロマー(C)
本発明で使用されるシリコーンマクロマー(C)は、シランカップリング剤(c−1)、アルキルアルコキシシラン(c−2)、およびポリアルキルシリケート(c−3)を加水分解反応及び脱水反応によって得られる部分重縮合物である。
【0020】
好適なシランカップリング剤(c−1)としては、次の式(2)で表わされる不飽和シラン化合物などが挙げられる。
X−Si(R2)a(OR3)b (2)
(式中、Xは、エチレン性不飽和基、R2は、炭素数1〜3のアルキル基、R3は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、aは0又は1、bは3又は2、a+b=3である。)
上記式(2)中のXの具体例としては、次の式(5)又は式(6)で表わされる基を挙げることができる。
CH2=CR8(CH2)g− (5)
(式中、R8は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、gは、0又は1〜6の整数である。)
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、R9は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、hは、0又は1〜6の整数である。)
好ましいXとしては、ビニル基、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロプロピル基等を例示できる。
なお、式(2)中のR2は、メチル基が好ましく、また、R3は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等を挙げることができ、中でもメチル基、エチル基、イソプロピル基又はプロピル基が好ましく、さらに、aとbは、aが0でbが3の場合が好ましい。
【0023】
上記式(2)で表わされるシランカップリング剤(c−1)を具体的に例示すると、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(n−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(n−ペントキシ)シラン、ビニルトリス(n−ヘキソキシ)シラン、ビニルビス(n−ブトキシ)メチルシラン、ビニルビス(n−ペントキシ)メチルシラン、ビニルビス(n−ヘキソキシ)メチルシラン、γ−アクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、又はγ−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シランが挙げられる。
これらの中では、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、又はγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを好ましく用いることができる。
また、シランカップリング剤(c−1)は、予め部分加水分解をして、脱水し、部分重縮合させて平均2〜10量体程度としてからシリコーンマクロマー(C)を調製しても良い。
【0024】
本発明で使用される好適なアルキルアルコキシシラン(c−2)としては、次の式(3)で表わされる化合物が挙げられる。
R4−Si(R5)c(OR6)d (3)
(式中、R4は、炭素数4〜10のアルキル基、R5は、炭素数1〜3のアルキル基、R6は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、cは0又は1、dは3又は2、c+d=3である。)
【0025】
式(3)中のR4としては、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基が挙げられ、炭素数5〜8のものが好ましく、特にn−ヘキシル基又はn−オクチル基が好ましい。
また、R5は、メチル基が好ましく、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はプロピル基が好ましく、さらに、cとdは、cが0でdが3の場合が好ましい。
【0026】
上記式(3)で表わされるアルキルアルコキシシラン(c−2)を具体的に例示すると、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0027】
シリコーンマクロマー(C)におけるアルキルアルコキシシラン(c−2)の使用量は、シランカップリング剤(c−1)1モル当たりに対して、0.01〜5モル、好ましくは0.1〜2モル、特に好ましくは0.2〜1モルであることが望ましい。アルキルアルコキシシラン(c−2)の使用量が、この下限値(0.01モル)より少ないと、エチレン系樹脂(A)との親和性が不十分となり、接着性の経時劣化への改善効果が悪くなる。一方、この上限値(5モル)より多いと、相対的に金属との親和性を付与するシランカップリング剤(c−1)の配合量が小さくなり、やはり接着性経時劣化への改善効果が悪くなる。
アルキルアルコキシシラン(c−2)は、予め部分加水分解をし、脱水し、部分重縮合させて、平均2〜10量体程度としてからシリコーンマクロマー(C)を調製しても良い。
【0028】
本発明で使用される好適なポリアルキルシリケート(c−3)としては、テトラアルコキシシランの部分加水分解物を脱水して得られる部分縮重合物であり、次の式(4)で表わされる化合物が挙げられる。
SinOn−1(OR7)2n+2 (4)
(式中、R7は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、nは平均値で2〜10である。)
なお、式(4)中のR7は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はプロピル基が好ましく、平均値のnは、4〜6が好ましい。
上記式(4)で表わされる化合物に該当するものとしては、コルコート株式会社より、シリケート40(商品名)として市販されているものなどを好適に使用することができる。
【0029】
シリコーンマクロマー(C)におけるポリアルキルシリケート(c−3)の使用量は、シランカップリング剤(c−1)1モル当たりに対して、ケイ素原子換算で0.05〜25モル、好ましくは0.5〜10モル、特に好ましくは1〜5モルであることが望ましい。ここでケイ素原子換算のモル数とは、実際のモル数に、上記式(4)におけるnの値を乗じた数値である。
ポリアルキルシリケート(c−3)の使用量が、この下限値(0.05モル)より少ないと、得られるシリコーンマクロマー(C)の分子量が大きくならず、その揮発性が高まるので正確な配合が困難となると共に、接着性の経時劣化への改善効果が悪くなる。一方、この上限値(25モル)より多いと、ゲルや「ブツ」を生じることがあり、望ましくない。
【0030】
上記のシランカップリング剤(c−1)、アルキルアルコキシシラン(c−2)、及びポリアルキルシリケート(c−3)を加水分解し、脱水して得られる部分重縮合物であるシリコーンマクロマー(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCともいう。)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300〜10,000、好ましくは500〜5,000、更に好ましくは600〜2,000の範囲であることが望ましい。数平均分子量(Mn)が、上記の下限値(300)未満であると、揮発性が高くなるために、エチレン系樹脂(A)に正確な配合をすることが困難となり、かつ接着性の経時劣化への改善効果が悪くなるので望ましくない。一方、これが上記の上限値(10,000)を超えると、ゲルや「ブツ」を組成物中に生じることがあり望ましくない。
【0031】
シリコーンマクロマー(C)の製造方法は、公知の加水分解反応、脱水縮重合反応を行えば良く、特に制限はないが、例えば、上記所定量のシランカップリング剤(c−1)、アルキルアルコキシシラン(c−2)、及びポリアルキルシリケート(c−3)を混合し、アルカリ触媒を使用して水と混合することにより加水分解反応及び縮合反応を行い、中和後、水及び生じたアルコールを除去し、濾過をして調製することができる。
この際のアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
また、中和に使用する酸としては、酢酸、塩酸、硫酸等が挙げられる。水及び生成したアルコールの除去は、減圧及び加熱して留去することができる。濾過は、ケイソウ土や活性炭等の濾過助剤を用いたり、各種フィルターを用いて行うことができる。なお、水及び生成したアルコールの除去と濾過の工程の順番は、どちらを先に行ってもよい。
シリコーンマクロマー(C)の重合度は、水の配合量を多くすれば、大きくなり、これによって制御できると共に、反応の進行状況をGPCにより確認して、適度なところで反応を終了させることによっても制御できる。
シリコーンマクロマー(C)は、ネット状あるいは分岐状の構造を持つポリマーの前駆体であり、本発明においては、常温で液体のものを好適に使用できる。
【0032】
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物において、シリコーンマクロマー(C)の配合量は、エチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.03〜0.25重量部である。
この配合量が、0.005重量部未満であると、接着性の経時劣化に対する改善が不充分となり、一方、2重量部を超えると、接着性の経時劣化に対する効果が飽和し、エチレン系樹脂(A)が本来有する優れた加工性、機械的特性に影響が出ることがあり得るので、望ましくない。
【0033】
4.その他の配合物(D)
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物には、使用目的に応じて、各種添加剤や補助資材などを配合することができる。この各種添加剤や補助資材などとしては、安定剤、相溶剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、核剤、滑剤、加工性改良剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤、カーボンブラック、ワックス、殺菌剤、防カビ剤、酸変性オレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0034】
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物には、酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等を挙げることができ、単独でも2種以上を混合して使用してもよく、その配合量は、エチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部程度である。
【0035】
また、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物には、その使用目的に応じてエチレン系樹脂(A)に加えて、本発明の特性を損なわない範囲で、他のオレフィン系樹脂を少量配合することもできる。
例えば、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物には、酸変性オレフィン系樹脂、好ましくは酸変性エチレン系樹脂を配合することができる。
その酸変性エチレン系樹脂を製造するための官能基含有化合物としては、フマル酸、アクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸、ソルビン酸、クロトン酸またはシトラコン酸等の不飽和カルボン酸や、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物または4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等の酸無水物が挙げられる。酸変性エチレン系樹脂として、特に好ましいものは、無水マレイン酸変性エチレン系樹脂である。
【0036】
また、変性されるエチレン系樹脂は、特に限定されることはなく、上記エチレン系樹脂(A)の項で挙げた、あらゆるエチレン系樹脂を使用することができる。
さらに、変性処理に使用する官能基含有化合物の量は、変性されるエチレン系樹脂に対して、通常約0.001〜5重量%である。
また、変性処理は、公知の方法であればよく、溶液法、懸濁法、溶融法等が好適に使用される。
【0037】
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物に、その他の配合物(D)として用いることができる酸変性オレフィン系樹脂の酸変性エチレン系樹脂(D)としては、メルトマスフローレートが0.05〜50g/10分、密度が0.86〜0.95g/cm3のものが好ましい。
本発明においては、酸変性エチレン系樹脂(D)は、接着性を付与するが、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)と併用することにより、初期の接着性をさらに増加することができる。
酸変性エチレン系樹脂(D)は、1種あるいは2種以上を使用してもよく、その配合量は、エチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは4〜12重量部である。
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物において、酸変性エチレン系樹脂(D)の配合量の下限が0重量部であるのは、酸変性エチレン系樹脂(D)による接着性の付与が不要である場合があるからであり、一方、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)との接着性に相乗効果が必要とされる場合には、酸変性エチレン系樹脂(D)は、2重量部以上を配合することが好ましい。配合が20重量部を超えると、得られる接着性エチレン系樹脂組成物の可撓性等の機械的特性や、芯線腐食などの電気特性が低下し、さらに、接着性そのものも低下することがあるので望ましくない。
【0038】
5.接着性エチレン系樹脂組成物の調製
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物の調製は、各種の公知の調製方法であればよく、特に限定されないが、代表的な調製方法を以下に示す。
【0039】
5.1 調製方法(1)−浸透・含浸法
浸透・含浸法の好ましい態様としては、第一工程として、それぞれ所定量のエチレン系樹脂(A)及びその他の配合物(D)を、一般的な方法、例えばニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサーあるいは一軸または二軸押出機を使用して、樹脂成分の溶融温度以上で、例えば、110〜170℃で溶融・混練し、これを造粒する。その後、第二工程として、この造粒したものを、それぞれ所定量のヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)と共に、密閉容器に入れ、密閉後、室温以上で、且つエチレン系樹脂(A)の溶融温度以下、例えば、15〜90℃、好ましくは25〜80℃、さらに好ましくは50〜70℃で混合し、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)を樹脂中に均一に浸透・含浸させた後、取り出して調製する方法を挙げることができる。
この方法では。ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)の分解による損失が実質的になく、且つその添加量を正確にコントロールできる利点がある。
【0040】
5.2 調製方法(2)−溶融・混練法
溶融・混練法の好ましい態様としては、第一工程としてそれぞれ所定量のエチレン系樹脂(A)、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、シリコーンマクロマー(C)、及びその他の配合物(D)を、一般的な方法、例えばニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサーあるいは一軸または二軸押出機を使用して、樹脂成分の溶融温度以上で、且つヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)の1分間半減期を得るための分解温度(℃)よりも低い温度、好ましくは実質的に分解しない温度として1分間半減期を得るための分解温度(℃)よりも50℃以上低い温度、具体的には110〜170℃程度で、溶融・混練し調製する方法を挙げることができる。
この調製方法においては、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、シリコーンマクロマー(C)及びその他の配合物(D)は、予めエチレン系樹脂(A)を用いて、高濃度含有するいわゆるマスターバッチを調製して、配合しても勿論良い。
【0041】
本発明では、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)は、これよるラジカルを発生させてエチレン系樹脂の変性(グラフト反応や架橋反応)を起こさせるために配合するものではなく、接着性を付与させるために配合するものであるから、上記分解温度より充分低い温度で溶融・混練できるので、均質で品質の高い接着性エチレン系樹脂組成物を調製することができる。
また、調製された接着性エチレン系樹脂組成物は、粒径2〜7mm程度のペレットに造粒して、好ましく押出成形等の加工を行うことができる。
【0042】
6.本発明の接着性エチレン系樹脂組成物の用途
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、各種押出成形品に成形して、利用することができる。
本発明に係る押出成形品は、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物を、押出成形機を用いて溶融押出成形することにより製造することができる。
押出成形品としては、接着性を持つ電線・ケーブルの被覆層や、絶縁保護カバー、パイプ、樹脂被覆金属管、フィルム、シート等が例示される。
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、電線・ケーブルの芯線(銅線、アルミニウム線など)、金属性外部管状導体などとの接着性が優れているために、これを被覆層(絶縁層)としてもつ電線・ケーブルは、周囲の環境変化、ねじれによる破損等に対しても優れた機械的特性を持ち、高温での加工も不要であり、且つ過酷な条件下で使用しても、接着性の劣化が著しく改善されている高品質のものである。
また、電線・ケーブルの用途としては、配電線、通信線が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、特に過酷な条件で使用される海底光ファイバーケーブルの絶縁層を構成する被覆層としても、優れた性能を有する。
一般に、海底光ファイバーケーブルは、光ファイバーケーブルが石英系ガラスからなり、本質的に脆く断線し易く、側圧などの外圧の作用で伝送特性も変化するために、その構造は、特開昭54−130038号公報、特開昭58−48003号公報に記載されているように、基本的には、芯から外側へ(1)光ファイバーユニット、(2)内部管状導体、(3)鋼線、(4)外部管状導体、(5)絶縁層および(6)外皮から構成されている。その(5)絶縁層には、主に高圧法低密度ポリエチレンが使用され、保護のための(6)外皮は、高密度ポリエチレンが使用されている。
海底光ファイバーケーブルにおいては、(4)外部管状導体を海水から絶縁するため(5)絶縁層との接着性、密着性が特に要求され、この性能が不充分であると、海底光ファイバーケーブル布設時等で張力、曲げ力が付加された場合、(4)外部管状導体と(5)絶縁層が分離し、別々に動き、絶縁層がケーブルの中途あるいはケーブル末端において破壊し、ひいてはケーブル自体への破壊へとつながっていく。
本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、この海底光ファイバーケーブルの絶縁層として、十分満足する接着性・密着性をもち、さらに優れた機械的特性、均質な押出加工性を具備していると共に、その接着性の経時劣化が顕著に改善されて、長期の使用に耐え得る性能を持つ。
【0044】
【実施例】
次に実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中で用いられた物性及び評価は、それぞれ以下の方法によるものである。
【0045】
[物性及び評価]
1.メルトマスフローレート
JIS K7210に準拠して行い、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
【0046】
2.接着性評価試験
接着性エチレン系樹脂組成物を用いて、芯線の直径2.4mmの銅導線上に押出成形して、外径7mmの被覆ケーブルを調製した。この被覆ケーブルを15cmの長さに切断し、片辺部に長さ5cmの被覆層を残して芯線を露出させた。この芯線を掴み器具で固定し、引張試験機(島津製作所製 AG5−5KNG)を用いて被覆層部分を、引抜き速度100mm/分で引きぬいた。その際、引きぬくのに必要な強度(ニュートン:N)を測定し、接着性の評価試験とした。なお、接着力が強すぎて芯線破断が見られた時は、それを明記し、破断の際の強度を測定した。
【0047】
3.接着性劣化評価試験
接着性劣化評価試験の最適評価条件を決定するために、先ず、以下に示す比較例1で得られた被覆電線を、▲1▼23℃、50%相対湿度、▲2▼60℃、▲3▼屋外、▲4▼60℃精製水中、▲5▼4℃精製水中の5条件下で4週間それぞれ暴露・保存し、接着性劣化評価試験の試料とした。その5条件下での該被覆電線の端部を約15cm捨て、中央部15cmを用いて上記2に記載した接着性の評価試験を行った。結果を、次の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、比較例1の試料は、良好な初期接着性を持ち、通常の使用条件では、その接着性の劣化も著しいものではなかったが、海底光ファイバーケーブル等の用途を考えて、一番経時劣化の大きかった▲4▼60℃水中の暴露・保存条件を選択した。
したがって、接着性劣化評価試験では、60℃水中で、4週間保存後の接着力が200N以上のものを合格とした。
【0050】
4.シリコーンマクロマー(C)の調製
[シリコーンマクロマー1]
温度計、機械的攪拌機、凝縮器及び窒素ガス流入管を備えた四つ口フラスコ中に、ビニルトリメトキシシラン(c−1)1モル、n−へキシルトリエトキシシラン(c−2)1モル、前記式(4)におけるR7がエチル基で、nが5であるポリエチルシリケート(c−3)1モル(ケイ素原子換算で5モル)と、予め全体量が400ppm(重量単位)となるように水酸化カリウムを溶解させた水2モルを投入し、25℃で24時間攪拌した。次いで、酢酸を用いて中和し、加熱減圧下で水及びアルコールを除去し、その後濾過してシリコーンマクロマー1を調製した。
得られたシリコーンマクロマー1につき、GPC測定システムTRI ROTER−V(日本分光製)、カラムShodex−805L(昭和電工製)、屈折率(RI)検出器RL540R(GLサイエンス製)を用いて、40℃でクロロホルムを流速1.0ml/分で流して、平均分子量を測定した。その際、標準試料として、標準ポリスチレン(昭和電工製)を用いた。
得られたシリコーンマクロマー1は、数平均分子量(Mn)が657、重量平均分子量(Mw)が1485、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.26であった。
【0051】
[シリコーンマクロマー2]
ビニルトリメトキシシラン(c−1)の配合量を3モルとし、予め全体量が400ppm(重量単位)となるように水酸化カリウムを溶解させた水4モルを投入した以外は、シリコーンマクロマー1と同様にして、シリコーンマクロマー2を調製した。
得られたシリコーンマクロマー2は、数平均分子量(Mn)が761、重量平均分子量(Mw)が1604、その比(Mw/Mn)が2.11であった。
【0052】
[比較例1及び実施例1〜5]
比較例1及び実施例1〜5として、先ず、高圧法低密度ポリエチレン(メルトマスフローレート0.2g/10分、密度0.919g/cm3)100重量部に対して、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1重量部をバンバリーミキサーに投入し、145℃で5分間溶融・混練し、粒径約4mmに造粒した。
次いで、次の表2に示される比較例1及び実施例1〜5の組成の配合割合で、これに有機過酸化物としてジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドと、シリコーンマクロマーとしてシリコーンマクロマー1とを密閉容器に入れ、密閉後60℃で15分間攪拌し、造粒されたエチレン系樹脂組成物中に、有機過酸化物及びシリコーンマクロマーを均一に浸透・含浸させた。
得られた接着性エチレン系樹脂組成物をスクリュウ直径50mmでスクリュウ長(L)とスクリュウ直径(D)の比(L/D)がL/D=24の一軸押出機を用いて、直径2.4mmの銅芯線上に、押出温度210℃、引取速度15m/分で引取り、外径7mmの被覆電線を作製した。いずれの被覆電線も、好適に作製できた。
比較例1及び実施例1〜5の接着性エチレン系樹脂組成物を用いた被覆電線につき、接着性を評価すると、全て1000N以上の良好な初期接着力を有していた。
【0053】
得られた被覆電線を、60℃水中に暴露保存し、1週間毎に4週間まで取り出し、接着性の劣化特性を評価した。
評価結果を表2に示したが、シリコーンマクロマーを配合しない比較例1の試料は、1週間後に200Nに接着力が落ち、その後の接着力の低下は、緩やかにはなったが、4週間後では90Nと接着性経時劣化が顕著に認められた。
一方、実施例1〜5から得た被覆電線は、比較例1と同様に、最初の1週間での接着力の低下は、その後の低下よりは大きかったものの、シリコーンマクロマー1を0.01重量部配合した実施例1では、4週間後の接着力が230Nで合格し、また、シリコーンマクロマー1を0.2重量部配合した実施例5では、最初の1週間での接着力は640Nと落ちたが、その後は、接着力の経時劣化の度合が顕著に減り、良好な接着性を4週間後も保持していることが確認された。
【0054】
【表2】
【0055】
[実施例6、7]
実施例3、4と同様の配合割合で、但しシリコーンマクロマー1をシリコーンマクロマー2に替えて同様に接着性エチレン系樹脂組成物、及び被覆電線を作製し、評価した。いずれの被覆電線も好適に作製できた。
評価結果を表3に示すが、これらの本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、接着性の経時劣化が上記の実施例1〜5よリ更に小さく、優れた接着性を持つものであった。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、エチレン系樹脂(A)に、特定量のヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、及び特定量のシリコーンマクロマー(C)を配合した構成であり、この構成により、優れた初期の接着性と、過酷な条件に暴露しても接着性の経時劣化が顕著に改善されている。それと共に、エチレン系樹脂を変性するための有機過酸化物の分解温度以上での処理が必要でなくなる。
従って、有機過酸化物による分解臭やエチレン系樹脂の架橋の恐れ、懸念が実質的になく、エチレン系樹脂の優れた電気特性、機械的特性、加工性を確保したまま、均質で品質の高く、経時劣化の改善された接着性エチレン系樹脂組成物が提供される。
また、これから得られる押出成形品は、接着性を必要とする電線・ケーブルの被覆層や絶縁保護カバー、パイプ、フィルム、シートなどに好適に使用することができる。
さらに、本発明の接着性エチレン系樹脂組成物は、電線・ケーブルの被覆層、特に、過酷な加工、使用条件の海底光ファイバーケーブルの絶縁層に要求される加工性、接着性、機械的特性を満たし、均質な品質の高い被覆層を提供することができ、これからなる被覆層をもつ電線・ケーブル及び海底光ファイバーケーブルは、接着性の経時劣化が小さく長寿命という優れた性能を持つ。
Claims (9)
- エチレン系樹脂(A)に、式(1)で示されるヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、及び式(2)で示されるシランカップリング剤(c−1)、式(3)で示されるアルキルアルコキシシラン(c−2)、及び式(4)で示されるポリアルキルシリケート(c−3)からなる部分縮重合物であるシリコーンマクロマー(C)を配合してなることを特徴とする接着性エチレン系樹脂組成物。
R1−O−O−H (1)
(式中、R1は、アルキル基又はシクロアルキル基を表わし、それらのアルキル基は、フェニル基、アルキルフェニル基、シクロアルキル基、又はアルキルシクロアルキル基で置換されていてもよい。)
X−Si(R 2 ) a (OR 3 ) b (2)
(式中、Xは、エチレン性不飽和基、R 2 は、炭素数1〜3のアルキル基、R 3 は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、aは0又は1、bは3又は2、a+b=3である。)
R 4 −Si(R 5 ) c (OR 6 ) d (3)
(式中、R 4 は、炭素数4〜10のアルキル基、R 5 は、炭素数1〜3のアルキル基、R 6 は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、cは0又は1、dは3又は2、c+d=3である。)
Si n O n−1 (OR 7 ) 2n+2 (4)
(式中、R 7 は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜9のアルコキシアルキル基を表わし、nは平均値で2〜10である。) - ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)、及びシリコーンマクロマー(C)の配合量は、エチレン系樹脂(A)100重量部に対して、それぞれ0.005〜2重量部、及び0.005〜2重量部であることを特徴とする請求項1に記載の接着性エチレン系樹脂組成物。
- ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)は、1分間半減期を得るための分解温度が170℃以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着性エチレン系樹脂組成物。
- シリコーンマクロマー(C)は、シランカップリング剤(c−1)1モル当たりに対して、アルキルアルコキシシラン(c−2)を0.01〜5モル、及びポリアルキルシリケート(c−3)を0.05〜25モル(ケイ素原子換算)との部分縮重合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着性エチレン系樹脂組成物。
- エチレン系樹脂(A)、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)を密閉容器中で、室温以上且つエチレン系樹脂(A)の溶融温度以下の温度で混合し、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)をエチレン系樹脂(A)中に浸透・含浸させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着性エチレン系樹脂組成物の製造方法。
- エチレン系樹脂(A)、ヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)及びシリコーンマクロマー(C)を、エチレン系樹脂(A)の溶融温度以上且つヒドロパーオキシ基を持つ有機過酸化物(B)の1分間半減期を得るための分解温度よりも低い温度で溶融・混練することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着性エチレン系樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の接着性エチレン系樹脂組成物を押出成形して得られることを特徴とする押出成形品。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の接着性エチレン系樹脂組成物を押出成形して得られる被覆層をもつことを特徴とする電線・ケーブル。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の接着性エチレン系樹脂組成物を押出成形して得られる絶縁層をもつことを特徴とする海底光ファイバーケーブル。
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