JP3941914B2 - ワーク加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具を回転自在に保持する主軸を上下方向に移動させてワークを加工するワーク加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
工具を回転自在に保持する主軸を上下方向に移動させる手段としては、主軸に螺合させたボールねじを回転させるものや、リニアモータで移動させるもの等がある。
【0003】
ボールねじにより主軸を移動させる場合、ねじが回転しない限り主軸は移動しない。したがって、ボールねじを駆動する手段の電源を切断すると、主軸はその時の位置に停止する。一方、リニアモータにより主軸を移動させる場合、リニアモータ自体の保持力により主軸を保持する。このため、リニアモータの電源が切断されると、主軸は重力により落下する。そこで、リニアモータを用いる場合には、落下防止機構を設けている。
【0004】
図2は、従来のワーク加工装置(以下、第1の従来技術と称す)の主軸部の側面図である。同図において、主軸1は工具2を回転自在に支持している。ハウジング3は主軸1を保持し、主軸保持体4に固定された直線案内装置5により、図の上下方向に移動自在である。リニアモータ8は、コイル6とマグネット7とから構成されている。そして、コイル6はハウジング3の背面に固定され、電圧Mの電源(以下、電源Mという。)に接続されている。マグネット7はコイル6に対向するようにして主軸保持体4に固定されている。
【0005】
主軸保持体4の上部にはシリンダ装置10が固定されている。シリンダ装置10のピストンロッド10aは主軸保持体4に形成された穴4bおよび穴4bの下面に配置された管状のクッション11を貫通してハウジング3の上面に連結されている。
【0006】
常時閉の2方向の電磁弁12の一方の接続口は配管13によりシリンダ装置10内のチャンバAに、他方向の接続口は配管14によりシリンダ装置10内のチャンバBにそれぞれ接続されている。電磁弁12のコイル12aは電圧Sの電源(以下、電源Sという。)に接続されている。チャンバA、Bと配管13、14および電磁弁12には油15が充填されている。ワーク16はテーブル17に固定されている。
【0007】
図3は、電源M、Sに対する各電気部品の配線図である。図3(a)において、電源Mには、コイル6と電源M用のスイッチ20が直列に接続され、リレー21のコイルがコイル6と並列に接続されている。図3(b)において、電源Sには、コイル12aとリレー21の接点21aが直列に接続されている。電源Sは常時オンである。
【0008】
以上の構成において、スイッチ20を閉じると、接点21aが閉じて電磁弁12内の流路が開く。この結果、油15がチャンバA、配管13、配管14及びチャンバBを自由に循環し、実質的にシリンダ装置12が無い場合と同じになる。したがって、コイル6を制御することによりハウジング3すなわち主軸1を上昇、下降あるいは所望の位置に停止させることができる。
【0009】
スイッチ20を開くと、接点21aが開き、ばね12bにより電磁弁12内の流路が遮断される。このため、油21が移動できなくなり、ピストンロッド10aが停止する結果、ハウジング3はスイッチ20が開かれた位置で停止する。したがって、停電時等により電源Mあるいは電源Sへの電力供給が絶たれた場合にも、ハウジング3の落下によるハウジング3や工具2の破損を防止できる。
【0010】
図4は従来のワーク加工装置の主軸部側面図である。図4に示すように、上記第1の従来技術におけるシリンダ装置10を設ける代わりに、ハウジング3の下方にばね22を配置したもの(以下、第2の従来技術と称す)もある。第2の従来技術の場合、コイル6への電力供給を絶つと、ハウジング3は重力により落下するが、ばね22のばね定数を適切に選択することにより、ハウジング3あるいは工具2の破損を防止できる。この第2の従来技術の場合、シリンダ装置を必要としないから、上記第1の従来技術に比べて装置構成を簡単にすることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記第1の従来技術の場合、ピストンロッド10aはハウジング3の移動に伴って移動する。例えば、ワーク加工装置がプリント基板穴明機である場合、ハウジング3の移動回数は300〜500回/分であり、かつ16〜24時間/日稼働する。このため、シリンダ装置10内のシール類(ピストン10bの図示を省略するOリング等)が短時間で摩耗し、保守点検期間を短くする必要があった。
【0012】
また、上記第2の従来技術の場合、加工時、ばね22の力に抗してハウジング3を下降させなければならず、リニアモータ8の推力損失が大きかった。また、装置の小型、軽量化、低価格化が困難であった。
【0013】
本発明の目的は、上記各従来技術における課題を解決し、保守点検期間を長くできると共に、リニアモータの推力損失を小さくすることができるワーク加工装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のうち請求項1は、例えば図1に示すように、主軸保持体(4)と、前記主軸保持体(4)に昇降可能に支持された主軸ユニット(70)と、前記主軸保持体(4)と前記主軸ユニット(70)との間に介在して該主軸ユニット(70)を前記主軸保持体(4)に対して昇降駆動・停止保持自在なリニアモータ(8)と、を備えたワーク加工装置において、前記主軸ユニット(70)に固設した被保持部材(71)と、前記被保持部材(71)を下方より接離可能に当接して支え可能な支え部(32b)を有し、前記支え部(32b)を上方に突出する支え位置と下方に退避する退避位置とに切換え自在な移動手段(32)と、前記リニアモータ(8)の通電時に前記支え部(32b)を退避位置とし、前記リニアモータ(8)の非通電時に前記支え部(32b)を支え位置に移動させるように前記移動手段(32)を制御する制御部(33)と、を備える、ことを特徴とするワーク加工装置にある。
【0015】
また、本発明のうち請求項2は、前記移動手段は、シリンダ(32a)と、該シリンダ(32a)内を上下のチャンバ(A,B)に仕切るピストン(32c)とを有するエアシリンダ装置(32)であり、前記支え部(32b)は前記ピストン(32c)に設けられ、前記制御部は、前記下のチャンバ(B)とエア供給手段(35)及び前記上のチャンバ(A)とエア解放手段(38)をそれぞれ連通させるピストン上昇位置に付勢駆動する付勢駆動手段(12b)と、前記下のチャンバ(B)とエア解放手段(38)及び前記上のチャンバ(A)とエア供給手段(35)をそれぞれ連通させるピストン下降位置に電磁駆動する電磁駆動手段(12a)とを有する電磁弁装置(33)である、ことを特徴とする請求項1記載のワーク加工装置にある。
【0016】
[作用]
リニアモータ(8)に供給される電源が切断されると、支え部(32b)を上方に付勢させて主軸ユニット(70)を下方より付勢して支え、主軸(1)を予め定める位置に保持して落下を防止する。
【0017】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るワーク加工装置の主軸部側面図である。本実施形態で説明するワーク加工装置は「従来の技術」で説明したワーク加工装置(図2参照)の一部を改良したものであるので、同じものまたは同一機能のものは同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
主軸保持体4に昇降可能に支持されたハウジング3及び主軸1からなる主軸ユニット70には、図1に示すように、ロッド30及びアーム31からなる被保持部材71が固設されている。即ち、被保持部材71のハウジング3の上面においてロッド30が連結されており、ロッド30の他方(上側)は主軸保持体4の上方に突出し、その端部には略水平なアーム31が連結されている。そして、この被保持部材71を下方より付勢支えすることのできる付勢支え手段75が設けられている。
【0020】
付勢支え手段75は、主軸保持体4の上部でアーム31の下方にエアシリンダ装置32を有している。エアシリンダ装置32は、主軸保持体4に固定されたシリンダ32aと、シリンダ32a内を上下のチャンバA,Bに仕切るピストン32cと、ピストン32cに設けられたピストンロッド32b等から構成されている。ピストンロッド32bはアーム31に対向しており、ピストン32cがシリンダ下端のピストン下降位置にある場合におけるピストンロッド32bの上端と、主軸ユニット70の下降により最も下降した状態のアーム31の下端との間には僅かな隙間が形成される。
【0021】
4ポートの電磁弁33(電磁弁装置)の供給側接続口iは、配管34(接続管)により圧縮空気供給源35(エア供給手段)に接続されている。また、電磁弁33の出口側の一方の接続口s1は、配管36(接続管)によりシリンダ装置32内のチャンバBに、他方の接続口s2は配管37(接続管)によりシリンダ装置32内のチャンバAにそれぞれ接続されている。また、排出口oには消音器38(エア解放手段)が接続されている。
【0022】
図示しない制御手段は、電源Sがオンの時に、コイル12a(電磁駆動手段)を電磁駆動して配管34と配管37を連通させる。また、電源Sがオフの時に前記制御手段はコイル12aを駆動させないので、ばね12bにより配管34と配管36を連通する。なお、電源M、Sに対する各電気部品の配線図は、上記従来の場合と同じ(図3参照)である。
【0023】
次に、本実施形態の動作を説明する。スイッチ20(図3参照)が閉の場合、コイル12aに電力が供給され、圧縮空気はチャンバAに供給される。この結果、ピストン32cがピストン下降位置に位置決めされ、ピストンロッド32bが下降するので、リニアモータ8が稼動している時にアーム31とピストンロッド32bが接触することはない。
【0024】
スイッチ20(図3参照)が開になると、リニアモータ8の保持力が無くなり、ハウジング3は重力により落下する。一方、コイル12aの電源が切断されるため、ばね12bにより電磁弁33は配管34と配管36を連通させる。この結果、圧縮空気がチャンバBに流入してピストン32cがピストン上昇位置に付勢駆動されピストンロッド32bが上昇するので、アーム31はピストンロッド32bにより上方に付勢して支えられる。
【0025】
以上説明したように、スイッチ20が閉の場合、ピストンロッド32bは下側の移動端にあり、ハウジング3の移動(下降)を妨げないから、リニアモータ8の推力損失は発生しない。
【0026】
また、シリンダ装置32はスイッチ20あるいは停電により電源M、Sが遮断された時のみピストンロッド32bを上昇させ、その他の場合は移動させないから、ピストンロッド32bの移動回数は従来の1/1,000ないし1/100,000に減少する。
【0027】
なお、シリンダ装置32の動作流体としては、圧縮空気に代えて他の気体、または、液体にしてもよい。また当該ワーク加工装置は、マシニングセンタ、フライス盤、ボール盤等のほか、レーザ加工機等にも適用可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1によれば、リニアモータを用いて主軸を上下させるワーク加工装置において、リニアモータの電源が切断された時だけ支え部を上方に付勢駆動させ、通常は付勢解除させる。従って、移動手段の可動部分における動作回数は極力少なくなっているので、摩耗等が軽減され耐久性や信頼性及び保守性が向上する。つまり保守点検期間を長くできる。
更に、リニアモータの通電時には被保持部材は動作抵抗を受けないので、リニアモータの推力損失を小さくすることができる。その結果、リニアモータの小型・軽量化および低価格化が可能となる。
【0029】
また、本発明のうち請求項2によれば、移動手段はエアシリンダ装置により、制御部は電磁弁装置により簡単に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るワーク加工装置の主軸部側面図である。
【図2】従来のワーク加工装置の主軸部側面図である。
【図3】従来のワーク加工装置の電源M、Sに対する各電気部品の配線図である。
【図4】従来のワーク加工装置の主軸部側面図である。
【符号の説明】
1 主軸
3 ハウジング
8 リニアモータ
30 ロッド
31 アーム
32 エアシリンダ装置
32b ピストンロッド
Claims (2)
- 主軸保持体と、前記主軸保持体に昇降可能に支持された主軸ユニットと、前記主軸保持体と前記主軸ユニットとの間に介在して該主軸ユニットを前記主軸保持体に対して昇降駆動・停止保持自在なリニアモータと、を備えたワーク加工装置において、
前記主軸ユニットに固設した被保持部材と、
前記被保持部材を下方より接離可能に当接して支え可能な支え部を有し、前記支え部を上方に突出する支え位置と下方に退避する退避位置とに切換え自在な移動手段と、
前記リニアモータの通電時に前記支え部を退避位置とし、前記リニアモータの非通電時に前記支え部を支え位置に移動させるように前記移動手段を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするワーク加工装置。 - 前記移動手段は、シリンダと、該シリンダ内を上下のチャンバに仕切るピストンとを有するエアシリンダ装置であり、
前記支え部は前記ピストンに設けられ、
前記制御部は、前記下のチャンバとエア供給手段及び前記上のチャンバとエア解放手段をそれぞれ連通させるピストン上昇位置に付勢駆動する付勢駆動手段と、前記下のチャンバとエア解放手段及び前記上のチャンバとエア供給手段をそれぞれ連通させるピストン下降位置に電磁駆動する電磁駆動手段とを有する電磁弁装置である、
ことを特徴とする請求項1記載のワーク加工装置。
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