JP3942951B2 - 既設柱の補強方法および補強構造 - Google Patents

既設柱の補強方法および補強構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート建造物における既設柱を地震などに対して補強する既設柱の補強方法および補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の既設柱の補強方法として、例えば図8に示すようなものが知られている(特公昭53−16214号公報)。この補強方法は、図8(A)に示すようなPC板51を、図8(B)に示すように、正方形断面をもつ鉄筋コンクリート製の既設柱52の四周面に略全長に亘ってセメントペースト等で接着し、その周囲にPC鋼線53を一定の緊張力を加えながらスパイラル状に巻き付けて一体化した後、PC板51で覆われた既設柱52の全周に表面仕上げ54を施して行なわれる。
【0003】
上記PC板51は、図8(A)に示すように、長方形の平面からなる底面51aと、この底面を弦とし、既設柱の軸心を中心とする円の1/4円弧面からなる上面51bと、底面の上下に隣接する三日月形の平面からなる2つの側面51cで構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
既設柱の上記補強方法は、地震で加わる繰り返し荷重による既設柱51の剪断破壊を、コアコンクリートを有効に拘束することによって防止するものだと述べられている。
しかしながら、上記従来の既設柱の補強方法は、既設柱52の四周面を略全長に亘って一体物のPC板51で覆い、その周囲をPC鋼線53で締め付けているため、補強柱の曲げ剛性が大きくなり過ぎて、補強柱の変形能およびエネルギ吸収能が低下し、結果的に補強柱の耐震性が向上しないという問題がある。
【0005】
また、PC鋼線53に一定の緊張力を加えながらPC板51の周りに巻き付けているため、円形断面の補強柱への巻き付けに伴って常に変化する接線方向に向けてPC鋼線53を引っ張る必要があり、人力では不可能なため、油圧シリンダ等の装置が必須になるという問題もある。
さらに、PC板51の表面が平坦であるため、巻き付けたPC鋼線53がずれる虞もあり、補強が不完全になったり、全周にモルタル54を塗布してずれを防がねばならないことから、施工に手間と費用がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、適切な寸法や形状のコンクリートブロックと予め加工された鋼線を用いることによって、補強された柱の曲げ剛性の増加を抑えつつ剪断耐力を高めることができ、既設柱の耐震性を容易かつ安価に高めることができる既設柱の補強方法および補強構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る既設柱の補強方法は、平行四辺形の平面からなる底面と、この底面に隣接する平面であって、両端を切り取った三日月形の上 , 下側面および長方形の左 , 右側面からなる4つの側面と、上記底面に対向するとともに、対向する上記左 , 右側面に連なる円弧面からなる上面で構成され、上記上面に上 , 下側面と平行に螺旋の一部をなす複数の弧状の溝を形成したコンクリートブロックを、多角形断面をもつ鉄筋コンクリート製の既設柱の各周面に対向させつつ直接または間接に上下に積み重ねるとともに、予めスパイラル状に形成した鋼線を上記積み重ねたコンクリートブロックの外周にスパイラル状に巻き付けて、上記コンクリートブロックを既設柱に一体化することを特徴とする。
【0008】
上記既設柱の補強方法では、平行四辺形の底面、両端を切除した三日月型の上 , 下側面、長方形の左 , 右側面、螺旋の一部をなす複数の弧状溝をもつ円弧面からなる上面で構成されたコンクリートブロックを、上下に積み重ねて既設柱の各周面を覆っていくと、弧状溝が一本の螺旋に連なって既設柱の全長を囲み、例えば予め螺旋状の溝の直径よりも少し小さい径のスパイラル状に加工した鋼線を、小さな力で、人力でも上記溝に容易に巻き付けることができ ( 本出願人に帰属する特許第3190556号参照 ) 、巻き付けられた鋼線は、従来例のように表面にモルタルを塗布しなくてもずれることがなく、コンクリートブロックを強固に既設柱に一体化して、既設柱の剪断耐力を大きく向上させる。それ故、地震による繰り返し水平荷重に対する剪断耐力を高めて既設柱を強固に補強することができるうえ、補強に要する手間と費用を大幅に削減することができる。また、上記コンクリートブロックは、図8 ( ) の従来例で述べたPC板と異なり、上下に積み重なっているので、地震による曲げ荷重(水平荷重)を受けると積み重ね部分が開口して、既設柱が容易に撓むから、地震荷重に対する曲げ剛性が従来例のように過大にならず、一方、外周に鋼線がスパイラル状に巻き付けられたコンクリートブロックは、既設柱に強固に一体化されるので、地震荷重に対する剪断耐力が大幅に増大する。つまり、補強された既設柱は、曲げ剛性が過大になることなく、剪断耐力が増大して、地震エネルギを効果的に吸収し、靭性が向上するので、地震による繰り返し荷重に対して既設柱を強固に補強することができる。
【0009】
また、請求項2に係る既設柱の補強構造は、平行四辺形の平面からなる底面と、この底面に隣接する平面であって、両端を切り取った三日月形の上 , 下側面および長方形の左 , 右側面からなる4つの側面と、上記底面に対向するとともに、対向する上記左 , 右側面に連なる円弧面からなる上面で構成され、上記上面に上 , 下側面と平行に螺旋の一部をなす複数の弧状の溝を形成してなり、多角形断面をもつ鉄筋コンクリート製の既設柱の各周面に対向させつつ直接または間接に上下に積み重ねられたコンクリートブロックと、上記積み重ねられたコンクリートブロックの外周にスパイラル状に巻き付けてコンクリートブロックを既設柱に一体化する予めスパイラル状に形成された鋼線とを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記既設柱の補強構造では、平行四辺形の底面、両端を切除した三日月型の上 , 下側面、長方形の左 , 右側面、螺旋の一部をなす複数の弧状溝をもつ円弧面からなる上面で構成されたコンクリートブロックが、図8(B)の従来例で述べたPC板と異なり、上下に積み重ねられて既設柱の各周面を覆っているので、地震による曲げ荷重(水平荷重)を受けると積み重ね部分が開口して、既設柱が容易に撓むから、地震荷重に対する曲げ剛性が従来例のように過大にならず、一方、鋼線がコンクリートブロックの外周の一本の螺旋に連なった上記弧状溝にスパイラル状に巻き付けられて、コンクリートブロックを既設柱に強固に一体化するので、地震荷重に対する剪断耐力が大幅に増大する。つまり、上記既設柱の補強構造は、既設柱の曲げ剛性を過大にすることなく、剪断耐力を増大して、地震エネルギを効果的に吸収し、靭性を向上させるので、地震による繰り返し荷重に対して既設柱を強固に補強することができる。また、予めスパイラル状に形成された鋼線の巻き付けについても、上述と同じく施工に伴う手間と費用を大幅に削減できる。
【0011】
請求項3に係る既設柱の補強構造は、上記上下に積み重ねられたコンクリートブロックが、所定の地震荷重で破損して開口する部材からなる薄層を介して互いに離間していることを特徴とする。
【0012】
上記既設柱の補強構造では、上下に積み重ねられたコンクリートブロックが、薄層を介して互いに離間しているので、地震による曲げ荷重を受けると、薄層の破損で、離間部が曲がり内側で閉じるとともに曲がり外側で容易に開口して、既設柱が一層容易に撓む。従って、地震荷重(水平荷重)に対する曲げ剛性の増加を抑えて、地震エネルギを一層効果的に吸収させ、靭性を向上させるので、地震による繰り返し荷重に対して既設柱をより強固に補強することができる。
【0013】
請求項4に係る既設柱の補強構造は、上記予めスパイラル状に形成された鋼線のスパイラルの直径が、上記コンクリートブロックが形成する上記円形断面の直径よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
上記実施形態の補強構造では、コンクリートブロックで覆われた略円形断面の既設柱にスパイラル状の鋼線を巻き付ける際、鋼線を束のループ面が既設柱の周面に平行になるように鉛直に配置し、鋼線を束の解ける方向に回転させつつ既設柱の周りに巡らせて、解きながら1ループずつ既設柱に巻き付けていくので、本出願人に帰属する上記特許第3190556号の記載から類推できるように、鋼線のスパイラル状の束をループ面内でループを解く方向に曲げて大きく開くのでなく、鋼線のスパイラル状の束を既設柱の周りに巡らせながら鋼線をその軸の周りに僅かに捩じるだけで弾性変形範囲で巻き付けが行なえる。従って、鋼線のループの直径が、コンクリートブロックが形成する上記円形断面の直径よりも小さくても、人手による小さな力でもう少し弾性変形させるだけで、巻き付けが行なえ、巻き付いた鋼線は、上記弾性変形に対応する応力でコンクリートブロックを全周から既設柱に密着させて一体化するから、既設柱の剪断耐力がより増大して、靭性がより向上し、地震による繰り返し荷重に対して既設柱を更に強固に補強することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本発明の既設柱の補強方法に用いられるコンクリートブロックの一例を示す斜視図であり、図2(A)〜(E)は、図1のコンクリートブロックの夫々平面図、上側面図、下側面図、右側面図、左側面図である。
上記コンクリートブロック1は、図2(A)に示すような平行四辺形の平面からなる底面11と、この底面11に隣接する平面であって、図2(B),(C)に示すような両端を切り取った三日月形の上,下側面12a,12bおよび図2(D),(E)に示すような基本的には長方形の左,右側面13a,13bからなる4つの側面と、底面11に対向するとともに、対向する上記左,右側面13a,13bに連なる円弧面からなる上面14で構成される。
コンクリートブロック1の上面14には、上,下側面12a,12bが図2(A)の平面図で作る上,下辺と平行、かつ互いに平行に延びる図1に示すような複数の弧状の溝15を形成している。図1において、破線は溝15の底を、破線の間の実線は隣接する溝間の山を夫々示している。
【0016】
図3,図4は、本発明の補強方法によって上記コンクリートブロック1を用いて補強した正方形断面の既設柱20を示す縦断面図および平面図である。コンクリートブロック1は、左右側面13a,13bの幅が既設柱20の幅よりも小さくしてあり、さらに上下側面12a,12bの高さも既設柱20の幅よりも低くなっている。このコンクリートブロック1は、底面11を既設柱20の下部周面21にセメントペーストやモルタル等接着剤によって接着しつつ周方向に順次張り付けられ、次いで貧配合モルタル23などを充填した離間部22を介して既に張り付けられたコンクリートブロック上に積み重ねるとともに同様に既設柱20の周面21に周方向に順次張り付けられて、既設柱20の外周を基礎部20aから上に向かって螺旋状に覆っていくことになる。但し、既設柱20の上下端は、補強柱の曲げ剛性の増加を抑えて、地震荷重で柔軟に撓みうるように、コンクリートブロック1で覆っていない(図3参照)。
なお、上下のコンクリートブロックの間に挟まれる部材は、上記貧配合モルタル23に限らず、所定の地震荷重で破損して開口する木栓やゴムなどの材料を用いることができる。
【0017】
コンクリートブロック1は、図4に示すように、既設柱20を覆ったとき、上面である円弧面14が既設柱の軸心Cを中心とする一定半径の円筒面をなすとともに、円弧面14の両端が切り取られて左,右側面13a,13bになっているので、既設柱20の角の両側に既設柱20の周面21が露出した隙間22ができる。この隙間が存することによって、地震荷重が作用した後に既設柱の破損程度を隙間から直接観察することができる。
コンクリートブロック1の上面14に上,下側面12a,12bと平行、かつ互いに平行に設けられた複数の溝15は、コンクリートブロックが既設柱の四周面を図4の如く覆ったとき、上記4隅の隙間を介して周方向に隣接するコンクリートブロックの溝15と円滑に螺旋状に連なる。
【0018】
図5は、既設柱20の四周面21を覆うコンクリートブロック1の上記溝15およびこの溝に嵌め込んで巻き付けたスパイラル状の鋼線24を示す展開図である。
溝15は、図5の左端に示すように、コンクリートブロック1の上面14に正弦波状の凹部を形成してなるとともに、最初の周面21aの下部に張り付けたコンクリートブロックの下端から始まって、既設柱20の角の隙間22を介して、順次右隣りの周面21b,21c,21dに張り付けた3つのコンクリートブロックの溝15に連なって、既設柱を一周した後、再び周面21aのコンクリートブロック(図5の右端に重複して一部を示す)の1つ上の溝に連なり、これを繰り返して既設柱の上端に至る。この螺旋状の溝15に図示の如く鋼線24が巻き付けられる。
【0019】
図5で平行四辺形の上,下辺として示されるコンクリートブロック1の上,下側面12a,12b、従ってこれと平行に延びる溝15は、図5から判るように、既設柱の4つの周面21a〜21dを1周すると、溝15の1ピッチpの距離だけ上昇する。コンクリートブロック1を横切る1本の溝15(例えば周面21aの下端)について言えば、溝の上昇距離は、既設柱の1/4周に相当するp/4から柱角の間隔に相当する上昇分をαを減じた値(p/4−α)となり、従ってコンクリートブロック1の上,下側面12a,12bの傾きも、図2(A)中に示すように、平行四辺形の左,右辺の左辺13aの下端から右辺13bに下ろした垂線の足と、右辺13bの下端との距離が(p/4−α)になるような傾きとなる。上記隙間の間隔に相当する上昇分αとは、図4の柱角との隙間を溝15がコンクリートブロック1におけると同じ傾きで進んだ場合の上昇距離をいう。
【0020】
溝15に巻き付けられる鋼線24は、図8の従来例の直線状のものと異なり、既設柱20の周りを1周する溝15の直径より小さい直径(望ましくは既設柱断面の対角線を直径とする径の80%の径)のスパイラル状の束に予め加工されていて、油圧シリンダ等の引張り機械を用いることなく、人手によって巻き付けられる。このような螺旋状に束ねられた鋼線24を既設柱に巻き付ける方法については、本願出願人に帰属する特許第3190556号に詳しく述べられているので、ここでは簡単に説明するに留める。
【0021】
即ち、スパイラル状の束に加工された鋼線24を、束のループ面が既設柱の周面に平行になるよう鉛直に配置し、巻き始めとなる直角に曲げた始端24a(図5参照)を周面21aの下端に設けた穴(図示せず)に差し込んで固定し、鋼線の束を解ける方向に回転させつつ既設柱の周りに巡らせて、解きながら1ループずつ既設柱に巻き付けて、既設柱の基部に巻き付いた全ループが重なり合う状態にした後、ループを上方へ引き上げつつ鋼線24を螺旋状の溝15に嵌め込んで順次上方へ巻き付けていく。最後に、直角に曲げた終端24b(図4参照)を周面の上端に設けた穴に差し込んで固定して巻き付けを終了する。鋼線端部の固定方法は、既設柱の周面に固定するのではなく、鋼線をコンクリートブロックの外周に重ねて巻き付けて重なった部分をクリップで固定するようにしてもよい。
この方法は、鋼線のスパイラル状の束をループ面内でループを解く方向に曲げて大きく開くのでなく、鋼線のスパイラル状の束を既設柱の周りに巡らせながら鋼線をその軸の周りに僅かに捩じるだけの弾性変形範囲で巻き付けが行なえるので、図8の従来例で述べた油圧シリンダ等の大掛かりな機械を要さず、人力のみで容易かつ迅速に施工することができる。なお、鋼線は、棒鋼でも撚線でもよい。
【0022】
上記実施形態のコンクリートブロック1を用いた既設柱20の補強方法について次に述べる。
まず、既設柱20の下端外周の基礎部20a上に、貧配合モルタル23を所定厚さで塗るとともに、既設柱20の四周面21またはコンクリートブロック1の底面11の少なくともいずれかにセメントペーストを塗った後、コンクリートブロック1の下側面12bを貧配合モルタル23に載せつつ底面11を各周面21に当接させて、既設柱20の外周に4つのコンクリートブロック1を張り付ける。次に、張り付けた各コンクリートブロックの上側面に貧配合モルタル23を充填した厚さ1〜2cmの離間部22を設け、この上に4つのコンクリートブロック1を積み重ねつつ同様に各周面21に張り付けていく。ここで、コンクリートブロック1は、図5に示すように左,右辺と上,下辺が直交しない平行四辺形であるので、下端の貧配合モルタル23の上面および上下ブロック間の貧配合モルタル23を充填した離間部22は、水平面に対して傾いている。
【0023】
既設柱20の四周面全長に亘るコンクリートブロック1の張り付けが終わると、既設柱の周りを1周するコンクリートブロックの螺旋状の溝15の直径より僅かに小径のスパイラル状の束に予め加工された鋼線24を、人手による方法で螺旋状の溝15に嵌め込んで、全コンクリートブロックに亘って巻き付けを行なう。ここで、鋼線24のスパイラルの直径は、既設柱20の周りを1周する溝15の直径よりも僅かに小さいが、巻き付けは、人手による小さな力で少し弾性変形させるだけで巻き付けることができ、巻き付いた鋼線は、上記弾性変形に対応する応力でコンクリートブロックを全周から既設柱に密着させて一体化する。従って、鋼線24のスパイラルの直径が溝15の直径に等しい場合に比して、既設柱の剪断耐力がより増大して、靭性がより向上し、地震による繰り返し荷重に対して既設柱をより強固に補強することができる。また、この鋼線巻き付け方法は、既述の如く油圧シリンダ等の大掛かりな機械を要さず、人力のみでもしくは小道具を用いて容易かつ迅速に施工できるという大きな利点を有する。
なお、既設柱の上下端は、既に述べた曲げ剛性を過大にしないという理由からコンクリートブロック1で覆わない。また、巻き付けた鋼線24は、溝15に密に嵌合していて、ずれることがないから、図8の従来例のように鋼線の表面全体にモルタルを塗布する必要もない。鋼線24の始端24aと終端24bは、図4,図5で述べたように、既設柱の周面に設けた穴に差し込んで固定するが、これに代えて、鋼線同士を結束線などで結んで固定してもよい。
【0024】
こうして補強された図3,4に示す既設柱20は、地震の際に次のように挙動して、地震の振動エネルギを効果的に吸収する。
既設柱20は、図8で述べた従来例のように縦長で一体物の4枚のPC板51を四周面に張り付けるのではなく、縦寸法の短い多数のコンクリートブロック1を、貧配合モルタル23や木栓などの脆い材料を挟んで積み上げて張り付けて補強され、既設柱20の角の周面が露出した隙間が生じる。従って、地震による曲げ荷重が加わった場合、既設柱20は、ブロックの積み重ね部の貧配合モルタル23が破壊して開口し、過大曲げ荷重が加わる前に図6に示すように変形する。つまり、本実施形態の補強柱は、図8の従来例と異なり、曲げ剛性が大きくなり過ぎて変形能やエネルギ吸収能が低下することがなく、結果的に耐震性が向上するのである。また、周方向に隣接するコンクリートブロックは、上記隙間22によって互いに当接しないので、当接箇所が地震による既設柱の変形で互いに衝突して欠け落ちることもない。
【0025】
既設柱20は、螺旋状の溝15の直径よりも僅かに小径のスパイラル状に予め加工した鋼線24を、僅かに捩じりながら拡径して巻き付けるので、油圧シリンダ等を用いずとも、鋼線24が弾性力でコンクリートブロック1に密着するとともに、巻き付いた鋼線24が既設柱20の剪断耐力を大幅に向上させる。つまり、本実施形態の補強柱は、曲げ剛性を過大にすることなく、剪断耐力を高めているので、結果的に靭性が向上し、地震エネルギを効果的に吸収して既設柱20を強固に補強することができるのである。なお、鋼線は、棒鋼でも撚線でもよい。
【0026】
図7は、他のコンクリートブロックを用いて補強した既設柱の断面図である。
このコンクリートブロック31は、図4と同じ正方形断面の既設柱20を補強するものであるが、上面34の円弧面の曲率半径が、図4の既設柱に外接する円弧面14の曲率半径よりも大きい点のみが異なる。
この実施形態のコンクリートブロック31を用いた既設柱の補強方法は、先の実施形態で述べた方法と本質的に同じであり、説明を省略するが、同様の作用,効果を奏する。
【0027】
上記実施形態では、コンクリートブロック1の図2の平面図における平行四辺形の上下辺である上下側面12a,12bが、左右辺である左右側面13a,13bと直交しない場合について述べた。しかし、本発明は、弧状の複数の溝15を螺旋の一部を形成するように設けさえすれば、上下側面と左右側面が直交する平行四辺形、つまり平面図において長方形をなすコンクリートブロックについても適用でき、同様の作用,効果が奏される。また、コンクリートブロック1は、左右側面13a,13bをなくして、即ち上下側面12a,12bの形状を三日月形にしてもよい。
【0028】
また、溝15の斜度は、正方形断面の既設柱20に用いるコンクリートブロック1については、水平距離に対する高さが溝ピッチpの1/4よりも4隅の隙間の1つに相当するピッチαだけ小さいものにしたが、溝ピッチpの1/n(n:3以上の整数)よりもn隅の隙間の1つに相当するピッチだけ小さいものにすれば、正n角形断面の既設柱の周りをスパイラル状に取り囲むものにできる。上記実施形態の溝15は、1周で1ピッチ進む1条溝であったが、1周で2ピッチ進む2条溝にすることもでき、溝の断面形状も、上記実施形態の正弦波に限られず、例えば、溝の断面形状を台形形状にしてもよい。
なお、コンクリートブロックの上面に設けた螺旋状の溝を省略して、円弧状の平滑なコンクリートブロックの周面にスパイラル状の鋼線を巻き付けることも可能である。また、上記実施形態の貧配合モルタル23などの薄層(離間部22)を省略して、コンクリートブロックを直接積み重ねることも可能である。
【0029】
さらに、本発明の補強方法に用いるコンクリートブロックは、周方向幅および円弧面の曲率半径を既設柱断面形状に適合するよう変化させることによって、長方形断面や各辺の長さが等しくないn角形断面の既設柱にも適用することができ、既述の実施形態で述べたと同様の作用,効果を奏することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の請求項1に係る既設柱の補強方法は、平行四辺形の底面、両端を切除した三日月型の上 , 下側面、長方形の左 , 右側面、螺旋の一部をなす複数の弧状溝をもつ円弧面からなる上面で構成されたコンクリートブロックを、上下に積み重ねて既設柱の各周面を覆い、このコンクリートブロックの外周に、予めスパイラル状に形成した鋼線を巻き付けているので、積み重ね部分が開口して既設柱が撓むから、既設柱の曲げ剛性が過大にならない一方、巻き付けた鋼線によって剪断耐力が増大して、地震エネルギを効果的に吸収し、靭性が向上して、地震による繰り返し荷重に対して既設柱を強固に補強することができる。また、予めスパイラル状に形成された鋼線は、コンクリートブロックの外周の一本の螺旋に連なった上記弧状溝に人手によって容易かつ迅速に巻き付けることができるので、施工の手間と費用を大幅に削減できる。
【0031】
また、請求項2に係る既設柱の補強構造は、平行四辺形の底面、両端を切除した三日月型の上 , 下側面、長方形の左 , 右側面、螺旋の一部をなす複数の弧状溝をもつ円弧面からなる上面で構成されたコンクリートブロックが、上下に積み重ねられて既設柱の各周面を覆い、鋼線がコンクリートブロックの外周の一本の螺旋に連なった上記弧状溝にスパイラル状に巻き付けられているので、積み重ね部分が開口して既設柱が撓むから、既設柱の曲げ剛性が過大にならない一方、巻き付けた鋼線によって剪断耐力が増大して、地震エネルギを効果的に吸収し、靭性が向上して、地震による繰り返し荷重に対して既設柱を強固に補強することができる。また、予めスパイラル状に形成された鋼線は、人手によって容易かつ迅速にコンクリートブロックの外周の一本の螺旋に連なった弧状溝に巻き付けることができるので、施工の手間と費用を大幅に削減できる。
【0032】
請求項3に係る既設柱の補強構造では、上下に積み重ねられたコンクリートブロックが、所定の地震荷重で破損して開口する部材からなる薄層を介して互いに離間しているので、地震による曲げ荷重を受けると離間部が曲がり内側に閉じるとともに曲がり外側が容易に開口して、既設柱が容易に撓むから、地震荷重に対する曲げ剛性の増加を抑えて、地震エネルギを一層効果的に吸収させ、靭性を向上させるので、地震による繰り返し荷重に対して既設柱をより強固に補強することができる。
【0033】
請求項4に係る既設柱の補強方法では、鋼線のループの直径が、コンクリートブロックが形成する上記円形断面の直径よりも小さいが、スパイラル状の上記鋼線の束は、既設柱の周りに巡らせながら、鋼線をその軸の周りに僅かに捩じるだけで弾性変形範囲で巻き付けが行なえるから、人手による小さな力でもう少し弾性変形させるだけで巻き付けが行なえ、巻き付いた鋼線は、上記弾性変形に対応する応力でコンクリートブロックを全周から既設柱に密着させて一体化する。従って、既設柱の剪断耐力がより増大して、靭性がより向上し、地震による繰り返し荷重に対して既設柱を更に強固に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の既設柱の補強方法に用いるコンクリートブロックの一例を示す斜視図である。
【図2】 上記コンクリートブロックの底面図,上下側面図,左右側面図である。
【図3】 図1のコンクリートブロックで補強された既設柱の縦断面図である。
【図4】 図3の既設柱の平面図である。
【図5】 図3,4のコンクリートブロックの溝とこの溝に嵌め込んで巻き付けられたスパイラル状の鋼線の展開図である。
【図6】 地震荷重による上記既設柱の変形の様子を示す正面図である。
【図7】 本発明の補強方法により他のコンクリートブロックを用いて補強された既設柱の平面図である。
【図8】 従来のPC板による既設柱の補強方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,31 コンクリートブロック
11 底面
12a,12b 上,下側面
13a,13b 左,右側面
14,34 上面
15 溝
20 既設柱
21 周面
22 離間部
23 貧配合モルタル
24,35 鋼線

Claims (4)

  1. 平行四辺形の平面からなる底面と、この底面に隣接する平面であって、両端を切り取った三日月形の上 , 下側面および長方形の左 , 右側面からなる4つの側面と、上記底面に対向するとともに、対向する上記左 , 右側面に連なる円弧面からなる上面で構成され、上記上面に上 , 下側面と平行に螺旋の一部をなす複数の弧状の溝を形成したコンクリートブロックを、
    多角形断面をもつ鉄筋コンクリート製の既設柱の各周面に対向させつつ直接または間接に上下に積み重ねるとともに、予めスパイラル状に形成した鋼線を上記積み重ねたコンクリートブロックの外周にスパイラル状に巻き付けて、上記コンクリートブロックを既設柱に一体化することを特徴とする既設柱の補強方法。
  2. 平行四辺形の平面からなる底面と、この底面に隣接する平面であって、両端を切り取った三日月形の上 , 下側面および長方形の左 , 右側面からなる4つの側面と、上記底面に対向するとともに、対向する上記左 , 右側面に連なる円弧面からなる上面で構成され、上記上面に上 , 下側面と平行に螺旋の一部をなす複数の弧状の溝を形成してなり、多角形断面をもつ鉄筋コンクリート製の既設柱の各周面に対向させつつ直接または間接に上下に積み重ねられたコンクリートブロックと、
    上記積み重ねられたコンクリートブロックの外周にスパイラル状に巻き付けてコンクリートブロックを既設柱に一体化する予めスパイラル状に形成された鋼線とを備えたことを特徴とする既設柱の補強構造。
  3. 請求項2に記載の既設柱の補強構造において、上記上下に積み重ねられたコンクリートブロックは、所定の地震荷重で破損して開口する部材からなる薄層を介して互いに離間していることを特徴とする既設柱の補強構造。
  4. 請求項2または3に記載の既設柱の補強構造において、上記予めスパイラル状に形成された鋼線のスパイラルの直径は、上記コンクリートブロックが形成する上記円形断面の直径よりも小さいことを特徴とする既設柱の補強構造。
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