JP3944328B2 - プレスモールド成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレスモールド成形体の製造方法に関し、更に詳しくは、得られる成形体の残留応力を小さくでき、又、面精度及び機械的強度に優れ、しかも得られる成形体を光学部品として用いる場合には複屈折が小さく、光学歪みが少ない等の光学特性に優れた成形体を製造することができるプレスモールド成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カメラ、或いは光分岐回路、光分波・合波器、光スイッチ、光変調器、光コネクター、光減衰器、光アイソレーター等に用いられる光学部品(例えば、光学プリズム等)としては、ガラス製又はプラスチック製の光学部品が用いられている。
【0003】
従来、プラスチック製の光学部品としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体(MS)樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)等の熱可塑性樹脂を射出成形することにより成形したもの、或いはジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の熱硬化性樹脂を注型重合によって成形したもの等が提唱されている。
【0004】
しかしながら、射出成形によって製造された従来の熱可塑性樹脂製の光学部品は、複屈折が小さいものではなく、かつ環境変化に対する変形が小さいものではなく、高精度を必要とする光学機器用としては使用できないものであった。又、注型重合によって製造された熱硬化性樹脂製の光学部品は、複屈折等の光学特性は比較的良好であるものの、重合硬化時間に長持間を要し生産性に劣り、又バリの発生の虞れが高く歩留まりが悪いという問題があるものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
又、光学プリズムを成形する方法として、プレスモールド成形法が提案されている。例えば、プレス成形に関し、特開平8−127,032号公報では、プラスチック母材の全体を、このプラスチック母材を構成する樹脂の軟化温度以上の温度で加熱し、プラスチック母材全体をこの温度にした後、この温度の均一性を維持したままでプラスチック母材をこのプラスチック母材を構成する樹脂の熱変形温度以下まで冷却することにより、得られる成形体の内部歪みの発生を防止する技術が開示されている。更に、特開平8−127,077号公報では、光学素材に対する最高加熱温度をこの光学素材を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度とし、かつプレス圧を制御して、得られる成形体のバリの発生を防止する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、1回のプレスモールド成形によって得られる成形体は、残留応力が残りやすく、又、面精度及び機械的強度が低下する場合が多かった。特に得られる成形体を光学部品として用いる場合には、複屈折が大きくなって光学歪みを生じる等、光学特性が十分でない場合があった。
【0007】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされ、プレスモールド成形を行う際に、得られる成形体の残留応力を小さくでき、又、面精度及び機械的強度に優れ、しかも得られる成形体を光学部品として用いる場合には複屈折が小さく、光学歪みが少ない等の光学特性に優れた成形体を製造することができるプレスモールド成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂からなる予備成形体をプレスモールド成形する際に、多段階の加熱を行うことによって、上記目的を達成できることを見い出した。
【0009】
かくして、本発明によれば、熱可塑性樹脂からなる予備成形体をプレスモールド成形する際に、多段階の加熱をするプレスモールド成形体の製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のプレスモールド成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる予備成形体をプレスモールド成形する際に、多段階の加熱をすることを特徴とする。
【0011】
熱可塑性樹脂
本発明で用いる予備成形体は、熱可塑性樹脂から構成される。この熱可塑性樹脂としては、好ましくは透明性樹脂であり、より好ましくは主鎖若しくは側鎖に飽和炭化水素環を有する熱可塑性樹脂であり、更に好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂である。
【0012】
主鎖若しくは側鎖に飽和炭化水素環を有する熱可塑性樹脂
主鎖又は側鎖に飽和炭化水素環を有する熱可塑性樹脂としては、例えば熱可塑性ノルボルネン系樹脂、ビニル系環状炭化水素重合体、環状共役ジエン系付加重合体等が例示される。
【0013】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂
本発明で使用可能な熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開平3−148,82号公報や特開平3−122,137号公報等に開示されている公知の樹脂である。具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンとの付加型共重合体、及びこれらの重合体の変性物等が挙げられる。
【0014】
ノルボルネン系単量体は、上記各公報や特開平2−227,424号公報、特開平2−276,842号公報等に開示されている公知の単量体である。具体的には、例えば、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素; そのアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体; ハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換誘導体; これら極性基を有するアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体; 等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素及びそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体等が、耐薬品性や耐湿性等に特に優れ好適である。具体的には、以下のようなノルボルネン系単量体を挙げることができる。
【0016】
ノルボルネン系単量体の具体例としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等; ジシクロペンタジエン、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等; ジメタノオクタヒドロナフタレン、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8,ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8,ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8,ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;
シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン等; シクロペンタジエンの多量体、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等; 等が挙げられる。
【0017】
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂中の単量体のノルボルネン系単量体結合量の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である時に耐熱性が高く好適である。
【0019】
ノルボルネン系単量体以外の共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン; シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン; 等が挙げられる。
【0020】
これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
ノルボルネン系単量体又はノルボルネン系単量体と共重合可能なビニル系単量体との重合方法及び水素添加方法は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。又、得られる重合体や重合体水素添加物を特開平3−95,235号公報等に開示されている公知の方法により、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、スチレン系炭化水素、オレフィン系不飽和結合及び加水分解可能な基を持つ有機ケイ素化合物、不飽和エポキシ単量体等を用いて変性させてもよい。
【0022】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、80°Cデカリン中で測定した極限粘度〔η〕で通常0.01〜20dl/g、好ましくは0.1〜10dl/g、より好ましくは0.2〜5dl/g、最も好ましくは0.3〜1dl/gの範囲である。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の極限粘度〔η〕が過度に小さいと機械的強度が充分でなく、逆に、過度に大きいと成形加工性が充分でなく、いずれも好ましくない。
【0023】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の分子量分布は、格別な限定はないが、トルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、通常4.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下であるときに機械的強度が高められ好適である。
【0024】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、適宜選択されればよいが、通常50〜300°C、好ましくは100〜250°C、より好ましくは120〜200°Cの範囲が、耐熱性や成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0025】
ビニル系環状炭化水素重合体
ビニル系環状炭化水素重合体としては、特に限定されないが、(A)芳香族ビニル単量体又はその置換体の重合体の水素添加物、(B)ビニルシクロヘキセン系単量体及び/又はビニルシクロヘキサン系単量体の重合体又はその水素添加物であることが好ましい。
【0026】
ビニル系環状炭化水素系重合体を得るために用いられる単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等の芳香族ビニル単量体; ビニルシクロヘキサン、3−メチルイソプロペニルシクロヘキサン等のビニルシクロヘキサン系単量体;4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン等のビニルシクロヘキセン系単量体; d−テルペン、l−テルペン、ジテルペン等のテルペン系単量体等のビニル化六員環炭化水素系単量体又はその置換体等が挙げられる。
【0027】
又、本発明においては、重合体中の繰り返し単位が50重量%未満となる範囲で前述の単量体以外の単量体を共重合させてもよい。共重合可能な単量体としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の重合法において共重合可能なものであれば特に制限はなく、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン系単量体; シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5、5−ジメチルシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン系単量体; シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン等の環状オレフィン系単量体; ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、フラン、チオフェン、1,3−シクロヘキセン等の共役ジエン系単量体; アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のニトリル系単量体; メタクリル酸メチルエステル、メタアクリル酸エチルエステル、メタアクリル酸プロピルエステル、メタアクリル酸ブチルエステル、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸プロピルエステル、アクリル酸ブチルエステル、等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体; アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和脂肪酸系単量体; フェニルマレイミド; エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、トリオキサン、ジオキサン、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系単量体; メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニル−2−ピロリドン等の複素環含有ビニル化合物系単量体; 等が挙げられる。
【0028】
ビニル系環状炭化水素単量体又はその置換体の繰り返し単位の含有量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
【0029】
又、芳香環若しくはシクロヘキセン環の水素添加率は、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。水素添加率が過度に少ないと、低複屈折性に劣り好ましくない。尚、水素添加率は、 1H−NMR測定により求めることができる。
【0030】
本発明において、ビニル系環状炭化水素重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPCにより測定されるポリスチレン換算値で、通常10,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは100,000〜300,000の範囲であり、且つ分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で通常5.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、最も好ましくは2.0以下である。ビニル系環状炭化水素重合体のMw/Mnが上記範囲にあるとき、重合体の機械強度、耐熱性に特に優れ、重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあると、重合体の強度特性と成形性、複屈折がバランスされて好適である。
【0031】
ビニル系環状炭化水素重合体の製造方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、アニオンリビング重合、カチオン重合、カチオンリビング重合等の公知の重合反応を採用できる。又、重合方法としては、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等が適用できるが、重合反応に引き続き、水素化反応を連続して行うことができる溶液重合が好ましい。
【0032】
環状共役ジエン系付加重合体
環状共役ジエン系付加重合体としては、特に限定されないが、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエン等の5〜8員炭素環を有する環状共役ジエンの重合体及び共重合体の水素化物が挙げられる。
【0033】
5〜8員炭素環を有する環状共役ジエンと共重合可能な他の単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、ビニルビリジン等のビニル芳香族系単量体、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、α−シアノアクリル酸メチル等の極性ビニル系単量体若しくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、環状テクトン、環状ラクタム環状シロキサン等の極性単量体、或いはエチレン単量体及びα−オレフィン系単量体等が挙げられる。これら共重合可能な単量体の割合は60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0034】
上記5〜8員炭素環を有する環状共役ジエンの重合体及び共重合体の水素添加方法、水素添加触媒については公知のものを採用することができる。
【0035】
水素化物の分子量は、1,2,4−トリクロロベンゼン溶液のGPC法で測定したポリスチレン換算平均分子量として、通常、5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000である。
【0036】
好ましい熱可塑性樹脂
各種例示したような、主鎖若しくは側鎖に飽和炭化水素環を有する熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、或いは必要に応じて複数種組み合わせて用いることができる。これら主鎖若しくは側鎖に飽和炭化水素環を有する熱可塑性樹脂のうち、光学プリズムとして特に超低複屈折の製品を得ようとする場合には、ビニル系環状炭化水素重合体が好ましく、又、製品の強度と低複屈折とのバランスという面からはノルボルネン系樹脂が好ましく、これらの中でも特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、及びノルボルネン系単量体とオレフィンとの付加型共重合体が好ましい。
【0037】
ゴム質重合体
本発明に用いる熱可塑性樹脂には、ゴム質重合体を配合することが好ましい。
【0038】
ゴム質重合体は、ガラス転移温度(Tg)が0°C以下の重合体であって、通常のゴム状重合体及び熱可塑性エラストマーが含まれる。ゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4 ,100°C)は、使用目的に応じて適宜選択され、通常5〜200である。
【0039】
ゴム質重合体の例としては、イソプレン・ゴムやクロロプレンゴム及びそれらの水素添加物; エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の飽和ポリオレフィンゴム; エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、α−オレフィン・ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体、イソブチレン・ジエン共重合体等のジエン系重合体、これらのハロゲン化物及びジエン系重合体又はそのハロゲン化物の水素添加物;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体及びその水素添加物; フッ化ビニリデン・三フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン・四フッ化エチレン共重合体、プロピレン・四フッ化エチレン共重合体等のフッ素ゴム;ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテル系ゴム、アクリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレンアクリルゴム等の特殊ゴム; ノルボルネン系単量体とエチレン又はα−オレフィンの共重合体、ノルボルネン系単量体とエチレンとα−オレフィンの三元共重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物等のノルボルネン系ゴム質重合体; スチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴム等のスチレン・ブタジエン系ランダム共重合体及びこれらの水素添加物;
スチレン・ブタジエン・スチレン・ゴム、スチレン・イソプレン・スチレン・ゴム、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン・ゴム等の芳香族ビニル系単量体・共役ジエンの直鎖状又は放射状ブロック共重合体、及びそれらの水素添加物; スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体の共重合体、及びその水素添加物が好ましい。芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体の共重合体はブロック共重合体でもランダム共重合体でも良い。耐候性の点から芳香環以外の部分を水添しているものがより好ましい。
【0041】
具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、及びこれらの水素添加物、スチレン・ブタジエン・ランダム共重合体及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0042】
本発明において、主成分である主鎖若しくは側鎖に飽和炭化水素環を有する熱可塑性樹脂に、上記したようなゴム質重合体を添加すれば、例えば高温高湿条件下においても、得られる筒状成形体に白濁が生じにくく高い透明性が維持される。
【0043】
その他の有機高分子化合物
その他の有機高分子化合物としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−ペンテン−1、環状オレフィン系重合体等のポリオレフィン系重合体; エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィンと他の単量体との共重合体; ポリスチレン等のスチレン系重合体; ポリメチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体等の(メタ)アクリル系重合体; ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン等のポリエーテル系重合体;
液晶プラスチック、芳香族ポリエステル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンどのポリエステル系重合体; その他、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリロニトリルスチレン(AS樹脂)、ポリメチルメタクリレートスチレン(MS樹脂)等が挙げられる。
【0044】
これらのゴム状重合体やその他の有機高分子化合物樹脂は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本実施形態の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0045】
部分エーテル化合物及び部分エステル化合物
又本発明において、得られる最終成形体、好ましくは光学部品、特に光学プリズムにおける白濁を防止するために、少なくとも1個のアルコール性水酸基と、少なくとも1つのエーテル結合を有する有機化合物(これを部分エーテル化合物という。)、或いは、少なくとも1個のアルコール性水酸基と、少なくとも1つのエステル結合を有する有機化合物(これを部分エステル化合物という。)を、前記のゴム質重合体に代えて、或いはゴム質重合体と共に、主成分である主鎖若しくは側鎖に単環の環状構造を有する環状炭化水素樹脂に配合することも可能である。
【0046】
少なくとも1個のアルコール性水酸基と、少なくとも1個のエーテル結合とを有する有機化合物としては、例えば、2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、更に好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコール等の水酸基の少なくとも1つがエーテル化された部分エーテル化合物が挙げられる。
【0047】
又、少なくとも1個のアルコール性水酸基と、少なくとも1個のエステル結合とを有する有機化合物としては、例えば、2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、更に好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコール等の水酸基の少なくとも1つがエステル化された部分エステル化合物が挙げられる。
【0048】
このような部分エーテル化物及び部分エステル化物の具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレート等の多価アルコールのエーテル化物; 3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニイルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物、p−オクチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物、p−オクチルフェノールとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物等の多価アルコールのエステル化物が挙げられる。
【0049】
これらの多価アルコールのエーテル化物又はエステル化物の分子量は特に限定しないが、通常500〜2,000、好ましくは800〜1,500のものが、溶出しにくく、かつ透明性の低下も少なく好ましい。これらの多価アルコールのエーテル化物又はエステル化物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用され、その配合量は、本実施形態の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0050】
その他の配合物
更に本発明においては、必要に応じて、樹脂工業において通常用いられる配合剤を配合することができる。配合剤としては、例えば、安定剤、結晶核剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、難燃剤等を挙げることができる。
【0051】
安定剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0052】
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0053】
結晶核剤としては、例えば、安息香酸の塩、ジベンジリデンソルビトール類、燐酸エステルの塩、或いはポリビニルシクロヘキサン、ポリ−3−メチルブテン、結晶性ポリスチレン類、トリメチルビニルシラン等の融点の高いポリマー類が好ましく、又、タルク、カオリン、マイカ等の無機化合物も好ましく使用できる。これらの結晶核剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。その使用量は、添加する場合において、通常0.0001〜1重量%の範囲である。
【0054】
帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム塩及び/又はアルキルスルホン酸ホスホニウム塩等や、ステアリン酸のグリセリンエステル等の脂肪酸エステルヒドロキシアミン系化合物等を例示することができる。これらの帯電防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。帯電防止剤の配合量は、添加する場合において、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0〜5重量部の範囲である。
【0055】
配合剤の配合
これら配合剤を添加する方法は、配合剤が樹脂中で光線透過率を低下させない程度に十分に分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ミキサーや一軸混練機、二軸混練機等で樹脂を溶融した状態で配合剤を添加して混練する方法や、適当な溶剤に溶解して配合剤を分散させた後、凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法等がある。
【0056】
混練する場合には、一般に、樹脂のガラス転移温度をTgとすると、通常、Tg+20°C〜Tg+150°Cの樹脂温度で、十分にシェアをかける。樹脂温度が低すぎると粘度が高くなり混練が困難であり、高すぎると樹脂や配合剤が劣化し、粘度や融点の差により両者がうまく混練できない。
【0057】
尚、成形体の透明性を向上させる観点からは、配合剤と樹脂との屈折率の差が小さいことが好ましい。屈折率の差は、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。特に透明性が要求される場合は、一般に0.02以下、好ましくは0.015以下、より好ましくは0.01以下の屈折率の差にする。屈折率の差が大きいものを混合すると、多量に添加した場合に不透明となりやすい。熱可塑性樹脂の種類が異なれば屈折率も異なるが、例えば、ゴム質重合体は単量体の比率を変化させたり、主鎖の不飽和結合の数を水素添加等により変化させることにより、連続的に屈折率を変えることが可能である。用いる熱可塑性樹脂の屈折率に応じて、適当な屈折率を有するゴム質重合体を選択することが好ましい。
【0058】
(1)予備成形体の成形
上記熱可塑性樹脂からなる予備成形体は、射出成形や押出成形等により成形することができるが、所望の形状のものが生産性良く得られることから、射出成形により成形することが好ましい。
【0059】
予備成形体の寸法は、適宜決定されるが、好ましくは予備成形体とプレスモールド成形体との体積が概ね同じ(好ましくは−3%〜+3%、更に好ましくは−1%〜+1%の違い)となるようにする。プレスモールド成形体が光学プリズムである場合には、図2に示すように、予備成形体2aの形状としては、プレスモールド成形時における押し代tが存在するように、プリズムの一面に垂直な方向において製品2の形状よりも若干大きく、同面に平行な方向において製品2の形状よりも若干小さな形状とすることが好ましい。
【0060】
例えば、製品2として図1に示すような三角柱形状(底辺の長さをw1、高さをh0)の光学プリズムを得ようとする場合、プリズム予備成形体2aは、同体積の図2に示すような五角柱形状(w0×hoの三角形とw0×tの長方形との組み合わせ形状)とすることが望ましい。尚、プレス成形による押し代t、すなわち、プリズム予備成形体2aと製品2の形状との加圧面方向Xにおける寸法差としては、予備成形体2aの面精度よりも大きいことが必要であり、具体的にはt=15μm以上とすることが望ましい。押し代tが例えば5mmを超えるものであるというように極端に大きいものであると、プレス成形に長時間を要し、又バリの発生、面精度の低下等の虞れがあるので好ましくない。押し代tは、製品の高さをh0とした場合には、t/h0が、好ましくは9.0×10−4〜3.0×10−1、更に好ましくは6.0×10−3〜6.0×10−2である。
【0061】
予備成形体2aの幅w0と奥行き長さ(紙面に垂直方向の成形体2aの長さ)とは、押し代tが決定された段階で、予備成形体2aと製品2との体積が同じとなるように、製品2の幅w1と奥行き長さよりもそれぞれ小さくなるように決定される。例えば予備成形体と製品の幅の比w0/w1は、好ましくは8.0×10−1〜9.9×10−1、更に好ましくは9.5×10−1〜9.0×10−1である。又、予備成形体と製品の奥行き長さの比は、予備成形体と製品の幅の比w0/w1と同程度である。
【0062】
本発明においては、プレスモールド成形する前の予備成形体の少なくとも一面を、粗面化処理又は研磨処理しても良い。粗面化処理することで、プレスモールド成形のための金型との滑り特性が良好になり、得られる成形体の表面にエア溜まりが少なくなる。又研磨処理することで、得られる成形体の表面の面精度が向上する。粗面化処理するための手段としては、特に限定されないが、金型のキャビティ内周面に形成された粗面を予備成形体表面に転写する方法やサンドブラスト処理等の方法が例示される。又研磨方法としては、特に限定されないが、平面ヤスリを用いた研磨、研磨剤でみがく等の方法が例示される。
【0063】
本発明においては、プレスモールド成形する前の予備成形体をアニール処理しても良い。アニール処理のための温度は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂のTgに対して、好ましくは(Tg−60)°C〜(Tg+20)°C、更に好ましくは(Tg−40)°C〜(Tg+10)°Cであることが望ましい。アニール処理のための温度が高すぎると、最終成形体の面精度が悪化する傾向にあり、低すぎると、複屈折が十分に小さくならない傾向にある。アニール処理することで、成形体の複屈折が低減する等、光学特性が向上する。ただし、アニール処理することで、面精度が低下することがあるため、その場合には、アニール処理後の予備成形体を研磨処理することが好ましい。こうすることで、成形体の面精度が向上する。
【0064】
(2)プレスモールド成形
本発明において、「多段階の加熱」とは、予備成形体への加熱を複数回行うことを意味し、具体的には、金型を一旦加熱(温度勾配が正)した後に、冷却(温度勾配が負)する工程を1段階の加熱工程とし、この加熱工程を複数段階繰り返すことを意味する。
【0065】
1段階目の加熱
本実施形態において、プレスモールド成形は、図4に示すような加熱温度及びプレス圧の時間変化で行い、多段階の加熱を伴うようにする。
【0066】
本実施形態においては、予備成形体2aを、図3に示すような金型4,6を用いてプレスモールド成形する際に、まず第1初期圧P0で予備成形体2aを加圧し、予備成形体2aの温度を、予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg付近又はTg以上の温度、より好ましくはTg以上の温度である第1最高加熱温度T1まで上昇させる。
【0067】
加熱温度は、金型温度を示標として用いて制御する。この1段階目の加熱は、予備成形体2aの表面部分から中心部分(あんこ部分)までの全体を、上記Tg以上に上昇できるように加熱することが望ましい。1段階目の加熱をこのようにすることで、予備成形体2aの成形時に、この予備成形体2aに生じた残留応力が緩和され、しかも予備成形体2aと金型との密着性が向上する。
【0068】
加熱時間は、予備成形体2aを、この予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg付近又はTg以上に保持できる範囲で適宜決定される。予備成形体2aの温度を上昇させるための手段としては、電熱ヒーター、赤外線ランプ、高周波加熱等を用いる。昇温速度は、本実施形態では、0.1〜3.0°C/秒である。予備成形体2aの温度がその第1最高加熱温度T1になると、その状態が一定時間(第1ソークタイムST)維持される。第1初期圧はP0のままである。尚、図3において、符号8,10は型取付板を示し、符号12,14は軸を示し、符号20はフードを示す。図3の例では下側の金型6が可動である。
【0069】
本実施形態では、第1最高加熱温度T1は、予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTgに対して、好ましくは(Tg−10)°C〜(Tg+90)°C、更に好ましくは(Tg)°C〜(Tg+80)°Cである。第1最高加熱温度T1をこの範囲にすることで、エア溜りの発生又は脱泡不能、面精度低下を防止でき、しかも分解ガスによる発泡やバリの発生をも効果的に防止できる。
【0070】
プレスモールド成形時の保圧(プレス圧)は、予備成形体を構成する熱可塑性樹脂の種類等により適宜決定しうるが、好ましくは10〜200kgf/cm2、更に好ましくは25〜150kgf/cm2 である。プレス圧の下限は、良好なプレスモールド成形が実施されるように決定され、プレス圧の上限は、金型の設備上の制限等により決定される。本実施形態では、第1初期圧P0は、10〜100kgf/cm2 である。この範囲にすることで、金型との密着性が良好となる。尚、ソークタイムSTとは、予熱時間のことであり、その時間は、本実施形態では、1〜100秒である。ソークタイムSTの経過後に、予備成形体2aがプレス加工され、その第1プレスタイムPTは、本実施形態では、1〜100秒である。ただし、T1がTgより若干高い(例えば、Tg+10°C)温度の場合は、PTは長く設定(例えば、1,000秒程度)にすることが望ましい。
【0071】
尚、熱可塑性樹脂のTgは、測定方法によって、又同じ測定方法(例えば、JIS−K7121におけるDSC法等)であっても、昇温過程で測定するか、降温過程で測定するかによって、数〜10°C程度の差を生じる(ヒステリシスが認められる)ので、これら多少の幅を有する温度範囲を本明細書においては「Tg」と定義し、このTgが複数存在する場合には最も低いTgが本明細書における「Tg」に相当するものとする。
【0072】
本実施形態では、第1プレスタイムPT時の第1中期プレス圧P1は、第1初期圧P0と同じ圧力であるが、異なる圧力に設定することもできる。異なる圧力に設定する場合には、プレスタイムPTの第1中期プレス圧P1は、第1初期圧P0に対して、高く設定することが好ましい。このように設定することで、エア溜まり発生、脱泡不能を防止できる。又、バリの発生を防止するため、P1≦P3に設定することが好ましい。
【0073】
第1プレスタイムPTの終了後に、予備成形体2aの冷却を行う。冷却は、図3に示す金型4,6に、窒素ガス等の不活性ガスを金型に供給することにより行い、予備成形体2aの温度がT2まで低下した段階で、プレス圧を、第1初期冷却圧P2から第1中期冷却圧P3に増大させる。こうすることで、P2段階でのバリの発生が抑えられ、成形体の凹み(ひけ)や残留応力の発生を効果的に防止できる。
【0074】
P2からP3への切換の基準となる冷却時の表面温度T2は、本実施形態では、熱可塑性樹脂のTgに対して、(Tg−15)°C〜(Tg+40)°Cであり、しかも(T1−50)°C〜(T1−5)°Cである。本実施形態では、第1初期冷却圧P2は、第1中期プレス圧P1と同じであるが、必ずしも同じではなくても良く、内部温度が上がる過程での緩和促進を図るため、低く設定しても良い。
【0075】
第1中期冷却圧P3は、第1中期プレス圧P1に対して、P1+10kgf/cm2 〜P1+190kgf/cm2 であることが好ましい。第1中期冷却圧P3を第1中期プレス圧P1に対して高く設定することで、予備成形体2aの表面の面精度向上が図られる。又、(P3−P0)は、特に限定されないが、20〜170kgf/cm2 が好ましい。
【0076】
予備成形体2aの温度がT3に冷却された段階以降のプレス圧を、第1終期冷却圧P4とするが、本実施形態では、第1終期冷却圧P4は第2中期冷却圧P3より低くしてある。尚、第1終期冷却圧P4は第1中期冷却圧P3と同じに設定しても良い。温度T3は、熱可塑性樹脂のTgに対して、(Tg−20)°C〜(Tg+20)°Cであり、しかも(T1−140)°C〜(T1−50)°Cとなるように決定される。
【0077】
予備成形体2aの温度がT4に冷却された段階で、本発明における1段階目の加熱が終了する。ここで、T4は、予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg以下であることが好ましく、更に好ましくは(Tg−100)°C〜(Tg)°C、特に好ましくは(Tg−80)°C〜(Tg)°Cである。T4の温度をこうすることで、予備成形体2aの中心温度をTg以下にすることができる。
【0078】
2段階目以降の加熱
温度T4まで冷却された予備成形体2aに対して、本発明における2段階目の加熱を行う。具体的には、第2初期圧P5で予備成形体2aを加圧し、予備成形体2aの温度を、予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg付近又はTg以上の温度、より好ましくはTg以上の温度であるT5まで上昇させる。2段階目以降(本実施形態では2段階目)の加熱を、このように行うことで、その直前の段階(本実施形態では1段階目)の加熱後に、予備成形体2aの全体が冷却される際に、成形収縮により生じた予備成形体の表面付近の凹み(ひけ)や予備成形体のエッジ部分に溜まる残留応力を効率的に除去して、予備成形体2aの光学歪みの発生を軽減できる。
【0079】
この2段階目の加熱は、予備成形体2aの中心部分(あんこ部分)を、この予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg以下まで冷却した後に、この予備成形体2aの表面付近(好ましくは、予備成形体2aの表面から5〜7mm程度の厚みまで)のみを、この予備成形体を構成する熱可塑性樹脂のTg付近又はTg以上に加熱し、その後、保圧(プレス圧)P6,P7をかけた状態で、予備成形体2aの全体がTg以下になるように冷却することが望ましい。こうすることで、製品2の前記凹み(ひけ)や残留応力の除去が一層効果的となる。
【0080】
加熱時間は、予備成形体2aを、この予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg付近又はTg以上に保持できる範囲で適宜決定される。
【0081】
ただし、上記2段階目以降の加熱温度は、予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTgより若干低い温度(例えば、Tg−10°C程度)であってもよい。
若干低くても、十分長い時間をかけて予備成形体2aを加熱しても同様の効果が得られることが、本発明者らにより見出された。
【0082】
昇温速度は、本実施形態では、0.01〜0.8°C/秒である。予備成形体2aの温度がその第2最高加熱表面温度T5になると、その状態が一定時間(第2ソークタイムST)維持される。尚、この第2ソークタイムは前記第1ソークタイムより短くしても良い。第2初期圧P5は、5〜110kgf/cm2 である。
【0083】
尚、本実施形態においてはこのT5は、前記T1より低く設定してあり、好ましくは(T1−50)°C〜(T1)°C、更に好ましくは(T1−30)°C〜(T1)°Cである。こうすることで成形体への凹み(ひけ)や残留応力の発生を効果的に防止できる。
【0084】
そして、予備成形体2aにこのT5の温度が所定時間かけられ、その後に予備成形体2aの冷却が行われる。冷却の方法は上記1段階目の加熱のときと同様である。
【0085】
本実施形態では、予備成形体2aの温度がT7まで低下する段階まで、第2初期圧P5と第2中期冷却圧P6とを同じにする。こうすることで、製品2の残留応力の発生を効果的に防止できる。尚、第2中期冷却圧P6を、予備成形体2aが適当な温度になったときに第2初期圧P5より増大させるように設定しても良い。この際、第2中期冷却圧P6は、第2初期圧P5に対して、P5+10kgf/cm2 〜P5+190kgf/cm2 であることが好ましい。第2中期冷却圧P6を第2初期圧P5に対して高く設定することで、製品2の表面精度を向上させることができる。その切換の基準となる冷却時の予備成形体2aの温度T6は、熱可塑性樹脂のTgに対して、(Tg−15)°C〜(Tg+40)°Cであり、しかも(T5−40)°C〜(T5)°Cである。
【0086】
予備成形体2aの温度がT7に冷却された段階以降のプレス圧を、第2終期冷却圧P7とするが、本実施形態では、第2終期冷却圧P7は第2中期冷却圧P6より低くしてある。尚、第2終期冷却圧P7は、第2中期冷却圧P6と同じに設定しても良い。温度T7は、熱可塑性樹脂のTgに対して、(Tg−40)°C〜(Tg)°Cであり、しかも(T6−40)°C〜(T6)°Cとなるように決定される。
【0087】
予備成形体2aの温度がT8に冷却された段階で、本発明における2段階目の加熱が終了する。ここで、T8は、予備成形体2aを構成する熱可塑性樹脂のTg以下であることが好ましく、更に好ましくは(Tg−100)°C〜(Tg−10)°C、特に好ましくは(Tg−80)°C〜(Tg−20)°Cである。T8の温度を、このような範囲にすることで、製品2の剥離性を良好にすることができる。
【0088】
尚、この2段階目以降の加熱は、製品2の生産性と効果とのバランスから、好ましくは1〜4回(すなわち、1回目の加熱を含み合計2〜5回の加熱を行う)、より好ましくは1〜2回(1回目の加熱を含み合計2〜3回の加熱を行う)、更に好ましくは1回(1回目の加熱を含み合計2回の加熱を行う)行う。
【0089】
この少なくとも1回の「2段階目の加熱」が終了後、プレスモールド成形用金型4,6を型開きし、成形により得られた製品2を取り出す。
【0090】
本実施形態では、第1初期冷却圧P2、第1中期冷却圧P3、第1終期冷却圧P4、第2初期冷却圧P6及び第2終期冷却圧P7の作用下の冷却時間C1、C2、C3、C4、C5に対応する冷却速度V1、V2、V3、V4、V5の関係は、V3≧V1≧V2、及びV5≧V4の関係にあることが好ましい。この冷却速度の変化に合わせて、プレス圧を変化させるようにしても良い。
【0091】
本実施形態における、冷却時間C1、C2、C4に対応する冷却速度V1、V2、V4は、成形体の温度が、好ましくは0.01〜0.4°C/秒、特に好ましくは0.02〜0.2°C/秒の冷却速度で冷却されることが好ましい。冷却速度が早すぎると、製品2の凹み(ひけ)や残留応力の発生を引き起こし、冷却速度が遅すぎると、製品2を金型から取り出すまでの時間が長くなり、好ましくない。
【0092】
本発明におけるプレスモールド成形においては、ソーク時間を短縮し、及び冷却速度を低下させることによって、製品の残留応力(光学部品の場合は複屈折及び光学歪み)を低減することができる。又冷却過程でのプレス力を上げることによって面精度を向上させることができる。
【0093】
(3)光学プリズムの特性
本実施形態のプレスモールド成形方法により成形される成形体は、良好な面精度、低複屈折及び低光学歪みを有する優れた特性を有するものとなる。更に成形条件を選ぶことにより、面精度が光学干渉計による測定値で、全面について15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、又、複屈折が偏光板による観察結果において、従来の射出成形品と比較して大幅に改善されたものとなる。
【0094】
本発明において、プレスモールド成形に用いる金型としては、特に限定されないが、ステンレス、炭素鋼、超硬合金等の金属に限らず、ガラス、セラミック、エポキシとアルミの複合材等で構成されても良い。金型には、熱媒体配管、赤外線ヒータ、カートリッジヒータ等の加熱手段や、不活性ガス供給手段、冷媒体配管等の冷却手段が具備してあることが好ましい。
【0095】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、本発明の範囲内で種々の設計変更や改変が可能である。
【0096】
本発明において得られるプレスモールド成形体は、特に限定されず、例えば、回折格子、フレネルレンズ、レンズ、プリズム、ミラー等の光学部品、導光板、光拡散板、液晶基板、光反射板、灯具用レンズ、灯具用カバー、光ディスク、インクジェット用流路板等が挙げられるが、好ましくは光学部品であり、より好ましくは光学レンズ(例えば、CD用ピックアップレンズ等)、光学プリズムである。厚肉レンズやプリズムのような、特に厚肉最終成形体(最大厚みが好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、更に好ましくは5mm以上である最終成形体)の成形に対し、本発明のプレスモールド成形体の製造方法が特に効果的である。尚、本明細書において「光学プリズム」とは、2ないしはそれ以上の平坦な面を有し光を透過・屈折させる光学素子を意味し、各種の形状のものが含まれ得、例えば、プリズムの機能に加えてレンズの機能を有する複合機能品等も含まれる。
【0097】
【実施例】
以下、本発明を、更に詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。又、以下の例において、特に断りのない限り、部及び%は重量基準である。尚、以下の実施例において得られた光学プリズムの性能評価は以下のようにして行った。
【0098】
光学歪みの評価
光学歪みの評価は、光学プリズムの複屈折を評価することにより行った。具体的には、光学プリズムの前後に位相差を90°ずらした偏光板を配置し、一方の偏光板側から光(白色光)を入射し、プリズムに現れる光弾性縞を目視により観察することにより、複屈折の程度を評価した。尚、光弾性縞模様が多いと複屈折が大きく、逆に少ないと複屈折が小さいものであり、評価は、5段階の相対評価を行った。その基準は、明確な光弾性縞が確認できない場合を「5」、光弾性縞が2本以上確認される場合を「1」とし、これらの間の「4〜2」については、相対評価が良好な順に「4,3,2」とした。
【0099】
面精度評価
図1に示すように、三角柱形のプリズムの各面を、A面、B面、C面とし、接触式表面粗さ計(テーラーホブソン社製)にて各面の対角線上を走査して測定した。
【0100】
[熱可塑性樹脂の製造例1]
窒素雰囲気下、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、以下ETCDと略す)100部を公知のメタセシス開環重合触媒系で重合し、次いで公知の方法で水素添加しETCD開環重合体水素添加物を得た。このETCD開環重合体水素添加物は、シクロヘキサンを溶媒としたGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ)でポリイソプレン換算で測定される数平均分子量Mnは、28,000であった。
このDCP開環重合体水素添加物を公知の方法で乾燥した。プロトンNMR法により水素添加反応の前後で比較して水素添加率が99.8%以上、DSCにより測定したTgは138°C、25°Cにおける屈折率1.53(ASTM−D542準拠)であった。このペレット100部に対して0.2部のフェノール系老化防止剤ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)と、0.4部の水添スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体(旭化成工業株式会社製タフテックH1051、クラム状、30°Cにおける屈折率1.52)を混合し、二軸混練機で混練し、ストランド(棒状の溶融樹脂)をストランドカッターを通してペレット(粒状)状の成形材料を得た。このペレットを、熱プレス(樹脂温度200°C、300kgf/cm2 、3分)で20mm×15mm、厚さ3.0mmの板を成形した。この板は透明で、400〜700nmでの光線透過率は最小で90.0%であった。この板を約0.05μmの厚さにスライスし、四酸化ルテニウムでポリスチレン部分を染色し、透過型電子顕微鏡により観察したところ、ゴム質重合体は樹脂のマトリックス中で直径約0.04μmのほぼ球状のミクロドメイン構造をとっていた。このペレットのガラス転移温度は138°Cであった。
【0101】
[熱可塑性樹脂の製造例2]
ETCDの代わりに、8−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン(以下MTCDと略す)30部、ジシクロペンタジエン(以下、DCPという)70部に代え(計100部)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体を用いなかった以外は、製造例1と同様にしてMTCD/DCP開環共重合体水素添加物を得た。重合体中の各ノルボルネン類の共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、MTCD/TCD=30/70でほぼ仕込組成に等しかった。このMTCD/DCP開環重合体水素添加物の、Mnは27,000、水素添加率は99.8%以上、Tgは130°Cであった。
【0102】
[熱可塑性樹脂の製造例3]
十分に乾燥し窒素置換した、内容量が1リットルの電磁撹拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、脱水シクロヘキサン320部、スチレン単量体80部及びジブチルエーテル1.83部を仕込み、40°Cで400rpmで撹拌しながらn−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)0.31部を添加して重合を開始した。同条件下で3時間重合を行った後、イソプロピルアルコール0.42部を添加して反応を停止させた。製造された芳香族ビニル系重合体aの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定したところ、Mn=113,636、Mw=125,000であった。次いで、上記芳香族ビニル系重合体a含有の重合溶液400部に安定化ニッケル水素化触媒N163A(日本化学工業社製;40%ニッケル担持シリカ−アルミナ担体)12部を添加混合し、水素化反応温度を調節するための電熱加熱装置と電磁撹拌装置を備えた内容積1.2リットルのスチンレス鋼製オートクレーブに仕込んだ。仕込み終了後、オートクレーブ内部を窒素ガスで置換し、700rpmの回転速度で撹拌しながら、230°C、水素圧45kg/cm2 で8時間水素添加反応を行った。水素添加反応終了後、反応溶液からろ過により水素添加触媒を除去し、シクロヘキサン1200部を加えた後、10リットルのイソプロパノール中に注ぎ芳香族ビニル系重合体の水素添加物Aを析出させた。水素添加物Aをろ過により分離後、減圧乾燥器により乾燥させ芳香族ビニル系重合体水素添加物Aを回収した。得られた水素添加物Aの物性はMn=48,421、Mw=92,000、Mw/Mn=1.90、水素化率は100%、Tg=140°Cであった。
【0103】
実施例1
上記製造例1のペレットを用いて、型締め圧125トン射出成形機にて、成形時の樹脂温度290°C、金型温度120°Cの条件で射出成形し、図2に示す形状の予備成形体2aを成形した。
【0104】
幅寸法W0は39.93mm、成形体の高さh0は20.0mm、押し代tは0.08mm、奥行き寸法(図面の紙面に垂直方向)は44.8mmであり、体積は18,000mm3 であった。又、成形体2aの重量は、18.286gであった。成形体の各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、15μm/17μm/20μmであった。
【0105】
この成形体を、図3に示す金型4,6にセットし、1回目の加熱及び2回目の加熱を伴うプレスモールド成形を行った。プレスモールド成形時の温度変化及びプレス圧の変化を図4に示す。
【0106】
プレス圧P0、P1及びP2を200kgf/(39.93×44.8mm2)=約11.2kgf/cm2 、P3を1,000kgf/(39.93×44.8mm2 )=約55.9kgf/cm2 、P4を100kgf/(39.93×44.8mm2 )=約5.5kgf/cm2 、P5及びP6を100kgf/(39.93×44.8mm2 )=約5.5kgf/cm2 、P7を100kgf/(39.93×44.8mm2 )=約5.5kgf/cm2 に設定した。
【0107】
又、加熱温度T1を170°C、T2を150°C、T3を130°C、T4を90°C、T5を145°C、T6を140°C、T7を130°C、T8を80°Cに設定した。
【0108】
又、T1までの昇温速度は、0.67°C/秒であり、第1ソークタイムSTは50秒であり、第1プレスタイムPTは50秒であり、冷却時間C1及びC2での冷却速度は、0.072°Cであり、冷却時間C3での冷却速度は、0.11°C/秒であった。
【0109】
又、T4からT5までの昇温速度は、0.59°C/秒であり、第2ソークタイムSTは1秒であり、第2プレスタイムPTは1秒であり、冷却時間C4での冷却速度は0.046°C/秒であり、冷却時間C5での冷却速度は0.11°C/秒であった。
【0110】
プレスモールド成形により得られたプリズム製品2(図1参照)の幅寸法W1は40.0mmであり、奥行き寸法は45mmであり、高さh0は20.0mm、一番薄いところの最大厚みは20mmであった。
【0111】
このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「5」であり、吸水率は0.01%以下であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、5μm/4μm/2μmであった。
更に、プリズム製品の表面を観察したところ、エア溜まりは観察されなかった。
【0112】
実施例2
加熱温度T5を160°C、第2ソークタイムSTを60秒、第2プレスタイムを120秒にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、プリズム製品を得た。このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「4」であり、吸水率は0.01%以下であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、7μm/7μm/4μmであった。更に、プリズム製品の表面を観察したところ、エア溜まりは観察されなかった。
【0113】
実施例3
加熱温度T5を140°C、T6を135°Cにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、プリズム製品を得た。このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「4」であり、吸水率は0.01%以下であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、6μm/6μm/3μmであった。更に、プリズム製品の表面を観察したところ、エア溜まりは観察されなかった。
【0114】
実施例4
プレス圧P5、P6及びP7を1,900kgf/(39.93×44.8mm2 )=約106kgf/cm2 に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリズム製品を得た。このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「3」であり、吸水率は0.01%以下であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、2μm/2μm/3μmであった。更に、プリズム製品の表面を観察したところ、エア溜まりは観察されなかった。
【0115】
実施例5
プレス圧P3を1,000kgf/(39.93×44.8mm2 )=約55.9kgf/cm2 、P4、P5、P6及びP7を500kgf/(39.93×44.8mm2 )=約27.9kgf/cm2 にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、プリズム製品を得た。このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「4」であり、吸水率は0.01%以下であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、2μm/3μm/4μmであった。更に、プリズム製品の表面を観察したところ、エア溜まりは観察されなかった。
【0116】
比較例1
図4における「2回目の加熱(T5〜T8)」を行わず、1回目の加熱(T1〜T4)のみを行った以外は、前記実施例1と同様にして、プリズム製品を得た。このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「2」であり、吸水率は0.01%以下であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、9μm/9μm/9μmであり、実施例1〜5に比較して劣っていた。更に、プリズム製品の表面を観察したところ、エア溜まりは観察されなかった。
【0117】
比較例2
図2に示す予備成形体を射出成形により成形する代わりに、図1に示すプリズム製品を射出成形により直接成形(プレスモールド工程なし)した以外は、前記実施例1と同様にして、プリズム製品を得た。このプリズム製品を用いて、上記の複屈折の相対評価を行ったところ、「1」であった。又、各面A,B,Cについて、面精度を測定したところ、A/B/Cについて、8μm/17μm/11μmであり、実施例1〜5よりかなり劣っていた。
【0118】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、プレスモールド成形に際して多段階の加熱を行うことによって、得られる成形体の残留応力を小さくでき、従って面精度及び機械的強度に優れた成形体が製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る光学プリズムの形状を示す平面図である。
【図2】図2は本発明の一実施態様に係る光学プリズムの製造に用いられるプリズム予備成形体の形状を示す平面図である。
【図3】図3はプレスモールド成形用金型の一例を示す要部断面図である。
【図4】図4はプレスモールド成形の温度変化とプレス圧変化とを示すグラフである。
【符号の説明】
2… プリズム製品
2a… 予備成形体
A… A面
B… B面
C… C面
4,6… 金型
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂からなる予備成形体を成形した後、
前記予備成形体の面精度よりも大きく5mm以下の押し代(t)で、前記予備成形体をプレスモールド用金型を用いてプレスモールド成形する際に、前記金型を一旦加熱した後に冷却する工程を一段階の加熱工程とし、当該加熱工程を複数段階繰り返す多段階の加熱を行い、
1段階目の加熱の後の冷却では、前記予備成形体へのプレス圧を、冷却初期時における第1初期冷却圧(P2)よりも、引き続き行われる第1中期冷却圧(P3)において、P3>P2となるように増大させるプレスモールド成形体の製造方法。 - 1段階目の加熱では、予備成形体を、この予備成形体を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−10)°C以上の温度である第1最高加熱温度(T1)まで加熱する請求項1記載のプレスモールド成形体の製造方法。
- 前記第1初期冷却圧(P2)から前記第1中期冷却圧(P3)へプレス圧を切り替える時の基準となる前記予備成形体の表面温度(T2)が、前記第1最高加熱温度(T1)に対して、(T1−50)°C<T2<(T1−5)°Cの関係にある請求項2に記載のプレスモールド成形体の製造方法。
- 2段階目以降の加熱では、その直前の段階の加熱後に、前記予備成形体を、この予備成形体を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以下の温度(T4)まで冷却した後、再度、前記予備成形体を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10°C低い温度以上の温度(T5)まで加熱し、T1>T4およびT5>T4である請求項1〜3のいずれかに記載のプレスモールド成形体の製造方法。
- T1>T5である請求項4に記載のプレスモールド成形体の製造方法。
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