JP3936634B2 - テンショントラス構造体およびカーテンウォール - Google Patents

テンショントラス構造体およびカーテンウォール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テンショントラス構造体およびカーテンウォールに関する。
【0002】
【背景技術】
近年のビル等では、カーテンウォールによる外壁面にも様々な意匠のものが使用されるようになった。
例えば、大型ビルの低層階に配置される吹き抜け空間の外壁として、ガラスカーテンウォールを用いることが多い。
このガラスカーテンウォールとしては、ガラスを支持する構造をできるだけ目立たなくするために、通常、DPG(ドット・ポイント・グレイジング)方式により支持されたカーテンウォールが用いられている。このDPG方式のガラスカーテンウォールでは、ガラスパネルの四隅に貫通孔を形成し、互いに隣接する4枚のガラスパネルの4つの貫通孔を、正面略X字形状やH字形状等の支持具で支持するため、構造材が露出せず、外観を良好にできる。
【0003】
このような支持具は、通常、ガラスカーテンウォールの室内側に配置された、テンショントラス構造体に連結され、ガラスパネルに加わる自重や風圧等の荷重がテンショントラス構造体で支持されている。テンショントラス構造体は、所定の間隔を離して設けられた柱や梁、方立等の間(スパン)に、例えば2本を1組としたテンション材としてのケーブル材を架け渡して構成されている。また必要に応じて、スパン途中のケーブル材間にコンプレッション材としての束材を取り付けて、ケーブル材の間隔および架け渡し方向に関する角度等のケーブル材の架設形状が所定のトラス形状となるようにされている。さらに、ケーブル材に所定の張力を導入して、所定の剛性および強度を備えたテンショントラス構造体が形成される。
【0004】
このようなテンショントラス構造体においては、従来、特開平7−71083号公報に示されるように、ケーブル材は、1つのスパンに対応した長さに形成されている。そして、ケーブル材の両端は、建物躯体に固定具を介して固定され、これらケーブル材の両端の固定具のうちのいずれか一方には、張力設定手段としての螺合部が設けられている。この螺合部は、ケーブル材の端部をその軸回りに回転自在に係合し、躯体に取り付けられた固定部に螺合され、この螺合の深さによって、ケーブル材に導入する張力を調整する構成となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のテンショントラス構造体では、建物躯体のスパンごとに、そのスパンに対応した長さにケーブル材が切断加工され、その両端部が固定されている。従って、複数スパンに渡るテンショントラス構造体の場合、スパンの数だけケーブル材を切断し端部処理する加工手間が掛かり、さらに、スパンごとに固定部および螺合部等を有した固定具が必要となり、部品点数が増大するという問題がある。また、各スパンごとにケーブル材の両端部に固定部が存在するため、建物外部からガラスパネルを通した外観および室内側からの内観が損なわれ、意匠性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ケーブル材の加工手間および部品点数を削減でき、意匠性を向上できるテンショントラス構造体およびカーテンウォールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のテンショントラス構造体は、所定間隔離れて配置された端部固定部材に両端が固定され、当該各端部固定部材間に架け渡されるテンション材と、前記各端部固定部材間に配置される支持部材と、前記テンション材の途中部分を前記支持部材に固定する固定手段と、前記テンション材の張力を設定する張力設定手段とを備えて構成され、前記支持部材は、所定間隔離れて互いに対向配置される複数の支持部材本体を備えて構成され、前記固定手段は、前記各支持部材本体間に着脱自在に取り付けられる固定部材であり、この固定部材を介して前記テンション材の途中部分が前記支持部材に固定されることを特徴とする。
【0008】
ここで、テンション材としては、PC鋼より線(ストランド)や単線等からなるケーブル材の他、PC鋼棒やワイヤロープ等の可撓性を有する線状材料が含まれる。
また、端部固定部材または支持部材は、柱や梁、壁、床等の建物躯体、および方立や無目等の所定強度および剛性を備え、テンション材から伝達される荷重を支持可能な部材を意味する。そして、これらの各部材から適宜選択した部材を端部固定部材または支持部材として適用でき、例えば、端部固定部材および支持部材ともに同様の部材としての柱で構成してもよく、また、端部固定部材を柱で構成し、支持部材を方立で構成することも可能である。
【0009】
このような本発明によれば、端部固定部材間に架け渡されるケーブル材(テンション材)の途中部分を固定手段により支持部材に固定できるため、端部固定部材間を支持部材で区切った間隔(スパン)ごとにケーブル材を切断加工する必要がなく、また、支持部材の両側にそれぞれのスパンに対応した固定具を設ける必要もないため、ケーブル材の加工手間および固定具等の部品点数を削減できる。また、支持部材に取り付けられる固定具等が減少することで、意匠性を向上することができる。
【0010】
また、本発明のテンショントラス構造体では、前記支持部材は、所定間隔離れて互いに対向配置される複数の支持部材本体を備えて構成され、前記固定手段は、前記各支持部材本体間に着脱自在に取り付けられる固定部材であり、この固定部材を介して前記テンション材の途中部分が前記支持部材に固定される
【0011】
このように固定部材を介してケーブル材の途中部分を支持部材に固定するため、支持部材側にケーブル材を固定する固定部等を設ける必要がなく、支持部材の加工および施工性を向上できる。また、固定部材が支持部材本体間に着脱自在に取り付けられるので、ケーブル材の架け渡し施工に際して固定部材が邪魔にならず、施工性を向上できるとともに、施工途中等に、ケーブル材や固定部材が傷付いたり破損した場合であっても、それらの部材を容易に交換することができる。
【0012】
この際、本発明のテンショントラス構造体では、前記支持部材本体には、互いに対向する位置に受け部が設けられ、前記固定部材は、軸材と、この軸材の端部に螺合される端部部材とを有し、これらの軸材および端部部材が当該軸材の軸回りに関して相対回転することで、前記端部部材が前記軸材の軸方向に進退移動する伸縮機構を備え、この伸縮機構の操作により、前記固定部材の全長が伸張することで、当該固定部材と前記各支持部材本体の受け部とが係合し、当該固定部材が前記支持部材に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
このような構成では、固定部材の伸縮機構の操作により固定部材の全長を伸縮させることによって、各支持部材本体間に互いに対向して設けられた受け部に、固定部材を容易に係合、固定することができ、固定部材の取付作業を迅速に行うことができる。また、互いに螺合される軸材および端部部材を相対回転させるだけで伸縮機構を操作できるので、固定部材を容易に固定することができるとともに、無段階で伸縮長さを調節でき固定の際の微調整が可能である。
【0014】
さらに、本発明のテンショントラス構造体では、前記端部固定部材と前記支持部材との間には、前記テンション材に取り付けられる束材が配置され、前記束材は、軸材と、この軸材の端部に螺合される端部部材とを有し、これらの軸材および端部部材が当該軸材の軸回りに関して相対回転することで、前記端部部材が前記軸材の軸方向に進退移動する伸縮機構を備え、前記テンション材は、当該テンション材の延長方向と前記軸材の軸方向とが交差する状態で、前記束材の端部部材に保持され、前記張力設定手段は、前記束材で構成され、当該束材の伸縮機構の操作により、前記端部部材の前記テンション材を保持する位置を移動させることで、当該テンション材の張力を調整可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のテンショントラス構造体では、前記支持部材は、互いに所定間隔離れて複数配置され、これらの各支持部材間には、前記テンション材に取り付けられる束材が配置され、前記束材は、軸材と、この軸材の端部に螺合される端部部材とを有し、これらの軸材および端部部材が当該軸材の軸回りに関して相対回転することで、前記端部部材が前記軸材の軸方向に進退移動する伸縮機構を備え、前記テンション材は、当該テンション材の延長方向と前記軸材の軸方向とが交差する状態で、前記束材の端部部材に保持され、前記張力設定手段は、前記束材で構成され、当該束材の伸縮機構の操作により、前記端部部材の前記テンション材を保持する位置を移動させることで、当該テンション材の張力を調整可能に構成されることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、端部固定部材と支持部材との間、または複数配置された支持部材間の各スパンでケーブル材に取り付けられ、ケーブル材の架設形状を所定のトラス形状に維持する束材が伸縮機構を備えることによって、ケーブル材に張力を導入し、調整することができる。従って、各スパンごとに別途ターンバックル等の張力設定手段を設ける必要がなく、部材点数をさらに削減できる。また、束材をケーブル材に取り付ける作業と、束材の伸縮機構を操作しケーブル材に張力を導入し、調整する作業とを連続的に行えるので、作業効率を向上できる。さらに、各スパンにおいて、目に付く部材はケーブル材および束材のみとすることで、構造体が目立たず、意匠性をさらに向上することができる。
【0017】
さらに、本発明のテンショントラス構造体では、前記テンション材は、2本を1組として前記各端部固定部材間に架け渡され、前記束材の端部部材は、前記軸材の両端部に形成された互いに逆向きのねじ部に螺合された2部材で構成され、これらの各端部部材に前記各テンション材が各々保持され、前記束材で構成された前記張力設定手段は、当該束材の伸縮機構の操作により、前記各端部部材同士が前記軸材の軸方向に関して互いに逆向きに進退移動し、当該各端部部材に保持された前記各テンション材同士の間隔を変化させることで、当該各テンション材の張力を調整可能に構成されることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、束材の伸縮機構を操作し各端部部材を互いに逆向きに進退移動させ、2本1組で構成されるケーブル材同士の間隔を変化させることによって、一度の作業で2本のケーブル材に張力を導入し、調整することができ、作業効率を向上できる。
【0019】
また、本発明のカーテンウォールは、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のテンショントラス構造体と、このテンショントラス構造体のテンション材の架け渡し方向に沿って配置される壁面材と、この壁面材を前記テンショントラス構造体に連結する連結部材とを備えることを特徴とする。
【0020】
このような本発明によれば、カーテンウォールの壁面材を支持するテンショントラス構造体において、端部固定部材間に架け渡されるケーブル材の途中部分を固定手段により支持部材に固定できるため、スパンごとにケーブル材を切断加工する必要がなく、また、支持部材の両側にそれぞれのスパンに対応した固定具を設ける必要もないため、ケーブル材の加工手間および固定具等の部品点数を削減できる。また、支持部材に取り付けられる固定具等が減少することで、構造体が目立たずカーテンウォールの意匠性を向上することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカーテンウォール1の一部を示す斜視図であり、図2は、その平面図である。
図1、図2において、カーテンウォール1は、壁面材としての複数のガラスパネル2と、これらのガラスパネル2を支持するテンショントラス構造体10と、ガラスパネル2とテンショントラス構造体10とを連結する連結部材4とを備えて構成されている。
【0022】
カーテンウォール1は、建物の吹き抜け部分の室内側と室外側とを仕切る外壁面を形成し、建物室外側は、ガラスパネル2のみで構成されたフラットな外観を有し、建物室内側に設けられたテンショントラス構造体10によって支持されている。複数のガラスパネル2は、それぞれ所定の大きさの矩形状に形成され、各々のガラスパネル2同士の間はシール材によって接続され、4枚のガラスパネル2が寄せ集められた隅部がDPG(ドット・ポイント・グレイジング)方式で支持されている。すなわち、ガラスパネル2の四隅には図示しない貫通孔が設けられ、この貫通孔を通して4枚のガラスパネル2の各隅部が1つのスパイダーブラケット3に固定されている。スパイダーブラケット3は、正面略X字形またはH字形等の形状を有する支持具であって、その室内側がテンショントラス構造体10に連結部材4を介して連結されている。
【0023】
テンショントラス構造体10は、カーテンウォール1の外壁面に沿って配置される、端部固定部材としての端部トラス柱20と、支持部材としての中間トラス柱30と、これら端部トラス柱20および中間トラス柱30の間に連続して架け渡される、2本を1組としたテンション材としてのケーブル材11とを備えて構成されている。端部トラス柱20および中間トラス柱30は、所定間隔(スパンL1)として、ガラスパネル2の3枚分の幅と対応する距離だけ互いに離れて立設されている。1組のケーブル材11は、ガラスパネル2の1枚分の高さだけ互いに間隔を離して水平方向に架け渡されている。なお、本実施形態において、ケーブル材11は、PC鋼より線(ストランド)から構成されている。
【0024】
端部トラス柱20は、ケーブル材11の両端部に配置されるものであって、本実施形態においては、カーテンウォール1全体の両端部(図1,2では、片側端部のみを示す)の2箇所に配置され、建物躯体としての本柱5に結合されている。そして、端部トラス柱20は、鉛直方向に延び、互いに平行に立設された3本の鋼管製柱材21と、これらの柱材21間を連結する鋼管製の水平材22および斜材23とが、互いに溶接されて一体に形成されたトラス柱となっている。これら各部材のうち室内外方向に沿って配置された水平材22には、ケーブル材11の端部を固定するブラケット24が溶接され、固定具25を介してケーブル材11の端部が固定されている。
【0025】
中間トラス柱30は、各端部トラス柱20の間を所定のスパンL1に区切った各位置(図1,2では、1箇所のみを示す)に立設されている。そして、中間トラス柱30は、室内外方向に互いに所定間隔離れて立設される支持部材本体としての2本の鋼管製柱材31と、これらの柱材31間を連結する鋼管製の斜材33とが、互いに溶接されて一体に形成されている。中間トラス柱30には、ケーブル材11が配設される高さ位置に対応して、ケーブル材11の途中部分を中間トラス柱30に固定する固定部材としてのトラス束材40が取り付けられている。
【0026】
図3、図4は、中間トラス柱30に取り付けられるトラス束材40の要部を示す斜視図および要部を拡大して示す平面図である。図3、図4において、トラス束材40は、中間トラス柱30の2本の柱材31の互いに対向する側面に設けられた、受け部としての略円筒状の受けブラケット34に嵌合、固定されている。2本のケーブル材11は、各々の途中部分をトラス束材40の両端部側で保持されている。
【0027】
また、図2に示すように、1組のケーブル材11は、スパンL1内において、2本のケーブル材11が交差する2箇所の交差区間Aと、ケーブル材11が互いに平行に配設される平行区間Bとを有して架け渡されている。交差区間Aと平行区間Bとの境界位置、すなわち、隣接するガラスパネル2同士の接続箇所と対応した位置には、2本のケーブル材11の架設形状を所定のトラス形状に維持する束材50が配置されている。
図5は、スパンL1の途中位置でケーブル材11を保持する束材50の要部を拡大して示す平面図である。図2および図5において、2本のケーブル材11は、各々の途中部分を束材50の両端部側で保持されている。
【0028】
図6には、トラス束材40および束材50の側面図が示されている。束材50は、トラス束材40と同様の構造を有しているため、以下、トラス束材40について説明し、束材50に関しては対応する部材または部位の符号のみを括弧内に示す。
図6において、トラス束材40(50)は、円筒状の軸材41(51)と、この軸材41(51)の両端部に螺合される2つの端部部材42(52)とを備えている。これら2つの端部部材42(52)は、ケーブル材11を保持する溝部42A(52A)およびカバー材43(53)を有しており、カバー材43(53)をボルト44(54)で固定することで、溝部42A(52A)とカバー材43(53)との間にケーブル材11が挟持、固定される。溝部42A(52A)の端部には、ケーブル材11が軸材41(51)の軸方向に直交する方向と傾斜した状態で保持される際にも、ケーブル材11がなだらかな曲率を有して保持されるように、面取り42D(52D)が施されている。
【0029】
また、トラス束材40(50)の軸材41(51)の両端部内周および端部部材42(52)の軸材41(51)側には、互いに螺合する雌ねじ41A(51A)および雄ねじ42C(52C)が形成されている。これらの雌ねじ41A(51A)および雄ねじ42C(52C)は、軸材41(51)の両端部で互いに逆向きの螺合方向を有して形成されており、軸材41(51)をその軸回りに回転することで、各端部部材42(52)が軸材41(51)の軸に沿った方向に互いに逆向きに進退移動するようにされている。すなわち、ケーブル材11を保持する各端部部材42(52)は回転しないように、その回転を規制した状態で、軸材41(51)をレンチ等を用いて所定の回転方向に回転することで、各端部部材42(52)が互いに離れる方向、あるいは互いに近づく方向に移動する。このような各端部部材42(52)の互いに逆向きの進退移動によって、トラス束材40(50)の全長が伸縮する伸縮機構が構成されている。
【0030】
さらに、トラス束材40の両端部である端部部材42の軸材41と反対側には、前記中間トラス柱30の2本の柱材31に設けられた受けブラケット34に嵌合する突出部42Bが形成されている。また、束材50の両端部である端部部材52の軸材51と反対側にも同様に、突出部52Bが形成され、室外側の突出部52Bに前記連結部材4が嵌合されている。
なお、ケーブル材11の張力設定手段は、束材50により構成されており、束材50の伸縮機構を操作して各端部部材52で保持した1組のケーブル材11の間隔を広げることで、ケーブル材11に張力が導入され、間隔を調整することによってケーブル材11の張力が調整可能とされている。
【0031】
次に、本実施形態のテンショントラス構造体10の施工方法について説明する。
端部トラス柱20および中間トラス柱30を立設後、2箇所の端部トラス柱20同士の間の距離に対応した長さに形成されたケーブル材11を2本1組として、配設される高さ位置に応じた中間トラス柱30の柱材31間に通して、2箇所の端部トラス柱20に渡って仮置き、配設する。そして、ケーブル材11の両端部を端部トラス柱20のブラケット24に固定具25を介して固定する。続いて、中間トラス柱30の位置において、トラス束材40の伸縮機構を操作しながら、2本の柱材31間の受けブラケット34にトラス束材40の突出部42Bを嵌合してトラス束材40を取り付ける。さらに、ケーブル材11の長さ方向における所定の途中位置をトラス束材40の端部部材42の溝部42Aに挿通し、カバー材43を取り付けて、ボルト44を締めてケーブル材11を固定する。
【0032】
以上の作業で、ケーブル材11の端部または途中部分は、端部トラス柱20あるいは中間トラス柱30に固定される。次に、各スパンL1において、交差区間Aではケーブル材11を交差し、交差区間Aと平行区間Bとの境界位置おけるケーブル材11の所定の中間位置を束材50の端部部材52の溝部52Aに挿通し、カバー材53を取り付けて、ボルト54を締めてケーブル材11を固定する。さらに、束材50の伸縮機構を操作しながら、1組のケーブル材11の間隔を広げる方向に束材50の全長を伸ばしながら、ケーブル材11に張力を加える。このように所定の張力が加えられたケーブル材11は、上下および室内外方向に対して所定の剛性を有するテンショントラス構造体10として機能する。
その後、束材50の突出部52Bに連結部材4を嵌合し、この連結部材4および端部トラス柱20、中間トラス柱30各々の室外側柱材21,31にスパイダーブラケット3およびガラスパネル2を取り付けてカーテンウォール1が完成する。
【0033】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1) 端部トラス柱20の間に架け渡されるケーブル材11の途中部分をトラス束材40を介して中間トラス柱30に固定することによって、各スパンL1ごとにケーブル材11を切断加工する必要がなく、また、中間トラス柱30の両側にそれぞれのスパンL1に対応した固定用のブラケットや固定具を設ける必要もないため、ケーブル材11の加工手間および固定具等の部品点数を低減できる。
【0034】
(2) 中間トラス柱30に固定用の固定具等を設ける必要がないので、テンショントラス構造体10がスマートに見え、建物外部からガラスパネル2を通した外観および室内側からの内観の意匠性を向上することができる。
【0035】
(3) 中間トラス柱30の2本の柱材31間にトラス束材40が着脱自在に取り付けられることによって、トラス束材40を後から取り付けることができるので、ケーブル材11の架け渡し施工に際して、トラス束材40が邪魔にならず、施工性を向上することができる。
【0036】
(4) トラス束材40を中間トラス柱30の2本の柱材31間に架け渡して取り付けることによって、トラス束材40を確実に固定することができるとともに、トラス束材40を着脱自在に取り付けることによって、施工途中等に、ケーブル材11やトラス束材40が傷付いたり破損した場合であっても、それらの部材を容易に交換することができる。
【0037】
(5) トラス束材40の伸縮機構によりトラス束材40の全長を伸長することによって、中間トラス柱30の2本の柱材31間に設けられた受けブラケット34に、トラス束材40を容易に係合することができ、トラス束材40の取付作業を迅速に行うことができる。また、トラス束材40の軸材41を回転操作し、トラス束材40を伸張するだけで取り付けられるので、建設現場において溶接等による固定の必要がなく、部材接合部の外観を綺麗に仕上げることができる。
【0038】
(6) スパンL1途中において、ケーブル材11の架設形状を所定のトラス形状に維持する束材50の伸縮機構を操作し、ケーブル材11の間隔を拡げることで、ケーブル材11に張力を導入、調整する張力設定手段が構成されているため、別途ターンバックル等を設置しなくても張力設定でき、部材点数をさらに削減できる。また、束材50自体が張力設定機能を有するため、構造体が目立たず、意匠性をさらに向上することができる。
【0039】
(7) 束材50で構成された張力設定手段によりケーブル材11に張力を導入、調整できるので、束材50をケーブル材11に取り付ける作業と、ケーブル材11に張力を導入し、調整する作業とを連続的に行え、作業効率を向上できる。さらに、2本1組で構成されるケーブル材11同士の間隔を変化させることによって、一度の作業で2本のケーブル材11に張力を導入し、調整することができ、作業効率を一層向上できる。
【0040】
(8) 中間トラス柱30やスパンL1の途中位置に、機能および外観が共通したトラス束材40および束材50を取り付けることによって、テンショントラス構造体10のデザインの統一性が図られ、意匠性をさらに向上することができる。
【0041】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、以上述べた実施の形態に対し、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができる。
【0042】
例えば、前述の実施形態では、端部トラス柱20および中間トラス柱30を所定スパンL1の間隔で配置し、これらの間にケーブル材11を水平方向に架け渡したが、これに限らず、建物躯体としての梁材を高さ方向に所定間隔(階高)離して配置し、これらの梁材間に鉛直方向にケーブル材を架け渡すこととしてもよい。
また、端部トラス柱20および中間トラス柱30は、鋼管製の柱材21,31や斜材23,33等の部材をそれぞれ溶接してトラス状に形成したが、これに限らず、鉄筋コンクリート製や鉄骨製、木製の材料から構成された柱や梁、壁、床等の建物躯体、および方立や無目等とすることができる。また、端部トラス柱20は、3本の柱材21を備えて形成されるものに限らず、2本の柱材と水平材および斜材とから形成され、中間トラス柱30と同様の形態とされたものでもよい。
さらに、カーテンウォール1全体の両端部に端部トラス柱20を配置することに限らず、カーテンウォールの中間位置に1箇所または2箇所以上の端部固定部材を配置し、カーテンウォール全体を2区間または3区間以上の区間に分けて、これらの区間ごとに所定間隔で支持部材を配置し、区間ごとの長さに対応したケーブル材を架け渡してテンショントラス構造体を構成してもよい。
【0043】
また、前述の実施形態では、テンショントラス構造体10をカーテンウォール1の壁面材を支持する構造体として適用したが、これに限らず、遮音壁や吸音壁等に利用される幕体や防護ネット等に利用される網体等を支持する構造体としても適用できる。また、鉛直に形成される壁状の構造物以外に、水平方向に架設される屋根や床等を支持する構造体としても適用できる。
また、前述の実施形態では、中間トラス柱30の柱材31間にトラス束材40を、その伸縮機構を操作して全長を伸張することによって固定することとしたが、これに限らず、柱材に上方に開口した凹状の嵌合部を有するブラケットを取り付けておき、端部に凸状の突出部を形成したトラス束材を上方から、突出部が嵌合部に凸凹嵌合するように取り付け、ビス等により固定してもよい。また、トラス束材40は着脱自在に中間トラス柱30に取り付けることとしたが、これに限らず、ケーブル材を保持するケーブル保持部を支持部材に設け、このケーブル保持部によりケーブル材を直接支持部材に固定してもよい。
【0044】
また、前述の実施形態では、端部トラス柱20において、ケーブル材11の端部をブラケット24に固定具25を介して固定することとしたが、これに限らず、ターンバックル等の長さ調節可能な部材を介して固定することもできる。このようにすれば、ケーブル材の加工時における加工誤差を吸収し、精度良くテンショントラス構造体を施工することができる。また、このようなターンバックルは張力設定手段としても利用可能であるが、ターンバックルは、ケーブル材の端部にのみ配置可能であるため、ケーブル材の中間部分を固定する中間躯体で挟まれたスパンに関しては、ターンバックルは適用できず、前述の実施形態で説明した束材50による張力設定手段を適用することとなる。
【0045】
また、前述の実施形態では、トラス束材40および束材50は、軸材41,51の両端部に端部部材を互いに逆ねじによって螺合することで、伸縮機構を構成するものとしたが、これに限らず、互いに螺合する2つの部材から構成してもよく、油圧ジャッキ等のように、オイルや水、気体等の圧力を利用し、この圧力を調整することにより伸縮機構を構成するものとしてもよい。ただし、軸材を回転操作するだけで両端部部材が回転することなく進退移動可能な、前述の実施形態によれば、簡単な構造を有し、かつ、操作容易な伸縮機構を構成し、かつ、伸縮長さの微調整を可能にできる。
【0046】
また、ケーブル材11は、PC鋼より線(ストランド)からなるケーブル材としたが、これに限らず、単線から形成された鋼線やワイヤロープ、可撓性を有する鋼棒でもよい。さらに、ケーブル材11は2本1組で架け渡されるものに限らず、1本でもよく、また3本以上のケーブル材を1組としてもよい。
さらに、DPG(ドット・ポイント・グレイジング)方式によりガラスパネルを支持するスパイダーブラケットは、正面略X字形やH字形のものに限らず、I字形やロ字形の形状を有するブラケットを適用できる。
【0047】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明のテンショントラス構造体およびカーテンウォールによれば、ケーブル材の加工手間および部品点数を削減でき、意匠性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るカーテンウォールの一部を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態を示す平面図である。
【図3】前記実施形態の中間トラス柱の要部を示す斜視図である。
【図4】前記実施形態のトラス束材の要部を拡大して示す平面図である。
【図5】前記実施形態の束材の要部を拡大して示す平面図である。
【図6】前記実施形態のトラス束材および束材を示す側面図である。
【符号の説明】
2…壁面材であるガラスパネル、4…連結部材、10…テンショントラス構造体、11…テンション材であるケーブル材、20…端部固定部材である端部トラス柱、30…支持部材である中間トラス柱、31…支持部材本体である柱材、40…固定部材であるトラス束材、41…軸材、42…端部部材、50…束材、51…軸材、51A…雌ねじ(ねじ部)、52…端部部材。

Claims (6)

  1. 所定間隔離れて配置された端部固定部材に両端が固定され、当該各端部固定部材間に架け渡されるテンション材と、
    前記各端部固定部材間に配置される支持部材と、
    前記テンション材の途中部分を前記支持部材に固定する固定手段と、
    前記テンション材の張力を設定する張力設定手段とを備えて構成され
    前記支持部材は、所定間隔離れて互いに対向配置される複数の支持部材本体を備えて構成され、
    前記固定手段は、前記各支持部材本体間に着脱自在に取り付けられる固定部材であり、この固定部材を介して前記テンション材の途中部分が前記支持部材に固定されるテンショントラス構造体。
  2. 前記支持部材本体には、互いに対向する位置に受け部が設けられ、
    前記固定部材は、軸材と、この軸材の端部に螺合される端部部材とを有し、これらの軸材および端部部材が当該軸材の軸回りに関して相対回転することで、前記端部部材が前記軸材の軸方向に進退移動する伸縮機構を備え、
    この伸縮機構の操作により、前記固定部材の全長が伸張することで、当該固定部材と前記各支持部材本体の受け部とが係合し、当該固定部材が前記支持部材に取り付けられる請求項1に記載のテンショントラス構造体。
  3. 前記端部固定部材と前記支持部材との間には、前記テンション材に取り付けられる束材が配置され、
    前記束材は、軸材と、この軸材の端部に螺合される端部部材とを有し、これらの軸材および端部部材が当該軸材の軸回りに関して相対回転することで、前記端部部材が前記軸材の軸方向に進退移動する伸縮機構を備え、
    前記テンション材は、当該テンション材の延長方向と前記軸材の軸方向とが交差する状態で、前記束材の端部部材に保持され、
    前記張力設定手段は、前記束材で構成され、当該束材の伸縮機構の操作により、前記端部部材の前記テンション材を保持する位置を移動させることで、当該テンション材の張力を調整可能に構成される請求項1または請求項2に記載のテンショントラス構造体。
  4. 前記支持部材は、互いに所定間隔離れて複数配置され、これらの各支持部材間には、前記テンション材に取り付けられる束材が配置され、
    前記束材は、軸材と、この軸材の端部に螺合される端部部材とを有し、これらの軸材および端部部材が当該軸材の軸回りに関して相対回転することで、前記端部部材が前記軸材の軸方向に進退移動する伸縮機構を備え、
    前記テンション材は、当該テンション材の延長方向と前記軸材の軸方向とが交差する状態で、前記束材の端部部材に保持され、
    前記張力設定手段は、前記束材で構成され、当該束材の伸縮機構の操作により、前記端部部材の前記テンション材を保持する位置を移動させることで、当該テンション材の張力を調整可能に構成される請求項1から請求項3のいずれかに記載のテンショントラス構造体。
  5. 前記テンション材は、2本を1組として前記各端部固定部材間に架け渡され、
    前記束材の端部部材は、前記軸材の両端部に形成された互いに逆向きのねじ部に螺合された2部材で構成され、これらの各端部部材に前記各テンション材が各々保持され、
    前記束材で構成された前記張力設定手段は、当該束材の伸縮機構の操作により、前記各端部部材同士が前記軸材の軸方向に関して互いに逆向きに進退移動し、当該各端部部材に保持された前記各テンション材同士の間隔を変化させることで、当該各テンション材の張力を調整可能に構成される請求項3または請求項4に記載のテンショントラス構造体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載のテンショントラス構造体と、このテンショントラス構造体のテンション材の架け渡し方向に沿って配置される壁面材と、この壁面材を前記テンショントラス構造体に連結する連結部材とを備えるカーテンウォール。
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