JP3944675B2 - プロペラシャフトのダイナミックダンパ構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車に用いられるプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動車のエンジンマウント構造の一例として、図8に示すものがある。図8のエンジンマウント構造は、エンジン(図示省略。図6及び図7参照)側に固定されるエンジン側ブラケット1と、エンジン側ブラケット1の一端側の筒部2に嵌挿されたマウントゴム部材3を介してエンジン側ブラケット1に支持されかつ図示しない車体側に固定される車体側ブラケット(図示省略)とからなるエンジンマウントブラケット(以下、マウントブラケットという。)4を備え、マウントブラケット4を介してエンジンを車体に支持している。エンジン側ブラケット1には、孔5が形成されており、この孔5にプロペラシャフト6が挿通されている。
【0003】
そして、エンジン(レシプロエンジン)のピストンの往復運動に伴う慣性力や燃焼室での爆発によって発生する燃焼加振力等により、クランクシャフトが捻じれ振動や曲げ振動を生じ、これが原因となってエンジンが振動すると共に、エンジンとトランスミッションを含めたパワープラント系全体の曲げ、ねじり振動も発生する。これらの振動が車体に伝わると、車体そのものが振動するだけでなく、それに伴うきしみ音、車室内のこもり音等の原因になり、乗員に対して不快感を与える。このため、前記マウントブラケット4は、エンジン側ブラケット1及び車体側ブラケットをマウントゴム部材3を介して結合し、マウントゴム部材3によって振動を吸収、減衰させるようにしている。
【0004】
また、マウントブラケット4の固有振動数がエンジンあるいはパワープラントの固有振動数に近い場合、共振現象を起こし、エンジンの振動をマウントブラケット4が増幅して伝えるため、マウントゴム部材3の効果を発揮できず振動を悪化させることがある。
そして、このようなマウントブラケット4の固有振動数が原因で生ずる振動騒音の低減対策として、この図8のエンジンマウント構造では、エンジン側ブラケット1の筒部2の外周部に、ダンパ支持体7を取付け、ダンパ支持体7にゴム体8及び鉄製部材等の質量体9からなるダイナミックダンパ10を設け、上述したマウントブラケット4の固有振動数が原因で生ずる振動騒音を、例えば図10に示すように抑制するようにしている。
この図10は、図8のエンジンマウント構造(ダイナミックダンパ10を設けている)と、ダイナミックダンパを設けていないエンジンマウント構造とを対象にして得られた振動騒音(dB)−周波数(Hz)特性を示すものであり、実線及び一点鎖線がそれぞれ図8のエンジンマウント構造(ダイナミックダンパ有り)及びダイナミックダンパを設けていないもの(ダイナミックダンパ無し)の特性である。
【0005】
なお、図8に示すエンジンマウント構造では、プロペラシャフト6をエンジン側ブラケット1の孔5に挿通するものを示したが、他の従来のエンジンマウント構造の例として、図9に示すように、エンジン側ブラケット1における自動車の上方側縁部に凹部11を形成し、この凹部11にプロペラシャフト6を配置するようにしたものもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図8に示す従来技術では、ダイナミックダンパ10を設けるため、部品数が多くなる上、ダイナミックダンパ10をマウントブラケット4に外付けしており、その分、ダイナミックダンパ10の取付けスペースの確保が必要となり、さらに重量増加を招いてしまい、上述した問題点(マウントブラケット4の固有振動数が原因で振動騒音が発生すること)の適切な改善を図れないというのが実情であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エンジンマウントブラケットの固有振動数が原因で生ずる振動騒音を抑制できるコンパクトなプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、エンジンマウントブラケットにプロペラシャフトを通す開口部を設け、該開口部に前記プロペラシャフトを回動支持するセンタベアリングを弾性部材を介して取付け、該弾性部材は前記プロペラシャフトと共にダイナミックダンパを構成することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記弾性部材はゴム製であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の構成において、前記開口部は前記エンジンマウントブラケットの縁部に形成された円弧状の切欠部であることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1または2に記載の構成において、前記開口部は前記エンジンマウントブラケットに形成された孔であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態のプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造を図1ないし図7に基づいて説明する。
【0010】
図1、図6及び図7において、自動車20の左右には、図示しないサブフレームにより結合される左側、右側フレーム21,22(車体)が配置されている。左側、右側フレーム21,22には、それぞれ第1、第2エンジンマウントブラケット(第1、第2マウントブラケット)23,24が取付けられている。第1、第2マウントブラケット23,24を介してエンジン25が左側、右側フレーム21,22に支持されている。
【0011】
エンジン25にはトランスミッション26及びトランスファ27が装着されている。トランスファ27と右側フレーム22との間には第3エンジンマウントブラケット(第3マウントブラケット)28が介装されており、トランスファ27ひいてはエンジン25を支持するようにしている。
トランスファ27と、左右前輪29,30の間に配設されたフロントディファレンシャルギア31とはフロントプロペラシャフト6A(請求項1のプロペラシャフトを構成する。)により接続されており、フロント側に駆動力を伝達するようにしている。また、左右後輪32,33の間に配設されたリヤディファレンシャルギア34とトランスミッション26の出力軸35とはリヤプロペラシャフト6Bにより接続されており、リヤ側に駆動力を伝達するようにしている。
【0012】
フロントプロペラシャフト6Aは、図2及び図4に示すセンタサポート36に支持されるシャフト本体37と、一端側がシャフト本体37にジョイント部(第1ジョイント部)38を介して結合され他端側がトランスファ27に結合される第1シャフト結合体39と、一端側がシャフト本体37にジョイント部(第2ジョイント部40)を介して結合され他端側がフロントディファレンシャルギア31側に結合される第2シャフト結合体41と、からなっている。
シャフト本体37は、図4に示すように、結合部42でナット43及びボルト44等により結合される第1、第2シャフト本体構成体45,46とを備え、第1シャフト本体構成体45が第1シャフト結合体39にジョイントされ、第2シャフト本体構成体46が第2シャフト結合体41にジョイントされている。
そして、フロントプロペラシャフト6Aは、シャフト本体37の結合部42でセンタサポート36に支持されている。また、フロントプロペラシャフト6Aは、センタサポート36以外の1または2以上の部分(図示省略)で支持されている。なお、後述するように、このセンタサポート36以外の支持位置を変更することにより、フロントプロペラシャフト6Aの分担荷重を調整することが可能である〔後述する(d)項参照〕。
【0013】
第1マウントブラケット23は、左側フレーム21に取付けられる第1車体側ブラケット部47と、第1マウントゴム部材3Aと、この第1マウントゴム部材3Aを介して第1車体側ブラケット部47に結合される第1エンジン側ブラケット部48と、からなり、第1エンジン側ブラケット部48がエンジン25側に保持されている。
第2マウントブラケット24は、図7に示すように、右側フレーム22に取付けられる第2車体側ブラケット部49と、第2マウントゴム部材3Bと、この第2マウントゴム部材3Bを介して第2車体側ブラケット部49に結合される第2エンジン側ブラケット部50とからなり、第2エンジン側ブラケット部50がエンジン25側に保持されている。
【0014】
第1エンジン側ブラケット部48における自動車20の下方(図1下側、図2下側)の側縁部には、円弧状の切欠部51(開口部)が形成されている。切欠部51には、フロントプロペラシャフト6Aを回動可能に支持するセンタサポート36が収納され、取付ボルト52により第1エンジン側ブラケット部48に取付けられている。
【0015】
センタサポート36は、第1エンジン側ブラケット部48に当接して配置される取付ブラケット53と、取付ブラケット53の両端部に重ねて取付ボルト52により第1エンジン側ブラケット部48に固定される取付用板材54と、を備えている。
取付ブラケット53は、図2及び図5に示すように、前記切欠部51の内周面に沿う形状のブラケット円弧部55と、ブラケット円弧部55の両端部から延長され、ブラケット円弧部55と共に略Ω形をなすブラケット延長部56とから構成され、ブラケット延長部56が第1エンジン側ブラケット部48の側縁部に当接されている。このブラケット延長部56に前記取付用板材54が重ねられている。そして、ブラケット円弧部55と前記取付用板材54との間に形成される空間にフロントプロペラシャフト6Aが挿通され、取付用板材54及び取付ボルト52により第1エンジン側ブラケット部48(ひいては第1マウントブラケット23)に支持されている。
【0016】
ブラケット円弧部55の内周面部には、図2及び図4に示すように、第1環状体57、略環状のゴム体(以下、環状ゴム体58という。)〔弾性体〕及び第2環状体59がこの順に配置されている。
環状ゴム体58は第2環状体59に保持される環状のゴム体内周部60と、ゴム体内周部60に比して大径で前記第1環状体57に保持される環状のゴム体外周部61と、ゴム体内周部60及びゴム体外周部61を一端側(図4左側)で接続するゴム体中央部62とから大略構成されている。
第2環状体59の内周面側にはボールベアリング(センタベアリング)63が配置されている。ボールベアリング63の外輪64は第2環状体59に保持され、内輪65はフロントプロペラシャフト6Aに保持されている。前記環状ゴム体58及びフロントプロペラシャフト6Aによりダイナミックダンパ10Aが構成されている。図2中、66はボールである。
【0017】
取付用板材54は、図2、図3及び図5に示すように、中央部に第1環状体57に沿う形状の円弧部67を有する取付用板材本体68と、取付用板材本体68の両端側(図3左右側)における長手方向に沿う両側部(図3上下側)に屈曲形成された取付用板材フランジ部69とからなっている。
【0018】
上述したように、環状ゴム体58は、フロントプロペラシャフト6Aと共にダイナミックダンパ10Aを構成するが、この実施の形態では、環状ゴム体58のばね定数K(弾性係数)またはセンタサポート36にかかる分担荷重を調整することによりダイナミックダンパ10Aの共振周波数を得、ダイナミックダンパ10Aとして機能させるようにしている。
【0019】
ここで、ダイナミックダンパ10Aの周波数(共振周波数)fは次式(1)により求められる。
【数1】
【0020】
フロントプロペラシャフト6Aの分担荷重の調整は、次の(a)、(b)、(c)または(d)〔複数を組み合わせてもよい〕によりフロントプロペラシャフト6Aの分担荷重mを変更して行う。
(a)フロントプロペラシャフト6Aの板厚の変更
(b)フロントプロペラシャフト6Aの径の変更
(c)フロントプロペラシャフト6Aのジョイント(第1ジョイント部38または第2ジョイント部40)の位置の変更
(d)フロントプロペラシャフト6Aのセンタサポート36以外の支持位置の変更
また、環状ゴム体58のばね定数Kは、環状ゴム体58の材質(ばね定数)を変更することにより調節する。
【0021】
上述したようにフロントプロペラシャフト6Aの分担荷重mまたは環状ゴム体58のばね定数Kを調整することにより、ダイナミックダンパ10Aが第1マウントブラケット23と共振するように、ダイナミックダンパ10Aの周波数(共振周波数)fを第1マウントブラケット23の固有振動数と対応する大きさに設定している。
【0022】
上述したように構成されたこの実施の形態では、エンジン25が作動し、第1マウントブラケット23の固有振動数がエンジン25あるいはパワープラントの固有振動数に近くて共振現象を起こした(すなわち、第1マウントブラケット23の固有振動数が原因で振動騒音が生じた)場合、フロントプロペラシャフト6A及び環状ゴム体58からなり、共振周波数fが第1マウントブラケット23の固有振動数と対応する大きさに設定されたダイナミックダンパ10Aが、第1マウントブラケット23の振動に共振して、第1マウントブラケット23の振動エネルギを消費して振動を抑制させる(すなわち、共振により対象となる振動系の振動を抑制するダイナミックダンパとしての機能を発揮する)。
【0023】
この実施の形態によれば、第1エンジン側ブラケット部48に切欠部51を形成し、この切欠部51に、フロントプロペラシャフト6Aを支持するために従来用いられているセンタベアリング(ボールベアリング63)を環状ゴム体58を介して設け、上述したようにダイナミックダンパとしての機能を、部品点数を必要最小限に抑えて果たすことができる。すなわち、上述した図8に示す従来技術では、質量体9等を新たに設ける必要があるが、本実施の形態ではフロントプロペラシャフト6Aを質量体として利用してダイナミックダンパ10Aを構成しているので、その分、部品点数を少なくできる。また、ダイナミックダンパ10Aの質量体として既存のフロントプロペラシャフト6Aを用いることにより、質量増加を抑えることができる。
【0024】
さらに、切欠部51にセンタベアリング(ボールベアリング63)及び環状ゴム体58を収納し、切欠部51にダイナミックダンパ10Aが収納されたものになっているので、エンジンマウントブラケットにダイナミックダンパを外付けするようにした例えば図8の従来技術に比して配置スペース上の制約が少なくなりコンパクト化を図ることができる。
【0025】
また、フロントプロペラシャフトを支持するためのセンタベアリングは、一般に車体にボルト等により固定し、これにより、この固定箇所における車体側の補強及び取付部の加工が必要になるが、本実施の形態では、ボールベアリング63(センタベアリング)はセンタサポート36に含めて切欠部51に収納され、ダイナミックダンパ10Aを構成する環状ゴム体58等と共に支持されており、ボールベアリング63(センタベアリング)を固定するための専用のボルト、センタベアリング固定のみのための取付部の補強及び加工等が不要となり、その分、構成の簡略化及び生産性の向上を図ることができる。
【0026】
上記実施の形態では、開口部が切欠部51である場合を例にしたが、開口部はセンタサポート36を挿通させる孔であってもよい。これにより取付用板材54及び取付ボルト52を設けなくて済み、これにより部品数削減をさらに進めることができる。
また、上記実施の形態では、弾性部材がゴム製(環状ゴム体58)である場合を例にしたが、弾性部材を、ゴム以外の他の部材で構成してもよい。
【0027】
なお、本実施の形態では自動車20が4輪駆動車である場合を例にしたが、本発明はこれに限るものではない。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、エンジンマウントブラケットにプロペラシャフトを通す開口部を設け、該開口部に前記プロペラシャフトを回動支持するセンタベアリングを弾性部材を介して取付け、該弾性部材は前記プロペラシャフトと共にダイナミックダンパを構成しており、フロントプロペラシャフトがダイナミックダンパの質量体として兼用されるので、その分、従来技術に比して部品点数が少なくなりかつ重量を低減できる。
【0029】
また、エンジンマウントブラケットに形成した開口部にダイナミックダンパの一部を構成する弾性部材が収納されるので、ダイナミックダンパをエンジンマウントブラケットに外付けする従来技術に比して配置スペース上の制約が少なくなりコンパクト化を図ることができる。
さらに、センタベアリングの固定をダイナミックダンパ固定と共に行って兼用化することが可能であり、これにより、従来、センタベアリング固定等のために専用に(別個に)必要とされたボルト(固定手段)、取付部の加工及び補強が不要となり、その分、構成の簡略化及び生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造を示す斜視図である。
【図2】図1のダイナミックダンパ構造の断面図である。
【図3】図1のダイナミックダンパ構造の下面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1のダイナミックダンパ構造を模式的に示す側面図である。
【図6】図1のダイナミックダンパ構造を模式的に示す断面図である。
【図7】図1のダイナミックダンパ構造を用いた自動車を模式的に示す平面図である。
【図8】自動車のエンジンマウント構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【図9】他のエンジンマウント構造を模式的に示す図である。
【図10】ダイナミックダンパが有る場合と、無い場合の周波数−振動騒音特性を示す図である。
【符号の説明】
6A フロントプロペラシャフト(プロペラシャフト)
10A ダイナミックダンパ
23 第1マウントブラケット
36 センタサポート
51 切欠部(開口部)
58 環状ゴム体
63 ボールベアリング(センタベアリング)
Claims (4)
- エンジンマウントブラケットにプロペラシャフトを通す開口部を設け、該開口部に前記プロペラシャフトを回動支持するセンタベアリングを弾性部材を介して取付け、該弾性部材は前記プロペラシャフトと共にダイナミックダンパを構成することを特徴とするプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造。
- 前記弾性部材はゴム製であることを特徴とする請求項1に記載のプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造。
- 前記開口部は前記エンジンマウントブラケットの縁部に形成された円弧状の切欠部であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造。
- 前記開口部は前記エンジンマウントブラケットに形成された孔であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロペラシャフトのダイナミックダンパ構造。
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