JP3943864B2 - 電子源基板及びその製造方法並びに電子源基板を用いた画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子を用いた電子源基板、及びその製造方法、並びに電子源基板を用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子を利用した画像形成装置として、冷陰極電子放出素子を多数形成した電子源基板と、透明電極および蛍光体を具備した陽極基板とを平行に対向させ、真空に排気した平面型の電子線表示パネルが知られている。このような画像形成装置において、電界放出型電子放出素子を用いたものは、例えば、I.Brodie,”Advanced technology:flat cold−cathode CRTs”,Information Display,1/89,17(1989)に開示されたものがある。
【0003】
また、表面伝導型電子放出素子を用いたものは、例えば、USP5066883号等に開示されている。平面型の電子線表示パネルは、現在広く用いられている陰極線管(cathode ray tube:CRT)表示装置に比ベ、軽量化、大画面化を図ることができ、また、液晶を利用した平面型表示パネルやプラズマ・ディスプレイ、エレクトロルミネッセント・ディスプレイ等の他の平面型表示パネルに比べて、より高輝度、高品質な画像を提供することができる。
【0004】
特に、表面伝導型電子放出素子は構成が単純で製造も容易であり、電界放出型電子放出素子のようにフォトリソグラフィ技術を駆使した複雑な製造工程を経ることなく、大面積にわたって多数素子を配列形成した電子源基板を作製できる利点がある。
【0005】
図10、図11は、特開平6−342636号公報において開示された、表面伝導型電子放出素子を用いた電子源基板の一例を示したものである。図10は電子源の一部の平面図を示している。ここで7は上配線、6は下配線、101は表面伝導型電子放出素子、8は層間絶縁層である。図11は、図10における表面伝導型電子放出素子101を取り出した斜視図である。図11中、1は基体、2,3は素子電極、4は電子放出部を有する導電性薄膜、5は電子放出部であり、素子電極2,3はそれぞれ下配線6、上配線7に接続され、下配線6と上配線7は層間絶縁層8によって電気的に絶縁されている。
【0006】
ここで、マトリクス状に配置された上配線7と下配線6にそれぞれ走査信号、情報信号として所定の電圧を順次印加することで、マトリクスの交点に位置する所定の電子放出素子101を選択的に駆動できる。
【0007】
このようなマトリクス配置された電子源基板は、比較的簡単なフォトリソグラフィ技術を用いることによって作製できるが、より大きな基板を形成する場合は、印刷技術を用いるのが好ましい。特に、走査信号を印加する上配線7については、1ラインに接続された素子数が多くなるほど配線を流れる電流量が増加するため、配線抵抗による電圧降下が生じるので、配線は厚膜で形成して抵抗をできるだけ小さくするのが好ましい。
【0008】
特開平8−180797号公報等には、配線及び層間絶縁層をスクリーン印刷法により形成する製造方法が開示されている。その他の部材についても、例えば、特開平9−17333号公報等には、素子電極をオフセット印刷法等により形成する製造方法が開示されており、導電性薄膜においては、インクジェット法により形成する製造方法が特開平9−69334号公報等に開示されている。これらの印刷技術を用いることで、大面積の電子源基板を容易に製造することができる。
【0009】
次に、表面伝導型電子放出素子について説明する。表面伝導型電子放出素子は基板上に形成された小面積の導電性薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型電子放出素子としては、SnO2薄膜を用いたもの[M.I.Elinson,RadioEng.Electron Phys.,10,1290(1965)]、[G.Dittmer:“Thin Solid Films”,9,317(1972)]、In2O3/SnO2薄膜によるもの[M.Hartwell and C.G.Fonstad:“IEEE Trans.ED Conf.”,519(1975)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久他:真空、第26巻、第1号、22頁(1983)]等が報告されているが、本出願人は、例えば、特開平2−56822号公報において、酸化パラジウム等の金属微粒子膜を用いた表面伝導型電子放出素子を開示している。
【0010】
表面伝導型電子放出素子を作製するにあたっては、通常、導電性薄膜4にフォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を形成するのが一般的である。フォーミングとは導電性薄膜4の両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧、例えば1V/分程度を印加通電し、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、亀裂を形成する処理である。
【0011】
なお、フォーミング処理を施した後、導電性薄膜4に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより、亀裂近傍から電子を放出せしめるものである。このとき、電子の放出する部位を電子放出部5と呼ぶ。
【0012】
さらに、たとえば特開平7−235255号公報に開示されているように、フォーミングを終えた素子に対して活性化処理と呼ばれる処理を施し、より良好な電子放出を得ることができる。活性化工程は、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、フォーミング処理同様、素子にパルス電圧の印加を繰り返すことで行うことができ、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが著しく増加するようになる。
【0013】
このような処理を経て作製された表面伝導型電子放出素子は、例えばフラットパネルディスプレイ等の画像形成装置に適用可能な電子源として十分な電子放出特性を有する。
【0014】
従って、上述のように、印刷技術を用いて、表面伝導型電子放出素子からなる大面積の電子源基板を作製することによって、大面積の画像形成装置、例えば大画面フラットパネルディスプレイを実現することができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、十分な電子放出量と寿命、安定性を有する電子放出素子を大面積の電子源基板に形成する場合、以下に述べるような問題がある。
【0016】
表面伝導型電子放出素子は、その電子放出部が基板表面に接して形成されるために、特開平1−279538号公報において開示されているように、例えば、ソーダライムガラス表面にシリカを主成分とする材料で被覆層を形成し、その上に表面伝導型電子放出素子を形成することにより、十分な電子放出量と寿命、安定性を有する電子放出素子が得られ、望ましい。
【0017】
ところが、シリカを主成分とする被覆層は、被覆層上に配置した金属の基板への拡散を抑えてしまう。金属が基板内部に拡散し難いと、熱処理工程を繰り返した場合、基板表面や基板と他の部材との界面を伝わって、基板表面に平行な方向への拡散が生じる場合がある。
【0018】
このような拡散により、金属配線材料が、導電性薄膜と接触する場合がある。ここで、更に熱処理が行われたり、駆動のための電界が印加されると、熱や電界によるマイグレーションによって配線金属と導電性薄膜が混合し、電子放出素子が本来の電子放出特性を維持することが困難になり、特性の劣化や変動を引き起こす。従って、できる限り配線金属の導電性薄膜への拡散を抑える必要があった。
【0019】
また、導電性薄膜をインクジェット法で形成する場合には、基板の表面を介する両素子電極間にインクを形成することが必須となるが、このとき、基板の表面と素子電極の表面においてインクとの濡れ性が大きく異なる場合には、導電性薄膜の形状がいびつになったり、また導電性薄膜としての特性、例えば膜厚や抵抗値にばらつきを生じやすくなり、ひいては、電子放出特性のばらつきを生じさせてしまう場合がある。この濡れ性に関しては、導電性薄膜の形状のほかに、インクとインクの形成面の間の角度を示す接触角で比較することが可能である。
【0020】
本発明の目的は、上述した解決すべき技術課題を解決し、配線金属が導電性薄膜と接触することなく、結果的に配線金属の導電性薄膜への拡散による電子放出素子の電子放出特性の劣化や変動を防止した、高性能な電子源基板及びその製造方法を提供することにある。
【0021】
また、本発明の別の目的は、導電性薄膜をインクジェット法で形成する場合に、基板の表面と素子電極の表面においてインクとの濡れ性が近く、結果的に導電性薄膜の形状がそろった高性能な電子源基板及びその製造方法を提供することにある。
【0022】
また、本発明の別の目的は、かかる電子源基板を用いて良好な画像を長時間にわたり保持し得る大画面の平面型の画像形成装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題、すなわち、配線金属の導電性薄膜への拡散による電子放出素子の特性の劣化を解決するために成されたものであり、下述する構成のものである。
【0024】
即ち、本発明の電子源基板は、基板上に、一対の素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子放出素子と、該素子電極に接続された金属配線と、を有する電子源基板であって、前記素子電極は、金属ルテニウムを少なくとも含み、該金属ルテニウムの表面に酸化ルテニウムを具備し、前記金属配線は、構成元素の一部、或いは全てが、金属ルテニウムよりも標準単極電位が大きい金属であることを特徴とする。
また、本発明の電子源基板は、基板上に、一対の素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子放出素子と、該素子電極に接続された金属配線と、を有する電子源基板であって、前記素子電極は、金属ルテニウムを少なくとも含み、該金属ルテニウムの表面に酸化ルテニウムを具備し、前記基板は、前記素子電極或いは前記金属配線と接する部位において、主成分がシリカよりなることを特徴とする。
【0025】
上記本発明の電子源基板は、さらなる特徴として、
「前記金属ルテニウムよりも標準単極電位が大きい金属がAgである」こと、
「前記電子放出部を有する導電性薄膜は、PdないしPdO、あるいはそれらの混合物よりなる」こと、
「前記電子放出素子は、表面伝導型電子放出素子である」こと、
「前記電子放出素子が複数個配置され、入力信号に応じて電子を放出する」こと、
「前記電子放出素子を複数個並列に配置し、個々の素子の両端を前記金属配線に接続した電子放出素子の行を複数もち、更に、該電子放出素子に変調信号を印加する変調手段を有する」こと、
「互いに電気的に絶縁されたm本のX方向金属配線とn本のY方向金属配線とに、前記電子放出素子の一対の素子電極とを接続し、電子放出素子をマトリクス状に配列した」こと、
をも包含する。
【0026】
本発明の電子源基板の製造方法は、ルテニウム金属を形成した後に該ルテニウム金属の表面を酸化処理することにより素子電極を形成する工程を有することを特徴とする。
【0027】
上記本発明の電子源基板の製造方法は、さらなる特徴として、
「インクジェット法により導電性薄膜を形成する工程を有する」こと、
「金属ぺーストの印刷と加熱焼成によって金属配線を形成する工程を有する」こと、
をも包含する。
【0028】
本発明の画像形成装置は、入力信号にもとづいて画像を形成する画像形成装置であって、少なくとも、画像形成部材と上記のいずれかの電子源基板より構成されたことを特徴とする。
【0029】
本発明は、電子源基板として、シリカを主成分とした被覆層を用いた良好な電子放出特性を有する素子を使用する場合に効果があり、特に、印刷によって配線を形成する場合に有効である。本発明の電子源基板は、配線金属が導電性薄膜へ拡散し難いため、電子放出特性の劣化を効果的に防止できる。また、本発明は、導電性薄膜をインクジェット法で形成する場合に有効である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【0031】
図1は、本発明の電子源基板の一例を示す概略構成図(平面図)で、電子源基板の一部のみを示している。また、図2は、図1に示した電子源基板の一つの電子放出素子を拡大した鳥瞰図である。そして、図3は、図2におけるA−A’断面図である。図1、図2、図3において、1は基体、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部、6,7はそれぞれ素子電極2,3に接続された配線、8は配線6と配線7を電気的に絶縁するための層間絶縁層、9は被覆層である。なお、配線6,7はそれぞれ、図1中の座標に照らして、Y方向配線、X方向配線と呼び、また層間絶縁層8との位置関係により、それぞれ下配線、上配線と呼ぶことがある。
【0032】
基体1は、一般に青板ガラスと呼ばれるソーダライムガラスが安価であるため好ましく用いられるが、ソーダライムガラス中に含有されるナトリウムを一部カリウムに置換して歪み点を上昇させた、高歪み点ガラスを用いることができる。いずれの場合も、本発明で用いられるガラス基体はナトリウムを含有するため、大量生産可能なフロート法を用いて基体を形成することができ、例えば、対角1m以上の大面積の基体も安価に作製することができるものである。なお、本発明の電子源基板及びそれを用いた画像形成装置は、その製造過程で何度かの熱処理工程を行なう。この時の熱処理温度の設定、及びその熱処理温度における基板の歪みの許容値に応じて上記基体の材料を選択すればよい。
【0033】
被覆層9は、基体1から電子放出素子へのナトリウムの拡散を防止する役割と、電子放出素子に電流が流れるときの発熱を基体1に伝え難くする役割をもった被覆層である。上記の役割を満足するために、シリカを主成分とした被覆層を好ましく用いることができる。ここでシリカとは、SiO2、SiO、およびその混合物を意味する。中でも、SiO2の層や、リンを数wt%含有させたリンドープシリカガラス(PSG)からなる層がより好ましく用いられる。
【0034】
対向する素子電極2,3の材料としては、以後の熱処理工程を経ても安定した導電性を有し、かつ配線6,7を構成する金属が熱拡散しないものが好ましく、また、導電性薄膜4をインクジェット法で形成する場合には、基体1上に形成された被覆層9と濡れ性の近いものが好ましく、表面にルテニウムの酸化物を具備する材料が用いられる。特にルテニウム金属と酸化ルテニウムにより構成される場合にはルテニウム金属を部分的に酸化することにより容易に形成可能であり、好ましい。なお、素子電極2,3は、基体1との密着性を向上させるためにチタンなどを下びき層とした複数の層よりなる積層構造であっても一向に構わなく、この場合、素子電極2,3の表面にルテニウムの酸化物を具備するようにすればよい。なお、素子電極2,3の膜厚は、数十nm程度とすると十分な導電性を有しかつ導電性薄膜4のステップカバレージが良好となり好ましい。
【0035】
導電性薄膜4の熱的安定性は電子放出特性の寿命を支配する重要なパラメータであるため、導電性薄膜4の材料としてより高融点な材料を用いるのが望ましい。しかしながら、通常、導電性薄膜4の融点が高いほど後述する通電フォーミングが困難となり、電子放出部5形成のためにより大きな電力が必要となる。さらに、その結果得られる電子放出部5は、電子放出し得る印加電圧(しきい値電圧)が上昇するという問題が生じる場合がある。従って、導電性薄膜4の材料は、適度に高い融点を有し、比較的低いフォーミング電力で良好な電子放出部5が形成可能な材料、形態のものを選ぶのがよい。
【0036】
上述の条件に対し、PdOは、有機パラジウム化合物の大気中焼成により容易に薄膜形成できること、半導体であるため比較的電気伝導度が低くフォーミングに有する電力が低いこと、電子放出部5形成時あるいはその後、容易に還元して金属パラジウムとすることができるので膜抵抗を低減し得ること、等から導電性薄膜4に好適な材料として用いることができる。その膜厚は、素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述するフォーミング条件等を考慮して設定される。
【0037】
電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形成された、例えば、亀裂等の高抵抗部であり、その亀裂内部に数nmより数十nmの粒径の導電性微粒子、すなわち、PdOやPdOが還元して生じたPd金属の微粒子を多数個有する場合もあり、導電性薄膜4の膜厚および後述する通電処理条件等の製法に依存している。また、前記導電性微粒子は、導電性薄膜4を構成する材料の元素の一部あるいは全てと同様のものである。
【0038】
また、電子放出部5の一部、更には、電子放出部5の近傍の導電性薄膜4には、後述する活性化工程を経ることにより、炭素及び炭素化合物を有する。この炭素及び炭素化合物の役割については、電子放出部5を構成する物質として電子放出特性を支配するものと推察されている。
【0039】
配線6,7は、図1に示すように、複数の電子放出素子に給電するためのものである。m本のX方向配線7は、DX1,DX2、…、DXm、n本のY方向配線6は、DY1、DY2、…、DYnからなり、それぞれ、多数の電子放出素子にほぼ均等な電圧が供給されるように、材料、膜厚、配線幅等が設計される。これらm本のX方向配線7とn本のY方向配線6の間には、層間絶縁層8が設置され、電気的に分離されて、マトリクス配線を構成する(このm、nは、共に正の整数)。
【0040】
配線6,7としては、熱処理工程を経ても安定した導電性を有する金属が好ましいが、特に、大面積の基板を安価に形成できる印刷法が適用できるものが望ましい。金属ぺーストをスクリーン印刷によってパターン形成し、熱処理して得られる金属膜は、数μm以上の厚膜の抵抗が小さい配線を大面積に形成するのに適しているため、印刷可能な金属ペーストが比較的安価に得られる、Agのぺースト、すなわち、それを熱処理して得られるAgが好ましく用いられる。また、例えば、Pdを含有したAgペースト等を用いてもよい。
【0041】
層間絶縁層8の形状、材料、膜厚、製法は、配線6と配線7の交差部の電位差に耐え得るように適宜設定できるが、配線同様、印刷法により形成できるものが好ましく、またガラスペーストを印刷して得られるガラスの厚膜層が用いられる。
【0042】
図1に示した構成、すなわちマトリクス配置の構成において、X方向配線7には、X方向に配列した電子放出素子5の行を選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続され、Y方向配線6には、Y方向に配列した電子放出素子の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給され、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0043】
一方、このほかに、並列に配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数個配し、この配線と直交する方向で、該電子放出素子の上方に配した制御電極により、電子放出素子からの電子を制御駆動するはしご状配置のもの等があるが、本発明は、特にこれらの配置によって限定されるものではない。
【0044】
前述したように、本発明では、配線6,7は、素子電極2,3と接続され、素子電極2、3は、表面にルテニウムの酸化物を具備している。
【0045】
素子電極2,3が、Pt,Au等の貴金属で形成され、且つ、配線6、7がAgよりなる場合、配線6,7を構成する金属、すなわちAgが、上述の貴金属よりなる素子電極2,3とシリカよりなる被覆層9の界面に沿って拡散するという現象がみられる。この拡散の詳しいメカニズムは明確にはなっていないが、配線6,7を構成する金属が一旦、素子電極2,3を構成する金属中に拡散し、素子電極2,3と被覆層9の界面に達し、その後、該界面における粒界を伝わる拡散に起因して起こっていると思われる。なお、Pt,Auのいずれの標準単極電位も、Agと比較して高い。
【0046】
一方、素子電極2,3が、最表面にルテニウムの酸化物を具備しており、且つ、配線6、7がAgよりなる場合、配線金属は素子電極2,3中に拡散し難く、上記界面拡散はほとんど起こらない。これは、Ruの標準単極電位が、Agと比較して小さいためであり、Agがイオン化して素子電極2,3中に拡散するのを効果的に抑制するためであると考えられる。
【0047】
先述したように、配線6,7を構成する金属が界面拡散する場合には、最終的には導電性薄膜4、さらには電子放出部5にまで達することがある。ここで、電子放出素子を駆動するための電界が印加されると、電界によるマイグレーションや駆動時の熱によって配線6,7を構成する金属と導電性薄膜4が混合し、合金化したり、膜質が変化したりするため、電子放出素子が本来の電子放出特性を維持することが困難になり、特性の劣化や変動を引き起こす。従って、本発明のごとく構成することで、配線6,7を構成する金属がイオン化して素子電極2、3中に拡散するのを効果的に抑制し、ひいては安定した電子放出特性を長時間保持することができる。
【0048】
さて、本発明の電子源基板の製造方法としては様々な方法が考えられるが、その一例を図4に示す。
【0049】
以下、順をおって製造方法の説明を図1,2,3,4に基づいて説明する。
【0050】
(1)ガラス基体1を洗剤、純水および有機溶剤により十分に洗浄した後、スパッタ法等により、シリカを主成分とした被覆層9を形成する(図4(a))。なお、被覆層9の形成法は、スパッタ法に限るものではなく、他の真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、CVD法寺、有機金属系塗布材によって形成される場合もある。
【0051】
(2)つづいて、被膜層9を形成した基体1に、素子電極材料を、真空蒸着法、スパッタ法等により堆積した後、フォトリソグラフィ技術により素子電極2,3を形成する(図4(b))。素子電極2,3の表面にルテニウムの酸化物を具備するように、例えばスパッタ法により積層膜としてもよいが、金属ルテニウムを堆積後に、オゾンを含む加熱雰囲気中で紫外線を照射する等の酸化処理を施すことも可能である。なお、上述の酸化処理は、フォトリソグラフィ技術で用いられるレジストの残渣を取り除くために用いられるアッシング処理を兼ねるものであっても一向に構わない。また、酸化処理は上述の処理に限られるものではなく、ルテニウムの酸化物を形成できるものであれば良い。また、必ずしも本工程中に行う必要は無く、導電性薄膜4を形成する前であれば、いずれの工程で行っても一向に構わない。
【0052】
(3)素子電極2,3を形成した基体1に、スクリーン印刷法により導電性ペーストのパターンを形成し、該導電性ペーストのパターンを焼成することで金属から成る下配線6を形成する(図4(c))。
【0053】
(4)さらに、下配線6上の所望の位置、すなわち、以後の工程で形成する上配線7と交差する位置に、層間絶縁層8を形成する(図4(d))。層間絶縁層8についても、スクリーン印刷法によりガラスペーストのパターンを形成し、該ガラスペーストのパターンを焼成することで形成できる。なお、層間絶縁層8に十分な絶縁性を付与するために膜厚を厚くしたい場合は、上記印刷、焼成を所望の回数繰り返すこともできる。
【0054】
(5)つづいて、下配線6上に形成された層間絶縁層8上で交差するように、上配線7を形成する(図4(e))。上配線7も、下配線6と同様に、導電性ペーストのパターンを形成し、該導電性ペーストのパターンを焼成することで形成できる。
【0055】
(6)上記基体1上に設けられた素子電極2と素子電極3との間に、例えば、インクジェット法を用いて有機金属化合物の溶液を形成して加熱焼成処理することにより、導電性薄膜4を形成する(図4(f))。
【0056】
(7)つづいて、フォーミングと呼ばれる通電処理を、素子電極2,3間、すなわち配線6,7間に電圧を不図示の電源によりパルス状電圧あるいは、昇電圧の印加により行うと、導電性薄膜4の部位に構造の変化した電子放出部5が形成される(図4(g))。この通電処理により導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめて亀裂構造の形成された部位を電子放出部5と呼ぶ。
【0057】
フォーミング処理は、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合とパルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合とがある。まず、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合の電圧波形を図5(a)に示す。図5(a)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10msec、T2を10μsec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は適宜選択する。
【0058】
次に、パルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合の電圧波形を、図5(b)に示す。図5(b)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10msec、T2を10μsec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のビーク電匠)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させる。
【0059】
なお、フォーミング処理は、フォーミング用パルスの間に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧例えば0.1V程度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、その電流が所定の値以下に減少したところで終了する。
【0060】
(8)次に、フォーミングが終了した素子に活性化処理を施す。活性化処理の工程は、有機物質を含有する雰囲気下で、上記フォーミング処理同様、パルス電圧を印加することによって行うが、この雰囲気は、電子源基板を真空容器内に配し、適当な有機物質を導入することによって得られる。なお、後述する画像形成装置のように、電子源基板を用いて真空外囲器を形成する場合は、その真空外囲器内は有機物質を導入することで活性化処理を行なうことができる。
【0061】
適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、ニトリル類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどCnH2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどCnH2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、ベンゾニトリル、アセトニトリル、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。
【0062】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。活性化工程の終了判定は、素子電流Ifおよび/または放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0063】
炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファイト(いわいるHOPG、PG、GCを包含する;HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及びアモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)である。
【0064】
(9)こうして作製した電子源基板に、好ましくは、安定化工程を行う。この工程は、活性化処理時に導入した有機物質の残留物を排気する工程である。真空容器内の圧力は、1.3〜4.0×10-5Pa以下が好ましく、更に1.3×10-6Pa以下が特に好ましい。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。
【0065】
具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。さらに、真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子源基板に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、80〜250℃、好ましくは150℃以上でできるだけ長時間行なうのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子源基板の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。
【0066】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了後の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、圧力自体は多少上昇しても十分安定な特性を維持することができる。
【0067】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが安定する。
【0068】
以上が、本発明における電子源基板の製造工程であるが、該電子源基板を用いて画像形成装置を構成した例を、図6と図7を用いて以下に説明する。図6は、画像形成装置の画像形成部材による基本構成図であり、図7は蛍光膜である。
【0069】
図6において、61は電子放出素子を複数配した電子源基板、62は電子源基板61を固定したリアプレート、67はガラス基板(フェースプレート基板)64の内面に蛍光膜65とメタルバック66等が形成されたフェースプレートである。63は支持枠であり、該支持枠63には、リアプレート62、フェースプレート67がフリットガラス等を用いて接続されている。69は外囲器であり、例えば大気中あるいは窒素中で、400〜500℃の温度範囲で10分間以上焼成することで、封着して構成される。
【0070】
外囲器69は、上述の如く、フェースプレート67、支持枠63、リアプレート62で構成したが、リアプレート62は主に基板61の強度を補強する目的で設けられるため、基板61自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート62は不要であり、基板61に直接支持枠63を封着し、フェースプレート67、支持枠63、基板61で外囲器69を構成してもよい。
【0071】
一方、フェースプレート67、リアプレート62間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器69を構成することもできる。
【0072】
図7は、蛍光膜である。蛍光膜65は、モノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材71と蛍光体72とで構成される。ブラックストライプ、ブラックマトリクスが設けられる目的は、カラー表示の場合必要となる3原色蛍光体の、各蛍光体72間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜65における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。ブラックストライプの材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分とする材料だけでなく、導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料であればこれに限るものではない。ガラス基板64に蛍光体を塗布する方法は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法、印刷法等が用いられる。
【0073】
また、蛍光膜65の内面側には通常メタルバック66が設けられる。メタルバック66の目的は、蛍光体72の発光のうち内面側への光をフェースプレート67側へ鏡面反射させることにより輝度を向上させること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させること、外囲器69内で発生した負イオンの衝突によるダメージからの蛍光体72の保護等である。メタルバック66は、蛍光膜65作製後、蛍光膜65の内面側表面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行い、その後Alを、真空蒸着等を用いて堆積させることで作製できる。フェースプレート67には、更に蛍光膜65の導電性を高めるため、蛍光膜65の外面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないため、十分な位置合わせを行なう必要がある。
【0074】
外囲器69は、不図示の排気管を通じ、1.3×10-5Pa程度の真空度にした後、封止がおこなわれる。また、外囲器69の封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理を行なう場合もある。これは、外囲器69の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等の加熱法により、外囲器69内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たとえば1.3×10-3Paないしは1.3×10-5Paの真空度を維持するものである。
【0075】
以上により完成した本発明の画像形成装置において、各電子放出素子には、容器外端子Dox1ないしDoxm,Doy1ないしDoynを通じ、電圧を印加することにより、電子放出させ、高圧端子68を通じ、メタルバック66あるいは透明電極(不図示)に数kV以上の高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜65に衝突させ、励起・発光させることで画像を表示するものである。
【0076】
なお、以上述べた構成は、表示等に用いられる好適な画像形成装置を作製する上で必要な概略構成であり、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限られるものではなく、画像形成装置の用途に適するよう適宜選択する。
【0077】
また、本発明の画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることができる。
【0078】
【実施例】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0079】
(実施例1)
本実施例にかかわる基本的な電子源基板の構成は、図1、図2、図3と同様である。本実施例における電子源基板の製造法は、図4に示している。以下、図1、図2、図4を用いて、本発明に関わる画像形成装置の基本的な構成及び製造法を説明する。図4は簡便のため、一個の電子放出素子近傍の製造工程を拡大して示しているが、本実施例は、多数の電子放出素子を単純マトリクス配置した電子源基板の例である。
【0080】
工程−a
清浄化した青板ガラス基体1上に、シリカを主成分とした被覆層9として厚さ1.0μmのSiO2膜をスパッタ法で形成する。
【0081】
工程−b
次に、基体1上に、スパッタ法により厚さ5nmの金属チタン、続いて50nmの金属ルテニウムを堆積する。その後、素子電極2,3のパターンをフォトレジストで形成し、ドライエッチング処理によって素子電極2,3のパターン以外のチタン上にルテニウムが形成された積層膜を除去し、フォトレジストパターンを除去する。続いてオゾンを含む加熱雰囲気中で紫外線を照射する酸化処理を施す。なお、加熱温度は140℃であり、時間は10分である。この酸化処理は、フォトリソグラフィ技術で用いられるレジストの残渣を取り除くために用いられるアッシング処理を兼ねるものであり、この処理により金属ルテニウムの表面近傍に酸化ルテニウムが形成される。このようにして、素子電極2,3を形成する。
【0082】
工程−c
被覆層9、素子電極2,3を形成した基体1上に、スクリーン印刷により、下配線6のパターンをAgペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成し、Agからなる所望の形状の下配線6を形成する。
【0083】
工程−d
次に層間絶縁層8のパターンを、スクリーン印刷により、ガラスペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成する。十分な絶縁性を得るために、再度、ガラスペーストを印刷、乾燥、焼成を繰り返して、ガラスからなる所望の形状の層間絶縁層8を形成する。
【0084】
工程−e
層間絶縁層8を形成した部位において下配線6と交差するように、上配線7のパターンを、スクリーン印刷により、Agペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成し、Agからなる所望の形状の上配線7を形成する。
【0085】
以上の工程により、素子電極2,3が配線6,7によってマトリクス状に結線された基板が形成できる。
【0086】
ここで、図2中のA−A’の線に沿って、エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)の手法により、Ag元素の分布を計測した結果の例を、図8に示す。また、比較のため、素子電極2,3をPtで、配線6,7をAgで形成した場合の、同様のAg元素の分布を計測した結果の例を、図9に示す。図8、図9から分かるように、本実施例により、配線6,7からのAgの素子電極2,3への拡散が抑えられていることがわかる。
【0087】
工程−f
次に、導電性薄膜4を素子電極2,3のギャップ間にまたがるように形成する。導電性薄膜4の形成は、有機パラジウム溶液をインクジェット法により所望の位置に塗布し、350℃で30分間の加熱焼成処理をする。こうして得られた導電性薄膜4はPdOが主成分となり、膜厚は約10nmであった。この導電性薄膜4の形状は極めて円形に近いものであった。
【0088】
なお、本工程に先立ち、電子放出素子の形成に必要の無い領域を用いて、素子電極2,3と同じ材料からなる領域と、シリカを主成分とした被覆層9の上に有機パラジウム溶液をインクジェット法により形成し、形状を比較したところ、概ね90μmと同程度の大きさであった。また、接触角を測定したところ、概ね50度と同程度の大きさであった。これは、素子電極2,3の表面にルテニウムの酸化物があることにより、シリカを主成分とした被覆層9と表面状態が類似しているためだと考えられる。故に、上述のごとく、導電性薄膜4の形状が極めて円形に近いものになったと考えられる。
【0089】
以上の工程により基体1上に被覆層9、下配線6、層間絶縁層8、上配線7、素子電極2,3、導電性薄膜4を形成し、電子源基板を作製した。
【0090】
以下に、本実施例の電子源基板を用いて、画像形成装置を構成した例を、図6と図1を用いて説明する。
【0091】
以上のようにして作製した電子源基板61をリアプレート62上に固定した後、電子源基板61の5mm上方に、フェースプレート67(ガラス基板64の内面に蛍光膜65とメタルバック66が形成されて構成される)を、支持枠63を介して配置し、フェースプレート67、支持枠63、リアプレート62の接合部にフリットガラスを塗布し、大気中で400℃で10分焼成することで行った。またリアプレート62への電子源基板61の固定もフリットガラスで行った。
【0092】
蛍光膜65は、モノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、本実施例では蛍光体はストライプ形状を採用し、先にブラックストライプを形成し、その間隙部に各色蛍光体を塗布し、蛍光膜65を作製した。ブラックストライプの材料として通常よく用いられている黒鉛を主成分とする材料を用いた。ガラス基板64に蛍光体を塗布する方法はスラリー法を用いた。
【0093】
また、蛍光膜65の内面側には通常メタルバック66が設けられる。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行い、その後、Alを真空蒸着することで作製した。フェースプレート67には、更に蛍光膜65の導電性を高めるため、蛍光膜65の外面側に透明電極(不図示)が設けられる場合もあるが、本実施例では、メタルバックのみで十分な導電性が得られたので省略した。前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないため、十分な位置合わせを行った。
【0094】
以上のようにして完成したガラス容器内の雰囲気を排気管(図示せず)を通じ真空ポンプにて排気し、十分な真空度に達した後、容器外端子Dox1ないしDoxmとDoy1ないしDoynを通じ素子電極2,3間に電圧を印加し、導電性薄膜4をフォーミング処理した。フォーミング処理の電圧波形は、図5(b)と同様である。本実施例ではT1を1msec,T2を10msecとし、約1.3×10-3Paの真空雰囲気下で行った。
【0095】
次に、パネル内の圧力が1.3×10-6Pa台に達するまで排気を続けた後、パネルの排気管より、全圧が1.3×10-4Paとなるように有機物質をパネル内に導入し、維持した。容器外端子Dox1ないしDoxmとDoy1ないしDoynを通じ素子電極2,3間に、15Vの波高値のパルス電圧を印加し、活性化処理を行った。
【0096】
このように、フォーミング、活性化処理を行ない、電子放出部5を形成した。
【0097】
次に、1.3×10-4Pa程度の圧力まで排気し、不図示の排気管をガスバーナーで熱することで溶着し外囲器の封止を行った。最後に、封止後の圧力を維持するために、高周波加熱法でゲッター処理を行った。
【0098】
以上のように完成した本発明の画像形成装置において、各電子放出素子には、容器外端子Dox1ないしDoxm,Doy1ないしDoynを通じ、走査信号及び変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより、電子放出させ、高圧端子68を通じ、メタルバック66、あるいは透明電極(不図示)に5kV以上の高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜65に衝突させ、励起・発光させることで画像を表示した。
【0099】
本実施例における画像形成装置は、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示することができた。
【0100】
(実施例2)
本実施例にかかわる基本的な電子源基板の構成も、実施例1と同機である。
【0101】
工程−a
清浄化した青板ガラス基体1上に、被覆層9として厚さ1.0μmのリンドープシリカガラス(PSG)膜をCVD法で形成する。
【0102】
工程−b
次に、基板1上に、電子線蒸着法により厚さ5nmの金属チタン、続いて50nmの金属ルテニウムを堆積する。その後、素子電極2,3のパターンをフォトレジストで形成し、ドライエッチング処理によって素子電極2,3のパターン以外のチタン上にルテニウムが形成された積層膜を除去し、フォトレジストパターンを除去する。続いて酸素を含む雰囲気中で加熱して酸化処理を施す。なお、加熱温度は540℃であり、時間は10分である。この酸化処理により金属ルテニウムの表面近傍に酸化ルテニウムが形成される。このようにして、素子電極2,3を形成する。
【0103】
工程−c〜eは実施例と同様にして、素子電極2,3が配線6,7によってマトリクス状に結線された基板が形成できる。
【0104】
ここで、図2中のA−A’の線に沿って、エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)の手法により、Ag元素の分布を計測したところ、図8と同様の結果を得、本実施例により、配線6,7からのAgの素子電極2,3への拡散が抑えられていることがわかる。
【0105】
工程−f
次に、導電性薄膜4を素子電極2,3のギャップ間にまたがるように形成する。導電性薄膜4の形成は、有機パラジウム溶液をインクジェット法により所望の位置に塗布し、350℃で30分間の加熱焼成処理をする。こうして得られた導電性薄膜4はPdOが主成分となり、膜厚は約10nmであった。この導電性薄膜4の形状は、実施例1と同様に極めて円形に近いものであった。
【0106】
以上の工程により基体1上に被覆層9、下配線6、層間絶縁層8、上配線7、素子電極2,3、導電性薄膜4を形成し、電子源基板を作製した。
【0107】
以後、実施例1と同様に、本実施例の電子源基板を用いて画像形成装置を構成したところ、本実施例における画像形成装置においても、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示することができた。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、素子電極材科として表面にルテニウムの酸化物を具備することにより、配線金属が素子電極中を拡散し難いため、電子放出特性の劣化の原因となる配線金属の拡散を防止できる。また、導電性薄膜をインクジェット法で形成する場合には、基体上に形成された被覆層と濡れ性が近く、結果的に導電性薄膜の形状がそろった高性能な電子源基板及びその製造方法を提供することができる。さらにそれを用いて、良好な画像を長時間にわたり保持し得る大画面の平面型の画像形成装置、例えば、カラーフラットテレビが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子源基板の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の電子源基板の電子放出素子近傍の鳥瞰図である。
【図3】図2におけるA−A’断面図である。
【図4】本発明に係る電子源基板の基本的な製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係るフォーミング処理における電圧波形の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の基本構成を示す図である。
【図7】図7の画像形成装置に用いられる蛍光膜を示す図である。
【図8】実施例における本発明の効果を説明する図である。
【図9】実施例における本発明の効果を説明する比較図である。
【図10】従来の電子源基板の構成を示す平面図である。
【図11】従来の電子源基板の構成を示す鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 基体
2,3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 配線(下配線、Y方向配線)
7 配線(上配線、X方向配線)
8 層間絶縁層
9 被覆膜
61 電子源基板
62 リアプレート
63 支持枠
64 ガラス基板(フェースプレート基板)
65 蛍光膜
66 メタルバック
67 フェースプレート
68 高圧端子
69 外囲器
71 黒色導電体
72 蛍光体
101 表面伝導型電子放出素子
Claims (12)
- 基板上に、一対の素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子放出素子と、該素子電極に接続された金属配線と、を有する電子源基板であって、前記素子電極は、金属ルテニウムを少なくとも含み、該金属ルテニウムの表面に酸化ルテニウムを具備し、前記金属配線は、構成元素の一部、或いは全てが、金属ルテニウムよりも標準単極電位が大きい金属であることを特徴とする電子源基板。
- 前記金属ルテニウムよりも標準単極電位が大きい金属がAgであることを特徴とする請求項1に記載の電子源基板。
- 基板上に、一対の素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子放出素子と、該素子電極に接続された金属配線と、を有する電子源基板であって、前記素子電極は、金属ルテニウムを少なくとも含み、該金属ルテニウムの表面に酸化ルテニウムを具備し、前記基板は、前記素子電極或いは前記金属配線と接する部位において、主成分がシリカよりなることを特徴とする電子源基板。
- 前記電子放出部を有する導電性薄膜は、PdないしPdO、あるいはそれらの混合物よりなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子源基板。
- 前記電子放出素子は、表面伝導型電子放出素子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子源基板。
- 前記電子放出素子が複数個配置され、入力信号に応じて電子を放出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子源基板。
- 前記電子放出素子を複数個並列に配置し、個々の素子の両端を前記金属配線に接続した電子放出素子の行を複数もち、更に、該電子放出素子に変調信号を印加する変調手段を有することを特徴とする請求項6に記載の電子源基板。
- 互いに電気的に絶縁されたm本のX方向金属配線とn本のY方向金属配線とに、前記電子放出素子の一対の素子電極とを接続し、電子放出素子をマトリクス状に配列したことを特徴とする請求項6又は7に記載の電子源基板。
- ルテニウム金属を形成した後に該ルテニウム金属の表面を酸化処理することにより素子電極を形成する工程を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子源基板の製造方法。
- インクジェット法により導電性薄膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の電子源基板の製造方法。
- 金属ペーストの印刷と加熱焼成によって金属配線を形成する工程を有することを特徴とする請求項9または10に記載の電子源基板の製造方法。
- 入力信号にもとづいて画像を形成する装置であって、少なくとも、画像形成部材と請求項1乃至8のいずれかに記載の電子源基板より構成されたことを特徴とする画像形成装置。
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