JP3944074B2 - 円筒状部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状基体上に塗布層を有する円筒状部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒状基体上に塗布層を有する円筒状部材の製造方法、例えば、円筒状基体上に感光層などの塗布層を有する有機電子写真感光体の製造方法において、基体上に感光層用溶液などの塗布液を塗布した後、該塗布液を高周波による誘導加熱によって乾燥して塗布層を形成する場合、従来は、図18に示すように、外側から電子写真感光体を囲って巻かれた励磁コイルに流される高周波電流にて誘導加熱を行っていた(特開平9−114111号公報)。
【0003】
図18において、外周に塗布層を形成するための塗布液4が塗布され、導電性材料で作製された円筒状基体3を励磁コイル1’に同軸に遊嵌し、この円筒状基体3を昇降装置24のチャック25で保持して昇降させるとともに、不図示の回転機構で回転させながら、高周波発振器26から整合器22を介して励磁コイル1’に高周波電流を通電して円筒状基体3を誘導加熱している。円筒状基体3の温度は、ファイバー式放射温度計23で検出され、この検出信号は、制御装置21を介して高周波発振器26にフィードバックされて、円筒状基体3の温度が所定の値に制御される。
【0004】
しかしながら、電子写真感光体の外側に励磁コイルを設置すると、励磁コイルが塗布液の表面に当たり、傷つけてしまう恐れがあるため、励磁コイルと塗布液との距離の高い精度が要求される。
【0005】
また、円筒状基体を発熱させることで塗布液と基体との界面より乾燥するため、基体外側に塗布液中の溶剤が蒸発する。このとき、外側に励磁コイルが配置されているため、乾燥しづらくなり、乾燥むらが生じ画像に影響を及ぼす。
【0006】
さらに溶剤が蒸発する際、周辺の気中濃度が濃密となり、励磁コイルの自己昇温が生じた場合には火災の危険性が生じる。
【0007】
また、円筒状部材上で必要な熱を局所的に発生させる構成とした場合は、円筒状部材に対して励磁コイルの引き上げまたは引き下げを行うための細かい機構および制御が必要となってしまう。
【0008】
また、塗布液を乾燥する他の手段としては、熱風による乾燥方法(特開平10−239868号公報)が簡易な乾燥手段の1つとして従来から使用されている。
【0009】
しかし、円筒状基体を所定の温度に立ち上げる際の時間が遅いことや、円筒状基体上での温度むらが大きいこと、溶剤を用いた場合に高温となる熱風が発火原因となるなどの問題があり、特に円筒状部材の製造工程時間を短くしたい場合には不向きな構成であるといえる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、製造される円筒状部材のばらつきが少なく、かつ、コスト的にも有利で安全な乾燥ができる円筒状部材の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円筒状基体と該円筒状基体上に形成された少なくとも1層の塗布層とを有する円筒状部材を製造する方法であって、下記工程(a)、(b)および(c)を有することを特徴とする円筒状部材の製造方法である:
(a)該円筒状基体上に塗布液を塗布する塗布工程、
(b)工程(a)により塗布液が塗布された該円筒状基体の内部に、該円筒状部材の長手方向に直交する方向に磁束を発生させる励磁コイルと該励磁コイルの内部空間に設けられたコアとを有する誘導加熱手段を挿入し、該励磁コイルが該円筒状基体の内壁に沿うように、かつ、該コアの長手方向両端部が該円筒状基体の長手方向両端部よりも内側になるように、該誘導加熱手段を該円筒状基体の内部に配置する工程、
(c)工程(b)により該円筒状基体の内部に配置された誘導加熱手段の誘導加熱により該円筒状基体を発熱させて、該円筒状基体上に塗布された塗布液を乾燥させることによって、該塗布層を形成する乾燥工程。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本発明によれば、例えば、円筒状基体上に感光層などの塗布層を有する有機電子写真感光体の製造する場合、感光層などの塗布液が塗布された円筒状基体の内側であって、塗布液を乾燥させる位置に、励磁コイルを有する誘導加熱手段を配置することで、感光層などの塗布層に誘導加熱手段の接触による傷発生という問題が解決されるため、励磁コイルと塗布液との距離の精度が比較的緩やかであっても許容される。
【0015】
また、円筒状基体を発熱させる場合、内側に励磁コイルを配置することで、溶剤は円筒状基体との界面より乾燥し始め、外側に蒸発していくため、乾燥しやすくなり乾燥むらが生じにくくなる。
【0016】
さらに溶剤が蒸発する際、周辺の気中濃度が濃密となるが、誘導加熱手段を内側に配置することで、励磁コイルと溶剤との間に円筒状基体が存在するため、励磁コイルと溶剤との距離が遠くなり、火災の危険性も低下する。
【0017】
温度分布としては、励磁コイルを内側全周に沿った形状にすることで発熱むらを少なくして乾燥むらをなくすことができる。
【0018】
上記励磁コイルから円筒状部材の長手方向に直交する方向に磁束を発生させるためには、励磁コイルは、円筒状基体の長手方向に折り返して形成された形状であることが好ましい。
【0019】
また、上記励磁コイルの長手方向両端部を、上記円筒状基体の長手方向両端部よりも内側とすれば、円筒状基体の両端部における過熱を防いで平準化し、消費電力の効率もあげることができるため好ましい。
【0020】
また、円筒状基体と励磁コイルとの距離が大きくなると、力率が小さくなり、電源の利用効率が悪化してしまうため、上記円筒状基体内壁と上記励磁コイルとの距離が0mmより大きく5mm以下になるように励磁コイルを配置することが実用上好ましい。
【0021】
本発明に用いられる円筒状部材の製造装置には、上記励磁コイルを有する誘導加熱手段を上記円筒状基体の長手方向と直交する方向に駆動して、上記円筒状基体の内壁との間隙を変える駆動手段を有させてもよい。
【0022】
また、上記励磁コイルは、1つのコイルで構成しようとすると、形状が複雑となり製造コストがかさむ場合があるため、製造容易な形状の複数コイルを直列または並列接続して1つのコイルと見做し、配設することがコスト的に優位となることもある。
【0023】
また、1つのコイルで構成する場合でも、2つ以上のコイルにて構成する場合でも、励磁コイルを円筒状基体内壁に沿って配置することが、発熱むらをなくすためには必要である。
【0024】
また、励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせれば、円筒状基体内部に入り込む磁束が円筒状基体の長手方向に直交する方向において均一にでき、円周上における発熱分布も均一とすることができる。したがって、乾燥手段(誘導加熱手段)や円筒状基体(円筒状部材)を回転させることもなく加熱できるため、搬送上の機構設計も容易となる。
【0025】
また、上記誘導加熱手段は、上記励磁コイルと励磁コイルの内部空間に設けられたコアを有することが、発生した磁束をコントロールできる点で好ましい。
【0026】
上記コアの長手方向両端部が、上記円筒状基体の長手方向両端部よりも内側であれば、円筒状基体の両端部を通過する磁束を減らし、この両端部の過熱を防いで中間部の温度と平準化することができるためより好ましい。
【0027】
また、コアを複数の分割コアからなる構成とすれば、その分割コアの長手方向長さや配置などを工夫することによって、円筒状基体上に塗布された塗布液の乾燥を均一に行うことができるため好ましい。
【0028】
具体的には、以下(1)〜(3)の分割コア構成を採ることで、より効果的に、両端部の過熱を防いで中間部の温度と平準化することができる。
【0029】
(1) 上記コアを長手方向に少なくとも3分割した分割コアとして、長手方向中間部に位置する分割コアの長手方向の長さを、長手方向両端部に位置する分割コアの長手方向の長さよりも短くする。
【0030】
(2) 上記コアを長手方向に少なくとも3分割した分割コアとして、長手方向中間部に位置する分割コアと上記円筒状基体の内壁との間隔を、長手方向両端部に位置する分割コアと上記円筒状基体の内壁との間隔よりも広くする。
【0031】
(3) 上記コアを長手方向に少なくとも4分割した分割コアとして、長手方向中間部に位置する分割コア同士の間隔を、長手方向両端部に位置する分割コアとその分割コアと隣り合う分割コアとの間隔よりも広くする。
【0032】
なお、上述のとおり、上記コアの長手方向両端部は上記円筒状基体の長手方向両端部よりも内側であることが好ましいが、上記コアの長手方向両端部間の長さは、上記円筒状基体の長手方向両端部間の長さの1/3以上であることが好ましい。
【0033】
また、励磁コイルは、円筒状基体上の塗布された塗布液を誘導加熱する際に円筒状基体と同軸となるホルダーに固定されることが好ましい。誘導加熱手段が励磁コイルに加えてコアも有する場合には、コアも上記ホルダーに固定されていることが好ましい。
【0034】
また、上記励磁コイルは、内壁全周に沿った形状を維持するために、接着剤またはワニスを使用して硬化して形成することが好ましい。
【0035】
また、励磁コイル全体、または、誘導加熱手段全体を非磁性材料のチューブによって絶縁することが、励磁コイルの被膜破損や作業者の感電防止の観点から好ましい。
【0036】
また、本発明の製造方法が適用される円筒状部材としては、例えば、加熱ローラーやフィルムなどが挙げられ、円筒状基体が金属材料であれば加熱可能である。それらの中でも、円筒状基体が電子写真感光体用であれば、本発明の効果がより顕著に発現する。なぜならば、本発明の製造方法は、小型・低熱容量であるため加熱効率が良く、その上に均一な塗布層(感光層など)を形成することができ、良好な電子写真特性が得られるからである。なお、有機電子写真感光体を製造する場合は、通常、円筒状基体上に感光層用溶液などの塗布液を塗布し、塗布後乾燥させることで感光層などの層を形成する。これを1回または数回繰り返すことで有機電子写真感光体となる。
【0037】
以下、本発明の円筒状部材の製造方法の実施の形態を、図面を参照して詳述する。ただし、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0038】
図1、図2は、励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせた例を示す図であって、図1は、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表しており、図2は長手方向における断面図(コアの図示は省略)を表している。
【0039】
図1、図2において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5はコア、6はスペーサー、7はホルダー、10はリード端子を示す。
【0040】
図1において、円筒状基体3の内部に、励磁コイル1とコア5を支持したホルダー7を有する誘導加熱手段を配置し、不図示の高周波発振器から整合器を経て該誘導加熱手段に高周波電流を流すことで円筒状基体3を加熱し、円筒状基体3の外壁に塗布された塗布液(塗布層)4を乾燥させて円筒状部材2とする。
【0041】
コア5には、強磁性体を用いることで損失を減らすことができる。コア5は導電性を有するため励磁コイル1との間では絶縁を行う必要があり、非磁性材料で構成されるスペーサー6を使用する。
【0042】
ホルダー7も、やはり損失を生じさせないため、スペーサー6と同様、非磁性材料により構成する。
【0043】
なお、図1および図2では、コア5を入れた構成になっているが、コア5はなくても発熱、乾燥させることは可能である。
【0044】
円筒状基体3の内側に配設された励磁コイル1は、円筒状基体3の内壁全周に沿う、または、それに近い形状とし、非磁性材料で構成されるホルダー7にて保持させる。
【0045】
励磁コイル1は、必ずしも図1および図2に示すように円筒状基体3の内壁全周に沿わせなくてもよく、そのかわりに、円筒状基体を均一に加熱するために、励磁コイル1(を有する誘導加熱手段)または円筒状基体を回転させればよい。その点、励磁コイル1を円筒状基体3の内壁全周に沿わせれば、円筒状基体3内部に入り込む磁束が円筒状基体3の長手方向に直交する方向において均一にでき、円周上における発熱分布も均一とすることができる。したがって、誘導加熱手段または円筒状基体を回転させることもなく加熱できるため、搬送上の機構設計も容易となる。
【0046】
図3は、図1中の励磁コイル1に絶縁チューブ8を被覆させた例を示す図であって、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表している。なお、長手方向における断面図は、絶縁チューブの有無以外は図2と同様である。
【0047】
図3において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5はコア、6はスペーサー、7はホルダー、8は絶縁チューブ、10はリード端子を示す。
【0048】
図3においては、図1、図2で示した例と同様の動作で円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4の乾燥を行う。
【0049】
図4は、励磁コイルの長手方向両端部が円筒状基体の長手方向両端部よりも内側である例、つまり、円筒状基体の長さよりも励磁コイルの長さが短い例を示す図であって、長手方向における断面図(コアの図示は省略)を表している。なお、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図は図1と同様である。
【0050】
図4において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、10はリード端子を示す。
【0051】
図4においても、図1、図2で示した例と同様の動作で円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4の乾燥を行う。
【0052】
図2に示す例とは異なり、図4に示す例は、円筒状基体3の長さよりも励磁コイル1の長さが短いため、円筒状基体3の両端部を通過する磁束を減らすことができ、円筒状基体3の両端部の発熱を抑え、円筒状基体3の中央部の温度との差を減らすことができるので、円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4の加熱温度をさらに均一にすることができる。
【0053】
図5、図6は、励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状として、塗布液が塗布された円筒状基体を回転させる例を示す図であって、図5は、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表しており、図6は長手方向における断面図(コアの図示は省略)を表している。
【0054】
図5、図6において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5はコア、6はスペーサー、7はホルダー、9は円筒状基体3の回転方向、10はリード端子を示す。
【0055】
図5、図6においては、塗布液が塗布された円筒状基体3を回転させながら誘導加熱を行う以外は、図1〜図3で示した例と同様の動作で円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4の乾燥を行う。
【0056】
また、当然のことながら、図4に示すように円筒状基体の長さよりも励磁コイルの長さを短くしてもよいし、また、図3に示すように励磁コイルに絶縁チューブを被覆してもよい。また、励磁コイル1を有する誘導加熱手段を回転させてもよい。
【0057】
図7、図8、図9は、励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状とした例を示す図であって、図7は、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表しており、図8は、図7のf8の矢印の向きから見たときの長手方向における断面図(コアを明示)、図9は、図7のf9の矢印の向きから見たときの長手方向における断面図(コアを明示)を表している。さらに、図7、図8、図9で示す例は、コアの長手方向両端部が円筒状基体の長手方向両端部よりも内側である例、つまり、円筒状基体の長さよりもコアの長手方向長さが短い例である。
【0058】
図7、図8、図9において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5はコア、6はスペーサー、7はホルダー、10はリード端子、11はコアと円筒状基体との間隙、12はコアの長さ、f8は図8の断面、f9は図9の断面を示す。
【0059】
図7、図8、図9においては、図5、図6で示した例と同様の動作で円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4の乾燥を行う。
【0060】
図7、図8、図9に示す例は、コア5の長手方向両端部が円筒状基体3の長手方向両端部よりも内側であるため、円筒状基体3の両端部を通過する磁束を減らすことができ、円筒状基体両端部の発熱を抑え、円筒状基体3の中央部の温度との差を減らすことができるので、円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4の加熱温度をさらに均一にすることができる。
【0061】
次に、コアを分割する例と、さらに、分割されたコア(分割コア)の配置を変える例および形状の違う分割コアを複数使用する例を示す。
【0062】
また、当然のことながら、図4に示すように円筒状基体の長さよりも励磁コイルの長さを短くしてもよいし、また、図3に示すように励磁コイルに絶縁チューブを被覆してもよい。また、励磁コイル1を有する誘導加熱手段を回転させてもよい。
【0063】
以下に挙げる例は、総て、円筒状基体の長さよりも励磁コイルの長さが長く、かつ、円筒状基体の長さよりもコアの長手方向長さが短く、かつ、励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状として、塗布液が塗布された円筒状基体を回転させる例であるが、当然のことながら、図1、図2に示すように励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせてもよいし、また、図4に示すように円筒状基体の長さよりも励磁コイルの長さを短くしてもよいし、またさらには、図3に示すように励磁コイルに絶縁チューブを被覆してもよい。
【0064】
また、コアを分割した場合、すなわち、分割コアを採用した場合は、「コアの長手方向両端部」とは、両端部に位置する分割コアそれぞれの端部であって、かつ、中間部に位置する分割コアと対向しない側の端部を意味する。
【0065】
図10は、コアを分割した例を示す図であり、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表している。
【0066】
図10において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5aは分割コア、10はリード端子、11は分割コアと円筒状基体との間隔、12はコアの長手方向長さを示す。
【0067】
図10においては、分割コア5aを5つ使用しているが、分割コアの使用数を変更したり、長手方向長さが異なる複数種の分割コアを併用したりすることで、容易に円筒状基体の長さや励磁コイルの長さの変更に対応することができる。
【0068】
図11は、コアを長手方向に4分割した分割コアを採用した例であって、長手方向中間部に位置する2つの分割コアの長手方向の長さが、長手方向両端部に位置する2つの分割コアの長手方向の長さより短く、かつ、長手方向中間部に位置する分割コア同士の間隔が、長手方向両端部に位置する分割コアとその分割コアと隣り合う分割コアとの間隔より広い場合を示す図である。
【0069】
図11において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5a、5bは分割コア、10はリード端子、11は分割コアと円筒状基体との間隔、12はコアの長手方向長さを示す。図のとおり、長手方向長さは両端部に位置する5aの方が中間部に位置する5bよりも長い。
【0070】
図11に示すように、長手方向長さが異なる複数種の分割コアを用いたり、分割コア同士の間隔を変えたりすることで、円筒状基体の長手方向の温度の平準化を図ることができる。なお、各分割コアと円筒状基体の間隔は同一である。このコアの配置で、発明者らの実験では、10〜20℃程度の平準化効果を確認した。
【0071】
円筒状部材を加熱乾燥する場合には、両端部の不図示の保持部材などとの接触による放熱を考慮すると、円筒状基体の中央部と比べて両端部の温度は下がる。さらに、乾燥時の温度を許容範囲に維持する必要もある。
【0072】
そこで、分割コアの長手方向長さや配置によって長手方向の磁気抵抗を変えることによって、円筒状基体を透過する磁束を加減して加熱温度を制御することができる、すなわち、円筒状基体の発熱量を増やすべき両端部の分割コアの密度を密に、発熱量を減らすべき中間部の分割コアの間隔を疎にすることによって、発熱分布を平準化することができるのである。
【0073】
なお、図11においては、コアを4分割し、4つの分割コアを用いた例で説明したが、コアを少なくとも2分割し、これらの分割コアの間に磁気抵抗となる空隙を形成する構成とすれば、中間部の発熱量を両端部に比べて減らすことはできる。
【0074】
図12は、コアを長手方向に5分割した分割コアを採用した例であって、円筒状基体直径方向の長さ(厚さ)が、円筒状基体長手方向の中間部にいくほど短く(薄く)なる場合を示す図である。
【0075】
図12において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5a、5c、5dは分割コア、10はリード端子、11は分割コアと円筒状基体との間隔、12はコアの長手方向長さを示す。図のとおり、円筒状基体直径方向の長さ(厚さ)は、5aよりも5bの方が短く(薄く)、5bよりも5cの方が短い(薄い)。
【0076】
図12に示すように、分割コアの厚さを異ならせることで、円筒状基体の長手方向の温度の平準化を図ることができる。なお、各分割コアと円筒状基体の間隔は同一である。このコアの配置で、発明者らの実験では、平均30℃の平準化効果を確認した。
【0077】
図13は、コアを長手方向に5分割した分割コアを採用した例であって、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔が、円筒状基体長手方向の中間部にいくほど広くなる場合を示す図である。
【0078】
図13において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5aは分割コア、10はリード端子、11は分割コアと円筒状基体との間隔、12はコアの長手方向長さを示す。図のとおり、分割コアとして5aの1種類をだけ用いて、その分割コアの配置する場所を変えることで、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔を変えている。
【0079】
図13に示すように、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔を異ならせることで、円筒状基体の長手方向の温度の平準化を図ることができる。この分割コアの配置で、発明者らの実験では、平均30℃の平準化効果を確認した。また、図13で示す例では、単一種の分割コアで平準化効果が得られるため、複数種用いる場合に比べてコアの種類の増加を防ぐことができる利点もある。
【0080】
図14も、図13と同様に、コアを長手方向に5分割した分割コアを採用した例であって、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔が、円筒状基体長手方向の中間部にいくほど広くなる場合を示す図である。
【0081】
図14において、1は励磁コイル、2は円筒状部材、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、5a、5c、5dは分割コア、10はリード端子、11は分割コアと円筒状基体との間隔、12はコアの長手方向長さを示す。図のとおり、円筒状基体直径方向の長さ(厚さ)は、5aよりも5bの方が短く(薄く)、5bよりも5cの方が短い(薄い)。そして、図11と異なる点は、複数種(3種類)の分割コアを採用して、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔を変えている点である。
【0082】
図14に示すように、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔を異ならせることで、円筒状基体の長手方向の温度の平準化を図ることができる。この分割コアの配置で、発明者らの実験では、平均30℃の平準化効果を確認した。
【0083】
なお、図10〜図14で例示したように、分割コアを用いる場合は、分割コア同士の間隔を空けて配置し、その空けられた間隔の長手方向長さの総和が、コアの長手方向両端部間距離の10〜50%であることが好ましい。
【0084】
なお、本発明においては、「平準化効果」は、次のように確認した。
【0085】
すなわち、上下から樹脂材によって保持した円筒状基体の表面に放射率補正用テープを貼り付けた上で、サーモカメラを用いて円筒状基体の温度分布を測定した。
【0086】
次に、円筒状基体内壁と励磁コイルとの距離についての実験に関して、図15(a)〜(d)および図16(a)、(b)を用いて説明する。
【0087】
図15(a)は、励磁コイルを有する誘導加熱手段を円筒状基体の内部に挿入したときの状態を示し、図15(c)は、その状態の磁束分布を示す。図15(a)において、円筒状基体内壁と励磁コイルとの距離は10mmである。
【0088】
また、図15(b)は、励磁コイルを有する誘導加熱手段を円筒状基体内部に挿入した後、不図示の駆動手段を用いて励磁コイルを移動させて、円筒状基体内壁と励磁コイルとの距離を5mmにした状態を示し、図15(d)は、その磁束分布を示す。
【0089】
図15(a)、(b)において、1は励磁コイル、7はホルダー、13は励磁コイル1を有する誘導加熱手段、3は円筒状基体、4は円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)、14は温度検知素子を示す。
【0090】
図15(c)、(d)において、1は励磁コイル、3は円筒状基体、15は磁束、i、j、kは測定位置を示す。
【0091】
また、図16(a)は、図15(a)のi、j、kのそれぞれの測定位置における円筒状基体の断面を流れる電流値を示すグラフであり、図16(b)は、図15(b)のi、j、kのそれぞれの測定位置における円筒状基体の断面を流れる電流値を示すグラフである。
【0092】
まず、図15(a)で示すように、励磁コイル1を有する誘導加熱手段13をほぼ同軸にして円筒状基体3の内部に挿入した後、次に、図15(b)に示すように、誘導加熱手段13を円筒状基体3の内壁に近づけ、励磁コイル1への高周波電流の通電で円筒状基体3、そして円筒状基体上に塗布された塗布液(塗布層)4を加熱した。
【0093】
すると、図15(c)および(d)に示すように、励磁コイル1が図3(b)の位置にある場合は、図15(a)の位置にある場合と比べて、磁束15が円筒状基体3の内部により深く進入して、図16(a)および(b)で示すように、より多くの電流を流すことができた。
【0094】
すなわち、励磁コイル1が図15(a)の位置にある場合の電流グラフ図16(a)で示す電流値と比べて、図15(b)の位置にある場合の電流グラフ図16(b)で示すように電流が増え、円筒状基体3への供給電力が増えた。
【0095】
最後に、本発明に用いられる円筒状部材の製造装置の回路図(ブロック図)の一例を図17に示す。ただし、円筒状基体や誘導加熱手段などの形態が本図のものに限定されるわけではない。
【0096】
図17において、外周に塗布層を形成するための塗布液4が塗布され、導電性材料で作製された円筒状基体3の内部に、励磁コイル1を有する誘導加熱手段を配置する。そして、不図示の回転機構で円筒状基体3を回転させながら、高周波発振器26から整合器22を介して励磁コイル1に高周波電流を通電することで、円筒状基体3を誘導加熱する。円筒状基体3の温度は、温度検知素子14で検出され、この検出信号は、制御装置21を介して高周波発振器26にフィードバックされて、円筒状基体3の温度が所定の値に制御される。このようにして、円筒状基体3上の塗布液(塗布層)4を乾燥させて円筒状部材2とする。もちろん、円筒状基体3を回転させるのではなく、励磁コイル1を有する誘導加熱手段を回転させながら誘導加熱を行ってもよいし、励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせることで、円筒状基体3や誘導加熱手段の回転機構を採用せずに誘導加熱を行ってもよいし、コア(分割コアを含む)を採用して誘導加熱を行ってもよい。
【0097】
【発明の効果】
本発明によって、製造される円筒状部材のばらつきが少なく、かつ、コスト的にも有利で安全な乾燥ができる円筒状部材の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせた例を示す図であって、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表す。
【図2】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせた例を示す図であって、長手方向における断面図(コアの図示は省略)を表す。
【図3】図1中の励磁コイル1に絶縁チューブ8を被覆させた例を示す図であって、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表す。
【図4】励磁コイルの長手方向両端部が円筒状基体の長手方向両端部よりも内側である例、つまり、円筒状基体の長さよりも励磁コイルの長さが短い例を示す図であって、長手方向における断面図(コアの図示は省略)を表す。
【図5】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状として、塗布液が塗布された円筒状基体を回転させる例を示す図であって、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表す。
【図6】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状として、塗布液が塗布された円筒状基体を回転させる例を示す図であって、長手方向における断面図(コアの図示は省略)を表す。
【図7】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状とした例を示す図であって、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表す。
【図8】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状とした例を示す図であって、図7のf8の矢印の向きから見たときの長手方向における断面図(コアを明示)を表す。
【図9】励磁コイルを円筒状基体の内壁全周に沿わせずに半円状とした例を示す図であって、図7のf9の矢印の向きから見たときの長手方向における断面図(コアを明示)を表す。
【図10】コアを分割した例を示す図であり、円筒状部材の長手方向に直交する方向における断面図を表す。
【図11】コアを長手方向に4分割した分割コアを採用した例であって、長手方向中間部に位置する2つの分割コアの長手方向の長さが、長手方向両端部に位置する2つの分割コアの長手方向の長さより短く、かつ、長手方向中間部に位置する分割コア同士の間隔が、長手方向両端部に位置する分割コアとその分割コアと隣り合う分割コアとの間隔より広い場合を示す図である。
【図12】コアを長手方向に5分割した分割コアを採用した例であって、円筒状基体直径方向の長さ(厚さ)が、円筒状基体長手方向の中間部にいくほど短く(薄く)なる場合を示す図である。
【図13】コアを長手方向に5分割した分割コアを採用した例であって、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔が、円筒状基体長手方向の中間部にいくほど広くなる場合を示す図である。
【図14】コアを長手方向に5分割した分割コアを採用した例であって、分割コアと円筒状基体の内壁との間隔が、円筒状基体長手方向の中間部にいくほど広くなる場合を示す図である。
【図15】(a)は、励磁コイルを有する誘導加熱手段を円筒状基体の内部に挿入したときの状態を示し、(c)は、その状態の磁束分布を示し、(b)は、励磁コイルを有する誘導加熱手段を円筒状基体内部に挿入した後、不図示の駆動手段を用いて励磁コイルを移動させて、円筒状基体内壁と励磁コイルとの距離を狭くした状態を示し、(d)は、その磁束分布を示す。
【図16】(a)は、図15(a)のi、j、kのそれぞれの測定位置における円筒状基体の断面を流れる電流値を示すグラフであり、(b)は、図15(b)のi、j、kのそれぞれの測定位置における円筒状基体の断面を流れる電流値を示すグラフである。
【図17】円筒状部材の製造装置の回路図(ブロック図)の一例である。
【図18】外側から電子写真感光体を囲って巻かれた励磁コイルに流される高周波電流にて誘導加熱を行っていた従来技術を示す図である。
【符号の説明】
1 励磁コイル
1’ 励磁コイル
2 円筒状部材
3 円筒状基体
4 塗布液(塗布層)
5 コア
6 スペーサー
7 ホルダー
8 絶縁チューブ
9 円筒状基体の回転方向
10 リード端子
11 コアと円筒状基体との間隙
12 コアの長さ
13 励磁コイルを有する誘導加熱手段
14 温度検知素子
15 磁束
f8 図8の断面
f9 図9の断面
i 測定位置
j 測定位置
k 測定位置
21 制御装置
22 整合器
23 ファイバー式放射温度計
24 昇降装置
25 チャック
26 高周波発振器
Claims (11)
- 円筒状基体と該円筒状基体上に形成された少なくとも1層の塗布層とを有する円筒状部材を製造する方法であって、下記工程(a)、(b)および(c)を有することを特徴とする円筒状部材の製造方法:
(a)該円筒状基体上に塗布液を塗布する塗布工程、
(b)工程(a)により塗布液が塗布された該円筒状基体の内部に、該円筒状部材の長手方向に直交する方向に磁束を発生させる励磁コイルと該励磁コイルの内部空間に設けられたコアとを有する誘導加熱手段を挿入し、該励磁コイルが該円筒状基体の内壁に沿うように、かつ、該コアの長手方向両端部が該円筒状基体の長手方向両端部よりも内側になるように、該誘導加熱手段を該円筒状基体の内部に配置する工程、
(c)工程(b)により該円筒状基体の内部に配置された誘導加熱手段の誘導加熱により該円筒状基体を発熱させて、該円筒状基体上に塗布された塗布液を乾燥させることによって、該塗布層を形成する乾燥工程。 - 前記励磁コイルが、前記円筒状基体の内壁全周に沿って配置される請求項1に記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記励磁コイルが、前記円筒状基体の長手方向に折り返して形成された励磁コイルである請求項1または2に記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記励磁コイルが、2つ以上のコイルで構成されて、前記円筒状基体の内壁全周に沿って配置される請求項1〜3のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記工程(b)の際、前記円筒状基体の内壁と前記励磁コイルとの距離が0mmより大きく5mm以下になるように前記誘導加熱手段が配置される請求項1〜4のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記工程(b)の際、前記励磁コイルの長手方向両端部が前記円筒状基体の長手方向両端部よりも内側になるように前記誘導加熱手段が配置される請求項1〜5のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記コアが長手方向に少なくとも3分割した分割コアであって、長手方向中間部に位置する分割コアの長手方向の長さが、長手方向両端部に位置する分割コアの長手方向の長さより短い請求項1〜6のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記コアが長手方向に少なくとも3分割した分割コアであって、長手方向中間部に位置する分割コアと前記円筒状基体の内壁との間隔が、長手方向両端部に位置する分割コアと前記円筒状基体の内壁との間隔より広い請求項1〜7のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記コアが長手方向に少なくとも4分割した分割コアであって、長手方向中間部に位置する分割コア同士の間隔が、長手方向両端部に位置する分割コアとその分割コアと隣り合う分割コアとの間隔より広い請求項1〜8のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記励磁コイルと前記コアが、前記円筒状基体の内部に同軸に設けられたホルダーに固定されている請求項1〜9のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
- 前記円筒状基体が電子写真感光体用基体である請求項1〜10のいずれかに記載の円筒状部材の製造方法。
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