JP3728051B2 - 電子放出素子形成用有機金属化合物、並びに電子放出素子および画像形成装置の製造方法 - Google Patents

電子放出素子形成用有機金属化合物、並びに電子放出素子および画像形成装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子形成用有機金属化合物、該有機金属化合物を用いる電子放出素子の製造方法および該有機金属化合物を用いて製造された素子を具備する画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子放出素子としては大別して熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/金属型(以下、「MIM型」という。)や、表面伝導型電子放出素子等がある。
【0003】
FE型の例としてはW.P.Dyke&W.W.Dolan、“Field emission”、Advance in Electron Physics、8、89(1956)あるいはC.A.Spindt、“PHYSICALProperties of thin−film field emission cathodes with molybdenium cones”、J.Appl.Phys.,47,5248(1976)等に開示されたものが知られている。
MIM型の例としてはC.A.Mead、”Operation of Tunnel−Emission Devices”、J.Apply.Phys.、32、646(1961)等に開示されたものが知られている。
【0004】
表面伝導型電子放出素子の例としては、M.I.Elinson、RadioEng.Electron Phys.、10、1290(1965)等に開示されたものがある。
表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの[G.Dittmer:“Thin Solid Films”、9、317(1972)]、In23 /SnO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and C.G.Fonstad:”IEEE Trans.ED Conf.”、519(1975)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1号、22頁(1983)]等が報告されている。
【0005】
これらの表面伝導型電子放出素子の典型的な例として、M.ハートウェルの素子構成を図14に模式的に示す。同図において1は基板である。4は導電性膜で、この膜はH型形状のパターンにスパッタで形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成される。尚、図中の素子電極間隔Lは、0.5〜1mm、W’は、0.1mmで設定されている。
【0006】
従来、これらの表面伝導型電子放出素子においては、電子放出を行う前に導電性膜4を予め通電フォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を形成するのが一般的であった。即ち、通電フォーミングとは前記導電性膜4両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧、例えば1V/分程度、を印加通電し、導電性膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成することである。尚、電子放出部5とは、導電性膜4の一部に亀裂が発生しその亀裂付近から電子放出が行われる部分である。前記通電フォーミング処理をした表面伝導型電子放出素子は、上述導電性膜4に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより、上述の電子放出部5より電子を放出せしめるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来、導電性膜4は、有機金属化合物を有機溶媒に溶解した溶液を基板に塗布乾燥後、加熱焼成により有機成分を熱分解除去して金属もしくは金属酸化物としたものであった。導電性膜4の作製工程に有機溶媒を用いることは低コスト化、環境保護などの点から望ましくなく、水に容易に溶解する有機金属化合物の完成が望まれていた。水に溶解する有機金属化合物として、カルボン酸金属一アルコールアミン錯体(特開平7-101619号公報) といった化合物を合成しているが、この化合物を加熱焼成した際には若干量の有機残留物が残るために焼成工程に充分な時間をかける必要があった。これは低コスト化、時間短縮などの面から好ましくなく、焼成工程を短縮できる化合物の完成も望まれていた。
【0008】
更に有機金属化合物を液滴の状態で電極間に付与する方法としては、ピエゾ素子により有機金属化合物の溶液に物理的な衝撃を与えて液滴を作り出し付与する方法、またはヒ一タを用いて有機金属化合物の溶液を急激に発泡させて液滴を作り出し付与する方法(以下、BJ法とする)などが挙げられる。BJ法を用いて液滴を発生させる際にはヒータ面上にコゲが発生する可能性がある。コゲを発生させないためには、溶液中に含まれる化合物の熱分解温度(金属原子と有機成分の結合が切れる温度)がヒータの表面温度よりは高いことが必要であると考えられ、熱的に安定な有機金属化合物の開発が望まれてきた。
【0009】
本発明の目的は、上述した解決すべき技術的課題を解決し、水溶性で高温分解性であり且つ分解が速やかに終了する有機金属化合物および、これを用いた電子放出素子の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、該製造方法によって得られた電子放出素子を用いた画像形成装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上述した課題を解決するために鋭意検討を行って成されたものであり、下述する構成のものである。
【0011】
即ち本発明に係る第1の電子放出素子形成用有機金属化合物は、基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、該有機金属化合物が下記(1)式
【0012】
【化3】
Figure 0003728051
(但し、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、 、R の各々、または、R −R アルキレン基または水素原子の一部が水酸基で置換されたアルキレン基を示し、 N−R −R −NR は環状に結合されていてもよくは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わし、R、R、R、Rがすべて水素原子で、且つ、−R−R−が−CH−CH−である場合は除く)
で表わされることを特徴とする。
また、本発明に係る第2の電子放出素子形成用有機金属化合物は、基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
該有機金属化合物が下記(4)式
(R COO) M[Py−R 11 −N(R )(R )] (4)
(但し、Pyは2 - ピリジル、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R 、R は水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基、R 11 はアルキレン基を示し、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
で表わされることを特徴とする。
また、本発明に係る第3の電子放出素子形成用有機金属化合物は、基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
該有機金属化合物が下記(5)式
(R COO) M[Py−Py] (5)
(但し、Pyは2 - ピリジル、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
で表わされることを特徴とする。
さらに、本発明に係る第4の電子放出素子形成用有機金属化合物は、基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
該有機金属化合物が下記(6)式
(R COO) M[Qu−N(R6)(R7)] (6)
(但し、Quは1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−イル、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R 、R は水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基を示し、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
で表わされることを特徴とする。
【0013】
本発明の電子放出素子の製造方法は、基板上の対向する電極間に導電性膜形成用溶液を付与する工程、付与された溶液を加熱焼成して導電性膜を形成する工程および該導電性膜内に電子放出部を形成する工程を含む電子放出素子の製造方法であって、前記導電性膜形成用溶液として請求項1〜に記載の有機金属化合物を含んでいる溶液を使用することを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、電子放出素子および該素子への電圧印加手段とを具備した電子源と、前記素子から放出される電子を受けて発光する蛍光膜と、外部信号を用いて前記素子へ印加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装置であって、前記素子の電子放出部が、本発明の有機金属化合物を用いて形成されたものである。
【0015】
(1)式は、金属原子とキレート化合物を生成するジアミン系の二座配位子を金属に配位させた化合物であり、この金属−ジアミン系錯体を電子放出素子形成用材料として用いることにより、水溶性で、従来電子放出素子の作製に用いられてきた有機金属化合物よりも分解に要する温度範囲が狭く焼成工程において残留物を従来よりも短時間で除去でき、且つ高温で分解する有機金属化合物が得られる。
【0016】
この化合物を電子放出素子形成用材料として用いることにより、容易に水に溶解しヒータ面上でのコゲの発生が少なく且つ焼成に要するコストの低下及び時間の短縮を達成し、安価且つ容易な電子放出素子を作製することができる。
【0017】
前記(1)式に使われる金属は、Pt、Pd、Ru、Ag、Cu、Cr、Fe、Pb、Zn、Snからなる群から選ぶことができる。
前記(1)式中の−R4 −R5 −は、下記(2)式
【0018】
【化4】
Figure 0003728051
(但し、R8 、R9 は水素原子、水酸基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、pは0または1、qは0から4の整数を示す)
で表わされてもよい。
【0019】
前記(1)式中の−R−R−は−R 10 −で表わされ、下記(3)式
(RCOO)M[(R)(R)N−R11−N(R)(R)] (3)
但し、R 、R 、R 、R 、R は前記(1)式中の定義と同じであり、R 10 1,2−フェニレン、1,2−シクロヘキシレン、2,3−ナフチレン、1,8−ナフチレン、1−メチレン−2−フェニレンからなる群から選ぶことができる。)
で表わされてもよい。
前記(1)式において(R)(R)N−Rおよび/またはR−N(R)(R)は2-ピリジルとすることができる。
前記(1)式において(R)(R)N−R−RまたはR−R−N(R)(R)は1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−イルとすることができる。
【0020】
上記溶液を電極間に付与する手段は、液滴を形成し付与することが可能ならば任意の方法でよいが、特に微小な液滴を効率良く適度な精度で発生付与でき、制御性も良好なインクジェット方式が便利である。インクジェット方式にはピエゾ素子等のメカニカルな衝撃、すなわち圧電体に電圧を印加した時の変形力、により液滴を発生付与する方式(以下、ピエゾジェット方式と記載する)や、微小ヒータ等で液を加熱し発生させたバブルにより液滴を発生付与するバブルジェット方式(以下BJ方式と記載する)があるが、いずれの方式でも十ナノグラム程度から数十マイクログラム程度までの微小液滴を再現性良く発生し電極間に付与することができる。この方式で使用されるインクジェットのヘッドの例を図2および図3に示す。図2、3において、21はヘッド本体、22はヒーターまたはピエゾ素子、23はインク流路、24はノズル、25はインク供給管、26はインク溜めをそれぞれ示す。図2は単発ヘッド、図3は単発ヘッドを並列に配置し、導電性膜形成用溶液の吐出および基板等への溶液の付着に要する時間を短縮しようとするものであり、ノズル数は特に限定されるものではない。
【0021】
上記手段で電極間に付与された上記溶液は、乾燥、焼成工程を経て導電性膜となることにより、電極間に電子放出のための薄膜が形成される。
乾燥工程は通常用いられる自然乾燥、送風乾燥、熱乾燥等を用いればよい。焼成工程は通常用いられる加熱手段を用いれば良い。乾燥工程と焼成工程とは必ずしも区別された別工程として行う必要はなく、連続して同時に行ってもかまわない。
また、前記液滴を連続的に付与して、付与された液滴の形状を線状または面状に形成することもできる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
本発明を適用しうる好ましい電子放出素子は、表面伝導型電子放出素子であり、表面伝導型電子放出素子の基本的な構成には大別して、平面型及び垂直型の2つの構成が上げられる。
表面伝導型電子放出素子について説明する。
【0023】
図1は本発明の表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。
図1において、1は基板、2、3は素子電極、4は導電性膜、5は電子放出部をそれぞれ示す。基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiO2 を積層したガラス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることができる。
【0024】
対向する素子電極2、3の材料としては、一般的な導体材料を用いることができる。これは例えばNi、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属或はこれらの合金、およびPd、Ag、Au、RuO2 、Pd−Ag等の金属、合金或は金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、In23 −SnO2 等の透明導電体およびポリシリコン等の半導体材料等より適宜選択することができる。
【0025】
素子電極間隔L、素子電極長さW、電極の厚さd、導電性膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して設計される。素子電極間隔Lは、好ましくは、数千Åから数百μmの範囲とすることができ、より好ましくは、素子電極間に印加する電圧等を考慮して数μmから数十μmの範囲とすることができる。
【0026】
素子電極長さWは、電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とすることができる。素子電極2、3の膜厚dは、数百Åから数μmの範囲とすることができる。
尚、図1に示した構成だけでなく、基板1上に、導電性膜4、対向する素子電極2、3の順に積層した構成とすることもできる。
【0027】
導電性膜4には、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが好ましく、その膜厚は、素子電極2、3へのステップカバレージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後述する通電フォーミング条件等を考慮して、適宜設定されるが、通常は数Åから数千Åの範囲とすることが好ましく、より好ましくは10〜500Åの範囲とするのが良い。その抵抗値は、RS が102 から107 Ωの値である。なおRS は、厚さがt、幅がwで長さがlの薄膜の長さ方向に測定した抵抗Rを、R=RS (l/w)とおいたときに現れる量で、抵抗率をρとするとR=(ρ/t)である。
【0028】
本明細書において、フォーミング処理については、通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処理はこれに限られるものではなく、膜に亀裂を生じさせて高抵抗状態を形成する処理を包含するものである。
【0029】
導電性膜4は、上記金属のほかに、PdO、SnO2 、In23 、PbO、Sb23 等の金属酸化物、HfB2 、ZrB2 、LaB6 、CeB6 、YB4 、GdB4 等の金属硼素化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の金属炭化物、TiN、ZrN、HfN等の金属窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等を含むことができる。
【0030】
ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子がここに分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体として島状構造を形成している場合も含む)をとっている。微粒子の粒径は、数Åから数千Åの範囲、好ましくは10〜200Åの範囲である。
なお、本明細書では頻繁に「微粒子」という言葉を用いるので、その意味について説明する。
【0031】
小さな粒子を「微粒子」と呼び、これよりも小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」よりもさらに小さく原子の数が数百個程度以下のものを「クラスター」と呼ぶことは広く行われている。
しかしながら、それぞれの境は厳密なものではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに沿ったものである。
「実験物理学講座14 表面・微粒子」(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発行)では次のように記述されている。
【0032】
「本稿で微粒子と言うときにはその直径がだいたい2〜3μm程度から10nm程度までとし、特に超微粒子と言うときは粒径が10nm程度から2〜3nm程度までを意味することにする。両者を一括して単に微粒子と書くこともあってけっして厳密なものではなく、だいたいの目安である。粒子を構成する原子の数が2個から数十〜数百個程度の場合はクラスターと呼ぶ」(195ページ 22〜26行目)
付言すると、新技術開発事業団の“林・超微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径の下限はさらに小さく、次のようなものであった。
「創造科学技術推進制度の“超微粒子プロジェクト”(1981〜1986)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1〜100nmの範囲のものを“超微粒子”(ultra fine particle)と呼ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ100〜108 個くらいの原子の集合体という事になる。原子の尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超微粒子−創造科学技術−」林主税、上田良二、田崎明 編;三田出版 1988年 2ページ1〜4行目)「超微粒子よりさらに小さいもの、すなわち原子が数個〜数百個で構成される1個の粒子は、ふつうクラスターと呼ばれる」(同書2ページ12〜13行目)
上記のような一般的な呼び方をふまえて、本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集合体で、粒径の下限は数Å〜10Å程度、上限は数ミクロン程度のものを指すこととする。
電子放出部5は、導電性膜4の一部に形成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性膜4の膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手法等に依存したものとなる。電子放出部5の内部には、数Åから数百Åの範囲の粒径の導電性微粒子が依存する場合もある。この導電性微粒子は、導電性膜4を構成する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものとなる。電子放出部5及びその近傍の導電性膜4には、炭素及び炭素化合物を有することもできる。
【0033】
以下、図1及び図4を参照しながら製造方法の一例について説明する。図4においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。
1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に素子電極2、3を形成する〔図4(a)〕。
【0034】
2)素子電極2、3を設けた基板1に、インクジェット方式により導電性膜形成用溶液の液滴を付与して〔図4(b)〕、この液滴を乾燥・焼成して導電性膜4を形成する〔図4(c)〕。本発明では上述のように、金属・非金属元素を含んだ導電性膜形成用溶液を使用する。ここでは、金属・非金属元素を含んだ導電性膜形成用溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性膜4の形成法はこれに限られるものではなく、ィッピング法、スピンナー法等を用いることもできる。
【0035】
3)つづいて、フォーミング工程を施す。このフォーミング工程の方法の一例として通電処理による方法を説明する。素子電極2、3間に不図示の電源を用いて、通電を行うと、導電性膜4の部位に、構造の変化した電子放出部5が形成される〔図4(d)〕。通電フォーミングによれば導電性膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造の変化した部位が形成される。該部位が電子放出部5を構成する。通電フォーミングの電圧波形の例を図5に示す。
【0036】
電圧波形は、パルス波形が好ましい。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図5(a)に示した手法とパルス波高値を増加させながら電圧パルスを印加する図5(b)に示した手法がある。
図5(a)におけるT1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μ秒〜10m秒、T2は、10μ秒〜100m秒の範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素子の形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波など所望の波形を採用することができる。
図5(b)におけるT1及びT2は、図5(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度ずつ、増加させることができる。
【0037】
通電フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2中に、導電性膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することができる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1Mオーム以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。
【0038】
4)フォーミングを終えた素子には活性化工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程とは、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化する工程である。
【0039】
活性化工程は、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲気は例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に、適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。このときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため、場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。
【0040】
活性化工程の終了判定は素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なお、パルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
炭素及び炭素化合物とは、グラファイト(いわゆる高配向性熱分解炭素HOPG、熱分解炭素PG、無定形炭素GCを包含する、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)であり、その膜厚は500Å以下の範囲とするのが好ましく、300Å以下の範囲とするのがより好ましい。
【0041】
5)このような工程を経て得られた電子放出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。
【0042】
前記活性化の工程で、排気装置として油拡散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生するオイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1×10-8Torr以下が好ましく、さらには1×10-10 Torr以下が特に好ましい。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は80〜250℃、好ましくは150℃以上で、できるだけ長時間行うのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1〜3×10-7Torr以下が好ましく、さらに1×10-8Torr以下が特に好ましい。
【0043】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することが出来る。
【0044】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
上述した工程を経て得られた本発明を適用可能な電子放出素子の基本特性について図6、図7を参照しながら説明する。
【0045】
図6は、真空処理装置の一例を示す模式図であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能をも兼ね備えている。図6においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。図6において、65は真空容器であり、66は排気ポンプである。真空容器65内には電子放出素子が配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体であり、2及び3は素子電極、4は導電性膜、5は電子放出部である。61は、電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、60は素子電極2・3間の導電性膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、64は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極である。63はアノード電極64に電圧を印加するための高圧電源、62は素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計である。一例として、アノード電極の電圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行うことができる。
【0046】
真空容器65内には、不図示の真空計等の真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、所望の真空雰囲気中での測定評価を行えるようになっている。排気ポンプ66は、ターボポンプ、ロータリーポンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されている。ここに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、不図示のヒーターにより200度まで加熱できる。従って、この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミング以降の工程も行うことができる。
【0047】
図7は図6に示した真空処理装置を用いて測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係を模式的に示した図である。図7においては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、任意単位で示している。尚、縦、横軸ともリニアスケールである。
【0048】
図7からも明らかなように、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関して対する三つの特徴的特性を有する。
即ち、(i)本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図7中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0049】
(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
(iii)アノード電極64に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。すなわち、アノード電極64に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0050】
以上の説明により理解されるように、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能となる。
【0051】
図7においては、素子電流Ifが素子電圧Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」という。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特性」という。)を示す場合もある(不図示)。また、これら特性は、前述の工程を制御することで制御できる。本発明の電子放出素子の応用例について以下に述べる。本発明の表面伝導型電子放出素子の複数個を基板上に配列し、例えば電子源あるいは、画像形成装置が構成できる。
【0052】
電子放出素子の配列については、種々のものが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直行する方向(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子からの電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これとは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に複数配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げられる。このようなものは所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス配置について以下に詳述する。
【0053】
本発明の表面伝導型電子放出素子については、前述したとおり(i)ないし(iii)の特性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と巾で制御できる。一方、しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0054】
以下この原理に基づき、本発明を適用可能な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板について、図8を用いて説明する。図8において、81は電子源基板、82はX方向配線、83はY方向配線である。84は表面伝導型電子放出素子、85は結線である。尚、表面伝導型電子放出素子84は、平面型あるいは垂直型のどちらであってもよい。
【0055】
m本のX方向配線82はDX1、DX2、・・・DXmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設定される。Y方向配線83はDY1、DY2、・・・DYnのn本の配線よりなり、X方向配線82と同様に形成される。これらm本のX方向配線82とn本のY方向配線83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m、nは、共に正の整数)。
【0056】
不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成される。例えば、X方向配線82を形成した基板81の全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線82とY方向配線83の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が適宜設定される。X方向配線82とY方向配線83は、それぞれ外部端子として引き出されている。
表面伝導型放出素子84を構成する一対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本のY方向配線83と、導電性金属等からなる結線85によって電気的に接続されている。
【0057】
配線82と配線83を構成する材料、結線85を構成する材料、結線85を構成する材料、及び一対の素子電極を構成する材料はその構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0058】
X方向配線82には、X方向に配列した表面伝導型放出素子84の行を選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線83には、Y方向に配列した表面伝導型放出素子84の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0059】
このような単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図9と図10及び図11を用いて説明する。図9は、画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、図10は、図9の画像形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図11はNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0060】
図9において、81は電子放出素子を複数配した電子源基板、91は電子源基板81を固定したリアプレート、96はガラス基板93の内面に蛍光膜94とメタルバック95等が形成されたフェースプレートである。92は支持枠であり該支持枠92には、リアプレート91、フェースプレート96がフリットガラス等を用いて接続されている。98は外囲器であり、例えば大気中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範囲で10分以上焼成することで、封着して構成される。
【0061】
84は図1における電子放出部に相当する。82、83は表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
外囲器98は上述の如く、フェースプレート96、支持枠92、リアプレート91で構成される。リアプレート91は主に基板81の強度を補強する目的で設けられるため、基板81自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート91は不要とすることができる。即ち、基板81に直接支持枠92を封着し、フェースプレート96、支持枠92及び基板81で外囲器98を構成しても良い。一方、フェースプレート96、リアプレート91間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器98の構成することもできる。
【0062】
図10は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光膜94は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材101と蛍光体102とから構成することができる。ブラックストライプ、ブラックマトリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍光体102間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜94における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。ブラックストライプの材料としては、通常用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができる。
【0063】
ガラス基板103に蛍光体を塗布する方法はモノクローム、カラーによらず、沈殿法、印刷法等が採用できる。蛍光膜94の内面側には通常メタルバック95が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート96側へ鏡面反射することにより輝度を向上させること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージから蛍光体を保護すること等である。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、その後A1を真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0064】
フェースプレート96には、更に蛍光膜94の導電性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。
前述の封着を行う際には、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分な位置合わせが不可欠となる。
【0065】
図9に示した画像形成装置は、例えば以下のようにして製造される。
外囲器98は、前述の安定化工程と同様に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソープションポンプなどのオイルを使用しない排気装置により不図示の排気管を通じて排気し、10-7Torr程度の真空度の有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止が成される。外囲器98の封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理をおこなうこともできる。これは、外囲器98の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器98内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たとえば1×10-5ないしは1×10-7Torrの真空度を維持するものである。ここで、表面伝導型電子放出素子のフォーミング処理以降の工程は、適宜設定できる。
【0066】
次に、単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例について、図11を用いて説明する。図11において、111は画像表示パネル、112は走査回路、113は制御回路、114はシフトレジスタである。115はラインメモリ、116は同期信号分離回路、117は変調信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0067】
表示パネル111は、端子Dox1ないしDoxm、端子Doy1ないしDoyn、及び高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続している。端子Dox1ないしDoxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即ち、M行N列の行列状にマトリクス配線された表面伝導型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。
【0068】
端子Dy1ないしDynには、前記走査信号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば10K[V]の直流電圧が供給されるが、これは表面伝導型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0069】
走査回路112について説明する。同回路は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図中、S1ないしSmで模式的に示している)ある。各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル111の端子Dx1ないしDxmと電気的に接続される。S1ないしSmの各スイッチング素子は、制御回路103が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するものであり、例えばFETのようなスイッチング素子を組み合わせる事により構成する事ができる。
【0070】
直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう設定されている。
制御回路113は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作を整合させる機能を有する。制御回路113は、同期信号分離回路116より送られる同期信号Tsyncに基づいて、各部に対してTscanおよびTsftおよびTmryの各制御信号を発生する。
【0071】
同期信号分離回路116は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と輝度信号成分とを分離する為の回路で、一般的な周波数分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信号分離回路116により分離された同期信号は、垂直同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上、Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号と表した。該DATA信号はシフトレジスタ114に入力される。
【0072】
シフトレジスタ114は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制御回路113より送られる制御信号Tsftに基づいて動作する(すなわち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ114のシフトクロックであると言うこともできる)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータは、Id1ないしIdnのN個の並列信号として前記シフトレジスタ114より出力される。
【0073】
ラインメモリ115は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であり、制御回路113より送られる制御信号Tmryに従って適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記憶された内容は、I’d1ないしI’dnとして出力され、変調信号発生器117に入力される。
変調信号発生器117は、前記画像データI’d1ないしI’dnの各々に応じて、表面電動型電子放出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、その出力信号は、端子Doy1ないしDoynを通じて表示パネル111内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0074】
前述したように、本発明を適用可能な電子放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。このことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出しきい値以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが、電子放出しきい値の電圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を制御する事が可能である。また、パルスの幅Pwを変化させる事により出力される電子ビームの電荷の総量を制御する事が可能である。
【0075】
従って、入力信号に応じて、電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器117として、一定長さの電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いることができる。
【0076】
パルス幅変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器117として、一定の波高値の電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いることができる。
シフトレジスタ114やラインメモリ115は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のものでも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行われれば良いからである。
【0077】
デジタル信号式を用いる場合には、同期信号分離回路116の出力信号DATAをデジタル信号化する必要があるが、これは116の出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ115の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発生器117に用いられる回路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器117には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器117には、例えば、高速の発振器および発振器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を表面電動型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0078】
アナログ信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器117には、例えばオペアンプなどを用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0079】
このような構成をとり得る本発明を適用可能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器外端子Dox1ないしDoxm、Doy1ないしDoynを介して電圧を印加することにより、電子放出が生ずる。高圧端子Hvを介して、メタルバック95、あるいは透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速された電子は、蛍光膜94に衝突し、発光が生じて画像が形成される。
【0080】
ここで述べた画像形成装置の構成は、本発明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号については、NTSC方式をあげたが、入力信号はこれに限られるものではなく、PAL、SECAM方式などの他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用できる。
【0081】
次に、はしご型配置の電子源及び画像形成装置について図12、図13を用いて説明する。
図12は、はしご型配置の電子源の一例を示す模式図である。図12において、120は電子源基板、121は電子放出素子である。122、Dx1〜Dx10は、電子放出素子121を接続するための共通配線である。電子放出素子121は、基板120上に、X方向に並列に複数個配されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個配されて、電子源を構成している。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動させることができる。即ち、電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、電子放出しきい値以下の電圧を印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2、Dx3を同一配線とすることもできる。
【0082】
図13は、はしご型配置の電子源を備えた画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図である。130はグリッド電極、131は電子が通過するための空孔、132はDox1、Dox2...Doxmよりなる容器外端子である。133はグリッド電極130と接続されたG1、G2...Gnからなる容器外端子、134は各素子行間の共通配線を同一配線とした電子源基板である。図13においては、図9、12に示した部位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符号を付している。ここに示した画像形成装置と図9に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違いは、電子源基板120とフェースプレート96の間にグリッド電極130を備えているか否かである。
【0083】
図13においては、基板120とフェースプレート96の間には、グリッド電極130が設けられている。グリッド電極130は、表面伝導型放出素子から放出された電子ビームを変調するためのものであり、はしご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の開口131が設けられている。グリッドの形状や設置位置は図13に示したものに限定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0084】
容器外端子132およびグリッド容器外端子133は、不図示の制御回路と電気的に接続されている。
本例の画像形成装置では、素子行を1列ずつ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これにより、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像を1ラインずつ表示することができる。
発明の画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることもできる。
【0085】
【実施例】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0086】
実施例1
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(プロピレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール20mlを加え攪拌下、プロピレンジアミン0.4gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残さにアセトンを加え、結晶化させ濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪袢し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(プロピレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(プロピレンジアミン)の分解温度は212〜348℃であった。
【0087】
実施例2
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(2−メチル−1,2−プロパンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム1.0gにイソプロピルアルコール35mlを加え攪拌下、2−メチル−1,2−プロパンジアミン1.0gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。
【0088】
この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(2−メチル−1,2−プロパンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(2−メチルー1,2−プロパンジアミン)の分解温度は262〜297℃であった。
【0089】
実施例3
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(1,2−シクロヘキサンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム1.0gにイソプロピルアルコール45mlを加え攪拌下、1,2−シクロヘキサンジアミン1.5gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(1,2−シクロヘキサンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(1,2−シクロヘキサンジアミン)の分解温度は262〜283℃であった。
【0090】
実施例4
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(o−フェニレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、o−フェニレンジアミン0.51gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(o−フェニレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(o−フェニレンジアミン)の分解温度は196〜286℃であった。
【0091】
実施例5
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(トリメチレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、トリメチレンジアミン0.4gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(トリメチレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(トリメチレンジアミン)の分解温度は207〜274℃であった。
【0092】
実施例6
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(ペンタン−1,3−ジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、ペンタン−1,3−ジアミン0.6gを添加し、室温で4時間攪袢した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(ペンタン−1,3−ジアミン)を得た。
空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(ペンタン−1,3−ジアミン)の分解温度は191〜243℃であった。
【0093】
実施例7
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム2.0gにエチルアルコール55mlを加え攪拌下、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン2.4gを添加し、室温で4.5時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン)の分解温度は232〜234℃であった。
【0094】
実施例8
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール30mlを加え攪拌下、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン0.5gを添加し、室温で5時間攪拌した。反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン)の分解温度は212〜377℃であった。
【0095】
実施例9
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(1,4−ブタンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、1,4−ブタンジアミン0.5gを添加し、室温で4.5時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(1,4−ブタンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(1,4−ブタンジアミン)の分解温度は201〜267℃であった。
【0096】
実施例10
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(N−メチルエチレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、N−メチルエチレンジアミン0.43gを添加し、室温で5時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪袢し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(N−メチルエチレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(N−メチルエチレンジアミン)の分解温度は195〜261℃であった。
【0097】
実施例11
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(N,N’−ジメチルエチレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、N,N’一ジメチルエチレンジアミン0.5gを添加し、室温で5時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。
【0098】
この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(N,N’−ジメチルエチレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(N,N’−ジメチルエチレンジアミン)の分解温度は192〜272℃であった。
【0099】
実施例12
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(2−アミノベンジルアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪袢下、2−アミノベンジルアミン0.6gを添加し、室温で2.5時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(2−アミノベンジルアミン)を得た。
空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(2−アミノベンジルアミン)の分解温度は235〜296℃であった。
【0100】
実施例13
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(2−アミノメチルピリジン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、2−アミノメチルピリジン0.6gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(2−アミノメチルピリジン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(2−アミノメチルピリジン)の分解温度は177〜268℃であった。
【0101】
実施例14
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(2,3−ナフチレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール32mlを加え攪拌下、2,3−ナフチレンジアミン0.8gを添加し、室温で6時間攪拌した。反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(2,3−ナフチレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(2,3−ナフチレンジアミン)の分解温度は179〜321℃であった。
【0102】
実施例15
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(1,8−ナフチレンジアミン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール38mlを加え攪拌下、1,8一ナフチレンジアミン0.8gを添加し、室温で6時間攪拌した。反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪袢し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(1,8−ナフチレンジアミン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(1,8−ナフチレンジアミン)の分解温度は222〜345℃であった。
【0103】
実施例16
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウムー(2,2’−ビピリジル)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロビルアルコール38mlを加え攪拌下、2,2’−ビピリジル0.8gを添加し、室温で6時間攪拌した。反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥しで、酢酸パラジウムー(2,2’−ビピリジル)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウムー(2,2’−ビピリジル)の分解温度は245〜357℃であった。
【0104】
実施例17
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(8−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、8−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン0.8gを添加し、室温で4時間攪拌した。
反応後、不溶物を濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し濾取した。さらにアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(8−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(8−アミノ一1,2,3,4−テトラヒドロキノリン)の分解温度は177〜285℃であった。
【0105】
実施例18
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−ビス(ホモピペラジン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、ホモピベラジン0.5gを添加し、室温で3時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく撹拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−ビス(ホモピベラジン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−ビス(ホモピペラジン)の分解温度は220〜285℃であった。
【0106】
実施例19
電子放出素子形成用錯体、酢酸パラジウム−(ピペラジン)を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え攪拌下、ピペラジン0.43gを添加し、室温で4時間攪拌した。反応後、反応混合物を濾過し濾液を減圧下に留去した。残渣にアセトンを加え、攪拌後、濾取した。この結晶にアセトンを加えよく攪拌し再び濾取した。この操作を繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗い真空乾燥して、酢酸パラジウム−(ピペラジン)を得た。空気中でのTG測定の結果、酢酸パラジウム−(ピペラジン)の分解温度は211〜267℃であった。
【0107】
比較例1
酢酸パラジウムにエタノールアミンが四配位している酢酸パラジウムーテトラキス(エタノールアミン)[(CH3 COO)2 Pd(H2 NC24 OH)4 ]の空気中でのTG測定による分解温度はおよそ133〜315℃であり、本発明に用いる有機金属化合物に比べて分解開始温度において低く、分解に要する温度範囲も広い。
【0108】
実施例20
本実施例の電子放出素子として図1(a)、(b)に示すタイプの表面伝導型電子放出素子を作成した。図1(a)は本素子の平面図を、図1(b)は断面図を示している。また、図1(a)、(b)中の1は絶縁性基板、2および3は素子に電圧を印加するための素子電極、4は電子放出部を含む導電性膜、5は電子放出部を示す。なお、図中のLは素子電極2と素子電極3の素子電極間隔、Wは素子電極の幅を表している。
【0109】
図4を用いて、本実施例の電子放出素子の作成方法を述べる。
絶縁性基板1として石英基板を用い、これを有機溶剤により充分に洗浄後、該基板1面上に、白金からなる素子電極2、3を1組としてこれを5組形成した〔図4(a)〕。この時、素子電極間隔Lは10μmとし、素子電極の幅Wを500μm、その厚さをdを1000Åとした。酢酸パラジウム−ビス(2−メチル−1,2−プロパンジアミン)[(CH3 COO)2 Pd(H2 NCH2 C(CH32 NH22 ]を0.6g、86%鹸化ポリビニルアルコール(平均重合度500)を0.05g、イソプロピルアルコールを25g、エチレングリコール1gをとり、水を加えて全量を100gとし、パラジウム化合物溶液とした。
【0110】
このパラジウム化合物溶液をポアサイズ0.25μmのメンブランフイルターで濾過し、濾液をキヤノン(株)のバブルジェットプリンタヘッドBC−01に充填し、所定のヘッド内ヒータに外部より20Vの直流電圧を7μ秒印加して、前記の石英基板上の5組の素子電極2、3の各ギャップ部分にパラジウム化合物溶液を吐出した〔図4(b)〕。
【0111】
へッドと基板の位置を保持したままさらに5回吐出を繰り返した。液滴はほぼ円形でその直経は約110μmとなった。この基板を大気雰囲気300℃のオーブン中で10分加熱して前記パラジウム化合物を基板上で分解堆積させたところ、酸化パラジウム微粒子からなる微粒子膜(導電性膜4)が各電極間に生成した〔図4(c)〕。またこれらの膜を光学顕微鏡で観察したところ、結晶の析出もなく均一な酸化パラジウム膜が形成されていた。また、各導電性膜間のシート抵抗値のバラツキは、15%であった。
【0112】
次に、図4(d)に示すように、素子電極2および3の間に電圧を印加し、電子放出部形成用薄膜4を通電処理(フォーミング処理)することにより電子放出部5を作成した。フオーミング処理の電圧波形を図5に示す。
図5中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1を1ミリ秒、T2を10ミリ秒とし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は5Vとし、フォーミング処理は約1×10-6Torrの真空雰囲気下で60秒間行った。さらに活性化工程も行った。
【0113】
このように作成された電子放出部5は、パラジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置された状態となり、その微粒子の平均粒径は30Åであった。
以上のようにして作成された素子について、その電子放出特性の測定を行った。図6に測定評価装置の概略構成図を示す。
【0114】
図6においても、1は絶縁性基板、2及び3は素子電極、4は導電性膜、5は電子放出部を示し、61は素子に電圧を印加するための電源、60は素子電流Ifを測定するための電流計、64は素子より発生する放出電流Ieを測定するためのアノ−ド電極、63はアノード電極64に電圧を印加するための高圧電源、62は放出電流を測定するための電流計である。電子放出素子の上記素子電流If、放出電流Ieの測定にあたっては、素子電極2、3に電源61と電流計60とを接続し、該電子放出素子の上方に電源63と電流計62とを接続したアノード電極64を配置している。また、本電子放出素子及びアノード電極64は真空装置内に設置されおり、その真空装置には不図示の排気ポンプ及び真空計等の真空装置に必要な機器が具備されており、所望の兵空下で本素子の測定評価を行えるようになっている。なお本実施例では、アノード電極と電子放出素子間の距離を4mm、アノード電極の電位を1kV、電子放出特性測定時の真空装置内の真空度を1×10-6Torrとした。
【0115】
以上のような測定評価装置を用いて、本電子放出素子の電極2及び3の間に素子電圧を印加し、その時に流れる素子電流If及び放出電流Ieを測定したところ、図7に示したような電流一電圧特性が得られた。上記5組の本素子では平均して、素子電圧7.3V程度から急激に放出電流Ieが増加し、素子電圧16Vでは素子電流Ifが2.4mA、放出電流Ieが1.1μAとなり、電子放出効率η=Ie/If(%)は0.045%であった。
【0116】
アノード電極64の替わりに、前述した蛍光膜とメタルバックを有するフェースプレートを真空装置内に配置した。こうして電子源からの電子放出を試みたところ蛍光膜の一部が発光し、素子電流Ieに応じて発光の強さが変化した。こうして本素子が発光表示素子として機能することがわかった。
【0117】
以上説明した実施例中、電子放出部を形成する際に、素子の電極間に三角波パルスを印加してフォーミング処理を行っているが、素子の電極間に印加する波形は三角波に限定することはなく、矩形波など所望の波形を用いても良く、その波高値及びパルス幅・パルス間隔等についても上述の値に限ることなく、電子放出部が良好に形成されれば所望の値を選択することが出来る。
【0118】
比較例2
酢酸パラジウム−テトラキス(エタノールアミン)[(CH3 COO)2 Pd(H2 NC24 OH)4 ]を0.7g、86%鹸化ポリビニルアルコール(平均重合度500)を0.05g、イソプロピルアルコールを25g、エチレングリコール1gをとり、水を加えて全量を100gとし、パラジウム化合物溶液とした(実施例20のパラジウム化合物溶液とは有機パラジウム錯体が異なるだけでPd濃度は同じである)。
【0119】
このパラジウム化合物溶液をポアサイズ0.25μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液をキヤノン(株)のバブルジェットプリンタヘッドBC−01に充填し、所定のへッド内ヒータに外部より20Vの直流電圧を7μ秒印加しで、実施例20と同様に石英基板上の5組の素子電極2、3の各ギャップ部分にパラジウム化合物溶液を吐出した。ヘッドと基板の位置を保持したままさらに5回吐出を繰り返した。液滴はほぼ円形でその直径は約110μmとなった。この基板を大気雰囲気350℃のオーブン中で12分加熱して前記金属化合物を基板上で分解堆積させたところ、酸化パラジウム微粒子からなる微粒子膜が各電極間に生成した。各膜間のシート抵抗値のバラツキは20%であった。
【0120】
さらに実施例20と同様にして所定の通電フォーミング、活性化処理を行ない、電子放出素子としての評価を行った。5組の素子は平均して、素子電圧16Vで電子放出効率は0.043%であった。
このように有機パラジウム化合物として、酢酸パラジウム−テトラキス(エタノールアミン)を用いた場合は、350℃12分と本発明に用いる酢酸パラジウム−ビス(2−メチル−1,2−プロパンジアミン)に比べて有機残留物を除くために温度が高くそして時間も長くかかることがわかる。
【0121】
比較例3
実施例20と同様のパラジウム化合物溶液を用い、実施例20と同様に、表面に素子電極対を形成した石英基板に塗布した。この基板を大気雰囲気下250℃のオーブン中で10分間加熱した。しかしこの温度、この時間では焼成が不充分で完全に酸化パラジウムになっていなかった。
【0122】
この比較例からも分かるように、実施例20と同じくパラジウム化合物溶液を10分間加熱したものの十分に分解されず、本発明に用いる有機金属化合物は高温分解性でありかつ分解が速やかに終了する化合物である。
【0123】
実施例21〜31
表1および表2に示す組成を有する有機金属化合物溶液を調製し、これらを実施例20のパラジウム化合物溶液のかわりに用いて、実施例20と同様にしてバブルジェット方式により、各実施例の溶液をそれぞれ5組の素子電極の各ギャップ部分に吐出した。各実施例の基板を、2%の水素を含むへリウム雰囲気下で15分間400度で熱処理し、金属化合物を熱分解して導電性膜を各電極間に形成した。これら導電性膜を光学顕微鏡で観察したところ、結晶の析出もなく均一な膜であることを確認した。
【0124】
さらに実施例20と同様のフォーミングおよび活性化工程を経て電子放出素子を作成した。素子の作成後、素子電圧14〜18Vにおいて電子放出現象が確認できた。いずれの場合もシート抵抗値のバラツキは15%以下であった。
【0125】
【表1】
Figure 0003728051
【0126】
【表2】
Figure 0003728051
比較例4〜10
表3および表4に示す組成を有する有機金属化合物溶液を調製し、実施例21〜31の有機金属化合物溶液のかわりに用いて、実施例20と同様にしてバブルジェット方式により、各比較例の溶液をそれぞれ5組の素子電極の各ギャップ部分に吐出した。各比較例の基板を、2%の水素を含むヘリウム雰囲気下で30分間400度で熱処理を行ない、金属化合物を熱分解して導電性膜を各電極間に形成した。さらに実施例20と同様のフォーミングおよび活性化工程を経て電子放出素子を作成した。素子の作成後、素子電圧14〜18Vにおいて電子放出現象が確認できた。
【0127】
このように実施例21〜31のようにジアミ配位子を有する有機金属化合物溶液を用いた場合に比べて、アミノアルコール配位子を用いた場合は熱処理時間が長くなっていることがわかる。いずれの場合もシート抵抗値のバラツキは15%以下であった。
【0128】
【表3】
Figure 0003728051
【0129】
【表4】
Figure 0003728051
実施例32
絶縁性基板1として石英基板を用い、これを有機溶剤により充分に洗浄後、該基板1面上に、白金からなる素子電極2、3を5組形成した。この時、素子電極間隔Lは10μmとし、素子電極の幅Wを500μm、その厚さを1000Åとした。
【0130】
次に前記素子電極2、3の各対向ギャップ部分を中心とする幅が320μm、長さ160μmの矩形の外側にCr膜を厚さ1000Å形成した。
酢酸パラジウム−ビス(2−メチル−1,2−プロパンジアミン)を2.9g、86%鹸化ポリビニルアルコール(平均重合度500)を0.05g、イソプロピルアルコールを25gとり、水を加えて全量を100gとし、パラジウム化合物溶液とした。
【0131】
このパラジウム化合物溶液を1000rpm、60秒の条件で基板上の各電極間にスピン塗布した。塗布された溶液を大気雰囲気300℃のオーブン中で10分加熱して前記金属化合物を基板上で分解堆積させたところ、酸化パラジウム微粒子からなる微粒子膜が各電極間に生成した。
【0132】
次に前記の各Cr膜上に生成した各酸化パラジウム微粒子膜をCr膜とともに酸エッチャントにより除去し、矩形に残った酸化パラジウム微粒子膜を電子放出部形成用膜(導電性膜)4とした。これらの膜を光学顕微鏡で観察したところ、結晶の析出もなく均一な酸化パラジウム膜が形成されていた。また、各導電性膜間のシート抵抗値のバラツキは、14%であった。
さらに実施例20と同様にして所定の通電フォーミング、活性化処理を行ない、電子放出素子としての評価を行った。5組の素子は平均して、素子電圧16Vで電子放出効率は0.044%であった。
【0133】
実施例33〜40
表5および表6に示す組成のパラジウム化合物溶液を調製し、実施例32のパラジウム化合物溶液のかわりに用いて、実施例32と同様の処理を行い、各溶液についてそれぞれ5組の電子放出素子を作成した。いずれの溶液も基板面に容易に塗布することができた。各素子の作成後、素子電圧14〜18Vにおいて電子放出現象が確認された。なお、各実施例の導電性膜を光学顕微鏡で観察したところ、結晶の析出もなく均一であった。また、各実施例の導電性膜間のシート抵抗値のバラツキは、いずれも15%以下であった。
【0134】
【表5】
Figure 0003728051
【0135】
【表6】
Figure 0003728051
比較例11〜13
表7に示す組成のパラジウ化合物溶液を調製し、実施例32のパラジウム化合物溶液のかわりに用いて、実施例32と同様の条件で各溶液をそれぞれ5組の素子電極間に塗布した。基板を大気雰囲気350℃のオーブン中で15分間熱分解して導電性膜を形成した。さらに実施例32と同様のフォーミングおよび活性化工程を経て電子放出素子を作成した。素子の作成後、素子電圧14〜18Vにおいて電子放出現象が確認できた。
【0136】
このように実施例32〜40のようにジアミン配位子を有する有機金属化合物溶液を用いた場合に比べて、アミノアルコール配位子を用いた場合は熱処理時間が長くなっていることがわかる。また、各比較例の導電性膜間のシート抵抗値のバラツキは、いずれも15%以下であった。
【0137】
【表7】
Figure 0003728051
実施例41
16行16列の256個の素子電極とマトリクス状配線とを形成した基板(図8参照)の各対向電極間に対して、それぞれ実施例20と同様にして有機金属化合物溶液の液滴をバブルジェット方式のインクジェット装置により付与し、焼成したのち、フォーミング処理を行い電子源基板とした。
【0138】
この電子源基板にリアプレート91、支持枠92、フェースプレート96を接続し真空封止して図9の概念図に従う画像形成装置を作成した。端子DoxlないしDox16と端子DoylないしDoy16を通じて各素子に時分割で所定電圧を印加し端子Hvを通じてメタルバックに高電圧を印加することによって、任意のマトリクス画像パターンを表示することができた。
【0139】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の有機金属化合物は水溶性であり、熱分解温度範囲が従来に比べて狭く分解時間も短い。従ってこの有機金属化合物を用いて電子放出素子の電子放出部を形成する際に用いる液滴の溶媒として、有機溶媒を使用する必要がなく低コストであり、該液滴を短時間で焼成できる。
【0140】
また、本発明の有機金属化合物をもちいて形成された導電性膜中の結晶生成が抑制され、導電性膜のシート抵抗値のバラツキを15%以内に抑えることができ、フォーミング時および電子放出時の電子放出素子間のバラツキも小さくすることができる。さらに電子放出特性が安定しているため、この素子を複数個並べた画像形成装置は輝度むらの少ない高品位な画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に適用可能な表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式的平面図及び断面図である。
【図2】 本発明に適用可能な導電性膜形成用溶液吐出ヘッドの構成の一例を示す模式図である。
【図3】 本発明に適用可能な並列型導電性膜形成用溶液吐出ヘッドの構成の一例を示す模式図である。
【図4】 本発明の表面伝導型電子放出素子の製造方法の一例を示す模式図である。
【図5】 本発明の表面伝導型電子放出素子の製造に際して採用できる通電フォーミングの処理における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図6】 測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示す模式図である。
【図7】 本発明の表面伝導型電子放出素子についての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の一例を示すグラフである。
【図8】 単純マトリクス配置した本発明の電子源の一例を示す模式図である。
【図9】 単純マトリクス配置した本発明の画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図10】 蛍光膜の一例を示す模式図である。
【図11】 画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図12】 梯子配置した本発明の電子源の一例を示す模式図である。
【図13】 梯子配置した本発明の画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図14】 ハートウェルの表面伝導型電子放出素子の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:基板、2、3:素子電極、4:導電性膜、5:電子放出部、21:ノズル本体、22:ヒーターまたはピエゾ素子、23:インク流路、25:インク供給管、26:インク溜め、60:素子電極2、3間の導電性膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、61:電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、62:電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計、63:アノード電極64に電圧を印加するための高圧電源、64:素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極、65:真空装置、66:排気ポンプ、81:電子源基板、82:X方向配線、83:Y方向配線、84:表面伝導型電子放出素子、85:結線、91:リアプレート、92:支持枠、93:ガラス基板、94:蛍光膜、95:メタルバック、96:フェースプレート、97:高圧端子、98:外囲器、101:黒色導電材、102:蛍光体、103:ガラス基板、111:表示パネル、112:走査回路、113:制御回路、114:シフトレジスタ、115:ラインメモリ、116:同期信号分離回路、117:変調信号発生器、VxおよびVa:直流電圧源、120:電子源基板、121:電子放出素子、122:Dx1〜Dx10は、前記電子放出素子を配線するための共通配線、130:グリッド電極、131:電子が通過するための空孔、132:Dox1,Dox2...Doxmよりなる容器外端子、133:グリッド電極130と接続されたG1、G2。

Claims (13)

  1. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(1)式
    Figure 0003728051
    (但し、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R、R、R、Rは水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、 、R の各々、または、R −R アルキレン基または水素原子の一部が水酸基で置換されたアルキレン基を示し、 N−R −R −NR は環状に結合されていてもよくは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わし、R、R、R、Rがすべて水素原子で、且つ、−R−R−が−CH−CH−である場合は除く)
    で表わされることを特徴とする電子放出素子形成用有機金属化合物。
  2. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(2)式
    (R COO) M[(R )(R )N−(CH −C(R )(R )−(CH −N(R )(R )] (2)
    (但し、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R 、R 、R 、R は水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、R、Rは水素原子、水酸基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、pは0または1、qは0から4の整数を示す)
    で表わされることを特徴とする電子放出素子形成用有機金属化合物。
  3. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(3)式
    (R COO) M[(R )(R )N−R 10 −N(R )(R )] (3)
    (但し、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R 、R 、R 、R は水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、R 10 1,2−フェニレン、1,2−シクロヘキシレン、2,3−ナフチレン、1,8−ナフチレン、1−メチレン−2−フェニレンからなる群から選ばれ、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
    で表わされることを特徴とする電子放出素子形成用有機金属化合物。
  4. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(4)式
    (R COO) M[Py−R 11 −N(R )(R )] (4)
    (但し、Pyは2 - ピリジル、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R 、R は水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基、R 11 はアルキレン基を示し、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
    で表わされることを特徴とする子放出素子形成用有機金属化合物。
  5. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(5)式
    (R COO) M[Py−Py] (5)
    (但し、Pyは2 - ピリジル、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、 nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
    で表わされることを特徴とする電子放出素子形成用有機金属化合物。
  6. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(6)式
    (R COO) M[Qu−N(R )(R )] (6)
    (但し、Quは1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−イル、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R 、R は水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基を示し、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
    で表わされることを特徴とする子放出素子形成用有機金属化合物。
  7. 基板上の対向する電極間に電子放出部を有する電子放出素子の前記電子放出部を形成する電子放出素子形成用有機金属化合物であって、
    該有機金属化合物が下記(7)式
    (R COO ) M[Pi ] (7)
    (但し、Piはピベラジンまたはホモピベラジン、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1から4の整数、mは1から4の整数、Mは金属を表わす)
    で表わされることを特徴とする電子放出素子形成用有機金属化合物。
  8. 前記(1)式金属が、Pt、Pd、Ru、Ag、Cu、Cr、Fe、Pb、Zn、Snからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の電子放出素子形成用有機金属化合物。
  9. 基板上の対向する電極間に導電性膜形成用溶液を付与する工程、付与された溶液を加熱焼成して導電性膜を形成する工程および該導電性膜内に電子放出部を形成する工程を含む電子放出素子の製造方法であって、前記導電性膜形成用溶液として請求項1〜のいずれか1つに記載の有機金属化合物を含んでいる溶液を使用することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  10. 前記溶液の液滴の付与方法が、インクジェット方式であることを特徴とする請求項に記載の電子放出素子の製造方法。
  11. 前記インクジェット方式が、ピエゾジェット方式であることを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子の製造方法。
  12. 前記インクジェット方式が、バブルジェット方式であることを特徴とする請求項10に記載の電子放出素子の製造方法。
  13. 電子放出素子および該素子への電圧印加手段とを具備した電子源と、前記素子から放出される電子を受けて発光する蛍光膜と、外部信号を用いて前記素子へ印加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装置の製造方法であって、
    前記子放出素子が、請求項12のいずれか1つに記載の方法にて製造されることを特徴とする画像形成装置の製造方法
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