JP3943149B2 - 光導波路およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コア外周面を屈折率のより高いクラッドで被覆した構成の光導波路と、その製造方法とに関する
【0002】
【従来技術】
光通信の実用化に伴ない、光導波路が注目されている。光導波路は、高屈折率材からなるコアの周囲を低屈折率材からなるクラッドで被覆したものである。コア材には、従来、LiNbO3 が使用されてきたが、高価であることが問題であった。このため、安価な石英系材料を用いる各種の提案がなされている。
【0003】
特開平4−22906号公報には、低屈折率層を有する基板上に希土類元素を含むSiO2 のコア用ガラス膜を形成する工程と、基板全体を高温熱処理する工程と、上記コア用ガラス膜をフォトリソグラフィおよびドライエッチングにより断面略矩形のコアに加工する工程と、基板上のコア全体に低屈折率のガラス膜を被覆する工程とを有する導波路の製造方法が記載されている。
【0004】
同公報記載の製造方法では、希土類元素、屈折率制御用酸化物およびSiO2 の粉末を混合し、ホットプレスで焼き固めた後、さらに焼結してタブレットとし、このタブレットを用いて電子ビーム蒸着法によりコア用ガラス膜を形成する。この方法ではタブレットの製造に手間がかかるため低コスト化が難しい。
【0005】
また、同公報の実施例1では、石英ガラス基板上に、Erイオンを含むSiO2 −TiO2 のコア(波長0.63μm での屈折率が1.4651)を形成し、このコアの上に、SiO2 −P2 O5 −B2 O3 系のガラス膜(波長0.63μm での屈折率が1.4580)を被覆して埋め込み型導波路を作製しているが、このようにSiO2 ベースではコアとその被覆(クラッド)との間に十分な屈折率差をもたせることが難しく、また、屈折率差を大きくすると基板に反りが生じて、高い寸法精度が得られなくなる。また、コアは、膜として形成した後にエッチングして断面矩形状とされるが、SiO2 系材料はエッチング面が荒れやすいため、損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
特開平5−157925号公報には、石英系ガラスからなる下側クラッド膜と、石英系ガラスからなるコア部と、石英ガラスからなる上側クラッド膜とを積層した光導波路が記載されている。
【0007】
同公報の実施例では、FHD堆積法によって形成したSiO2 −P2 O5 −B2 O3 膜とECR堆積法によって形成したSiO2 膜とを下側クラッド膜とし、ECR堆積法によって形成したSiO2 −GeO2 をコア部とし、FHD堆積法によって形成したSiO2 −P2 O5 −B2 O3 膜を上側クラッド膜としている。同公報においても、各部をSiO2 ベースの材料で構成しているため、上述した問題が生じる。しかも、同公報の実施例では、後述する比屈折率差が0.75%にすぎず、このときの開口数は0.177と小さいので、光回路との接合部における損失を少なくすることが困難である。
【0008】
特開平5−181031号公報には、屈折率がnw の凸状のコアの外周を屈折率がnc (nc <nw )のクラッドで覆った光導波路において、上記コアの材質にSiOx Ny Hz (x,y>0、z≧0の実数)を用いた光導波路が記載されている。
【0009】
同公報では、コアとクラッドとの屈折率差が大きく、しかも反りが小さく、低損失である光導波路を安価に製造することを目的としている。同公報では、SiO2 基板の上に、プラズマCVD法によってSiONHのコアを形成し、さらに、比屈折率差の増大化と熱膨張係数の調節用としてB、P、F等の屈折率制御用添加物を含むSiO2 のクラッドを積層して光導波路としている。同公報には、SiONHのコアの屈折率が1.46〜1.57の範囲から選べる旨の記載がある。しかし、同公報記載のSiONHのコアは屈折率の調整範囲が狭い。同公報には、比屈折率差が7%以下である旨の記載がある。また、SiONH膜もエッチング面の荒れによる損失の増大がある。
【0010】
特開平5−241035号公報には、上記特開平5−181031号公報記載の光導波路のコアに、PやGeなどの屈折率制御用添加物を含有させたものが記載されている。同公報では、コアとクラッドとの物理的特性(熱膨張係数、軟化温度等)の調節のために、コアにPやGeなどの屈折率制御用添加物を含有させるとしている。しかし、同公報記載の光導波路も上記特開平5−181031号公報記載のものと同様に、エッチング面の不良による損失の増大という問題がある。また、屈折率制御用添加物は、光吸収を増大させて損失を大きくするという問題がある。
【0011】
特開平6−59147号公報には、基板上にプラズマCVD法により、屈折率が1.46〜1.60の範囲にあるSiOx (x=1.5〜1.9)を用いて略矩形状のコアを形成し、該コアをそれよりも屈折率の低い材料からなる低屈折率材で覆った光導波路が記載されている。
【0012】
同公報では、コアに屈折率制御用添加物を添加する必要がないため添加物の揮散による屈折率変化がほとんどなく、また、コアとクラッドとで熱膨張係数に大きな違いがないので高寸法精度の光回路をパターニングできる、としている。しかし、同公報記載のコアもSiO2 系であるため、屈折率制御範囲が狭く、また、エッチング面の不良による損失の増大という問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、内部での損失が小さく、開口数が大きいために光回路との接合部での損失が小さく、しかも寸法精度が良好な光導波路を、安価に提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(5)のいずれかの構成により達成される。
(1)屈折率n1のコアの周面が、屈折率n2(n1>n2)の下部クラッド層と屈折率n3(n1>n3)の上部クラッド層とで被覆されており、コアがSi、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成が
式I SiCX1HY1
(上記式IにおいてX1およびY1は原子比を表わし、
0.1≦X1≦4、
1≦Y1/(1+X1)≦2.15
である)
で表わされる光導波路を製造する方法であって、
コアをプラズマCVD法により形成するか、
コアならびに上部クラッド層および/または下部クラッド層をバイアス印加プラズマCVD法により形成するものである光導波路の製造方法。
(2) 下部クラッド層がSi、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成が
式II SiCX2HY2
(上記式IIにおいてX2およびY2は原子比を表わし、
0.1≦X2≦4、
1.13≦Y2/(1+X2)≦2.75
である)
で表わされ、その屈折率がn 1 >n 2 になるように調整されている上記(1)の光導波路の製造方法。
(3)上部クラッド層がSi、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成が
式III SiCX3HY3
(上記式IIIにおいてX3およびY3は原子比を表わし、
0.1<X3≦4、
1.13≦Y3/(1+X3)≦2.75
である)
で表わされ、その屈折率がn 1 >n 3 に調整されている上記(1)または(2)の光導波路の製造方法。
(4)上部クラッド層および/または下部クラッド層がSiOx(1.5≦x≦2.5)を主成分とする上記(1)の光導波路の製造方法。
(5)コアの屈折率n1が波長1310nmにおいて1.4〜3.0である上記(1)〜(4)のいずれかの光導波路の製造方法。
【0015】
【作用および効果】
本発明では、光導波路のコアをSiCH系の非晶質材料で構成する。SiCH系材料のコアは、バイアス印加プラズマCVD法などで形成することにより、波長1310nmにおける屈折率を1.4〜3.0程度の範囲内で容易に制御できる。このため、クラッドをSiO2 系材料で構成した場合でも、また、クラッドをSiCH系材料で構成した場合でも、コアとクラッドとの間の屈折率差を大きくすることができる。このように両者間の屈折率差が大きいため光導波路を小型化でき、これにより損失の低減と生産性の向上とが可能となる。また、前記屈折率差が大きいため、導波路としての開口数が大きくなるので、光回路との接合部における損失を小さくすることが容易である。
【0016】
しかも、屈折率制御用の金属元素をコアに添加する必要がないため、高価でかつ毒性や爆発性が高く蒸発しにくいガスを用いないですむ。このため、損失が小さく均質なコアが低コストで得られる。
【0017】
また、SiCH系材料は熱膨張係数がSiO2 系材料に近いため、クラッドにSiO2 系材料を用いた場合でも素子の反りが小さく、このため寸法精度が高く、特性も良好な光回路が実現する。クラッドにもSiCH系材料を用いた場合には、素子の反りは実質的に生じない。
【0018】
また、SiCH系材料からなる膜を形成し、これをドライエッチングによりコア形状に加工したとき、エッチング面の平滑度は極めて良好となるので、損失が著しく小さくなる。
【0019】
また、SiCH系材料は吸収係数が小さいため、高性能な光導波路が実現する。本発明では、SiCH系材料からなるコアの波長1310nmにおける吸収係数を、0〜0.05程度とすることができる。
【0020】
【具体的構成】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0021】
本発明の光導波路の構成例の断面図を、図1および図2に示す。図1に示す光導波路は、基板2上に、下部クラッド層21を有し、下部クラッド層21上に矩形状断面をもつコア3を有し、コア3の両側面および上面を、上部クラッド層22で被覆している。図2に示す光導波路は、基板としての機能も有する下部クラッド層21上に、矩形状断面をもつコア3を有し、コア3の両側面および上面を、上部クラッド層22で被覆している。
【0022】
図1および図2において、コアの屈折率をn1 、下部クラッド層の屈折率をn2 、上部クラッド層の屈折率をn3 としたとき、n1 >n2 かつn1 >n3 である。なお、n1 、n2 およびn3 の関係は、目的とする使用波長、例えば200〜5000nm程度の範囲から選択される使用波長において成立すればよい。
【0023】
コアは、Si、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成は、
式I SiCX1HY1
で表わされる。上記式IにおいてX1およびY1は原子比を表わし、
0<X1≦10、
0.1≦Y1/(1+X1)≦4
であり、好ましくは
0.1≦X1≦4、
0.2≦Y1/(1+X1)≦2.5
である。X1が小さすぎると屈折率が高めとなって低くすることができなくなるため、屈折率の制御が困難となる。一方、X1が大きすぎると吸収係数が大きくなって損失が増大してしまう。Y1/(1+X1)が小さすぎると内部応力が大きくなりすぎ、コア−クラッド界面での剥離が生じやすくなる。また、コア−クラッド界面での損失が大きくなる。一方、Y1/(1+X1)が大きすぎると屈折率が低めとなって高くすることができなくなるため、屈折率の制御が困難となる。
【0024】
コアの組成を上記式Iで表わされるものとすることにより、波長1310nmにおけるn1 を1.4〜3.0程度の範囲内で自在に制御することが可能である。そして、上部クラッド層や下部クラッド層を後述する組成とすることにより、比屈折率差を1%以上、特に10%以上とすることが容易にできる。なお、本発明の光導波路の比屈折率差は、通常、200%以下である。比屈折率差Δとは、コアと下部クラッド層との間では
Δ=(n1 2 −n2 2 )/2n1 2
であり、n1 とn2 との差が小さい場合には
Δ≒(n1 −n2 )/n1
である。また、コアと上部クラッド層との間では
Δ=(n1 2 −n3 2)/2n1 2
であり、n1 とn3 との差が小さい場合には
Δ≒(n1 −n3 )/n1
である。比屈折率差は、光導波路において重要なパラメータである。比屈折率差が大きければ、コアに入射した光の全反射角が大きくなるため、光導波路が受け入れることのできる光の入射角度(受光角)が大きくなる。受光角に関する性能を表わすパラメータとしては、開口数NAがあり、
NA=n1 sinθc =n1 (2Δ)1/2
(θc は全反射角)である{「光ファイバ通信入門」(末松安晴・伊賀健一著、オーム社発行)参照}。本発明の光導波路では、開口数を0.21以上、特に0.64以上とすることが容易にできる。なお、本発明の光導波路の開口数は、通常、2.50以下である。
【0025】
下部クラッド層および/または上部クラッド層も、Si、CおよびHを主成分とすることが好ましい。
【0026】
下部クラッド層の主成分は、
式II SiCX2HY2
で表わされるものであることが好ましい。上記式IIにおいてX2およびY2は原子比を表わし、
0<X2≦10、
0.1≦Y2/(1+X2)≦4
であり、好ましくは
0.1≦X2≦4、
0.2≦Y2/(1+X2)≦3
である。X2が小さすぎると屈折率が高めとなって低くすることができなくなるため、屈折率の制御が困難となる。一方、X2が大きすぎると吸収係数が大きくなって損失が増大してしまう。Y2/(1+X2)が小さすぎると内部応力が大きくなりすぎ、コア−クラッド界面での剥離が生じやすくなる。また、コア−クラッド界面での損失が大きくなる。一方、Y2/(1+X2)が大きすぎると屈折率が低めとなって高くすることができなくなるため、屈折率の制御が困難となる。X2およびY2の具体的値は、所望の比屈折率差が得られるように、コアの組成に応じて適宜決定すればよい。
【0027】
上部クラッド層の主成分は、
式III SiCX3HY3
で表わされるものであることが好ましい。上記式III においてX3およびY3は原子比を表わし、
0<X3≦10、
0.1≦Y3/(1+X3)≦4
であり、好ましくは
0.1≦X3≦4、
0.2≦Y3/(1+X3)≦3
である。X3が小さすぎると屈折率が高めとなって低くすることができなくなるため、屈折率の制御が困難となる。一方、X3が大きすぎると吸収係数が大きくなって損失が増大してしまう。Y3/(1+X3)が小さすぎると内部応力が大きくなりすぎ、コア−クラッド界面での剥離が生じやすくなる。また、コア−クラッド界面での損失が大きくなる。一方、Y3/(1+X3)が大きすぎると屈折率が低めとなって高くすることができなくなるため、屈折率の制御が困難となる。X3およびY3の具体的値は、所望の比屈折率差が得られるように、コアの組成に応じて適宜決定すればよい。
【0028】
下部クラッド層および上部クラッド層のいずれもがSiCH系材料から構成される場合、両者の組成および屈折率は等しいことが好ましいが、異なっていてもよい。
【0029】
コア、上部クラッド層および下部クラッド層は、上記主成分だけから構成した場合でも十分な比屈折率差が得られ、しかもこの場合、原料が安価で製造も容易であるが、必要に応じて各種元素を添加してもよい。このような元素としては、例えばB、P、F、Ge、Al、Sn、Zn、Pb等の少なくとも1種が挙げられる。ただし、コアやクラッド層中におけるこれらの元素の総量は、5原子%以下であることが好ましい。これらの元素の総量が多すぎると損失が大きくなる。
【0030】
下部クラッド層および/または上部クラッド層は、SiOx (1.5≦x≦2.5)を主成分とするものであってもよい。下部クラッド層が基板としての機能も有する図2に示す構成では、通常、下部クラッド層21にSiO2 等のSiOx を用いる。クラッド層がSiOx を主成分とする場合、クラッド層はB、P、F、Ge、Ti、Mo、AlおよびFeから選択される少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。これらの元素は、屈折率制御用として必要に応じて添加される。クラッド層中におけるこれらの元素の合計量は、好ましくは10原子%以下、より好ましくは5原子%以下である。添加量が多すぎると損失が大きくなる。
【0031】
なお、コアおよびクラッド層の組成は、化学分析などにより測定することができる。
【0032】
下部クラッド層や上部クラッド層の主成分を、上記式IIや上記式III で表わされるものとすることにより、波長1310nmにおけるn2 やn3 も1.4〜3.0程度の範囲内で自在に制御できるので、コアとクラッド層との比屈折率差を大きくすることができる。また、クラッド層の主成分をSiOx とした場合、屈折率を1.4〜1.6程度とすることができるので、この場合でも比屈折率差を大きくすることができる。
【0033】
n2 とn3 とは、通常、同等とするが、用途によっては適当な差をもたせてもよい。
【0034】
光導波路の形状および寸法は特に限定されないが、通常、コアの断面形状はほぼ矩形状とし、コア断面の高さは1〜100μm 程度、コア断面の幅は1〜100μm 程度、図1に示すように基板上に下部クラッド層を設ける場合の下部クラッド層の厚さは5μm 程度以上、図2に示すように基板としての機能を有する下部クラッド層の厚さも5μm 程度以上とする。
【0035】
なお、図1に示すように基板上に下部クラッド層を設ける場合、基板はSi、LiNbO3 、ガラス等から構成すればよい。
【0036】
次に、光導波路の製造方法を説明する。
【0037】
本発明では、コアをプラズマCVD法により形成するか、コアならびに上部クラッド層および/または下部クラッド層をプラズマCVD法により形成することが好ましい。特に、SiCH系のコアやクラッド層の形成には、プラズマCVD法を用いることが好ましい。プラズマCVD法については、例えば特開平4−41672号等に記載されている。プラズマCVD法におけるプラズマは、直流、交流のいずれであってもよく、交流としては数ヘルツからマイクロ波まで可能である。また、ダイヤモンド薄膜技術(総合技術センター発行)などに記載されているECRプラズマも使用可能である。
【0038】
本発明では、プラズマCVD法としてバイアス印加プラズマCVD法を用いることが好ましい。バイアス印加プラズマCVD法では、被堆積物(基板、下部クラッド層、コア等)に負のバイアス電圧を印加する。バイアス電圧は、直流でも交流(例えば50Hz〜2.45GHz )でもよい。また、バイアス電圧を印加せずにセルフバイアスを利用してもよい。電気的に絶縁されている電極に直流または交流の電圧を印加すると、電極表面にプラズマ中の電子が付着して負の電位となる。これをセルフバイアス電圧という。この方法については、例えば本発明者らによる M.Nakayama et al, Journal of the Ceramic Society of Japan Int. Edition Vol 98 607-609 (1990) 等に詳細に記載されている。バイアス印加プラズマCVD法において、バイアス電圧を例えば−10〜−2000 Vの範囲で変化させることによりSiCH系材料の組成や緻密さなどを制御して、屈折率を上記のように変化させることができる。
【0039】
SiCH系材料からなるコアやクラッド層をプラズマCVD法により形成する場合、原料ガスには、下記▲1▼〜▲3▼の各グループに属する化合物を使用することが好ましい。▲1▼の化合物はSi、CおよびHを含み、▲2▼の化合物はSi、またはSiおよびHを含み、▲3▼の化合物はCおよびHを含む。これらのうち、▲1▼の化合物だけを用いてもよく、▲1▼の化合物に加え、▲2▼の化合物および/または▲3▼の化合物を用いてもよい。また、▲2▼の化合物と▲3▼の化合物とを併用してもよい。なお、一つのグループから2種以上の化合物を選択してもよい。
【0040】
▲1▼有機シラン系化合物:
(CH3 )SiH3 、
(CH3 )2 SiH2 、
(CH3 )3 SiH、
(CH3 )4 Si、
(C2 H5 )2 SiH2 、
(C2 H5 )4 Si、
(C4 H9 )4 Si、
(CH3 )2 (C2 H5 )2 Si、
(C6 H5 )4 Si、
(C6 H5 )3 (CH3 )Si、
(C6 H5 )2 (CH3 )2 Si、
(C6 H5 )(CH3 )3 Si、
(CH3 )3 SiSi(CH3 )3 、
(CH3 )3 SiCH2 Si(CH3 )3
など。
【0041】
▲2▼水素化ケイ素およびフッ化ケイ素:SiH4 、Si2 H6 、SiF4 など。
【0042】
▲3▼炭化水素:CH4 、C2 H6 、C3 H8 、C2 H4 、C2 H2 など。
【0043】
上記各原料ガスの流量比は、原料ガスの種類や目的とする膜組成などに応じて適宜決定すればよい。
【0044】
SiOx 系材料をプラズマCVD法により形成する場合、原料ガスとしては、上記▲2▼の化合物とO2 とを用いればよい。また、SiOx 系材料に屈折率制御用の上記元素を添加する場合、さらに、これらの元素を含む各種有機金属化合物、例えば、B2 H6 、PH3 、F2 、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、テトラメチルゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム、テトラメチル鉛、テトラメチルスズ、テトラエチルスズ、ジメチル亜鉛などを原料ガスとして用いればよい。
【0045】
図1に示す構成の本発明の光導波路は、通常、図3に示す手順で作製される。
【0046】
▲1▼ 図3(a):基板2上に下部クラッド層21を形成する。下部クラッド層は、上述したようにプラズマCVD法により形成することが好ましいが、常圧CVD法、減圧CVD法、スパッタ法等の他の方法により形成してもよい。
【0047】
▲2▼ 図3(b):下部クラッド層21を被覆するコア層31を形成する。
【0048】
▲3▼ 図3(c):コア層31を被覆するマスクパターン4を形成する。マスクパターン4は、コア層31をエッチング等によりコア3とする際のマスクとなるものであり、W等の各種金属から構成されることが好ましい。マスクパターン4は、まず、コア層31全面を被覆するマスク層をスパッタ法などにより形成し、このマスク層をドライエッチングやフォトリソグラフィーなどによりパターニングして形成すればよい。
【0049】
▲4▼ 図3(d):コア層31のマスクパターン4で被覆された領域以外を選択的に除去し、コア3を形成する。コア層31の選択的除去は、ドライエッチングやフォトリソグラフィーなどにより行なえばよい。SiCH系のコア層は、CF4 +O2 の混合ガスを用いるリアクティブイオンエッチング等により容易にエッチングでき、また、リフトオフによりエッチングすることもできる。コア3形成後、エッチング等によりマスクパターン4を除去する。
【0050】
▲5▼ 図3(e):上部クラッド層22を形成する。上部クラッド層は、上述したようにプラズマCVD法により形成することが好ましいが、常圧CVD法、減圧CVD法、スパッタ法等の他の方法により形成してもよい。
【0051】
上部クラッド層形成後、基板と各層との積層体を所定の寸法に切断し、端面を研磨して光導波路素子とする。
【0052】
なお、上部クラッド層形成後、必要に応じて熱処理を施してもよい。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
<実施例1>
表1に示す光導波路サンプルを以下の手順で作製した。
【0055】
サンプル No. 101
CVD装置のチャンバ内を10-5Torr以下まで減圧した後、(CH3 )SiH3 (流量10SCCM)とCH4 (流量2SCCM)とを原料ガスとして導入し、圧力を0.5Torrとした。そして、バイアス印加プラズマCVD法により、Si(100)基板上に厚さ10μm の下部クラッド層を形成した。プラズマCVDの条件は、RF電源パワー55W、周波数13.56MHz とし、対向電極にはSiO2 板を用いた。DCバイアス電圧を表1に示す。下部クラッド層の組成を化学分析により測定し、また、下部クラッド層の波長1310nmにおける屈折率n2 および吸収係数k2 を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
次に、下部クラッド層上に厚さ5μm のコア層を形成した。プラズマCVDの条件は、RF電源パワー220Wとし、DCバイアス電圧を表1に示す値とした以外は下部クラッド層形成条件と同様とした。コア層の組成、波長1310nmにおける屈折率n1 および吸収係数k1 を、表1に示す。
【0057】
次に、リアクティブイオンエッチング法を用いて、CF4 +O2 の混合ガスでコア層をエッチングし、断面矩形状(断面の高さ5μm 、幅5μm )のコアとした。
【0058】
次に、下部クラッド層形成条件と同条件で、コア上面からの高さが10μm となるように上部クラッド層を形成し、光導波路サンプルとした。上部クラッド層の組成、屈折率および吸収係数は、下部クラッド層と同一である。
【0059】
このサンプルの波長1310nmにおける挿入損失を測定した。また、前記した比屈折率差および開口数を算出した。結果を表1に示す。
【0060】
サンプル No. 102
RF電源パワーを200Wとし、DCバイアス電圧を表1に示す値とした以外はサンプルNo. 101と同様にして下部クラッド層を形成した。
【0061】
次いで、RF電源パワーを200Wとし、DCバイアス電圧を表1に示す値とした以外はサンプルNo. 101と同様にしてコア層を形成した。
【0062】
サンプルNo. 101と同様にしてコア層をエッチングした後、下部クラッド層と同条件で上部クラッド層を形成し、光導波路サンプルとした。このサンプルの光学特性および挿入損失を表1に示す。
【0063】
サンプル No. 103
CH4 (流量2SCCM)に替えてC2 H2 (流量5SCCM)を用い、RF電源パワーを300Wとし、DCバイアス電圧を表1に示す値とした以外はサンプルNo. 101と同様にしてコア層を形成した。下部クラッド層および上部クラッド層は、サンプルNo. 101と同様にして形成した。このサンプルの光学特性および挿入損失を表1に示す。
【0064】
サンプル No. 104
CH4 の流量を50SCCMとし、RF電源パワーを75Wとし、DCバイアス電圧を表1に示す値とした以外はサンプルNo. 101と同様にしてコア層を形成した。下部クラッド層および上部クラッド層は、サンプルNo. 101と同様にして形成した。このサンプルの光学特性および挿入損失を表1に示す。
【0065】
サンプル No. 105
下部クラッド層および上部クラッド層の形成に際して、原料ガスとしてSiH4 (流量5SCCM)およびO2 (流量12SCCM)を用い、RF電源パワーを250Wとし、DCバイアス電圧を表1に示す値とした。これら以外はサンプルNo. 101と同様にして、光導波路サンプルを作製した。このサンプルの光学特性および挿入損失を表1に示す。
【0066】
サンプル No. 106
コア形成に際して、DCバイアス電圧を表1に示す値とし、下部クラッド層および上部クラッド層形成に際して、原料ガスとしてSiH4 (流量7SCCM)、O2 (流量15SCCM)およびテトラメチルスズ(流量3SCCM)を用い、RF電源として1MHz 、100Wのものを用い、DCバイアス電圧を表1に示す値とした以外は、サンプルNo. 101と同様にして光導波路サンプルを作製した。このサンプルの光学特性および挿入損失を表1に示す。
【0067】
サンプル No. 107
下部クラッド層および上部クラッド層の形成には、SiO2 をターゲットとしたスパッタ法を用いた。コア層は組成がSiONHであり、その形成には、原料ガスとしてSi(OC2 H5 )4 (流量10SCCM)、N2 (流量5SCCM)およびO2 (流量2SCCM)を用い、RF電源パワーを200WとしたプラズマCVD法を利用した。これら以外はサンプルNo. 101と同様とした。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示される結果から、本発明の効果が明らかである。すなわち、コア、またはコアおよびクラッド層を所定組成のSiCH系材料から構成することにより、挿入損失を小さくでき、しかも開口数を大きくすることができる。
【0070】
なお、X線回折により、コアおよびクラッド層が非晶質であることが確認された。
【0071】
<実施例2>
原料ガスとして(CH3 )4 Siを用い、チャンバ内圧力を0.025Torrとし、RF電源パワーを500Wとし、DCバイアス電圧を表2に示す値とした以外はサンプルNo. 101と同様にしてコア層を形成した。表2に示すコア層について、サンプルNo. 101と同様にしてn1 およびk1 を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2から、バイアス電圧を変更することにより屈折率を広い範囲内で制御できること、また、吸収係数を常に小さくできることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光導波路の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の光導波路の構成例を示す断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、光導波路の製造工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
2 基板
21 下部クラッド層
22 上部クラッド層
3 コア
31 コア層
4 マスクパターン
Claims (5)
- 屈折率n1のコアの周面が、屈折率n2(n1>n2)の下部クラッド層と屈折率n3(n1>n3)の上部クラッド層とで被覆されており、コアがSi、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成が
式I SiCX1HY1
(上記式IにおいてX1およびY1は原子比を表わし、
0.1≦X1≦4、
1≦Y1/(1+X1)≦2.15
である)
で表わされる光導波路を製造する方法であって、
コアをプラズマCVD法により形成するか、
コアならびに上部クラッド層および/または下部クラッド層をバイアス印加プラズマCVD法により形成するものである光導波路の製造方法。 - 下部クラッド層がSi、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成が
式II SiCX2HY2
(上記式IIにおいてX2およびY2は原子比を表わし、
0.1≦X2≦4、
1.13≦Y2/(1+X2)≦2.75
である)
で表わされ、その屈折率がn1>n2になるように調整されている請求項1の光導波路の製造方法。 - 上部クラッド層がSi、CおよびHを主成分とし、この主成分の組成が
式III SiCX3HY3
(上記式IIIにおいてX3およびY3は原子比を表わし、
0.1<X3≦4、
1.13≦Y3/(1+X3)≦2.75
である)
で表わされ、その屈折率がn1>n3に調整されている請求項1または2の光導波路の製造方法。 - 上部クラッド層および/または下部クラッド層がSiOx(1.5≦x≦2.5)を主成分とする請求項1の光導波路の製造方法。
- コアの屈折率n1が波長1310nmにおいて1.4〜3.0である請求項1〜4のいずれかの光導波路の製造方法。
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