JP3938280B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポンプが発生した圧油によって作動し、操舵手段の操舵を補助するアクチュエータを備えたパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来のパワーステアリング装置の全体構成を示すブロック図である。 車両用のパワーステアリング装置は、操舵輪100と、モータ101によって駆動されるポンプ102と、該ポンプ102が発生した圧油を送給する送給路103と、該送給路103から送給された圧油によって作動し、前記操舵輪100の操舵を補助する油圧シリンダ104と、前記操舵輪100の操舵により駆動され、前記ポンプ102が発生した圧油の前記油圧シリンダ104への送給/排出を制御する制御弁105と、前記送給路103内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記送給路103を開いて前記圧油を逃がし、ポンプ102の過負荷を防止するためのリリーフ弁106とを備え、油圧シリンダ104の作動によって舵取機構107の舵取軸108を車両の左右方向へ移動させることにより操舵補助するように構成されている。
ポンプ102としては、小型でありながら高油圧を発生し得るものとして、ベーンポンプ、ギヤポンプ等の回転容積形のポンプが用いられている。
【0003】
この種のポンプ102は、一般的に車両に搭載されたエンジンを駆動源として駆動されるが、パワーステアリング装置は特に車両の低速走行時及び停車時に比較的大きな操舵補助力を必要とするため、低速走行時及び停車時においても操舵補助力に対応してエンジンの回転速度を高くする必要があり、燃費の低下を招くと言う不具合がある。従って、近年では、エンジンに代えて車載バッテリからの給電により駆動されるモータ101を駆動源として利用し、エンジンの無為な動力の消費を可及的に抑えるようにしたポンプが用いられるようになっている。
【0004】
また、リリーフ弁106はその弁体を閉方向へ付勢する弁ばねを有しており、ポンプ102が発生した圧油の圧力が前記弁ばねの力に対抗する所定の圧力を超えたとき、弁体が開作動し、前記ポンプ102の吐出部に接続された送給路103内の圧油をタンクTへ逃がしつつ送給路103内の圧力を前記所定の圧力となるように下げ、換言すればポンプ102の負荷を所定の負荷に下げ、送給路103内の圧力が前記所定の圧力未満になるとき前記弁ばねの力で前記弁体が閉作動し、送給路103内の圧力が前記所定の圧力となるように構成されている。
【0005】
以上の如く構成されたパワーステアリング装置において、操舵輪100が操舵中立位置に停止しているとき、モータ101及びポンプ102は回転しており、ポンプ102から送給路103へ送給された圧油は前記制御弁105を経てタンクTへ排出され、油圧シリンダ104による操舵補助はなされない。
【0006】
前記操舵輪100が操舵中立位置から左又は右方向へ操舵されることにより、前記制御弁105が作動し、前記送給路103の圧油は油圧シリンダ104の一方の油室へ送給され、他方の油室はタンクTに連通する結果、前記ポンプ102の負荷が増加し、該ポンプ102が発生する圧油の圧力がリリーフ弁106で設定された所定の圧力以下の領域で上昇する。これにより油圧シリンダ104は、他方の油室との間に生じる圧力差に応じた油圧力を発生し、この油圧力が操舵補助力として舵取機構107の舵取軸108に加えられることとなる。
【0007】
そして、操舵輪100の操舵に伴い油圧シリンダ104のピストンロッド及び前記舵取軸108が最大ストローク側のエンド位置へ移動されたとき、ピストンロッド及び舵取軸108の移動が停止し、操舵補助の必要がなくなるため、ポンプ102は過負荷となり、該ポンプ102が発生する圧油の圧力がリリーフ弁106で設定された所定の圧力を超えることになり、該リリーフ弁106が開作動し、送給路103内の圧油はタンクTへリリーフされる。このリリーフ時において、前記モータ101及びポンプ102は回転しており、ポンプ102から送給路103へ送給された圧油はリリーフ弁106で設定された所定の圧力となるため、リリーフ時においてもモータ101及びポンプ102には比較的大きな負荷が発生している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のパワーステアリング装置にあっては、ポンプ101が発生する圧油によつて作動する油圧シリンダ104が操舵補助をしていないリリーフ時においても送給路103内の圧力をリリーフ弁106で設定された所定の圧力に保つための比較的大きな負荷がモータ101及びポンプ102に発生しており、この負荷状態でモータ101が駆動されているため、該モータ101の動力が無為に消費されることになり、改善策が要望されていた。また、リリーフ時にはリリーフ弁106で設定された比較的大きな圧力の圧油がリリーフ弁106からタンクTへリリーフされるため、この圧油をリリーフするときにおけるリリーフ弁106が発熱することになり、この発熱の抑制策も要望されていた。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、パワーステアリング装置は舵取軸の両端側に連結された操向輪の操向角が最大となるように前記舵取軸がほぼ最大ストローク移動されたエンド位置では操舵軸の軸長方向への移動が停止され、操舵補助の働きをしていないこと、及び、前記エンド位置でのリリーフ弁はポンプが発生した圧油をタンクへ逃がしており、送給路の圧油の圧力が損失するときであることに着目し、前記送給路内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記送給路を開いて該送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段を備える構成としたり、前記リリーフ弁が開作動するとき、前記送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段を備える構成としたりすることによって送給路内の圧力が所定の圧力を超える状況であるときのモータの動力消費を低減することができるとともに、圧油をリリーフするときにおけるリリーフ弁の発熱を抑制することができるパワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
第1発明に係るパワーステアリング装置は、操舵手段と、ポンプが発生した圧油を送給する送給路と、該送給路から送給された圧油によって作動し、前記操舵手段の操舵を補助するアクチュエータとを備え、該アクチュエータの作動によって操舵補助するようにしたパワーステアリング装置において、前記圧油の前記アクチュエータへの送給/排出を制御し、前記操舵手段に繋がる制御弁と、前記送給路内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記送給路を開いて該送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段を備え、該減圧手段は前記制御弁に、該制御弁を前記操舵手段が操舵されている方向と反対方向へ作動させる力を加え、前記圧油の前記アクチュエータへの送給を減らし減圧するように制御弁を作動させる作動部材を有していることを特徴とする。
【0011】
第1発明にあっては、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、前記減圧手段によって前記送給路を開いて該送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げることができるため、モータ及びポンプの負荷をなくすることができ、送給路内の圧力が所定の圧力を超える状況であるときのモータの動力消費を低減することができる。
また、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、送給路に設けられた前記制御弁を作動部材が作動させ、該制御弁が送給路を開くため、既存の制御弁を利用して送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げることができ、構造の簡素化及びコストの低減化を図ることができる。また、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、前記操舵手段の操舵量は操舵中立位置に対して左又は右方向へほぼ最大となるが、前記制御弁は前記作動部材によって操舵手段の操舵方向と反対方向へ作動されているため、停車時に操舵手段を右又は左方向へ操舵するとき、前記送給路内の圧力を前記所定の圧力へ比較的早く上昇させることができ、停車時の操舵性、換言すれば据切り時の据切り性を向上することができる。
【0012】
第2発明に係るパワーステアリング装置は、操舵手段と、ポンプが発生した圧油を送給する送給路と、該送給路から送給された圧油によって作動し、前記操舵手段の操舵を補助するアクチュエータと、前記送給路内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記送給路を開いて前記圧油を逃がすリリーフ弁とを備え、前記アクチュエータの作動によって操舵補助するようにしたパワーステアリング装置において、前記圧油の前記アクチュエータへの送給/排出を制御し、操舵手段に繋がる制御弁と、前記リリーフ弁が開作動したとき、前記送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段を備え、該減圧手段は前記制御弁に、該制御弁を前記操舵手段が操舵されている方向と反対方向へ作動させる力を加え、前記圧油の前記アクチュエータへの送給を減らし減圧するように制御弁を作動させる作動部材を有していることを特徴とする。
【0013】
第2発明にあっては、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、リリーフ弁が開作動して操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、前記減圧手段によって前記送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げるため、モータ及びポンプの負荷を小さくすることができ、送給路内の圧力が所定の圧力を超える状況であるときのモータの動力消費を低減することができる。しかも、比較的低圧とされた送給路内の圧油をリリーフ弁からリリーフさせることができるため、圧油をリリーフするときにおけるリリーフ弁の発熱を良好に抑制することができる。また、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、送給路に設けられた前記制御弁を作動部材が作動させ、該制御弁が送給路を開くため、既存の制御弁を利用して送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げることができ、構造の簡素化及びコストの低減化を図ることができる。
また、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、前記操舵手段の操舵量は操舵中立位置に対して左又は右方向へほぼ最大となるが、前記制御弁は前記作動部材によって操舵手段の操舵方向と反対方向へ作動されているため、停車時に操舵手段を右又は左方向へ操舵するとき、前記送給路内の圧力を前記所定の圧力へ比較的早く上昇させることができ、停車時の操舵性、換言すれば据切り時の据切り性を向上することができる。
【0016】
発明に係るパワーステアリング装置は、前記制御弁は前記作動部材を収容した液室を有しており、前記減圧手段は前記リリーフ弁の出側と前記液室とを連通させた連通路を有していることを特徴とする。
【0017】
発明にあっては、リリーフ弁が開作動して送給路内の圧油をリリーフさせるときのリリーフ圧を利用して作動部材及び制御弁を作動させることができるため、作動部材の動力源を特別に設ける必要がなく、小型化及びコストの低減化を図ることができる。
【0018】
発明に係るパワーステアリング装置は、前記アクチュエータは複動式の油圧シリンダを用いてなり、該油圧シリンダのピストンロッドは伝動部材を介して前記リリーフ弁を開作動させるカムを有していることを特徴とする。
【0019】
発明にあっては、ピストンロッドが最大ストローク側のエンド位置へ移動したとき、該ピストンロッドに設けられたカムが伝動部材を介してリリーフ弁を開作動させるため、ピストンロッドが前記エンド位置へ移動され、操舵補助の必要がなくなったとき、リリーフ弁で設定された圧力に関係なく、前記減圧手段により前記送給路を開いて該送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも確実に下げることができる。また、前記カム及び伝動部材を加えた簡単な構造で前記リリーフ弁を機械的に作動させることができ、コストの低減化を図ることができる。
【0020】
発明に係るパワーステアリング装置は、前記操舵手段は操舵輪と、該操舵輪に繋がる回転が可能な上側軸と、該上側軸にトーションバーを介して連結された下側軸とを有しており、前記制御弁は前記上側軸に連結され、前記作動部材が接離する当接凹部が設けられたバルブスプールと、前記下側軸に連結され、前記液室が設けられたバルブボディとを有しており、前記作動部材の作動により前記バルブスプールを回転させるようにしてあることを特徴とする。
【0021】
発明にあっては、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、送給路に設けられた前記制御弁のバルブスプールを作動部材が回転させ、該バルブスプールが送給路を開くため、既存の制御弁を利用して送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げることができ、構造の簡素化及びコストの低減化を図ることができる。また、送給路内の圧力が所定の圧力を超え、操舵補助の必要がなくなった状況であるとき、前記操舵輪の操舵量は操舵中立位置に対して左又は右方向へほぼ最大となるが、前記バルブスプールは前記作動部材によって操舵輪の操舵方向と反対方向へ作動されているため、停車時に操舵輪を右又は左方向へ操舵するとき、前記送給路内の圧力を前記所定の圧力へ比較的早く上昇させることができ、停車時の操舵性、換言すれば据切り時の据切り性を向上することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1
図1は本発明に係るパワーステアリング装置の全体構成を示すブロック図、図2は制御弁部分の拡大縦断面図、図3は要部の構成を示す拡大断面図、図4は減圧手段部分の拡大断面図、図5は図4のV −V 線の断面図である。
【0023】
このパワーステアリング装置は、モータ1によって駆動されるベーンポンプ、ギヤポンプ等のポンプ2と、該ポンプ2の吐出部に送給路3を介して連通し、舵取機構4に装着されたアクチュエータとしての操舵補助用の油圧シリンダ5と、操舵手段6と、前記送給路3の途中に設けられ、前記操舵手段6の操舵により駆動されて前記圧油の前記油圧シリンダ5への送給/排出を制御する制御弁7と、前記送給路3の途中から分岐したリリーフ路10に設けてあり、前記送給路3内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記リリーフ路10を開いて前記圧油を逃がすリリーフ弁8と、該リリーフ弁8が開作動したとき、前記送給路3内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段9とを備えており、前記油圧シリンダ5の作動によって操舵補助するように構成されている。
【0024】
舵取機構4は、公知のように、車体の左右方向に延設されて軸長方向への移動が可能な舵取軸41と、該舵取軸41の両端部に連結されたナックルアームとを備え、舵取軸41の両方向への移動によりナックルアームを押し引きし、該ナックルアームに支持された操向輪A,Aを左右に操向させるものであり、この操向は前記油圧シリンダ5のピストンロッドを兼ねる舵取軸41の軸長方向への移動によって行われる。
【0025】
アクチュエータとしての油圧シリンダ5は、ピストンロッド51の中間部に設けられたピストン52の両側にて油密に封止された一対の油室5a,5bをシリンダケース53の内側に形成してなり、これらの油室5a,5bへの外部からの圧油送給に応じてピストン52の両側に発生する圧力差により前記ピストンロッド51を軸長方向へ押し引きし、該ピストンロッド51が兼ねる舵取軸41に軸長方向の移動力を加える構成となっている。この舵取軸41の一端側にはラック歯43と、該ラック歯43の両端側でラジアル方向へ突設された一対のカム44,44とを設けてある。
【0026】
該カム44,44はピストンロッド51が操舵中立位置に対し左方向又は右方向へほぼ最大ストローク分移動されたエンド位置で前記リリーフ弁8に設けられた後記する伝動部材と当接して前記リリーフ弁8を開作動させることが可能としてある。
【0027】
制御弁7はバルブスプール7aと、該バルブスプールaの周りに同軸上での相対回転を可能として挿嵌されたバルブボディ7bとを備える。円筒形をなすバルブボディ7bの内周面には、夫々等しい幅を有する8個の第1の油溝70…が周方向に等配をなして並設され、また、バルブボディ7bの内径と略等しい外径を有する厚肉円筒形のバルブスプール7aの外周面には、同様に、夫々等しい幅を有する8個の第2の油溝71…が周方向に等配をなして並設されている。
【0028】
バルブスプール7aはバルブボディ7bの内側に同軸上での相対回転を可能として嵌合してある。第1の油溝70…と第2の油溝71…とは、前記操舵輪4の操舵が中立状態において、図3に示す如く周方向に千鳥配置され、夫々の両側に相隣するものと連通するように位置決めされている。
【0029】
以上の構成により、バルブボディ7bの第1の油溝70…の夫々は、バルブスプール7aの第2の油溝71…間のランドに対向し、また、バルブスプール7aの第2の油溝71…の夫々は、バルブボディ7bの第1の油溝70…間のランドに対向して、バルブボディ7bとバルブスプール7aとの嵌合周上には、第1の油溝70…の内側(幅方向両側の溝縁間)の8つの油室と、第2の油溝71…の外側(幅方向両側の溝縁間)の8つの油室とが、夫々の間に連通部を有して交互に並んだ状態となる。
【0030】
バルブボディ7bとバルブスプール7aとは相対角変位が可能であり、前記各油室間の連通部、即ち、油溝70…,71…の幅方向両側の溝縁間は、前記相対角変位に応じて夫々の連通面積(絞り面積)を増減する絞り部aとして作用する。
【0031】
バルブスプール7aの第2の油溝71…により形成された8つの油室の内、1つおきに位置する4つは、バルブボディ7bの周壁を貫通し、夫々の油溝71…の外側に開口を有する各別の給油孔72…及び該給油孔72…に接続された送給路3を介して前記ポンプ2の吐出部に接続され、該ポンプ2から圧油の供給がなされる給油室を構成している。これに対し、残りの4つの油室は、バルブスプール7aを半径方向に貫通し、夫々の油溝71…の底部に開口を有する各別の排油孔73…及びバルブスプール7a内側の中空部を介して排油先となる油タンクTに接続され、該油タンクTへの排出油の通路となる排油室を構成している。
【0032】
一方、第1の油溝70…の内側に形成された8つの油室の内、前記給油室に周方向の同側にて相隣する4つの油室は、バルブボディ7bの周壁を貫通し、夫々の油溝70…の底部に開口を有する各別の送給孔74…及び該送給孔74…に接続された連通油路75を介して圧油の送給先である油圧シリンダ5の一方の油室5aに接続され、この油室5aへの第1の送給室を構成しており、残りの4つは、同様の送給孔74…及び該送給孔74…に接続された連通油路76を介して前記油圧シリンダ5の他方の油室5bに接続され、該油室5bへの第2の送給室を構成している。従って、給油室の両側には、第1の送給室又は第2の送給室を経て排油室に至る油路が夫々形成され、給油室と送給室及び排油室と送給室とが絞り部aを介して連通される。
【0033】
さらに、バルブスプール7aの軸長方向一端側の外側には断面略半円形の当接凹部11が周方向に離間して複数個設けてあり、バルブボディ7bの軸長方向一端側には前記当接凹部11との接触/離脱が可能な作動部材としての複数の押体12と、該押体12を移動可能に収容し、連通路13を介して前記リリーフ路10の出側と連通する液室14と、前記押体12を前記当接凹部11と離間する方向へ付勢する付勢ばね15とが設けてある。
【0034】
以上の如く構成された制御弁7は操舵手段6に装着されている。
この操舵手段6は操舵輪61と、該操舵輪61にその上端が繋がる操舵軸62と、該操舵軸62の下端に繋がる円筒形の上側軸63と、前記舵取軸41に設けられたラック歯43と噛合するピニオン64を有し、前記上側軸63にトーションバー65を介して同軸的に連結された下側軸63bとを備え、上側軸63及び下側軸63bを前記トーションバー65の捩れの範囲内で相対角変位が可能としてある。この相対角変位の量は最大で約5°である。
【0035】
上側軸63の軸長方向中間には前記バルブスプール7aが一体的に形成されており、下側軸63bの上端には連結ピン66を介して前記バルブボディ7bが一体回転を可能に連結されており、また、上側軸63、下側軸63b及びバルブボディ7bがハウジング67に回転可能に収容されている。
【0036】
このハウジング67の内側には前記液室14の夫々に連通する環状油溝16が設けてあり、該環状油溝16と前記連通路13とが連通している。
【0037】
リリーフ弁8は、前記送給路3の中間から分岐したリリーフ路10の途中に設けてあり、前記送給路3及びタンクTに連通するリリーフ孔を有する弁ハウジング81と、該弁ハウジング81内に設けられ、送給路3の油圧力によって開作動する弁体82と、該弁体82を閉方向へ付勢する弁ばね83と、該弁ばね83の撓み量を変え、弁体82が作動する圧力を調整する圧力調整体とを備えており、前記ポンプ2が発生した圧油の圧力が前記弁ばね83の力に対抗する所定の圧力を超えたとき、弁体82が開作動し、前記送給路3内の圧油をタンクTへ逃がしつつ送給路3内の圧力を前記所定の圧力となるように下げ、換言すればポンプ2の負荷を所定の負荷に下げ、送給路3内の圧力が前記所定の圧力未満になるとき前記弁ばね83の力で前記弁体82が閉作動し、送給路3内の圧力が前記所定の圧力となるように構成されている。
【0038】
前記弁体82には前記弁ハウジング81を前記弁体82の作動方向へ貫通して外側へ突出し、その先端が前記ピストンロッド51のカム44,44との当接が可能な棒状の伝動部材17が設けてあり、該伝動部材17が前記カム44,44と当接したとき、前記弁体82を弁ばね83の力に抗して開作動させるようにしてある。
【0039】
減圧手段9は、前記弁体82に設けられた伝動部材17と、前記ピストンロッド51に互いに離間して設けられた前記カム44,44と、前記連通路13と、前記環状油溝16、前記液室14、前記付勢ばね15、前記押体12及び前記当接凹部11とを備え、前記リリーフ弁8の弁体82が開作動するとき、リリーフ路10を開き、該送給路3内の圧力を下げるようにしてある。
【0040】
以上の如く構成されたパワーステアリング装置は、モータ1によってポンプ2が駆動され、該ポンプ2が発生した圧油は送給路3から制御弁7の給油孔72…へ供給される。このとき、操舵輪61の操舵中立位置からの操舵量が所定値以下に小さい場合、制御弁7の絞り部aの絞り面積が変化しないため、給油孔72…へ供給された圧油は給油室及び排油室を経て排油孔73…からタンクTへ排出され、油圧シリンダ5による操舵補助はなされない。
【0041】
図6は油圧シリンダ内の圧油の圧力と流量との関係、モータが消費する電流との関係を示す油圧特性図である。
操舵輪61の操舵中立位置(図6ではb点)からの左又は右方向への操舵量が所定値を超えて大きくなった場合、制御弁7のバルブスプール7aとバルブボディ7bとの間に前記トーションバー65の捩れを伴って相対角変位が生じ、前記絞り部aの絞り面積が変化する結果、前記ポンプ2の負荷が増加し、該ポンプ2が発生する圧油の圧力がリリーフ弁8で設定された所定の圧力(図6ではc点)以下の領域で図6の如く上昇し(流量は減少)、ポンプ2からの圧油は、絞り面積を増した側の絞り部aを経て同側に相隣する給油室に導入され、該給油室に連通する送給孔74及び連通油路75,76から油圧シリンダ5の一方の油室5a又は5bに送給される。これにより油圧シリンダ5は、他方の油室5b又は5aとの間に生じる圧力差に応じた油圧力を発生し、この油圧力が操舵補助力として舵取機構4に加えられることとなる。
【0042】
そして、操舵輪61の操舵に伴い油圧シリンダ5のピストンロッド51が最大ストローク側のエンド位置へ移動されたとき、ピストンロッド51の移動が停止し、操舵補助の必要がなくなるとともに、前記絞り面積を減らした側の絞り部aが完全に閉じることになるため、ポンプ2が過負荷となり、該ポンプ2が発生する圧油の圧力がリリーフ弁8で設定された所定の圧力(図6ではc点)を超え、該リリーフ弁8の弁体82が弁ばね83の力に打ち勝って開作動を始め、ポンプ2の過負荷を解消することができるとともに、リリーフ弁8の弁体82に設けられた伝動部材17がピストンロッド51のカム44,44に当接し、該カム44,44及び伝動部材17によって前記弁体82を機械的に移動させることができ、前記送給路3内の圧油を、リリーフ路10、連通路13及び環状油溝16を介して液室14へ供給し、該液室14内の圧力を上昇させることができる。
【0043】
図7は減圧手段が作動した状態を示す拡大断面図である。
この液室14内の圧力により押体12が付勢ばね15の力に抗して移動しつつバルブスプール7aの当接凹部11を押圧し、前記トーションバー65の捩れを戻しつつバルブスプール7aを前記操舵輪61による回転方向と反対方向へ回転させ、前記絞り面積を減らした側の絞り部aの絞り面積を増加させ、前記送給路3内の圧油を前記排油孔73…からタンクTへリリーフさせることができる。
【0044】
これにより、送給路3内の圧力をリリーフ弁8で設定された前記所定の圧力よりも下げることができるため、換言すればモータ1及びポンプ2をほぼ無負荷で回転させることができる程度の電流、圧力となるまで下げることができるため、モータ1及びポンプ2の負荷をなくすることができ、送給路3内の圧力が所定の圧力を超える状況であるときのモータ1の動力消費を低減することができる。
【0045】
因に、本願発明にあっては、送給路3内の圧力が所定の圧力を超える状況であるとき、換言すれば送給路3内の圧油をリリーフするときにおけるモータ1の動力消費を前記した従来のものに比較して約1割(1MPa)分の減少ができた。
【0046】
また、リリーフ弁8の弁体82は前記カム44,44及び伝動部材17によって機械的に開放されているため、送給路3内の圧力が所定の圧力よりも下がるときのリリーフ弁8の発熱を良好に抑制することができる。
【0047】
実施の形態2
図8は実施の形態2の要部の構成を示す拡大断面である。
実施の形態2のパワーステアリング装置は、前記減圧手段9を構成する前記カム44,44及び前記伝動部材17をなくし、前記リリーフ弁8の出側、換言すれば前記リリーフ路10の出側を前記連通路13及び環状油溝16を介して前記液室14と連通させるように構成したものである。
【0048】
この実施の形態2においては、操舵輪61の操舵に伴い油圧シリンダ5のピストンロッド51が最大ストローク側のエンド位置へ移動され、ポンプ2が過負荷となり、該ポンプ2が発生する圧油の圧力がリリーフ弁8で設定された所定の圧力を超え、該リリーフ弁8の弁体82が弁ばね83の力に打ち勝って開作動を始めたとき、リリーフ弁8の出側へ排出された圧油は連通路13及び環状油溝16を介して液室14へ供給され、該液室14内の圧力を上昇させることができる。
【0049】
これにより、前記押体12を移動させて当接凹部11を押圧し、前記トーションバー65の捩れを戻しつつバルブスプール7aを前記操舵輪61による回転方向と反対方向へ回転させ、前記絞り面積を減らした側の絞り部aの絞り面積を増加させ、前記送給路3の圧油を前記排油孔73…からタンクTへ排出させることができる。従って、送給路3内の圧力をリリーフ弁8で設定された前記所定の圧力よりも下げることができ、モータ1及びポンプ2の負荷を小さくすることができ、送給路3内の圧力が所定の圧力を超える状況であるときのモータ1の動力消費を低減することができる。
【0050】
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用の説明を省略する。
【0051】
尚、以上説明した実施の形態では、アクチュエータとして油圧シリンダ5を用いたが、その他、油圧モータを用い、該油圧モータの回転をボールネジ機構等の動力変換機構を介して舵取軸41に伝達し、該舵取軸41を軸長方向へ移動させるようにしてもよい。
【0052】
また、以上説明した実施の形態では、減圧手段9として舵取軸41を兼ねたピストンロッド51に互いに離間したカム44,44を設け、該カム44,44に当接する伝動部材17を介してリリーフ弁8を機械的に開作動させるようにしたが、その他、前記ピストンロッド51が所定位置へ移動したときに動作するリミットスイッチ等のセンサ、前記ピストンロッド51の軸長方向への移動量(作動量)を検出するセンサを用い、さらに、前記リリーフ弁8として電磁弁を用い、また、作動部材として電磁ソレノイドを用い、前記センサが検出した検出値に基づいて前記電磁弁、電磁ソレノイドを作動させるようにしてもよい。また、アクチュエータとして前記油圧モータを用いた場合、前記センサは油圧モータの回転量(作動量)を検出するロータリエンコーダを用いてもよい。以上の如くセンサが検出した検出値に基づいて前記送給路3の圧油を下げるように構成した場合、前記リリーフ弁8をなくし、前記制御弁7を作動させるようにしてもよい。
【0053】
また、前記制御弁7は操舵手段6の操舵に応じて絞り量を制御することができるものであればその構造は特に制限されない。
【0054】
また、本発明のパワーステアリング装置は、図1に示す如く操舵輪等の操舵手段が操舵軸等の伝動部材を介して舵取機構に機械的に連結されているリンク式である他、前記操舵手段が前記舵取機構に機械的に連結されていないステアバイワイヤ式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパワーステアリング装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るパワーステアリング装置の制御弁部分の拡大縦断面図である。
【図3】本発明に係るパワーステアリング装置の要部の構成を示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係るパワーステアリング装置の減圧手段部分の拡大断面図である。
【図5】図4のV −V 線の断面図である。
【図6】本発明に係るパワーステアリング装置の油圧シリンダ内の圧油の圧力と流量との関係、モータが消費する電流との関係を示す油圧特性図である。
【図7】本発明に係るパワーステアリング装置の減圧手段が作動した状態を示す拡大断面図である。
【図8】本発明に係るパワーステアリング装置の実施の形態2の要部の構成を示す拡大断面である。
【図9】従来のパワーステアリング装置の全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 モータ
2 ポンプ
3 送給路
5 油圧シリンダ
51 ピストンロッド
6 操舵手段
7 制御弁
8 リリーフ弁
9 減圧手段
11 当接凹部
12 押体(作動部材)
13 連通路
14 液室
17 伝動部材
44 カム

Claims (5)

  1. 操舵手段と、ポンプが発生した圧油を送給する送給路と、該送給路から送給された圧油によって作動し、前記操舵手段の操舵を補助するアクチュエータとを備え、該アクチュエータの作動によって操舵補助するようにしたパワーステアリング装置において、前記圧油の前記アクチュエータへの送給/排出を制御し、前記操舵手段に繋がる制御弁と、前記送給路内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記送給路を開いて該送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段を備え、該減圧手段は前記制御弁に、該制御弁を前記操舵手段が操舵されている方向と反対方向へ作動させる力を加え、前記圧油の前記アクチュエータへの送給を減らし減圧するように制御弁を作動させる作動部材を有していることを特徴とするパワーステアリング装置。
  2. 操舵手段と、ポンプが発生した圧油を送給する送給路と、該送給路から送給された圧油によって作動し、前記操舵手段の操舵を補助するアクチュエータと、前記送給路内の圧力が所定の圧力を超えたとき、前記送給路を開いて前記圧油を逃がすリリーフ弁とを備え、前記アクチュエータの作動によって操舵補助するようにしたパワーステアリング装置において、前記圧油の前記アクチュエータへの送給/排出を制御し、操舵手段に繋がる制御弁と、前記リリーフ弁が開作動したとき、前記送給路内の圧力を前記所定の圧力よりも下げる減圧手段を備え、該減圧手段は前記制御弁に、該制御弁を前記操舵手段が操舵されている方向と反対方向へ作動させる力を加え、前記圧油の前記アクチュエータへの送給を減らし減圧するように制御弁を作動させる作動部材を有していることを特徴とするパワーステアリング装置。
  3. 前記制御弁は前記作動部材を収容した液室を有しており、前記減圧手段は前記リリーフ弁の出側と前記液室とを連通させた連通路を有している請求項1又は2記載のパワーステアリング装置。
  4. 前記アクチュエータは複動式の油圧シリンダを用いてなり、該油圧シリンダのピストンロッドは伝動部材を介して前記リリーフ弁を開作動させるカムを有している請求項又は記載のパワーステアリング装置。
  5. 前記操舵手段は操舵輪と、該操舵輪に繋がる回転が可能な上側軸と、該上側軸にトーションバーを介して連結された下側軸とを有しており、前記制御弁は前記上側軸に連結され、前記作動部材が接離する当接凹部が設けられたバルブスプールと、前記下側軸に連結され、前記液室が設けられたバルブボディとを有しており、前記作動部材の作動により前記バルブスプールを回転させるようにしてある請求項又は記載のパワーステアリング装置。
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