JP3942740B2 - アミノ酸誘導体・オキソバナジウム(iv)錯体 - Google Patents

アミノ酸誘導体・オキソバナジウム(iv)錯体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、N−置換アミノ酸誘導体を配位子として含有してなるオキソバナジウム(IV)錯体、及び、それを含有してなる医薬組成物に関する。本発明のN−置換アミノ酸誘導体を配位子として含有してなるオキソバナジウム(IV)錯体はインスリン様作用し、糖尿病又は高血圧症などの治療剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】
インスリン依存型糖尿病は、インスリンの皮下注射に頼るしか治療方法がないのが現状であり、インスリンに代わりうる経口投与ができるインスリン様作用を有する薬剤の開発が望まれている。インスリン様作用を有する薬剤として、酸化硫酸バナジウム(IV)が知られ、既にアメリカなどで臨床検査に用いられている。しかしながら、酸化硫酸バナジウム(IV)は無機塩である為、生体膜の透過が難しく、生体内に取り込まれにくい。
【0003】
4価バナジウム錯体のいくつかの化合物がインスリン依存性糖尿病の治療に有効であることが知られている。例えば、システインメチルエステルを配位子として有するバナジウム(IV)(H. Sakurai, et al., J. Clin. Biochem. Nutr., 8, 193 (1990))、ジヒドロキシジカルボン酸塩又はヒドロキシピラノン誘導体を配位子として有するバナジウム(IV)(J. H. McNeill, et al., J. Med. Chem., 35, 1489 (1992))、N−置換ジチオカルバミン塩を配位子として有するバナジウム(IV)(H. Watanabe, et al., J. Med. Chem., 37, 876 (1994))などが知られている。
しかしながら、これらのバナジウム(IV)化合物は作用や副作用などの点において実用的な段階には至ってはいなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インスリン様作用を有する新規なオキソバナジウム(IV)錯体を提供することを目的としている。
この発明が解決しようとする他の課題は、前記オキソバナジウム(IV)錯体を有効成分として含有する医薬組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、N−置換アミノ酸誘導体を配位子として有するオキソバナジウム(IV)錯体がインスリン様作用を有し糖尿病の治療薬となり得ることを見出し、本発明を完成するに到った。本発明のオキソバナジウム(IV)錯体は新規な化合物である。
【0006】
本発明のN−置換アミノ酸誘導体は、N−モノ又はジ置換アミノ酸誘導体であり、α−アミノ酸から誘導されるものが好ましく、当該α−アミノ酸のアミノ基が置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基でモノ−又はジ−置換されているものがさらに好ましい。
【0007】
即ち、本発明は、N−置換アミノ酸誘導体を配位子として含有してなるオキソバナジウム(IV)錯体、好ましくはN−置換アミノ酸誘導体がα−アミノ酸誘導体であり、さらに好ましくは当該アミノ酸のアミノ基が置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基でモノ−又はジ−置換されているN−置換アミノ酸誘導体を配位子として含有してなるオキソバナジウム(IV)錯体に関する。
より詳細には、本発明は、N−置換アミノ酸誘導体が次式(I)、
【0008】
【化1】
Figure 0003942740
【0009】
(式中、Rは、置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基を示し;Rは、水素、置換基を有してもよい低級アルキル基、又は、置換若しくは無置換の複素環基で置換されたメチル基を示し;Rは、水素、水酸基若しくは低級アルコキシ基で置換されていてもよいアラルキル基、置換若しくは無置換の複素環で置換されたメチル基、又は、水酸基、低級アルコキシ基、グアジニノ基、アミノ基、カルボキシ基、カルバモイル基、チオール基もしくは低級アルキルチオ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し;Zは、低級アルコキシ基、低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基又は水酸基を示す。)
で示される配位子であるN−置換アミノ酸誘導体を配位子として含有してなるオキソバナジウム(IV)錯体に関する。
【0010】
また、本発明は、前記したオキソバナジウム(IV)錯体を含有する医薬組成物に関する。本発明の前記したオキソバナジウム(IV)錯体はインスリン様作用を有し、本発明は、インスリン様作用を有する医薬組成物、又は、糖尿病若しくは高血圧症を治療する為の医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物は、前記したオキソバナジウム(IV)錯体のほかに、さらに製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物が好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のN−置換アミノ酸誘導体からなる配位子のアミノ酸としては、アミノ基とカルボキシル基とが鎖状の炭素鎖により結合しているものであって、バナジウム(IV)の配位子となり得るものであればよいが、通常はα−アミノ酸が好ましく、天然型のα−アミノ酸がより好ましい。
本発明のアミノ酸としては、ヒスチジン、アスパラギン酸、セリン、リジンなどが好ましく、より好ましいアミノ酸としてはヒスチジン及びアスパラギン酸などが挙げられる。
【0012】
本発明のN−置換アミノ酸誘導体のアミノ基の置換基としては、種々の有機残基を使用することができるが、置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基が好ましい。
本発明の一般式(I)で示される配位子における「複素環基」としては、環中に少なくとも1個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有し、1個の環の大きさが5〜20員、好ましく5〜10員、より好ましく5〜7員であって、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基などの炭素環式基と縮合していてもよい飽和又は不飽和の単環、多環又は縮合環式のものが挙げられる。
【0013】
好適な「複素環基」としては、たとえば、
(1)窒素原子1ないし4個を有する3ないし7員環、好ましくは5または6員環の不飽和単環複素環基、たとえばピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル[たとえば4H−1,2,4ートリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど]、テトラゾリル[たとえば1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど]など;
【0014】
(2)窒素原子1ないし5個を有する不飽和縮合複素環基、たとえばインドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル[たとえばテトラゾロ[1,5−b]ピリダジニルなど]など;
【0015】
(3)窒素原子1個を有する3ないし7員環、好ましくは5または6員環の不飽和単環複素環基、たとえばピラニル、フリルなど;
(4)硫黄原子1ないし2個を有する3ないし7員環、好ましくは5または6員環の不飽和単環複素環基、たとえばチエニルなど;
をあげることができる。
【0016】
より具体的には、本発明の一般式(I)における置換基RおよびRの定義中の「置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基」における複素環基の好適なものは、ピリジル、(2−または4−)イミダゾリル、キノリル、フリル、チエニルなどがあげられる。Rの定義中の「置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基」における複素環基の好適なものは、(2−または4−)イミダゾリル、インドリル、があげられる。
【0017】
本発明の一般式(I)における前記した複素環基は無置換のもであってもよいが、置換基で置換されたものであってもよい。このような置換基としては、本発明の錯体のインスリン様作用に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、低級アルキル基が好ましい。
【0018】
本発明における「低級アルキル基」としては、炭素数1〜15、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。
【0019】
また、本発明における「低級アルコキシ基」、「低級アルキルチオ基」、及び「低級アルカノイル基」としては、前記した低級アルキル基からなるものが挙げられる。
好適な「低級アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、第二級ブチルオキシ基、第三級ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などを挙げることができる。好適な「低級アルキルチオ基」としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、第二級ブチルチオ基、第三級ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基などが挙げられる。好適な「低級アルカノイル基」としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、第二級ブチルカルボニル基、第三級ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基などを挙げることができる。
【0020】
置換基を有してもよい低級アルキル基は、本発明のオキソバナジウム(IV)錯体の活性に悪影響を与えない置換基で置換されたものであってもよく、水酸基又は低級アルコキシ基で置換されてもよい低級アルキル基が好ましい。低級アルキル基の置換基としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどのアリール基、前記した複素環基などが挙げられる。
【0021】
本発明のオキソバナジウム(IV)錯体は、一個またはそれ以上の不斉中心を含むことがあり、したがってそれらが鏡像異性体またはジアステレオ異性体として存在する場合がある。本発明は、混合物および個々の異性体の両方を包含する。好ましくは、(S)−異性体である。
本発明のオキソバナジウム(IV)錯体は、溶媒和化合物の形態をとることもあり、これも本発明の範囲に含まれる。
【0022】
本発明で用いる配位子またはその塩は、アミノ酸誘導体と適当なカルボアルデヒドを還元剤の存在下に反応させることによって製造することができる。すなわち、下記の一般式で表される方法で製造することができる。より具体的には、後述の実施例を参照することができる。
【0023】
製造法1
一般式(I)における置換基Rが、水素又は置換基を有してもよい低級アルキル基の場合の化合物は、アミノ酸若しくはN−低級アルキル置換アミノ酸又はそのエステル、アミド若しくは塩と複素環式アルデヒド化合物を還元剤の存在下に、次式で示される反応式にしたがって反応させることにより製造することができる。
【0024】
【化3】
Figure 0003942740
【0025】
(上記式中、R、RおよびZは前記定義の通りであり、Rは、水素又は置換基を有してもよい低級アルキル基であり、Rは、置換又は無置換の複素環基である。)
得られたN−置換アミノ酸を必要により常法にしたがって、エステル化やアミド化することにより、他のアミノ酸誘導体とすることもできる。
【0026】
反応は、有機又は無機の溶媒の存在下に行うのが好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、エーテル、THFなどのエーテル系溶剤、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、DMSOやDMFなどの非プロトン性極性溶媒などが好ましい。また、場合によってば水などの無機溶剤を使用することもある。
【0027】
この反応は、還元剤の存在下におこなわれ、還元剤としては水素化ホウ素誘導体や水素化アルミニウム誘導体などを使用することができる。水素化シアノホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素化合物が好ましい。
反応温度は、−20℃〜溶媒の沸点、好ましくは0℃〜室温程度である。
【0028】
製造例2
一般式(I)における置換基Rが、置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基の場合の化合物は、アミノ酸又はそのエステル、アミド若しくは塩を原料として前記の製造例1の方法により、置換基Rが水素の化合物を製造し、次いでこれを前記と同様な方法により、複素環式アルデヒド化合物と還元剤の存在下に、次式で示される反応式にしたがって反応させることにより製造することができる。
【0029】
【化4】
Figure 0003942740
【0030】
(上記式中、R、RおよびZは前記定義の通りであり、Rは、置換又は無置換の複素環基で置換されたメチル基であり、Rは、置換又は無置換の複素環基である。)
置換基Rの「複素環基」は、置換基Rの「複素環基」と同一であってもよいが、異なっていてもよい。両者の複素環基が同じである場合には、中間のモノ置換体を一度単離してもよいが、単離することなく引き続いて2個目の置換基を導入する前記の製造方法を行ってもよい。
また、得られたN−置換アミノ酸を必要により常法にしたがって、エステル化やアミド化することにより、他のアミノ酸誘導体とすることもできる。
【0031】
この反応は、前記製造例1と同様な反応条件で行うことができる。
【0032】
本発明のオキソバナジウム(IV)錯体を製造する方法としては、前記した方法により得られた配位子の溶液に、酸化硫酸バナジウム溶液を加えることによってオキソバナジウム(IV)錯体を形成させ、単離することによって製造することができる。より具体的には、後述の実施例を参照することができる。
【0033】
この際の溶媒としては、水が好ましいが、水に限定されるものではない。
また、得られたオキソバナジウム(IV)錯体に無機塩を加えて、他の塩に塩交換することもできる。好ましい塩としては過塩素酸が挙げられる。
【0034】
本発明のオキソバナジウム(IV)錯体は、後述する試験例からも明らかなようにインスリン様作用を有し、糖尿病又は高血圧症などの治療剤として使用することができる。
したがって、本発明は、前記した本発明のオキソバナジウム(IV)錯体及び製薬上許容される担体とからなる医薬組成物を提供するものである。
【0035】
治療のためには、本発明のオキソバナジウム(IV)錯体を有効成分として、経口投与、非経口投与または外用(局所)投与に適した有機または無機の固体または液体の賦形剤などの医薬として許容される担体と共に含有する医薬製剤の形で用いることができる。前記医薬製剤は、カプセル剤、錠剤、糖剤、顆粒、吸入剤、坐剤、液剤、ローション剤、懸濁液、乳剤、軟膏、ゲル剤などであってもよい。必要ならば、上記製剤に、補助剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、緩衝剤およぴ他の通常使用される添加剤を含有させてもよい。
【0036】
本発明のオキソバナジウム(IV)錯体の治療有効用量は、患者の年齢および症状により変動するが、オキソバナジウム(IV)錯体の平均一回量が、約0.1mg、1mg、10mg、50mg、100mg、250mg、500mgおよび1000mgが、上記疾患の治療に有効であろう。一般的には、0.1mg/人ないし約1000mg/人の用量を1日当たり投与すればよい。
【0037】
【実施例】
以下の製造例および実施例は、この発明を説明するために示したものであり、本発明はこれらの実施例や試験例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1
A.配位子pmHの製造
(S)−ヒスチジンメチルエステル・2塩酸(50 mmol)とトリエチルアミン(50 mmol)とのメタノール(150 ml)溶液に、氷冷下2−ピリジンカルボキシアルデヒド(50 mmol)を加え、2時間撹拌放置した。 さらにその溶液に、水素化シアノホウ素ナトリウム(50 mmol)を加え、一夜撹拌放置した。生じた沈殿を濾別し、ロ液を減圧下濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶かし、炭酸ナトリウム水溶液と分液処理し、ジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をメタノールに溶かし、氷冷下4M−塩化水素/酢酸エチル溶液を加えた。生じた沈殿を濾別し、エタノールより再結晶した。
得られたN−(ピリジン−2−イル−メチル)−(S)−ヒスチジンを、以下では「pmH」と略記し、そのメチルエステルを「pmH−Me」又は単に「pmH」と略記する。
【0039】
B.配位子pmHを有する錯体の製造
上記で得たエステル化合物・3塩酸塩(pmH−Me・3HCl;10 mmol)を3当量の水酸化リチウム水溶液で中和後、水酸化バリウム(0.1 mmol)水溶液を加え、一夜撹拌放置した。その溶液に酸化硫酸バナジウム(IV)(0.2 mmol)水溶液を滴下し、1時間後に過塩素酸バリウム(0.1 mmol)を加えて2時間撹拌放置した。沈殿を濾別後、ロ液を濃縮し熱メタノールより再結晶して青紫色の粉末結晶[VO(pmH)(ClO)]を得た。
【0040】
実施例2
A.配位子pm2Hの製造
前記の実施例1で得られたpmH−Me・3HCl(12.0 mmol)とナトリウムメトキシド(24.0 mmol)とのメタノール溶液に、氷冷下2−ピリジンカルボキシアルデヒド(12.0 mmol)を加え、2時間後水素化シアノホウ素ナトリウム(12.0 mmol)を加え一晩撹拌放置した。生じた沈殿を濾別し、ロ液を減圧下濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶かし、炭酸ナトリウムで洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルおよびセファデックス(Sephadex) LH−20カラムクロマトグラフイーで分離精製し、N,N−ビス−(ピリジン−2−イル−メチル)−(S)−ヒスチジンメチルエステル(pm2H−Me)を得た。
【0041】
B.配位子pm2Hを有する錯体の製造
上記で得たエステル化合物(0.2 mmol)の水溶液に、酸化硫酸バナジウム(IV)(0.2 mmol)水溶液を滴下し、1時間後に過塩素酸バリウム(0.2 mmol)水溶液を加えて2時間撹拌した。沈殿を濾別後、ロ液を濃縮し、熱エタノールより青紫色の粉末結晶として[VO(pm2H−Me)](ClOを得た。
【0042】
実施例3
A.配位子Me−pmHの製造
2,3−ルチジン(9.0 mmol)とヨウ素(9.0 mmol)を反応させ、ルチジンヨーダイドを生成させた。このルチジンヨーダイドを少量のDMSOに溶解し、130−140℃で15分間反応させた。溶液を放冷後、炭酸ナトリウム水溶液で中和し、エーテル抽出した後、硫酸ナトリウムで乾燥しエーテルを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製し、3−メチル−2−ピリジンカルボキシアルデヒドを得た。
このアルデヒド化合物(5、0 mmol)を、ヒスチジンメチルエステル2塩酸塩(5.0 mmol)とトリエチルアミン(5.0 mmol)とのメタノール溶液とし、氷冷下撹拌した。2時間後、水素化シアノホウ素ナトリウム(5.0 mmol)をメタノ−ル溶液に加え、一晩撹拌放置した。生じた沈殿をロ別し、ロ液を減圧下濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶かし、炭酸ナトリウムで洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、N−(3−メチル−ピリジン−2−イル−メチル)−(S)−ヒスチジンメチルエステル(3−Me−pmH−Me)を得た。
【0043】
B.配位子Me−pmHを有する錯体の製造
上記で得たエステル化合物(0.2 mmol)の水溶液に、水酸化バリウム(0.1 mmol)水溶液を加え一晩撹拌した。次に酸化硫酸バナジフム(IV)(0、2 mmol)水溶液を滴下し、1時間後に過塩素酸バリウム(0.1 mmol〉水溶液を加えて2時間撹拌した。沈殿をロ別後、ロ液を濃縮し熱メタノールより青紫色の粉末結晶として青紫色の粉末結晶([VO(3−Me−pmH)]ClOを得た。
【0044】
実施例4
A.配位子qmHの製造
2−キノリンカルボキシアルデヒド(10 mmol)とヒスチジンメチルエステル2塩酸塩(10 mmol)、ナトリウムメトキシド(10 mmol)のメタノール溶液に、氷冷下水素化シアノホウ素ナトリウム(10 mmol)のメタノール溶液を加え、一晩撹拌放置した。生じた沈殿を濾別し、ロ液を減圧濃縮した。残渣をクロロホルムと5%硫酸水素カリウムで分液処理した後、水層を炭酸ナトリウムでpH10に調節し、クロロホルムで抽出した。クロロホルムを減圧下留去後、残渣をシリカゲル力ラムクロマトグラフィーで分離精製し、N−(キノリン−2−イル−メチル)−(S)−ヒスチジンメチルエステル(qmH−Me)を得た。
【0045】
B.配位子qmHを有する錯体の製造
水酸化バリウム(1.5 mmol)の水溶液に上記で得たエステル化合物(qmH−Me;3.0 mmol)を加えた。その溶液に、酸化硫酸バナジウム(IV)(3.0 mmol)の水溶液を滴下し、続いて過塩素酸バリウム(1.5 mmol)水溶液を加えた。沈殿をロ別後、ロ液を濃縮し残査をSephadex LH−20力ラムクロマトグラフィ一で精製し、さらに熱水より再結晶により、青白色の粉末結晶として([VO(qmH)(ClO)]を得た。
【0046】
実施例5
A.配位子pm−EtHの製造
実施例1で得たpmH−Me・3HCl(10 mmol)とナトリウムメトキシド(20 mmol)のメタノール溶液に、氷冷下アセトアルデヒド(30mmol)を加えた。2時間後、その溶液に水素化シアノホウ素ナトリウム(30 mmol)を加え一晩撹拌放置した。生じた沈殿を濾別し、ロ液を減圧濃縮した。残渣をクロロホルムに溶かし、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をセファデックス(Sephadex) LH−20カラムクロマトグラフィーで分離精製し、N−(ピリジン−2−イル−メチル)−N−エチル−(S)−ヒスチジンメチルエステル(pm−EtH−Me)を得た。
【0047】
B.配位子pm−EtHを有する錯体の製造
上記で得られたエステル化合物(2.0 mmol)の水溶液に、水酸化バリウム(1.0 mmol)水溶液を加え一晩撹拌した。次に酸化硫酸バナジウム(IV)(2.0 mmol)水溶液を滴下し、1時間後に過塩素酸バリウム(1.0 mmol)水溶液を加えて1時間撹拌した。沈殿をロ別後、ロ液を濃縮し熱水より青色の粉末結晶として([VO(pm−EtH)]ClOを得た。
【0048】
実施例6
A.配位子pmDの製造
文献(L.A.Meiske,R.A.Angelici,Inorg.Chem.,9,2028(1980))の方法に従い、N−(ピリジン−2−イル−メチル)−Lアスパラギン酸リチウム塩(pmD−(Li))を得た。
【0049】
B.配位子pmDを有する錯体の製造
酸化硫酸バナジウム(5.0 mmol)水溶液に、塩化バリウム(5.0 mmol)を加えた。沈殿した硫酸バリウムを濾別後、ロ液にpmD−(Li)(5 mmol)の水溶液を加え、30分後、溶媒を留去した。エタノールで処理することにより粗生成物を得た。水/エタノールより再沈殿して、[VO(pmD)(HO)]を得た。
【0050】
実施例7 (配位子pmDおよびその配位子を有する錯体の製造)
アスパラギン酸ジメチルエステル・1塩酸塩(20 mmol)のメタノール溶液に、氷冷下、2−ピリジンカルボキシアルデヒド(20 mmol)を加え、2時間撹拌後、その溶液に水素化シアノホウ素ナトリウム(20 mmol)を加え一晩撹拌放置した。生じた沈殿を濾別後、ロ液を減圧下濃縮した。残査をジクロロメタンに溶かし炭酸ナトリウム水溶液で分液処理し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残査をメタノールに溶かし、氷冷下4N−塩化水素/酢酸エチル溶液を加えた。生じた沈殿を熱エタノール、およびジクロロメタンで洗浄して、pmD−(Me)・2HClを得た。
pmD−(Me)・2HCl(3.8 mmol)をNaCO水溶液で中和後、水酸化バリウム水溶液(3.8 mmol)を加え一晩撹拌した。酸化硫酸バナジウム(IV)(3.8 mmol)水溶液を滴下後、3時間撹拌した。沈殿を濾別後、ロ液を濃縮し、青紫色の粉末結晶としてN−(ピリジン−2−イル−メチル)−(S)−アスパラギン酸バナジル錯体[VO(pmD)(HO)])を得た。
【0051】
以上の実施例1〜7で製造されたバナジウム(IV)錯体およぴこれらの実施例と同様な方法で得られたバナジル錯体の物性値を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003942740
【0053】
表1中の配位子の略号は次のとおりである。
「pmH」:N−(ピリジン−2−イル−メチル)ヒスチジン、
「pm2H」:N,N−ビス(ピリジン−2−イル−メチル)ヒスチジン、
「pm2H−Me」:N,N−ビス(ピリジン−2−イル−メチル)ヒスチジンメチルエステル、
「imH」:N−(イミダゾール−4−イル−メチル)ヒスチジン、
「6−Me−pmH」:N−(6−メチル−ピリジン−2−イル−メチル)ヒスチジン、
「3−Me−pmH」:N−(3−メチル−ピリジン−2−イル−メチル)ヒスチジン、
「4−Me−pmH」:N−(4−メチル−ピリジン−2−イル−メチル)ヒスチジン、
「qmH」:N−(キノリン−2−イル−メチル)ヒスチジン、
「pm−EtH」:N−(ピリジン−2−イル−メチル)−N−エチル−ヒスチジン、
「im−EtH」:N−(イミダゾール−4−イル−メチル)−N−エチル−ヒスチジン、
【0054】
「pmD」:N−(ピリジン−2−イル−メチル)アスパラギン酸、
「imD」:N−(イミダゾール−4−イル−メチル)アスパラギン酸、
「pm−EtD」:N−(ピリジン−2−イル−メチル)−N−エチル−アスパラギン酸、
【0055】
「pm2V」:N,N−ビス(ピリジン−2−イル−メチル)バリン、
「pm2S」:N,N−ビス(ピリジン−2−イル−メチル)セリン、
【0056】
本発明のオキソバナジウム錯体(IV)の薬理データを以下に示す。
薬理試験例1
Biol.Pharm、Bull.,18(5),719−725(1995)に記載の方法に従い、以下の試験を行った。
【0057】
ラット脂肪細胞の分離
体重200gの雄Wistarラットをエーテル麻酔下に断頭により殺し、ロッドベルの方法(J.Biol.Chem.,239,375(1964))に従い、副睾丸周辺の脂肪組織から脂肪細胞を分離した。脂肪組織をはさみで切り、mlあたり20mg牛血清アルブミン(BSA)及び2mgコラナーゼを含むKRBバッファー(120 mM NaCl、1.27 mM CaCl、1.2 mM MgSO、4.75 mM KCl、1.2 mM KHPO、及び24 mM NaHCO;pH=7.4)中、37℃で1時間消化した。脂肪細胞をナイロンメッシュ(250 μm)を通して濾過することにより未消化組織より分離し、コラゲナーゼを含まない上記パッファーで3回洗浄し、2.5×10細胞/mlに調製した。
【0058】
オキソバナジウム(IV)錯体のラット脂肪細胞に対する効果
シリコン処理されたバイアル中の、上記で分離された脂肪細胞(2.5×10細胞/ml)を、各種濃度(10−4、5×10−4、10)のVOSO、VO(pmH)錯体を20mgBSA/mlを含む1 mlのKRBバッファー中で37℃、0.5時間プレインキュベートした。次いで、10−5 Mのエピネフリンを反応混合物に加え、得られた溶液を37℃で3時間インキュべ一トした。反応を氷冷により停止し、混合物を1200 rpmで10分間遠心分離した。細胞外溶液について、遊離脂肪酸(FFA)レベルをNEFAキットを用いて測定し、IC50を測定した。
結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
Figure 0003942740
【0060】
上記表2に示されるように、本発明の錯体は、VOSOと比較してラット脂肪細胞からの脂肪酸の遊離を顕著に抑制することができ、糖尿病治療薬として優れていることが明らかになった。
【0061】
【発明の効果】
本発明のオキソバナジウム(IV)錯体は、安定性が高く脂溶性のインスリン様作用および降圧作用を有する。したがって、本発明のオキソバナジウム(IV)錯体は、耐糖能障害、糖尿病(II型糖尿病など)、インスリン抵抗性症候群(インスリン受容体異常症など)、多嚢胞性卵巣症候群、高脂質血症、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患(狭心症、心不全など)、高血糖症、もしくは高血圧症、または狭心症、高血圧、肺高血圧、うっ血性心不全、糖尿病合併症(例えば糖尿病性壊そ、糖尿病性関節症、糖尿病性糸球体硬化症、糖尿病性皮膚障害、糠尿病性神経障害、糖尿病性自内障、糖尿病性網膜症など)などの予防・治療剤として用いられる医薬として有用である。

Claims (5)

  1. N−置換アミノ酸誘導体を配位子として含有してなるオキソバナジウム(IV)錯体であって、
    N−置換アミノ酸誘導体が次式(I):
    Figure 0003942740
    (式中、Rは、ピリジン−2−イル−メチル、(3−メチル−ピリジン−2−イル)メチルまたはキノリン−2−イル−メチルであり、
    は、水素またはピリジン−2−イル−メチルであり、
    は、イミダゾール−4−イル−メチル基またはカルボキシメチルであり、
    Zは、低級アルコキシ基、低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、または水酸基ある)
    で示される配位子である、オキソバナジウム(IV)錯体。
  2. 請求項1に記載のオキソバナジウム(IV)錯体を含有する医薬組成物。
  3. インスリン様作用を有する請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 請求項1に記載のオキソバナジウム(IV)錯体を含有する、糖尿病又は高血圧症を治療する為の医薬組成物。
  5. さらに製薬上許容される担体を含有してなる請求項2〜4のいずれかにに記載の医薬組成物。
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