JP3947269B2 - 粒状dl−メチオニン結晶およびその製造方法 - Google Patents

粒状dl−メチオニン結晶およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒状DL−メチオニン結晶およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、粒状DL−メチオニン結晶の晶出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
L−メチオニンは、哺乳類や家禽類など脊椎動物の必須アミノ酸の1種であるが、医薬用途や飼料添加剤として使用する場合にはD−体も有効であることから、工業的にはDL−メチオニンとして製造されている。メチオニン結晶はうろこ状結晶(化学大辞典、共立出版)であり、極めて壊れやすいために工業的に製造されるDL−メチオニンは粉末状で市販されている。
【0003】
このうろこ状のDL−メチオニン結晶は、固液分離が極めて困難であることから、固液分離が容易な結晶形に晶癖を変える提案が種々なされている。たとえば、メチオニンを可溶性繊維素誘導体の共存下に晶出させる方法(特公昭43−22285号公報)、メチオニンをアルコール類、フェノール類およびケトン類の共存下に晶出させる方法(特公昭43−24890号公報)、アニオン性またはノニオン性界面活性剤を添加した溶液からメチオニンを晶出させる結晶化方法(特公昭46−19610号公報)、メチオニンのカリウム塩水溶液を炭酸ガスを吸収させて中和する時点に、ポリビニルアルコールを共存させてメチオニンを晶出させる方法(特開平4−169570号公報)、メチオニンのカリウム塩水溶液を炭酸ガスを吸収させて中和する時点に、カゼインまたは半合成セルロース系水溶性高分子を共存させてメチオニンを晶出させる方法(特開平4−244056号公報)などが提案されている。
【0004】
また、メチオニン以外のアミノ酸の晶癖を変える方法として、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンなどのα−アミノ酸結晶を、それらを含有する溶液に水溶性セルロース誘導体、ポリビニル化合物、水溶性澱粉誘導体、アルギン酸またはポリアクリル酸を共存させて晶出させる方法(特開昭60−237054号公報)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、反応晶析あるいは濃縮晶析により得られるメチオニン結晶の晶癖は、比較的に比容積の大きな鱗片状、薄板状、あるいは板状結晶である。これらの晶癖を有する結晶は、晶析操作中の撹拌、輸送などにより破壊されて微結晶が発生するため、得られる結晶の粒度分布が極めてブロードとなる。また、これらの結晶は固液分離が困難であり、固液分離操作、その後の乾燥、輸送、包装工程においてさらに破壊され、使用時点においては極めて粉立ちし易い微粉末になる。
【0006】
本発明は、実質的に粒状のDL−メチオニン結晶、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、グルテン共存下のDL−メチオニン含有溶液から析出させたDL−メチオニン結晶が、緻密な実質的に粒状の晶癖を有すること、およびそれを利用してシャープな粒度分布の粒状DL−メチオニン結晶を製造可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、グルテンの共存下にDL−メチオニン含有溶液から析出させた実質的に粒状のDL−メチオニン結晶である。
【0009】
別の発明は、DL−メチオニン含有溶液から、グルテンの共存下にDL−メチオニン結晶を析出させることを特徴とする、前記粒状DL−メチオニン結晶の製造方法である。
【0010】
さらに別の発明は、DL−メチオニン含有溶液に、前記粒状DL−メチオニン結晶を種晶として共存させDL−メチオニン結晶を成長させることを特徴とする、粒状DL−メチオニン結晶の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、粒状DL−メチオニン結晶は、図1の走査型電子顕微鏡写真に示すように、渦巻状に成長して厚密化した結晶である。
【0012】
上記粒状DL−メチオニン結晶は、DL−メチオニン含有溶液から、グルテンの共存下にDL−メチオニン結晶を析出させることにより製造することができる。
DL−メチオニン結晶を析出させるためのDL−メチオニン含有溶液は、DL−メチオニンを含有する水溶液または水性溶媒溶液であればよく、通常、ヒダントインをアルカリで加水分解して得られるDL−メチオニン・アルカリ塩水溶液または水性溶媒溶媒、もしくはこのDL−メチオニン・アルカリ塩を酸で中和したDL−メチオニンと無機塩とを含有する水溶液または水性溶媒溶液が、工業的に好適に使用される。
【0013】
グルテンは、DL−メチオニン・アルカリ塩溶液に予め共存させていてもよく、DL−メチオニン・アルカリ塩溶液に中和用の酸と同時に添加して共存させてもよく、またDL−メチオニン・アルカリ塩溶液を酸で中和した溶液に、濃縮および/または冷却してDL−メチオニン結晶を析出させる前または同時に添加してもよい。
使用するグルテンは、市販のグルテンでよく、そのDL−メチオニン含有溶液中に共存させる量は、溶液中のDL−メチオニンの重量を基準に0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。グルテンの共存量が過剰になるとグルテンが塩析し、一方、過小な場合には析出するメチオニン結晶の晶癖を変える効果が不十分となり板状またはうろこ状の結晶となる。
【0014】
DL−メチオニン結晶は、DL−メチオニンと無機塩とを含有する溶液を冷却、濃縮またはそれらを組み合わせた方法、およびDL−メチオニン・アルカリ塩溶液を酸で中和しながら析出させる反応晶析方法のいずれかで得ることができ、またこれらの操作は、連続、半連続および回分のいずれをも採用することができる。
【0015】
本発明の別の態様においては、上記DL−メチオニン含有溶液に上記方法で得られる粒状DL−メチオニン結晶を種晶として共存させて晶析操作を行い、さらに成長させることができる。
【0016】
本発明の粒状DL−メチオニン結晶は、本質的に粒状の結晶からなることから、比容積が小さく、上記の製造方法において固液分離性に優れ、低含水率の結晶として母液から容易に回収でき、かつシャープな粒度分布を有する。さらに回収後の乾燥、輸送操作においても結晶はほとんど破壊されず、粉立ちのない製品が得られる。
【0017】
【実施例】
本発明を、実施例および比較例により、さらに詳細に説明する。
実施例 1
1リットルのガラス製オートクレーブに20℃の精製DL−メチオニン10重量%および炭酸カリウム14重量%を含有する水溶液、ならびにDL−メチオニンの重量基準で0.26重量%に相当するグルテン含有水溶液を同時に供給しながら、CO2で3kg/cm2に加圧し、撹拌下に10℃に冷却保持し、2時間かけて中和した。得られたDL−メチオニン結晶を含むスラリーをヌッチェを用いて濾過回収し、洗浄、乾燥してDL−メチオニン結晶を得た。
濾過回収したDL−メチオニン結晶の含水率は、ドライ基準で14重量%であり、乾燥後のDL−メチオニン結晶の比容積は1.6ml/gであった。また顕微鏡観察の結果、粒状の結晶であることを確認した。
【0018】
比較例 1
実施例1において、グルテン含有水溶液を供給しなかったことを除いて、実施例1を繰り返した。
濾過回収したDL−メチオニン結晶の含水率は、ドライ基準で37重量%であり、乾燥後のDL−メチオニン結晶の比容積は3.8ml/gであった。また顕微鏡観察の結果は、うろこ状結晶の凝集晶であった。
【0019】
実施例 2
1リットルのガラス製オートクレーブに20℃の精製DL−メチオニン10重量%および炭酸カリウム14重量%を含有する水溶液、ならびにDL−メチオニンの重量基準で0.26重量%に相当するグルテン含有水溶液を同時に供給しながら、CO2で3kg/cm2に加圧し、撹拌下に10℃に冷却保持して中和しDL−メチオニン結晶を析出させた。得られたDL−メチオニン結晶を含むスラリーを滞留させたまま、引き続き精製DL−メチオニン10重量%および炭酸カリウム14重量%を含有する水溶液、ならびにDL−メチオニンの重量基準で0.26重量%に相当するグルテン含有水溶液を連続供給して、半連続的に中和反応を行いDL−メチオニン結晶を析出させた。得られたDL−メチオニン結晶を含むスラリーをヌッチェを用いて濾過回収し、洗浄、乾燥してDL−メチオニン結晶を得た。
濾過回収したDL−メチオニン結晶の含水率は、ドライ基準で10重量%であり、乾燥後のDL−メチオニン結晶の比容積は1.5ml/gであった。また顕微鏡観察の結果、粒状結晶であることを確認した。
【0020】
得られた乾燥結晶を標準篩を用いて篩分し、質量積算分布から算出した個数基準の粒度分布曲線を図2中にaで示す。また質量基準の粒度分布曲線から質量基準の50%粒径および幾何標準偏差を求め、質量基準の50%粒径からハッチ(Hatch)の式により個数基準の50%粒径を算出した。
個数基準の50%積算粒径は235μm、その幾何標準偏差値は1.4であった。さらに乾燥後の結晶の粉立ちはほとんど認められなかった。
得られたDL−メチオニン結晶の走査型電子顕微鏡写真を図1に、粒度分布曲線を図2中にaで示す。
【0021】
比較例 2
実施例2において、グルテン含有水溶液を供給しなかったことを除いて、実施例2を繰り返した。
濾過回収したDL−メチオニン結晶の含水率は、ドライ基準で36重量%であり、乾燥後のDL−メチオニン結晶の比容積は3.0ml/gであった。また顕微鏡観察の結果は、うろこ状結晶であった。個数基準の50%積算粒径は36μm、その幾何標準偏差値は2.1であった。
得られたDL−メチオニン結晶の粒度分布曲線を図2中にbで示す。
【0022】
比較例 3
実施例2において、グルテン含有水溶液に代えてメチオニンに対して1000ppmのカゼインを供給したことを除いて、実施例2を繰り返した。
濾過回収したDL−メチオニン結晶の含水率は、ドライ基準で12重量%であり、乾燥後のDL−メチオニン結晶の比容積は1.8ml/gであった。また顕微鏡観察の結果は、凝集晶を含む顆粒状結晶であった。個数基準の50%積算粒径は100μm、その幾何標準偏差値は2.2であった。
得られたDL−メチオニン結晶の粒度分布曲線を図2中にcで示す。
【0023】
実施例 3
1リットルのガラス製オートクレーブに20℃のヒダントインを加水分解して得たDL−メチオニン13重量%および炭酸カリウム18重量%を含有する水溶液、ならびにDL−メチオニンの重量基準で0.26重量%に相当するグルテン含有水溶液を同時に供給しながら、CO2で3kg/cm2に加圧し、撹拌下に10℃に冷却保持して中和してDL−メチオニン結晶を析出させた。得られたDL−メチオニン結晶を含むスラリーを滞留させたまま、引き続き上記の各水溶液を連続供給して、半連続的に中和反応を行いDL−メチオニン結晶を析出させた。得られたDL−メチオニン結晶を含むスラリーをヌッチェを用いて濾過回収し、洗浄、乾燥してDL−メチオニン結晶を得た。
濾過回収したDL−メチオニン結晶の含水率は、ドライ基準で10重量%であり、乾燥後のDL−メチオニン結晶の比容積は1.3ml/gであった。また顕微鏡観察の結果、粒状結晶であることを確認した。個数基準の50%積算粒径は146μm、その幾何標準偏差値は1.4であった。さらに乾燥後の結晶の粉立ちはほとんど認められなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明の粒状DL−メチオニン結晶は、乾燥、輸送中などにほとんど破壊されことがなく、粉立ちがないのでその取り扱いが大幅に改善される。
また、本発明の製造方法においては上記したように粒状DL−メチオニン結晶が晶出するので、固液分離が極めて容易であり、その結果乾燥エネルギーも大幅に低下する。さらに乾燥後の充填作業においても粉立ちがないので、作業環境が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られたDL−メチオニン結晶の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2、比較例2および比較例3で得られたDL−メチオニン結晶の粒度分布曲線を示す。

Claims (2)

  1. オートクレーブ中でCO2加圧条件で、メチオニンのアルカリ塩を中和して得られるDL−メチオニン含有溶液から、グルテンの存在下にDL−メチオニンを晶出させることを特徴とする粒状DL−メチオニン結晶の製造方法。
  2. DL−メチオニン含有溶液中のグルテンの含有量が、DL−メチオニンの重量基準で0.05〜0.5重量%である請求項1記載の製造方法。
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