JP3937090B2 - 導電性を有する緩衝包装材の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばIC部品等の電子部品、液晶表示パネル(LCD)、携帯情報端末装置(PDA)等の静電気障害を受けやすい物品の包装や運搬に使用される導電性を有するトレイ、容器等の緩衝包装材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、IC部品等の電子部品、液晶表示パネル(LCD)、携帯情報端末装置(PDA)等の静電気障害を受けやすい物品の包装や運搬のための緩衝包装材として、静電気による帯電防止のために、導電性のプラスチック発泡シートが用いられている。
【0003】
かかる導電性プラスチック発泡シートは、これを成形して、被包装物を収容する一つの凹部もしくは複数の凹部を有するトレイや容器等の緩衝包装材として、段ボール箱等の外装箱と組み合わせて使用するのが普通である。また、その使用においては、前記複数の成形トレイ等の緩衝包装材を、被包装物を収容した状態で外装箱内で積み重ね使用することも多い。
【0004】
前記の導電性プラスチック発泡シートとしては、例えば基材としてのプラスチック発泡シートの片面もしくは両面に、導電性塗料やインキ等を塗布もしくは印刷して導電層を設けたものが知られている。トレイ形状に成形して用いる場合、その基材としては、一般に、シートからの成形が容易で、適度に保形性のある合成樹脂発泡シートが用いられている。
【0005】
また、包装材としての柔軟性を持たせるために、オレフィン系樹脂の発泡シートもしくはフィルムを素材として、その片面もしくは両面に印刷あるいは塗布した発泡性インキを加熱発泡させた導電性の発泡皮膜を設けたものも提案されている(下記の特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−32217号公報 (第1−3頁、第1−4図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、発泡シートの表面に導電層を設けただけの従来の導電性プラスチック発泡シートよりなる緩衝包装材は、表面抵抗率は低くなるものの、シート厚み方向の導電性は殆ど得られず、体積抵抗率は充分に低くはならない。特に、被包装物を収納した複数の成形トレイ等の緩衝包装材を外装箱内において積み重ねる使用の場合には、表裏面間の厚み方向の導電性が充分でないと、静電気による帯電が生じるという問題がある。
【0008】
また、前記の特許文献1の導電性プラスチック発泡シート等の場合は、シートからの成形品についての記載がないばかりか、基材の発泡シート等がオレフィン系樹脂(実施例はポリエチレン)を素材とするもの、つまり柔軟性の高い包装材であって、仮に前記発泡シートからトレイ等を成形しても、前記の段積み使用に耐える強度を持つものにはならない。しかも、発泡性インキを基材に直接印刷あるいは塗布するため、基材が発泡シートの場合は、表面に細かい凹凸があるので、インキののりが不十分であったり、不均一になる等の問題がある。
【0009】
さらに、前記特許文献1では、表裏面間の導電性を得るために、多数の貫通孔を穿設し、その内周面まで前記発泡性インキによる導電性の発泡皮膜を設けることとしているが、この場合、前記貫通孔を形成するための工程が必要になる上、この貫通孔の内周面にまで発泡性インキを印刷もしくは塗布しなければならないことになる。しかも、多数の貫通孔があると、強度を低下させる上、該孔からのゴミや塵の侵入のおそれがあり、ゴミ等を嫌う電子部品等の包装材としての機能を損なうことになる。
【0010】
なお、基材としてシートからの成形性がよく強度的に優れるポリエステル系樹脂等の発泡シートを用いたものであっても、その表面に導電性のインキ等を直接塗布もしくは印刷すると、その表面がインキ等の溶剤に若干侵され劣化する。また、その表面には凹凸があって、フィルムの場合に比してインキ等を厚く塗る必要があり、劣化に対してさらに不利となる。その上、発泡シートはフィルムに比べて厚みが大きく、印刷後に使用する一般のフィルム用の巻き取り機は使用できないため、特殊な装置が必要になり、設備費用がかかることになる。
【0011】
さらに、導電性インキを印刷もしくは塗布した後には、通常、乾燥工程が必要であるが、乾燥工程で赤外線ヒーター等を使用して、発泡シートを加熱し乾燥させると、その素材がポリエステル系樹脂の場合には、発泡体の結晶化が上昇し、非常に脆くなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、トレイ等の成形品としての使用に耐える強度、保形性を持ちながら、表裏面間の導電性が高くて、表面抵抗率のみでなく、体積抵抗率も低減でき、積み重ね使用するのに好適な導電性を有する緩衝包装材を提供するものであり、さらには前記の緩衝包装材を容易に得ることができる製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する本発明の緩衝包装材の製造方法は、熱可塑性樹脂発泡シートの表裏両面に、導電性インキが印刷もしくは塗布された熱可塑性樹脂フィルムが積層された積層発泡シートを熱成形した後、加熱刃を有する切断装置で切断して個々の緩衝包装材に分離する際に、前記加熱刃を前記積層発泡シートの素材樹脂の軟化点以上に加熱しておいて、該加熱刃により加熱しながら表面側の樹脂フィルムを裏面側にまで引き込むようにして切断することにより、切断した緩衝包装材の外周の切断端面の部分を前記樹脂フィルムの引き込み部分で覆うとともに、この状態で前記加熱刃により前記切断端面を加熱して溶融させることにより、表裏両面の樹脂フィルム同士を融着一体化させることを特徴とする。
【0014】
これにより、緩衝包装材の外周端面において、表裏両面の導電性の樹脂フィルム同士を融着一体化させた緩衝包装材を容易に得ることができる。特に、発泡シートの表裏両面に導電性インキを塗布もしくは印刷した樹脂フィルムを積層しておいて、これを素材樹脂の軟化点以上に加熱した加熱刃により加熱しながら表面側の樹脂フィルムを裏面側にまで引き込むようにして切断するので、この切断の際に、表裏両面の樹脂フィルム同士を加熱溶 融させて融着一体化させることが容易に可能になる。しかも、前記の融着一体化は、熱成形後のトリミングと同時に行えるので、工程増にならず、従来同様の製造工程により得ることができる。
そして、上記の本発明の製造方法により得られる緩衝包装材は、熱可塑性樹脂発泡シートの表裏両面に、導電性インキが印刷もしくは塗布された熱可塑性樹脂フィルムが積層された積層発泡シートから熱成形されて得られた導電性を有する緩衝包装材であって、緩衝包装材の外周端面の全部あるいは一部において、前記表裏両面の樹脂フィルム同士が融着一体化された状態になっている。
この緩衝包装材は、発泡シートの表裏両面に非発泡の樹脂フィルムが積層された積層発泡シートからなるので、トレイ等の成形品としての使用上において必要な強度、保形性を保有できる上、その外周端面の少なくとも一部において、表裏両面に積層されている導電性の樹脂フィルム、すなわち表面に導電性インキが印刷あるいは塗布された樹脂フィルム同士が融着一体化しているため、この部分で表裏面間の導電性を確保できることになり、以て表面抵抗率のみでなく、体積抵抗率も低減できる。
【0015】
しかも、導電性インキを発泡シートに直接塗布するのではなく、樹脂フィルムに印刷あるいは塗布して、該フィルムを発泡シートに積層するので、導電性インキの印刷等による皮膜も全面に渡って均一化し、且つ十分な強度を有して被覆される上、発泡シートがインキにより侵されて劣化するおそれもない。また、インキの乾燥工程は樹脂フィルムで行えるので、発泡シートの表面にインキを直接塗布した場合のような加熱乾燥による影響をうけず、仮に素材がポリエステル系樹脂の発泡シートであっても脆くならず、耐久性を向上できる。
【0016】
前記の緩衝包装材において、その外周端面における前記表裏両面の導電性の樹脂フィルム同士が融着一体化されている領域が、全外周端面の50%以上であるのが好ましい。これにより、表裏面間の導電性を充分に確保でき、満足できる体積抵抗率が得られる。すなわち、前記領域が50%未満では、満足できる体積抵抗率〔1.0×109 (Ωcm)以下〕は得られない。したがって、好ましくは外周端面の50%以上、特に好ましくは全周に渡って表裏両面の導電性の樹脂フィルム同士を融着一体化させておくものとする。
【0017】
また、前記の熱可塑性樹脂発泡シート、及び表裏両面の熱可塑性樹脂フィルムについては、ポリエステル系樹脂からなるものが好ましく、特にはポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるものが好適である。すなわち、ポリエステル系樹脂は、シートからの成形加工、特に比較的深い絞り加工も容易に可能で、しかも強度、保形性にも優れており、被包装物を収容した状態での積み重ね使用も耐える強度を保有できる。特にポリエチレンテレフタレート系樹脂は、外観的に光沢があって美麗で体裁が良く、緩衝包装材としての強度が一層高くなり、ヒンジ特性にも優れる。また、ポリエステル系樹脂の発泡シートは、ポリスチレン系樹脂の発泡シート等と違い、微粉が発生せず、ゴミを嫌う電子部品等の緩衝包装材として好適に使用できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の製造方法により得られる緩衝包装材の1例を示す一部欠截斜視図、図2は同上の一部の拡大断面図、図3は熱成形前の積層発泡シートの拡大断面図、図4は加熱刃による切断時の拡大断面図、図5は同上の緩衝包装材の製造工程の概略説明図である。
【0020】
図1に示す緩衝包装材Aは、適度に強度、保形性を有する基材としての熱可塑性樹脂発泡シート2の表裏両面に、導電性インキが比較的薄く印刷あるいは塗布された前記発泡シートと同系の熱可塑性樹脂フィルム3,3が、前記導電性インキ層(図示省略)を外側にして積層された積層発泡シート1から熱成形されてなり、包装対象物品(図示せず)の形態に応じた1個もしくは複数個(図の場合は4個)の収納凹部11を有するトレイ形状をなしている。
【0021】
そして、前記包装緩衝材Aは、その外周端面4の全部あるいは一部において、前記樹脂フィルム3,3同士が融着一体化されている。5はその融着一体化された部分を示す。この両樹脂フィルム3,3同士の融着一体化は、後述のように長尺の積層発泡シート1からの熱成形後、個々の緩衝包装材Aに分離する際の切断工程において、切断装置に備える加熱刃を利用して融着一体化させる。
【0022】
前記の緩衝包装材Aの外周端面4において、表裏両面の導電性の樹脂フィルム3,3同士を融着一体化する領域は、全外周端面の50%以上であるのが好ましく、これにより、静電気防止効果上において満足できる体積抵抗率を得ることができる。
【0023】
なお、前記の積層発泡シート1の基材となる熱可塑性樹脂発泡シート2及び表裏両面の導電性の樹脂フィルム3,3としては、この種の緩衝包装材に利用される種々の熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも成形性、強度や保形性、微粉の発生防止等の点から、ポリエステル系樹脂が好適に用いられる。このポリエステル系樹脂のうち、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)からなるものが特に好適に用いられる。
【0024】
前記熱可塑性樹脂発泡シート2の発泡倍率や厚みは、その材質や被包装物によっても異なるが、ポリエステル系樹脂よりなる場合、発泡倍率は通常2〜20倍、好ましくは3〜10倍、厚みは0.5〜10mm、好ましくは1.0〜5.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
【0025】
また、表裏両面の導電性を有する樹脂フィルム3,3は、その片面に導電性インキ、例えばカーボン等の導電性材料を含むインキを印刷もしくは塗布したものからなり、その厚みは例えば20〜80μm(ミクロンメーター)、例えば30μm程度である。この厚みが薄くなりすぎると、加熱刃による切断の際の表裏両面のフィルム同士の融着一体化が難しくなり、導電性が得にくくなる。
【0026】
前記の導電性を有する樹脂フィルム3,3が、ポリエステル系樹脂のフィルムであっても、前記の導電性インキの塗布もしくは印刷により僅かに侵され劣化するものの、溶剤の量が発泡シートに比べて少なくてよいため、発泡シートにインキを直接塗布もしくは印刷する場合に比して劣化の問題は小さい。従って、この樹脂フィルム3,3を前記発泡シート2に積層することにより、劣化の問題は殆どなくなる。なお、導電性インキの印刷などによる皮膜(図示せず)の厚みは、通常一般に2〜20μm(ミクロンメーター)程度である。
【0027】
また、樹脂フィルムに導電性インキを塗布もしくは印刷しておくので、塗布もしくは印刷後に使用する一般のフィルム用の巻き取り機をそのまま使用でき、特殊な装置は不要である。
【0028】
上記の積層発泡シート1から、上記の緩衝包装材Aを製造する方法について説明する。
【0029】
図5に示すように、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂発泡シート2の表裏両面に、前記の導電性インキを印刷もしくは塗布して導電性を付与したポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂フィルム3,3を積層した積層発泡シート1、特に長尺の積層発泡シート1を、熱成形工程に送り、この熱成形工程において、加熱ゾーンZ1において積層発泡シート1を加熱軟化させた後、後続の成形ゾーンZ2において、上下一対の成形金型7を用いて被包装物に対応した収納凹部11を所要数備えるトレイ等の所定形状の緩衝包装材Aの形態に熱成形する。この熱成形は、積層発泡シート1の幅によっても異なるが、例えば、上記した1回の成形により、緩衝包装材Aを幅方向2列で4個取りするように成形する。
【0030】
この熱成形の後、加熱刃8を有する切断装置80による切断工程に送り、図4のように、トムソン刃式の加熱刃8の降下により所定の位置で切断して個々の緩衝包装材Aに分離する。この切断の際、前記加熱刃8による切断端面を該加熱刃8により加熱して溶融させ、表裏両面の樹脂フィルム3,3同士を融着一体化させる。
【0031】
すなわち、前記加熱刃8は、刃部側ほど薄肉の断面略くさび形をなすものよりなり、この加熱刃8を、ヒータにより素材樹脂の軟化点以上に、例えばポリエステル系樹脂を用いる場合、110〜200℃に加熱しておく。そして、図4のように、加熱刃8を降下させて前記熱成形後の積層発泡シート1を切断し個々の各緩衝包装材Aに分離する際、前記の加熱状態の加熱刃8により加熱しながら表面側(上面)の樹脂フィルム3を図4のように下方裏面側にまで引き込むようにして切断することにより、切断した積層発泡シート1による緩衝包装材Aの外周の切断端面を前記樹脂フィルム3の引き込み部分で覆うとともに、前記の切断状態のまま、すなわち該加熱刃8の両側面81,81を該積層発泡シート1の切断端面の部分に接触させた状態のままで所定の時間、例えば2〜30秒間保持して、前記切断端面を表裏の前記樹脂フィルム3,3とともに溶融させる。これによって、積層発泡シート1の表裏両面の導電性を有する熱可塑性樹脂フィルム3,3同士が切断端面の部分において融着一体化することになり、図1に示す緩衝包装材Aが得られる。
【0032】
なお、素材樹脂がポリエステル系樹脂の場合、前記の加熱刃8の温度が110℃未満では樹脂フイルム3,3同士が融着しにくく、また200℃を越えると、ポリエステル系樹脂が結晶化して脆くなる。前記の切断工程は、インラインによって熱成形直後に行ってもよいし、熱成形とは別の工程で行ってもよい。
【0033】
上記のようにして本発明の方法により得られる緩衝包装材Aは、例えば電子部品その他の静電気障害を受けやすい被包装物を、各収容凹部に収容した状態で、段ボール箱などの外装箱内で積み重ね状態で収納して運搬するのに使用する。この使用において、緩衝包装材Aの表裏両面に積層された樹脂フィルム3,3、該フィルムの表面に印刷もしくは塗布されている導電性インキの皮膜による導電性により、表面抵抗率を低減できるばかりか、外周端面の少なくとも一部における前記導電性の樹脂フィルム同士が融着一体化している部分で、表裏面間の導電性を確保できることになり、体積抵抗率も低減できる。そのため、静電気による帯電防止を確実になすことができる。
【0034】
しかも、表裏の樹脂フィルム3,3同士を外周端面でのみ融着一体化させるだけであるため、貫通孔を設けた場合のようなゴミや塵の侵入の問題はなく、収納した電子部品等のゴミ等を嫌う被包装物の保護を良好になすことができる。
【0035】
なお、表面抵抗率および体積抵抗率は、それぞれ下記の方法で得られる抵抗率である。
【0036】
(1)表面抵抗率
JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料サンプルに、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500V1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出した。試料サンプルは、100 mm×100 mm×原厚み(10 mm以下)とした。
【0037】
Ρs=π(D+d)/(D-d)×Rs
ρs : 表面抵抗率(Ω)
D : 表面の環状電極の内径(cm)
d : 表面電極の内円の外径(cm)
Rs: 表面抵抗(Ω)
(2)体積抵抗率
JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料サンプルに、約30Nの荷重にて電極を圧着させ1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出した。試料サンプルは、100 mm×100 mm×原厚み(10 mm以下)とした。
【0038】
Ρv=πd2/4t×Rv
ρv : 体積抵抗率(Ωcm)
d : 表面電極の内円の外径(cm)
t : 試験片の厚さ(cm)
Rv: 体積抵抗(Ω)
【0039】
【実施例】
熱可塑性樹脂発泡シートとして、発泡倍率4倍、厚み1.5mmのポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートを用い、導電性を有する熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに導電性材料(カーボン)を含むインキを印刷した厚み30μmのフィルムを用いて、該樹脂フィルムを前記印刷による導電性インキの皮膜を外側にして前記発泡シートの両面に積層し、熱成形前の積層発泡シートを得た。
【0040】
緩衝包装材に熱成形する前の前記の積層発泡シートの任意の箇所から、100mm×100mmの大きさのサンプルを切り出し、そのサンプルの外周端面を加熱刃を使用して、全周の100%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%の割合で表裏の樹脂フィルム同士を融着一体化させた。それぞれのサンプルの表面抵抗率、体積抵抗率を上記の方法で測定した。その結果を実施例1〜6として、下記の表1に示す。また、比較のために、外周端面の融着無しのサンプルについても、表面抵抗率、体積抵抗率を測定した結果を比較例1として併せて示す。
【0041】
【表1】
【0042】
上記から明らかなように、表面抵抗率については差はないが、体積抵抗率については、外周端面での表裏両面の樹脂フィルム同士の融着範囲が多いものほど小さくなり、特に前記融着範囲が50%を越えると、その抵抗率は格段に小さくなり、表裏両面間の導電性が大幅に改善される。
【0043】
従って、本発明のように外周端面の少なくとも一部で前記導電性の樹脂フィルム同士を融着一体化させること、好ましくは全外周端面の50%以上を融着一体化させることにより、表面抵抗率のみでなく、体積抵抗率も低減でき、静電気による帯電防止を確実になすことができる。
【0044】
【発明の効果】
上記したように本発明の製造方法により得られる緩衝包装材によれば、トレイ等の成形品として適度の強度、保形性を持ちながら、表裏面間の導電性が高くて、表面抵抗率のみでなく、体積抵抗率も低減でき、積み重ね使用した場合の静電気防止効果に優れ、被包装物の保護、特に電子部品その他の静電気障害を受けやすい物品の保護を良好になすことができる。
【0045】
また、本発明の製造方法によれば、熱成形後の切断工程でのトリミングを利用して、外周端面の少なくとも一部で表裏両面の導電性を有する樹脂フィルム同士を融着一体化でき、これにより表裏両面間の導電性を改善した緩衝包装材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法により得られる緩衝包装材の1例を示す一部欠截斜視図である。
【図2】 同上の一部の拡大断面図である。
【図3】 熱成形前の積層発泡シートの拡大断面図である。
【図4】 加熱刃による切断時の拡大断面図である。
【図5】 同上の緩衝包装材の製造工程の概略説明図である。
【符号の説明】
A 緩衝包装材
1 積層発泡シート
2 熱可塑性樹脂発泡シート
3,3 熱可塑性樹脂フィルム
4 外周端面
5 融着一体化した部分
7 成形金型
8 加熱刃
80 切断装置
81,81 両側面
Z1 加熱ゾーン
Z2 成形ゾーン
Claims (1)
- 熱可塑性樹脂発泡シートの表裏両面に、導電性インキが印刷もしくは塗布された熱可塑性樹脂フィルムが積層された積層発泡シートを熱成形した後、加熱刃を有する切断装置で切断して個々の緩衝包装材に分離する際に、前記加熱刃を前記積層発泡シートの素材樹脂の軟化点以上に加熱しておいて、前記加熱刃により加熱しながら表面側の樹脂フィルムを裏面側にまで引き込むようにして切断することにより、切断した緩衝包装材の外周の切断端面を前記樹脂フィルムの引き込み部分で覆うとともに、この状態で前記加熱刃により前記切断端面を加熱して溶融させることにより、表裏両面の樹脂フィルム同士を融着一体化させることを特徴とする導電性を有する緩衝包装材の製造方法。
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