JP3939630B2 - 沸騰薬液の管理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、沸騰液中に被処理物を入れて処理する場合、該薬液の沸騰状態を評価して一定となるよう調整制御するときに好適な沸騰薬液の管理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1(a)は下記文献1に開示されたエッチング処理例である。この処理では、エッチング液1を収容する溢流部3付きの槽2(以下、オーバーフロー式の槽と称する)と、溢流部3に接続された取出管4及び槽2の底部に接続された戻し管5を利用してエッチング液1を濾過・濃度調整・加熱処理等を施して循環する循環経路部6とを有している。エッチング液1は、ウエハSの窒化珪素膜をエッチングする燐酸水溶液である。槽2は、加熱手段7によりエッチング液1を沸騰状態に保つ。該沸騰蒸気は、不図示の蓋や槽周囲に設けられる排気機構により外部へ漏れないよう処理される。循環経路部6には、取出管4から戻し管5に向けてポンプ8、濾過器9、ラインヒーター10等が設けられ、又、ラインヒーター10の手前には水供給部11から純水Wを導入する水注入管14が接続されている。符号15と16は温度コントローラである。温度コントローラ15は、槽2のエッチング液1の温度を検出し、該検出値によって水供給部11を駆動制御したり加熱手段7を制御する。温度コントローラ16は、ラインヒーター10の出口付近のエッチング液1の温度を検出し、該検出値によってラインヒーター10を制御する。
【0003】
以上の例では、エッチング液として85%の燐酸水溶液を用い、目的とする制御温度に加熱して沸騰状態を保つ。燐酸水溶液はその濃度によって沸点が異なり、75%の燐酸水溶液では沸点が135℃、85%では158℃と濃度が濃くなるにつれて沸点が高くなる。槽2内の液温度を目的とする温度に保つための調整は、温度コントローラ15の温度検出に基づく加熱手段7のヒーター出力と、補給用純水Wの補給量により行う。具体的には、水供給部11は温度コントローラ15の検出温度に基づいて駆動され、流量計11及び電磁弁等を開閉制御して補給用純水Wを水注入管14から供給する。加熱手段7のヒーターは沸騰に必要な一定な熱量を供給し、純水の補給量を温度検出値と設定された温度との差に基づいて制御させる。槽2内の液温度が高い場合は、燐酸水溶液の濃度が濃いことから補給量を多くし、燐酸水溶液の濃度を薄くさせ沸点を下げることによって液温度を低くする。逆に、液温度が低い場合は、燐酸水溶液の濃度が薄いことから補給量を少なくし、燐酸水溶液の濃度を濃くし沸点を上げることで液温度を高くする。この様に、燐酸水溶液の沸点を制御することで温度と沸騰状態を維持する。
【0004】
【特許文献1】
特公平3−20895号公報(第2−4頁、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した管理方法は、槽2内の液温度と沸騰具合が安定するように供給熱量を一定とし、純水の補給量を制御するものである。また、製造ラインでは、燐酸水溶液が過剰に沸騰して危険になったり、沸騰状態の変動によりエッチング精度又は品質が不均一になることから、沸騰状態を目視により観察評価して微調整したり各制御を補正することもある。この評価は、図2に示した例のごとく沸騰の度合を1〜5段階に決めておき、最良である4段階目に近づける方法である。しかし、この評価方法では、人の目視による観察であるため評価がばらついたり連続的な監視に限界がある。また、温度のみの管理では、外乱や加熱手段のヒーターの故障により沸騰に必要な熱量が供給されないこと等で液温度を一定に制御することはできても、沸騰度合まで調整することは不可能である。その結果、エッチングの均一性を向上できなかったり歩留まりも悪くなる。
【0006】
本発明者らは、以上の背景から検討を重ねてきた結果、例えば、連続薬液処理において該薬液の沸騰状態を自動的に評価できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、例えば、エッチング液等の薬液処理において、画像処理等による評価に比べ、該薬液の沸騰状態を比較的簡易かつ高性能に評価できるようにして、薬液処理精度及び均一処理等をより向上することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、薬液を収容する槽が加熱手段及び水を補給する液補給手段を有し、前記槽内で加熱沸騰されている薬液を、該薬液の沸騰状態を一定になるよう前記加熱手段や液補給手段により調整する沸騰薬液の管理方法であって、前記槽内薬液の定深さで不活性ガスをパージした際の背圧を検出する液面計を有し、該液面計の検出値により当該薬液の沸騰状態を定量的に評価して、最も好ましい沸騰状態の背圧値を維持すべく調整管理に利用することを特徴としている。
【0008】
以上の発明方法において、前記液面計は、気泡式液面計やガスパージ式液位検出器等と称されている市販品を応用可能であるが、対象薬液に応じて活性ガスを使用したり、ガス吐出管の材質等に対する配慮が必要となる。好ましくは、図1(b)の例のごとく不活性ガスを所定流量で送るガス供給部22と、不活性ガスを槽内薬液の定深さ位置にパージするガス吐出管21と、ガス吐出管に接続された背圧指示計23と、ガス吐出管に達する途中配管部に設けられて管内の不活性ガスを放出する開閉弁25とを有し、該開閉弁25を定時間毎に開にして0点調整することである。これは、計測誤差を抑えることと、槽周りの気圧変動による影響等を防ぐためである。また、発明の用途は、請求項2のごとく前記槽が薬液を槽上部からオーバーフローする槽であり、前記薬液が窒化珪素膜等をエッチングする燐酸水溶液に好適であるが、これに限定されない。すなわち、原理的には、槽としては後述するディップ槽でもよく、薬液としては硫酸と硝酸の混合液、硫酸と過酸化水素水の混合液、アンモニア水と過酸化水素水の混合液等も考えられる。また、エッチング液中に被処理物を入れて処理する際に、反応に伴って発生する気体の発生状態を評価し、処理状態の良し悪しを判断する手段として利用してもよい。
【0009】
(要部説明)発明者らは、上記した燐酸水溶液の沸騰度合を定量化する上で次のような現象を知見した。なお、文献上では、燐酸濃度が85%のとき、密度(d4 25)が1.6850g/ml、沸点158℃であると報告されている。
まず、試験からは、燐酸水溶液を昇温すると、153℃付近から沸き始め、159℃に到達する時点では良く沸いている。そして、不活性ガスをバージしたときの背圧を測定すると、同じ温度でも沸騰度合が進むに伴って背圧も比例して低くなる。前記背圧の変動は、例えば、沸騰していないときと、激しく沸いているときとで、10mmAq以上の差が認められる。この値は液面計の精度誤差を考慮しても、充分に沸騰度合を評価可能にすることである。
【0010】
本発明は、以上のような背圧の差を利用して沸騰度合を定量的に評価するものである。具体的には、実施例の燐酸水溶液の例において、温度範囲159〜161℃のとき、背圧が422〜424mmAqの値で最も好ましい沸騰度合とすると、該背圧値を維持すべく調整管理することになる。すなわち、従来は、沸騰状態の評価はあくまでも補足的なものに過ぎず、上記した槽内の燐酸水溶液の温度を検出し、ヒーター出力、もしくは、純水の注入量の何れか一方を固定値として、他方を検出温度によって出力もしくは純水の注入量により制御していた。これに対し、本発明では、温度だけではなく、沸騰状態を背圧により連続的に評価できるため、ヒーター出力と、純水の注入量共に制御(例えば、検出背圧により沸騰状態を評価して加熱手段のヒーター出力を調整制御し、検出温度により純水の注入量を調整制御)することが可能となる。要は、従来の温度に基づく制御から、背圧を温度と共に利用した制御方式、又は、背圧を基準とする制御方式を実現できるようにする。
【0011】
実施に際しては、例えば、155℃の燐酸容量と、25℃の燐酸容量を比べると、6%程度の容量差があるため槽構造に対する配慮が必要となる。すなわち、図1に挙げたオーバーフロー式の槽2では、液面高さが一定つまり内槽液の液容量が変わらないため不活性ガスをバージする検出端は単一でもよい。しかし、ディップ槽のごとく槽内の液面高さが変化する場合や、液密度が極端に変化する場合、周囲の気圧変動が大きい場合には、不活性ガスをバージする検出端を複数(例えば、槽内下位置と槽内上下中間位置に)用意し、検出端の位置をずらすことで、液容量等の変動を受けないようにする必要がある。また、この場合には、計測される背圧により槽内の液容量や液面レベルも検出可能となる。一方、槽構造として、蓋が設けられる場合は、蓋の開閉により沸騰度合が変化し易くなるため、密閉度を高くしないことが重要となる。蓋の密閉度を高くしなければならないときには、例えば、図1(b)の開閉弁25で開閉される管部の放出端を当該蓋と槽内上部との間の雰囲気中に配置する様にして、0点調整を頻繁に行うことにより雰囲気影響を受け難くする必要がある。
【0012】
【実施例】
以下の実施例は、薬液として燐酸水溶液(濃度が85%)を使用し、該燐酸水溶液を昇温し、該液の沸騰状態を背圧で評価したときの試験例である。この試験では、図1(a)に類似した槽構成からなる日曹エンジニアリング(株)製−NISON1800の処理槽2を使用し、槽内の液温が159〜161℃の温度範囲になるよう制御した。該処理槽2には、図1(b)に模式化したごとくインテグリス・テクノ(株)製のLEVELER8.1の液面計20を付設した。すなわち、処理槽2は、上外周に設けられた溢流部3と、溢流部3に接続された取出管4と、槽2の底部に接続された戻し管5と、取付管4と戻し管5の間に設けられた不図示の循環経路部6とを有している。また、液面計20は、ガス吐出管21と、ガス供給部22と、背圧指示計23と、途中配管部に設けられ開閉弁25とを有している。なお、符号24はフィルターである。また、ガス吐出管21は、1/4インチの石英管を使用し、下端吐出口が液面より269mmの位置となるよう処理槽2内に取り付けた。ガス供給部22は、不活性ガスとして乾燥窒素ガスを流量調整弁等を介して圧送し、液なし時に背圧指示計23での計測値が0mmAqとなるよう設定した。
【0013】
処理槽2の稼動は、従来と同じく燐酸水溶液の温度を上昇し、循環経路部6を循環駆動しながら、内槽液の温度−背圧を計測した。同時に、内槽液を目視観察して図2に示される基準で沸騰度合のレベル1〜5を評価した。159〜161℃の制御温度付近においては、燐酸水溶液の沸騰状態を変える目的でヒーター出力や水補給量を変化させた。なお、背圧の計測時には、定時間毎に開閉弁25を開にしてガス吐出管21を含む配管内から窒素ガスを排出し0点調整した。目視観察は二人の熟練者により評価した。表1はその結果を一覧したものである。
【0014】
【表1】
【0015】
表1からは次のようなことが分かる。まず、液温が21℃〜140℃までは泡が認められず(目視観察でレベル1)、背圧は温度上昇と比例して低くなる。液温が153℃に達すると泡が少し発生し(目視観察でレベル2)、液温158℃(目視観察でレベル3)までは泡の量が温度上昇により増え、背圧も急激に低くなる。ところが、液温158℃を越えると、液温と背圧の関係が不安定となり、例えば、液温が同じ160℃であっても、目視観察でレベル1〜レベル5までのときが発生する。そして、液温159〜161℃の範囲において、目視観察で、レベル1のときは背圧が431mmAq以上にあり、レベル2のときは背圧が428〜430mmAqの範囲にあり、レベル3のときは背圧が425〜427mmAqの範囲にあり、レベル4のときは背圧が422〜424mmAqの範囲にあり、レベル5のときに示す背圧は421以下の値となっている。すなわち、制御温度としている温度範囲(159〜161℃)内では、沸騰のレベルと温度は1:1に対応しないが、沸騰のレベルと背圧は1:1に対応することが分かる。従って、調整管理又は調整制御としては、温度と沸騰のレベルによる熟練者を必要とする薬液管理から、温度と背圧による客観的で定量的な薬液管理が可能となる。その結果、従来のごとく固定値となるヒーター出力もしくは純水の注入量を熟練者が沸騰状態としてレベル4になるように設定していたものが、背圧を検出し該検出値を利用することによりヒーター出力もしくは純水の注入量を自動的に制御することが可能となる。例えば、161℃、沸騰のレベル4に管理するため、背圧を422mmAqとなるように、ヒーター出力もしくは純水の注入量の一方を制御し、温度を161℃となるように他方を制御することができる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明に係る沸騰薬液の管理方法は、沸騰状態を連続的、かつ定量的に評価可能になり、例えば、燐酸水溶液を用いたエッチング処理において、沸騰度合の評価に基づき、又は、沸騰度合と液温度とを利用し槽内の燐酸水溶液を調整管理することにより薬液処理精度及び均一処理の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は従来の問題を説明するための模式図、(b)は発明を適用した模式図である。
【図2】 燐酸の沸騰度合を目視により評価する例を示す図である。
【符号の説明】
1はエッチング液(燐酸水溶液)
2は槽
20は液面計
21はガス吐出管
22はガス供給部
23は背圧指示計
25は開閉弁
Claims (2)
- 薬液を収容する槽が加熱手段及び水を補給する液補給手段を有し、前記槽内で加熱沸騰されている薬液を、該薬液の沸騰状態を一定になるよう前記加熱手段や液補給手段により調整する沸騰薬液の管理方法であって、
前記槽内薬液の定深さで不活性ガスをパージした際の背圧を検出する液面計を有し、該液面計の検出値により当該薬液の沸騰状態を定量的に評価して、最も好ましい沸騰状態の背圧値を維持すべく調整管理に利用することを特徴とする沸騰薬液の管理方法。 - 前記槽は薬液を槽上部からオーバーフローする槽であり、前記薬液は窒化珪素膜をエッチングする燐酸水溶液である請求項1に記載の沸騰薬液の管理方法。
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