JP3703255B2 - 電子放出素子、電子源、それを用いた画像形成装置およびそれらの製造方法 - Google Patents

電子放出素子、電子源、それを用いた画像形成装置およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子放出素子、電子源、それを用いた画像形成装置およびそれらの製造方法に係わり、基体上に設けられた導電性膜の一部から電子を放出してなる電子放出素子、電子源、それを用いた画像形成装置およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子放出素子としては大別して熱電子電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/金属型(以下、「MIM型」という。)や表面伝導型電子放出素子等がある。FE型の例としては W.P.Dyke&W.W.Dolan,“Field emission",Advance in Electron Physics,8,89(1956) あるいは C.A.Spindt,“PHYSICAL Properties of thin-film field emission cathodes with molybdenium cones",J.Appl.Phys.,47,5248(1976) 等に開示されたものが知られている。
【0003】
MIM型の例としては C.A.Mead,“Operation of Tunnel-Emission Devices",J.Apply.Phys.,32,646(1961) 等に開示されたものが知られている。
【0004】
表面伝導型電子放出素子型の例としては、 M.I.Elinson,Radio Eng.Electron Pys.,10,1290(1965) 等に開示されたものがある。
【0005】
表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型電子放出素子としては、前記 Elinson 等によるSnO2薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの〔G.Dittmer,“Thin Solid Films",9,317(1972)〕、In23/SnO2薄膜によるもの〔M.Hartwell and C.G.Fonstad,“IEEE Trans.ED Conf.",519(1975)〕、カーボン薄膜によるもの〔荒木久他、真空、第26巻、第1号、22頁(1983)〕等が報告されている。
【0006】
表面伝導型電子放出素子としては、上記の構成のものとは別に、一対の素子電極の間に、有機金属化合物を熱処理して導電性薄膜を形成する方法、およびその方法で形成される構成の素子が本出願人により報告されている。例えば特開平 7-235255 号公報などに詳述されている。
【0007】
図15はその構成の一例を模式的に示したものである。1は基体、2および3は素子電極であり一般的な導電性材料で形成される。4は素子電極2,3に接続された導電性膜であり、金属、金属酸化物などの導電性物質の微粒子により構成された導電性微粒子膜が好ましく用いられる。該導電性膜は、スパッタ法、真空蒸着法等の薄膜堆積技術により形成しても良いが、有機金属化合物の溶液を塗布、乾燥させ、これを熱処理することにより形成しても良く、生産技術的には、プロセスが簡易になり、また大面積の電子源の形成により適した方法であると期待される。
【0008】
該導電性薄膜の材質としては、様々な金属、金属酸化物、その他の金属化合物、半導体などが利用可能であるが、例えばPdOを主成分とする微粒子膜をあげることが出来、上記の特開平 7-235255 号公報などにもこれを用いた電子放出素子の例が示されている。
【0009】
上記PdOを主成分とする微粒子膜は、有機Pd化合物の溶液を塗布し、形成された有機Pd化合物膜を熱処理することにより形成することができる。
【0010】
5は、上記導電性膜4の一部に形成された電子放出部である。これは導電性膜形成後、上記素子電極2,3間に電圧を印加し、導電性膜の一部を変形・破壊ないし変質し高抵抗の亀裂を発生させる(以下、「フォーミング」と呼ぶ。)ことにより形成する。印加する電圧としては、パルス電圧が好ましく、上記特開平 7-235255 号公報などにおいても、この方法により電子放出素子を形成する例が示されている。
【0011】
電子放出部が形成された後、さらに活性化処理を行うのが望ましい。この処理は、有機物質を含有する雰囲気中で素子電極間にパルス電圧を繰り返し印加することにより、電子放出部およびその近傍に炭素および/または炭素化合物よりなる堆積膜(不図示)を形成する処理で、これにより素子電流および放出電流が大きく変化し、好ましい特性を有するようになる。
【0012】
この後、さらに安定化処理を行うのが望ましい。これは、上記電子放出素子や、それが収められた真空容器の壁面などに吸着して残留する有機物質を除去する工程であり、この工程によりこれ以降上記の炭素および/または炭素化合物の堆積が進行するのを抑制することが出来、電子放出素子の特性を安定させることができる。この処理は、例えば電子放出素子・真空容器を加熱しながら、真空容器内の排気を行うことにより実行することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、導電性膜の材質として、PdO(少なくともその一部が還元されて金属Pdになっている場合もある)は好ましく用いられるが、電気的な耐熱温度が比較的低く、特定の還元性雰囲気下では400℃以下になる場合もあり、製造工程上の制限となる可能性がある。なお、ここで言う電気的な耐熱温度とは、導電性膜が温度の上昇により導電性を失う温度のことであり、PdO微粒子膜においては微粒子同士が凝集を起こして、比較的大きな粒子となり、電気的に孤立した粒子の集まりとなり、膜全体としての導電経路を喪失することにより起こるもの思われる。上記の安定化工程において、真空容器内をできるだけ高温に加熱して排気することが望ましいが、その一方、導電性膜がダメージを受けないような温度に設定することが望まれる。
【0014】
また、フォーミング処理により形成された高抵抗の亀裂の幅が、上述の活性化処理によって、広がってしまう場合があることが走査電子顕微鏡を用いた観察などにより認められる。これは電子放出素子の特性を低下させる可能性があると考えられる。活性化処理中には素子電流が増加するについて、ジュール熱の発生が増加し、電子放出部付近の温度が上昇するため、その部分で局所的に上述したような微粒子の凝集と似た現象が起こるためではないかと想像される。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子放出素子は、基体上に対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜と、を有する電子放出素子において、
前記導電性膜が、PdOを主成分とする微粒子よりなる第1層と、該第1層上に設けられた、添加物としてBiを含有するPdO微粒子よりなる第2層とから構成されたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の電子放出素子の製造方法は、基体上に対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜と、を形成してなる電子放出素子の製造方法において、
前記基体上にPdO微粒子を主成分とする微粒子よりなる導電性膜第1層を形成する工程と、
前記素子電極間に電圧を印加して該導電性膜第1層を通電フォーミングした後に、前記導電性膜第1層上に、Pd化合物とBi化合物を含む溶液を前記導電性膜第1層上に塗布し、焼成することにより導電性膜第2層を形成する工程と、
前記素子電極間に再度電圧を印加し、前記電子放出部を形成する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の電子源は、対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子と該素子電極に接続された配線とを基体上に有する電子源であって、前記電子放出素子が上記本発明の電子放出素子であるものである。
【0018】
また本発明の画像形成装置は、対向する一対の素子電極、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子、及び該素子電極に接続された配線を基体上に有する電子源と、該電子源より放出される電子の照射により画像を形成する画像形成部材と、を真空容器内に有する画像形成装置であって、前記電子放出素子が上記本発明の電子放出素子であるものである。
【0019】
本発明の電子源の製造方法は、対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子と該素子電極に接続された配線とを基体上に有する電子源の製造方法であって、前記電子放出素子が上記本発明の電子放出素子の製造方法により製造されることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の画像形成装置の製造方法は、対向する一対の素子電極、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子、及び該素子電極に接続された配線を基体上に有する電子源と、該電子源より放出される電子の照射により画像を形成する画像形成部材と、を真空容器内に有する画像形成装置の製造方法であって、前記電子放出素子が上記本発明の電子放出素子の製造方法により製造されることを特徴とするものである。
【0021】
上記PdOを主成分とする導電性薄膜の第1層は、焼成可能なPdの錯体または塩の溶液を塗布して、これを焼成する方法が好ましい。錯体または塩として特に制限はないが、水溶液として用いる場合は、アミン錯体などを用いるのが安定で好ましい。
【0022】
第2層の材質としては、上記Pd錯体または塩の溶液にBiの錯体または塩を混合し、これを塗布焼成して添加物としてBiを含むPdO微粒子膜を形成する方法が好ましく用いられる。Biの錯体または塩としては特に制限はないが、水溶液を用いる場合、Pd化合物と安定に共存しやすいエチレンジアミン四酢酸(EDTA)錯体が好ましく用いられる。
【0023】
加熱焼成によって得られた導電性膜第2層中のBi含有量は、金属元素全体(Bi+Pd)で100mol%とした場合1mol%から20mol%の範囲が適当である。図14はH2還元雰囲気における素子の電気抵抗値と温度との関係を示す特性図である。
【0024】
前記溶液の金属濃度範囲は、用いる金属元素の種類や金属塩の種類によって最適な範囲が多少異なるが、一般には重量で0.01%以上、5%以下の範囲が適当である。金属濃度が低すぎる場合、基板に所望の量の金属を付与するために多量の前記溶液の液滴の付与が必要になり、その結果液滴付与に要する時間が長くなるのみならず、基板上に無用に大きな液溜りを生じてしまい所望の位置のみに金属を付与する目的が達成できなくなる。
【0025】
逆に前記溶液の金属濃度が高すぎると、基板に付与された液滴が後の工程で乾燥あるいは焼成される際に著しく不均一化し、その結果として電子放出素子の特性を悪化させる。
【0026】
前記溶液に水溶性ポリマーを添加することによって、基板に付与された液滴の凝集を防ぐことができる。その水溶性ポリマーとして、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどが用いられる。その水溶性ポリマーの添加量は、0.01〜0.5重量%必要であり、0.01重量%より低いと基板に付与された液滴の凝集を防ぐことはできない。また、0.5重量を超えると溶液粘度が高くなり取扱いが困難になる。さらに、低級アルコールを添加することによって、水溶性ポリマーの添加によって高くなった溶液粘度を低下させることができ、取扱いが容易になる。その低級アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノールなどが用いられる。その低級アルコールの添加量は、5〜35重量%であり、35重量%を超えると基板に付与された液滴が後の工程で乾燥あるいは焼成される際に著しく不均一化し、その結果として上記電子放出部形成用薄膜が不均一になり電子放出素子の特性を悪化させる。また、5重量%より低いと低級アルコール添加の効果は見られなくなる。
【0027】
上記の金属化合物溶液を基板に付与する手段は、液滴を形成し付与することが可能ならば任意の方法でよいが、特に微小な液滴を効率よく適度な精度で発生付与でき制御性も良好なインクジェット方式が便利である。インクジェット方式にはピエゾ素子等のメカニカルな衝撃により液滴を発生付与するものや、微小ヒータ等で液を加熱し突沸により液滴を発生付与するバブルジェット方式があるが、いずれの方式でも十ナノグラム程度から数十マイクログラム程度までの微小液滴を再現性良く発生し基板に付与することができる。
【0028】
上記手段で基板に付与された金属化合物溶液は乾燥、焼成工程を経て無機微粒子膜とすることにより、基板上に電子放出のための無機微粒子膜を形成する。なおここで述べる微粒子膜とは複数の微粒子が集合した膜であり、微視的に微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接あるいは重なり合った状態(島状も含む)の膜をさす。また微粒子膜の粒径とは、前記状態で粒子形状が認識可能な微粒子についての径を意味する。
【0029】
乾燥工程は通常用いられる自然乾燥、送風乾燥、熱乾燥等を用いればよい。焼成工程は通常用いられる加熱手段を用いれば良い。乾燥工程と焼成工程とは必ずしも区別された別工程として行う必要はなく、連続して同時に行ってもかまわない。
【0030】
(実施態様)
本発明は適用し得る表面伝導型電子放出素子の基本的構成について説明する。
【0031】
図1は、本発明を適用可能な平面型表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。
【0032】
図1において、1は基板、2と3は素子電極、4は導電性膜第1層、5は電子放出部、6は導電性膜第2層である。基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiO2を積層したガラス基板等を用いることができる。
【0033】
対向する素子電極2,3の材料としては、一般的な導体材料を用いることができる。これは例えばNi,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属或は合金及びPd,Ag,Au,RuO2,Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、ITO等の透明導電体及びポリシリコン等の半導体導体材料等から適宜選択することができる。
【0034】
素子電極間隔L、素子電極長さW、電子放出部形成用薄膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して設計される。素子電極間隔Lは、数千Åから数百μmの範囲とすることができ、好ましくは数μmから数十μmの範囲とすることができる。
【0035】
素子電極長さWは、電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とすることができる。素子電極2,3の膜厚dは、数百Åから数μmの範囲とすることができる。
【0036】
導電性膜第1層の膜厚は、素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述するフォーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は、数十Åから数百Åの範囲とするのが好ましく、より好ましくは30Åより200Åの範囲とするのが良い。その抵抗値は、102から105Ωの値である。電子放出部5及びその近傍の電子放出部形成用薄膜4には、炭素及び炭素化合物を有することもできる。
【0037】
導電性膜第2層6は等密着性をあげる効果のある金属を添加したPdO等を用いる。
【0038】
以下、図1及び図2を参照しながら製造方法の一例について説明する。図2においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。
【0039】
1) 基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に素子電極2,3を形成する(図2(a))。
【0040】
2) 素子電極2,3を設けた基板1に、インクジェット方式により金属化合物溶液を塗布して金属化合物薄膜を形成する。金属化合物薄膜を加熱焼成処理し、導電性膜第1層4を形成する(図2(b))。
【0041】
ここでは、金属化合物溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性膜第1層の形成法はこれに限られるものでなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いることもできる。
【0042】
3) つづいて、導電性膜第1層に亀裂を形成するための第1のフォーミング工程を施す。このフォーミング工程の方法の一例として通電処理による方法を説明する。素子電極2,3間に、不図示の電源を用いて、通電を行うと、導電性膜第1層4の部位に、構造の変化した亀裂5′が形成される(図2(c))。
【0043】
通電フォーミングによれば導電性膜第1層4に局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造が変化し亀裂が形成される。通電フォーミングの電圧波形の例を図3に示す。
【0044】
図3(a)におけるT1およびT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μ秒〜10m秒、T2は、10μ秒〜100m秒の範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素子形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に検定されるものではなく、矩形波など所望の波形を採用することができる。
【0045】
図3(b)におけるT1及びT2は、図3(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させることができる。
【0046】
通電フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2中に、導電性薄膜第1層4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することができる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。
【0047】
4) 次に導電性膜第2層6を3)で作製した亀裂5′を覆うように導電性膜第1層4上に形成する(図2(d))。この材質としてはBi等密着性をあげる効果のある金属を添加したPdO等を用いる。なお、ここでは導電性膜第1層4全体を覆うように導電性膜第2層6を形成しているが、必ずしも全体を覆う必要はなく、亀裂5′(又は亀裂5′とその近傍)を覆うように形成してもよい。
【0048】
5) 更に再び上記電極2,3間に不図示の電源を用いて通電を行って電子放出部5を作製する(図2(e))。
【0049】
電子放出部5はほぼ亀裂5′を形成した位置に形成される。すなわち、導電性膜第2層6にも亀裂5′の位置にほぼ対応する位置に亀裂が生じ電子放出部5形成される。
【0050】
6) フォーミングを終えた素子には活性化工程と呼ばれる処理を施す。活性化工程とは、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化する工程である。
【0051】
活性化工程は、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。このときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0052】
炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含する。HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す。)であり、その膜厚は、500Å以下の範囲とするのが好ましく、300Å以下の範囲とすることがより好ましい。
【0053】
7) このような工程を経て得られた電子放出素子は、ベーキングによる安定化工程を行うことが好ましい。この工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。
【0054】
前記活性化の工程で、排気装置として油拡散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生するオイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成分の分圧を極力低く抑えることが求められる。真空容器内の有機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1×10-8Torr以下が好ましく、さらに1×10-10Torr 以下が特に好ましい。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。この処理はできるだけ高温で長時間行うのが望ましく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが求められ、1〜3×10-7Torr以下が好ましく、さらに1×10-8Torr以下が特に好ましい。
【0055】
ベーキング工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
【0056】
上述した工程を経て得られた本発明を適用可能な電子放出素子の基本特性について図5、図6を参照しながら説明する。
【0057】
図5は、真空処理装置の一例を示す模式図であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能をも兼ね備えている。図5においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。図5において、65は真空容器であり、66は排気ポンプである。真空容器65内には電子放出素子が配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体であり、2及び3は素子電極、4は導電性膜第1層、5は電子放出部、6は導電性膜第2層である。61は電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、60は素子電極2・3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、64は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極である。63はアノード電極64に電圧を印加するための高圧電源、62は素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計である。一例として、アノード電極の電圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行うことができる。真空容器65内には、不図示の真空計等の真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになっている。排気ポンプ66は、ターボポンプ、ロータリーポンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されている。ここに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、不図示のヒーターにより加熱できる。従って、この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミング以降の工程も行うことができる。
【0058】
図6は、図5に示した真空処理装置を用いて測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係を模式的に示した図である。図6においては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、任意単位で示している。なお、縦・横軸ともリニアスケールである。
【0059】
図6からも明らかなように、本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関して対する三つの特徴的性質を有する。
【0060】
即ち、
(i)本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図6中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0061】
(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
【0062】
(iii)アノード電極64に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。つまり、アノード電極64に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0063】
以上の説明より理解されるように、本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能となる。
【0064】
図6においては、素子電流Ifが素子電圧Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」という。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特性」という。)を示す場合もある(不図示)。これら特性は、前述の工程を制御することで制御できる。
【0065】
本発明を適用可能な電子放出素子の応用例について以下に述べる。本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子の複数個を基板上に配列し、例えば電子源あるいは、画像形成装置が構成できる。
【0066】
電子放出素子の配列については、種々のものが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子からの電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これとは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げられる。このようなものは所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス配置について以下に詳述する。
【0067】
本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子については、前述したとおり(i)〜(iii)の特性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と巾で制御できる。一方、しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0068】
以下この原理に基づき、本発明を適用可能な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板について、図7を用いて説明する。図7において、81は電子源基板、82はX方向配線、83はY方向配線である。84は表面伝導型電子放出素子、85は結線である。尚、表面伝導型電子放出素子84は、前述した平面型あるいは垂直型のどちらであってもよい。m本のX方向配線82は、DX1,DX2,…,DXmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向配線83は、DY1,DY2,…,DYnのn本の配線よりなり、X方向配線82と同様に形成される。これらm本のX方向配線82とn本のY方向配線83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成される。例えば、X方向配線82を形成した基板81の全面域は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線82とY方向配線83の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線82とY方向配線83は、それぞれ外部端子として引き出されている。
【0069】
表面伝導型電子放出素子84を構成する一対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本のY方向配線83と導電性金属等からなる結線85によって電気的に接続されている。
【0070】
配線82と配線83を構成する材料、結線85を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0071】
X方向配線82には、X方向に配列した表面伝導型電子放出素子84の行を、選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線83には、Y方向に配列した表面伝導型電子放出素子84の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0072】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0073】
このような単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図8と図9及び図10を用いて説明する。図8は画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、図9は図8の画像形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図10はNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0074】
図8において、81は電子放出素子を複数配した電子源基板、91は電子源基板81を固定したリアプレート、96はガラス基板93の内面に蛍光膜94とメタルバック95等が形成されたフェースプレートである。92は支持枠であり、該支持枠92には、リアプレート91、フェースプレート96がフリットガラス等を用いて接続されている。98は外囲器であり、例えば大気中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範囲で10分以上焼成することで、封着して構成される。
【0075】
84は、図1における電子放出部に相当する。82,83は、表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
【0076】
外囲器98は、上述の如く、フェースプレート96、支持枠92、リアプレート91で構成される。リアプレート91は主に基板81の強度を補強する目的で設けられるため、基板81自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート91は不要とすることができる。即ち、基板81に直接支持枠92を封着し、フェースプレート96、支持枠92及び基板81で外囲器98を構成しても良い。一方、フェースプレート96、リアプレート91間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器98を構成することもできる。
【0077】
図9は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光膜94は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材101と蛍光体102とから構成することができる。ブラックストライプ、ブラックマトリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍光体102間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜94における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。ブラックストライプの材料としては、通常用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができる。ガラス基板93に蛍光体を塗布する方法は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法、印刷法等が採用できる。蛍光膜94の内面側には、通常メタルバック95が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート96側へ鏡面反射させることにより輝度を向上させること、電子ビーム加速電圧を印加するため電極として作用させること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージから蛍光体を保護すること等である。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、その後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製できる。
【0078】
フェースプレート96には、更に蛍光膜94の導電性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0079】
前述の封着を行う際には、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分な位置合わせが求められる。
【0080】
図8に示した画像形成装置は、例えば以下のようにして製造される。
【0081】
外囲器98は、前述の安定化工程と同様に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソープションポンプなどのオイルを使用しない排気装置により不図示の排気管を通じて排気し、10-7Torr 程度の真空度の有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止が成される。外囲器98の封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理を行なうこともできる。これは、外囲器98の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲度98内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たとえば1×10-5 ないしは1×10-7Torr の真空度を維持するものである。ここで、表面伝導型電子放出素子のフォーミング処理以降の工程は、適宜設定できる。
【0082】
次に、単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例について、図10を用いて説明する。図10において、111は画像表示パネル、112は走査回路、113は制御回路、114はシフトレジスタである。115はラインメモリ、116は同期信号分離回路、117は変調信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。表示パネル111は、端子Dox1〜Doxm、端子Doy1〜Doyn、及び高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続している。端子Dox1〜Doxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即ち、M行N列の行列状にマトリクス配線された表面伝導型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。
【0083】
素子Dy1〜Dynには、前記走査信号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば10K〔V〕の直流電圧が供給されるが、これは表面伝導型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0084】
走査回路112について説明する。同回路は、内部にM個のスイッチング素子を備えたものである(図中、S1ないしSmで模式的に示している)。各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0〔V〕(グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル111の端子Dox1ないしDoxmと電気的に接続される。S1〜Smの各スイッチング素子は、制御回路113が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するものであり、例えばFETのようなスイッチング素子を組み合わせることにより構成することができる。
【0085】
直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう設定されている。
【0086】
制御回路113は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行なわれるように各部の動作を整合させる機能を有する。制御回路113は、同期信号分離回路116より送られる同期信号Tsyncに基づいて、各部に対してTscanおよびTsftおよびTmryの各制御信号を発生する。
【0087】
同期信号分離回路116は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から同期信号成分と輝度信号成分とを分離する為の回路で、一般的な周波数分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信号分離回路116により分離された同期信号は、垂直同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分は便宜上DATA信号と表した。該DATA信号はシフトレジスタ114に入力される。
【0088】
シフトレジスタ114は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制御回路113より送られる制御信号Tsftに基づいて動作する(即ち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ114のシフトクロックであるということもできる。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータは、Id1〜IdnのN個の並列信号として前記シフトレジスタ114より出力される。
【0089】
ラインメモリ115は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であり、制御回路113より送られる制御信号Tmryに従って適宜Id1〜Idnの内容を記憶する。記憶された内容は、I'd1〜I'dnとして出力され、変調信号発生器117に入力される。
【0090】
変調信号発生器117は、画像データI'd1〜I'dnの各々に応じて表面伝導型電子放出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、その出力信号は、端子Doy1〜Doynを通じて表示パネル111内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0091】
前述したように、本発明を適用可能な電子放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。このことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出閾値より小さい電圧を印加しても電子放出は生じないが、電子放出閾値以上の電圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を制御することが可能である。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御することが可能である。
【0092】
従って、入力信号に応じて、電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器117として、一定長さの電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いることができる。
【0093】
パルス幅変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器117として、一定の波高値の電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いることができる。
【0094】
シフトレジスタ114やラインメモリ115は、デジタル信号式のものもアナログ信号式のものも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行なわれれば良いからである。
【0095】
デジタル信号式を用いる場合には、同期信号分離回路116の出力信号DATAをデジタル信号化する必要があるが、これには同期信号分離回路116の出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ115の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発生器117に用いられる回路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器117には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器117には、例えば高速の発振器および発振器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を表面伝導型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0096】
アナログ信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器117には、例えばオペアンプなどを用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0097】
このような構成をとり得る本発明の適用可能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器外端子Dox1〜Doxm,Doy1〜Doynを介して電圧を印加することにより、電子放出が生ずる。高圧端子Hvを介してメタルバック95、あるいは透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速された電子は、蛍光膜94に衝突し、発光が生じて画像が形成される。
【0098】
ここで述べた画像形成装置の構成は、本発明の適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号については、NTSC方式を挙げたが入力信号はこれに限られるものではなく、PAL,SECAM方式など他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用できる。
【0099】
次に、はしご型配置の電子源及び画像形成装置について図11及び図12を用いて説明する。図11は、はしご型配置の電子源の一例を示す模式図である。図11において、120は電子源基板、121は電子放出素子である。Dx1〜Dx10は、電子放出素子121を接続するための共通配線122である。電子放出素子121は、基板120上に、X方向に並列に複数個配されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個配されて、電子源を構成している。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動させることができる。
【0100】
即ち、電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、電子放出しきい値より小さい電圧を印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2,Dx3を同一配線とすることもできる。
【0101】
図12は、はしご型配置の電子源を備えた画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図である。130はグリッド電極、131は電子が通過するため空孔、132はDox1,Dox2,…,Doxmよりなる容器外端子である。133は、グリッド電極130と接続されたG1,G2,…,Gnからなる容器外端子、134は各素子行間の共通配線を同一配線とした電子源基板である。
【0102】
図12においては、図8、図11に示した部位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符号を付している。ここに示した画像形成装置と、図8に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違いは、電子源基板120とフェースプレート96の間にグリッド電極130を備えているか否かである。
【0103】
図12においては、基板134とフェースプレート96の間には、グリッド電極130が設けられている。グリッド電極130は、表面伝導型電子放出素子から放出された電子ビームを変調するためのものであり、はしご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の開口131が設けられている。グリッドの形状や設置位置は図12に示したものに限定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型電子放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0104】
容器外端子132およびグリッド容器外端子133は、不図示の制御回路と電気的に接続されている。
【0105】
本例の画像形成装置では、素子行を1列ずつ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これにより、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像を1ラインずつ表示することができる。
【0106】
本発明の画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることができる。
【0107】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
[実施例1]
電子放出素子として図1に示すタイプの電子放出素子を作成した。図1(a)は本素子の平面図を、図1(b)は断面図を示している。
【0109】
図2を用いて本実施例の電子放出素子の作製方法を述べる。基板1として石英ガラス基板を用い、これを有機溶剤により充分に洗浄後、基板面上に白金からなる素子電極2,3を形成した(図2(a))。素子電極間隔L1は10ミクロンとし、その厚さdを300オングストロームとした。
【0110】
ポリビニルアルコールを重量濃度0.05%、2−プロパノールを重量濃度25%溶解した水溶液に、テトラモノエタノールアミン−パラジウム酢酸(Pd(NH2CH2CH2OH)4(CH3COO)2)をパラジウム重量濃度約0.5%となるように溶解して黄色の溶液(PAMEと略記)を得た。
【0111】
上記の溶液の液滴をバブルジェット(BJ)方式のインクジェット装置によって電極2,3を形成した石英基板の上に電極2,3にまたがるように付与し、80℃で2分乾燥させた。次に350℃で12分焼成して導電性膜第1層4を形成した(図2(b))。尚、液滴の付与数は4滴で、焼成後のBJドットの膜厚は膜厚の最も厚い部分で約100オングストロームであった。
【0112】
次に、真空容器中に2%水素/98%窒素ガスを20torr導入した雰囲気下で素子電極2および3の間に電圧を印加し、導電性膜第1層を通電処理(フォーミング処理)することにより、亀裂5′を作製した(図2(c))。フォーミング処理の電圧波形を図3(a)に示す。
【0113】
本実施例では電圧波形のパルス幅T1を1ミリ秒、パルス間隔T2を10ミリ秒とし、矩形波の波高値は5Vとした。
【0114】
次に上記パラジウム重量濃度0.5%のPAMEにビスマス重量濃度約4%のエチレンジアミン四酢酸−ビスマス(EDTA−Bi錯体)水溶液を重量濃度で約2.1%添加した混合溶液の液滴をバブルジェット(BJ)方式のインクジェット装置によって上記導電性膜第1層を覆うように付与し、80℃で2分乾燥させた。次に350℃で12分焼成してBi/Pdの混合酸化膜(導電性膜第2層6)を作った。なお、液滴の付与数は1滴で、焼成後、膜厚の最も厚い部分で、第1層のみの場合よりも約20オングストローム厚さが増加していた。
【0115】
その後上記電極2,3間に通電を行って導電性膜第2層6に電子放出部を作製した。その時の電圧の印加は図3(b)に示すようにパルス幅T1を1ミリ秒、パルス間隔T2を10ミリ秒とし、波高値が5Vから30Vまでの電圧掃引を行った。
【0116】
以上のようにして作製した素子の活性化を行った。即ち、真空容器中にノルマルヘキサンガスを1×10-5torr導入した雰囲気中で図4(a)のパルス幅T1を1ミリ秒、パルス間隔T2を10ミリ秒としたパルスを図4(b)のV1=10V,V2=16V,T=30分なる電圧波形を印加して活性化を行った。
【0117】
その電子放出特性を図5の構成の測定評価装置により測定した。本電子放出素子及びアノード電極64は真空装置内に設置されており、その真空装置には不図示の排気ポンプ及び真空計等の真空装置に必要な機器が具備されており、所望の真空下で本素子の測定評価を行えるようになっている。なお本実施例では、アノード電極と電子放出素子間の距離を4mm、アノード電極の電位を1kV、電子放出特性測定時の真空装置内の真空度を1×10-7torrとした。
【0118】
以上のような測定評価装置を用いて、本電子放出素子の電極2及び3の間に素子電圧を印加し、その時に流れる素子電流If及び放出電流Ieを測定したところ、図6に示したような電流−電圧特性が得られた。本素子では、素子電圧7V程度から急激に放出電流Ieが増加し、素子電圧15Vでは素子電流Ifが1.5mA、放出電流Ieが2.0μAとなり、電子放出効率η=Ie/If(%)は0.13%であった。
【0119】
アノード電極64の替わりに、前述した蛍光膜とメタルバックを有するフェースプレートを真空装置内に配置した。こうして電子源からの電子放出を試みたところ蛍光膜の一部が発光した。こうして本素子が発光表示素子として機能することがわかった。
【0120】
上記の第2層を有さない比較用の素子と、本実施例の素子とを、10-9Torrの真空度で1時間420℃に保持した後、電子放出特性を測定する試験を行ったところ、素子のIf,If′(本実施例の素子をIf、比較用の素子をIf′とする。)の時間変化は図13のようになった(Ifを1とし、If′は相対比として示した。)。ここでIf,If′は電子放出部5の長さ100μm当りの電流値に対応するものである。
【0121】
図13に示すように、初期のIfがその1/2になる時間を比較すると、第2層を有さない比較用素子に対して、本実施例の素子では約5倍であり、高温プロセスの影響による特性の劣化が改善できることが認められた。また、図13に示されるように初期のIf値を比較しても本発明の素子は上記の第2層を有しない比較用素子の約1.5倍大きいことが確認された。なお、比較用素子および本実施例の素子の放出電流Ie′,Ieについても、同様の振る舞いが見られた。
【0122】
さらに上記実施例の素子を16行16列の256個の素子電極とマトリクス状配線とを形成した基板(図7)の各対向電極に対してそれぞれ作製し電子源基板とした。この電子源基板にリアプレート91、支持枠92、フェースプレート96を接続し真空封止して図8の概念図に従う画像形成装置を作成した。端子Dox1ないしDox16と端子Doy1ないしDoy16を通じて各素子に時分割で所定電圧を印加し端子Hvを通じてメタルバックに高電圧を印加することによって、任意のマトリクス画像パターンを表示することができた。
【0123】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、耐熱温度をより高くすることができ、電子放出特性のすぐれた電子放出素子、電子源、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式的平面図及び正面図である。
【図2】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子の作製方法の1例をあらわす図である。
【図3】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子の製造に際して採用できる通電フォーミング処理における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図4】 活性化の電圧波形をしめすグラフである。
【図5】 測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示す模式図である。
【図6】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子についての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の一例を示すグラフである。
【図7】 本発明の適用可能な単純マトリクス配置の電子源の一例を示す模式図である。
【図8】 本発明の適用可能な単純マトリクス配置の画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図9】 蛍光膜の一例を示す模式図である。
【図10】 画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行なうための駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図11】 本発明の適用可能な梯子配置の電子源の一例を示す模式図である。
【図12】 本発明の適用可能な梯子配置の画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図13】 素子のIf,If′(本実施例の素子がIf、比較用の素子がIf′)の時間変化を示す図である。
【図14】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子の電気的な耐熱温度の一例を示すグラフである。
【図15】 従来の表面伝導型電子放出素子の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 基板
2,3 素子電極
4 導電性膜第1層
5′ 亀裂
5 電子放出部
6 導電性膜第2層
21 ヘッド本体
22 ヒーターまたはピエゾ素子
23 インク流路
24 ノズル
25 インク供給管
26 インク溜め
60 素子電極は2・3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計
61 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源
62 電子放出部5・アノード電極64間を流れる放出電流Ieを測定するための電流計
63 アノード電極64に電圧を印加するための高圧電源
64 素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極
65 真空装置
66 排気ポンプ
81 電子源基板
82 X方向配線
83 Y方向配線
84 表面伝導型電子放出素子
85 結線
91 リアプレート
92 支持枠
93 ガラス基板
94 蛍光膜
95 メタルバック
96 フェースプレート
97 高圧端子
98 外囲器
101 黒色導電材
102 蛍光体
103 ガラス基板
111 表示パネル
112 走査回路
113 制御回路
114 シフトレジスタ
115 ラインメモリ
116 同期信号分離回路
117 変調信号発生器
Vx及びVa 直流電圧源
120 電子源基板
121 電子放出素子
122 Dx1〜Dx10は、前記電子放出素子を配線するための共通配線
130 グリッド電極
131 電子が通過するため空孔
132 Dox1,Dox2…Doxmよりなる容器外端子
133 グリッド電極130と接続されたG1,G2

Claims (6)

  1. 基体上に対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜と、を有する電子放出素子において、
    前記導電性膜が、PdOを主成分とする微粒子よりなる第1層と、該第1層上に設けられた、添加物としてBiを含有するPdO微粒子よりなる第2層とから構成されたことを特徴とする電子放出素子。
  2. 基体上に対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜と、を形成してなる電子放出素子の製造方法において、
    前記基体上にPdO微粒子を主成分とする微粒子よりなる導電性膜第1層を形成する工程と、
    前記素子電極間に電圧を印加して該導電性膜第1層を通電フォーミングした後に、前記導電性膜第1層上に、Pd化合物とBi化合物を含む溶液を前記導電性膜第1層上に塗布し、焼成することにより導電性膜第2層を形成する工程と、
    前記素子電極間に再度電圧を印加し、前記電子放出部を形成する工程と、を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  3. 対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子と該素子電極に接続された配線とを基体上に有する電子源であって、
    前記電子放出素子が請求項1に記載の電子放出素子であることを特徴とする電子源。
  4. 対向する一対の素子電極、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子、及び該素子電極に接続された配線を基体上に有する電子源と、
    該電子源より放出される電子の照射により画像を形成する画像形成部材と、を真空容器内に有する画像形成装置であって、
    前記電子放出素子が請求項1に記載の電子放出素子であることを特徴とする画像形成装置。
  5. 対向する一対の素子電極と、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子と該素子電極に接続された配線とを基体上に有する電子源の製造方法であって、
    前記電子放出素子が請求項2に記載の方法により製造されることを特徴とする電子源の製造方法。
  6. 対向する一対の素子電極、該素子電極に接続され、その一部に電子放出部を有する導電性膜よりなる複数の電子放出素子、及び該素子電極に接続された配線を基体上に有する電子源と、
    該電子源より放出される電子の照射により画像を形成する画像形成部材と、を真空容器内に有する画像形成装置の製造方法であって、
    前記電子放出素子が請求項2に記載の方法により製造されることを特徴とする画像形成装置の製造方法。
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