JP3936752B2 - 結晶マルトテトラオシルグルコシドとその製造方法並びに用途 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規結晶糖質とその製造方法並びに用途に関し、詳細には、結晶マルトテトラオシルグルコシドとその製造方法、並びに用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルトペンタオースは、式:O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコピラノースで示される五糖類で、水飴、粉飴などに含まれる甘味糖質として古くから知られている。この糖質は、低甘味、適度な粘度を特徴に、各種飲料、加工食品、嗜好物などの組成物に利用されている。しかしながら、マルトペンタオースは、還元性糖質であるため、飲料、加工食品、嗜好物などに含まれる蛋白質やアミノ酸などと反応して褐変し易く、変質、劣化を起こし易い欠点がある。
【0003】
本発明者等は、この欠点を解消すべく鋭意研究し、先に、特願平5−349216号明細書で記載したグルコース重合度3以上の還元性澱粉部分分解物から末端にトレハロース構造を有する非還元性糖質を生成する酵素(本明細書においては、本酵素を単に「非還元性糖質生成酵素」と略称することがある。)を作用させることにより、マルトペンタオースから非還元性のマルトテトラオシルグルコシドを生成することを見いだした。しかしながら、この非還元性糖質マルトテトラオシルグルコシドの粉末は、非晶質で物理的に不安定であって、より安定な結晶の確立が望まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、結晶マルトテトラオシルグルコシドの確立と、結晶マルトテトラオシルグルコシドの製造方法並びにその用途を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究を続けてきた。その結果、高純度マルトペンタオースを比較的高濃度水溶液とし、これに非還元性糖質生成酵素を加えてマルトペンタオースをマルトテトラオシルグルコシドに変換させる反応を進めている間に、溶液が白濁し、沈澱物を生成する現象を見いだし、更に、本沈澱物が、意外にも、結晶マルトテトラオシルグルコシドであることを解明して、新規結晶マルトテトラオシルグルコシドを確立するとともにその製造方法並びに用途を確立して本発明を完成した。併せて、結晶マルトテトラオシルグルコシドとして、含水結晶と無水結晶の存在を解明し、その製造方法並びに用途を確立して本発明を完成した。
【0006】
結晶マルトテトラオシルグルコシドの製造方法としては、本結晶が製造できる方法であればよく、通常、マルトテトラオシルグルコシド含有溶液からこれを晶出、採取する。望ましくは、マルトテトラオシルグルコシド含有溶液を過飽和溶液とし、このマルトテトラオシルグルコシドを晶出、採取するのが好都合である。マルトテトラオシルグルコシドを調製するには、例えばマルトペンタオース含有溶液に非還元性糖質生成酵素を作用させる方法が適している。マルトペンタオース含有溶液としては、高純度マルトペンタオース含有溶液を用いることもできるが、一般的には、澱粉、糊化澱粉、液化澱粉、溶性澱粉、アミロース、アミロペクチン、デキストリンなどの澱粉質にα−アミラーゼ、又はα−アミラーゼとともに澱粉枝切酵素を作用させて得られるマルトペンタオース含有溶液が用いられる。
【0007】
本発明に用いるα−アミラーゼとしては、マルトペンタオース生成量の比較的高いα−アミラーゼ、例えば、バチルス・リケニフォルミス(Bacilluslicheniformis)由来のα−アミラーゼ(ノボ・ノルディスク・インダストリー社製造、商品名ターマミール60L)が適している。
【0008】
澱粉枝切酵素としては、澱粉質の分枝構造を切断し、α−アミラーゼと併用して澱粉質からのマルトペンタオース生成量を高めることのできるものであればよく、例えば、株式会社林原生物化学研究所が製造している、アエロバクター・アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)由来のプルラナーゼや、シュードモナス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)由来のイソアミラーゼなどが適しており、とりわけ、その作用特性からイソアミラーゼとの併用が適している。
【0009】
澱粉質にα−アミラーゼ又はα−アミラーゼとともに澱粉枝切酵素を作用させて得られるマルトペンタオース溶液は、通常、マルトペンタオースを固形物当たり、20乃至40w/w%(以下、本明細書では、特にことわらない限り、w/w%を%で示す。)程度含有しており、必要ならば、夾雑糖質を公知の分離、精製方法により除去して、この含量を更に高めて利用することも有利に実施できる。
【0010】
本発明に用いる非還元性糖質生成酵素としては、例えば、本発明者等が、先に、特願平5−349216号明細書で記載したように、既に、茨城県つくば市東1丁目1番3号にある通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所、特許微生物寄託センターに寄託しているリゾビウム・スピーシーズ(Rhizobiumsp.)M−11(工業技術院微生物工業技術研究所、受託番号 FERM BP−4130)やアルスロバクター・スピーシーズ(Arthrobacter sp.)Q36(工業技術院生命工学工業技術研究所、受託番号 FERMBP−4316)などの微生物、更には、公知の、例えば、ブレビバクテリウム・ヘロボルム(Brevibacterium helovolum)ATCC11822、フラボバクテリウム・アクアティレ(Flavobacterium aquatile)IFO3772、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)IFO3064、ミクロコッカス・ロゼウス(Micrococcus roseus)ATCC186、クルトバクテリウム・シトレウム(Curtobacterium citreum)IFO15231、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)ATCC19420、テラバクター・ツメスセンス(Terrabacter tumescens)IFO12960などの非還元性糖質生成酵素産生能を有する微生物を栄養培地に培養し、この培養物を採取し利用することもできるが、必要ならば、公知の方法で適宜精製して利用してもよい。
【0011】
このようにして得られる非還元性糖質生成酵素は、グルコース重合度3以上から選ばれる1種又は2種以上の還元性澱粉部分分解物から末端にトレハロース構造を有する非還元性糖質を生成する作用を有する。非還元性糖質生成酵素を作用させる時期は、該酵素がマルトペンタオースに作用し、マルトテトラオシルグルコシドに変換できればよく、前述のα−アミラーゼ又はα−アミラーゼとともに澱粉枝切酵素を作用させた後に作用させることも、これら酵素とともに作用させることも随意である。
【0012】
これらの酵素反応条件は、目的の酵素反応が進む限り採用することができるが、一般的には、基質濃度約1乃至70%、反応温度約10乃至80℃、反応pHは、約4乃至10、反応時間は、約1乃至100時間から選ばれる条件から採用される。これら反応に利用される酵素は、必要に応じて、例えば、担体結合法、架橋法、包括法などの公知方法により、固定化して、連続反応に利用することも回分反応で繰り返し利用することも随意である。
【0013】
また、マルトテトラオシルグルコシドを調製する上記以外の方法として、糖転移酵素を用いる方法を採用することも有利に実施できる。例えば、トレハロースと澱粉質との混合物を含有する溶液、又は末端にトレハロース構造を有する非還元性糖質を含有する溶液にシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼを作用させてマルトテトラオシルグルコシド含有溶液を得るか、又は必要ならば、更に、そのシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼを作用させた後にα−アミラーゼもしくはα−アミラーゼとともに澱粉枝切酵素を作用させて、そのマルトテトラオシルグルコシド含量を高めることも有利に実施できる。
【0014】
以上述べたような酵素反応液には、通常、固形物当たり、マルトテトラオシルグルコシドを1乃至90%程度含有している。この反応液から結晶マルトテトラオシルグルコシドを製造するには、反応液を濃縮するだけで結晶が晶出し、これを採取することもできるが、一般的には、夾雑糖質を公知の分離、精製方法により除去して更に高純度のマルトテトラオシルグルコシド含有液とし、これを濃縮し、晶出せしめた結晶マルトテトラオシルグルコシドを採取するのが有利である。
【0015】
その分離、精製方法としては、例えば、酵母発酵法、膜濾過法、分別沈澱法、アルカリ処理法、カラムクロマトグラフィー法などが適宜採用できる。とりわけ、特開昭58−23799号公報、特開昭59−148794号公報などに開示されている塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、夾雑糖質を除去して、マルトテトラオシルグルコシド高含有液を採取する方法が有利に実施できる。この際、公知の固定床方式、移動床方式、擬似移動床方式のいずれの方法を採用することも随意である。
【0016】
このようにして得られたマルトテトラオシルグルコシド水溶液よりマルトテトラオシルグルコシドを晶出させるには、結晶の種類によって、それぞれ適当な条件が選ばれる。晶出条件としては、マルトテトラオシルグルコシドの過飽和溶液であって、マルトテトラオシルグルコシドが晶出すればよい。
【0017】
具体的に述べれば、純度約10%以上のマルトテトラオシルグルコシドを濃度約5乃至95%水溶液とし、その溶液の温度は、溶液が凍結せず、また結晶の融点以下でマルトテトラオシルグルコシドの褐変、分解の懸念の少ない温度、例えば、含水結晶の場合、水分約5%以上の溶液を約5乃至100℃で、無水結晶の場合、水分約10%未満の溶液を約90℃乃至150℃で晶出させればよい。また、無水結晶は、含水結晶を減圧乾燥又は加熱乾燥することによっても容易に製造することができる。また、晶出させるに際して溶液の過飽和度、粘度を調整するために、例えば、メタノール、エタノール、アセトンなどを共存させることも随意である。晶出方法は、通常、比較的高温の過飽和マルトテトラオシルグルコシド含有溶液を助晶缶にとり、必要ならば、これに、種晶を約0.1乃至5.0%共存せしめて、ゆっくりと撹拌しつつ徐冷し、晶出を促してマスキットにすればよい。また、結晶マルトテトラオシルグルコシドはきわめて晶出し易い特徴を有していることから、濃縮を連続的に行いながらその濃縮液から連続的に晶出させることも有利に実施できる。晶出したマスキットから結晶マルトテトラオシルグルコシドを製造する方法は、例えば、分蜜方法、ブロック粉砕方法、流動造粒方法、噴霧乾燥方法などの公知方法を利用すればよい。
【0018】
例えば、分蜜方法は、通常マスキットをバスケット型遠心分離機にかけ、結晶マルトテトラオシルグルコシドと蜜とを分離する方法で、必要により、該結晶に少量の冷水又は冷アルコール溶液などをスプレーして洗浄することも容易であり、より高純度の結晶マルトテトラオシルグルコシドを製造するのに好適である。他の三つの方法は、蜜を分離しないで得られる結晶マルトテトラオシルグルコシドを含有した粉末であり、マルトテトラオシルグルコシドの純度の向上は見られないが、製品収量が多い特徴を有している。したがって、このような場合には、マルトテトラオシルグルコシド以外に、通常、マルトテトラオース、マルトペンタオースなどのオリゴ糖が含まれる。
【0019】
噴霧乾燥方法の場合には、通常、晶出率約30乃至60%程度のマスキットを高圧ポンプでノズルから噴霧し、結晶が溶融しない温度、例えば約60乃至100℃の熱風で乾燥し、次いで60℃未満の温風で乾燥、熟成すれば、結晶マルトテトラオシルグルコシドを含有した粉末が容易に製造できる。
【0020】
ブロック粉砕方法の場合には、通常、晶出率約20乃至80%のマスキットをバットに採り、約0.5乃至3日間静置して全体をブロック状に晶出固化させ、これを粉砕又は切削などの方法によって微粉化し、乾燥すれば、結晶マルトテトラオシルグルコシドを含有した粉末が容易に製造できる。
【0021】
このようにして得られる結晶マルトテトラオシルグルコシドは、そのマルトテトラオシルグルコシドの純度によってその吸湿性が多少変動するが、実質的に非吸湿性であり、流動性であり、粘着、固着の懸念もないので、取扱い容易であり、その包装、輸送、貯蔵などの管理に要する物的、人的経費が大幅に削減できる。また、本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドは、実質的に非吸湿性の粉末で、耐熱性が高く、安定性も良いので、従来きわめて困難とされていた粉末混合甘味料、チョコレート、チューインガム、即席ジュース、即席スープ、顆粒、錠剤などの賦形剤、増量剤、粉末基剤などとして、例えば、飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物、更には、試薬、化学工業用原料などの各種用途に有利に利用できる。また、結晶マルトテトラオシルグルコシドは、その純度の違いにより、融点、比旋光度が変化する。このうち融点は、通常、その純度の低下にともなって低下し、融解温度の幅も広くなる。したがって、結晶マルトテトラオシルグルコシドは、必要性に応じて、その純度を適宜選択して利用すればよい。
【0022】
本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドは、良質で低い甘味を有している。また、経口摂取により、消化吸収され、カロリー源として利用される。更に、虫歯誘発菌などによって、発酵されにくいことより、虫歯をおこしにくい甘味料、賦形剤としても利用できる。また、良質な甘味料、賦形剤であることより、プルラン、ヒドロキシエチルスターチなどの結合剤と併用して、錠剤の糖衣剤として利用することも有利に実施できる。また、賦形性、保湿性、他の糖の晶出防止性、難発酵性、難溶解性などの性質を具備している。
【0023】
結晶マルトテトラオシルグルコシドの持つこれら諸性質は、飲食物、嗜好物、飼料、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。
【0024】
結晶マルトテトラオシルグルコシドは、低甘味ながらそのままで甘味付けのための調味料として使用することが出来る。必要ならば、例えば、粉飴、ブドウ糖、マルトース、砂糖、異性化糖、蜂蜜、メープルシュガー、ソルビトール、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパラチル L−フェニルアラニンメチルエステル、サッカリン、グリシン、アラニンなどのような他の甘味料の1種又は2種以上の適量と混合して使用してもよく、また、必要ならば、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することも出来る。また、マルトテトラオース、マルトペンタオースなどのオリゴ糖を共存させて、その溶解性を高めて利用することも有利に実施できる。
【0025】
また、結晶マルトテトラオシルグルコシドは、そのままで、又は必要に応じて、他の増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、棒状、球状、板状、錠剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
【0026】
また、結晶マルトテトラオシルグルコシドの呈味は、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味など他の呈味を有する各種物質とよく調和するので、一般の飲食物の甘味付け、呈味改良に、また、品質改良などに有利に利用できる。例えば、醤油、味噌、食酢、ソース、マヨネーズ、みりんなど各種調味料として有利に使用できる。また、各種和菓子、各種洋菓子、冷菓、シロップ類、ペースト類、野菜の加工食品類、漬物類、畜肉製品類、魚肉製品類、酒類、清涼飲料水など各種飲食物への甘味付け、呈味改良、品質改良に有利に利用できる。
【0027】
また、本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドは、非吸湿性で流動性が良好なことより、例えば、チューインガム、酢コンブ、キャンディー、求肥などの場合に、これら表面を被覆するなどにより、例えば、内容物表面と包装紙との付着防止、すべり改良剤などとしても有利に利用できる。また、本結晶マルトテトラオシルグルコシドは、可食性でありながら水への溶解性が比較的低く、耐熱性も高いので、餅のとり粉、調理用パン粉、フライ粉、パン・ケーキ類のトッピング、アイシングなどのための代替材料として、更には、小麦粉、コーングリッツ、澱粉など粉類の一部又は全量に置き換えて、例えば、プリンミックス、ホットケーキミックス、製菓材料、製パン材料などに利用することも有利に利用できる。
【0028】
また、家畜などの飼育動物のための飼料にも使用できる。更に、口紅、練歯磨、タバコ、トローチ、内服液など化粧品、医薬品などの各種組成物への甘味剤として、甘味付け、呈味改良に、また、品質改良などに有利に利用できる。
【0029】
本発明の組成物は、結晶マルトテトラオシルグルコシド単体であってもよいが、通常、結晶マルトテトラオシルグルコシドとともに、目的に応じて他の物質、例えば、蛋白質、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養物質、又は抗菌物質、酵素、ホルモン、サイトカインなどの薬効物質などから選ばれる1種又は2種以上を含有せしめて製造される。必要ならば他の適宜の物質、例えば、呈味料、着色料、着香料、安定剤、増量剤、賦形剤などの1種又は2種以上を使用することも随意であり、得られる組成物を目的に応じて適宜の形状にすることも随意である。組成物に結晶マルトテトラオシルグルコシドを含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程に含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶出、固化などの公知の方法が適宜選ばれる。
【0030】
その含有せしめる量は、組成物によっても異なるが、一般的には、マルトテトラオシルグルコシドとして、0.1%以上、望ましくは0.2%以上の量が好適である。このようにして得られる組成物は、経口的又は非経口的に利用する飲食物、化粧品、医薬品のみならず、それ以外にも、例えば、生活用品、農林水産用品、試薬、化学工業用品など広範な用途を有する。
【0031】
次に、実験により本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
まず、実験Aで非還元性糖質生成酵素の一例として、リゾビウム・スピーシーズ M−11からの酵素の生産、精製及び性質について説明し、その後、該酵素を用いた還元性澱粉部分分解物から末端にトレハロース構造を有する非還元性糖質及びトレハロースについて説明する。次に、実験Bで本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドの調製例とその理化学的性質について説明する。
【0033】
【実験A−1 リゾビウム・スピーシーズ M−11からの非還元性糖質生成酵素の生産】
マルトース2.0w/v%、ペプトン0.5w/v%、酵母エキス0.1w/v%、リン酸二ナトリウム0.1w/v%、リン酸一カリウム0.1w/v%及び水からなる液体培地をpH7.0に調整した。500ml容三角フラスコにこの培地を約100mlずつ入れ、オートクレーブで120℃で20分間滅菌し、冷却して、リゾビウム・スピーシーズ M−11(FERM BP−4130)を接種し、27℃、130rpmで24時間培養したものを種培養液とした。
【0034】
容量30lのファーメンターに種培養の場合と同組成の培地約20lを入れて滅菌、冷却して温度30℃とした後、種培養液1v/v%を接種し、温度30℃、pH6.0乃至8.0に保ちつつ、約24時間通気撹拌培養した。培養液の本酵素活性は約1.5単位/mlであった。培養液の一部を採り遠心分離して菌体と培養液上清とに分離し、更に菌体を50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で元の培養液と同じ液量の懸濁液とした後、菌体懸濁液と培養液上清の酵素活性を測定したところ、菌体懸濁液には約0.6単位/mlの酵素活性が、また、培養液上清には約0.9単位/mlの酵素活性が認められた。
【0035】
非還元性糖質生成酵素の活性測定方法は、基質としてマルトペンタオース1.25w/v%(50mMリン酸緩衝液、pH7.0)4mlに酵素液を1ml加え40℃で60分間反応させた後、100℃で10分間加熱して反応を停止させ、その反応液を正確に脱イオン水で10倍に希釈し、その希釈液の還元力をソモギー・ネルソン法にて測定する。対照として、あらかじめ100℃で10分間加熱させることにより失活させた酵素液を用いて同様に測定する。上記の測定方法を用いて、1分間に1μmoleのマルトペンタオースに相当する還元力を減少させる酵素量を1単位と定義した。
【0036】
【実験A−2 酵素の精製】
実験A−1で得られた培養液約18lを超高圧菌体破砕装置ミニラボ(大日本製薬株式会社製)で処理し、含まれる菌体を破砕した。処理液を遠心分離(10,000rpm、30分間)することにより、約16lの上清を得た。その液に飽和度0.2になるように硫安を溶解させ、4℃、1時間放置した後、遠心分離(10,000rpm、30分間)することにより上清を回収した。
【0037】
更に、その液に飽和度0.6になるように硫安を溶解させ、4℃、24時間放置した後、遠心分離(10,000rpm、30分間)して硫安塩析物を回収した。得られた硫安塩析物を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた後、同じ緩衝液に対して24時間透析し、遠心分離(10,000rpm、30分間)して不溶物を除いた。その透析液(360ml)を2回に分けて、DEAE−トヨパールゲル(東ソー株式会社製造)を用いたイオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量300ml)を行った。
【0038】
本酵素はDEAE−トヨパールゲルに吸着し、食塩を含む同緩衝液でカラムから溶出した。得られる酵素活性画分を、2M硫安を含む同緩衝液に対して透析し、その透析液を遠心分離(10,000rpm、30分間)して不溶物を除き、得られる上清をブチルトヨパール650ゲル(東ソー株式会社製造)を用いた疎水カラムクロマトグラフィー(ゲル量300ml)を行った。吸着した本酵素を硫安2Mから0Mのリニアグラジエントによりカラムから溶出させ、酵素活性画分を回収した。続いて、トヨパールHW−55樹脂(東ソー株式会社製造)を用いたゲル濾過クロマトグラフィー(ゲル量300ml)を行い、酵素活性画分を回収した。精製の各工程における酵素活性量、比活性、収率を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の工程でゲル濾過溶出液として得られた精製酵素標品をポリアクリルアミドゲル(ゲル濃度7.5w/v%)を用いる電気泳動法で純度を検定したところ、蛋白バンドは単一であることが示され、得られた酵素標品は電気泳動的に単一な純度の高い標品であった。
【0041】
【実験A−3 酵素の性質】
実験A−2で得られた精製酵素標品をSDS−ポリアクリルアミドゲル(ゲル濃度10w/v%)を用いる電気泳動法に供し、同時に泳動した分子量マーカー(日本バイオ・ラド・ラボラトリーズ株式会社製)と比較して本酵素の分子量を測定したところ、分子量約77,000乃至87,000ダルトンであった。
【0042】
精製酵素標品をポリアクリルアミドゲル(2w/v%アンフォライン含有、スウエーデン国、ファルマシア・エルケイビー社製)を用いる等電点電気泳動法に供し、泳動後、ゲルのpHを測定して本酵素の等電点を求めたところ、等電点は約3.6乃至4.6であった。
【0043】
本酵素活性に対する温度の影響、pHの影響は活性測定方法に準じて調べた。結果を図1(温度の影響)、図2(pHの影響)に示した。酵素の至適温度は、pH7.0、60分間反応で、40℃付近、至適pHは、40℃、60分間反応で、約7.0であった。本酵素の温度安定性は、酵素溶液(50mMリン酸緩衝液を含む、pH7.0)を各温度に60分間保持し、水冷した後、残存する酵素活性を測定することにより求めた。また、pH安定性は、本酵素を各pHの50mM緩衝液中で25℃、16時間保持した後、pHを7に調整し、残存する酵素活性を測定することにより求めた。それぞれの結果を図3(温度安定性)、図4(pH安定性)に示した。本酵素の温度安定性は40℃付近まで安定であり、pH安定性は約6乃至9であった。
【0044】
【実験A−4 非還元性糖質の調製】
基質として、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、又はマルトヘプタオースの20%水溶液を調製し、それぞれに実験A−2で得られた精製酵素標品を基質固形物グラム当たり2単位の割合で加え、40℃、pH7.0で48時間作用させた後、脱塩し、ワコービーズ WB−T−330カラム(和光純薬工業株式会社製)を用いた高速液体クロマトグラフィーで反応生成物を分析した。高速液体クロマトグラフィーは、室温下で行い、溶離液として水を流速0.5ml/分で流し、示差屈折計RI−8012(東ソー株式会社製造)で分析した。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の結果から明らかなように、反応物中には残存するそれぞれの基質と新たに生成したそれぞれの糖質PI、PII、PIII、PIV、PVからなり、それ以外の糖質はほとんど検出されない。それぞれの生成率はグルコース重合度3のPIが比較的低いものの、グルコース重合度4以上のPII、PIII、PIV、PVは85%以上の高い生成率であることが判明した。なお、グルコース、マルトースからは、新たな糖質を生成しないことが判明した。
【0047】
それぞれの反応物から新たに生成した糖質を精製するため、脱色、脱塩、濃縮後、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(XT−1016、Na+型、架橋度4%、オルガノ株式会社製造)を用いたカラム分画を行った。樹脂を内径2.0cm、長さ1mのジャケット付きステンレス製カラム3本に充填し、直列につなぎ、カラム内温度を55℃に維持しつつ、反応糖液を樹脂に対して5v/v%加え、これに55℃の温水をSV0.13で流して分画し、新たに生成した糖質含量97%以上の高純度画分を採取した。得られた高純度画分を真空乾燥し、それぞれ高純度糖質標品を調製した。基質原料に対する収率は、固形物換算で、それぞれPIで約9%、PIIで約65%、PIIIで約82%、PIVで約80%、PVで約77%であった。その純度は、それぞれPIで97.5%、PIIで98.6%、PIIIで99.5%、PIVで98.4%、PVで98.4%であった。
【0048】
またこれらの新たに生成した高純度糖質標品の還元力をソモギー・ネルソン法で測定し、DEで表した。結果は表3にまとめた。
【0049】
【表3】
【0050】
表3の結果から明らかなように、いずれの標品にも僅かな還元力しか認めらなかった。その僅かな還元力は、その標品中に微量に混入、残存している基質由来の還元性マルトオリゴ糖に起因するものと推定され、新たに生成した糖質はいずれも実質的に非還元性であると判断される。
【0051】
【実験A−5 グルコアミラーゼによる酵素分解】
実験A−4において調製した非還元性糖質標品、PI、PII、PIII、PIV又は、PVのそれぞれ50mgを、50mM酢酸緩衝液(pH4.5)1mlに溶解し、1単位のグルコアミラーゼ(生化学工業株式会社製造)を加え、40℃で6時間保ち、酵素分解した後、高速液体クロマトグラフィーで分解物を分析したところ、いずれの標品からも分解物としてグルコースとトレハロースのみが検出された。検出されたグルコース含量、トレハロース含量、その組成モル比の結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4の結果から明らかなように、グルコアミラーゼにより、非還元性糖質PIはグルコース1分子とトレハロース1分子に分解され、非還元性糖質PIIはグルコース2分子とトレハロース1分子に分解され、非還元性糖質PIIIはグルコース3分子とトレハロース1分子に分解され、非還元性糖質PIVはグルコース4分子とトレハロース1分子に分解され、非還元性糖質PVはグルコース5分子とトレハロース1分子に分解されることが判明した。
【0054】
また、グルコアミラーゼの反応特性を考慮すると、これら非還元性糖質の構造はトレハロース分子にグルコース分子がα−1,4結合、もしくはα−1,6結合で結合した糖質で、それぞれ、PIはトレハロース1分子にグルコース1分子が結合したグルコース重合度3の非還元性糖質で、PIIはトレハロース1分子にグルコース2分子が結合したグルコース重合度4の非還元性糖質で、PIIIはトレハロース1分子にグルコース3分子が結合したグルコース重合度5の非還元性糖質で、PIVはトレハロース1分子にグルコース4分子が結合したグルコース重合度6の非還元性糖質で、PVはトレハロース1分子にグルコース5分子が結合したグルコース重合度7の非還元性糖質であると判断される。なお、同様に、非還元性糖質標品、PI、PII、PIII、PIV、又はPVにβ−アミラーゼを作用させたところ、非還元性糖質PI、PIIは分解されず、PIIIはマルトースの1分子とPIの1分子に分解され、PIVはマルトースの1分子とPIIの1分子に分解され、PVはマルトースの2分子とPIの1分子に分解されることが判明した。
【0055】
以上の結果から、本発明の非還元性糖質生成酵素による反応は、基質の低分子化及び高分子化を伴わない、換言すれば、グルコース重合度の変化を伴わない、分子内変換反応と判断され、また、この非還元性糖質生成酵素によって生成した非還元性糖質、PI、PII、PIII、PIV及びPVは、それぞれ、α−グルコシルトレハロース(別名、α−マルトシルグルコシド)、α−マルトシルトレハロース(別名、α−マルトトリオシルグルコシド)、α−マルトトリオシルトレハロース(別名、α−マルトテトラオシルグルコシド)、α−マルトテトラオシルトレハロース(別名、α−マルトペンタオシルグルコシド)及びα−マルトペンタオシルトレハロース(別名、α−マルトヘキサオシルグルコシド)で示されるα−グリコシルトレハロース(Gn−T:但し、Gはグルコース残基を意味し、nは1以上の整数を意味し、Tはα,α−トレハロースを意味する。)であると判断される。
【0056】
【実験A−6 末端にトレハロース構造を有する非還元性オリゴ糖とトレハロースの調製】
澱粉部分分解物(松谷化学工業株式会社製造、商品名パインデックス#4)40重量部を水60重量部に加熱溶解し、この溶液を45℃、pH6.5に調整した後、実験A−2の方法で調製した非還元性糖質生成酵素を還元性澱粉部分分解物g当たり1単位の割合になるように加えて96時間反応させ、末端にトレハロース構造を有する非還元性オリゴ糖を生成させ、次いで100℃で10分間加熱して、酵素を失活させた。本反応液を濃度約20%まで希釈し、グルコアミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製造、商品名グルコチーム)を澱粉部分分解物g当たり10単位加えて40時間反応させ、次いで加熱して、酵素を失活させた。本溶液を、常法にしたがって、活性炭にて脱色し、イオン交換樹脂にて脱塩し、濃度約60%に濃縮した。本糖液中には固形物当たり29.5%のトレハロースを含有していた。この濃縮液を塩型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ株式会社販売、商品名CG6000、Na型)が充填されたジャケット付きステンレス製カラムに、60℃、SV 0.4でチャージし、トレハロース高含有画分を採取した。本高含有液は、固形物当たり約90%のトレハロースを含有していた。本溶液を濃度約75%に濃縮した後、助晶缶にとり、種晶としてトレハロース含水結晶を約2%加えて徐冷し、晶出率約45%のマスキットを得た。本マスキットを乾燥塔上のノズルより150kg/cm2の高圧にて噴霧した。これと同時に85℃の熱風を乾燥塔の上部より送風し、底部に設けた移送金網コンベア上に結晶粉末を補集し、コンベアの下より45℃の温風を送りつつ、該粉末を乾燥塔外に徐々に移動させて、取り出した。この結晶粉末を熟成塔に充填して温風を送りつつ、10時間熟成させ、結晶化と乾燥を完了し、トレハロース含水結晶粉末を得た。
【0057】
【実験B−1 結晶マルトテトラオシルグルコシドの調製】
純度98%のマルトペンタオース(株式会社林原生物化学研究所製造)5重量部を水100重量部に加熱溶解し、pH7.0、温度40℃に調整し、これに実験A−2の方法で調製した非還元性糖質生成酵素をマルトペンタオースグラム当たり2単位になるように加えた。48時間作用させた後、100℃で20分間加熱して、酵素を失活させた。本溶液を4℃に一夜放置したところ、沈澱が生成した。この沈澱懸濁液に0.1Nとなるよう水酸化ナトリウムを加え100℃で2時間煮沸して還元性糖質を分解した。この溶液を活性炭で脱色した後、H型、OH型イオン交換樹脂を用い精製したところ、純度97.5%のマルトテトラオシルグルコシド溶液を得ることができた。これを濃度50%まで濃縮し、ガラスビーカーに入れ、25℃で1時間放置したところ、その内壁に結晶が析出した。得られた結晶は遠心分離により回収し、少量の水を用いて洗浄し、純度99.9%のマルトテトラオシルグルコシドの含水結晶を得た。また、本品を100℃で一夜減圧乾燥して無水結晶を得た。
【0058】
これら結晶の理化学的性質を調べたところ、次の通りであった。
(1) 元素分析(無水物として)
含水結晶 C=43.13% H=6.37%
無水結晶 C=43.20% H=6.35%
理論値 C=43.48% H=6.32%
(2) 質量分析(無水物として)
MW=828 (分子式C30H52O26)
(3) 水分
カールフィッシャー法にて測定
含水結晶 4.2%(マルトテトラオシルグルコシド1モルに水2モル)
無水結晶 0.2%
(4) 融点
マルトテトラオシルグルコシドの含水結晶又は無水結晶1mgをそれぞれ専用アルミ容器に入れ、示差走査熱量計DSC−8230(株式会社リガク販売)で測定したところ、含水結晶の場合、170乃至172℃と230乃至233℃の2つの吸熱ピークが、無水結晶の場合、230乃至233℃に吸熱ピークが検出された。含水結晶の融点測定時に検出される230乃至233℃の吸熱ピークは温度上昇中に含水結晶が無水結晶に移行したため出現したものと判断される。したがって、含水結晶の融点は170乃至172℃、無水結晶の融点は230乃至233℃と判断される。
(5) 比旋光度(無水物として)
含水結晶、無水結晶とも、
[α]D 20 +208.8゜(c=1.0,H20)
(6) 紫外線吸収スペクトル
含水結晶、無水結晶とも、水溶液にして測定すると特徴ある吸収は示さない。
(7) 赤外線吸収スペクトル
含水結晶又は無水結晶の粉末2mgをそれぞれ乾燥KBr 200mgと撹拌、混合して透明なタブレットを作製し、赤外線吸収スペクトルを測定した。結果はそれぞれ図5、図6に示す。
(8) 溶解度(無水物として)含水結晶、無水結晶とも、比較的溶解度が低く、25℃で水100mlに対し約1g溶解する。
(9) 呈味
結晶マルトテトラオシルグルコシドの飽和水溶液は、わずかに味わえる程の低い甘味を呈する。
(10) 呈色反応
含水結晶、無水結晶とも、アントロン−硫酸反応で緑色を呈し、フェーリング氏液還元反応、よう素反応は陰性。
(11) 構造(無水物として)
(a) 1N−硫酸で加水分解するとD−グルコースのみを生成する。
(b) グルコアミラーゼの作用により、グルコース3モルとトレハロース1モルを生成した。
(c) 炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)の結果を図7に示す。クラウス・ボック(KLAUS BOCK)等が、『アドバンシス・イン・カーボハイドレート・ケミストリー・アンド・バイオケミストリー(Advances in Carbohydorate Chemistry and Biochemistry)』、第42巻、第193乃至225頁(1984年)で報告している標準物質、α−D−グルコピラノース、α,α−トレハロース及びマルトテトラオースの化学シフトより、各炭素を帰属し、本物質はO−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル α−D−グルコピラノシドすなわちマルトテトラオシルグルコシドの構造を有していると判断される。
(12) 粉末X線回折
エフ・エイチ・ストドーラ(F.H.Stodola)等が、『ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Jounal of the American Chemical Society)』、第78巻、第2514乃至2518頁(1956年)に報告されている方法に準じて、結晶マルトテトラオシルグルコシドのCuKα線を使用した粉末X線回折図形を測定した。含水結晶の結果を図8に、無水結晶の結果を図9に示した。図8、図9の結果より明らかなように、含水結晶は粉末X線回折法における主な回折角(2θ)として12.6°、21.3゜、22.1°及び22.8°を有し、また、無水結晶は12.7゜、13.7゜、18.8゜及び23.2゜を有する。
以上の事実より本発明の結晶は、従来全く知られていないマルトテトラオシルグルコシドの結晶であると判断される。
【0059】
【実験B−2 急性毒性試験】
マウスを使用して、実験B−1の方法で調製したマルトテトラオシルグルコシドの含水結晶及び無水結晶をそれぞれに経口投与して急性毒性テストを行なった。その結果、これら結晶マルトテトラオシルグルコシドは低毒性の物質で、投与可能な最大投与量においても死亡例は認められなかった。したがって、正確な値はいえないが、そのLD50値は、いずれも50g/kg以上であった。
【0060】
以下、本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドの製造方法を実施例Aで、その用途を実施例Bで示す。
【0061】
【実施例A−1】
純度98%のマルトペンタオース(株式会社林原生物化学研究所製)50重量部を水200重量部に加熱溶解させた後、pH7.0、温度40℃に調整し、これに実験A−2の方法で調製した非還元性糖質生成酵素をマルトペンタオースグラム当たり5単位になるように加え、24時間反応させた。100℃で20分加熱して、酵素を失活させた。本溶液には、マルトテトラオシルグルコシドを固形物当たり約90%を含有し、その他はマルトペンタオースであった。この反応液に水酸化ナトリウムを0.1Nになるように加え、100℃で2時間加熱して還元性糖質を分解した。この溶液を活性炭にて脱色し、H型、OH型、イオン交換樹脂で脱塩し、マルトテトラオシルグルコシド純度98%の糖液を得た。この糖液を濃度60%に濃縮して助晶缶にとり、結晶マルトテトラオシルグルコシドを種晶として2%加え、ゆっくり撹拌しながら助晶した。得られるマスキットを分蜜し純度99.9%の含水結晶マルトテトラオシルグルコシドを原料当たり収率約50%で得た。このようにして得た結晶マルトテトラオシルグルコシドは、室内に放置しても吸湿性を示さなかった。
【0062】
本結晶マルトテトラオシルグルコシドは、種晶として有利に用いることができるほか、試薬、血清アミラーゼ定量用基質、化学原料などとしても好都合である。更に、飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。
【0063】
【実施例A−2】
炭酸カルシウム0.1%を含む濃度20%の馬鈴薯澱粉乳を、pH6.0に調整したのち、α−アミラーゼ(ノボ・ノルディスク・インダストリー社製造、商品名ターマミール60L)を澱粉固形物グラム当たり0.3%加え、95乃至100℃に加熱して、澱粉を糊化、分解したのち、酵素を加熱失活させてDE19.5の液化液を得た。本液をpH6.2、温度40℃に調整し、これに実験A−2の方法で調製した非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり3単位、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を1,000単位の割合となるように加え、72時間反応させた。その反応液を95℃に加熱し10分間保って酵素を失活させた。本溶液には、マルトテトラオシルグルコシドを固形物当たり約30%を含有していた。この反応液を活性炭で脱色し、イオン交換樹脂(H型及びOH型)にて脱塩し、濃度40%に濃縮した。この濃縮液を塩型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ株式会社製造、商品名XT−1016、Na型)を充填したジャケット付きステンレス製カラム(5.4cm×4mを4本直列に接続)に、60℃、SV0.4でチャージし、ついで、60℃温水で溶出してマルトテトラオシルグルコシド高含有画分を採取した。本液は、固形物当たり約75%のマルトテトラオシルグルコシドを含有していた。本液を常法にしたがって、活性炭にて脱色し、イオン交換樹脂(H型及びOH型)にて脱塩し、固形物濃度約80%に濃縮した。この濃縮液を助晶缶にとり、結晶マルトテトラオシルシルグルコシドを種晶として1%加え、ゆっくり撹拌しながら助晶し、次いで、バットに取り出し、ブロックを作製した。ブロックは約25℃で2日間静置し熟成させたのち、切削型粉砕機で粉砕し、流動乾燥し、分級し、含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末を原料当たり収率約30%で得た。
【0064】
本品は、実質的に吸湿性を示さず、取扱いが容易であり、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。
【0065】
【実施例A−3】
澱粉部分分解物(松谷化学工業株式会社製造、商品名パインデックス#4)を用いて、濃度20%、pH5.5、温度45℃に調整し、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を澱粉部分分解物グラム当たり500単位加え、24時間反応し、澱粉由来のα−1,6結合を分解した。反応液を100℃に加熱し10分間保ったのち、40℃に冷却し、pHを6.5に調整した。これに実験A−2の方法で調製した非還元性糖質生成酵素を固形物グラム当たり5単位、α−アミラーゼ(ノボ・ノルディスク・インダストリー社製造、商品名ターマミール60L)を澱粉固形物グラム当たり0.3%加え、48時間反応させ、その反応液を加熱し酵素を失活させたのち、冷却した。本反応液にはマルトテトラオシルグルコシドとして、固形物当たり約32%含有していた。これを実施例A−2と同様に精製、濃縮し、塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかけてマルトテトラオシルグルコシド高含有画分を採取した。本液は、固形物当たり約81%のマルトテトラオシルグルコシドを含有していた。本液を常法にしたがって、活性炭にて脱色し、イオン交換樹脂(H型及びOH型)にて脱塩し、濃度約70%に濃縮して助晶缶にとり、結晶マルトテトラオシルグルコシドを、種晶として2%添加し、ゆっくり撹拌しながら助晶し、晶出率約60%のマスキットを得た。本マスキットを乾燥塔上のノズルより150kg/cm2の高圧で噴霧した。これと同時に85℃の熱風を乾燥塔の上部より送風し、 乾燥塔底部に設けた移送金網コンベア上に結晶粉末を捕集し、コンベアの下より45℃の温風を送りつつ、該粉末を乾燥塔外に徐々に移動させて、取り出した。この粉末結晶を熟成塔に充填し、温風を送りつつ、24時間熟成させ、結晶化と乾燥を完了し、含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末を原料当たり収率約25%で得た。
【0066】
本品は、吸湿性を示さず、取扱いが容易であり、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。
【0067】
【実施例A−4】
実施例A−1の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシドを100℃で一夜減圧乾燥して、水分約0.2%の無水結晶マルトテトラオシルグルコシドを得た。
【0068】
本品は、室内に放置すると吸湿し、水分約4%の含水結晶マルトテトラオシルグルコシドに容易に戻り安定化する。本無水結晶マルトテトラオシルグルコシドは、吸湿剤、脱水剤、化学原料などとして有利に利用できる。更に、実施例A−1の含水結晶マルトテトラオシルグルコシドの場合と同様に飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。
【0069】
【実施例A−5】
トレハロース1重量部及び澱粉部分分解物(松谷化学工業株式会社製造、商品名パインデックス#4)1重量部を水3重量部に加熱溶解し、温度65℃、pH6.0に調整し、これにバチルス・ステアロサーモフィラス由来のシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を澱粉部分分解物グラム当たり10単位加えて24時間反応の後、酵素を加熱失活させた。次いで、温度55℃に調整し、これにプルラナーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)及びα−アミラーゼ(ノボ・ノルディスク・インダストリー社、商品名ターマミール60L)を澱粉部分分解物グラム当たりそれぞれ25単位、5単位加えて24時間反応させて、これら酵素を加熱失活させた。この反応液には、マルトテトラオシルグルコシドを固形物当たり約15%含有していた。これを実施例A−2と同様に精製し、塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかけてマルトテトラオシルグルコシド高含有画分を得、これを脱色、脱塩し、濃縮、助晶し、バットに取り出してブロックを作製した。本ブロックを切削、乾燥、分級して、含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末を原料当たり収率約10%で得た。
【0070】
本品は、実質的に吸湿性を示さず、取扱いが容易であり、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。
【0071】
【実施例B−1 甘味料】
実施例A−2の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末0.5重量部及び結晶マルトース(株式会社林原商事販売、登録商標サンマルト)1.5重量部に、α−グリコシルステビオシド(東洋精糖株式会社販売、商品名αGスイート)0.1重量部を均一に混合し、顆粒成形機にかけて、顆粒状甘味料を得た。
【0072】
本品は、甘味の質が優れ、蔗糖の約2倍の甘味度を有し、甘味度当たりカロリーは、蔗糖の約1/2に低下している。本甘味料は、低カロリー甘味料として、カロリー摂取を制限している肥満者、糖尿病者などのための低カロリー飲食物などに対する甘味付けに好適である。また、本甘味料は、虫歯誘発菌による酸の生成が少なく、不溶性グルカンの生成も少ないことより、虫歯を抑制する飲食物などに対する甘味付けに好適である。
【0073】
【実施例B−2 乳酸飲料】
脱脂乳10重量部を80℃で20分間加熱殺菌した後、40℃に冷却し、これにスターター0.3重量部を加えて約37℃で10時間醗酵させた。次いで、これをホモジナイズした後、実施例A−3の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末0.4重量部、マルトテトラオースシラップ(株式会社林原商事販売、登録商標テトラップ)1.6重量部、蔗糖1重量部及び異性化糖シラップ3重量部を加えて70℃に保って殺菌した。これを冷却し、適量の香料を加え、ビン詰めして製品を得た。
【0074】
本品は、風味、甘味が酸味とよく調和した高品質の乳酸飲料である。
【0075】
【実施例B−3 粉末ジュース】
噴霧乾燥により製造したオレンジ果汁粉末33重量部に対し、実施例A−5の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末5重量部、結晶マルトース35重量部、蔗糖20重量部、無水クエン酸0.65重量部、リンゴ酸0.1重量部、L−アスコルビン酸0.1重量部、クエン酸ソーダ0.1重量部、プルラン0.5重量部及び粉末香料適量をよく混合撹拌し、粉砕し微粉末にしてこれを流動層造粒機に仕込み、排風温度40℃とし、これに水飴をバインダーとしてスプレーし、30分間造粒し、計量、包装して製品を得た。
【0076】
本品は、果汁含有率約30%の粉末ジュースである。また、本品は異味、異臭がなく、吸湿固結も起こさず長期に安定であった。
【0077】
【実施例B−4 チョコレート】
カカオペースト40重量部、カカオバター10重量部、実施例A−1の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド5重量部、結晶マルトース10重量部及び蔗糖35重量部を混合してレファイナーに通して粒度を下げた後、コンチェに入れて50℃で2昼夜練り上げる。この間に、レシチン0.5重量部を加え充分に混和分散させた。次いで、温度調節機で31℃に調節し、バターの固まる直前に型に流し込み、振動機でアワ抜きを行ない、10℃の冷却トンネルを20分間くぐらせて固化させた。これを型抜きして包装し製品を得た。
【0078】
本品は、吸湿性がなく、色、光沢共によく、内部組織も良好で、口中でなめらかに溶け、上品な甘味とまろやかな風味を有する。
【0079】
【実施例B−5 チューインガム】
ガムベース3重量部を柔らかくなる程度に加熱溶融し、これに結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、登録商標マビット)3重量部、蔗糖3重量部及び実施例A−2の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末1重量部とを加え、更に適量の香料と着色料とを混合し、常法にしたがって、ロールにより練り合わせ、成形、包装して製品を得た。
【0080】
本品は、テクスチャー、風味とも良好なチューインガムである。
【0081】
【実施例B−6 ういろうの素】
米粉90重量部に、コーンスターチ20重量部、実施例A−3の方法で得た結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末10重量部、粉末マルトテトラオース60重量部、蔗糖50重量部及びプルラン4重量部を均一に混合してういろうの素を製造した。ういろうの素と適量の抹茶と水とを混練し、これを容器に入れて60分間蒸し上げて抹茶ういろうを製造した。
【0082】
本品は、照り、口当たりも良好で、風味も良い。また、澱粉の老化も抑制され、日持ちもよい。
【0083】
【実施例B−7 流動食用固体製剤】
実施例A−4の方法で得た無水結晶マルトテトラオシルグルコシド100重量部、結晶マルトース100重量部、粉末マルトテトラオース350重量部、粉末卵黄270重量部、脱脂粉乳209重量部、塩化ナトリウム4.4重量部、塩化カリウム1.85重量部、硫酸マグネシウム4重量部、チアミン0.01重量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1重量部、ビタミンEアセテート0.6重量部及びニコチン酸アミド0.04重量部からなる配合物を調製し、この配合物25グラムずつ防湿性ラミネート小袋に充填し、ヒートシールして製品を得た。
【0084】
本品は、1袋分を約150乃至300mlの水に溶解して流動食とし、経口的、又は鼻腔、胃、腸などへ経管的使用方法により利用される。
【0085】
【実施例B−8 外傷治療用膏薬】
実施例A−1の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド20重量部、結晶マルトース280重量部及び粉末マルトテトラオース200重量部に、ヨウ素3重量部を溶解したメタノール50重量部を加え混合し、更に10%プルラン水溶液200重量部を加えて混合し、適度の延び、付着性を示す外傷治療用膏薬を得た。
【0086】
本品は、治癒期間が短縮され、創面もきれいに治る。
【0087】
【実施例B−9 糖衣錠】
重量150mgの素錠を芯剤とし、これに実施例A−2の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末5重量部、結晶マルチトール40重量部、プルラン(平均分子量20万)2重量部、水30重量部、タルク25重量部及び酸化チタン3重量部からなる下掛け液を用いて錠剤重量が約230mgになるまで糖衣し、次いで、同じ結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末10重量部、結晶マルチトール55重量部、プルラン1重量部及び水34重量部からなる上掛け液を用いて糖衣し、更に、ロウ液で艶出しして光沢のある外観の優れた糖衣錠を得た。
【0088】
本品は、糖衣掛け時の作業性が優れているだけでなく、耐衝撃性にも優れており、高品質を長期間維持する。
【0089】
【実施例B−10 乳液】
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル0.5重量部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール1重量部、親油型モノステアリン酸グリセリン1重量部、ベヘニールアルコール0.5重量部、アボガド油1重量部、実施例A−2の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末1重量部、マルチトール2.5重量部、α−グリコシルルチン1重量部、ビタミンE及び防腐剤の適量を、常法にしたがって加熱溶解し、これに1,3−ブチレングリコール5重量部、カルボキシビニルポリマー0.1重量部及び精製水85.3重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ、乳化し、乳液を製造した。
【0090】
本品は、保湿性ある乳液で、日焼け止め、色白剤などとして有利に利用できる。
【0091】
【実施例B−11 スキンクリーム】
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、α−グリコシルルチン2重量部、流動パラフィン1重量部、トリオクタン酸グリセリル10重量部、実施例A−1の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド1重量部、マルチトール3重量部及び防腐剤の適量を、常法にしたがって加熱溶解し、これに1,3−ブチレングリコール5重量部及び精製水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけて乳化し、更に、香料の適量を加えて撹拌混合し、クリームを製造した。
【0092】
本品は、伸びの良いクリームで、日焼け止め、美肌剤、色白剤などとして有利に利用できる。
【0093】
【実施例B−12 練歯磨】
第二リン酸カルシウム45重量部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5重量部、グリセリン25重量部、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート0.5重量部、実施例A−3の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末2重量部、プルラン3重量部、マルチトール10重量部、サッカリン0.02重量部及び防腐剤0.05重量部を水13重量部と混合して練歯磨を得た。
【0094】
本品は、光沢、洗浄力も良好で、練歯磨として好適である。
【0095】
【実施例B−13 肥料杭】
配合肥料(N=14%、P2O5=8%、K2O=12%)、プルラン、実施例 A−3の方法で得た含水結晶マルトテトラオシルグルコシド含有粉末、硫酸カルシウム及び水の割合を重量でそれぞれ70、5、5、15及び5として充分混合した後、押出機(L/D=20、圧縮比=1.8、ダイスの口径=30mm)で80℃に加熱して肥料杭を製造した。
【0096】
本品は、肥料用容器が不要で取扱い容易であり、全層施肥に適した強度を有し、更に配合割合を変えることにより肥料成分の溶出速度を調節できる。必要ならば、この肥料杭に植物ホルモン、農業用薬剤及び土壌改良剤等の混合も容易である。
【0097】
【発明の効果】
上記したことから明らかなように、本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドは、従来全く知られておらず、また、還元性のマルトペンタオースとは違って、非還元性で吸湿性も低く、より安定で取扱い容易である。更に結晶マルトテトラオシルグルコシド結晶は、容易に単離、精製できることから、安価に製造が可能である。
【0098】
本発明の結晶マルトテトラオシルグルコシドは、試薬、血清アミラーゼ定量用基質、化学原料などとして有利に利用できるのみならず、飲食物、化粧品、医薬品、成形物などの各種組成物に有利に利用できる。したがって、関係業界に与える影響はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】リゾビウム・スピーシーズ M−11由来の非還元性糖質生成酵素の活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図2】リゾビウム・スピーシーズ M−11由来の非還元性糖質生成酵素の活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図3】リゾビウム・スピーシーズ M−11由来の非還元性糖質生成酵素の温度安定性を示す図である。
【図4】リゾビウム・スピーシーズ M−11由来の非還元性糖質生成酵素のpH安定性を示す図である。
【図5】含水結晶マルトテトラオシルグルコシドの赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図6】無水結晶マルトテトラオシルグルコシドの赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図7】マルトテトラオシルグルコシドの炭素核磁気共鳴分析結果を示す図である。
【図8】含水結晶マルトテトラオシルグルコシドの粉末X線回折図形を示す図である。
【図9】無水結晶マルトテトラオシルグルコシドの粉末X線回折図形を示す図である。
Claims (3)
- 結晶O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシルα−D−グルコピラノシド。
- 粉末X線回折法における主な回折角(2θ)として12.6°、21.3°、22.1°及び22.8°を有する含水結晶の形態にある請求項1記載の結晶O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシルα−D−グルコピラノシド。
- 粉末X線回折法における主な回折角(2θ)として12.7°、13.7°、18.8°及び23.2°を有する無水結晶の形態にある請求項1記載の結晶O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシルα−D−グルコピラノシド。
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