JP3937900B2 - 排気微粒子捕集用フィルタの再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用エンジンにおける排気微粒子捕集用フィルタの再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用エンジンの排気浄化装置として、排気通路に排気中の微粒子を捕集するフィルタを設ける場合、フィルタにおける微粒子の堆積量が規定量に達したときに再生時期と判断し、排気温度を上昇させるなどの手段を用いて、堆積した微粒子を燃焼させることにより、フィルタの再生を行っている。
【0003】
また、特許第3106502号公報に記載の技術では、車両の走行状態(渋滞情報を含むカーナビシステムからの情報)に基づいて、エンジンから排出される排気ガスの状態量を予測し、この予測された排気ガス状態量に応じてフィルタの再生時期を決定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では、フィルタに堆積した微粒子が規定量に到達した段階で、一律に再生運転を実施するという構成になっていたため、再生途中で再生が続行できなくなるような運転条件に飛び込んだ場合、微粒子の燃焼が中断され、フィルタの外周部に未再生箇所が残ってしまう。このような状態が繰り返されると、フィルタにおける微粒子堆積の偏りが大きくなり、部分的に許容堆積量を超えて、再生時の温度勾配が大きくなりすぎ、これにより担体の耐久性に不具合を生じるという問題点があった。
【0005】
また、フィルタに堆積した微粒子が規定量に到達した段階で、一律に再生運転を実施するという構成では、排気温度が低い、低速低負荷域で再生運転を行う場合もあり、排気温度上昇代が大きくなるために、燃費の悪化代も大きくなるという問題点もあった。
尚、前記公報に記載の技術には、再生が困難となる状態(渋滞、目的地に近い等)で再生を行わないことを前提として、渋滞が予測される場合に再生に入ることを禁止することの開示はない。また、目的地が近い場合に再生に入ることを禁止することの開示もない。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、再生が困難となる状態が予測される場合に再生に入ることを禁止して、フィルタでの偏った堆積による熱破損を防止し、また燃費の悪化を防止することのできる排気微粒子捕集用フィルタの再生装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明では、車両用エンジンの排気通路に配置されて排気中の微粒子を捕集するフィルタの再生時期に、該フィルタに捕集されている微粒子を燃焼させて該フィルタを再生する排気微粒子捕集用フィルタの再生装置において、車両の走行状態を予測する手段を備え、該予測手段からの情報に基づき、フィルタの再生が困難となる状態が予測される場合に、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できるかどうかを判断し、再生を完了できると判断した場合に、再生の開始を許可し、再生を完了できないと判断した場合に、再生の開始を禁止することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明では、フィルタの再生が困難となる状態になる迄の予測到着所要時間と、再生完了迄の予測再生所要時間とを比較して、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できるかどうかを判断することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明では、前記予測到着所要時間は、少なくとも残距離と平均車速とに基づいて演算されることを特徴とする。
請求項4の発明では、前記予測再生所要時間は、少なくとも平均車速に基づいて演算されることを特徴とする。
請求項5の発明では、フィルタに捕集された排気微粒子の堆積量に対し、最大堆積量閾値と、再生許可堆積量閾値とを有し、最大堆積量閾値>再生許可堆積量閾値の関係にあり、フィルタの微粒子堆積量が再生許可堆積量閾値を超えた場合であって、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できないと判断された場合に、再生の開始を禁止することを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明では、フィルタの微粒子堆積量が最大堆積量閾値を超えた場合、再生が困難となる状態になる迄に再生を完了できるできないに拘らず、再生の開始を許可することを特徴とする。
請求項7の発明では、前記フィルタの再生が困難となる状態は、渋滞(渋滞地点への到着)であることを特徴とする。
【0011】
請求項8の発明では、前記フィルタの再生が困難となる状態は、目的地への到着であることを特徴とする。
【0012】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、車両の走行状態を予測する手段(例えばカーナビシステム)を用いて、フィルタの再生の中断が予測される場合には、再生を開始せず、延期することで、フィルタでの偏った堆積を防止できて熱耐久を損なうことを防止できると共に、燃費の悪化を防止できるという効果が得られる。
【0013】
また、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できると判断した場合に、再生の開始を許可するので、確実に再生を完了できる。
請求項2の発明によれば、フィルタの再生が困難となる状態になる迄の予測到着所要時間と、再生完了迄の予測再生所要時間とを比較して判断するので、正確に判断することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、予測到着所要時間を残距離と平均車速とに基づいて的確に演算できる。
請求項4の発明によれば、予測再生所要時間を平均車速に基づいて的確に演算できる。
請求項5の発明によれば、最大堆積量閾値に対し、余裕をもって設定される再生許可堆積量閾値により判断するので、再生を延期しても、再生の機会を保障できる。
【0015】
請求項6の発明によれば、最大堆積量閾値を超えた場合は、即座に再生の開始を許可するので、最終的な再生の機会を保障できる。
請求項7の発明によれば、渋滞に巻込まれて再生困難となる場合に、再生に入ることを確実に防止できる。
請求項8の発明によれば、目的地に到着して再生困難となる場合に、再生に入ることを確実に防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すディーゼルエンジンのシステム図である。
ディーゼルエンジン1の各気筒の燃焼室2には、吸気系のエアクリーナ3から、過給機の吸気コンプレッサ4、インタークーラ5、吸気絞り弁6、及び、吸気マニホールド7を経て、空気が吸入される。そして、燃焼室2内に直接、燃料噴射弁8より燃料が噴射供給されて、圧縮着火により燃焼する。燃焼後の排気は、排気系の排気マニホールド9、過給機の排気タービン10、排気管11を経て排出される。
【0017】
ここで、ディーゼルエンジン1から排出される排気中の微粒子(Particulate Matter;以下「PM」という)を浄化するため、排気管11の途中に、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(以下「DPF」という)12を設け、これによりPMを捕集する。
DPF12は、図2の斜視図に示すように、多孔質セラミックからなり、円柱状の外形を有するハニカム構造体であり、図示しない円筒状のケーシング内に保持マットを介して収納される。
【0018】
DPF12の内部構造について説明すると、ハニカム構造体の拡大断面図である図3に示すように、ハニカム構造体の多孔質の格子状セル壁21により仕切られて複数の並列なセル空間22が設けられ、各セル空間22はそれぞれ排気流れ方向に延在している。そして、セル空間22の隣接するもの同士において、一方は出口側を、他方は入口側を、それぞれ封止材23、24により交互に封止してある。
【0019】
入口側が開口し出口側を封止材23により封止されているセル空間22が排気流入側セル空間22Aであり、入口側を封止材24により封止され出口側が開口しているセル空間22が排気流出側セル空間22Bである。
ここで、エンジン1からの排気は、排気流入側セル空間22Aに流入し、多孔質のセル壁21(その気孔)を介してのみ、排気流出側セル空間22Bに流出するので、セル壁21にて排気中のPMを確実に捕集することができる。
【0020】
DPF12でのPMの捕集によりPM堆積量が増加すると、排気抵抗が増大して、運転性が悪化する。よって、所定の再生時期か否かを判断し、再生時期の場合は、排気温度を上昇させる手段、例えば燃料噴射弁8による膨張行程又は排気行程での追加的な燃料噴射(ポスト噴射)などを用いて、PMを燃焼させることにより、DPF12を再生する。尚、堆積したPMはおよそ550℃以上で燃焼する。
【0021】
しかしながら、DPF12に堆積したPMが規定量に到達した段階で、一律に再生運転を実施するようにすると、例えば図4に示すように、再生中に渋滞に巻き込まれ、車速が低下すると、エンジンの運転状態が再生許可領域から外れ、その結果、再生が中断されて、完全に再生できないことがある。
再生が中断すると、図5に示すように、DPF12の特に担体温度が低い上流側の外周部が未再生領域となり、燃焼できなかったPMが残る。このような状態から再生運転を再開しても、PM堆積が少なく、かつ偏っているので、十分な燃焼は望めず、再び堆積するのを待って再生するしかない。そして、このような中途半端な再生が何度か繰り返されると局所的に許容堆積量を大きく上回る部分ができるようになり、再生時の温度勾配が大きくなりすぎて、DPF12に許容を超える熱応力が加わる可能性がある。
【0022】
また、渋滞時等、排気温度が低い低速低負荷域で再生運転を行うようになると、必要とする排気温度の上昇代が大きくなるために、燃費の悪化代も大きくなるという問題点もある。
そこで本発明では、車両の走行状態を予測する手段として、カーナビシステム(カーナビゲーションシステム)を用い、再生が困難となる状態となって再生の中断が予測される場合には再生を行わず、延期する。尚、DPFの再生が中断される最も典型的な例は、再生運転中にエンジンを停止する場合とアイドリングにされる場合とである。これらの場合にはDPFの担体温度を再生に必要な温度に保つことが不可能である。
【0023】
従って、カーナビ情報を用いて、これらの場合に陥ることを防止するものであり、具体的には、DPFの再生が必要な時期が訪れても、(1)目的地が近すぎて十分な再生運転時間を確保できない場合、及び、(2)渋滞に巻込まれることが予想されて十分な再生運転時間を確保できない場合には、再生時期を延期して、再生の中断を未然に防ぐ。
【0024】
このため、図1に示してあるように、各種センサ情報に基づいて燃料噴射弁8や吸気絞り弁6の作動を制御するエンジンコントロールユニット(以下ECUという)13に、カーナビシステム14、特に外部情報源15より渋滞情報を受信可能なカーナビシステム14を接続し、これより各種情報を取得可能とする。尚、図1中の16はDPF12の前後差圧を検出する差圧センサであり、DPF12のPM堆積量の検出のため、その信号がECU13に入力されている。
【0025】
ECU13では、これらの情報を勘案、考慮して、DPF12の再生時期を制御する。
図6はECU13でのDPF12の再生開始制御のフローチャートである。
S1では、DPF12のPM堆積量を検出する。具体的には、図1中の差圧センサ16によりDPF12の前後差圧を検出し、これに基づいてPM堆積量を推定する。
【0026】
S2では、PM堆積量が再生許可堆積量(閾値)を超えたか否かを判定する。
PM堆積量が再生許可堆積量を超えている場合は、更にS3に進み、PM堆積量が最大堆積量(閾値)を超えたか否かを判定する。
ここで、図7を参照し、最大堆積量(閾値)とは、PMの堆積と再生を繰り返し行っても担体に許容以上の熱応力が加わることのない最大の堆積量であり、この量に到達した段階では無条件に再生を開始する。
【0027】
また、再生許可堆積量(閾値)とは、最大堆積量より小さいが、再生運転を行うと一定期間内にほぼ100%再燃焼する堆積量で、経験的には、最大堆積量のおよそ80%であり、この量に到達後、最大堆積量に達する迄の間、条件が整った場合に再生を開始する。
従って、S2での判定でNO、すなわちPM堆積量が再生許可堆積量に達していない場合は、再生時期ではないので、本フローを終了する。
【0028】
S2の判定でYES、S3の判定でNOの場合は、PM堆積量が再生許可堆積量を超えているが、最大堆積量より少ない場合であり、この場合はS4へ進む。
S4では、カーナビシステム14に目的地の登録がなされているか否かを判定し、目的地の登録がなされている場合は、S5へ進む。
S5では、カーナビシステム14により目的地への経路の渋滞情報を取込む。
【0029】
次のS6では、DPF12の再生を開始した場合の再生完了迄の予測再生所要時間T1を演算する。
この予測再生所要時間T1の演算については、図8により説明する。
ECU13には、データロガーが備えられ、カーナビシステム14からの走行情報に基づいて、過去の再生履歴情報(平均車速と再生所要時間との関係)を記憶している。すなわち、再生する毎に、再生にかかった時間と、このときの平均車速(カーナビシステムからの走行情報)とを関連づけて記憶することで、再生時の平均車速と再生所要時間の傾向を統計的に整理してある。尚、再生時の平均車速と再生所要時間の傾向を統計的に整理する代わりに、マップデータとして持たせることも可能である。
【0030】
従って、再生所要時間を予測する際は、カーナビシステム14から得られる平均車速より、過去の再生履歴情報(又はマップ)を参照して、予測再生所要時間T1を求める。
尚、再生所要時間は、再生速度が排気温度に大きく依存していること、及び、排気温度は車両の平均速度と相関があることから、平均車速に基づいて予測することができるのである。
【0031】
次のS7では、目的地又は渋滞地点迄の予測到着所要時間T2を演算する。
この予測到着所要時間T2の演算についても、図8により説明する。
カーナビシステム14にて、現在の走行地点から目的地又は渋滞地点迄の残距離を求め、これを現在の平均車速で除算して、目的地又は渋滞地点迄の予想到着所要時間T2=残距離/平均車速を求める。従って、ECU13では、カーナビシステム14から、目的地又は渋滞地点迄の予想到着所要時間T2を読込むことになる。
【0032】
次のS8では、目的地又は渋滞地点到着迄に再生可能か否か、すなわち、予測再生所要時間T1<予測到着所要時間T2か否かを判定する。
この判定でNO(T1>T2)の場合は、目的地又は渋滞地点到着迄に再生不能で、再生中断に至ると予想されるので、再生を延期すべく、本フローを終了する。
【0033】
この判定でYES(T1<T2)の場合は、目的地又は渋滞地点到着迄に再生可能であるので、S10へ進んで、DPF12の再生を開始する。具体的には、排気温度を上昇させる処理、例えば燃料噴射弁8によるポスト噴射を開始する。
S4の判定でNO、すなわちカーナビシステム14に目的地の登録がなされていない場合は、S9へ進む。この場合は、S9で再生可能な運転条件か否かのみをチェックして、再生可能な運転条件の場合に、S10へ進んで、再生を開始する。
【0034】
S3の判定でYES、すなわちPM堆積量が最大堆積量を超えた場合は、直ちに無条件で再生を開始すべく、S10へ進んで、再生を開始する。
図9は本実施形態でのPM堆積と再生の例を示しており、PM堆積量が再生許可堆積量を超えても、その時点で再生を開始すると再生中に渋滞に巻込まれることが予想されるので、再生を延期し、渋滞を抜け出た後に、再生を開始して、再生を完了した例である。このようにして再生の中断を防止できるために、DPFを完全に再生をすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示すエンジンのシステム図
【図2】 DPFの概略斜視図
【図3】 DPFの内部構造を示す拡大断面図
【図4】 従来において再生中断に至る例を示す図
【図5】 再生中断時のDPFの状態を示す図
【図6】 本発明での再生開始制御のフローチャート
【図7】 PM堆積量(最大堆積量及び再生許可堆積量)の説明図
【図8】 ECU及びカーナビでの各処理を示すブロック図
【図9】 本発明において再生開始→完了に至る例を示す図
【符号の説明】
1 ディーゼルエンジン
6 吸気絞り弁
7 吸気マニホールド
8 燃料噴射弁
9 排気マニホールド
11 排気管
12 DPF
13 ECU
14 カーナビシステム
15 外部情報源
16 差圧センサ
Claims (8)
- 車両用エンジンの排気通路に配置されて排気中の微粒子を捕集するフィルタの再生時期に、該フィルタに堆積している微粒子を燃焼させて該フィルタを再生する排気微粒子捕集用フィルタの再生装置において、
車両の走行状態を予測する手段を備え、該予測手段からの情報に基づき、フィルタの再生が困難となる状態が予測される場合に、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できるかどうかを判断し、再生を完了できると判断した場合に、再生の開始を許可し、再生を完了できないと判断した場合に、再生の開始を禁止することを特徴とする排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。 - フィルタの再生が困難となる状態になる迄の予測到着所要時間と、再生完了迄の予測再生所要時間とを比較して、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できるかどうかを判断することを特徴とする請求項1記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。
- 前記予測到着所要時間は、少なくとも残距離と平均車速とに基づいて演算されることを特徴とする請求項2記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。
- 前記予測再生所要時間は、少なくとも平均車速に基づいて演算されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。
- フィルタに捕集された排気微粒子の堆積量に対し、最大堆積量閾値と、再生許可堆積量閾値とを有し、最大堆積量閾値>再生許可堆積量閾値の関係にあり、
フィルタの微粒子堆積量が再生許可堆積量閾値を超えた場合であって、フィルタの再生が困難となる状態になる迄に、再生を完了できないと判断された場合に、再生の開始を禁止することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。 - フィルタの微粒子堆積量が最大堆積量閾値を超えた場合、再生が困難となる状態になる迄に再生を完了できるできないに拘らず、再生の開始を許可することを特徴とする請求項5記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。
- 前記フィルタの再生が困難となる状態は、渋滞であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。
- 前記フィルタの再生が困難となる状態は、目的地への到着であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の排気微粒子捕集用フィルタの再生装置。
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