JP3942484B2 - リムホイールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤを取り付ける車両用のリムホイールの製造方法に関する。詳しくは、高い操縦安定性を確保しつつ車両に伝達される振動を抑制し、乗り心地の向上、車内騒音の低減等を実現することができるリムホイールの、高生産性でかつ溶接欠陥などによる故障原因の低減を図った製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の操縦安定性と乗り心地性、静粛性を高次元で両立する高機能化が、特に高級車領域で進められている。かかる要請の下、車内騒音に対して、その大きな要因であるタイヤ空洞共鳴音を抑えるべく、副気室をリムホイール内に設け、この副気室と連通孔の寸法を調整するなどによりヘルムホルツ共鳴吸音器として作用させる技術が実開平1―39103号、実開平1−90601号、特開平1−115701号、特開平1−115702号、欧州特許0936083号等に開示されている。
【0003】
しかしながら、ヘルムホルツ共鳴吸音器の作用を利用する上記公知文献記載の技術は、必ずしも充分な改良効果を有しておらず、あるいはいくつかの問題点を有しており、未だ実用化に至っていないのが現状であった。
【0004】
かかる状況下において、リムと該リムの径方向外側に配置される複数の蓋部材との間に形成され、周方向に間隔をあけて設けられた複数の側壁により分割された複数の副気室と、この副気室とタイヤ主気室とを連通させる連通部とによりヘルムホルツ共鳴吸音器を構成することで、自動車の大きな要求性能である乗り心地や静粛性が有意に向上し、実用的なリムホイールが得られることが見出され、先に、本出願人により特許出願がなされた(特開2002−079802号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開2002−079802号公報記載のリムホイールにおいては、それまでのヘルムホルツ共鳴吸音器を構成する技術に比し、静粛性、操縦安定性および振動乗り心地性において大幅に優れており、十分に実用に供し得るものである。よって、同公報に開示されているような副気室を備えたリムホイールを確実にかつ高い生産性にて製造することが求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、かかる求めに応じ、高い操縦安定性を確保しつつ車両に伝達される振動を抑制し、乗り心地性の向上、車内騒音の低減等を実現でき、溶接欠陥などによる故障原因の低減したリムホイールを高い生産性にて製造することのできる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成とすることにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記に示す通りである。
【0008】
<1>リムと該リムの径方向外側に配置された蓋部材との間に形成され、周方向両端に設けられた一対の側壁により形成された副気室であって、周方向に等間隔で配置された複数の該副気室と、タイヤ主気室と前記副気室とを連通させる、前記蓋部材に穿設された連通部とを備え、前記副気室と前記連通部とでヘルムホルツ共鳴吸音器を構成するリムホイールを製造するにあたり、
(イ)リムホイール鋳造時に、前記副気室の蓋部材として縦壁を成型する工程と、
(ロ)前記縦壁をロールフォーミングにより径方向外側に引き伸ばす工程と、
(ハ)引き伸ばされた前記縦壁を折り曲げ、蓋部材として上部壁を形成する工程と、
(ニ)前記上部壁に前記連通部を穿設する工程と、
を包含することを特徴とするリムホイールの製造方法である。
【0009】
<2>前記<1>のリムホイールの製造方法において、前記工程(イ)において、リムホイール鋳造時に前記縦壁とともに側壁を成型する工程を含むリムホイールの製造方法である。
【0010】
<3>前記<1>のリムホイールの製造方法において、前記工程(ハ)の前に、前記リム外周面に側壁を溶接または接着する工程を含むリムホイールの製造方法である。
【0011】
<4>前記<1>〜<3>のいずれかのリムホイールの製造方法において、前記上部壁の端部をリムホイールのビードシートに溶接する工程を含むリムホイールの製造方法である。
【0012】
<5>前記<1>〜<4>のいずれかのリムホイールの製造方法において、前記副気室を3室以上設けるリムホイールの製造方法である。
【0013】
<6>前記<1>〜<5>のいずれかのリムホイールの製造方法において、前記一対の側壁間の周方向長さの略中央における前記上部壁に連通部を穿設するリムホイールの製造方法である。
【0014】
前記<1>の本発明の方法により製造されるリムホイールは、形成された副気室がタイヤ主気室との連通部を有してヘルムホルツ共鳴吸音器として機能する。
副気室の体積、連通部の断面積と長さといった各寸法は、下記式、
f0:共鳴周波数(Hz)
V:副気室体積(cm3)
S:連通部総断面積(cm2)
L:連通部長さ(cm)
N:連通部個数/気室
R:ホイール径(inch)
に従い設定することにより、効果的な空洞共鳴音低減を達成することができる。
即ち、最初にリム径を決め、その後、副気室体積V(cm3)、連通部総断面積S(cm2)、連通部長さL(cm)、連通部個数Nを決定することにより、効果的にタイヤ空洞共鳴音を低減することができるリムホイールが得られる。ここで、上記式の左項は、ヘルムホルツ共鳴周波数を表している。タイヤ主気室内の空洞共鳴周波数は、タイヤとリムの周長によって決まり、径の小さいタイヤでは、この周波数は高くなり、径の大きなタイヤでは低くなる。上記式の右項は、タイヤサイズ、リム径に応じた最適な設定周波数範囲を求めたものである。
【0015】
また、副気室を作る手法として、これまで別部材として溶接等により結合する方法が考えられ実施されているが、前記<1>記載の本発明の製造方法では、副気室の蓋部材形成用の縦壁を鋳造時に予めリム外周面に設け、ロールフォーミングにより副気室となる形に絞り込むものであるため、溶接などの結合作業を省くことができる。よって、溶接欠陥などによる故障を防止することができる。
【0016】
前記<2>の本発明の製造方法では、リムホイール鋳造時に前記縦壁とともに側壁を成型するため、側壁設置のための工程を省くことができ、また溶接のみにより側壁を設置する場合に比べ、溶接欠陥などによる故障を防止することができる。
【0017】
前記<3>の本発明の製造方法では、側壁を溶接により形成するものであり、このように形成された副気室においても、上記式に従い、効果的な空洞共鳴音低減を達成することができる。
【0018】
前記<4>の本発明の製造方法では、前記上部壁の端部をリムホイールのビードシートに溶接することにより気密性の高い副気室が得られ、上記式に従い、効果的な空洞共鳴音低減を達成することができる。
【0019】
前記<5>の本発明の製造方法では、副気室が3個以上の密閉側壁によって周方向に3気室以上に形成されていることによって、共鳴吸音遅れが生じることなく、タイヤ空洞共鳴音を効果的に低減することができる。好ましくは、副気室数は4室以上であり、より好ましくは5室以上である。
【0020】
前記<6>の本発明の製造方法により連通部を穿設することで、上記式に従い、効果的な空洞共鳴音低減を達成することができる。なお、連通部は各副気室に対し1個に限定されるものではなく、連通部の径や数を調整するだけで、共鳴周波数設定を変えることができることから、連通部の数、位置および径はタイヤサイズに応じ適宜定めればよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図1に従い、本発明の一実施形態に係るアルミリムホイール1の製造方法について説明する。
【0022】
先ず、最初の製造工程(イ)においては、リムホイール1の鋳造時に、リム2の径方向外側に配置される蓋部材として、図1の(a)に示すようにリム2の外周面上周方向に縦壁3を成型する。リムホイール1の鋳造時に縦壁3をリム2と一体的に成型する場合、従来の鋳造法をそのまま適用することができる。
【0023】
なお、図示する好適例においては、リムホイール本体には、タイヤ装着時にタイヤビード部を落とし込むための凹状のウエル部7が形成されている。このウエル部7の底部は、ビードシート4よりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0024】
ウエル部7は、適宜、軸方向に幅広または径方向内側に深い構造とすることができる。ここで、径方向内側に深い構造とは、ビード部とホイールベース部の径差が大きいという意味で、ブレーキスペースに余裕がある場合は、ホイールベース部の径を小さくすることで径差を大きくできるが、余裕がない場合はビード部の径を大きくして、タイヤ高さを小さくする(タイヤ外径を同じにする)、いわゆるインチアップ手法により径差を大きくすることができる。
【0025】
ウエル部7を軸方向に幅広にすることに対しては、実質的に大きな制約はないため、ウエル部7を幅広化しつつ、副気室6(図2参照)の所望体積を得ることはできるが、より大きな体積を確保できるという観点からは、径方向内側に深くした方が好ましい。
【0026】
即ち、リム2にウエル部7を形成しつつ、所望体積の副気室6を形成するには、縦壁3をリム2の軸方向略中央に配置することが好ましい。これにより、従来通りタイヤをリムに組み付けることができる。
【0027】
次に、工程(ロ)においては、縦壁3を、図1(a)において破線で示すように、ロールフォーミングにより径方向外側に引き伸ばす。ロールフォーミングの装置(図示せず)自体は特殊なものである必要はなく、縦壁3を径方向外側に絞り込み、引き伸ばすことができるものであれば、その条件とともに特に制限されるべきものではない。
【0028】
なお、縦壁3の径方向の長さは、その上端部が次工程において形成された上部壁5がリム2の裏側(矢印IN方向側)のビードシート4に形成された段部4Aに係合できるように、適宜定めればよい。
【0029】
次に、工程(ハ)においては、図1(b)に示すように、引き伸ばされた縦壁3を折り曲げ、蓋部材として上部壁5を形成する。図示する例では略直角に折り曲げているが、湾曲させてもよく、いずれにしても副気室6として所望体積を確保できればよい。上部壁5の端部はリムホイールに溶接することにより気密性の高い副気室6が得られるが、気密性が維持できれば特に溶接をしなくともよく、また、溶接以外の方法、例えば、接着により固着してもよい。接着に用いる接着剤としては、例えば、変性アクリレート系接着剤(例えば、電気化学工業(株)製、商品名ハードロック等)などを用いることができる。
【0030】
次に、工程(ニ)においては、上部壁5に連通部8を穿設する。連通部8の穿設手段は特に制限されるものではなく、ドリル等により所望の径に穿設する。図示する好適例では、効果的な空洞共鳴音低減を達成する上で好ましいとの観点から、副気室6の周方向長さの略中央の上部壁5に連通部8が穿設されている。
【0031】
図1に示す工程図には示されていないが、副気室6の周方向両端に形成される側壁9は、リムホイール鋳造時に縦壁3とともに成型しておくことが好ましい。
これにより、側壁設置のための工程を省くことができ、また溶接のみにより側壁を設置する場合に比べ、溶接欠陥などによる故障を防止することができる。
【0032】
上記工程に従い製造されたリムホイール1を図2〜4に示す。図2〜4に示すように、副気室6は、リム2と、リム2の外周面上に周方向に形成された縦壁3と、縦壁3の径方向外端部から一方のビードシート4(矢印IN方向側)との間に延在する上部壁5と、この上部壁5の周方向両端部に設けられた一対の側壁9とにより形成されている。本実施形態では周方向に等間隔に5箇所の側壁9を設けることで、夫々隣接する副気室間で側壁9を共有して、5室の副気室6が配置されている。
【0033】
このリムホイール1においては、タイヤ10がこのリムホイール1のリム2に装着されることにより、タイヤ10とリム2との間に密閉されたタイヤ主気室11が形成される。各副気室6に対して1個づつ連通部8が形成されており、副気室6は連通部8を介してタイヤ主気室11に連通されている。本実施形態では、この副気室6と連通部8とでヘルムホルツ共鳴吸音器が構成されている。
【0034】
ここで、リムホイール1にタイヤ10を組立てた場合、前記式を満足するように、各部の設定を行う。タイヤ主気室内の空洞共鳴周波数は、タイヤとリムの周長によって決まり、通常の乗用車用タイヤでは、250Hz近傍が空洞共鳴周波数である。軽自動車用のタイヤではこの周波数が高周波になり、トラック用の大きなタイヤでは低周波になる。
【0035】
なお、一つのリムホイール1に対する副気室6の総内容積は、タイヤ主気室11の体積の2%以上25%以下であることが好ましく、中でも3%以上15%以下が更に好ましい。
【0036】
本実施形態のリムホイール(6JJ15)1にタイヤ(195/55R15)10を装着したときのタイヤ主気室11の体積は約22000cm3であり、5つの副気室6の総体積は1500cm3(300cm3×5個)であり、5つの副気室6の総体積はタイヤ主気室11の総体積の6.9%である。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
従来のリムホイールとタイヤとの組み合わせ品(比較例)と、本発明の適用されたリムホイールとタイヤとの組み合わせ品(実施例)とを試作し、ロードノイズ評価ドラム試験を実施した。
【0038】
コントロール品:6JJ15の通常のアルミホイールに195/55R15サイズの通常の乗用車用タイヤを装着したものである。
【0039】
実施例:図2〜4に示す構造のリムホイール(側壁数5個)にコントロール品と同様の乗用車用タイヤを装着したものである。
【0040】
タイヤ主気室の体積約22000cm3に対し、副気室の総体積は1500cm3(タイヤ主気室の6.9%)であり、連通孔の径は0.8cm、連通孔の長さは0.2cmである。
【0041】
それぞれの実施例と比較例の共鳴周波数は、上記式に従い、それぞれ約250Hzとした。ロードノイズドラムは直径3mで、表面に一般的な道路形状を模したアスファルトが貼り付けてある。タイヤを荷重3920N(400kgf)でドラムに押し付け、速度60km/hで走行させた際の、各方向のドラム軸力を測定し、周波数解析を行った。
【0042】
上下方向の軸力の周波数解析を行った結果、実施例では、比較例に比し空洞共鳴ピークが約8.7dB低減した。
【0043】
また、実施例および比較例のタイヤを乗用車に装着し、テストコースにて、テストドライバー二人による実車走行を行い、操縦安定性試験および振動乗り心地試験を実施した。
【0044】
操縦安定性に関しては、駆動性、制動性、ハンドル応答性、操縦時のコントロール性を総合評価し、振動乗り心地試験に関しては、良路走行時振動、悪路走行時振動、段差などの特殊路走行時振動、車内騒音を総合評価し、コントロール(比較例)を100とした時の指数で実施例のタイヤを評価した。指数の数値が大きいほど良好である。実施例の結果は、操縦安定性が110、振動乗り心地性が115、車内騒音が155であった。
【0045】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、高い操縦安定性を確保しつつ車両に伝達される振動を抑制し、乗り心地性の向上、車内騒音の低減等を実現でき、溶接欠陥などによる故障原因の低減したリムホイールを高い生産性にて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るリムホイールの製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明により製造したリムホイールの要部を示す回転軸に沿った断面図である。
【図3】図2に示すリムホイールの軸直角方向から見た側面図である。
【図4】図2に示すA−A線に沿う軸直角断面図である。
【符号の説明】
1 リムホイール
2 リム
3 縦壁
4 ビードシート
5 上部壁
6 副気室
7 ウエル部
8 連通部
9 側壁
10 タイヤ
11 主気室
Claims (6)
- リムと該リムの径方向外側に配置された蓋部材との間に形成され、周方向両端に設けられた一対の側壁により形成された副気室であって、周方向に等間隔で配置された複数の該副気室と、タイヤ主気室と前記副気室とを連通させる、前記蓋部材に穿設された連通部とを備え、前記副気室と前記連通部とでヘルムホルツ共鳴吸音器を構成するリムホイールを製造するにあたり、
(イ)リムホイール鋳造時に、前記副気室の蓋部材として縦壁を成型する工程と、
(ロ)前記縦壁をロールフォーミングにより径方向外側に引き伸ばす工程と、
(ハ)引き伸ばされた前記縦壁を折り曲げ、蓋部材として上部壁を形成する工程と、
(ニ)前記上部壁に前記連通部を穿設する工程と、
を包含することを特徴とするリムホイールの製造方法。 - 前記工程(イ)において、リムホイール鋳造時に前記縦壁とともに側壁を成型する工程を含む請求項1記載のリムホイールの製造方法。
- 前記工程(ハ)の前に、前記リム外周面に側壁を溶接または接着する工程を含む請求項1記載のリムホイールの製造方法。
- 前記上部壁の端部をリムホイールのビードシートに溶接する工程を含む請求項1〜3のうちいずれか一項記載のリムホイールの製造方法。
- 前記副気室を3室以上設ける請求項1〜4のうちいずれか一項記載のリムホイールの製造方法。
- 前記一対の側壁間の周方向長さの略中央における前記上部壁に連通部を穿設する請求項1〜5のうちいずれか一項記載のリムホイールの製造方法。
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