JP3944663B2 - 熱線遮蔽板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、公共施設、工場等の採光用屋根材、カーポート、アーケード、車両の窓材等可視光線透過性は必要であるが、直射日光による温度上昇は抑えたい、つまり可視光線透過性と熱線遮蔽性を必要とする用途に適した熱線遮蔽板に関する。
【0002】
【従来の技術】
公共施設、工場等の採光用屋根材、カーポート、アーケード等には、従来ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル等の透明性合成樹脂からなる平板、波板、折板などが用いられている。これら採光材には無色透明のものや着色剤によりブラウンスモークやブルースモーク色としたもの、あるいは乳白状半透明としたものなどがある。しかし、上記採光材は採光性は良いが、直射日光にさらされることにより、内部の温度が上昇したり、中にいる人に厚さを感じさせたり、中の物が熱と紫外線によって変形あるいは劣化したりするなどの問題があった。そこで、近年、近赤外線吸収剤を添加する方法(特開平6−240146号公報等)やアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを接着剤で貼り付ける方法(特開平3−264354号公報等)、酸化チタンを被覆した雲母を添加する方法(特開平2−173060号公報等)、直射日光中の熱線を遮蔽する種々の方法が提案されている。
【0003】
しかし、有機系近赤外線吸収剤を添加する方法は、透明感のあるものが得られるが、近赤外線吸収剤そのものの耐熱性や耐久性が不足しており、価格も高く、また、熱線を熱に変化させるため、熱線遮蔽効果の高いものほど得られた採光材自身が非常に熱くなるという問題がある。また、アルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを接着剤で貼り付ける方法は、透明感があり、熱線遮蔽効果も高いが、基板と貼り合わせたフィルムの界面で発泡や剥離が発生したり、波形状や折板形状への加工が困難であり、また価格が高いという問題がある。一方、酸化チタン被覆雲母を添加する方法では半透明でかつ真珠光沢を呈するものとなり、車両の窓等透明性を必要とする用途には適さない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における上記記載の課題を解決し、光線透過率が高く、透明感があり、かつ熱線遮蔽効果に優れた熱線遮蔽板を安価に提供することにある。
【0005】
本発明者らは、特願平9−4557号公報において、アルミは熱線の吸収能は非常に少ないが極めて良好な熱線反射能を有しており、その粉末の粒径を選択し、かつ樹脂中に適宜な量を配置することにより直射日光中の熱線を効果的に反射させる性能をもたせることが可能となることを見い出した。しかし、この熱線遮蔽板は、アルミ粒子によるギラつきがあり外観を損なうため、用途が限定されるという欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、透明性を有する合成樹脂に、鱗片形状をしたアルミ片を少量分散させた組成物よりなる成形板の片面または両面に着色透明合成樹脂層を設けることによって、着色層を設けた面のメタリック感が低減され、かつ光線透過率が高く、透明感があり、熱線遮蔽効果に優れた熱線遮蔽板が得られることを見い出し、本発明に到達した。
【0007】
【発明の実施の形態】
即ち、本発明は、透明性を有する合成樹脂100重量部に対して、平均直径が1〜50μm、厚さが平均直径の1/200〜1/10の範囲の鱗片形状をしたアルミ片を0.001〜0.05重量部添加した組成物よりなる成形板の片面または両面に厚み30〜300μmで可視光線透過率が20〜80%の着色透明合成樹脂層を設けた熱線遮蔽板である。更に、本発明は、着色透明合成樹脂層中に紫外線吸収剤を1〜10重量%添加されてなる熱線遮蔽板である。
【0008】
本発明に使用される透明性を有する合成樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂等の透明性を有する樹脂が用いられる。その中でも、透明性が高く、耐候性が良好なため、一般に建材として使用されているポリカーボネート樹脂およびアクリル系樹脂が好適に用いられる。
【0009】
本発明に好ましく用いられるポリカーボネート樹脂は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンや2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジハロゲノフェニル)アルカンで代表されるビスフェノール化合物から周知の方法で製造された重合体が用いられ、その重合体骨格中に脂肪酸ジオールに由来する構造単位が含まれていても、エステル結合を持つ構造単位が含まれていてもよい。分子量についても特に限定はしないが、押出成形性や機械的強度の観点から、粘度平均分子量で2万〜3万のものが好ましい。
【0010】
本発明に好ましく用いられるアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを50%以上含む重合性不飽和単量体のコポリマーである。これらのポリマーの分子量は特に限定しないが、生産性の点で溶融押出成形が可能な範囲であることが好ましく、重量平均分子量で8万〜17万のものが好ましい。かかるアクリル系樹脂は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等公知の方法で行うことができ、重合に際して分子量調節剤、触媒等は必要に応じて適宜使用される。
【0011】
更に、上記ポリカーボネート樹脂およびアクリル系樹脂中には、現在市販されているベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、サリシレート系、トリアリールトリアジン系等の有機系紫外線吸収剤あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等無機系紫外線吸収剤を添加してもよく、また、他の光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、熱線遮蔽剤、難燃剤、滑剤、顔料、フィラー等を含むものであってもよい。
【0012】
本発明で使用するアルミ片の具体的な形状は鱗片形状が好適であり、平均直径は1〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。鱗片形状アルミ片の厚さは、平均直径の1/200〜1/10の範囲のものが好ましい。粒径が細かくなるほど遮蔽効果が高くなる傾向があるが、あまり細かくなりすぎるとほんのわずかな添加量の変化で遮蔽効果が変化するため製造上好ましくない。一方、粒径が大きくなると多量に添加しなければ必要とする遮蔽効果が出ず、コストアップや物性低下につながり、また鱗片を散りばめたようなぎらついた外観となり好ましくない。
【0013】
また、上記アルミ片の添加量は、使用するアルミ片の形状および基材の厚みにより異なるが、可視光線透過率が20〜80%となるように適宜選択すれば良く、具体的には透明性合成樹脂100重量部に対して0.001〜0.050重量部の範囲が好ましい。可視光線透過率が20%未満では満足な明るさが得られず、80%を超えると満足のいく熱線遮蔽効果が得られない。
【0014】
本発明のの着色透明合成樹脂層は、厚みが30〜300μmであることが好ましい。着色透明合成樹脂層の厚みが30μm以下では着色剤を多量に添加しなければならず、またわずかな厚みの変化で光線透過率が変化し、多層化の際のコントロールが困難となる。一方、着色透明合成樹脂層の厚みを300μm以上としても全光線透過率をある程度高く保つには着色剤の濃度を少なくしなければならないためメタリック感を低減させる効果は向上しない。着色透明合成樹脂層に使用する樹脂としてはポリカーボネート樹脂やアクリル系樹脂が好適であり、その樹脂中に顔料や染料等を添加することにより得られる。着色透明合成樹脂層の可視光線透過率は、一般に20〜80%が良く、更に30〜70%の範囲が特に好ましい。可視光線透過率が80%を超えるとメタリック感の低減させる効果に乏しく、また20%未満になると熱線遮蔽板そのものも光線透過率が低くなりすぎるため好ましくない。
【0015】
本発明における積層方法としては、特に制限はない。例えば、熱線遮蔽層及び着色透明層の原料樹脂を同時に溶融押出して成形する共押出法や熱線遮蔽層をシート状に押出成形する際に同時に着色樹脂合成樹脂層を溶融押出してラミネートする方法、予めフィルム状に成形された着色透明層を熱線遮蔽層の押出成型時に連続的に熱ラミネートする方法、シート状あるいはフィルム状に成形された熱線遮蔽層及び透光性樹脂層を熱プレス機にて熱圧着する方法等が用いられる。
【0016】
本発明の着色透明合成樹脂層に使用する紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系、トリアリールトリアジン系、金属酸化物等紫外線吸収効果を有するものであれば良いが、好ましくは280〜300nmの領域の紫外線吸収能が高く、揮散性の低いものが良い。
尚、該熱線遮蔽板の形状には格別の制限はなく、最も一般的な平板状やフィルム状、波板状、あるいは折板状等様々な形状のものが包含される。
【0017】
【実施例】
次に実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
尚、本実施例で用いた評価、試験方法を以下に示す。
【0018】
(1)熱線遮蔽効果
第1図に示す測定装置を用いて以下の要領で行った。即ち、熱がこもらないように側壁に通気孔を有するボックス1の上壁開口部2を覆うように試験片3を置き、その上方約35cmに125Wの赤外線ランプ4によって試験片3を照明し、試験片3から16cmの間隔をあけてボックス内に設置された熱吸収板(両面黒色の鉄板)5によって試験片3を透過した熱線を吸収させ、この熱吸収板の温度を熱電対6によって経時的に測定し、温度が変化しない平衡点を求めたものである。
【0019】
(2)光線透過率
日本電色工業のヘーズメーターにて試験片の全光線透過率(%)、曇価(%)を測定した。
【0020】
(3)可視光反射率、日射反射率、日射透過率
島津製作所の分光光度計にて可視光領域(340〜800nm)、及び近赤外領域(800〜1800nm)での反射率および透過率を測定した。
【0021】
(4)外観
試験片を目の前に置き、蛍光灯の光を斜めに当てて、メタリック感の有無を目視にて確認した。
【0022】
(5)促進耐候性
スガ試験機のサンシャインウエザオメーターを使用し、ブラックパネル温度63℃、降雨なし(120分)、降雨あり(18分)のサイクルで2000時間照射後のサンプルの黄変度を測定した。
【0023】
実施例1
(1)熱線遮蔽剤添加組成物の調製
ポリカーボネート樹脂としてユーピロンE−2000(商品名、三菱ガス化学社製)100重量部に、鱗片状アルミ片としてSS−7000AR(商品名、ミネラルスピリット36重量%含有アルミペースト、平均直径9.6μm、平均厚さ0.1μm、シルバーライン社製)を0.014重量部(純アルミ分として0.009重量部)の割合でタンブラー内にて予備混合し、更に45mmの2軸押出機(池貝鉄工所社製)を用いてペレットとした。
(2)着色透明層用樹脂の調製
ポリカーボネート樹脂として赤色のユーピロンE−2000(MEP No.147A)100重量部に、カーボンブラック0.22重量部、および紫外線吸収剤としてサイアソーブUV1164(商品名、サイテック社製)を2.3重量部の割合でタンブラー内て予備混合し、更に45mmの2軸押出機(池貝鉄工所社製)を用いてペレットとした。
(3)熱線遮蔽板の作製と評価
熱線遮蔽添加組成物として(1)で調製した樹脂を用い、また表層用樹脂として、(2)で調製した樹脂を用いて、共押出法でPC積層シートを作製した。
即ち、熱線遮蔽添加組成物を65mmの単軸押出機(日立造船産業社製)を用いて押出し、一方、着色透明層用樹脂は32mmの単軸押出機(プラスチック工学研究所製)を用いて押出し、フィードブロックタイプのダイを用いて板厚2.0mm、表層厚み150μmの2種2層の積層シートを試作した。得られたシートの着色透明層側のメタリック感がかなり低減され、通常のスモークシートと同等の外観であった。得られたシートの評価結果を表1に示した。また、サンシャインウエザオメーターによる促進耐候性評価結果を表2に示した。
【0024】
実施例2
アクリル系樹脂としてエスチレンMS600(商品名、メタクリル酸メチル/スチレン=6/4共重合樹脂、新日鉄化学社製)100重量部に、鱗片状アルミ片としてSS−7000AR(実施例1と同じ)を0.0113重量部(純アルミ分として0.0072重量部)の割合で添加した基材表面に着色透明層としてグレースモーク色のメタクリル酸メチル/スチレン=6/4共重合樹脂シートのアクリエースMS−056HP−2(商品名、日本アクリエース社製)用10倍マスターペレット75重量部を、エスチレンMS600(商品名)25重量部で希釈したものにて積層し、板厚2.0mm、表層厚み100μmの2種2層シートとした以外は実施例1と同様に実施した。評価結果を表1に示した。また、得られたシートの着色透明層側及び鱗片状アルミ添加層側の分光光線反射率曲線を図2に示したが、反射光、特に可視光領域の反射光が低減されているのが分かる。
【0025】
比較例1
ユーピロンE−2000を100重量部に対して鱗片状アルミ片としてSS−7000AR(実施例1に同じ)を0.014重量部(純アルミ分として0.0090重量部)添加し、65mm単軸のシート押出機にて板厚2.0mmの単層のシートとした。
【0026】
比較例2
ブロンズ色のユーピロンE−2000(MEP No.693C)を100重量部に対して鱗片状アルミ片SS−7000AR(実施例1に同じ)を0.0070重量部(純アルミ分として0.0045重量部)添加し、65mm単軸のシート押出機にて板厚2.0mmの単層のシートとした。
【0027】
比較例3
アルミ片無添加のポリカーボネートシートとしてブロンズ色のユーピロンNF2000U MEP No.693C(商品名、板厚2.0mm、三菱ガス化学社製)を用いて、熱線遮蔽効果を測定した。性能評価結果を表1に示した。
【0028】
比較例4
アルミ片無添加のアクリル系シートとしてグレースモーク色のアクリエースMS−056HP(商品名、メタクリル酸メチル/スチレン=6/4、板厚2.0mm、日本アクリエース社製)を用いて、熱線遮蔽効果を測定した。性能評価結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】
本発明により、通常のスモークシートと違和感が無く、かつ透視性及び熱線遮蔽効果の優れたものを安価に得ることができるため、公共施設、工場等の採光用屋根材、カーポート、アーケードのみならず、採光用窓、サンルーフ、車両の窓等透視性を必要とする用途にも使用可能な熱線遮蔽採光板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得た熱線遮蔽試験片の着色透明層側及び鱗片状アルミ添加層側の分光光線反射率曲線である。
【図2】実施例で得た熱線遮蔽試験片の熱線遮蔽効果の測定に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
1.ボックス
2.上壁開口部
3.試験片
4.125W赤外線ランプ
5.熱吸収板
6.熱電対
7.記録計
Claims (4)
- 透明性を有する合成樹脂100重量部に対して、平均直径が1〜50μm、厚さが平均直径の1/200〜1/10の範囲の鱗片形状をしたアルミ片を0.001〜0.05重量部添加した組成物よりなる成形物の片面又は両面に厚み30〜300μmの着色透明合成樹脂層を設けることを特徴とする熱線遮蔽板。
- 着色透明合成樹脂層の可視光線透過率が20〜80%である請求項1に記載の熱線遮蔽板。
- 着色透明合成樹脂層中に紫外線吸収剤を1〜10重量%添加されてなる請求項1または2に記載の熱線遮蔽板。
- 透明性を有する合成樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはアクリル系樹脂である請求項1ないし3に記載の熱線遮蔽板。
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