JP3937091B2 - 歩行補助具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は少ないエネルギーで移動できるように歩行を補助する歩行補助具に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
人間が陸上を移動するときのエネルギーを少なくすることが可能であり、且つ動力源を人力以外用いない比較的簡単な道具として、例えば自転車やローラースケートがある。
このうち自転車はエネルギー効率が良く、同一距離を歩行するのに比べて格段に少ない運動量で移動することが可能である。
しかし、自転車は大型であり、走行せずに持ち運ぶことはほとんど考慮されていない上、家や外出先において置き場所を確保しなければならない。このため自転車は、特に駅周辺などにおける放置自転車の問題が、大きな社会問題となっている。
【0003】
一方、ローラースケートは小型であるため上述したような問題が解消されているものの、ローラーが路面に常時接触して滑走する器具であり、滑走時や停止時など常に転倒の危険があり、思い通りに移動・停止するには、練習を積まなければならない。特に思いどおりに停止するにあたってはかなりの技術を必要とする。そして人が密集したり、車の交通量が多い個所で使用した場合には、スピードがつきすぎることもあり他人に迷惑を及ぼしがちで遊具の趣が強く、「歩行」の補助具としてはあまり適していない。
【0004】
そのようなことから本出願人は、特願平11−242047号(特開2001−137421公報)や特願2002−047672の特許出願に至っている。これらの発明によれば、歩行時の運動量を減少させ、楽に且つ速く歩行することができるとともに、携帯が可能で置き場所にも困らず、また履きこなすにあたりそれ程の習熟を必要としない歩行補助具を提供することが可能である。
【0005】
ところで前記本出願人が既に開示した特願平11−242047号の歩行補助具は、例えば足載置台(本発明における靴台に相当する部材)が上下動自在に支持されており、この足載置台が荷重により下降するのを抵抗をかけて遅らせる遅延下降制御装置等を搭載するものであり、また更に特願2002−047672の歩行補助具は、車輪にワンウエイクラッチ等を用いるものであり、両者共に構造を単純化するには一定の限界があり、歩行補助具を安価に提供することや、違和感なくすぐに乗りこなせるようなより自然な歩行感覚を目指すことを考えると、従来技術に満足することなく、更に研究を進める余地を見出すことも技術課題となっていた。
【0006】
【開発を試みた技術的課題】
本発明はこのような背景からなされたものであって、本出願人が既に出願に及んでいる発明と同様に、歩行時の運動量を減少させ、楽に且つ速く歩行することができるとともに、違和感なくすぐに乗りこなせるようなより自然な歩行感覚を得られ、しかも安価に提供することが可能な新規な歩行補助具の開発を試みたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項1記載の歩行補助具は、路面を走行するための転動体と、この転動体を支持する転動体支持体と、この転動体支持体に対し、前傾自在に設置される靴台と、この靴台に対し載置され、これに後傾自在に支持される靴と、前記靴台が前傾状態となったときに前方の転動体が制動される前制動システムと、前記靴が後傾状態となったときに後方の転動体が制動される後制動システムとを具備してなり、前記転動体は、車輪タイプの前輪と後輪との組み合わせであり、また前記転動体支持体と靴台とは、前輪の車軸のやや後方に設けられる靴台回動支持軸によって接続されたものであり、また前記靴台と靴とは、後車輪の車軸やや前方に設けられる靴回動支持軸によって、接続されているものであり、更にまた前記前制動システムは、靴台の前方下面若しくは靴の底面前方に前ブレーキシューが設けられ、靴台が前傾し前輪に対し、前記靴台の前方下面の前ブレーキシュー若しくは靴の底面前方の前ブレーキシューが、当接したときにこれを制動するものであり、更にまた前記後制動システムは、靴の底面後方に後ブレーキシューが設けられ、靴が後傾し、後輪に当接したときにこれを制動するものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、歩行補助具により滑走しながら歩けるため、歩行速度が速くなりながらも疲労が軽減される。前傾及び後傾が行われる構成のため、自然な歩行感で使用できる。また身体が前傾した際や後傾した際に転動体の転動が制動されるため、安全である。また本出願人が既に出願に及んでいる特願2000−211586(特開2001−137421)の歩行補助具のように昇降される足台に遅延下降制御装置を設けるものや、特願2002−47672の歩行補助具のように車輪にワンウエイクラッチ(逆転防止機構)を用いるものではないため、構造がシンプルであり、安価な実施が可能である。
また本発明よれば、制動システムが複雑な構造ではなく、製造コストが抑えられるとともに、メンテナンスも容易で例えばブレーキシュー等を購入して自分で交換を行うことも可能である。また身体が前傾した際や後傾した際に転動体が確実に制動され、安全である。
【0008】
また請求項2記載の歩行補助具は、前記要件に加え、前記転動体支持体と靴台とを引き寄せ合う弾性体が転動体支持体と靴台との間に掛け止めされていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、足を上げた際に、空中で転動体支持体と、靴台とが離れてばたつくことが防がれ、歩行補助具の着地がうまくいかないことも防止される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図示の実施の形態に基づき説明する。図中符号1に示すものが本発明に係る歩行補助具であり、このものは図1、2等に示されるように、路面Rを走行するための転動体2と、転動体2を支持する転動体支持体3と、この転動体支持体3に対し、前傾自在に設置される靴台4と、この靴台4に対し載置され、これに後傾自在に支持される靴5と、前記靴台4が前傾状態となったときに前方の転動体2が制動される前制動システムと、前記靴5が後傾状態となったときに後方の転動体2が制動される後制動システムとを具備している。
なお歩行補助具1は左足用と右足用の左右で一対を成すものであり、左足用と右足用のものでは靴5の形状が異なるのみであるため、共通した説明を行う。
【0010】
以下各部材について詳細に説明する。まず転動体2について説明する。転動体2はゴムローラや金属ローラなどの適宜の材質のローラ状の車輪が用いられるもので、前輪21と後輪22とを有している。
【0011】
なお転動体2は前後1輪ずつで構成するほか、図7(a)の転動体2の配置図に示すように前後2輪ずつで構成してもよいし、図7(b)に示すように前1輪で後2輪で構成することも可能である。また本実施の形態では前輪21と後輪22とは、同形状のものを用いるが、図7(c)に示すように異なる形状で実施してもよい。
【0012】
次に転動体支持体3について説明する。転動体支持体3は、図4の断面図に示されるように全体として矩形状を成す本体フレーム30により構成されるものであり、前部と後部に車軸31が固定して設けられ、この車軸31に対し前記転動体2が回動自在に取り付けられる。また前輪21を支持する車軸31のやや後方に、靴台4を回動自在に支持するための靴台回動支持軸33が軸受32によって支持される。また更に中央よりやや後方寄りに弾性体の一例である引っ張りコイルスプリング35を掛け止めるバネ掛けピン34が設けられている。また後輪22の車軸31のやや前方上面には、靴台4を平行な位置で支持し、それ以上後傾しないように止めるための靴台ストッパー30aが設けられている。
【0013】
次に靴台4について説明する。靴台4は、図5に示されるように矩形平板状をなし、前方下面に前記靴台回動支持軸33を支持するための前軸受41が設けられ、更に中央よりやや後方寄りに前記弾性体たる引っ張りコイルスプリング35を掛け止めるバネ掛けピン42が設けられている。靴台4は前記靴台回動支持軸33により前傾自在であり、水平方向より後方への回動は、前記転動体支持体3の靴台ストッパー30aによって回動が抑制されている。
また引っ張りコイルスプリング35の両端が前記転動体支持体3のバネ掛けピン34と、この靴台4のバネ掛けピン42にそれぞれ掛け止められることにより、歩行時において足を上げた際に、靴台4と転動体支持体3との間に間隔が開いてばたつかないようにされている。本発明に係る弾性体としては上記引っ張りコイルスプリング35のほか、合成や天然のゴムバンド等を用いることも可能である。また靴台4の後端部には靴5を回動自在に支持するための靴回動支持軸43が靴軸受44によって支持されるものである。また靴台4の下面前端には、前制動システムたる前ブレーキシュー45が設けられており、図1や図5等に示すように靴台4が一定角度以上前下がり状態になった際に、この前ブレーキシュー45が前輪21に直接当接することにより制動を行う。
【0014】
次に靴5について説明する。靴5はビジネスシューズタイプ、ブーツタイプや、ランニングシューズタイプなど種々のタイプの靴を用いることができるが、靴5底面後部に前記靴台4の後端を受け入れるための受入溝51が形成されている。また図2に示されるように受入溝51の左右の靴5の踵部には、貫通孔52が穿孔され、前記靴回動支持軸43が挿入されて外れ止めがなされている。靴5は踵部の半分位が靴台4から外れているため、前記靴回動支持軸43を回動中心として後傾自在であり、爪先部は、靴台4に載置されているため、靴台4に対して前方に傾倒しない構成とされている。
また靴5の底面後端には、後制動システムたる後ブレーキシュー53が設けられており、靴5が一定角度以上後下がり状態になった際に、この後ブレーキシュー53が後輪22に直接当接することにより制動を行う。
【0015】
また更に前ブレーキシステムは、靴台4の前方下面に前ブレーキシュー45を設けこれを前輪21に当接させる他、図9に示すように靴台4の先端を軸受32位までの長さとすることにより、靴5を靴台4に対し突出させて設置し、この靴4の底面前端に前ブレーキシュー45を設け、靴台4が前傾した際に靴底前端の前ブレーキシューを前輪21に当接するようにしてもよい。
【0016】
本発明の歩行補助具は一例として以上のような具体的な形態を有するものであって、以下この作動態様について説明する。
図6に示されるように、歩行補助具1の装着者は、例えば左足を前に出し、踵側から路面Rに着地させる。このとき靴台4は、後下がり状態に傾き、靴5底面の後ブレーキシュー53が後輪22に当接して後輪22はロックされる。従って左足は走行せずにその位置で止まっている。そしてこの左足に体重を載せながら、右足を爪先立ちのようにして後へ蹴る。このとき右足の靴台4は前下がり状態に傾き、靴台4前方下面の前ブレーキシュー45が前輪21に当接して前輪21がロックされるため、右足での路面Rのキックが行えるものである。
【0017】
そして上記右足を後へ蹴るのと同時に全体重を左足に預け左足の歩行補助具1により路面Rを滑走する。なおこのとき体重の重心を靴回動支持軸43と、靴台回動支持軸33との間(滑走時重心設定位置範囲B)にあるように身体を維持する。この状態では左足の靴台4は転動体支持体3に対し平行を保ち、転動体2に対し全く当接していない状態であるため、歩行補助具1は路面Rを滑走する。一方設置されていない右足の靴台4及び転動体支持体3も引っ張りコイルスプリング35により引き寄せられて、ばたつかないで平行状態を保っており、次の右足の着地がスムーズに行えるものである。
【0018】
そして左足の歩行補助具1により適宜の距離の滑走を行った後、右足を前に出し、踵側から路面Rに着地させる。なお以下は前記左足を前に出した場合と同様であり、この左右の歩行滑走を繰り返す。
なお身体のバランスを崩し、体が前傾したり後傾したときには前輪21または後輪22が制動されるため、安全である。
【0019】
以上のように本発明の歩行補助具1によれば、歩行の歩幅L1に加え、転動体2による滑走距離L2が加わるため、歩行速度が速く、また同一距離を歩く場合に比べ運動量が少なく済み、疲労が軽減される。
【0020】
【発明の効果】
請求項1記載の歩行補助具によれば、歩行補助具により滑走しながら歩けるため、歩行速度が速くなりながらも疲労が軽減される。前傾及び後傾が行われる構成のため、自然な歩行感で使用できる。また身体が前傾した際や後傾した際に転動体の転動が制動されるため、安全である。また本出願人が既に出願に及んでいる特願2000−211586(特開2001−137421)の歩行補助具のように昇降される足台に遅延下降制御装置を設けるものや、特願2002−47672の歩行補助具のように車輪にワンウエイクラッチ(逆転防止機構)を用いるものではないため、構造がシンプルであり、安価な実施が可能である。
また本発明よれば、制動システムが複雑な構造ではなく、製造コストが抑えられるとともに、メンテナンスも容易で例えばブレーキシュー等を購入して自分で交換を行うことも可能である。また身体が前傾した際や後傾した際に転動体が確実に制動され、安全である。
【0021】
また請求項2記載の歩行補助具によれば、転動体支持体3と靴台4とを引き寄せ合う弾性体が転動体支持体3と靴台4との間に掛け止めされているため、足を上げた際に、空中で転動体支持体3と、靴台4とが離れてばたつくことが防がれ、歩行補助具1の着地がうまくいかないことも防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の歩行補助具の使用状態を示す側面図である。
【図2】 同上縦断側面図である。
【図3】 同上前輪ロック時と後輪ロック時の状態を対比して示す縦断側面図である。
【図4】 図2中、A−A線で破断した状態を示す断面図である。
【図5】 図2中、B−B線で破断した状態を示す断面図である。
【図6】 同上作動態様を示す説明図である。
【図7】 転動体の構成ないし配置態様を異ならせた他の実施の形態を示す底面図並びに部分断面図である。
【図8】 ブレーキシューをブレーキドラムに当接させるようにした実施の形態を示す縦断側面図並びに縦断背面図である。
【図9】 前ブレーキシューを靴の底面前方に設けた前ブレーキシステムの他の実施の形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1 歩行補助具
2 転動体
21 前輪
22 後輪
3 転動体支持体
30 本体フレーム
30a 靴台ストッパー
31 車軸
32 軸受
33 靴台回動支持軸
34 バネ掛けピン
35 引っ張りコイルスプリング
36 鋼球
37 ブレーキドラム
37a 鋸歯
38 ブレーキドラム
4 靴台
41 前軸受
42 バネ掛けピン
43 靴回動支持軸
44 靴軸受
45 前ブレーキシュー
5 靴
51 受入溝
52 貫通孔
53 後ブレーキシュー
B 滑走時重心設定位置範囲
L1 歩幅
L2 滑走距離
R 路面

Claims (2)

  1. 路面を走行するための転動体と、この転動体を支持する転動体支持体と、この転動体支持体に対し、前傾自在に設置される靴台と、この靴台に対し載置され、これに後傾自在に支持される靴と、前記靴台が前傾状態となったときに前方の転動体が制動される前制動システムと、前記靴が後傾状態となったときに後方の転動体が制動される後制動システムとを具備してなり、前記転動体は、車輪タイプの前輪と後輪との組み合わせであり、また前記転動体支持体と靴台とは、前輪の車軸のやや後方に設けられる靴台回動支持軸によって接続されたものであり、また前記靴台と靴とは、後車輪の車軸やや前方に設けられる靴回動支持軸によって、接続されているものであり、更にまた前記前制動システムは、靴台の前方下面若しくは靴の底面前方に前ブレーキシューが設けられ、靴台が前傾し前輪に対し、前記靴台の前方下面の前ブレーキシュー若しくは靴の底面前方の前ブレーキシューが、当接したときにこれを制動するものであり、更にまた前記後制動システムは、靴の底面後方に後ブレーキシューが設けられ、靴が後傾し、後輪に当接したときにこれを制動するものであることを特徴とする歩行補助具。
  2. 前記転動体支持体と靴台とを引き寄せ合う弾性体が転動体支持体と靴台との間に掛け止めされていることを特徴とする請求項1記載の歩行補助具。
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