JP3938342B2 - 製紙用顔料分散剤及び製紙用顔料の分散方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製紙用顔料分散剤及び製紙用顔料の分散方法に関する。より詳しくは、製紙用顔料分散剤として使用することで、低粘度で安定な高濃度の製紙用顔料スラリーを提供し、製紙工程の効率化、紙の品質向上に貢献できる分散剤、及び、製紙用顔料の分散方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製紙用顔料は、紙の塗工時に用いられ、白色度向上、隠ぺい性向上の目的で使用される。この顔料の分散剤として、従来よりポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸・マレイン酸共重合体ソーダ塩等が用いられてきているが、近年の紙の塗工速度の向上に伴い、高剪断時の粘度安定性の高い分散剤が求められているが、従来の分散剤では、その要求に答えるものは、得られていなかった。
【0003】
特開平10−204320号公報には、アルキレンオキシドの特定量を構成単位として有するポリエーテル化合物(A)に、エチレン性不飽和単量体(B)を共重合させた水溶性共重合体を含む顔料分散剤が開示されている。しかしながら、製紙用顔料スラリーにおいてはより高濃度のものが求められているが、この顔料分散剤を用いる場合には、高濃度においてスラリーの粘度を低くすることができないという欠点を有していたことから、この点において工夫の余地があった。また、製紙用顔料スラリーを貯蔵するときに沈降物が発生すると製紙工程における配管がつまる等の不具合が生じることから、沈降物が発生したときに製紙用顔料の再分散性が容易であることも製紙工程の効率化や紙の品質向上の点から重要であるが、この再分散性については考慮されていないことから、この点においても工夫の余地があった。
【0004】
特公平6−20533号公報には、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩類から選ばれた少なくとも1種の単量体より導かれた水溶性重合体(I)と水溶性リン酸塩類(II)とを併用する炭酸カルシウム水分散液の製造方法が開示されている。しかしながら、この方法では、炭酸カルシウム水分散液が数日間貯蔵されて放置されたときに、すなわち経日したときに沈降物が大量に発生し、しかも再度攪拌しても非常に分散しにくいという問題点を有していた。従って、製紙用顔料スラリーを製造し、貯蔵する場合に、経日安定性や再分散性を改善するための工夫の余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、顔料の分散安定化効果が大きいために安定した粘度特性をもつ顔料スラリーを得ることができる新規な顔料分散剤、すなわち製紙用顔料の高濃度での分散性に優れ、高濃度としても低粘度とすることが可能であり、しかも経日安定性に優れ、顔料スラリーの再分散性が良好な製紙用顔料スラリーを得ることができる製紙用分散剤、及び、製紙用顔料の分散方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来の問題を解決すべく鋭意検討した結果、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有する水溶性グラフト重合体を用いて、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを含有する組成物を製紙用顔料の分散剤として使用した場合、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とが有する作用効果が相乗的に発揮されることにより、それぞれの重合体を単独で用いた場合よりも高濃度スラリーの低粘度化やスラリーの粘度の経日安定性が向上され、しかもスラリーの再分散性を大幅に改善できることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、水溶性グラフト重合体において、ポリエーテル化合物がアルキレンオキシドを50mol%以上構成単位として有するものであると、顔料の分散安定化効果がより充分なものとなり、更に安定した粘度特性をもつ顔料スラリーを得ることが可能となり、本発明の作用効果がより充分に発揮されることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを含有する製紙用顔料分散剤であって、上記水溶性グラフト重合体は、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有するものである製紙用顔料分散剤である。
【0008】
本発明はまた、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを分散剤として用いる製紙用顔料の分散方法でもある。
以下に、本発明を詳述する。
【0009】
本発明の製紙用顔料分散剤は、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを含有する分散剤であり、低粘度で安定な高濃度の製紙用顔料スラリーを得るために用いられる製紙用顔料分散剤として好適に使用できるものである。
本発明の製紙用顔料分散剤における重合体はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
本発明で使用するポリアクリル酸系重合体は、アクリル酸(塩)により形成される単量体単位を主体とする構造をもつ重合体であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の共重合可能な単量体と共重合した構造をもつものであってもよい。上記ポリアクリル酸系重合体の分子構造としては、直鎖状であることが好ましい。
上記アクリル酸(塩)とは、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩である。アクリル酸塩としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等のアクリル酸アルカリ金属塩;アクリル酸アンモニウム;アクリル酸有機アミン塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記他の共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではなく、必要に応じて併用してもよく、以下に記載するものを用いるのが好ましい。例えば、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸単量体;上記不飽和ジカルボン酸系単量体、上記不飽和多価カルボン酸系単量体又は上記不飽和スルホン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物;2−ヒドキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシアクリル酸、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸等の含リン単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;ビニルピロリドン;(メタ)アリルアルコールのエチレンオキシド付加物、イソプレノールのエチレンオキシド付加物、(メタ)アクリル酸の(アルコキシ)ポリエチレングリコールエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記ポリアクリル酸系重合体を製造する方法としては、通常では溶媒中で重合開始剤を用いることにより行われることになる。
上記ポリアクリル酸系重合体の重合溶媒としては、好ましくは水単独が用いられるが、必要に応じて親水性有機溶媒を水に適宜添加してもよい。上記親水性有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;1,4−ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上適宜選んで使用できる。親水性有機溶媒の添加割合は、水との混合溶媒全量に対し、20質量%以下であることが好ましい。20質量%を超えると、ポリアクリル酸系重合体が分離及び/又は沈殿するおそれがある。より好ましくは、10質量%以下、更に好ましくは、5質量%以下、最も好ましくは、1質量%以下である。
【0013】
上記ポリアクリル酸系重合体を製造する際の重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、各種過酸化物等を用いることができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2、2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、アゾビスイソブチルニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオサイド、t−ブチルヒドロパーオサイド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明におけるポリアクリル酸系重合体の重量平均分子量としては、500以上であり、10万以下であることが好ましい。より好ましくは、1000以上であり、3万以下である。更に好ましくは、3000以上であり、2万以下である。最も好ましくは、4500以上であり、1.5万以下である。また、ポリアクリル酸系重合体の分子量分布としては、1.0〜6.0が好ましい。より好ましくは、1.5〜5.0であり、更に好ましくは、1.8〜4.0であり、最も好ましくは、2.0〜3.5である。ここで、分子量分布とは、重量平均分子量/数平均分子量で表わされる数値である。
【0015】
本発明で用いる水溶性グラフト重合体は、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有するもの、すなわちモノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体成分をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有するものであれば、特に制限はないが、重量平均分子量は、500以上であることが好ましい。より好ましくは、1000以上であり、1000万未満である。更に好ましくは、2000以上であり、5万未満である。このような分子量とすることが、製紙用顔料分散剤として使用したときの粘度の安定性を向上させる目的で好ましい。
【0016】
本発明で用いられる水溶性グラフト重合体において、好ましい形態としては、ポリエーテル化合物がアルキレンオキシドを50mol%以上構成単位として有する形態である。なお、ポリエーテル化合物がアルキレンオキシドを50mol%以上構成単位として有するとは、アルキレンオキシドから形成される単量体単位が、ポリエーテル化合物を構成する全単量体単位100mol%に対して、50mol%以上であることを意味する。上記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシドを必須とするものであることが好ましい。このようなポリエーテル化合物は、例えば、エチレンオキシド及び他のアルキレンオキシドを、水又はアルコールを開始点として公知の方法で重合することにより得ることができる。
【0017】
上記ポリエーテル化合物を得るためのアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の炭素数1〜22の1級アルコール;炭素数3〜18の2級アルコール;t−ブタノール等の3級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類;ソルビトール等のポリオール類;フェノール、ナフトール、カルバゾール等が挙げられる。エチレンオキシドと共重合可能な他のアルキレンオキシドとしては、特に限定されないが、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記ポリエーテル化合物としては、上記のようにして得られたポリエーテル化合物のすべての末端又は一部の末端の水酸基を炭素数2〜22の脂肪酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸等のジカルボン酸でエステル化したものも用いることができる。
【0019】
上記ポリエーテル化合物の重量平均分子量としては、200以上であり、10000以下であることが好適である。より好ましくは、300以上であり、3000以下である。更に好ましくは、400以上であり、1800以下である。
【0020】
上記モノエチレン性不飽和単量体成分は、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体を含むものであるが、エチレン性不飽和モノカルボン酸系単量体及び/又はエチレン性不飽和ジカルボン酸系単量体を含むことが好ましい。エチレン性不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸;フマル酸;無水マレイン酸;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸のアルキルエステル類;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸のアルキルエステル類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも水溶性グラフト重合体のカルボン酸密度を上げ、カルシウムイオン捕捉能、分散能を高める点からマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0021】
上記水溶性グラフト重合体を製造する方法としては、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体成分を、有機過酸化物を重合開始剤としてポリエーテル化合物にグラフト重合することにより行われることが好ましい。上記グラフト重合をする際に用いる有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルヘキシン等のジアルキルパーオキシド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、モノエチレン性不飽和単量体成分に対して0.1〜15質量%とすることが好ましい。0.1質量%未満であっても、15質量%を超えても、ポリエーテル化合物への単量体のグラフト効率が低下するおそれがある。より好ましくは、0.5〜10質量%である。また、重合開始剤はあらかじめポリエーテル化合物に添加しておくこともできるが、モノエチレン性不飽和単量体成分と同時に添加することもできる。
【0023】
上記グラフト重合は、実質的に無溶媒で行われるのが好ましい。水又はアルコール、トルエン等の有機溶剤を用いると、ポリエーテル化合物への単量体のグラフト効率が低下するおそれがある。重合開始剤や単量体添加のために溶剤を使用する場合には、その量を極力少なくすることが好ましく、例えば、モノエチレン性不飽和単量体成分及びポリエーテル化合物の全量に対して5質量%以下にするか、溶剤を添加後反応系からただちにその溶剤を留去することが好ましい。
【0024】
上記グラフト重合における重合温度としては、100℃以上であることが好ましい。より好ましくは、120℃以上であり、160℃以下であることが好ましい。100℃より低いとポリエーテル化合物への単量体のグラフト効率が低下するおそれがある。また、160℃より高い温度では、ポリエーテル化合物及び水溶性グラフト重合体の熱分解が起こるおそれがある。
【0025】
上記により得られた水溶性グラフト重合体は、顔料分散剤としてそのまま水やアルコール等の溶剤に溶解して使用することもできるが、塩基を添加して使用することもできる。塩基としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の1価金属塩;カルシウム塩等の2価金属塩;アルミニウム塩等の3価金属塩;アンモミウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。その際には、溶剤として水が好ましい。
【0026】
本発明の製紙用顔料分散剤において、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体との配合比率としては、特に限定されないが、例えば、顔料を分散したスラリーにおける経日安定性の向上の目的から、質量比(ポリアクリル酸系重合体:水溶性グラフト重合体)で、1:9〜9:1が好ましい。より好ましくは、2:8〜8:2であり、更に好ましくは、3:7〜7:3であり、最も好ましくは、4:6〜6:4である。
なお、ポリアクリル酸系重合体は、上述したようにアクリル酸(塩)により形成される単量体単位を主体とする構造をもつ重合体であるが、本発明においては、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体成分をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有しないものである。すなわちアクリル酸(塩)により形成される単量体単位を主体とする構造をもつ重合体の中で、モノエチレン性不飽和単量体成分をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有しないものがポリアクリル酸系重合体として配合されることになる。
【0027】
本発明の製紙用顔料分散剤の使用形態としては、例えば、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とをあらかじめ混合した後使用してもよく、製紙工程における使用時に別々の投入口から投入し混合してもよい。別々の投入口から投入する場合、投入の順番に特に制限はなく、製紙用顔料、水、ポリアクリル酸系重合体、水溶性グラフト重合体をどのような順番で混合してもよいが、水、ポリアクリル酸系重合体、水溶性グラフト重合体を混合した後、製紙用顔料を混合し攪拌することが、スラリー再分散性を向上させる目的で最も好ましい。
【0028】
本発明の製紙用顔料分散剤の使用量としては、得られるスラリーの粘度低減の目基から、製紙用顔料に対して、0.1〜5質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.3〜2質量%である。
本発明の製紙用顔料分散剤を用いて製紙用顔料分散液を製造するには、本発明の製紙用顔料分散剤を所定量用いて製紙用顔料を水媒体中に分散すればよい。製紙用顔料の分散方法としては、従来より慣用されている各種の混合装置、例えば、ディゾルバー攪拌羽根等の攪拌機を備えた容器やボールミル・ペイントシェーカー等の混合機に、製紙用顔料、水性媒体及び分散剤を添加投入して攪拌又は混合することにより行うことができる。
【0029】
本発明においては、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを分散剤として用いることにより、低粘度で安定な高濃度の製紙用顔料スラリーを得ることができる。このような、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを分散剤として用いる製紙用顔料の分散方法もまた本発明の1つである。本発明の分散方法におけるポリアクリル酸系重合体及び水溶性グラフト重合体やその好ましい形態としては、上述したのと同様である。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「%」は「質量%」を示す。
【0031】
合成例1
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、平均分子量1000のポリエチレングリコール200重量部、マレイン酸44重量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶融させ、攪拌下で145℃まで昇温した。次に、温度を145〜147℃に保ちながら、アクリル酸100重量部、ジ−t−ブチルパ−オキシド5.5重量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後20分間攪拌を続けた。冷却後、投入したアクリル酸及びマレイン酸の完全中和量の水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を加え、攪拌下還流温度で1時間加熱して、水溶性共重合体(1)のナトリウム塩水溶液を得た。
【0032】
合成例2
合成例1と同様の反応器に、平均分子量5000のモノメトキシポリエチレングリコール200重量部、マレイン酸22重量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶融させ、攪拌下で130℃まで昇温した。次に、温度を130〜132℃に保ちながら、アクリル酸100重量部、ジ−t−ブチルパ−オキシド5重量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後80分攪拌を続けた。冷却後、投入したアクリル酸及びマレイン酸の完全中和量の水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を加え、攪拌下還流温度で1時間加熱して、水溶性共重合体(2)のナトリウム塩水溶液を得た。
【0033】
合成例3
合成例1と同様の反応器に、平均分子量1000のフェノキシポリエチレングリコール200重量部、マレイン酸22重量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶融させ、攪拌下で145℃まで昇温した。次に、温度を145〜147℃に保ちながら、アクリル酸50重量部、ジ−t−ブチルパ−オキシド2.5重量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後20分間攪拌を続けた。冷却後、投入したアクリル酸及びマレイン酸の完全中和量の水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を加え、攪拌下還流温度で1時間加熱して、水溶性共重合体(3)のナトリウム塩水溶液を得た。
【0034】
合成例4
合成例1と同様の反応器に、平均分子量1000のナフトキシポリエチレングリコール400重量部、マレイン酸22重量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶融させ、攪拌下で130℃まで昇温した。次に、温度を130〜132℃に保ちながら、アクリル酸53重量部、ジ−t−ブチルパ−オキシド5重量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後80分攪拌を続けた。冷却後、投入したアクリル酸及びマレイン酸の完全中和量の水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を加え、攪拌下還流温度で1時間加熱して、水溶性共重合体(4)のナトリウム塩水溶液を得た。
【0035】
合成例5
合成例1と同様の反応器に、平均分子量500のモノメトキシポリエチレングリコール200重量部、マレイン酸50重量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶融させ、攪拌下で145℃まで昇温した。次に、温度を146〜147℃に保ちながら、アクリル酸100重量部、ジ−t−ブチルパ−オキシド5重量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後1時間攪拌を続けた。冷却後、滴下したアクリル酸の完全中和量の水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を加え、攪拌下還流温度で1時間加熱して、水溶性共重合体(5)のナトリウム塩水溶液を得た。
【0036】
実施例1〜4、参考例1
表1に示す分散剤組成物を用いて、製紙用顔料分散性試験を行った。分散剤組成物の組成及び評価結果を表1に示す。
【0037】
(製紙用顔料分散性試験)
製紙用顔料として軽質炭酸カルシウムを用いて分散性試験を行った。
(試験方法)
軽質炭酸カルシウム タマパール121(奥多摩工業社製) 300g
脱イオン水 130g
分散剤組成物 20%固形分の水溶液 10g
上記の組成で、ホモディスパーを用いて3000rpm/2分間の攪拌によりスラリー化した。1分後にB型粘度計にて粘度測定(25℃)を行った。結果を表1に示した。また、スラリーを1週間静置したときの沈降物の有無と再分散の容易さにより経日安定性の評価を行った。
なお、経日安定性の評価基準は、以下のとおりである。
◎:沈降物がほとんどない。スラリーの再分散性が非常に良好。
〇:沈降物あり。スラリーの再分散性が良好。
×:沈降物多い。スラリーの再分散性が悪い。
【0038】
【表1】
【0039】
比較例1〜2
実施例1と同様にして、表2に記載の組成物を用いて分散性試験を行った。結果を表2に記載した。
【0040】
【表2】
【0041】
表1及び表2より、実施例1〜4、参考例1の組成物を用いると、顔料スラリーにおいて粘度低減と安定性とを両立することができた。ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを併用しない比較例1〜2の組成物を用いた場合は、顔料スラリーの粘度が高く、また、実施例の組成物を用いた場合と比べて経日安定性が劣った。
【0042】
【発明の効果】
本発明の製紙用顔料分散剤及び製紙用顔料の分散方法は、上述の構成よりなり、製紙用顔料の高濃度での分散性に優れ、高濃度としても低粘度とすることが可能であり、しかも経日安定性に優れ、顔料スラリーの再分散性が良好な製紙用顔料スラリーを得ることができるものであり、これにより製紙工程の効率化、紙の品質向上に貢献できることとなる。
Claims (4)
- ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体とを含有する製紙用顔料分散剤であって、
該水溶性グラフト重合体は、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体をポリエーテル化合物にグラフト重合してなる構造を有し、グラフト重合温度を100℃以上、160℃以下として得られるものであり、
該ポリエーテル化合物は、エチレンオキシドを必須とするアルキレンオキシドを50mol%以上構成単位として有するものであり、その重量平均分子量が300以上であり、3000以下である
ことを特徴とする製紙用顔料分散剤。 - 前記製紙用顔料分散剤は、ポリアクリル酸系重合体と水溶性グラフト重合体との配合比率が質量比で2:8〜8:2である
ことを特徴とする請求項1に記載の製紙用顔料分散剤。 - 請求項1又は2に記載の製紙用顔料分散剤を分散剤として用いる
ことを特徴とする製紙用顔料の分散方法。 - 請求項1又は2に記載の製紙用顔料分散剤を用いて製紙用顔料スラリーを製造する方法であって、
該製造方法は、水、ポリアクリル酸系重合体及び水溶性グラフト重合体を混合した後、製紙用顔料を混合し攪拌する
ことを特徴とする製紙用顔料スラリーの製造方法。
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