JP3941858B2 - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
硬化性樹脂組成物は、各種基材に塗工してその表面に硬化した被膜を形成することができることから、塗料、プライマー及びアンカー剤等の表面処理剤や、接着剤、粘着剤、印刷インキ等の種々の用途に用いられている。このような硬化性樹脂組成物に含有される重合体に関する技術として、硬化した被膜が各種基材への密着性や物性に優れたものとなるように、アミン構造を導入したり、硬化させる手段として結合を形成し得る多価金属化合物を利用したりすることが検討されている。このような技術としては、例えば、下記に挙げるようなものがある。
【0003】
特開平10−140059号公報には、少なくとも水溶性染料、水性媒体、アンモニウム・ジルコニウム重合体塩並びに窒素原子を有する重合体を含有する記録液に関し、実施例に、窒素原子を有する重合体として4級アミン構造を有するN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの重合体を用いることが開示されている。すなわち、この公報では、4級アミン構造を有する重合体とアンモニウム・ジルコニウム重合体塩とを用いることが開示されている。
【0004】
特開平10−60352号公報には、顔料、高分子分散剤、特定分子量のポリエチレンイミン、水溶性溶剤及び水を含む水系顔料インクが開示されている。この公報では、アミン構造を有する重合体としてポリエチレンイミンを用いることが開示されているが、結合を形成し得る金属化合物については開示されていない。
【0005】
特開平5−311099号公報には、ポリアミド変性エポキシ−ポリアミン化合物と、アルキル錫エステル化合物と、ビスマス化合物及びジルコニウム化合物の少なくとも1種とを含有するカチオン電着用組成物が開示されている。また、特開平9−58115号公報には、シート状支持体がポリオレフィン樹脂で被覆され、その上のインク受容層がゼラチン、その架橋剤及びカチオン性樹脂を含有するインクジェット記録用シートに関し、架橋剤の一例としてジルコニウム系架橋剤が開示されている。これらでは、カチオン性樹脂としてアミン構造を有する重合体を用い、また、架橋剤としてジルコニウム化合物を用いてもよいことが開示されている。
【0006】
特開平11−138979号公報には、ポリビニルアルコールとカチオン性高分子樹脂を含有するインク受容層を有する記録シートに関し、カチオン性高分子樹脂として4級アンモニウム塩とスチレンやアクリル酸系エステルとの共重合物が例示され、また、ジルコニウム系硬化剤を用いてもよいことが開示されている。また、欧州特許第0754560A1号明細書(1996)には、水溶性高分子バインダー、インクジェット染料吸収性色素、ジルコニウム架橋剤、カチオン変性ポリマーを含むインクジェット記録媒体に関し、実施例に、カチオン変性ポリマーとして主鎖に4級アンモニウム基を有するポリマーを用いることが開示されている。また、特開平11−78220号公報には、特定ケン化度のポリビニルアルコールに対して特定分子量のポリビニルピロリドンを一定量混合した混合液にカチオン性物質及びジルコニウム化合物を添加した記録体用組成物に関し、実施例に、カチオン性物質としてポリアクリル酸エステルの4級アンモニウム塩を用いることが開示されている。これらでは、カチオン性のものとして4級アンモニウム塩の構造を有する重合体を用い、また、架橋を形成し得る金属化合物としてジルコニウム化合物を用いてもよいことが開示されている。
【0007】
特開平10−338861号公報には、アミノ系樹脂、水性樹脂エマルジョン及び多価金属化合物を一定量配合してなる突板化粧加工用接着剤組成物に関し、アミノ樹脂としてメラミン化合物等が例示され、多価金属化合物としてジルコニウム塩等が例示されている。この公報では、これらの化合物を架橋することを目的としている。
【0008】
しかしながら、これらの技術では、アミン構造を導入した重合体を用いたり、架橋を形成し得る金属化合物を用いたりすることにより性能を向上させることを目的としているが、室温での成膜性や乾燥性、各種基材への密着性を向上させるために工夫する余地があった。すなわち、これらの重合体や多価金属化合物について工夫して硬化性樹脂組成物の性能をより向上させることにより、種々の用途に好適に用いることができる硬化性樹脂組成物として、例えば、インクジェット用インクバインダーやその受容層等への応用展開の可能性があるものを研究する余地があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、室温での成膜性や乾燥性、各種基材への密着性等の塗膜性能が優れることから、塗料、プライマー及びアンカー剤等の表面処理剤や接着剤、粘着剤、印刷インキ、インクジェット用インクバインダーやその受容層等を含む種々の用途に好適に用いることができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、硬化性樹脂組成物について種々検討するうち、カルボキシル基を有する重合体と多価金属化合物とが結合して架橋することに着目し、カルボキシル基を有する重合体が1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有することにより、これらのアミノ基に起因して各種基材への密着性が優れることになり、例えば、通常の硬化性樹脂組成物では密着しにくい二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムに対しても優れた密着性を示すことから、このような基材に対して用いられるプライマー、アンカー剤等の表面処理剤、インクジェット用インクバインダーやその受容層等を含む種々の用途に適用可能となり、しかも、室温での成膜性や乾燥性が優れたものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、カルボキシル基を有する重合体と多価金属化合物とを含む硬化性樹脂組成物であって、上記カルボキシル基を有する重合体は、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する硬化性樹脂組成物である。
以下に、本発明を詳述する。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物における硬化機構としては、例えば、多価金属化合物からアンモニアや炭酸ガスが脱離して多価金属化合物と重合体中のカルボキシル基とにより結合を形成したり、多価金属化合物に配位している水分子がより強い親和力を有するカルボキシル基と配位子交換反応を行って結合を形成したりする機構等が考えられる。このような硬化機構により、カルボキシル基を有する重合体と多価金属化合物とにより形成される架橋体が強固となり、硬化被膜のマトリックスを形成することになる。
【0013】
本発明における多価金属化合物としては、塩及び/又は錯体であることが好ましい。金属種としては、ジルコニウム、亜鉛、ホウ素、チタン、カルシウム、ストロンチウムが好適であり、対イオン及び/又は配位子としては、ハロゲン化物、水酸化物、アンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウム、カルボン酸アンモニウム、カルボン酸類が好適である。具体的には、酢酸ジルコニウム、炭酸アンモニウムジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、フッ化ジルコン水素酸、フッ化ジルコアンモニウム、炭酸亜鉛、炭酸アンモニウム亜鉛、ボレート、シュウ酸チタンアンモニウム、炭酸チタンアンモニウムが好適である。またこれらの多価金属化合物は、酒石酸、グルコン酸で安定化処理されたものでもよい。本発明においては、これらの中でも特に金属種が、ジルコニウムである化合物が好ましい。すなわち本発明においては、上記多価金属化合物が、ジルコニウム化合物であることが好ましい。これら多価金属化合物は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明におけるカルボキシル基を有する重合体は、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する。このような重合体は、アニオン性基であるカルボキシル基と、カチオン性基である1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する両イオン性重合体である。このように、カルボキシル基と、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基とを有する両イオン性重合体を、本明細書中、両イオン性重合体(A)ともいう。このような両イオン性重合体(A)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物において、両イオン性重合体(A)が有する1級アミノ基及び/又は2級アミノ基としては、下記一般式(1);
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基若しくはアリール基、又は、シアノ、ハロ、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはカルボアルコキシ置換のアルキル基、アラルキル基若しくはアリール基を表す。aは、0又は1である。nは、1以上である。)で表される基であることが好ましい。このような1級アミノ基及び/又は2級アミノ基の作用により、硬化塗膜の各種基材への密着性が向上することになると考えられる。
【0018】
上記両イオン性重合体(A)を製造する方法としては、(1)カルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基の一部を1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に変性することにより製造する方法、(2)不飽和カルボン酸と(メタ)アクリル酸グリシジル等の不飽和グリシジル基を有する単量体とを重合してなるカルボキシル基及びグリシジル基を有する重合体のグリシジル基をアンモニア等のアミン化合物にて1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に変性することにより製造する方法、(3)(メタ)アクリル酸グリシジル等の不飽和グリシジル基を有する単量体をアンモニア等のアミン化合物にて変性したものや、アリルアミン及び(メタ)アクリル酸アミノエチル等の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する単量体と不飽和カルボン酸とを重合することにより製造する方法が好適である。これらの中でも、上記(1)の方法を用いることが好ましい。上記(3)の方法の場合、アリルアミンは他の不飽和単量体との重合性が低いため、種々の用途に適した両イオン性重合体(A)を得ることは困難であり、また(メタ)アクリル酸アミノエチルは、不安定な単量体であるため、使用には特別な配慮が必要となるが、上記(1)の方法ではこのような問題がなく、両イオン性重合体(A)を容易に得ることが可能である。なお、上記(1)の方法で用いるカルボキシル基を有する重合体を、本明細書中、カルボキシル基を有する重合体(A−1)ともいう。
【0019】
上記(1)の方法で用いるカルボキシル基を有する重合体(A−1)としては、例えば、溶剤溶解性、非水分散性、水溶性、水希釈性、水分散性のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。このような重合体は、少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合することにより製造することができる。不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸又はそのモノエステル類が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
上記単量体成分は、上記不飽和カルボン酸の他に、必要に応じて、その他の不飽和単量体を含んでいてもよいが、この場合、上記単量体成分中における上記不飽和カルボン酸の使用量としては、単量体成分100質量%に対して2質量%以上とすることが好ましい。更にカルボキシル基を含む重合体(A−1)の酸価(重合体1gの全酸分を中和するのに必要なKOHのmg数)は、10mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0021】
上記その他の単量体としては、不飽和カルボン酸と共重合可能で、かつカルボキシル基と反応しない不飽和単量体を用いることになる。このような不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化α,β−不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体類が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
上記カルボキシル基を有する重合体(A−1)の製造において、単量体成分を重合する形態としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合方法を適用することができる。重合における重合温度や重合時間等の重合条件は、重合方法等により適宜設定すればよい。この際、必要に応じてメルカプタン化合物等の連鎖移動剤を用いて、重合度の制御を行ってもよい。
【0023】
上記カルボキシル基を有する重合体(A−1)中のカルボキシル基を1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に変性する方法としては、アルキレンイミンを用いる方法、ポリオキシアルキレンポリアミン等のポリアミンを用いる方法が挙げられるが、本発明ではアルキレンイミンを用いて変性する方法が好適に適用される。すなわち本発明における両イオン性重合体(A)は、カルボキシル基を有する重合体(A−1)中のカルボキシル基の一部をアルキレンイミンにより変性してなるものであることが好ましい。この場合、両イオン性重合体(A)は、ポリアルキレンイミンとしてカルボキシル基を有することになる。
【0024】
上記カルボキシル基を有する重合体(A−1)中のカルボキシル基をアミノ基に変性する際に用いられるアルキレンイミンは、下記一般式(2);
【0025】
【化2】
【0026】
(式中、R6、R7、R8、R9及びR10は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基若しくはアリール基、又は、シアノ、ハロ、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはカルボアルコキシ置換のアルキル基若しくはアリール基を表す。)で表される化合物であることが好ましく、具体的には、エチレンイミン、1,2−プロピレンイミン、1,2−ドデシレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン、フェニルエチレンイミン、ベンジルエチレンイミン、ヒドロキシエチルエチレンイミン、アミノエチルエチレンイミン、2−メチルプロピレンイミン、3−クロロプロピルエチレンイミン、メトキシエチルエチレンイミン、ドデシルアジリジニルフォルメイト、N−エチルエチレンイミン、N−(2−アミノエチル)エチレンイミン、N−(フェネチル)エチレンイミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンイミン、N−(シアノエチル)エチレンイミン、N−フェニルエチレンイミン、N−(p−クロロフェニル)エチレンイミンが好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エチレンイミン及び1,2−プロピレンイミンが工業的に入手しやすく好適である。
【0027】
上記アルキレンイミンを用いてカルボキシル基を変性すると、−COO−基に、一般式(1)で表される1級アミノ基及び/又は2級アミノ基が結合した基、すなわち下記式で表される基が生成する。
【0028】
【化3】
【0029】
上記式中、R1、R2、R3、R4、R5、a及びnは、一般式(1)と同様である。ここで理論的にはnは1以上であるが、カルボキシル基とアルキレンイミンとの反応においては、反応時のカルボキシル基とアルキレンイミンの比率に関わらず、1つのカルボキシル基にアルキレンイミンが1分子反応したものと、2分子以上反応したものとを含む分布のある生成物となる。従って、平均するとnは1を超えることとなる。
【0030】
上記カルボキシル基を有する重合体(A−1)において、アルキレンイミンによって変性されるカルボキシル基の量としては、(A−1)に2質量%以上含まれるカルボキシル基含有単量体(不飽和カルボン酸)のうち、1〜80質量%が好ましい。1質量%未満では硬化性樹脂組成物から形成される塗膜の密着性が低下するおそれがあり、80質量%を超えると形成される塗膜の耐水性が低下するおそれがある。好ましくは、1〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%である。また、多価金属化合物との反応のために(A−1)に2質量%以上含まれるカルボキシル基含有単量体のうち、1質量%以上が変性されないようにすることが好ましい。
本発明においては、両イオン性重合体(A)の形態としては、両イオン性重合体(A)のアミン価(重合体1gあたりに含まれるアミノ基のmmol数)や酸価(重合体1gの全酸分を中和するのに必要なKOHのmg数)は、使用目的に応じて、下記のように適宜選択すればよい。本発明においては、上述の構成で得られる両イオン性重合体(A)のアミン価は、0.05〜10mmol/gであることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜5mmolであるのが好ましい。アミン価が0.05mmol/g未満では、硬化性樹脂組成物から形成される塗膜の密着性が低下するおそれがあり、10mmol/gを超えると形成される塗膜の耐水性が低下するおそれがある。また、本発明においては、重合体(A)の酸価は、1.0〜150mgKOH/gであることが好ましい。更に好ましくは5.0〜100mgKOH/gである。酸価が1.0mgKOH/g未満では、多価金属化合物との反応に際して実質有効量とはなりえず、形成される塗膜の耐水性が低下するおそれがあり、150mgKOH/gを超えると、形成される塗膜の耐水性が低下するおそれがある。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物における形態としては、溶剤溶解性、非水分散性、水溶性、水希釈性、水分散性が好適である。硬化性樹脂組成物中に含有される両イオン性重合体(A)と多価金属化合物との合計量の含有割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよい。また、本発明の硬化性樹脂組成物では、両イオン性重合体(A)と多価金属化合物との存在割合としては、各種基材への密着性や耐水性、耐薬品性等に優れた塗膜を形成するためには、両イオン性重合体(A)100重量部に対して、0.1〜500重量部とすることが好ましい。0.1重量部未満であるとカルボキシル基と多価金属化合物との架橋密度が低く、形成される塗膜の耐水性等の性能が低下するおそれがあり、500重量部を超えると、各種基材への密着性が低下するおそれがある。より好ましくは、1〜100重量部、更に好ましくは2〜80重量部である。両イオン性重合体(A)と多価金属化合物との混合順序は特に限定されるものではなく、必要に応じ、機械的な攪拌による混合、ビーズミルやボールミルを用いた分散混合や、高圧ホモジナイザー等の高圧下のせん断力を利用した分散混合を行うことも好ましい形態である。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物は、両イオン性重合体(A)及び多価金属化合物の他に必要に応じて、フィラーや顔料、顔料分散剤、染料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、流動性調整剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤剤、粉末シリカ、コロイダルシリカ、カップリング剤、pH調整剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、オレフィンエマルション等の他樹脂、ゼラチン、希釈溶剤を1種又は2種以上混合して用いてもよい。尚、pH調整剤としては、有機酸、無機酸、アンモニア、アミン化合物等の塩基性物質を好適に用いることができる。これらの混合順序、混合方法等は特に限定されるものではない。このように、添加剤等を使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物中における両イオン性重合体(A)と多価金属化合物とを合わせた使用量としては、硬化性樹脂組成物が使用される用途に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物を使用する形態としては、一液型で用いてもよいし、二液型で用いてもよい。また、本発明の硬化性樹脂を含む組成物の使用方法としては、公知の方法で行えばよい。例えば、塗膜を形成する方法としては、基材上に塗布後、所定温度で乾燥及び硬化する方法が好適である。硬化の際の温度は特に限定されるものではないが、本発明の硬化性樹脂組成物は加熱しなくても硬化して塗膜形成をすることが可能であり、室温や外気温で硬化させる場合に好適に適用することができる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物を適用することができる基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、木材、紙、合成紙等の有機基材;鉄、アルミニウム、銅等の金属、ガラス等の無機基材が好適である。また、本発明の硬化性樹脂組成物では、ポリスチレンの中で、例えば、耐熱性等の特性を付与するためにマレイミド−スチレン系の共重合体で一部変性した変性ポリスチレン等の成形体表面や、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの表面に対しても、良好な密着性を得ることが可能である。
【0035】
本発明の硬化性樹脂は、成膜性や乾燥性、高い架橋反応性、各種基材への密着性等の塗膜性能が優れることから、塗料、プライマー、アンカーコート剤、表面処理剤、インクジェット用インク受容層、インク、インクジェット用インク及びそのバインダー、接着剤、粘着剤、セラミックバインダー、紙力増強剤、繊維処理剤等、幅広い用途に好適に用いられる。本発明では、これらの用途の中でも、室温での成膜性、架橋反応性、従来では密着しにくかった、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの表面に対しての良好な密着性を兼ね備えていることから、インクジェット用インクバインダーやその受容層の構成成分として用いることが好適である。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」は「重量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0037】
合成例1
カルボキシル基を有する重合体(A−1A)の合成、カルボキシル基並びに1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する重合体(A1)の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及滴下ロートを備えた2Lのフラスコに、脱イオン水397部と25%アニオン系乳化剤(商品名「ハイテノール18E」、第一工業製薬社製)水溶液40部を仕込んだ後、窒素を導入しつつ70℃に昇温した。アクリル酸24部、メチルメタアクリレート41.2部、ブチルアクリレート210.4部及びスチレン124.4部からなる単量体混合物40部をフラスコに添加し15分攪拌を行った後、1.75%過酸化水素水溶液4.6部と3%L−アスコルビン酸水溶液4.2部を添加し、重合を開始した。重合開始15分後から、残りの単量体混合物を1時間30分にわたって滴下した。この間1.75%過酸化水素水溶液41部と3%L−アスコルビン酸水溶液37部を、単量体混合物と同様に1時間30分にわたってフラスコ内に滴下した。滴下終了後、70℃で2時間熟成した後冷却し、25%アンモニア水13.6部を滴下し、均一に混合して不揮発分43.9%のカルボキシル基を有する重合体(A−1A)を含む溶液を得た。この重合体(A−1A)溶液に7.8%エチレンイミン水溶液183.3部を40℃以下にて60分にわたり滴下した。滴下終了後50℃に昇温し4時間反応後冷却し、不揮発分38%の重合体(A1)を含む溶液を得た。この重合体(A1)の酸価は滴定により26mgKOH/gであり、アミン価は0.8mmol/g、n=2.5であった。
【0038】
合成例2
カルボキシル基を有する重合体(A−1B)の合成、カルボキシル基並びに1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有する重合体(A2)の合成
合成例1と同様のフラスコに、脱イオン水397部と25%アニオン系活性剤(商品名「ハイテノール18E」、第一工業製薬社製)水溶液40部を仕込んだ後、窒素を導入しつつ70℃に昇温した。アクリル酸48部、メチルメタクリレート56.8部、ブチルアクリレート157.2部及びスチレン138部からなる単量体混合物40部をフラスコ内に添加し15分攪拌を行った後、1.75%過酸化水素水溶液4.6部と3%L−アスコルビン酸水溶液4.2部を添加し、重合を開始した。重合開始15分後から残りの単量体混合物を1時間30分にわたって滴下した。この間1.75%過酸化水素水溶液41部と3%L−アスコルビン酸水溶液37部を、単量体混合物と同様に1時間30分にわたってフラスコ内に滴下した。滴下終了後、70℃で2時間熟成した後冷却し、25%アンモニア水13.6部を添加し、均一に混合して不揮発分43.9%のカルボキシル基を有する重合体(A−1B)を含む溶液を得た。この重合体(A−1B)を含む溶液に、13%エチレンイミン水溶液220.3部を40℃以下にて60分にわたり滴下した。滴下終了後50℃に昇温し、4時間反応後冷却し、不揮発分38%の重合体(A2)を含む溶液を得た。この重合体(A2)の酸価は、滴定により酸価52.2mgKOH/gであり、アミン価は1.5mmol/g、n=2.5であった。
【0039】
実施例1〜6及び比較例1〜2
カルボキシル基を有する重合体(A−1)を含む溶液、カルボキシル基並びに1級アミノ基及び/又は2級アミノ基含有両イオン性重合体(A1)を含む溶液、カルボキシル基並びに1級アミノ基及び/又は2級アミノ基含有両イオン性重合体(A2)を含む溶液及び多価金属化合物を用いて、表1に示した配合組成物により硬化性樹脂組成物を調製した。
これらの硬化性樹脂組成物を、下記方法による評価を行い、評価結果を表1に併記した。なお、乾燥条件は全て室温とし、温度30℃、湿度60%の恒温恒湿器内で24時間養生後評価を行った。
【0040】
評価方法
(密着性)
コロナ放電処理OPPフィルム及びガラス板上に、硬化性樹脂組成物をNo.8のバーコーターにて塗布後、乾燥させ、養生後に粘着テープを塗膜上に貼った後、強制剥離を行った。
○:剥離なし、△:一部剥離、×:剥離
【0041】
(耐水性)
密着性と同様ガラス板上に塗膜を形成させた後、純水をしみこませた脱脂綿にて50回のラビングを行い、塗膜の状態を観察した。
○:変化なし、△:わずかにキズ、×:塗膜の破れ又は溶解
【0042】
(耐エタノール性)
密着性と同様ガラス板上に塗膜を形成させた後、エタノールをしみこませた脱脂綿にて10回のラビングを行い、塗膜の状態を観察した。
○:変化なし、△:わずかにキズ、×:塗膜の破れ又は溶解
【0043】
【表1】
【0044】
表1について、以下に説明する。
樹脂の組成において、不揮発分38%の重合体(A1)溶液とは、合成例1で得られた不揮発分38%の重合体(A1)を含む溶液であり、不揮発分38%の重合体(A2)溶液とは、合成例2で得られた不揮発分38%の重合体(A2)を含む溶液であり、不揮発分43.9%の重合体(A−1A)溶液とは、合成例1で得られた不揮発分43.9%のカルボキシル基を有する重合体(A−1A)を含む溶液である。多価金属化合物において、ベイコート20及びAZCとは、いずれもジルコニウム化合物の商品名(MEL Chemical社製)である。炭酸亜鉛アンモニウム水溶液は、公開特許公報、特開平11−130577号公報記載の方法に準じて得られた水溶液で、酸化亜鉛換算で16%の濃度のものを用いた。シュウ酸チタンアンモニウム水溶液は、シュウ酸チタン(IV)アンモニウム(2水和物)(キシダ化学社製)を酸化チタン換算で10%の濃度に希釈して用いた。
【0045】
【発明の効果】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述のような構成からなるため、室温での成膜性や乾燥性、各種基材への密着性等の塗膜性能が優れることから、インクジェット用インクバインダーやその受容層、塗料、プライマーやアンカー剤等の表面処理剤、接着剤、粘着剤、印刷インキ等の種々の用途に好適に用いることができる。
Claims (4)
- カルボキシル基を有する重合体と多価金属化合物とを含む硬化性樹脂組成物であって、
該カルボキシル基を有する重合体は、カルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基の一部を1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に変性することにより製造されるものであって、下記一般式;
該多価金属化合物は、ジルコニウム化合物の塩及び/又は錯体である
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。 - 請求項1記載の硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
該製造方法は、カルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基の一部を1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に変性する工程を含んでなる
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。 - 前記カルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基の一部を1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に変性する工程は、カルボキシル基を有する重合体中のカルボキシル基の一部をアルキレンイミンにより変性する工程である
ことを特徴とする請求項2記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
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