JP3944401B2 - フレキシブルプリント基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フレキシブルプリント基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のフレキシブルプリント基板は、通常、図1に示されているように、スパッタ法により、柔軟性の絶縁材からなるベースフィルム11の表面に逐一にクロム(Cr)フィルム12と銅(Cu)フィルム13を積層してから、銅(Cu)フィルム13の表面に銅めっき層14を形成してなる。前記柔軟性の絶縁材として、一般には、ポリイミド樹脂(PI)及びPET樹脂から選ばれたものを使用する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなフレキシブルプリント基板は引き剥がし強度が最大0.5kgf/cmに過ぎない。もちろん、スパッタ法により、柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムの表面に逐一にニッケルークロム(NiCr)合金フィルムと銅(Cu)フィルムを積層してから、銅(Cu)フィルムの表面に銅めっき層を形成してなるものは、引き剥がし強度が最大0.8kgf/cmまで至れることが知られているが、やはり理想ではないと考えられている。
【0004】
即ち、本発明は引き剥がし強度が1.0kgf/cm以上あるフレキシブルプリント基板及びその製造方法を提供しようとすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するよう、発明者は、検討に検討を重ねた結果、前記ベースフィルムの表面に逐一にクロム(Cr)フィルムと銅(Cu)フィルムを積層してから、銅(Cu)フィルムの表面に銅めっき層を形成してなるフレキシブルプリント基板については、熱膨張係数6.5×10−6/℃の前記クロム(Cr)フィルムと熱膨張係数17.0×10−6/℃の前記銅(Cu)フィルムとの間に、少なくとも1層の、熱膨張係数がクロム(Cr)と銅(Cu)との間にある金属系フィルムを挟ませれば、剥離強度を1.0kgf/cm以上に上げることができ、また、前記ベースフィルムの表面に逐一にニッケルークロム(NrCr)合金フィルムと銅(Cu)フィルムを積層してから、銅(Cu)フィルムの表面に銅めっき層を形成してなるものについては、曲げ延性が非常に大であるベースフィルムと曲げ延性が通常1〜2%位ある前記ニッケルークロム(NrCr)合金フィルムとの間に、少なくとも1層の、曲げ延性が2%以上、好ましくは10%位、もっと好ましくは30%位の金属系フィルムを挟ませれば、剥離強度を1kgf/cm以上に上げることができることを知見し、即ち、フレキシブルプリント基板を構成しようとする場合、前記銅(Cu)フィルムを被覆する前に先に熱膨張係数が銅(Cu)より小である金属系フィルムを被覆しておいた方が良く、また、前記柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムの表面と直接接触するフィルムとして、曲げ延性が従来のものより良い金属系フィルムを被覆した方がさらに良いことを知見した。
【0006】
前記知見に基づき、本発明は、まず、柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に被覆されているVIA族金属スパッタフィルムと、その熱膨張係数が前記VIA族金属スパッタフィルムより大であってCuより小であり、且つ、前記VIA族金属スパッタフィルムの表面に被覆されている金属系スパッタフィルムと、前記金属系スパッタフィルムの表面に被覆されているCuスパッタフィルムと、前記Cuスパッタフィルムの表面に形成された銅めっき層とからなるフレキシブルプリント基板を提供し、また、柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムと、その曲げ延性が2%以上であり、且つ、前記ベースフィルムの表面に被覆されている金属系スパッタフィルムと、前記金属系スパッタフィルムの表面に被覆されているNi―Cr合金スパッタフィルムと、前記Ni―Cr合金スパッタフィルムの表面に被覆されているCuスパッタフィルムと、前記Cuスパッタフィルムの表面に形成された銅めっき層とからなるフレキシブルプリント基板を提供する。
【0007】
更に詳しくは、柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に被覆されているVIA族金属スパッタフィルムと、前記VIA族金属スパッタフィルムの表面に被覆されているNi―Cr合金スパッタフィルムと、前記Ni―Cr合金スパッタフィルムの表面に被覆されているCuスパッタフィルムと、前記Cuスパッタフィルムの表面に形成された銅めっき層とからなるフレキシブルプリント基板、及び、柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムを用意した後、前記ベースフィルムの表面にスパッターリングでVIA族金属フィルムを被覆する工程と、前記VIA族金属フィルムの表面にスパッターリングでNi―Cr合金フィルムを被覆する工程と、前記Ni―Cr合金フィルムの表面にスパッターリングでCuフィルムを被覆する工程と、前記Cuフィルムの表面にめっきで銅めっき層を形成する工程とからなるフレキシブルプリント基板の製造方法を提供する。前記本発明によりなるフレキシブルプリント基板は、実験により、引き剥がし強度が1.0kgf/cm以上あると確認された。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のフレキシブルプリント基板及びその製造方法の実施例を詳しく説明する。なお、以下の説明においては、そのサイズに拘わらず、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
(実施例1)
本発明の実施例1について図2及び図3を用いて説明する。まず、PI樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム21を基材とし、面積20cm×20cmのCrをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流1.0A、圧力5×10−3torr、ガス流量(Ar)2×10−3torrの条件下で、1分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム21の表面に厚さ1μm未満のCrフィルム22を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金及びCuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、それぞれ1分間のスパッターリングを行って、Crフィルム22の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム23及びCuフィルム24を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム24の表面に、電流0.5Aで、1時間のめっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層25を形成し、PI樹脂21とCrフィルム22とNi−Cr合金フィルム23とCuフィルム24と銅めっき層25とからなるフレキシブルプリント基板1を製造した。
【0010】
(実施例2:基材を変える)
本発明の実施例2について図2及び図3を用いて説明する。まず、PET樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム21を基材とし、面積20cm×20cmのCrをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流1.0A、圧力5×10−3torr、ガス流量(Ar)2×10−3torrの条件下で、1分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム21の表面に厚さ1μm未満のCrフィルム22を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金及びCuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、それぞれ1分間のスパッターリングを行って、Crフィルム22の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム23及びCuフィルム24を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム24の表面に、電流0.5Aで、1時間のめっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層25を形成し、PET樹脂21とCrフィルム22とNi−Cr合金フィルム23とCuフィルム24と銅めっき層25とからなるフレキシブルプリント基板2を製造した。
【0011】
(実施例3:Niフィルムを増加する)
本発明の実施例3について図4及び図5を用いて説明する。まず、PI樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム31を基材とし、面積20cm×20cmのCrをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流1.0A、圧力5×10−3torr、ガス流量(Ar)2×10−3torrの条件下で、1分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム31の表面に厚さ1μm未満のCrフィルム32を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金、Ni、Cuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、それぞれ1分間のスパッターリングを行って、Crフィルム32の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム33、Niフィルム34及びCuフィルム35を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム35の表面に、電流0.5Aで、1時間のめっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層36を形成し、PI樹脂31とCrフィルム32とNi−Cr合金フィルム33とNiフィルム34とCuフィルム35と銅めっき層36とからなるフレキシブルプリント基板3を製造した。
【0012】
(実施例4:Crフィルムの代わりにMoフィルムを形成し、且つ、Auフィルムを増加する)
本発明の実施例4について図6及び図7を用いて説明する。まず、PI樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム41を基材とし、面積20cm×20cmのMoをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流1.0A、圧力5×10−3torr、ガス流量(Ar)2×10−3torrの条件下で、1分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム41の表面に厚さ1μm未満のMoフィルム42を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金、Au、Cuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、それぞれ1分間のスパッターリングを行って、Moフィルム42の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム43、Auフィルム44及びCuフィルム45を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム45の表面に、電流0.5Aで、1時間のめっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層46を形成し、PI樹脂41とMoフィルム42とNi−Cr合金フィルム43とAuフィルム44とCuフィルム45と銅めっき層46とからなるフレキシブルプリント基板4を製造した。
【0013】
(実施例5:スパッタ電流及びスパッタ時間を変える)
本発明の実施例5について図2及び図3を用いて説明する。まず、PI樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム21を基材とし、面積20cm×20cmのCrをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流0.5A、圧力5×10−3torr、ガス流量(Ar)2×10−3torrの条件下で、2分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム21の表面に厚さ1μm未満のCrフィルム22を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金及びCuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、2分間のスパッターリングを行って、Crフィルム22の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム23及びCuフィルム24を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム24の表面に、電流0.5Aで、1時間のめっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層25を形成し、PI樹脂21とCrフィルム22とNi−Cr合金フィルム23とCuフィルム24と銅めっき層25とからなるフレキシブルプリント基板5を製造した。
【0014】
(実施例6:圧力及びガス流量を変える)
本発明の実施例6について図2及び図3を用いて説明する。まず、PI樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム21を基材とし、面積20cm×20cmのCrをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流1.0A、圧力5×10−4torr、ガス流量(Ar)8×10−5torrの条件下で、1分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム21の表面に厚さ1μm未満のCrフィルム22を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金及びCuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、1分間のスパッターリングを行って、Crフィルム22の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム23及びCuフィルム24を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム24の表面に、電流0.5Aで、1時間のめっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層25を形成し、PI樹脂21とCrフィルム22とNi−Cr合金フィルム23とCuフィルム24と銅めっき層25とからなるフレキシブルプリント基板6を製造した。
【0015】
(実施例7:めっき電流及びめっき時間を変える)
本発明の実施例7について図2及び図3を用いて説明する。まず、PI樹脂からなる面積10cm×10cm、厚さ25〜50μmのベースフィルム21を基材とし、面積20cm×20cmのCrをターゲット材とし、前記基材と前記ターゲット材との間の距離20cm、電流1.0A、圧力5×10−3torr、ガス流量(Ar)2×10−3torrの条件下で、1分間のスパッターリングを行って、ベールフィルム21の表面に厚さ1μm未満のCrフィルム22を形成した。そして、面積20cm×20cmのNi−Cr合金及びCuを順次にターゲット材とし、前記同一の条件下で、1分間のスパッターリングを行って、Crフィルム22の表面に厚さ1μm未満のNi−Cr合金フィルム23及びCuフィルム24を逐一に形成した。最後に、Cuフィルム24の表面に、電流1.0Aで、0.5時間めっきを行って、厚さ18μmの銅めっき層25を形成し、PI樹脂21とCrフィルム22とNi−Cr合金フィルム23とCuフィルム24と銅めっき層25とからなるフレキシブルプリント基板7を製造した。
【0016】
フレキシブルプリント基板1〜7夫々の構成、実験条件及び引き剥がし強度は、表1に示されている。表1から、それらの引き剥がし強度は、すべて1.0kgf/cm以上あると知られた。
【0017】
【表1】
上記実施例では、ベースフィルムとしてPI樹脂またはPET樹脂を使用したが、それに限らず、他の柔軟性の絶縁材を使用してもよい。また、上記実施例では、ターゲット材1として、熱膨張係数6.5×10−6/℃のCrまたは熱膨張係数5.1×10−6/℃のMoを使用したが、それに限らず、VIA族金属中における熱膨張係数が4.5×10−6/℃左右であるWを使用してもよい。そして、上記実施例1、2、5、6、7では、前記熱膨張係数6.5×10−6/℃〜4.5×10−6/℃のVIA族金属フィルムと熱膨張係数17.0×10−6/℃の前記Cuフィルムとの間に、その熱膨張係数が前記VIA族金属フィルムより大であるNi−Cr合金フィルム(Ni:13.3×10−6、Cr:6.5×10−6)が挟まれたが、それに限らず、他のその熱膨張係数がCrとCuとの間にある金属系フィルムを挟んでもよい。なお、上記実施例3、4では、前記熱膨張係数6.5×10−6〜4.5×10−6/℃のVIA族金属フィルムと熱膨張係数17.0×10−6の前記Cuフィルムとの間に、Ni−Cr合金フィルムの外、また、Ni−Cr合金フィルムとCuフィルムとの間に更にその熱膨張係数がNi−Cr合金フィルムより大であるNi(13.3×10−6)またはAu(14.1×10−6)フィルムが挟まれたが、それに限らず、他のその熱膨張係数がNi−Cr合金とCuとの間にある金属系フィルムを挟んでもよい。そして、上記実施例では、Arガス下でスパッターリングを行ったが、それに限らず、他の不活性ガス下で行ってもよい。
【0018】
【発明の効果】
叙上により、CrとCuとの間の熱膨張係数差、及び/またはベースフィルムとNi−Cr合金との間の曲げ延性差を他の中間層によって緩和することにより、引き剥がし強度が1.0kgf/cm以上あるフレキシブルプリント基板を得ることができる。
【0019】
以上説明した実施の形態は、あくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものにおいてなされたものであり、本発明はそうした具体例に限定して狭義に解釈されるものではなく、本発明の精神とクレームに述べられた範囲で、いろいろと変更して実施できるものである。
【0020】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図2】本発明のフレキシブルプリント基板1、2、5、6、7の断面図である。
【図3】前記フレキシブルプリント基板1、2、5、6、7を製造する場合のフローチャートである。
【図4】本発明のフレキシブルプリント基板3の断面図である。
【図5】前記フレキシブルプリント基板3を製造する場合のフローチャートである。
【図6】本発明のフレキシブルプリント基板4の断面図である。
【図7】前記フレキシブルプリント基板4を製造する場合のフローチャートである。
【符号の説明】
21、31、41 ベースフィルム
22、32 Crフィルム
23、33、43 Ni−Cr合金フィルム
24、35、45 Cuフィルム
25、36、46 銅めっき層
34 Niフィルム
42 Moフィルム
44 Auフィルム
Claims (2)
- 柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムと、
前記ベースフィルムの表面に被覆されているCrスパッタフィルムと、
前記Crスパッタフィルムの表面に被覆されているNi―Cr合金スパッタフィルムと、
前記Ni―Cr合金スパッタフィルムの表面に被覆されているNiスパッタフィルムと、
前記Niスパッタフィルムの表面に被覆されているCuスパッタフィルムと、
前記Cuスパッタフィルムの表面に形成された銅めっき層とからなることを特徴とするフレキシブルプリント基板。 - 柔軟性の絶縁材からなるベースフィルムを用意した後、
前記ベースフィルムの表面にスパッターリングでCrスパッタフィルムを被覆する工程と、
前記Crスパッタフィルムの表面にスパッターリングでNi―Cr合金スパッタフィルムを被覆する工程と、
前記Ni―Cr合金スパッタフィルムの表面にスパッターリングでNiスパッタフィルムを被覆する工程と、
前記Niスパッタフィルムの表面にスパッターリングでCuスパッタフィルムを被覆する工程と、
前記Cuスパッタフィルムの表面にめっきで銅めっき層を形成する工程とからなることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
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