JP2003157775A - 電子源基板及びその製造方法、及び電子源基板を用いた画像形成装置 - Google Patents

電子源基板及びその製造方法、及び電子源基板を用いた画像形成装置

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JP2003157775A
JP2003157775A JP2001357712A JP2001357712A JP2003157775A JP 2003157775 A JP2003157775 A JP 2003157775A JP 2001357712 A JP2001357712 A JP 2001357712A JP 2001357712 A JP2001357712 A JP 2001357712A JP 2003157775 A JP2003157775 A JP 2003157775A
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electron source
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JP2001357712A
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Yoshitaka Arai
由高 荒井
Tamaki Kobayashi
玉樹 小林
Kazuya Miyazaki
和也 宮崎
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Canon Inc
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  • Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 配線金属が素子電極を介して導電性薄膜へ拡
散することによる、電子放出素子の電子放出特性の劣化
を防止した電子源基板およびその製造方法を提供し、こ
の電子源基板による画像形成装置を提供すること。 【構成】 電子放出部を有する電子放出素子が一対の素
子電極上に形成されており、該素子電極が金属配線に接
続した電子源基板において、前記素子電極は、構成元素
の一部、あるいは全てが耐熱性合金からなり、かつ、前
記金属配線を構成する元素と比して、該耐熱性合金を構
成する元素の標準電極電位が低いことを特徴とする電子
源基板である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子を用
いた電子源基板、及びその製造方法、及び電子源基板を
用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子放出素子を利用した画像形成
装置として、冷陰極電子放出素子を多数形成した電子源
基板と、透明電極および蛍光体を具備した陽極基板とを
平行に対向させ、内部を真空に排気した平面型の電子線
表示パネルが知られている。このような画像形成装置に
おいて、電界放出型電子放出素子を用いたものは、例え
ば、I.Brodie,”Advanced tech
nology:flatcold−cathode C
RTs”,Information Display,
1/89,17(1989)に開示されたものがある。
【0003】平面型の電子線表示パネルは、現在広く用
いられている陰極線管(cathode ray tu
be:CRT)表示装置に比ベ、軽量化、大画面化を図
ることができ、また、液晶を利用した平面型表示パネル
やプラズマ・ディスプレイ、エレクトロルミネッセント
・ディスプレイ等の他の平面型表示パネルに比べて、よ
り高輝度、高品質な画像を提供することができる。
【0004】特に、表面伝導型電子放出素子は構成が単
純で製造も容易であり、例えばUSP5066883号
等に開示されているように、電界放出型電子放出素子で
必要なフォトリソグラフィ技術を駆使した複雑な製造工
程を経ることなく、大面積にわたって多数素子を配列形
成した電子源基板を作製できる利点がある。
【0005】図11、図12は、特開平6−34263
6号公報において開示された、表面伝導型電子放出素子
を用いた電子源基板の一例を示したものである。図11
は電子源の一部の平面図を示している。ここで7は上配
線、6は下配線、101は表面伝導型電子放出素子、8
は層間絶縁層である。図12は、図11における表面伝
導型電子放出素子101を取り出した斜視図である。図
12中、1は基板、2,3は素子電極、4は電子放出部
を有する導電性薄膜、5は電子放出部であり、素子電極
2,3はそれぞれ下配線6、上配線7に接続され、下配
線6と上配線7は層間絶縁層8によって電気的に絶縁さ
れている。
【0006】ここで、マトリクス状に配置された上配線
7と下配線6にそれぞれ走査信号、情報信号として所定
の電圧を順次印加することで、マトリクスの交点に位置
する所定の電子放出素子を選択的に駆動できる。
【0007】このようなマトリクス配置された電子源基
板は、比較的簡単なフォトリソグラフィ技術を用いるこ
とによっても作製できるが、より大きな基板を形成する
場合は、印刷技術を用いるのが好ましい。特に、走査信
号を印加する上配線については、1ラインに接続された
素子数が多くなるほど配線を流れる電流量が増加し、配
線抵抗による電圧降下が無視できなくなるので、配線は
厚膜で形成し抵抗をできるだけ小さくするのが好まし
い。
【0008】特開平8−180797号公報等には、配
線及び層間絶縁層をスクリーン印刷法により形成する製
造方法が開示されている。その他の部材についても、例
えば、特開平9−17333号公報等には、素子電極を
オフセット印刷法等により形成する製造方法が開示され
ており、導電性薄膜においては、インクジェット法によ
り形成する製造方法が特開平9−69334号公報等に
開示されている。これらの公報に開示された技術を用い
ることで、大面積の電子源基板を容易に製造することが
できる。
【0009】次に、表面伝導型電子放出素子について説
明する。表面伝導型電子放出素子は基板上に形成した小
面積の導電性薄膜に、膜面に平行に電流を流すことによ
り、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この
表面伝導型電子放出素子としては、SnO 薄膜を用
いたもの[M.I. Elinson, RadioE
ng. Electron Phys., 10,12
90(1965)]、[G.Dittmer:”Thi
n Solid Films”, 9,317(197
2)]、In /SnO 薄膜によるもの
[M.Hartwell and C.G. Fons
tad:”IEEE Trans. ED Con
f.”, 519(1975)]、カーボン薄膜による
もの[荒木久他:真空、第26巻、第1号、22頁(1
983)]等が報告されているが、本出願人は、例え
ば、特開平2−56822号公報において、酸化パラジ
ウム等の金属微粒子膜を用いた表面伝導型電子放出素子
を開示している。
【0010】表面伝導型電子放出素子を作製するにあた
っては、通常、導電性薄膜4にフォーミングと呼ばれる
通電処理によって電子放出部5を形成するのが一般的で
ある。フォーミングとは導電性薄膜4の両端に直流電圧
あるいはゆっくりとした昇電圧、例えば1V/分程度を
印加通電し、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしく
は変質せしめ、亀裂を形成する処理である。
【0011】フォーミング処理を施した後、導電性薄膜
4に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより、亀裂
近傍から電子を放出せしめる。このとき、電子の放出す
る部位を電子放出部5と呼ぶ。
【0012】さらに、フォーミングを終えた素子に対し
て活性化処理と呼ばれる処理を施し、より良好な電子放
出を得る場合がある。たとえば特開平7−235255
号公報に開示されているように、活性化処理は、有機物
質のガスを含有する雰囲気下で、フォーミング処理同
様、素子にパルス電圧の印加を繰り返すことで、雰囲気
中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が
素子上に堆積し、素子電流I 、放出電流I が著
しく増加するようになる。
【0013】このような処理を経て作製された表面伝導
型電子放出素子は、例えばフラットパネルディスプレイ
等の画像形成装置に適用可能な電子源として十分な電子
放出特性を有する。
【0014】従って、上述のように、印刷技術等を用い
て、表面伝導型電子放出素子からなる大面積の電子源基
板を作製することによって、大面積の画像形成装置、例
えば大画面フラットパネルディスプレイを実現すること
ができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、十分な
電子放出量と寿命、安定性を有する電子放出素子を大面
積の電子源基板に形成する場合、以下に述べるような問
題がある。
【0016】大面積の電子源基板を安価に製造しようと
する場合、ガラス基板上および素子電極上には配線材料
としてAgペーストが好ましく用いられる。
【0017】ところが、配線として形成したAgは、熱
処理工程を繰り返した場合、基板と素子電極部材との界
面、ないしは素子電極部材を伝わって、基板表面に平行
な方向への拡散が生じる場合がある。
【0018】図12に示したような構成の電子放出素子
を有する電子源基板においては、金属の基板表面に平行
な方向への拡散は、配線金属が素子電極と基板の界面に
接している部位で生じ、素子電極が配線金属と異種金属
で形成されている場合に特に顕著となる。配線金属が、
素子電極を伝わって基板に平行方向に拡散すると、導電
性薄膜と接触するようになる。ここで、更に熱処理が行
われた場合、あるいは駆動のための電界が印加された場
合、熱や電界によるマイグレーション効果によって素子
電極を介して拡散した配線金属と導電性薄膜が混合し、
電子放出素子が本来の電子放出特性を維持することが困
難になり、特性の劣化や変動を引き起こす。一方で、基
板表面で配線および電極を構成する金属の拡散がまった
く生じないと、両者の密着性の悪さにつながり、プロセ
ス中の膜剥がれや、電気的導通の欠如など、電子デバイ
スとしての根本を欠いてしまう場合も考えられる。ま
た、スクリーン印刷プロセス等を始めとする、酸化性雰
囲気下で高温にさらされる過程を経験する際、配線及び
素子電極相互の拡散を考慮することはもちろん、両者の
導電性の維持をも考慮する必要がある。従って、部材、
とくに配線金属の界面拡散はできる限り抑え、かつ、適
度な相互拡散により密着性を保ち、さらには、プロセス
中での高温酸化雰囲気下にも導電性を維持する、耐熱性
をも具備する部材を選択することが必要であるが、これ
まで必ずしもこれら全てを満足する安価な部材が使われ
ていたわけではなかった。
【0019】本発明の目的は、上述した技術課題を解決
するためになされたものである。すなわち、配線金属の
導電性薄膜への拡散が原因となった電子放出素子の電子
放出特性の劣化や変動を防止した、高性能な電子源基板
及びその製造方法を提供することにある。また、本発明
の別の目的は、かかる電子源基板を用いて良好な画像を
長時間にわたり保持し得る大画面の平面型の画像形成装
置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した課
題、すなわち、耐熱性を有する素子電極で、基板や他の
部材との密着性を保ちつつ、配線金属の導電性薄膜への
界面拡散による電子放出素子の特性劣化を防止するため
に成されたものである。
【0021】即ち、本発明の第1は、基板上に、一対の
素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子
放出素子と、該素子電極に接続した金属配線と、を有す
る電子源基板であって、前記素子電極は、構成元素の一
部、あるいは全てが耐熱性合金からなり、かつ、前記金
属配線を構成する元素と比して、該耐熱性合金を構成す
る元素の標準電極電位が低いことを特徴とする電子源基
板である。
【0022】上記本発明の第1は、さらなる特徴とし
て、「前記金属配線はAg, Cu,Au, のいずれ
かの金属、あるいはいずれかの金属を含む合金からな
る」こと、「前記金属配線は、構成元素の一部、あるい
は全てがAg である」こと、「前記素子電極は、前記
金属配線と接する部位において、Ni-Cr(ニクロ
ム)合金である」こと、「前記基板は、前記素子電極あ
るいは前記金属配線と接する部位において主成分がシリ
カよりなる」こと、「前記電子放出部を有する導電性薄
膜は、PdないしPdO、あるいはそれらの混合物より
なる」こと、「前記電子放出素子は、表面伝導型電子放
出素子である」こと、「前記電子放出素子が複数個配置
され、入力信号に応じて電子を放出する」こと、「前記
電子放出素子を複数個並列に配置し、個々の素子の両端
を前記金属配線に接続した電子放出素子の行を複数も
ち、更に、該電子放出素子に変調信号を印加する変調手
段を有する」こと、「互いに電気的に絶縁されたm本の
X方向金属配線とn本のY方向金属配線とに、前記電子
放出素子の一対の素子電極とを接続し、電子放出素子を
マトリクス状に配列した」こと、をも包含する。
【0023】本発明の第2は、前記金属配線は、金属ペ
ーストの印刷と加熱焼成によって形成されることを特徴
とする電子源基板の製造方法にある。
【0024】本発明の第3は、入力信号にもとづいて画
像を形成する画像形成装置であって、少なくとも、画像
形成部材と上記のいずれかの電子源基板より構成された
画像形成装置にある。
【0025】本発明は、電子源基板として印刷によって
配線を形成する場合に有効である。また、本発明の電子
源基板は、配線金属から素子電極への拡散が少なく、従
って導電性薄膜への拡散がほとんどないため、電子放出
特性の劣化を防止できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
を説明する。
【0027】図1は、本発明の電子源基板の一例を示す
概略構成図(平面図)で、電子源基板の一部のみを示し
ている。また、図2は、図1に示した電子源基板の一つ
の電子放出素子を拡大した鳥瞰図である。そして、図3
は、図2におけるA−A'断面図である。図1、図2、
図3において、1は基体、2,3は素子電極、4は導電
性薄膜、5は電子放出部、6,7はそれぞれ素子電極
2,3に接続された配線、8は配線6と配線7を電気的
に絶縁するための層間絶縁層、9はナトリウム拡散防止
層である。なお、配線6,7はそれぞれ、図1中の座標
に照らして、Y方向配線、X方向配線と呼び、また層間
絶縁層8との位置関係により、それぞれ下配線、上配線
と呼ぶことがある。
【0028】基体1は、一般に青板ガラスと呼ばれるソ
ーダライムガラスが安価であるため好ましく用いられる
が、ソーダライムガラス中に含有されるナトリウムを一
部カリウムに置換して歪み点を上昇させた、高歪み点ガ
ラスをも用いることができる。いずれの場合も、本発明
で用いられるガラス基体はナトリウムを含有するため、
大量生産可能なフロート法を用いて基体を形成すること
ができ、例えば、対角1m以上の大面積の基体も安価に
作製することができるものである。なお、本発明の電子
源基板及びそれを用いた画像形成装置は、その製造過程
で何度かの熱処理工程を行なう。この時の熱処理温度の
設定、及びその熱処理温度における基板の歪みの許容値
に応じて上記基体の材料を選択すればよい。また、液晶
ディスプレイパネル等に用いられる無アルカリガラスも
好適に用いることができ、その場合は、後述のナトリウ
ム拡散防止層を省略することができる。
【0029】ナトリウム拡散防止層9は、基体1から電
子放出素子へのナトリウムの拡散を防止する役割と、電
子放出素子に電流が流れるときの発熱を基体1に伝え難
くする役割をもった被膜層である。上記の役割を満足す
るために、ナトリウム拡散防止層9として、シリカを主
成分とした被膜層を好ましく用いることができる。ここ
でシリカとは、SiO 、SiO、およびその混合物
を意味する。中でも、SiO の層や、リンを数wt
%含有させたリンドープシリカガラス(PSG)からな
る層がより好ましく用いられる。これらの被膜層を50
0nm以上の膜厚で形成すると、事実上ナトリウムの拡
散が止められるので、ナトリウム拡散防止層9として機
能する。
【0030】本発明における、対向する素子電極2,3
の材料は、以後の熱処理工程を経ても安定した導電性を
有し、かつ配線6,7を構成する金属が熱拡散しないも
のが好ましく、安価で組成に自由度が高い耐熱性合金を
用いる。特に、Ni-Cr合金通称ニクロムは、高温で
の耐酸化性に優れ、かつその組成比率には比較的自由度
があるので好ましく用いられる。素子電極2,3の膜厚
は、薄すぎるとそれ自身の抵抗により電圧降下を生じる
が、数十nm程度の膜厚ならば十分な導電性を有し、か
つ導電性薄膜4のステップカバレージも良好である。
【0031】導電性薄膜4の熱的安定性は電子放出特性
の寿命を支配する重要なパラメータであるため、導電性
薄膜4の材料としてより高融点な材料を用いるのが望ま
しい。しかしながら、通常、導電性薄膜4の融点が高い
ほど後述する通電フォーミングが困難となり、電子放出
部形成のためにより大きな電力が必要となる。さらに、
その結果得られる電子放出部は、電子放出し得る印加電
圧(しきい値電圧)が上昇するという問題が生じる場合
がある。従って、導電性薄膜4の材料は、適度に高い融
点を有し、比較的低いフォーミング電力で良好な電子放
出部が形成可能な材料、形態のものを選ぶのがよい。
【0032】上述の条件に対し、PdOは、有機パラジ
ウム化合物の大気中焼成により容易に薄膜形成できるこ
と、半導体であるため比較的電気伝導度が低くフォーミ
ングに有する電力が低いこと、電子放出部形成時あるい
はその後、容易に還元して金属パラジウムとすることが
できるので膜抵抗を低減し得ること、等から導電性薄膜
4に好適な材料として用いることができる。その膜厚
は、素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極
2,3間の抵抗値及び後述するフォーミング条件等を考
慮して設定される。
【0033】電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形
成された、例えば、亀裂等の高抵抗部であり、その亀裂
内部に数nmより数十nmの粒径の導電性微粒子、すな
わち、PdOやPdOが還元して生じたPd金属の微粒
子を多数個有する場合もあり、導電性薄膜4の膜厚およ
び後述する通電処理条件等の製法に依存している。ま
た、前記導電性微粒子は、導電性薄膜4を構成する材料
の元素の一部あるいは全てと同様のものである。
【0034】また、電子放出部5の一部、更には、電子
放出部5の近傍の導電性薄膜4には、後述する活性化工
程を経ることにより、炭素及び炭素化合物を有する。こ
の炭素及び炭素化合物の役割については、電子放出部5
を構成する物質として電子放出特性を支配するものと推
察されている。
【0035】配線6,7は、図1に示すように、複数の
電子放出素子に給電するためのものである。m本のX方
向配線7は、DX1,DX2、・・・、DXm、n本のY
方向配線6は、DY1、DY2、・・・、DYnからな
り、それぞれ、多数の電子放出素子にほぼ均等な電圧が
供給されるように、材料、膜厚、配線幅等が設計され
る。これらm本のX方向配線7とn本のY方向配線6の
間には、層間絶縁層8が設置され、電気的に分離され
て、マトリクス配線を構成する(このm、nは、共に正
の整数)。
【0036】配線6,7としては、熱処理工程を経ても
安定した導電性を有する金属が好ましいが、特に、大面
積の基板を安価に形成できる印刷法が適用できるものが
望ましい。金属ぺーストをスクリーン印刷によってパタ
ーン形成し、熱処理して得られる金属膜は、数ミクロン
以上の厚膜の抵抗が小さい配線を大面積に形成するのに
適しているため、印刷可能な金属ペーストが比較的安価
に得られる、Ag、Cu、Auのぺースト、すなわち、
それを熱処理して得られるAg、Cu、Auが好ましく
用いられる。また、これらの金属ペーストを混合したも
のや、例えば、Pdを含有したAgペースト等を用いて
もよい。
【0037】層間絶縁層8の形状、材料、膜厚、製法
は、配線6と配線7の交差部の電位差に耐え得るように
適宜設定できるが、配線同様、印刷法により形成できる
ものが好ましく、またガラスペーストを印刷して得られ
るガラスの厚膜層が用いられる。図1に示した構成、す
なわちマトリクス配置の構成において、X方向配線7に
は、X方向に配列した電子放出素子5の行を選択するた
めの走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接
続され、Y方向配線6には、Y方向に配列した電子放出
素子の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示
の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印
加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と
変調信号の差電圧として供給され、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0038】一方、このほかに、並列に配置した多数の
電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行
を多数個配し、この配線と直交する方向で、該電子放出
素子の上方に配した制御電極により、電子放出素子から
の電子を制御駆動するはしご状配置のもの等があるが、
本発明は、特にこれらの配置によって限定されるもので
はない。
【0039】前述したように、本発明では、配線6,7
は耐熱性合金よりなる素子電極2,3と接続される。素
子電極2,3が、耐熱性合金よりなり、その構成元素の
標準電極電位が、配線6,7を構成する元素と比して、
低い材料が選ばれる。ここで、配線材料や素子電極材料
の種類によっては配線6,7を構成する金属が素子電極
2,3中へ拡散するという現象がみられる。例えば、素
子電極がPt,Au等の貴金属で構成され、かつ配線
6,7がAgよりなる場合、配線6,7を構成するAg
が上述の素子電極中を拡散するという現象が見られる。
この拡散の詳しいメカニズムは明確にはなっていない
が、配線6,7を構成する金属が一旦イオン化して、素
子電極を構成する金属中に拡散し、その後、素子電極と
ナトリウム拡散防止層9の界面において析出していると
思われる。なお、Agの標準電極電位は、Pt,Au等
に比較して低いために、Agイオンがこれらで構成され
た素子電極中へ拡散するものと思われる。一方で、N
i、Crはそれぞれ、-0.25V、-0.74Vという
低い標準電極電位を有する元素なので、後述するよう
に、配線材料として用いられるAg(+0.8V)、A
u(+1.42V)、Cu(+0.34V)に対して、
還元作用を有すると考えられる。従って、Ni-Cr合
金からなる素子電極は、配線材料がイオン化して移動す
ることを防ぎ、結果として配線金属の拡散が抑えられる
と考えられる。このため導電性薄膜への拡散も防いで良
好な電子放出特性を保つことができる。
【0040】上述のように、配線6,7を構成する金属
が界面拡散すると、最終的には導電性薄膜4、さらには
電子放出部5にまで達することがある。ここで、電子放
出素子を駆動するための電界が印加されると、電界によ
るマイグレーションや駆動時の熱によって配線6,7を
構成する金属と導電性薄膜4が混合し、合金化したり、
膜質が変化したりするため、電子放出素子が本来の電子
放出特性を発揮することが困難になり、特性の劣化や変
動を引き起こす。従って、本発明のごとく構成すること
で、配線6,7を構成する金属の界面拡散を防ぐことが
でき、安定した電子放出特性を長時間保持することがで
きる。
【0041】さて、本発明の電子源基板の製造方法とし
ては様々な方法が考えられるが、その一例を図4及び図
5に示す。
【0042】以下、順をおって製造方法の説明を図1,
2,3,4及び図5に基づいて説明する。
【0043】(1)ナトリウムを含有するガラス基体1
を洗剤、純水および有機溶剤により十分に洗浄した後、
スパッタ法等により、ナトリウム拡散防止層9を形成す
る(図4(a))。なお、ナトリウム拡散防止層9の形
成法は、スパッタ法に限るものではなく、他の真空蒸着
法、電子ビーム蒸着法、CVD法、有機金属系塗布材に
よって形成される場合もある。
【0044】(2)つづいて、ナトリウム拡散防止層9
を形成した基体1に、素子電極材料を、真空蒸着法、ス
パッタ法等により堆積した後、フォトリソグラフィ技術
により素子電極2,3を形成する(図4(b))。
【0045】(3)素子電極2,3を形成した基体1
に、スクリーン印刷法により導電性ペーストのパターン
を形成し、この導電性ペーストのパターンを焼成するこ
とで金属から成る下配線6を形成する(図4(c))。
【0046】(4)さらに、下配線6上の所望の位置、
すなわち、以後の工程で形成する上配線7と交差する位
置に、層間絶縁層8を形成する(図4(d))。層間絶
縁層8についても、スクリーン印刷法によりガラスペー
ストのパターンを形成し、このガラスペーストのパター
ンを焼成することで形成できる。なお、層間絶縁層8に
十分な絶縁性を付与するために膜厚を厚くしたい場合
は、上記印刷、焼成を所望の回数繰り返すこともでき
る。
【0047】(5)つづいて、下配線6上に形成された
層間絶縁層8上で交差するように、上配線7を形成する
(図5(e))。上配線7も、下配線6と同様に、導電
性ペーストのパターンを形成し、この導電性ペーストの
パターンを焼成することで形成できる。
【0048】(6)上記基体1上に設けられた素子電極
2と素子電極3との間に、有機金属化合物の溶液を塗布
して乾燥することにより、有機金属化合物からなる膜を
形成する。この後、有機金属化合物膜を加熱焼成処理
し、リフトオフ、エッチング等によりパターニングし、
導電性薄膜4を形成する(図5(f))。なお、ここで
は、有機金属溶液の塗布法により説明したが、これに限
るものでなく、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、分
散塗布法、ディッピング法、スピンナー法、インクジェ
ット法等によって形成される場合もある。
【0049】(7)つづいて、フォーミングと呼ばれる
通電処理を、素子電極2,3間、すなわち配線6,7間
に電圧を不図示の電源によりパルス状電圧あるいは、昇
電圧の印加により行なうと、導電性薄膜4の部位に構造
の変化した電子放出部5が形成される(図5(g))。
この通電処理により導電性薄膜4を局所的に破壊、変形
もしくは変質せしめて亀裂構造の形成された部位を電子
放出部5と呼ぶ。
【0050】フォーミング処理は、パルス波高値が定電
圧のパルスを印加する場合とパルス波高値を増加させな
がら、電圧パルスを印加する場合とがある。まず、パル
ス波高値が定電圧のパルスを印加する場合の電圧波形を
図6(a)に示す。図6(a)中、T1及びT2は電圧
波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec
〜10msec、T2を10μsec〜100msec
とし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)
は適宜選択する。なお、ここでは三角波を例にあげた
が、矩形波やその他任意の波形でも、その波高値を三角
波同様に適宜選択できる。
【0051】次に、パルス波高値を増加させながら、電
圧パルスを印加する場合の電圧波形を、図6(b)に示
す。図6(b)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅
とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10mse
c、T2を10μsec〜100msecとし、三角波
の波高値(フォーミング時のビーク電匠)は、例えば
0.1Vステップ程度づつ、増加させる。ここでは三角
波を例にあげたが、矩形波やその他任意の波形でも、そ
の波高値を同様に適宜選択できる。なお、フォーミング
処理は、フォーミング用パルスの間に、導電性薄膜4を
局所的に破壊、変形しない程度の電圧例えば0.1V程
度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、その電流
が所定の値以下に減少したところで終了する。
【0052】(8)次に、フォーミングが終了した素子
に活性化処理を施す。活性化処理の工程は、有機物質を
含有する雰囲気下で、上記フォーミング処理同様、パル
ス電圧を印加することによって行なうが、この雰囲気
は、電子源基板を真空容器内に配し、適当な有機物質を
導入することによって得られる。
【0053】適当な有機物質としては、アルカン、アル
ケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素
類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン
類、ニトリル類、フェノール、カルボン、スルホン酸等
の有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタ
ン、エタン、プロパンなどC2n+2(nは整
数)で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンな
どC2n,等の組成式で表される不飽
和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノ
ール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミ
ン、フェノール、ベンゾニトリル、アセトニトリル、蟻
酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。
【0054】この処理により、雰囲気中に存在する有機
物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、
素子電流I 、放出電流I が、著しく変化するよ
うになる。活性化工程の終了判定は、素子電流I
よび/または放出電流Iを測定しながら、適宜行な
う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適
宜設定される。
【0055】炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファ
イト(いわゆるHOPG、PG、GCを包含する;HO
PGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶
粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは
結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大き
くなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファ
スカーボン及びアモルファスカーボンと前記グラファイ
トの微結晶の混合物を指す)である。
【0056】(9)こうして作製した電子源基板に、好
ましくは、安定化工程を行なう。この工程は、活性化処
理時に導入した有機物質の残留物を排気する工程であ
る。真空容器内の圧力は、1.3〜4.0×10-5
a以下が好ましく、更に1.3×10-6Pa以下が特
に好ましい。真空容器を排気する真空排気装置は、装置
から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないよう
に、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。
【0057】具体的には、ソープションポンプ、イオン
ポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。さら
に、真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加
熱して、真空容器内壁や、電子源基板に吸着した有機物
質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加
熱条件は、80〜250℃、好ましくは150℃以上で
できるだけ長時間行なうのが望ましいが、特にこの条件
に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子源
基板の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により
行う。
【0058】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了後の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、圧力自体は多少上昇しても十分安定な特
性を維持することができる。
【0059】このような真空雰囲気を採用することによ
り、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、
結果として素子電流I 、放出電流I が安定す
る。
【0060】以上が、本発明における電子源基板の製造
工程であるが、該電子源基板を用いて画像形成装置を構
成した例を、図7と図8を用いて以下に説明する。図7
は、画像形成装置の画像形成部材による基本構成図であ
り、図8は蛍光膜である。
【0061】図7において、61は電子放出素子を複数
配した電子源基板、62は電子源基板61を固定したリ
アプレート、67はガラス基板(リアプレート基板)6
4の内面に蛍光膜65とメタルバック66等が形成され
たフェースプレートである。63は支持枠であり、該支
持枠63には、リアプレート62、フェースプレート6
7がフリットガラス等を用いて接続されている。69は
外囲器であり、例えば大気中あるいは窒素中で、400
〜500℃の温度範囲で10分間以上焼成することで、
封着して構成される。
【0062】外囲器69は、上述の如く、フェースプレ
ート67、支持枠63、リアプレート62で構成した
が、リアプレート62は主に基板61の強度を補強する
目的で設けられるため、基板61自体で十分な強度を持
つ場合は別体のリアプレート62は不要であり、基板6
1に直接支持枠63を封着し、フェースプレート67、
支持枠63、基板61で外囲器69を構成してもよい。
【0063】一方、フェースプレート67、リアプレー
ト62間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設
置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外
囲器69を構成することもできる。
【0064】図8は、蛍光膜である。蛍光膜65は、モ
ノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、カラーの蛍
光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプ
あるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材
71と蛍光体72とで構成される。ブラックストライ
プ、ブラックマトリクスが設けられる目的は、カラー表
示の場合必要となる3原色蛍光体の、各蛍光体72間の
塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくするこ
とと、蛍光膜65における外光反射によるコントラスト
の低下を抑制することにある。ブラックストライプの材
料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分とす
る材料だけでなく、導電性があり、光の透過及び反射が
少ない材料であればこれに限るものではない。ガラス基
板64に蛍光体を塗布する方法は、モノクローム、カラ
ーによらず、沈澱法、印刷法等が用いられる。
【0065】また、蛍光膜65の内面側には通常メタル
バック66が設けられる。メタルバックの目的は、蛍光
体の発光のうち内面側への光をフェースプレート67側
へ鏡面反射させることにより輝度を向上させること、電
子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させ
ること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメ
ージからの蛍光体の保護等である。メタルバックは、蛍
光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常フ
ィルミングと呼ばれる)を行ない、その後Alを、真空
蒸着等を用いて堆積させることで作製できる。フェース
プレート67には、更に蛍光膜65の導電性を高めるた
め、蛍光膜65の外面側に透明電極(不図示)を設けて
もよい。前述の封着を行なう際、カラーの場合は各色蛍
光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないた
め、十分な位置合わせを行なう必要がある。
【0066】外囲器69は、不図示の排気管を通じ、
1.3×10-5Pa程度の真空度にした後、封止がお
こなわれる。また、外囲器69の封止後の真空度を維持
するために、ゲッター処理を行なう場合もある。これ
は、外囲器69の封止を行う直前あるいは封止後に、抵
抗加熱あるいは高周波加熱等の加熱法により、外囲器6
9内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加
熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常B
a等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たと
えば1.3×10-3Paないしは1.3×10-5Pa
の真空度を維持するものである。
【0067】以上により完成した本発明の画像形成装置
において、各電子放出素子には、容器外端子Dox1な
いしDoxm,Doy1ないしDoynを通じ、電圧を
印加することにより、電子放出させ、高圧端子68を通
じ、メタルバック66あるいは透明電極(不図示)に数
kV以上の高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜
65に衝突させ、励起・発光させることで画像を表示す
るものである。
【0068】なお、以上述べた構成は、表示等に用いら
れる好適な画像形成装置を作製する上で必要な概略構成
であり、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容
に限られるものではなく、画像形成装置の用途に適する
よう適宜選択する。
【0069】また、本発明の画像形成装置は、テレビジ
ョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピュー
ター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成さ
れた光プリンターとしての画像形成装置等としても用い
ることができる。
【0070】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素
の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0071】実施例1 本実施例にかかわる基本的な電子源基板の構成は、図
1、図2、図3と同様である。本実施例における電子源
基板の製造法は、図4及び図5に示している。以下、図
1、図2、図4、図5を用いて、本発明に関わる画像形
成装置の基本的な構成及び製造法を説明する。図4及び
図5は簡便のため、一個の電子放出素子近傍の製造工程
を拡大して示しているが、本実施例は、多数の電子放出
素子を単純マトリクス配置した電子源基板の例である。
【0072】工程−a 清浄化した青板ガラス基体1上に、ナトリウム拡散防止
層9として厚さ1.0μmのSiO 膜をスパッタ法
で形成する。
【0073】工程−b 次に、基板1上に、スパッタ法により厚さ50nmのニ
クロムを堆積する。その後、素子電極2,3のパターン
をフォトレジストで形成し、ドライエッチング処理によ
って素子電極2,3のパターン以外のニクロム堆積層を
除去し、最後にフォトレジストパターンを除去して、素
子電極2,3を形成する。
【0074】工程−c ナトリウム拡散防止層9、素子電極2,3を形成した基
体1上に、スクリーン印刷により、配線6のパターンを
Agペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成
し、Agからなる所望の形状の配線6を形成する。
【0075】工程−d 次に層間絶縁層8のパターンを、スクリーン印刷によ
り、ガラスペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃
で焼成する。十分な絶縁性を得るために、再度、ガラス
ペーストを印刷、乾燥、焼成を繰り返して、ガラスから
なる所望の形状の層間絶縁層8を形成する。
【0076】工程−e 層間絶縁層8を形成した部位において下配線6と交差す
るように、上配線7のパターンを、スクリーン印刷によ
り、Agペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で
焼成し、Agからなる所望の形状の上配線7を形成す
る。
【0077】以上の工程により、素子電極2,3が配線
6,7によってマトリクス状に結線された基板が形成で
きる。
【0078】ここで、図2中のA−A'の線に沿って、
エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)
の手法により、Ag元素の分布を計測した結果の例を、
図9に示す。また、比較のため、素子電極2,3及び配
線6,7を形成した場合の、同様のAg元素の分布を計
測した結果の例を、図10に示す。図9、図10から分
かるように、本実施例により、配線6,7からのAgの
素子電極2,3への拡散が抑えられていることがわか
る。
【0079】工程−f 次に、導電性薄膜4を素子電極2,3のギャップ間にま
たがるように形成する。導電性薄膜4の形成は、有機パ
ラジウム溶液をインクジェット法により所望の位置に塗
布し、350℃で30分間の加熱焼成処理をする。こう
して得られた導電性薄膜4はPdOが主成分となり、膜
厚は約10nmであった。
【0080】以上の工程により基体1上にナトリウム拡
散防止層9、下配線6、層間絶縁層8、上配線7、素子
電極2,3、導電性薄膜4を形成し、電子源基板を作製
した。
【0081】以下に、本実施例の電子源基板を用いて、
画像形成装置を構成した例を、図7と図1を用いて説明
する。
【0082】以上のようにして作製した電子源基板61
をリアプレート62上に固定した後、電子源基板61の
5mm上方に、フェースプレート67(ガラス基板64
の内面に蛍光膜65とメタルバック66が形成されて構
成される)を、支持枠63を介して配置し、フェースプ
レート67、支持枠63、リアプレート62の接合部に
フリットガラスを塗布し、大気中400℃で10分間焼
成することで行った。またリアプレート62への電子源
基板61の固定もフリットガラスで行った。
【0083】蛍光膜65は、モノクロームの場合は蛍光
体のみから成るが、本実施例では蛍光体はストライプ形
状を採用し、先にブラックストライプを形成し、その間
隙部に各色蛍光体を塗布し、蛍光膜65を作製した。ブ
ラックストライプの材料として通常よく用いられている
黒鉛を主成分とする材料を用いた。ガラス基板64に蛍
光体を塗布する方法はスラリー法を用いた。
【0084】また、蛍光膜65の内面側には通常メタル
バック66が設けられる。メタルバックは、蛍光膜作製
後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常フィルミン
グと呼ばれる)を行ない、その後、Alを真空蒸着する
ことで作製した。フェースプレート67には、更に蛍光
膜65の導電性を高めるため、蛍光膜65の外面側に透
明電極(不図示)が設けられる場合もあるが、本実施例
では、メタルバックのみで十分な導電性が得られたので
省略した。前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍
光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないた
め、十分な位置合わせを行った。
【0085】以上のようにして完成したガラス容器内の
雰囲気を排気管(図示せず)を通じ真空ポンプにて排気
し、十分な真空度に達した後、容器外端子Dox1ない
しDoxmとDoy1ないしDoynを通じ素子電極
2,3間に電圧を印加し、導電性薄膜4をフォーミング
処理した。フォーミング処理の電圧波形は、図6(b)
と同様である。本実施例ではT1を1msec,T2を
10msecとし、約1.3×10-3Paの真空雰囲
気下で行った。
【0086】次に、パネル内の圧力が1.3×10-6
Pa台に達するまで排気を続けた後、パネルの排気管よ
り、全圧が1.3×10-4Paとなるように有機物質
をパネル内に導入し、維持した。容器外端子Dox1な
いしDoxmとDoy1ないしDoynを通じ素子電極
2,3間に、15Vの波高値のパルス電圧を印加し、活
性化処理を行った。
【0087】このように、フォーミング、活性化処理を
行ない、電子放出部5を形成した。
【0088】次に、1.3×10-4Pa程度の圧力ま
で排気し、不図示の排気管をガスバーナーで熱すること
で溶着し外囲器の封止を行った。最後に、封止後の圧力
を維持するために、高周波加熱法でゲッター処理を行っ
た。
【0089】以上のように完成した本発明の画像形成装
置において、各電子放出素子には、容器外端子Dox1
ないしDoxm,Doy1ないしDoynを通じ、走査
信号及び変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ
印加することにより、電子放出させ、高圧端子68を通
じ、メタルバック66、あるいは透明電極(不図示)に
5kV以上の高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光
膜65に衝突させ、励起・発光させることで画像を表示
した。
【0090】本実施例における画像形成装置は、テレビ
ジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良
好な画像を長時間にわたって安定に表示することができ
た。
【0091】実施例2 本実施例にかかわる基本的な電子源基板の構成も、実施
例1と同機である。
【0092】工程−a 清浄化した青板ガラス基体1上に、ナトリウム拡散防止
層9として厚さ1.0μmのリンドープシリカガラス
(PSG)膜をCVD法で形成する。
【0093】工程−b 次に、基板1上に、スパッタ法により厚さ50nmのニ
クロムを堆積する。その後、素子電極2,3のパターン
をフォトレジストで形成し、ドライエッチング処理によ
って素子電極2,3のパターン以外のニクロム堆積層を
除去し、最後にフォトレジストパターンを除去して、素
子電極2,3を形成する。
【0094】工程−c ナトリウム拡散防止層9、素子電極2,3を形成した基
体1上に、スクリーン印刷により、配線6のパターン
を、Agペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で
焼成し、Agからなる所望の形状の配線6を形成する。
【0095】工程−d 次に、層間絶縁層8のパターンを、スクリーン印刷によ
り、ガラスペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃
で焼成する。十分な絶縁性を得るために、再度、ガラス
ペーストを印刷、乾燥、焼成を繰り返して、ガラスから
なる所望の形状の層間絶縁層8を形成する。
【0096】工程−e 層間絶縁層8を形成した部位において下配線6と交差す
るように、上配線7のパターンを、スクリーン印刷によ
り、Agペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で
焼成し、Agからなる所望の形状の上配線7を形成す
る。
【0097】以上の工程により、素子電極2,3が配線
6,7によってマトリクス状に結線された基板が形成で
きる。
【0098】ここで、図2中のA−A'の線に沿って、
エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)
の手法により、Ag元素の分布を計測したところ、図9
と同様の結果を得、本実施例により、配線6,7からの
Agの素子電極2,3への拡散が抑えられていることが
わかる。
【0099】工程−f 次に、導電性薄膜4を素子電極2,3のギャップ間にま
たがるように形成する。導電性薄膜4の形成は、有機パ
ラジウム溶液をインクジェット法により所望の位置に塗
布し、350℃で30分間の加熱焼成処理をする。こう
して得られた導電性薄膜4はPdOが主成分となり、膜
厚は約10nmであった。
【0100】以上の工程により基体1上にナトリウム拡
散防止層9、下配線6、層間絶縁層8、上配線7、素子
電極2,3、導電性薄膜4を形成し、電子源基板を作製
した。
【0101】以後、実施例1と同様に、本実施例の電子
源基板を用いて画像形成装置を構成したところ、本実施
例における画像形成装置においても、テレビジョンとし
て十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を
長時間にわたって安定に表示することができた。
【0102】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
素子電極材科として耐熱性合金を用いることにより、配
線金属が素子電極中を拡散し難いため、電子放出特性の
劣化の原因となる配線金属の拡散を防止できるので、大
面積の電子源基板を低コストで容易に形成できる印刷配
線とを用いることができ、安価で高性能な電子源基板が
実現できる。さらにそれを用いて、良好な画像を長時間
にわたり保持し得る大画面の平面型の画像形成装置、例
えば、カラーフラットテレビが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子源基板の一例を示す平面図であ
る。
【図2】本発明の電子源基板の電子放出素子近傍の鳥瞰
図である。
【図3】本発明の電子源基板の電子放出素子近傍の断面
図である。
【図4】本発明に係る電子源基板の基本的な製造方法を
説明するための図である。
【図5】本発明に係る電子源基板の基本的な製造方法を
説明するための図である。
【図6】本発明に係るフォーミング処理における電圧波
形の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の基本構成を示す図
である。
【図8】図7の画像形成装置に用いられる蛍光膜を示す
図である。
【図9】実施例における本発明の効果を説明する図であ
る。
【図10】実施例における本発明の効果を説明する比較
図である。
【図11】従来の電子源基板の構成を示す平面図であ
る。
【図12】従来の電子源基板の構成を示す鳥瞰図であ
る。
【符号の説明】
1 基体 2,3 素子電極 4 導電性薄膜 5 電子放出部 6,7 配線 8 層間絶縁層 9 ナトリウム拡散防止層 61 電子源基板 62 リアプレート 63 外枠 64 フェースプレート基板 65 蛍光膜 66 メタルバック 67 フェースプレート 68 高圧端子 69 真空外囲器 71 黒色導電体 72 蛍光体 101 電子放出素子
フロントページの続き (72)発明者 宮崎 和也 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 5C031 DD17 5C036 EE01 EE19 EF01 EF06 EF09 EG28 EH11

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成した、一対の素子電極、及
    び該素子電極をまたいで形成した電子放出部を有する導
    電性薄膜、及び該素子電極に接続した金属配線、とで構
    成される電子放出素子を有する電子源基板であって、 前記素子電極は耐熱性合金よりなり、かつ前記金属配線
    と比較してその構成元素の標準電極電位が低いことを特
    徴とする電子源基板。
  2. 【請求項2】 前記金属配線はAg,Cu,Auのいず
    れかの金属、あるいはいずれかの金属を含む合金からな
    ることを特徴とする請求項1に記載の電子源基板。
  3. 【請求項3】 前記金属配線は、構成元素の一部、ある
    いは全てがAgであることを特徴とする請求項1又は2
    に記載の電子源基板。
  4. 【請求項4】 前記素子電極は、前記金属配線と接する
    部位において、Ni-Cr合金であることを特徴とする
    請求項1〜3のいずれかに記載の電子源基板。
  5. 【請求項5】 前記基板は、前記素子電極あるいは前記
    金属配線と接する部位において、主成分がシリカである
    ことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の電子源
    基板。
  6. 【請求項6】 前記電子放出部を有する導電性薄膜は、
    PdないしPdO、あるいはこれらの混合物から構成さ
    れることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の電
    子源基板。
  7. 【請求項7】 前記電子放出素子は、表面伝導型電子放
    出素子であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに
    記載の電子源基版。
  8. 【請求項8】 前記電子放出素子が複数個配置され、入
    力信号に応じて電子を放出することを特徴とする請求項
    1〜7いずれかに記載の電子源基板。
  9. 【請求項9】 前記電子放出素子を複数個並列に配置
    し、個々の素子の両端を前記金属配線に接続した電子放
    出素子の行を複数もち、更に、該電子放出素子に変調信
    号を印加する変調手段を有することを特徴とする請求項
    8に記載の電子源基板。
  10. 【請求項10】 互いに電気的に絶縁されたm 本のX
    方向金属配線とn本のY方向金属配線とに、前記電子放
    出素子の一対の素子電極とを接続し、電子放出素子をマ
    トリクス状に配列したことを特徴とする請求項8又は9
    に記載の電子源基板。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10いずれかに記載の電子
    源基板の製造方法であって、前記金属配線は、金属ペー
    ストの印刷と加熱焼成によって形成されることを特徴と
    する電子源基板の製造方法。
  12. 【請求項12】 入力信号にもとづいて画像を形成する
    装置であって、少なくとも、蛍光体を擁する画像形成部
    材と、請求項1〜11のいずれかに記載の電子源基板と
    により構成されたことを特徴とする画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006107776A (ja) * 2004-09-30 2006-04-20 Toshiba Corp 画像表示装置の製造方法

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