JP3944550B2 - 防護柵 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、山腹の傾斜面部等に構築し、積雪や落石等を受け止めて道路等への落下、流入することを防止する防護柵に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、特開平7−197423号公報には、山腹の斜面部に間隔を置いて縦孔を穿孔し、この縦孔に建て込んだパイプ支柱を並設すると共に、これら各パイプ支柱に複数段のケーブルとともに金網を張設した落石等の防護柵が提案され、防護面には金網が用いられている。
【0003】
また、防護面に用いる網に係り、特開2000−273827号公報には、防護ネットは鋼製又はワイヤー等の剛性線材を並行に取り付けたものや、剛性線材でネット上に編成したもの、複数の水平ロープ材と金網を組み合わせたもの等、公知の各種ネットを含むものである(公報第0011段)と記載されている。
【0004】
上記従来技術のように、この種の網を用いる防護体では、ワイヤーロープや鋼製の網を組み合わせることにより、落石等から道路などを防護するようにしている。
【0005】
しかし、鋼製のワイヤーロープや網を用いるものでは、部材自身が重量物となるため、据付用の重機が必要となり、施工範囲に制約を受け、工期の長期化し、工費が嵩む問題がある。そして、落石防護のために設けられる防護体は重機の使用に不向きな山の斜面などに設けられることが多いため、このような山の斜面に防護体を設ける施工では、部材が重量物であると、その搬入作業も煩雑となり、施工性に劣る問題がある。
【0006】
また、従来の防護柵では、網に落石を受けると、該網が変形して落石のエネルギーを吸収し、同時に網から支柱に落石のエネルギーが加わり、最終的に曲げモーメントを受けた支柱が変形してエネルギーを吸収する。そして、従来の鋼製の網を用いる防護柵では、網を構成する線材は引張強度に優れるから、落石エネルギーの大きな場合に有効である。しかし、このように大きな落石エネルギーを受ける防護柵では、支柱及びこれを立設する基礎も大型なものが必要となる。
【0007】
そして、防護柵が落石を受けてから該落石が停止するまでの衝撃吸収時間を長くできれば、落石エネルギーの吸収効果を高めることができる。そこで、防護柵の分野とは異なるが、実開平2−37920号公報の屈倒式仕切用ポールには、ばね材などの屈曲体をポールの下部に設け、ポールを屈倒可能としたものであり、防護柵の支柱を前記ポールのように屈倒可能とすれば、落石を受けてから支柱が倒れる時間だけ、前記衝撃吸収時間を長くすることができ、落石エネルギー吸収効果が向上する。
【0008】
しかし、従来の防護柵において、支柱を屈倒可能にすると、斜面などに支柱を斜めに設置する場合、自重で支柱が谷側に傾いたり、谷からの風を受けると山側に揺動したりする不具合が予想され、また、単に支柱を傾動可能にしても、未だ十分な吸収効果を得ることができない。
【0009】
本発明は、施工性に優れ、工法簡易にして低価格での施工を可能とし、落石等のエネルギー吸収効果に優れた防護柵を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、支柱間に合成樹脂からなる網を張設し、設置場所に取付部材を設け、この取付部材に前記支柱の下部を回動可能に連結して該支柱を傾動可能に立設した防護柵において、前記支柱の上部と該支柱山側の地山との間に控えロープ装置を設け、この控えロープ装置のロープ材に余長部を設けると共に、この余長部を摺動可能に把持する緩衝具を設け、前記支柱の前下部に傾動連結部を一体に突出し、この傾動連結部を前記取付部材の連結受部に回動可能に連結して該支柱を傾動可能に立設し、前記支柱の谷側の傾動位置を位置決め決めする他側位置決め手段は、前記取付部材と、この取付部材に当接する前記支柱の下端とを備え、前記支柱の山側の傾動位置を位置決めする一側位置決め手段は、前記連結受部に設けた調整用プレートと、この調整用プレートに前後位置を調整できるように挿通され前記支柱に頭部が当接することにより該支柱の山側回動範囲を規制する調整ボルトとを備えるものである。
【0011】
この請求項1の構成によれば、合成樹脂からなる網は鋼製などの網に比べ、変形し易く、切断までの伸び率が大きいから、落石を受けると、網が谷側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網から支柱に所定以上の力が加わると、緩衝具に対して余長部が摺動して支柱が谷側に傾動する。このように落石を受けると、網が谷側に変形すると共に伸び、さらに、支柱が谷側に傾動することにより、落石を受けてから網が変形移動する量及び時間が大となり、衝撃吸収能力が効果的に向上する。
【0012】
また、支柱が谷側に傾動する際、緩衝具に対して控えロープの余長部が摺動することにより、落石エネルギーの一部を吸収できる。
【0013】
そして、網を合成樹脂とすることにより軽量となり、施工運搬において、クレーンなどの大型重機が不要となり、地形的に施工に制約を受ける場所にも防護柵を設置することができる。また、合成樹脂製の網は柔軟性を有するから、搬入時にも巻く等することにより、コンパクトにでき、同時に現場での作業性も良好となる。
【0014】
【0015】
また、落石を受けると、網が谷側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網から支柱に所定以上の力が加わると、緩衝具に対して余長部が摺動して支柱が谷側に傾動し、この谷側の傾動は他側位置決め手段により位置決めされる位置まで行われた後、支柱が止まり、この後、静止した支柱の強度及び網が更に谷側に伸び変形することより落石のエネルギーを効果的に吸収することができる。
【0016】
【0017】
また、取付部材に支柱を取り付け、支柱が谷側に所定量だけ傾動すると、支柱の下端が取付部材に当接し、支柱の傾動が規制される。
特に、支柱の一側位置決め手段を備えるから、控えロープと合わせて、傾動可能な支柱を安定的に立設することができ、風などにより支柱を山側に倒そうとする力が加わっても支柱が揺動することがなく、また、控えロープ装置のロープ材にテンションをかけた状態で設置することができる。
【0018】
また、請求項2の発明は、前記緩衝具には、ロープ材を所定の摩擦力で把持する把持具を複数設けたものである。
【0019】
この請求項2の構成によれば、把持具を複数設けることにより、ロープ材の摩擦摺動による衝撃吸収効果を高めることができる。特に、共通の把持具を用意し、その数を調整することにより、所望の衝撃吸収効果が得られるから、把持具を汎用品として使用することができる。
【0020】
また、請求項3の発明は、前記網が無結節網である。
【0021】
この請求項3の構成によれば、網を構成する線材は、交差部において結ばれずに真っ直ぐに形成されているため、網に力が加わると、その力が網全体に分散するため、高い衝撃吸収機能が得られる。また、結節がないから、その分軽量となり、重ねたり、折ったり、巻いたりした際、コンパクトになる。
【0022】
そして、結節網では、線材を交差部で結ぶ際に交差部の線材に引張力が集中するからその部分が弱く成り易いが、無結節網ではこのような問題がなく、高い衝撃吸収機能が得られる。
【0023】
【0024】
【0025】
【発明の実施形態】
以下、本発明の防護体の第1実施形態について図1〜図19を参照して説明する。同図に示すように、防護柵1は、両側に配置した端末支柱2L,2Rの間に、複数の中間支柱3,3を並設し、これら支柱2L,3,3,2R間に網11を設ける。尚、防護柵1の一側は一例として山側Yである。
【0026】
まず、図6〜図8により網11の構成について説明すると、前記網11は合成樹脂からなる貫通型無結筋網であり、例えば合成樹脂製の繊維糸12,12Aを複数撚り合わせて線材13,13Aを形成し、これら線材13,13Aは交差方向をなし、交差部14により無結筋により相互に固定されている。尚、無結節網にはラッセル式もあるが、好ましくは貫通型を用いる。図6は構造を説明する説明図であり、同図に示すように、線材13,13Aの交差部14において、一方の線材13の繊維糸12,12の間に隙間により形成する輪部15に、他方の線材13Aの繊維糸12A,12Aを前後逆方向から挿通し、さらに、交差部14においても繊維糸12,12Aを撚って輪部15,15Aを閉めることにより、両線材13,13Aを交差部14で固定する。尚、15Aは交差部14で前記繊維糸12A,12Aの間に隙間により形成する輪部である。そして、図6は説明のために輪部15,15Aを開いて図示したが、実際の網11では、前記輪部15,15Aは閉じられた構造となる。
【0027】
また、網11は略長方形状をなし、網11の縁にはロープ材16が設けられ、このロープ材16の四方には金属製の環体17を設けている。また、図7及び図8に示すように、前記ロープ材16において線材13,13Aの端部側を折り返し、線材13,13Aの重複部分18で線材13,13A相互を固定し、表裏の線材13,13Aの間にロープ材16を配置する。
【0028】
また、網11に用いる合成樹脂としては、高密度のポリエチレンなどが好適であり、その高密度のポリエチレンを用いた場合、網11の比重は0.94〜0.96である。また、必要に応じて、網11にカーボンブラックや紫外線吸収剤を使用して耐候性を向上することができる。
【0029】
次に、前記支柱2L,2R,3とその取付構造の詳細について説明する。図9及び図10などに示すように、支柱2L,2R,3のH形鋼からなる本体21はフランジ部21F,21Fを前後に有し、その本体21の前下部に傾動連結部22を一体に突出し、その本体21の後の上下にそれぞれ網係止部23,23を設ける。そして、これら網係止部23,23に前記ロープ材16などを係止する。また、両側の支柱2L,2Rは、その支柱3側の上下に横ロープ連結部24を設け、中間の支柱3は左右両側にそれぞれ横ロープ材連結部24を設ける。
【0030】
さらに、支柱2L,2R,3の前上部に、一側控えロープ用の一側連結部25を設け、また、左側の支柱2Lはその防護柵外側(右側)に外側控えロープ用の外側連結部26を設け、右側の支柱2Rはその防護柵外側(左側)に外側控えロープ用の外側連結部26を設けている。尚、それら係止部23及び連結部24,25,26は板材に孔を有するものである。
【0031】
また、前記本体21には、フランジ部21F,21Fの端部同士を連結する補強連結板27が上下に間隔をおいて複数設けられている。
【0032】
斜面101などの設置場所に、支柱の取付部材31を設ける。図11〜図14に示すように、前記取付部材31は金属などからなり、ベース部32と、支柱2L,2R,3を回動可能に連結する連結受部33とを一体に有する。この連結受部33は、間隔を置いて一対の腕部34,34を前記ベース部32に立設し、それら腕部34,34の下部間に、支柱2L,2R,3の前記傾動連結部22を挿入すると共に、この傾動連結部22の孔22Aと両腕部34,34の孔34A,34Aとに、枢軸たるボルト36を挿通し、これにより取付部材31に前記傾動連結部22を回動可能に連結する。尚、図中37は、前記腕部34と前記傾動連結部22との間に配置された調整用リングであり、合成樹脂などで摩擦係数の小さい部材より構成され、前記ボルト36が挿通されている。前記ベース部32は複数のアンカーたるロックボルト38により斜面101などの設置面に固定される。また、設置面とベース部38と間には緩衝パッド39を設ける。
【0033】
また、連結受部33の上部には、前記支柱2L,2R,3の山側傾動位置を位置決めする一側位置決め手段41が設けられている。この一側位置決め手段41は、前記腕部34,34の前側に略コ時形の受部42を形成し、この受部42に着脱可能に設ける調整用プレート43を備え、この調整用プレート43は前記受部42に着脱可能な上下高さを有し、その下縁に腕部34,34の上部外面に外嵌する嵌合溝44を有し、この嵌合溝44が両側腕部34,34に外嵌することにより調整用プレート43が左右に位置決めされる。その調整用プレート43に調整用ボルト45を挿通し、挿通した前後で調整用ボルト45にナット46,46を螺合すると共に、これらナット46,46により調整用プレート43を挟着する。尚、それらナット46,46は前記腕部34,34間に挿入可能な大きさを有する。そして、ナット46,46の螺合位置を調整することにより、調整用ボルト45の頭部45Aの前後位置を調節することができ、頭部45Aに前記フランジ部21Fが当たることにより支柱2L,3,2Rの山側回動範囲が規制される。
【0034】
また、前記連結受部33には前記ボルト36位置と離れた位置に、前記支柱2L,3,2Rの回転を防止する仮止め手段47を設けている。この仮止め手段47は、前記腕部34,34に穿設した孔34B,34Bと、前記傾動連結部22に穿設した孔22Bと、これら孔34B,34B,22Bに着脱可能に挿入する仮止めピン48とからなる。そして、この例では、仮止め手段47により支柱2L,2R,3をベース部32に対して所定角度位置に位置決めできるようになっている。
【0035】
また、前記支柱の谷側の傾動範囲を規制して位置決めする他側位置決め手段が設けられ、この他側位置決め手段49は、前記支柱2L,3,2Rの当接部たる下端50と、前記取付部材31とにより構成され、前記下端49を斜めに形成し、ベース部32に対して垂直位置から支柱2L,3,2Kが所定角度であるθ=25度谷側に回動すると、前記下端下端49が前記ベース部32に当接することにより谷側への傾動位置を位置決めしている。
【0036】
隣合う支柱2L,3,3,2Rの間の上,下段には横ロープ材51,51が張設され、これら横ロープ材51,51に図示しない結束具により網11が取り付けられている。前記横ロープ材51は一方と他方のロープ材51A,51Bよりなり、一方のロープ材51Aを調整張り具たるターンバックル52により一方の支柱2L,3,3の前記連結部24に連結し、他方のロープ材51Bを隣合う他方の支柱3,3,2Rの前記連結部24に連結し、支柱2L,3,3,2R間で両ロープ材51A,51Bの端部を重ね合わせて重複部53を形成し、この重複部53において、両ロープ材51A,51Bを締め具たるワイヤクリップ54により所定の摩擦力で締め付けている。尚、下段の横ロープ材51では、ロープ材51Bにターンバックル52が用いられている。また、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部は、太さの等しい切断端となっている。
【0037】
したがって、横ロープ材51に所定以上の引張力が加わると、ワイヤクリップ54の締付力に抗してロープ材51A,51Bが離れる方向に摩擦摺動する。また、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部は、太さの等しい切断端となっているから、端部がワイヤークリップ54に係止することなく抜け出し、この後の横ロープ材51から拘束されることなく網11が変形可能となり、合成樹脂製の網11の特性を生かすことができる。
【0038】
前記支柱2L,3,3,2Rの前上部の一側連結部25と、防護柵の一側である前側の地山との間には、控えロープ装置61を設ける。この控えロープ装置61は、ロープ材62とこのロープ材62の余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63とを備える。
【0039】
この緩衝具63は、その緩衝具63は、図15〜図19に示すように、前記ロープ材62を所定の摩擦力で把持する一対の把持体64,64を備え、これら把持体64,64の合せ面に、ロープ材62に嵌合する嵌合溝65を形成し、両把持体64,64をボルトナットなどの締付手段66により締め付け固定する。相互に固定された把持体64,64の側面には、Uボルト67が係合する係合溝68,68が形成され、この係合溝68,68にUボルト67の両端部67T,67Tが係合する。また、Uボルト67の両端部67T,67Tを挿通するプレート69を備え、このプレート69にはロープ材62の余長部62A側を遊挿する溝部70が形成されている。そして、Uボルト67の途中を前記一側連結部25に挿通連結し、その両端部67T,67T間に、ロープ材62を締め付けた把持体64,64を嵌め入れ、さらに、端部67T,67Tを押さえ板69に挿通し、端部67T,67Tにナット71を螺合する。そして、前記一対の把持体64,64により、ロープ材62を所定の摩擦力で把持する把持具72を構成し、また、図1及び図19に示すように、控えロープ装置61の緩衝具63は、前記2つの把持具72を並べて設けている。このようにUボルト67に複数の把持具72を並べて設けることができ、また、さらに、Uボルト67を長くすれば3個以上の把持具72を並べて設けることもできる。
【0040】
また、前記ロープ材62の反余長部側はアンカーたるロックボルト73により地山に固定される。
【0041】
端部支柱2L,2Rの外側連結部26には、控えロープ装置61A,61Bが設けられ、これら控えロープ装置61A,61Bは把持具72を用いている点と、張設方向が異なる以外は、前記控えロープ装置61と同一構成であり、前記控えロープ装置61Aは、防護柵の左右方向に対して平面約30度の角度をなし、すなわちその反余長部が山側に位置し、前記控えロープ装置61Bは、防護柵の左右方向に対して平面略5度の角度をなし、すなわちその反余長部が谷側に位置し、これらにより支柱2L,2Rを防護柵内側に倒す方向の力に対向している。
【0042】
そして、防護柵1の施工においては、斜面101にロックボルト38により取付部材31を固定し、支柱2L,3,2Rを仮止め手段47により仮固定した状態で、控えロープ装置61を固定する。調整用ボルト45は施工前に支柱2L,3,2Rの角度に合わせて予め調整しておき、また、必要に応じて現場で調整し、支柱2L,3,2Rが調整用ボルト45に当接することで支柱2L,3,2Rの向きを設定できる。尚、仮止め手段47は、その仮止めが不要になった後に仮止めピン48を抜いて仮固定を解除する。
【0043】
このように本実施形態では、請求項1に対応して、支柱2L,3,3,2R間に合成樹脂からなる網11を張設し、設置場所に取付部材31を設け、この取付部材31の連結受部33に支柱2L,3,3,2Rの下部を回動可能に連結して支柱2L,3,3,2Rを傾動可能に立設した防護柵1において、支柱2L,3,3,2Rの上部と該支柱2L,3,3,2Rの山側の地山である斜面101との間に控えロープ装置61を設け、この控えロープ装置61のロープ材62に余長部62Aを設けると共に、この余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63を設け、支柱2L,3,3,2Rの前下部に傾動連結部22を一体に突出し、この傾動連結部22を取付部材31の連結受部33に回動可能に連結して支柱2L,3,3,2Rを傾動可能に立設し、支柱2L,3,3,2Rの谷側の傾動位置を位置決め決めする他側位置決め手段49は、取付部材31と、この取付部材31に当接する支柱2L,3,3,2Rの下端50とを備え、支柱2L,3,3,2Rの山側Yの傾動位置を位置決めする一側位置決め手段41は、連結受部33に設けた調整用プレート43と、この調整用プレート43に前後位置を調整できるように挿通され支柱2L,3,3,2Rに頭部45Aが当接することにより該支柱2L,3,3,2Rの山側回動範囲を規制する調整ボルト45とを備えるから、合成樹脂からなる網11は鋼製などの網に比べ、切断までの伸び率が大きいから、落石を受けると、網11が谷側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網11から支柱2L,3,3,2Rに所定以上の力が加わると、緩衝具63に対して余長部62Aが摺動して支柱2L,3,3,2Rが谷側に傾動する。このように落石を受けると、網11が谷側に変形すると共に伸び、さらに、支柱2L,3,3,2Rが谷側に傾動することにより、落石を受けてから網11が変形移動する量及び時間が大となり、衝撃吸収能力が効果的に向上する。
【0044】
また、支柱2L,3,3,2Rが谷側に傾動する際、緩衝具63に対して控えロープ62の余長部62Aが摺動することにより、落石エネルギーの一部を吸収できる。
【0045】
そして、網11を合成樹脂とすることにより軽量となり、施工運搬において、クレーンなどの大型重機が不要となり、地形的に施工に制約を受ける場所にも防護柵1を設置することができる。また、合成樹脂製の網11は柔軟性を有するから、搬入時にも巻く等することにより、コンパクトにでき、同時に現場での作業性も良好となる。
【0046】
また、支柱2L,3,3,2R谷側の傾動位置を位置決め決めする他側位置決め手段49を備えるから、落石を受けると、網11が谷側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網11から支柱2L,3,3,2Rに所定以上の力が加わると、緩衝具63に対して余長部62Aが摺動して支柱2L,3,3,2Rが谷側に傾動し、この谷側の傾動は他側位置決め手段49により位置決めされる位置まで行われた後、支柱が止まり、この後、静止した支柱2L,3,3,2Rの強度及び網11が更に谷側に伸び変形することより落石のエネルギーを効果的に吸収することができる。したがって従来のように単に支柱が倒れるだけでなく、所定角度倒れた後、支柱が剛的に落石のエネルギーを受けるから、高い衝撃吸収効果が得られる。
【0047】
また、他側位置決め手段49は、地山に固定した支柱用取付部材31と、支柱2L,3,3,2Rに設けられ取付部材31に当接する当接部たる下端50とを備えるから、取付部材に支柱を取り付け、支柱が谷側に所定量だけ傾動すると、下端50が取付部材31に当接し、支柱2L,3,3,2Rの傾動を規制することができる。
また、支柱2L,3,3,2Rの山側の傾動位置を位置決めする一側位置決め手段41を備えるから、控えロープ装置61と合わせて、傾動可能な支柱2L,3,3,2Rを安定的に立設することができ、風などにより支柱2L,3,3,2Rを山側に倒そうとする力が加わっても支柱が揺動することがない。また、控えロープ装置61のロープ材62にテンションをかけた状態で設置することができる。
【0048】
また、このように本実施形態では、請求項2に対応して、緩衝具63には、ロープ材62を所定の摩擦力で把持する把持具72を複数設けたから、ロープ材62の摩擦摺動による衝撃吸収効果を高めることができる。特に、共通の把持具72を用意し、その数を調整することにより、所望の衝撃吸収効果が得られるから、把持具72及び緩衝具63を汎用品として使用することができる。
【0049】
また、このように本実施形態では、請求項3に対応して、網11が無結節網であるから、網11を構成する線材13,13Aは、交差部14において結ばれずに真っ直ぐに形成されているため、網11に落石等の力が加わると、その力が網11全体に分散するため、高い衝撃吸収機能が得られる。また、結節がないから、その分軽量で厚さも薄くなり、重ねたり、折ったり、巻いたりした際、コンパクトになる。
【0050】
【0051】
また、実施形態上の効果として、取付部材31に対して支柱2L,3,2Rの角度を仮固定する仮止め手段47を設けたから、控えロープ装置61などの据付作業を容易に行うことができる。また、横ロープ材51において、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部がワイヤークリップ54に係止することなく抜け出し可能に構成したから、抜け出し後は、横ロープ材51から拘束されることなく網11が変形可能となり、合成樹脂製の網11の特性を十分に生かすことができる。
【0052】
図20は本発明の第2実施形態を示し、上記第1実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では横ロープ材51は1本のロープ材からなり、その横ロープ材51の余長部51Yを前記緩衝具63により把持して前記横ロープ材連結部24に連結している。また、余長部51Yの端部は、太さの等しい切断端となっており、前記端部が緩衝具63に係止することなく抜け出し可能しており、この例においても、横ロープ材51に所定以上の引張力が加わると、把持具72の締付力に抗して該把持具72に対して余長部51Yが摩擦摺動し、さらに、余長部51Yの端部が把持具72などに係止することなく抜け出し、この後の横ロープ材51から拘束されることなく網11が変形可能となり、合成樹脂製の網11の特性を生かすことができる。
【0053】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、重複部53及び締め具は本発明の余長部及び緩衝具の他の例であり、例えばロープ材をループ状にして余長部を構成してもよい。また、実施例では地山にコンクリート基礎やコンクリートブロックなどを設けてロックアンカーを固定するようにしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
請求項1の発明は、支柱間に合成樹脂からなる網を張設し、設置場所に取付部材を設け、この取付部材に前記支柱の下部を回動可能に連結して該支柱を傾動可能に立設した防護柵において、前記支柱の上部と該支柱山側の地山との間に控えロープ装置を設け、この控えロープ装置のロープ材に余長部を設けると共に、この余長部を摺動可能に把持する緩衝具を設け、前記支柱の前下部に傾動連結部を一体に突出し、この傾動連結部を前記取付部材の連結受部に回動可能に連結して該支柱を傾動可能に立設し、前記支柱の谷側の傾動位置を位置決め決めする他側位置決め手段は、前記取付部材と、この取付部材に当接する前記支柱の下端とを備え、前記支柱の山側の傾動位置を位置決めする一側位置決め手段は、前記連結受部に設けた調整用プレートと、この調整用プレートに前後位置を調整できるように挿通され前記支柱に頭部が当接することにより該支柱の山側回動範囲を規制する調整ボルトとを備えるものであり、工法簡易にして低価格での施工を可能とし、落石等のエネルギー吸収効果に優れた防護柵を提供することができる。
【0055】
【0056】
【0057】
また、請求項2の発明は、前記緩衝具には、ロープ材を所定の摩擦力で把持する把持具を複数設けたものであり、工法簡易にして低価格での施工を可能とし、落石等のエネルギー吸収効果に優れた防護柵を提供することができる。
【0058】
また、請求項3の発明は、前記網が無結節網であり、工法簡易にして低価格での施工を可能とし、落石等のエネルギー吸収効果に優れた防護柵を提供することができる。
【0059】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す防護体の側面図である。
【図2】同上、一部正面図である。
【図3】同上、一部平面図である。
【図4】同上、全体正面図である。
【図5】同上、全体平面図である。
【図6】同上、網の構造を説明する正面説明図である。
【図7】同上、網の端部の平面展開図であり、網とロープ材とを示す。
【図8】同上、一部を断面にした網の側面図であり、図8(A)は網の端部側にロープ材を重ねて配置した状態、図8(B)は網の端部を折り返して重複部分を形成した状態を示す。
【図9】同上、端末支柱を示し、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図である。
【図10】同上、中間支柱を示し、図10(A)は正面図、図10(B)は側面図である。
【図11】同上、支柱下部の側面図である。
【図12】同上、支柱下部の背面図である。
【図13】同上、支柱の平面図である。
【図14】同上、取付部材の正面図であり、調整用プレートを取り外した状態である。
【図15】同上、緩衝具の正面図である。
【図16】同上、緩衝具の把持具の平面図である。
【図17】同上、緩衝具の把持具の側面図である。
【図18】同上、緩衝具の側面図である。
【図19】同上、2つの把持具を有する緩衝具の側面図である。
【図20】本発明の第2実施形態を示す支柱の平面図である。
【符号の説明】
1 防護柵
2 端末支柱
3 中間支柱
11 網
22 傾動連結部
31 取付部材
33 連結受部
41 一側位置決め手段
43 調整用プレート
45 調整ボルト
45A 頭部
47 仮止め手段
49 他側位置決め手段
50 下端(当接部)
61 控えロープ装置
62 ロープ材
62A 余長部
63 緩衝具
101 斜面(設置場所)
Y 山側
Claims (3)
- 支柱間に合成樹脂からなる網を張設し、設置場所に取付部材を設け、この取付部材に前記支柱の下部を回動可能に連結して該支柱を傾動可能に立設した防護柵において、前記支柱の上部と該支柱山側の地山との間に控えロープ装置を設け、この控えロープ装置のロープ材に余長部を設けると共に、この余長部を摺動可能に把持する緩衝具を設け、前記支柱の前下部に傾動連結部を一体に突出し、この傾動連結部を前記取付部材の連結受部に回動可能に連結して該支柱を傾動可能に立設し、前記支柱の谷側の傾動位置を位置決め決めする他側位置決め手段は、前記取付部材と、この取付部材に当接する前記支柱の下端とを備え、前記支柱の山側の傾動位置を位置決めする一側位置決め手段は、前記連結受部に設けた調整用プレートと、この調整用プレートに前後位置を調整できるように挿通され前記支柱に頭部が当接することにより該支柱の山側回動範囲を規制する調整ボルトとを備えることを特徴とする防護柵。
- 前記緩衝具には、ロープ材を所定の摩擦力で把持する把持具を複数設けたことを特徴とする請求項1項に記載の防護柵。
- 前記網が無結節網であることを特徴とする請求項1又は2記載の防護柵。
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