JP3946328B2 - 医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー - Google Patents

医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーに関し、更に詳しくは、撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布又は布帛(以下まとめて不織布と省略する)と、これに積層された水溶性樹脂を構成成分とする積層体からなる医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーに関し、焼却をせずとも水に溶解することで、下水に廃棄可能な医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、日本の国においては、国土が狭いために、廃棄物の処理においては、一部はリサイクル(再生)にかけられたり、産業廃棄物として処理場で処理されたりするが、大部分のものは焼却され処理されている。
近年では産業廃棄物処理場も満杯になり始め、新たに産業廃棄物処理場となる候補地も少なく、廃棄物の焼却においては、ダイオキシンの問題が発生し難儀している。
【0003】
特に、近年、病院や介護老人ホームで発生する廃棄物(いわゆる医療用廃棄物)が増加して、これらの処理の手間や工数の問題が話題になっている。
特に、手術使用後のメスやカンシを置くためのプラスチックトレー、患者の使用したプラスチック洗面器、患者より摘出した部位や体液を処置するためのプラスチックトレー等のプラスチック成型物を廃棄するには、そのまま、再生工場や、廃棄物処理場送りとするわけにもいかず、消毒後に、再生工場や、廃棄物処理場送りとするため大変手間がかかったり、或いはそのまま焼却する時は、焼却すればダイオキシンが発生するという大変に頭の痛い問題があり、急加速的にこれらに対する改善が要求されつづけている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
プラスチックの成型物の処理として、再生溶融処理でもなく、産業廃棄物処理場送りでもなく、焼却でもないものというと溶解しかないが、強酸、強アルカリ、溶剤での溶解処理はこれらの廃液の問題が発生するので実用的ではないので、水での溶解となる。成型物を水溶性にするためには、水溶性樹脂を使用する必要があるが、水溶性成型物を、無垢材で形成した場合は、強度はあるが、水に溶解するのに時間がかかりすぎ実用的でない。又、高速で水に溶解するように分子設計した樹脂を無垢材料として使用する時は、吸湿にて柔らかくなりすぎ使用にたえない。水溶性成型物を水溶性樹脂の発泡体で形成したりする手段もあるがこの場合は、水に溶解する時間は短いが、強度の問題があり薄物はできないので実用には値しない。廃棄処理のために、早く水に溶け、下水廃棄でき、薄く軽く、強度があり、吸湿で柔らかくならない水可溶性成型物が望まれるところである。特に、医療用や介護用で使用し汚染されるトレーは、薄く軽く、強度があり、吸湿で柔らかくならなく、水で溶かすときに早く溶け、手軽に消毒できると同時に下水に廃棄できるものが望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、医療用又は介護用トレーにおいて、撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布に水溶性樹脂が積層されてなる医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー、特に2枚以上の撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布を積層してなり、その少なくとも1枚の撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布に水溶性樹脂を積層させる場合、医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーが上記目的を達成できることを見いだし本発明を完成するに到った。
以下、本発明の「医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー」を「水可溶性不織布成型体」または「成形物」とも言う。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明について具体的に説明する。
本発明の最大の特徴は、撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布を積層体の1成分として使用する点にある。
【0007】
以下、本発明の成型物で使用される基材について述べる。
まず、水可溶性不織布を構成する繊維としては特に限定はないが、ポリビニルアルコール系繊維、ポリビニルアルコール系樹脂と他の水溶性樹脂とのコンジュゲート繊維や海島繊維が好ましい。
本発明における水溶性樹脂は、水好ましくは50℃以上の熱水に可溶のものであれば特には限定しない。かかる水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、澱粉系樹脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、各種多糖体等があるが、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂が実用的である。工業的には、ホットメルト接着性を有するものが更には好ましい。ホットメルト接着性を有するものとしては、平均重合度300〜800、ケン化度90モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂やオキシアルキレン基を0.1〜10モル%程度含有するポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂が挙げられ、これらの樹脂にに可塑剤としてグリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール等を配合したものが更に実用的である。
特に好ましくは、水に溶解廃棄後に、自然界の中で生分解性する樹脂つまりポリビニルアルコール系樹脂やオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂が下水廃棄の上で一番好ましい。
【0008】
本発明の水可溶性不織布成型体で使用する水可溶性ポリビニルアルコール系不織布とは水可溶性ポリビニルアルコール系繊維をスパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法あるいはスデチボンド法等の公知の方法で製造される不織布であり、また、かかる水可溶性ポリビニルアルコール系布帛とは、水可溶性ポリビニルアルコール系繊維で、平織、綾織等に製織された織物や、たて編み、横編み、トリコット編み等の編み物等を意味する。
【0009】
本発明で使用する水可溶性ポリビニルアルコール系繊維は、水可溶性ポリビニルアルコール系樹脂を原料として紡糸される。かかる水可溶性ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるものであるが、本発明では、これに限定されるものでなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル、等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩類等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。
できあがった水可溶性不織布成型物がある程度の耐水性をもつことが好ましいため、好ましくは70℃以上の温水で溶解する例えばケン化度80〜100モル%、平均重合度100〜5500の水可溶性ポリビニルアルコール系樹脂(変性ポリビニルアルコールも含む)が好ましい、紡糸にあたっては、水系、溶剤系、これらの混合溶媒系であっても特には限定しない。又、紡糸に際してグリセリン、ジグリセリンの可塑剤を添加してもよい。
本発明では、かかる水可溶性ポリビニルアルコール系不織布に撥水処理を施すことで、本発明特有の効果が得られる。
【0010】
かかる繊維を使用した水可溶性ポリビニルアルコール系不織布に水溶性樹脂を積層させる方法としては、上記の水溶性樹脂を水、溶剤、またはこれらの混合溶剤等の溶媒に溶解した樹脂液を、これらの不織布に塗布したり、樹脂液からフイルムやシートを予め製造しておき、これを積層させれば良い。
水溶性樹脂自体がホットメルト接着性がある時は、水溶性樹脂を溶融させたホットメルト液を塗布して層を形成させても良い。
【0011】
積層のより具体的な方法としては、溶媒を使用する時は、スプレー法、どぶ漬け法(ディップ法)、コーター法、上掛け法により塗布することができ、ホットメルト液を使用する時は、スプレーコーター法、カーテンコーター法、スパイラルコーター法、Tダイ押し出しコーター法、上掛け法により積層することができる。
【0012】
本発明の水可溶性不織布成型物を製造する方法について述べる。
本水可溶性不織布成型物を成型するにあたり型が必要であり、金型、木型、樹脂型等何でもよい。
これらの型を使用して水可溶性不織布成型物を成型する方法に二つの方法がある。
ひとつは、型に、水可溶性ポリビニルアルコール系不織布を沿わし、水溶性樹脂を積層させた上に、型に押さえ付けながら、熱、熱風等で水溶性樹脂を乾固する型どり法であり、もう一つの方法は、水可溶性ポリビニルアルコール系不織布に、上記方法で水溶性樹脂を積層させた後に、それらの少なくとも一枚以上の枚数のシートを、型に沿わして成型する真空成型法又は圧縮成型法である。
【0013】
工業的には後者の方法が効率的で採算性がある。
2枚以上の不織布を使用する場合、水溶性樹脂層が不織布の間に介在するように設計するのが実用的である。
かかる水可溶性不織布成型物の厚みは0.04mm〜3mmの厚みの範囲が好ましく、厚みが、0.04mm未満の時は強度が不足して不都合であり、3mmを越える時は水への溶解時間がかかり過ぎたり、成型時の絞り性が悪くなり不都合である。
水溶性樹脂層の厚みは総計で0.01〜3.0mm好ましくは0.1〜1.0mmが適当である。
【0014】
上記工程後に、型打ち抜きや、切り抜きにより余分な部分が除去され水可溶性不織布成型物が形成されるが、完成された水可溶性不織布成型物には、ある程度の耐水性がある方が好ましく、できあがった水溶性不織布成型物の表面に撥水剤を塗布するが、水溶性樹脂をフイルム化する時にフッ素系撥水剤を添加しておいてもよい。フッ素系撥水剤は、水可溶性不織布成型物の表面にマイグレートして耐水性を増し、水滴、体液等が付着しても膨潤することなく使用に耐えることができる
【0015】
本発明の水可溶性使い捨てトレー、医療用又は介護用として使用することが、の特性を活用した使用形態であり、好ましい。医療用又は介護用として使用された手術着、オイフ、ドレープ、シーツ、メス、カンシ、ピンセット等の手術セットや、寝具、オムツ、雑巾、手拭き、食器等は、細菌汚染されているが、これらを医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーに入れたり置いたりする使用法が一番好ましい。
【0016】
かくして使用後に細菌汚染された医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーを、消毒剤入りの水、70℃以上(更には95℃以上、特には100℃以上)の熱水、消毒剤入り70℃以上の熱水(更には95℃以上、特には100℃以上)のいずれかで消毒溶解することが好ましく本発明の効果が遺憾なく発揮でき、重金属が混入していない限りは、下水廃棄も可能となる。又、高圧下で100℃以上の熱水による溶解法も殺菌面からは極めて効率的である。本発明の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーは、手軽に投げ入れができるため好ましい。特に、病院では、金網容器の上に、本発明のトレーを置き、使用汚染されたメスや、カンシや、ピンセット等の手術用具を置き、熱水にて、消毒溶解すれば、そのまま、再度、あらたな手術に使用でき、病院の省力化に非常に役立つ。尚、この時感染防止のためかかるトレーの上を本発明のトレーと同様の材料からなる上蓋やシーツで覆っても良い。
【0017】
医療用又は介護用の水可溶性不織布成型物として使用する場合に、水溶性樹脂にヨウ素等の各種抗菌剤や、フィブリル化繊維等でできた繊維状バインダー等を添加して安全性を更に高めてもよい。
【0018】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
平均重合度1800、平均ケン度99.3モル%のPVAを90℃の水に溶解し樹脂濃度15重量%の紡糸原液を調製した。該原液を孔径0.5mm、孔数1000の口金より飽和芒硝浴へ単繊維繊度が1.5デニールになるように吐出させ、糸絛を形成せしめた。しかる後140〜200℃で8倍延伸し乾燥後、繊維長45mmに切断した。
【0019】
上記繊維を平板上にウエブ状に積層し、ノズル孔0.1mmのノズルから圧力100Kg/cm2の水を水柱状流に噴射させ、圧力ロールで脱水し、脱水後の不織布をフッ素系樹脂エマルジョン(大原パラジュウム化学社製 パラガード823)に浸漬し撥水処理した後、脱水乾燥し、樹脂分着量0.01重量%、目付70g/m2のPVA不織布を製造した。一方平均重合度500、平均ケン度99.0モル%のPVAフイルム(厚み0.7mm、グリセリン5%含有)に上記PVA不織布をサンドウィッチ状に介在させて熱融着させて全体の厚み0.8mmの水可溶性不織布成型物を製造した。該成型物の性質を表1に示す。
尚、各物性値は下記によって測定した。
【0020】
(1)熱水溶解性
30×30mmの試験片を300gの熱水中に投入し、400rpmの撹拌下に昇温を続け溶解率が95%以上となる温度を測定した。
(2)耐水圧
JIS L 1092の耐水度試験A法(低水圧)の静圧法に準じる
(3)剛軟度
JIS L 1085(41.5度カンチレバー法 20cm×20cm×3枚)に準じる。MD方向、TD方向の平均値
(4)剛軟度の変化
上記の(3)の30℃、80RH%、7日後の変化量(mm)を測定
(5)引張強度
JIS L 1912,6,4による。MD方向、TD方向の平均値
【0021】
実施例2
平均重合度1200、平均ケン化度89モル%のPVAを使用した以外は実施例1と同一の実験を行った。結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
実施例1において、圧力ロールで脱水後、撥水処理をせずに100℃で乾燥して目付70g/m 2 のPVA不織布を製造した以外は実施例1と同一の実験を行った。
【0023】
比較例2
実施例1において、圧力ロールで脱水後、撥水処理をせずにPVA不織布を製造し、実施例1のPVAフイルムにかえて、平均重合度500、平均ケン化度88モル%、オキシエチレン(n=8)基含量1.0モル%の変性PVAを用いた以外は実施例1と同一の実験を行った。結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003946328
【0024】
【発明の効果】
本発明では廃棄処理のために、早く水に溶け、下水処理でき、薄く軽く、強度があり、吸湿で柔らかくならない医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレーが得られ、有用である。

Claims (9)

  1. 撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布又は撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系布帛に、水溶性樹脂が積層されてなることを特徴とする医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  2. 2枚以上の撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布又は撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系布帛を積層してなり、その少なくとも1枚の撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系不織布又は撥水処理された水可溶性ポリビニルアルコール系布帛に、水溶性樹脂が積層されてなることを特徴とする請求項1記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  3. 水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリアルキレンオキシドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  4. 水溶性樹脂が、ホットメルト接着性を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  5. 縮成型又は真空成型により成形されてなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  6. フッ素系撥水剤を使用して撥水処理してなることを特徴とする請求項1〜いずれか記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  7. 撥水剤を水溶性樹脂中に共存させて撥水処理してなることを特徴とする請求項記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  8. 使用後に70℃以上の熱水、又は消毒剤入りの70℃以上の熱水のいずれかで消毒溶解することを特徴とする請求項1〜いずれか記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
  9. 使用後に、100℃以上の熱水、又は消毒剤入りの100℃以上の熱水のいずれかで消毒溶解することを特徴とする請求項1〜いずれか記載の医療用又は介護用水可溶性使い捨てトレー
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