JP3946364B2 - 熱現像感光材料、熱現像画像形成方法、熱消色記録材料、熱消色画像記録方法およびシアニン染料の消色方法 - Google Patents
熱現像感光材料、熱現像画像形成方法、熱消色記録材料、熱消色画像記録方法およびシアニン染料の消色方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料、熱現像画像形成方法、熱消色記録材料、熱消色画像記録方法およびシアニン染料の消色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱現像感光材料は既に古くから提案されており、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1996年)に記載されている。
熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。
【0003】
熱現像処理は、湿式現像処理における処理液が不要であり、簡易かつ迅速に処理できるとの利点がある。しかし、写真技術の分野では依然として、湿式現像処理による画像形成方法が主流である。熱現像処理には、湿式現像処理にはない未解決の問題が残っている。
写真感光材料には、フィルター、ハレーション防止やイラジエーション防止の目的で、染料を添加することが普通である。染料は、非感光性層に添加され、画像露光において機能する。機能が終了した染料が写真感光材料中に残存すると、形成される画像が染料により着色されてしまう。従って、現像処理において写真感光材料から染料を除去する必要がある。湿式現像処理では、処理液により簡単に、写真感光材料から染料を除去することができる。これに対して、熱現像処理では、染料の除去が非常に困難(実質的に不可能)である。
【0004】
近年の写真技術、特に医療用写真や印刷用写真の技術分野では、簡易かつ迅速な現像処理が求められている。しかし、湿式現像処理の改良は、ほぼ限界に達している。そのため、医療用写真や印刷用写真の技術分野では、熱現像処理による画像形成方法が改めて注目されるようになっている。
熱現像処理では染料の除去が非常に困難であるとの問題に対しては、熱現像処理における加熱で染料を消色する方法が提案されている。例えば、米国特許5135842号明細書には、特定の構造を有するポリメチン染料を加熱により消色する方法が開示されている。米国特許5314795号、同5324627号、同5384237号の各明細書には、カルバニオン発生剤(求核剤)を用いて、ポリメチン染料を加熱により消色する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術において提案された加熱による染料の消色方法には、染料の消色が不充分であったり、逆に染料の安定性が不充分で熱現像感光材料の保存中に染料が消色してしまう問題があった。また、従来の技術に用いられているポリメチン染料は、消色後に残存する染料の分解物が若干の光吸収を有しており、画像(特にハイライト部)に着色が残るとの問題もあった。さらに、従来の技術の染料には、熱現像後に(特に酸との接触により)復色するとの問題もある。さらにまた、染料と求核剤のような他の化合物との反応により消色する方法には、消色反応が二種類の化合物(染料と求核剤)の関係(化学量論的および位置的な関係)に影響され、消色速度が遅いとの問題もある。
【0006】
本発明の目的は、上記のような問題がない優れた熱消色染料を非感光性層に含む熱現像感光材料およびそれを用いた熱現像画像形成方法を提供することである。
また、本発明の目的は、新規な熱消色記録材料およびそれを用いた熱消色画像記録方法を提供することでもある。
さらに、本発明の目的は、室温では安定なシアニン染料を、加熱により速やかに、かつ実質的に不可逆的に消色する方法を提供することでもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(9)の熱現像感光材料、下記(10)の熱現像画像形成方法、下記(11)〜(13)の熱消色記録材料、下記(14)の熱消色画像記録方法、および下記(15)〜(22)のシアニン染料の消色方法により達成された。
(1)支持体、ハロゲン化銀および還元剤を含む感光性層、および非感光性層を有する熱現像感光材料であって、非感光性層が下記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と塩基プレカーサーとを含み、該シアニン染料またはその塩が固体微粒子の状態で分散されていることを特徴とする熱現像感光材料。
【0008】
【化8】
【0009】
式中、R1 は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR21R24、−OR21または−SR21であり、R21およびR24は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR21とR24とが結合して含窒素複素環を形成する;R2 は、水素原子、脂肪族基または芳香族基であり;R3 は、脂肪族基であり;L1 は、奇数個のメチンからなるメチン鎖であり;そして、Z1 およびZ2 は、それぞれ独立に5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。
(2)シアニン染料が下記式(Ia)で表わされる(1)に記載の熱現像感光材料。
【0010】
【化9】
【0011】
式中、R11は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR31R34、−OR31または−SR31であり、R31およびR34は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR31とR34とが結合して含窒素複素環を形成する;R12は、水素原子、脂肪族基または芳香族基であり;R13は、脂肪族基であり;L11は、奇数個のメチンからなるメチン鎖であり;Y11およびY12は、それぞれ独立に、−CR14R15−、−NR14−、−O−、−S−または−Se−であり、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子または脂肪族基であるか、あるいはR14とR15とが結合して脂肪族環を形成する;そして、ベンゼン環Z11およびZ12には、他のベンゼン環が縮合していてもよく、ベンゼン環Z11、Z12およびそれらの縮合環は置換基を有していてもよい。
(3)式(I)において、R1 が、−NR21R24、−OR21または−SR21である(1)に記載の熱現像感光材料。
(4)式(I)において、R 1 が、−NR 21 R 24 、−OR 21 または−SR 21 であって、かつ−NR 21 R 24 に置換するR 21 およびR 24 が、いずれも水素原子であるか、いずれも脂肪族基および芳香族基から選択される基であるか、またはR 21 とR 24 とが結合して含窒素複素環を形成する基である(1)に記載の熱現像感光材料。
(5)塩基プレカーサーが、40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサーである(1)に記載の熱現像感光材料。
(6)塩基プレカーサーが、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーである(1)に記載の熱現像感光材料。
(7)塩基プレカーサーのカルボン酸成分が、スルホニル酢酸またはプロピオール酸である(6)に記載の熱現像感光材料。
(8)塩基プレカーサーの塩基成分が、有機塩基である(6)に記載の熱現像感光材料。
(9)塩基プレカーサーが、固体微粒子の状態で分散されている(1)に記載の熱現像感光材料。
(10)支持体、ハロゲン化銀および還元剤を含む感光性層、および前記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と塩基プレカーサーとを含み、該シアニン染料またはその塩が固体微粒子の状態で分散されている非感光性層を有する熱現像感光材料を画像露光する工程;および
熱現像感光材料を80乃至200℃に加熱して、ハロゲン化銀を現像し、塩基プレカーサーから塩基を発生させ、さらにシアニン染料を消色する工程からなる熱現像画像形成方法。
【0012】
(11)支持体上に記録層を有する記録材料であって、記録層が前記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサーとを含み、シアニン染料またはその塩が、固体微粒子の状態で記録層中に分散されていることを特徴とする熱消色記録材料。
(12)塩基プレカーサーが、固体微粒子の状態で記録層中に分散されている(11)に記載の熱消色記録材料。
(13)前記式(I)において、R1が、−NR21R24、−OR21または−SR21である(11)に記載の熱消色記録材料。
(14)支持体上に前記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と塩基プレカーサーとを含む記録層を有し、シアニン染料またはその塩が、分子あるいは固体微粒子の状態で記録層中に分散されている熱消色記録材料を、80乃至200℃に像様加熱し、加熱部分の塩基プレカーサーから塩基を発生させ、さらにシアニン染料を消色する工程からなる熱消色画像記録方法。
(15)下記式(II)で表わされるシアニン染料またはその塩を固体微粒子の状態で分散し、該シアニン染料またはその塩を、該シアニン染料またはその塩の活性メチレン(R22が置換した炭素原子)の水素原子を脱プロトン化するために使用する塩基の共存下で、加熱して消色するシアニン染料の消色方法。
【0013】
【化10】
【0014】
式中、X21は、−NR24−、−O−または−S−であり;R21およびR24は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR21とR24とが結合して含窒素複素環を形成する;R22は、水素原子、脂肪族基または芳香族基であり;R23は、脂肪族基であり;L21は、奇数個のメチンからなるメチン鎖であり;そして、Z21およびZ22は、それぞれ独立に5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。
(16)塩基が、40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサー、またはトリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、アミジンもしくはその誘導体および、グアニジンもしくはその誘導体から選択される塩基である(15)に記載のシアニン染料の消色方法。
(17)塩基が、40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサーである(15)に記載のシアニン染料の消色方法。
(18)塩基プレカーサーが、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーである(16)に記載のシアニン染料の消色方法。
(19)塩基プレカーサーのカルボン酸成分が、スルホニル酢酸またはプロピオール酸である(18)に記載のシアニン染料の消色方法。
(20)塩基プレカーサーの塩基成分が、有機塩基である(18)に記載のシアニン染料の消色方法。
(21)塩基プレカーサーが、固体微粒子の状態で分散されている(16)に記載のシアニン染料の消色方法。
(22)シアニン染料が下記式(IIa)で表わされる(15)に記載のシアニン染料の消色方法。
【0015】
【化11】
【0016】
式中、X31は、−NR34−、−O−または−S−であり;R31およびR34は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR31とR34とが結合して含窒素複素環を形成する;R32は、水素原子、脂肪族基または芳香族基であり;R33は、脂肪族基であり;L31は、奇数個のメチンからなるメチン鎖であり;Y31およびY32は、それぞれ独立に、−CR37R38−、−NR37−、−O−、−S−または−Se−であり、R37およびR38は、それぞれ独立に水素原子または脂肪族基であるか、あるいはR37とR38とが結合して脂肪族環を形成する;そして、ベンゼン環Z31およびZ32には、他のベンゼン環が縮合していてもよく、ベンゼン環Z31、Z32およびそれらの縮合環は置換基を有していてもよい。
【0017】
【発明の効果】
本発明者の研究により、上記式(I)で表わされるシアニン染料を熱現像感光材料の非感光性層に添加すると、熱現像画像形成方法の熱現像処理において、速やかに、かつ実質的に不可逆的にシアニン染料を消色できることが判明した。本発明者の研究によれば、上記式(I)で表わされるシアニン化合物を塩基の存在下(塩基性条件下)で加熱すると、分子内閉環反応が起き、実質的に無色の化合物が生じる。この消色反応は分子内反応であるため、他の化合物との関係に影響されることなく、迅速に反応が進行する。また、この消色反応は、閉環反応によりシアニン染料の塩基性核(オニウム体)に縮合する5員または7員環を形成する。形成される化合物は、実質的に無色で比較的安定である。従って、この消色反応は、実質的に不可逆的でもある。以上の理由により、本発明の熱現像感光材料は、残色が少ない優れた画像を形成することができる。
また、上記式(I)で表わされるシアニン染料を用いて、熱消色記録材料を作成することもできる。この熱消色記録材料を用いると、像様加熱するとの簡単な工程により熱消色画像を記録することができる。
さらに、上記式(II)で表わされるシアニン染料には、安定性が優れているとの特徴がある。シアニン染料の消色方法では、比較的安定な上記式(II)で表わされるシアニン染料を、加熱により速やかに、かつ実質的に消色することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、下記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩を使用する。
【0019】
【化12】
【0020】
式(I)において、R1 は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR21R24、−OR21または−SR21である。R21およびR24は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR21とR24とが結合して含窒素複素環を形成する。R1 は、後述する式(II)で定義するように、−NR21R24、−OR21または−SR21であることが好ましい。−NR21R24、−OR21および−SR21の詳細については、式(II)に関して後述する。
本明細書において、「脂肪族基」とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基または置換アラルキル基を意味する。アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基または置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基または置換アラルキル基がさらに好ましい。環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、アルキル基と同様である。
【0021】
アルケニル基およびアルキニル基の炭素原子数は、2乃至30であることが好ましく、2乃至20であることがより好ましく、2乃至15であることがさらに好ましく、2乃至12であることが最も好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分および置換アルキニル基のアルキニル部分は、それぞれアルケニル基およびアルキニル基と同様である。
アラルキル基の炭素原子数は、7乃至35であることが好ましく、7乃至25であることがより好ましく、7乃至20であることがさらに好ましく、7乃至15であることが最も好ましい。置換アラルキル基のアラルキル部分は、アラルキル基と同様である。
脂肪族基(置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基)の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホ、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルチオカルボニル基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基およびカルバモイル基が含まれる。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0022】
本明細書において、「芳香族基」とは、アリール基または置換アリール基を意味する。
アリール基の炭素原子数は、6乃至30であることが好ましく、6乃至20であることがより好ましく、6乃至15であることがさらに好ましく、6乃至12であることが最も好ましい。置換アリール基のアリール部分は、アリール基と同様である。
芳香族基(置換アリール基)の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホ、アルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルチオカルボニル基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基およびカルバモイル基が含まれる。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0023】
式(I)において、R2 は、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基と芳香族基の定義は、前述した通りである。R2 は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
式(I)において、R3 は、脂肪族基である。脂肪族基の定義は前述した通りである。R3 は、置換アルキル基であることが好ましい。合成が容易との観点では、R3 は、−CHR2 −CO−R1 と同じ定義を有する置換アルキル基であることが特に好ましい。
【0024】
式(I)において、L1 は、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。メチン鎖中のメチンの数は、3、5、7または9であることが好ましく、3、5または7であることがより好ましく、5または7であることがさらに好ましく、5であることが最も好ましい。
メチンは、置換基を有していてもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、−NR5 R6 、−OR5 および−SR5 が含まれる。R5 およびR6 は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環の方が好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロヘプテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチン鎖は、無置換であるか、あるいはメチンの置換基が結合してシクロヘプテン環またはシクロヘキセン環を形成することが特に好ましい。
式(I)において、Z1 およびZ2 は、それぞれ独立に5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団である。含窒素複素環の例には、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、ピロリン環、イミダゾール環およびピリジン環が含まれる。6員環よりも5員環の方が好ましい。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホおよびアルキル基が含まれる。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0025】
式(I)で表わされるシアニン染料は、アニオンと塩を形成して用いることが好ましい。式(I)で表わされるシアニン染料が置換基として、カルボキシルやスルホのようなアニオン性基を有する場合は、染料が分子内塩を形成することができる。それ以外の場合は、シアニン染料は、分子外のアニオンと塩を形成することが好ましい。アニオンは一価または二価であることが好ましく、一価であることがさらに好ましい。アニオンの例には、ハロゲンイオン(Cl、Br、I)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、1,5−ジスルホナフタレンジアニオン、PF6 、BF4 およびClO4 が含まれる。
好ましいシアニン染料は、下記式(Ia)で表わされる。
【0026】
【化13】
【0027】
式(Ia)において、R11は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR31R34、−OR31または−SR31である。R31およびR34は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR31とR34とが結合して含窒素複素環を形成する。R11は、後述する式(IIa)で定義するように、−NR31R34、−OR31または−SR31であることが好ましい。−NR31R34、−OR31および−SR31の詳細については、式(IIa)に関して後述する。
式(Ia)において、R12は、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。R12は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0028】
式(Ia)において、R13は、脂肪族基である。R13は、置換アルキル基であることが好ましい。合成が容易との観点では、R13は、−CHR12−CO−R11と同じ定義を有する置換アルキル基であることが特に好ましい。
式(Ia)において、L11は、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。メチン鎖中のメチンの数は、3、5、7または9であることが好ましく、3、5または7であることがより好ましく、5または7であることがさらに好ましく、5であることが最も好ましい。
メチンは、置換基を有していてもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、−NR15R16、−OR15および−SR15が含まれる。R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環の方が好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロヘプテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチン鎖は、無置換であるか、あるいはメチンの置換基が結合してシクロヘプテン環またはシクロヘキセン環を形成することが特に好ましい。
式(Ia)において、Y11およびY12は、それぞれ独立に、−CR14R15−、−NR14−、−O−、−S−または−Se−である。R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子または脂肪族基であるか、あるいはR14とR15とが結合して脂肪族環を形成する。脂肪族基は、アルキル基または置換アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族環は、飽和脂肪族環であることが好ましく、5員環(シクロペンタン環)、6員環(シクロヘキサン環)または7員環(シクロヘプタン環)であることがさらに好ましく、シクロヘキサン環であることが最も好ましい。
【0029】
式(Ia)において、ベンゼン環Z11およびZ12には、他のベンゼン環が縮合していてもよい。ベンゼン環Z11、Z12およびそれらの縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホおよびアルキル基が含まれる。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンが好ましい。
式(Ia)で表わされるシアニン染料は、アニオンと塩を形成して用いることが好ましい。塩の形成については、式(I)で説明した通りである。
特に好ましいシアニン染料を下記式(Ib)で表す。
【0030】
【化14】
【0031】
式(Ib)において、二つのR41は同一の基であって、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR51R52、−OR51または−SR51である。R51およびR52は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR51とR52とが結合して含窒素複素環を形成する。R41は、後述する式(IIb)で定義するように、−NR51R52、−OR51または−S51であることが好ましい。−NR51R52、−OR51および−SR51の詳細については、式(IIb)に関して後述する。
式(Ib)で表わされるシアニン染料は、アニオンと塩を形成して用いることが好ましい。塩の形成については、式(I)で説明した通りである。
【0032】
前述したように、式(I)におけるR1 は、−NR21R24、−OR21または−SR21であることが好ましい。式(I)におけるR1 が、水素原子、脂肪族基または芳香族基であると、加熱条件下の塩基の作用による消色反応は迅速に進行するのであるが、シアニン染料がやや不安定で、染料の保存中にも消色反応が若干進行するとの問題がある。式(I)におけるR1 を、−NR21R24、−OR24または−SR24とすると、シアニン染料の安定性が向上する。そのようなシアニン染料を、下記式(II)で表わす。
【0033】
【化15】
【0034】
式(II)において、X21は、−NR24−、−O−または−S−である。R21およびR24は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR21とR24とが結合して含窒素複素環を形成する。R21は、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基、アリール基または置換アリール基であることがさらに好ましい。R24は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、アルキル基または置換アルキル基であることがさらに好ましい。R21とR24とが結合して形成する含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。含窒素複素環は、窒素以外のヘテロ原子(例、酸素原子、硫黄原子)を有していてもよい。
式(II)において、R22は、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。R22は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0035】
式(II)において、R23は、脂肪族基である。R23は、置換アルキル基であることが好ましい。合成が容易との観点では、R23は、−CHR22−CO−X21−R21と同じ定義を有する置換アルキル基であることが特に好ましい。
式(II)において、L21は、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。メチン鎖中のメチンの数は、3、5、7または9であることが好ましく、3、5または7であることがより好ましく、5または7であることがさらに好ましく、5であることが最も好ましい。
メチンは、置換基を有していてもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、−NR25R26、−OR25および−SR25が含まれる。R25およびR26は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環の方が好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロヘプテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチン鎖は、無置換であるか、あるいはメチンの置換基が結合してシクロヘプテン環またはシクロヘキセン環を形成することが特に好ましい。
【0036】
式(II)において、Z21およびZ22は、それぞれ独立に5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団である。含窒素複素環の例には、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、ピロリン環、イミダゾール環およびピリジン環が含まれる。6員環よりも5員環の方が好ましい。含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホおよびアルキル基が含まれる。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンが好ましい。
式(II)で表わされるシアニン染料は、アニオンと塩を形成して用いることが好ましい。塩の形成については、式(I)で説明した通りである。
前述した式(Ia)におけるR11は、−NR31R34、−OR31または−SR31であることが好ましい。そのようなシアニン染料を、下記式(IIa)で表わす。
【0037】
【化16】
【0038】
式(IIa)において、X31は、−NR34−、−O−または−S−である。R31およびR34は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR31とR34とが結合して含窒素複素環を形成する。R31は、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基、アリール基または置換アリール基であることがさらに好ましい。R34は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、アルキル基または置換アルキル基であることがさらに好ましい。R31とR34とが結合して形成する含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。含窒素複素環は、窒素以外のヘテロ原子を有していてもよい。
式(IIa)において、R32は、水素原子、脂肪族基または芳香族基である。R32は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0039】
式(IIa)において、R33は、脂肪族基である。R33は、置換アルキル基であることが好ましい。合成が容易との観点では、R33は、−CHR32−CO−X31−R31と同じ定義を有する置換アルキル基であることが特に好ましい。
式(IIa)において、L31は、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。メチン鎖中のメチンの数は、3、5、7または9であることが好ましく、3、5または7であることがより好ましく、5または7であることがさらに好ましく、5であることが最も好ましい。
メチンは、置換基を有していてもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、−NR35R36、−OR35および−SR35が含まれる。R35およびR36は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環の方が好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロヘプテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチン鎖は、無置換であるか、あるいはメチンの置換基が結合してシクロヘプテン環またはシクロヘキセン環を形成することが特に好ましい。
【0040】
式(IIa)において、Y31およびY32は、それぞれ独立に、−CR37R38−、−NR37−、−O−、−S−または−Se−である。R37およびR38は、それぞれ独立に水素原子または脂肪族基であるか、あるいはR37とR38とが結合して含窒素複素環を形成する。脂肪族基は、アルキル基または置換アルキル基であることが特に好ましい。
式(IIa)において、ベンゼン環Z31およびZ32には、他のベンゼン環が縮合していてもよい。ベンゼン環Z31、Z32およびそれらの縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホおよびアルキル基が含まれる。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンが好ましい。
式(IIa)で表わされるシアニン染料は、アニオンと塩を形成して用いることが好ましい。塩の形成については、式(I)で説明した通りである。
前述した式(Ib)におけるR41は、−NR51R52、−OR52または−SR51であることが好ましい。そのようなシアニン染料を、下記式(IIb)で表わす。
【0041】
【化17】
【0042】
式(IIb)において、X51は、−NR52−、−O−または−S−である。R51およびR52は、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基であるか、あるいはR51とR52とが結合して含窒素複素環を形成する。R51は、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基、アリール基または置換アリール基であることがさらに好ましい。R52は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、アルキル基または置換アルキル基であることがさらに好ましい。R51とR52とが結合して形成する含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。含窒素複素環は、窒素以外のヘテロ原子を有していてもよい。
式(IIb)で表わされるシアニン染料は、アニオンと塩を形成して用いることが好ましい。塩の形成については、式(I)で説明した通りである。
以下に、式(Ib)で表されるシアニン染料の具体例を示す。以下の具体例では、アニオン(X)と式(Ib)のR41のみを示す。
【0043】
【化18】
【0044】
【化19】
【0045】
【化20】
【0046】
【化21】
【0047】
【化22】
【0048】
【化23】
【0049】
【化24】
【0050】
【化25】
【0051】
【化26】
【0052】
【化27】
【0053】
【化28】
【0054】
【化29】
【0055】
【化30】
【0056】
【化31】
【0057】
【化32】
【0058】
【化33】
【0059】
【化34】
【0060】
【化35】
【0061】
【化36】
【0062】
以下に、その他の式(I)で表されるシアニン染料の具体例を示す。
【0063】
【化37】
【0064】
【化38】
【0065】
【化39】
【0066】
【化40】
【0067】
【化41】
【0068】
【化42】
【0069】
【化43】
【0070】
【化44】
【0071】
【化45】
【0072】
【化46】
【0073】
【化47】
【0074】
【化48】
【0075】
【化49】
【0076】
【化50】
【0077】
【化51】
【0078】
【化52】
【0079】
【化53】
【0080】
【化54】
【0081】
[合成例1]
シアニン染料(1)の合成
ブロモ酢酸エチル33.4g、2,3,3−トリメチルインドレニン15.9gおよびエタノール30mlの混合液を5時間加熱還流した。反応終了後、アセトン50mlおよび酢酸エチル500mlを加え、析出した四級塩を濾別した。四級塩の収量は、25.4g、融点は250℃以上であった。
四級塩16.3g、テトラメトキシプロパン4.9g、N−メチルピロリドン75g、酢酸2.85gおよび無水酢酸19.0gの混合溶液を50℃で3時間加熱した。反応終了後、水50mlを加え、析出した結晶を濾別した後、メタノール/イソプロパノール/酢酸エチルで再結晶を行なった。収量は13.1g、融点は250℃以上、λmax は637.5nm、εは2.16×105 (メタノール)であった。
【0082】
[合成例2]
シアニン染料(3)の合成
ヨード酢酸ジ(n−ブチル)アミド30.8g、2,3,3−トリメチルインドレニン15.9gおよび酢酸57mlの混合液を100℃で10時間加熱した。反応終了後、3−アニリノ−N−フェニル−2−プロペニリデンイミン11.1g、ピリジン8.1ml、無水酢酸9.4mlおよびジメチルホルムアミド30mlを加え、室温で1時間攪拌した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製した。収量は14.4g、融点は250℃以上、λmax は639.5nm、εは2.15×105 (メタノール)であった。
他のシアニン染料も、合成例1および2と同様の方法で合成できる。合成方法については、特開昭62−123454号、特開平7−333784号の各公報の記載も参照できる。
【0083】
式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩は、塩基の存在下で加熱することにより消色できる。本発明者の研究により、式(I)で表わされるシアニン染料は、塩基の存在下で分子内の活性メチレン基が脱プロトン化され、それにより発生する求核種が分子内のメチレン鎖を求核攻撃し、実質的に無色の分子内閉環体を形成することが判明した。塩基は、シアニン染料中の活性メチレン基を脱プロトン化させる程度の塩基性を有する化合物であれば、消色反応に使用できる。分子内閉環により形成される環は、5員環または7員環であると考えられる。
消色反応により形成される実質的に無色の化合物は、安定な化合物であって、元のシアニン染料に戻ることはない。従って、本発明の消色方法には、消色した物質が復色するとの問題はない。
消色反応は、溶媒系でも、非溶媒系でも進行する。溶媒系で消色反応を実施する場合、シアニン染料と塩基(または塩基プレカーサー)の溶液を加熱することが好ましい。溶媒としては、シアニン染料と塩基(または塩基プレカーサー)を溶解し、加熱温度(下記)において液体である物質(例、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド)を用いる。非溶媒系で消色反応を実施する場合、シアニン染料と塩基(または塩基プレカーサー)の溶液を塗布したシート(記録材料や感光材料)を加熱することが好ましい。非溶媒系での実施、すなわち熱消色記録材料や熱現像感光材料の詳細については、後述する。
【0084】
消色反応における加熱温度は、40乃至200℃であることが好ましく、80乃至150℃であることがより好ましく、100乃至130℃であることがさらに好ましく、115乃至125℃であることが最も好ましい。加熱時間は、5乃至120秒であることが好ましく、10乃至60秒であることがより好ましく、12乃至30秒であることがさらに好ましく、15乃至25秒であることが最も好ましい。
なお、熱現像感光材料(詳細は後述)では、熱現像のための加熱を実施する。また、塩基を発生させるために、熱分解型塩基プレカーサー(詳細は後述)を使用することが好ましい。そのような場合、実際の加熱温度と加熱時間は、熱現像に要する温度と時間、あるいは熱分解に要する温度と時間も考慮して決定する。
【0085】
消色反応に必要な塩基は、広義の塩基であって、狭義の塩基に加えて、求核剤(ルイス塩基)も含まれる。塩基がシアニン染料と共存すると、室温であっても消色反応が若干進行する。従って、塩基をシアニン染料から物理的または化学的に隔離しておき、加熱時(消色すべき時)に塩基とシアニン染料とを接触(反応)させることが好ましい。
塩基の物理的な隔離手段としては、マイクロカプセルの使用、熱溶融性物質の微粒子内への添加、あるいは記録材料または感光材料中のシアニン染料を含む層とは別の層への添加のような手段がある。マイクロカプセルには、圧力により破裂するものと、加熱により破裂するものとがある。消色反応は加熱条件下で実施するため、加熱により破裂する熱応答性マイクロカプセル(森賀弘之、入門・特殊紙の化学(昭和50年)や特開平1−150575号公報に記載)を用いると都合が良い。隔離のためには、塩基とシアニン染料の一方をマイクロカプセルに封入する。マイクロカプセルの外殻が不透明である場合は、塩基の方をマイクロカプセルに封入することが好ましい。ワックスのような熱溶融性物質の微粒子内に塩基またはシアニン染料(好ましくは塩基)を添加して隔離してもよい。熱溶融性物質の融点は、室温と前述した加熱温度との間である。記録材料または感光材料において、シアニン染料を含む層と塩基を含む層とを分離する場合、それらの層の間に熱溶融性物質を含むバリアー層を設けることが好ましい。
【0086】
物理的な隔離手段よりも、化学的な隔離手段の方が実施が容易で好ましい。化学的な隔離手段としては、塩基プレカーサーの使用が代表的である。塩基プレカーサーには様々な種類があるが、消色反応は加熱条件下で実施するため、加熱により塩基を生成(または放出)する種類のプレカーサーを用いると都合が良い。加熱により塩基を生成する塩基プレカーサーとしては、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーが代表的である。脱炭酸型塩基プレカーサーを加熱すると、カルボン酸のカルボキシル基が脱炭酸反応し、塩基が放出される。カルボン酸としては、脱炭酸しやすいスルホニル酢酸やプロピオール酸を用いる。スルホニル酢酸およびプロピオール酸は、脱炭酸を促進する芳香族性を有する基(アリール基や不飽和複素環基)を置換基として有することが好ましい。スルホニル酢酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−168441号公報に、プロピオール酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−180537号公報にそれぞれ記載がある。
脱炭酸型塩基プレカーサーの塩基側成分としては、有機塩基が好ましく、アミジン、グアニジンまたはそれらの誘導体であることがさらに好ましい。有機塩基は、二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基であることが好ましく、二酸塩基であることがさらに好ましく、アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基であることが最も好ましい。
【0087】
アミジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平7−59545号公報に記載がある。グアニジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平8−10321号公報に記載がある。
アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基は、(A)二つのアミジン部分またはグアニジン部分、(B)アミジン部分またはグアニジン部分の置換基および(C)二つのアミジン部分またはグアニジン部分を結合する二価の連結基からなる。(B)の置換基の例には、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基および複素環残基が含まれる。二個以上の置換基が結合して含窒素複素環を形成してもよい。(C)の連結基は、アルキレン基またはフェニレン基であることが好ましい。
以下に、アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基プレカーサーの例を示す。
【0088】
【化55】
【0089】
【化56】
【0090】
【化57】
【0091】
【化58】
【0092】
【化59】
【0093】
【化60】
【0094】
【化61】
【0095】
【化62】
【0096】
【化63】
【0097】
【化64】
【0098】
【化65】
【0099】
【化66】
【0100】
【化67】
【0101】
【化68】
【0102】
【化69】
【0103】
【化70】
【0104】
【化71】
【0105】
【化72】
【0106】
【化73】
【0107】
【化74】
【0108】
【化75】
【0109】
【化76】
【0110】
【化77】
【0111】
【化78】
【0112】
【化79】
【0113】
【化80】
【0114】
【化81】
【0115】
【化82】
【0116】
【化83】
【0117】
【化84】
【0118】
【化85】
【0119】
【化86】
【0120】
【化87】
【0121】
【化88】
【0122】
【化89】
【0123】
【化90】
【0124】
【化91】
【0125】
【化92】
【0126】
【化93】
【0127】
【化94】
【0128】
【化95】
【0129】
塩基プレカーサーの使用量(モル)は、シアニン染料の使用量(モル)の1乃至100倍であることが好ましく、3乃至30倍であることがさらに好ましい。
シアニン染料は、以上述べたような消色反応を利用して、様々な用途に用いることができる。例えば、シアニン染料と塩基プレカーサーの溶液を、熱消色性インクとして用いることができる。また、シアニン染料と塩基プレカーサーの溶液を、透明支持体に塗布したものを熱消色型シート(フィルター)として用いることもできる。
さらに、シアニン染料と塩基プレカーサーとを熱消色記録材料に応用することもできる。熱消色記録材料は、支持体(好ましくは透明支持体)上に記録層を有する。シアニン染料は、分子状または固体微粒子状で記録層中に分散する。分子状に分散する場合は、シアニン染料の溶液を記録層の塗布液に添加する。固体微粒子状に分散する場合は、シアニン染料の固体微粒子の分散液を記録層の塗布液に添加する。塩基プレカーサーは、固体微粒子状で記録層中に分散することが好ましい。記録層は、さらにバインダーを含むことが好ましい。バインダーとしては、親水性ポリマー(例、ポリビニルアルコール、ゼラチン)が好ましく用いられる。
熱消色記録材料は、像様加熱を行なうことで、加熱した部分が消色して画像を形成することができる。像様加熱は、ファクシミリあるいは感熱プリンターに用いられているサーマルヘッドを利用して、簡単に実施することができる。加熱温度は、80乃至250℃であることが好ましく、100乃至200℃であることがさらに好ましい。
【0130】
本発明の特に有利な用途は、熱現像感光材料である。熱現像感光材料の非感光性層にシアニン染料と塩基プレカーサーとを添加して、非感光性層をフィルター層またはアンチハレーション層として機能させる。熱現像感光材料は一般に、感光性層に加えて非感光性層を有する。非感光性層は、その配置から(1)感光性層の上(支持体よりも遠い側)に設けられるオーバーコート層、(2)複数の感光性層の間に設けられる中間層、(3)感光性層と支持体との間に設けられる下塗り層、および(4)感光性層の反対側に設けられるバック層に分類できる。フィルター層は、(1)または(2)の層として感光材料に設けられる。アンチハレーション層は、(3)または(4)の層として感光材料に設けられる。
シアニン染料と塩基プレカーサーとは、同一の非感光性層に添加することが好ましい。ただし、隣接する二つの非感光性層に別々に添加してもよい。また、二つの非感光性層の間にバリアー層を設けてもよい。本明細書において「層がシアニン染料と塩基プレカーサーとを含む」とは、『層』が複数である場合、すなわち複数の層がシアニン染料と塩基プレカーサーとを別々に含む場合も含まれる。
【0131】
シアニン染料を非感光性層に添加する方法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物あるいはポリマー含浸物を非感光性層の塗布液に添加する方法が採用できる。また、ポリマー媒染剤を用いて非感光性層に染料を添加してもよい。これらの添加方法は、通常の熱現像感光材料に染料を添加する方法と同様である。ポリマー含浸物に用いるラテックスについては、米国特許4199363号、西独特許公開2541230号、同2541274号、欧州特許公開029104号の各明細書および特公昭53−41091号公報に記載がある。また、ポリマーを溶解した溶液中に染料を添加する乳化方法については、国際公開番号88/00723号明細書に記載がある。
染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2乃至2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001乃至1g/m2 程度である。なお、本発明に従い染料を消色すると、光学濃度を0.1以下に低下させることができる。
二種類以上の染料を、熱消色記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
以下、熱現像感光材料について、さらに説明する。
【0132】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
熱現像感光材料は、ハロゲン化銀(触媒活性量の光触媒)および還元剤を含む感光性層と非感光性層とを有する。感光性層は、さらにバインダー(一般に合成ポリマー)、有機銀塩(還元可能な銀源)、ヒドラジン化合物(超硬調化剤)や色調調整剤(銀の色調を制御する)を含むことが好ましい。複数の感光性層を設けてもよい。例えば、階調の調節を目的として、高感度感光性層と低感度感光性層とを熱現像感光材料に設けることができる。高感度感光性層と低感度感光性層との配列の順序は、低感度感光性層を下(支持体側)に配置しても、高感度感光性層を下に配置してもよい。
非感光性層は、前述した染料を含む層、すなわちフィルター層やハレーション防止層に加えて、表面保護層のような別の機能層として設けてもよい。
【0133】
熱現像感光材料の支持体としては、紙、ポリエチレンを被覆した紙、ポリプロピレンを被覆した紙、羊皮紙、布、金属(例、アルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛)のシートまたは薄膜、ガラス、金属(例、クロム合金、スチール、銀、金、白金)で被覆したガラスおよびプラスチックフイルムが用いられる。支持体の用いられるプラスチックの例には、ポリアルキルメタクリレート(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート)、ポリビニルアセタール、ポリアミド(例、ナイロン)およびセルロースエステル(例、セルロースニトレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)が含まれる。
支持体を、ポリマーで被覆してもよい。ポリマーの例には、ポリ塩化ビニリデン、アクリル酸系ポリマー(例、ポリアクリロニトリル、メチルアクリレート)不飽和ジカルボン酸(例、イタコン酸、アクリル酸)のポリマー、カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリルアミドが含まれる。コポリマーを用いてもよい。ポリマーで被覆する代わりに、ポリマーを含む下塗り層を設けてもよい。
【0134】
ハロゲン化銀としては、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀および塩ヨウ臭化銀のいずれも用いることができる。ただし、ヨウ化銀を含むことが好ましい。
ハロゲン化銀の添加量は、0.03乃至0.6g/m2 であることが好ましく、0.05乃至0.4g/m2 であることがさらに好ましく、0.1乃至0.4g/m2 であることが最も好ましい。
ハロゲン化銀は、一般にハロゲン化銀乳剤として硝酸銀と可溶性ハロゲン塩との反応により調製する。ただし、銀石鹸とハロゲンイオンとを反応させ、銀石鹸の石鹸部をハロゲン変換して調製してもよい。また、銀石鹸の形成時にハロゲンイオンを添加してもよい。
還元剤としては、フェニドン、ヒドロキノン類、カテコールおよびヒンダードフェノールが好ましい。還元剤については、米国特許3770448号、同3773512号、同3593863号、同4460681号の各明細書、およびリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)誌17029号、同29963号に記載がある。
【0135】
還元剤の例には、アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例、2−ヒドロキシ−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン)、N−ヒドロキシ尿素誘導体(例、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素)、アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン)、ホスファーアミドフェノール類、ホスファーアミドアニリン類、ポリヒドロキシベンゼン類(例、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン、2,5−ジヒドロキシ−フェニルメチルスルホン)、スルホヒドロキサム酸類(例、ベンゼンスルホヒドロキサム酸)、スルホンアミドアニリン類(例、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン)、2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン)、テトラヒドロキノキサリン類(例、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン)、アミドオキシン類、アジン類(例、脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類)とアスコルビン酸との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンとの組み合わせ、リダクトン、ヒドラジン、ヒドロキサム酸類、アジン類とスルホンアミドフェノール類との組み合わせ、α−シアノフェニル酢酸誘導体、ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体との組み合わせ、5−ピラゾロン類、スルホンアミドフェノール類、2−フェニリンダン−1,3−ジオン、クロマン、1,4−ジヒドロピリジン類(例、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン)、ビスフェノール類(例、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチル)フェノール)、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体および3−ピラゾリドン類が含まれる。
【0136】
還元剤の前駆体として機能するアミノレダクトン類のエステル(例、ピペリジノヘキソースリダクトンモノアセテート)を還元剤として用いてもよい。
特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノールである。
感光性層および非感光性層は、バインダーを含むことが好ましい。バインダーとしては、一般に無色の透明または半透明のポリマーが用いられる。天然あるいは半合成ポリマー(例、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエステル、カゼイン、デンプン)を用いることもできるが、耐熱性を考慮すると、天然あるいは半合成ポリマーよりも合成ポリマーの方が好ましい。ただし、セルロールエステル(例、アセテート、セルロースアセテートブチレート)は、半合成ポリマーであっても、比較的耐熱性があり、熱現像感光材料のバインダーとして好ましく用いられる。
【0137】
合成ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセタール(例、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド、ポリカーボネート、ポリビニルアセテートおよびポリアミドが含まれる。親水性ポリマーよりも疎水性ポリマーの方が好ましい。従って、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリウレタン、ロースアセテートブチレート、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルおよびポリウレタンが好ましく、スチレン/ブタジエンコポリマーおよびポリビニルアセタールがさらに好ましい。
バインダーは、感光性層または非感光性層の塗布液の溶媒(水または有機溶媒)中に溶解または乳化して使用する。塗布液中にバインダーを乳化する場合、バインダーのエマルジョンを塗布液と混合してもよい。
【0138】
染料を含む層におけるバインダーの使用量は、染料がバインダーの0.1乃至60重量%の塗布量となるように調整することが好ましい。染料は、バインダーの0.2乃至30重量%であることが好ましく、0.5乃至10重量%であることが最も好ましい。
感光性層または非感光性層は、さらに有機銀塩を含むことが好ましい。銀塩を形成する有機酸は、長鎖の脂肪酸が好ましい。脂肪酸の炭素原子数は、10乃至30であることが好ましく、15乃至25であることがさらに好ましい。有機銀塩錯体を用いてもよい。錯体の配位子は、銀イオンに対する総安定定数を4.0乃至10.0の範囲で有することが好ましい。有機銀塩については、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)誌17029号および同29963号に記載がある。
【0139】
有機銀塩の例には、脂肪酸(例、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸)の銀塩、カルボキシアルキルチオ尿素(例、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素)の銀塩、アルデヒド(例、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド)とヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体、芳香族カルボン酸(例、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸)の銀塩、チオエン類(例、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオエン、3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオエン)の銀塩または銀錯体、窒素酸(例、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール、1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール)の銀塩または銀錯体、サッカリンの銀塩、5−クロロサリチルアルドキシムの銀塩およびメルカプチド類の銀塩が含まれる。ベヘン酸銀が最も好ましい。有機銀塩は、銀量として3g/m2 以下で用いることが好ましく、2g/m2 以下で用いることがさらに好ましい。
【0140】
感光性層または非感光性層は、さらに超硬調化剤を含むことが好ましい。熱現像感光材料を印刷用写真の分野で用いる場合、網点による連続階調画像や線画像の再現が重要である。超硬調化剤を使用することで、網点画像や線画像の再現性を改善することができる。超硬調化剤としては、ヒドラジン化合物、四級アンモニウム化合物あるいはアクリロニトリル化合物(米国特許5545515号明細書記載)が用いられる。ヒドラジン化合物が特に好ましい超硬調化剤である。
ヒドラジン化合物は、ヒドラジン(H2 N−NH2 )とその水素原子の少なくも一つを置換した化合物を含む。置換基は、脂肪族基、芳香族基または複素環基がヒドラジンの窒素原子に直結するか、あるいは脂肪族基、芳香族基または複素環基が連結基を介してヒドラジンの窒素原子に結合する。連結基の例には、−CO−、−CS−、−SO2 −、−P(=O)R−(Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、−CNH−およびそれらの組み合わせが含まれる。
ヒドラジン化合物については、米国特許5464738号、同5496695号、同5512411号、同5536622号の各明細書、特公平6−77138号、同6−93082号、特開平6−230497号、同6−289520号、同6−313951号、同7−5610号、同7−77783号、同7−104426号の各公報に記載がある。
【0141】
ヒドラジン化合物は、適当な有機溶媒に溶解して、感光性層の塗布液に添加することができる。有機溶媒の例には、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびメチルセルソルブが含まれる。また、ヒドラジン化合物を油性(補助)溶媒に溶解した溶液を、塗布液中に乳化してもよい。油性(補助)溶媒の例には、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテート、ジエチルフタレート、酢酸エチルおよびシクロヘキサノンが含まれる。さらに、ヒドラジン化合物の固体分散物を塗布液に添加してもよい。ヒドラジン化合物の分散は、ボールミル、コロイドミル、マントンゴーリング、マイクロフルイダイザーや超音波分散機のような公知の分散機を用いて実施できる。
超硬調化剤の添加量は、ハロゲン化銀1モルに対して、1×10-6乃至1×10-2モルであることが好ましく、1×10-5乃至5×10-3モルであることがさらに好ましく、2×10-5乃至5×10-3モルであることが最も好ましい。
超硬調化剤に加えて、硬調化促進剤を用いてもよい。硬調化促進剤の例には、アミン化合物(米国特許5545505号明細書記載)、ヒドロキサム酸(米国特許5545507号明細書記載)、アクリロニトリル類(米国特許5545507号明細書記載)およびヒドラジン化合物(米国特許5558983号明細書記載)が含まれる。
感光性層または非感光性層は、さらに色調調整剤を含むことが好ましい。色調調整剤については、リサーチ・ディスクロージャー誌17029号に記載がある。
【0142】
色調調整剤の例には、イミド類(例、フタルイミド)、環状イミド類(例、スクシンイミド)、ピラゾリン−5−オン類(例、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール)、キナゾリノン類(例、キナゾリン、2,4−チアゾリジンジオン)、ナフタールイミド類(例、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド)、コバルト錯体(例、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール)、N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド)、ブロックされたピラゾール類(例、N,N’ヘキサメチレン−1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体(例、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)と光漂白剤(例、2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾール)との組み合わせ、メロシアニン染料(例、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(benzothiazolinylidene))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(oxazolidinedione))、フタラジノン化合物およびその金属塩(例、フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン、、8−メチルフタラジノ)、フタラジノン化合物とスルフィン酸誘導体(例、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム)との組み合わせ、フタラジノン化合物とスルホン酸誘導体(例、p−トルエンスルホン酸ナトリウム)との組み合わせ、フタラジンとフタル酸との組み合わせ、フタラジンまたはフララジン付加物とジカルボン酸(好ましくはo−フェニレン酸)またはその無水物(例、マレイン酸無水物、フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸無水物、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、テトラクロロフタル酸無水物)との組み合わせ、キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体、ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン)、ピリミジン類、不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、テトラアザペンタレン誘導体(例、3,6−ジメロカプト−1,4−ジフェニル−1H、4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)およびフタラジンが含まれる。フタラジンが特に好ましい。
【0143】
感光性層または非感光性層(好ましくは感光性層)に、カブリ防止剤を添加してもよい。カブリ防止剤としては、水銀化合物(米国特許3589903号明細書記載)よりも、非水銀化合物(米国特許3874946号、同4546075号、同4452885号、同4756999号、同5028523号、英国特許出願番号92221383.4号、同9300147.7号、同9311790.1号の各明細書、特開昭59−57234公報記載)を用いることが好ましい。
特に好ましいカブリ防止剤は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)置換メチル基を有するヘテロ環化合物である。
【0144】
ハロゲン化銀は、一般に分光増感して使用する。分光増感色素については、特開昭60−140335号、同63−159841号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号の各公報、米国特許4639414号、同4740455号、同4741966号、同4751175号、同4835096号の各明細書に記載がある。
熱現像感光材料には、さらに界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。
熱現像感光材料は、画像露光後に加熱することで画像を形成する。この熱現像により、黒色の銀画像が形成される。画像露光は、レーザーを用いて実施することが好ましい。熱現像の加熱温度は、80乃至250℃であることが好ましく、100乃至200℃であることがさらに好ましい。加熱時間は一般に1秒乃至2分である。
【0145】
【実施例】
[実施例1]
(シアニン染料の消色反応)
シアニン染料(47)0.73gをジメチルスルホキシド10mlに溶かし、トリエチルアミン0.7mlを加えて、120℃で1分間加熱した。加熱を開始して直ちに溶液の青色は消失し、薄黄色の溶液となった。この溶液を放冷し、析出した白色結晶を濾別した。得られた結晶は、疎水性の高い中性化合物である。この化合物は、マススペクトル分析により、シアニン染料(47)からカウンターアニオンとプロトン原子一個が除かれた分子量が626の化合物であることが判明した。さらに、 1H−NMRスペクトル分析により、分子内で閉環消色した化合物であることも明らかになった。
【0146】
また、トリエチルアミン(塩基)に代えて、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、グアニジンおよび水酸化ナトリウムを、それぞれ塩基として用いて消色反応を実施したところ、いずれの場合も分子内で閉環消色した化合物が生成することが確認された。
次に、トリエチルアミンを添加せずに、シアニン染料を重水素化されたジメチルスルホキシド−d6 に溶解した溶液を調製した。この溶液を160℃で2時間加熱し、 1H−NMR測定により反応の有無を確認したところ、いかなる反応も確認されず、塩基が存在しないときは、極めて安定であることが判明した。
さらにまた、シアニン染料(47)に代えて、シアニン染料(1)、(48)、(49)、(2)および(4)をそれぞれ用いて消色反応を実施したところ、いずれの場合もシアニン染料(47)と同様に、分子内で閉環消色した化合物が生成することが確認された。
【0147】
[実施例2]
(各種染料の消色反応)
下記第1表に示す染料のジメチルアセトアミド溶液(1×10-5モル/dm3 )に、塩基プレカーサー(BP−41)を1×10-4モル/dm3 添加し、110℃で30秒間加熱した。各染料の第一吸収帯(λmax )における吸光度を測定し、染料の残存率を求めた。
以上の結果を第1表に示す。
【0148】
【表1】
第1表
────────────────────────────────────
染料 λmax 消色反応後の染料残存率
────────────────────────────────────
(1) 645.8nm 0.2%
(47) 682.4nm 0.0%
(48) 550.8nm 0.2%
(2) 647.2nm 0.3%
(3) 647.2nm 1.1%
(5) 647.0nm 1.5%
(6) 645.5nm 0.0%
(61) 566.0nm 0.2%
比較染料1 644.0nm 24.3%
比較染料2 679.4nm 98.6%
比較染料3 646.2nm 38.7%
────────────────────────────────────
【0149】
【化96】
【0150】
【化97】
【0151】
【化98】
【0152】
[実施例3]
(塩基プレカーサーの固体分散物の調製)
300mlの分散コンテナー中に、ポリビニルアルコールの3重量%水溶液52.5g、カルボキシメチルセルロースの3重量%水溶液52.5g、塩基プレカーサー(BP−41)40gおよび直径0.5〜0.75mmのガラスビーズ150mlを入れた。ダイノミルを用いて3000rpmにて30分間分散し、2N硫酸でpHを6.5に調整して、粒径約1μmの塩基プレカーサーの固体分散物を得た。
【0153】
(染料の微粒子分散物の調製)
シアニン染料(3)2.1gを酢酸エチル30gに溶解した。
別に、ポリビニルアルコールの20重量%水溶液31g、水21gおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5重量%水溶液10gを混合し、200mlのホモジナイザーカップに入れた。この中に、染料の溶液を加え、10000rpmにて5分間攪拌し、染料の乳化物を得た。乳化液を50℃で2時間攪拌し、酢酸エチルを除去した後、蒸発した量と同量の水を加え、粒径約0.4μmの染料の微粒子分散物を得た。
【0154】
(熱消色記録材料の作成)
染料の微粒子分散物5.1gに、水0.5gおよびポリビニルアルコールの20重量%水溶液を加え、混合した。混合液に塩基プレカーサーの固体分散物2gを加え、さらに混合して熱消色記録層の塗布液を調製した。厚さ100μmのゼラチン下塗り層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルム(支持体)上に、塗布液を塗布量10.5g/m2 で塗布、乾燥した。
ポリビニルアルコールの10重量%水溶液4g、ポリ(n=10)エチレングリコールドデシルエーテル(界面活性剤)の2重量%水溶液1g、粒径0.2μmのステアリン酸亜鉛の20重量%水分散物0.5gおよび水4.8gを混合し、保護層の塗布液を調製した。この塗布液を、熱消色記録層の上に、塗布量17.5g/m2 で塗布、乾燥し、熱消色記録材料を作成した。
【0155】
(熱消色画像の形成)
熱消色記録材料を、サーマルイメージャー(FTI210、富士写真フイルム(株)製)を用いて、8段階の階調ステップで、像様加熱したところ、高エネルギー部分が無色になる陰画が得られた。また、熱消色記録材料を、40℃、相対湿度80%で、3日間保存したところ、熱消色記録層の消色は認められなかった。3日間保存後の熱消色記録材料を用いて上記と同様に像様加熱したところ、製造直後と同様の鮮明な陰画が得られた。
【0156】
[実施例4]
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液の調製)
塩基プレカーサー(BP−7)5.12gおよびポリビニルアルコール1.02gを水43.5gと混合し、混合液をサンドミル(1/16Gサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いて分散し、塩基プレカーサーの固体微粒子分散物を得た。
【0157】
(染料の乳化液の調製)
シアニン染料(3)1.2gを、酢酸エチル35gに溶解して有機相とした。有機相をポリビニルアルコールの6重量%水溶液84gに混合し、常温にて乳化して、平均粒子径1.2μmの染料の乳化液を得た。
【0158】
(ハレーション防止層塗布液の調製)
塩基プレカーサーの固体微粒子分散物4gおよび染料の乳化液4gを、ポリビニルアルコールの4重量%水溶液28gに加えて、攪拌し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0159】
(ハレーション防止層の形成)
厚さが175μmのポリエチレンテレフタレートフイルム(支持体)の一方の面に、塩化ビニリデンを含む防湿下塗り層を設けた。支持体の他方の面には、ゼラチン下塗り層を設けた。防湿下塗り層の上に、ハレーション防止層塗布液を乾燥固形分塗布量が2g/m2 となるように塗布、乾燥してハレーション防止層を形成した。
【0160】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
水700mlにフタル化ゼラチン22gおよび臭化カリウム30mgを溶解した。溶液を35℃にてpH5.0に調整した後、硝酸銀18.6gと硝酸アンモニウム0.9gとを含む水溶液159ml、および臭化カリウムとヨウ化カリウムとを92:8のモル比で含む水溶液を、pAg7.7に保ちながら、コントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。次いで、硝酸銀55.4gと硝酸アンモニウム2gとを含む水溶液476ml、および六塩化イリジウム酸二カリウム10μモル/リットルと臭化カリウム1モル/リットルとを含む水溶液を、pAg7.7に保ちながら、コントロールドダブルジェット法で30分間かけて添加した。さらに、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン1gを添加し、pHを下げて凝集沈降させ、脱塩処理をした。その後、フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg8.2に調整し、沃臭化銀粒子の形成を終了した。粒子のヨウ素含量は、コア部で8モル%、粒子全体の平均で2モル%であった。平均粒子径は0.05μm、投影面積の変動係数は8%で、(100)面比率が88%の立方体粒子であった。
ハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して、銀1モル当りチオ硫酸ナトリウム85μモルと、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニド11μモル、下記のテルル化合物15μモル、塩化金酸3.5μモルおよびチオシアン酸270μモルを添加し、120分間熟成した後、30℃に急冷して、ハロゲン化銀乳剤を得た。
【0161】
【化99】
【0162】
(有機銀塩乳剤の調製)
ステアリン酸7g、アラキジン酸4gおよびベヘン酸36gを蒸留水850mlに加えた。混合液を90℃で激しく攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液187mlを添加し、60分間反応させた。1N硝酸65mlを添加した後、50℃に降温した。次いで、より激しく攪拌しながら、N−ブロモスクシンイミド0.62gを添加し、10分後に上記のハロゲン化銀乳剤を、ハロゲン化銀量が6.2ミリモルとなるように添加した。さらに、硝酸銀21gの水溶液125mlを100秒かけて添加し、そのまま10分間攪拌し続け、N−ブロモスクシンイミド0.62gを添加し、さらに10分間放置した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。このように得られた固形分にポリ酢酸ビニルの0.6重量%の酢酸ブチル溶液150gを加え攪拌した。攪拌終了後、放置して、油相と水相とを分離させ、塩を含む水相を除去し、油相を得た。次に、油相にポリビニルブチラール(デンカブチラール#3000−K、電気化学工業(株)製)の2.5重量%2−ブタノン溶液80gを添加し、攪拌した。過臭化ピリジニウム0.1ミリモルと臭化カルシウム二水和物0.15モルをメタノール0.7gと共に添加した。さらに、2−ブタノン200gとポリビニルブチラール(BUTVAR−76、モンダント社製)59gを添加し、ホモジナイザーで分散し、有機銀塩乳剤(針状粒子の平均短径:0.04μm、平均長径:1μm、変動係数30%)を得た。
【0163】
(感光性層塗布液の調製)
有機銀塩乳剤に、25℃で、下記の成分を一次添加と二次添加の二回に分けて、銀1モル当り以下の量となるように、攪拌しながら添加し、感光性層塗布液を調製した。
【0164】
────────────────────────────────────
感光性層塗布液成分(一次添加)
────────────────────────────────────
フェニルチオスルホン酸ナトリウム 10mg
下記の色素 80mg
2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール 2g
4−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸 21.5g
2−ブタノン 580g
ジメチルホルムアミド 220g
────────────────────────────────────
【0165】
【化100】
【0166】
【0167】
【化101】
【0168】
(乳剤面保護層塗布液の調製)
セルロースアセテートブチレート(CAB171−15S、イーストマンケミカル(株)製)75g、2−メチルフタル酸5.7g、テトラクロロフタル酸無水物1.5g、フタラジン12.5g、テトラクロロフタル酸5.1g、フッ素系界面活性剤(メガファックスF−176P、大日本インキ化学工業(株)製)0.3g、平均粒子サイズ3μmの真球状シリカ粒子(シルデックスH31、洞海化学社製)2gおよびポリイソシアネート(SumidurN3500、住友バイエルウレタン社製)6gを、2−ブタノン3070gと酢酸エチル30gに溶解して、乳剤面保護層塗布液を調製した。
【0169】
(バック面保護層塗布液の調製)
ゼラチン10g、ポリメチルメタクリレート粒子(平均粒径:7μm)0.6g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4gおよびシリコーン化合物(X−22−2809、信越シリコーン(株)製)0.9gを水500gに溶解して、バック面保護層塗布液を調製した。
【0170】
(熱現像感光材料101の作成)
前述した支持体のハレーション防止層とは反対側の面に、感光性層塗布液を塗布銀量が2.3g/m2 となるように塗布した。次に、ハレーション防止層の上に、乾燥厚さが0.9μmとなる塗布量で、バック面保護層塗布液を塗布した。さらに、感光性層の上に、乾燥厚さが2μmとなる塗布量で乳剤面保護層塗布液を塗布した。このようにして、熱現像感光材料101を作成した。
【0171】
(熱現像感光材料102〜110の作成)
熱現像感光材料101の作成において、シアニン染料(3)に代えて、シアニン染料(52)、シアニン染料(50)、シアニン染料(6)、シアニン染料(10)、シアニン染料(33)、比較染料1、比較染料2および比較染料3を、それぞれ同量使用した以外は同様にして、熱現像感光材料102〜109を作成した。また、シアニン染料(3)を添加しなかった以外は、熱現像感光材料101の作成と同様にして、熱現像感光材料110を作成した。
【0172】
(写真性能の評価)
635nm半導体レーザー感光計で熱現像感光材料を露光した後、感光材料を120℃で15秒間処理(熱現像)し、得られた画像を濃度計で測定した。測定結果は、カブリに相当する最低濃度(Dmin)および感度(Dminより1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)で評価した。結果を第2表に示す。なお、第2表で、感度については、熱現像感光材料101の感度を100とする相対感度で示した。
【0173】
(鮮鋭度評価)
635nm半導体レーザー感光計で辺が1cmの正方形に熱現像感光材料を露光した。濃度が2.5になる露光量xと、濃度が0.5になる露光量yとを求めた。次に、短辺100μm、長辺1cmの長方形の長辺が接するように、露光量xと露光量yで交互に露光し、露光領域の最高濃度と最低濃度をミクロデンシトメーターで測定した。最高濃度と最低濃度の差を2で除したものを鮮鋭度として評価した。結果を第2表に示す。
【0174】
(保存安定性評価)
熱現像感光材料101〜110を、高温(50℃)かつ高湿(相対湿度80%)の条件下で3日間保存し、650nmにおける吸光度を保存の前後で測定した。感光材料101〜109の保存前の吸光度(Db)、保存後の吸光度(Da)、そして染料なしの感光材料110の保存後の吸光度(D0)の測定結果から、下記式により感光材料101〜109中の染料の残存率を求め、保存安定性の指標とした。なお、感光材料110は、保存の前後で650nmにおける吸光度に変化はなかった。
100×(Da−D0)/(Db−D0)
上記式で定義される値が100に近いほど、染料の保存安定性が高いことを意味する。結果を第2表に示す。
【0175】
【表2】
Claims (22)
- 支持体、ハロゲン化銀および還元剤を含む感光性層、および非感光性層を有する熱現像感光材料であって、非感光性層が下記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と塩基プレカーサーとを含み、該シアニン染料またはその塩が固体微粒子の状態で分散されていることを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記シアニン染料が下記式(Ia)で表わされることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記式(I)において、R1が、−NR21R24、−OR21または−SR21であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記式(I)において、R1が、−NR21R24、−OR21または−SR21であって、かつ−NR21R24に置換するR21およびR24が、いずれも水素原子であるか、いずれも脂肪族基および芳香族基から選択される基であるか、またはR21とR24とが結合して含窒素複素環を形成する基であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記塩基プレカーサーが、40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記塩基プレカーサーが、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記塩基プレカーサーのカルボン酸成分が、スルホニル酢酸またはプロピオール酸であることを特徴とする請求項6に記載の熱現像感光材料。
- 前記塩基プレカーサーの塩基成分が、有機塩基であることを特徴とする請求項6または7に記載の熱現像感光材料。
- 前記塩基プレカーサーが、固体微粒子の状態で分散されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 支持体、ハロゲン化銀および還元剤を含む感光性層、および下記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と塩基プレカーサーとを含み、該シアニン染料またはその塩が固体微粒子の状態で分散されている非感光性層を有する熱現像感光材料を画像露光する工程;および熱現像感光材料を80乃至200℃に加熱して、ハロゲン化銀を現像し、塩基プレカーサーから塩基を発生させ、さらにシアニン染料を消色する工程からなることを特徴とする熱現像画像形成方法。
- 支持体上に記録層を有する記録材料であって、記録層が下記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサーとを含み、該シアニン染料またはその塩が、固体微粒子の状態で記録層中に分散されていることを特徴とする熱消色記録材料。
- 前記塩基プレカーサーが、固体微粒子の状態で記録層中に分散されていることを特徴とする請求項11に記載の熱消色記録材料。
- 前記式(I)において、R1が、−NR21R24、−OR21または−SR21であることを特徴とする請求項11または12に記載の熱消色記録材料。
- 支持体上に下記式(I)で表わされるシアニン染料またはその塩と塩基プレカーサーとを含む記録層を有し、シアニン染料またはその塩が、分子あるいは固体微粒子の状態で記録層中に分散されている熱消色記録材料を、80乃至200℃に像様加熱し、加熱部分の塩基プレカーサーから塩基を発生させ、さらにシアニン染料を消色する工程からなることを特徴とする熱消色画像記録方法。
- 下記式(II)で表わされるシアニン染料またはその塩を固体微粒子の状態で分散し、該シアニン染料またはその塩を、該シアニン染料またはその塩の活性メチレン(R22が置換した炭素原子)の水素原子を脱プロトン化するために使用する塩基の共存下で、加熱して消色することを特徴とするシアニン染料の消色方法。
- 前記塩基が、40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサー、またはトリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、アミジンもしくはその誘導体および、グアニジンもしくはその誘導体から選択される塩基であることを特徴とする請求項15に記載のシアニン染料の消色方法。
- 前記塩基が、40乃至200℃で塩基を生成もしくは放出する塩基プレカーサーであることを特徴とする請求項15または16に記載のシアニン染料の消色方法。
- 前記塩基プレカーサーが、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーであることを特徴とする請求項16または17に記載のシアニン染料の消色方法。
- 前記塩基プレカーサーのカルボン酸成分が、スルホニル酢酸またはプロピオール酸であることを特徴とする請求項18に記載のシアニン染料の消色方法。
- 前記塩基プレカーサーの塩基成分が、有機塩基であることを特徴とする請求項18または19に記載のシアニン染料の消色方法。
- 前記塩基プレカーサーが、固体微粒子の状態で分散されていることを特徴とする請求項16〜20のいずれか1項に記載のシアニン染料の消色方法。
- 前記シアニン染料が下記式(IIa)で表わされることを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項に記載のシアニン染料の消色方法。
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