JP3936253B2 - 金属メッキ用マスキングテープ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属をメッキする際にメッキを施さない部分 (非メッキ部分)をメッキ液から保護するために用いられる金属メッキ用マスキングテープに関する。
【0002】
【従来の技術】
回路基板の表面には、導電層として半田、ニッケル、金などのメッキを施す場合がある。従来、このようなメッキ方法として電解メッキ法が存在する。電解メッキ法では、酸性もしくはアルカリ性の電解質水溶液がメッキ液として用いられ、被メッキ部に電荷を加えることで、金属表面にメッキ液金属が析出されてメッキ膜が形成される。この場合のメッキをしない部分をメッキ液から保護する必要があり、その非メッキ部分にマスキングテープを貼付することによりメッキ液から保護する方法がある。
【0003】
このようなメッキマスキングテープに必要な特性としては、1)メッキ中にマスキングテープの浮きや剥がれがなくメッキ液が浸入しない、2)非メッキ部分を汚染しない、3)非メッキ部の防錆剤を剥がしたり等のダメージを与えない、4)メッキ後の剥離が容易である、等が挙げられる。
【0004】
このため、従来、一般に用いられてきたマスキングテープとしては、アクリル系共重合体を、粘着性を失わない程度に、イソシアネート化合物やメチロール化合物で架橋三次元化して凝集力を高めた粘着剤を用いたものや、天然ゴム、または変性天然ゴムに、適量の粘着付与剤等を配合した粘着剤を用いたものが使用されている。これらのマスキングテープは、メッキ液の浸入に関して問題はない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粘着剤層が天然ゴムや変性天然ゴムを主成分として、これに粘着付与剤、老化防止剤等を配合した組成物によって構成されている場合には、添加されている粘着付与剤、老化防止剤などの低分子量物により非メッキ部の金属を汚染してしまうとの問題があった。さらにメッキ後の剥離性に劣るとの問題がある。
【0006】
また、粘着剤層にアクリル系粘着剤を使用した場合、天然ゴム系や変性天然ゴム系を主成分とした場合と同様に、メッキ液の浸入に関して問題はないが、非メッキ部分が銅である場合、銅を変色させてしまう現象が多く発生している。また、銅表面に塗布されている防錆剤(主としてベンゾトリアゾール系)がマスキングテープ剥離時に粘着剤に取られてしまうとの問題もあり、防錆剤の再塗布などの必要性が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、耐メッキ液浸入性に優れ、メッキ後の剥離性がよく、非メッキ部分の耐汚染性、耐変色性、防錆剤の耐剥がれ性に優れるメッキマスキングテープを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく粘着剤層の組成、物性等について鋭意研究したところ、主成分となるアクリル系共重合体中に特定モノマーを含有させて、特定の架橋剤で架橋させ、特定の弾性率を有する粘着剤で粘着剤層を形成することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の金属メッキ用マスキングテープは、基材の片面に粘着剤層を有する金属メッキ用マスキングテープにおいて、前記粘着剤層が、(a)メタクリル酸メチルモノマー5〜45重量%、(b)水酸基を含有しかつ(a)と共重合し得るモノマー0. 5〜15重量%、(c)残部が、上記(a)および(b)と共重合可能な、アクリル酸アルキルモノマーおよび/または(a)以外のメタクリル酸アルキルモノマーからなる共重合体を、イソシアネート基を2つ以上有する多官能性イソシアネート化合物で架橋してなる重合体を含有し、架橋後の弾性率が50〜750N/cm2 である粘着剤により形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記において、前記多官能性イソシアネート化合物の配合量が、前記共重合体に含有される水酸基1当量あたり0.2〜1当量であることが好ましい。
【0011】
上記3種類のモノマーの更に好ましい組成比は、(a)が15〜35重量%、(b)が1〜10重量%、残部が(c)である。また、多官能性イソシアネート化合物の配合量のより好ましい範囲は、共重合体に含有される水酸基1当量あたり、0.3〜1当量である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(b)水酸基を含有し、かつ(a)メタクリル酸メチルモノマーと共重合し得るモノマー(以下、水酸基含有共重合性モノマーという)としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシヘキシル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタアクリル酸2−ヒドロキシヘキシル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが用いられる。
【0013】
本発明に用いられる、(c)上記(a)および(b)と共重合可能な、アクリル酸アルキルモノマーおよび/または(a)以外のメタクリル酸アルキルモノマーとしては、アルキル基が炭素数1〜12のモノマーが用いられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニルなどが例示され、好ましくは、アクリル酸ブチルが用いられる。
【0014】
本発明において架橋剤として用いられるイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2つ以上有する多官能性イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、好ましくは、トリレンジイソシアネートが用いられる。これら架橋剤は、単独で用いても、2種類以上を使用してもよい。また、反応を促進させるために通常使用される例えば、ジブチルスズラウレート等の架橋触媒を粘着剤に添加してもよい。
【0015】
また、本発明に使用される粘着剤には、フェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、ロジン系樹脂等の粘着付与剤などの添加剤が配合されていてもよい。その他、粘着特性の制御等を目的に必要に応じて、界面活性剤、軟化剤、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤や顔料などの適宜な添加剤を配合することができる。また、それ以外に粘着性の制御や汚染防止等の目的で粘着剤層の表面にコロナ処理、紫外線処理等の適切な表面改質処理を施すこともできる。
【0016】
(a)メタクリル酸メチルモノマーと、(b)水酸基含有共重合性モノマーと、(c)(メタ)アクリル酸アルキルモノマーから形成される共重合体に配合される上記イソシアネート化合物の量は、架橋後の粘着剤の弾性率が50〜750N/cm2 、好ましくは100〜400N/cm2 の範囲となるように調整される。具体的には、前述したイソシアネート化合物の量が好ましい。
【0017】
ここで弾性率とは、後の実験例の項に記載の様に、粘着剤をインストロン型引張試験機で測定した荷重−伸び曲線の接線から計算して求めたものをいう。架橋後の粘着剤の弾性率が50N/cm2 未満であると、経時により粘着力が上昇したり、実用的な剥離速度域での粘着力が大きく剥離作業が容易ではない。また、750N/cm2 を越えると、初期の接着性が低下し、貼付けが不可能となる場合がある。
【0018】
(a)メタクリル酸メチルモノマー、(b)水酸基含有共重合性モノマー及び(c)(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの共重合方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられ、好ましくは、乳化重合である。乳化重合で行う場合は、通常の重合条件で容易に共重合することができる。
【0019】
得られた共重合体に前記イソシアネート化合物を添加し、架橋反応させることにより、本発明に用いられる粘着剤が得られる。
【0020】
本発明に用いられるフィルム基材としては、フィルム基材として通常使用される公知の樹脂からなるフィルムを用いることができ、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられ、ホモポリマー、コポリマー、もしくはこれらのブレンド物でもよい。好ましくはポリオレフィン系樹脂が用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフインホモポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー等のα−オレフィンコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマ一等のα−オレフインとカルボキシル基を含むビニルモノマーとのコポリマー、そして、これらのブレンド物などが例示される。フィルム基材の膜厚は、15μm〜100μm、好ましくは30μm〜60μmである。
【0021】
本発明のマスキングテープは、フィルム基材の片面に前記粘着剤からなる粘着剤層を形成することにより得られる。粘着剤層の乾燥後の層厚は0.5〜30μm、好ましくは1〜20μmである。粘着剤層は、基材層の片面に粘着剤溶液を塗布したり、または基材フィルムとの共押出等により形成されるが、好ましくは、フィルム基材の片面をコロナ放電処理し、処理面に前記粘着剤溶液を塗布することにより形成する。
【0022】
粘着剤層は必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレ−タなどを仮着して保護することもできる。なお、支持基材の粘着剤層を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば基材層に、脂肪酸アミドやポリエチレンイミン等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの適宜な剥離剤からなるコート層を設けることもできる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例1、2および比較例1〜4で得られたマスキングテープについて、後述するように粘着剤の弾性率、初期粘着力、および加温後のマスキングテープの粘着力、高速剥離時の粘着力、液侵入性、汚染性を評価した。
【0024】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌装置を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル31重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部、アクリル酸ブチル66重量部、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0.1重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5重量部、水100重量部を投入して、80℃で5時間乳化重合し、15重量%アンモニア水にてpHを7.0に調整して、固形分50重量%の共重合体エマルションを得た。このエマルションを塩酸により塩析し、その後、水洗、乾燥してアクリル共重合体を得た。このアクリル共重合体をトルエンに溶解させた溶液を用いて、ポリマー固形分100重量部に対してトリレンジイソシアネート1重量部(共重合体の水酸基1当量あたり0.5当量)を添加し、混合した。得られた粘着剤溶液を、片面をコロナ放電処理した厚さ40μmのポリプロピレンフィルム上に、塗布膜が固形分で10μmになるように塗布した後、80℃の乾燥機で2分間乾燥してマスキングテープを得た。得られた粘着剤層の弾性率は110N/cm2 であった。
【0025】
実施例2
メタクリル酸メチル37重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2重量部、アクリル酸ブチル61重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5重量部、水100重量部を用いて実施例1と同様にして乳化重合し、15重量%アンモニア水にてpHを7.0に調整して固形分50重量%の共重合体エマルションを得た。その後、トリレンジイソシアネートの配合量をポリマー固形分100重量部に対して1.2重量部(共重合体の水酸基1当量あたり0.9当量)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマスキングテープを得た。得られた粘着剤層の弾性率は250N/cm2 であった。
【0026】
比較例1
メタクリル酸メチル37重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部、アクリル酸ブチル61重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5重量部、水100重量部を用いて実施例1と同様の方法で乳化重合し、15重量%アンモニア水にてpHを7.0に調整して、固形分50重量%の共重合体エマルションを得た。その後、トリレンジイソシアネートの配合量をポリマー固形分100重量部に対して5重量部(共重合体の水酸基1当量あたり2.5当量)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマスキングテープを得た。得られた粘着剤の弾性率は800N/cm2 であった。
【0027】
比較例2
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル4重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル25重量部、アクリル酸エチル66重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15重量部、酢酸エチル100重量部を入れ、60℃で12時間反応させて共重合体を得た。このポリマー溶液にポリマー固形分100重量部に対しトリレンジイソシアネート4重量部(共重合体の水酸基1当量あたり1.5当量)を添加し、混合した後、厚さ40μmの片面コロナ放電処理したポリプロピレンフィルム上に塗布膜が固形分で7μmになるように塗布した後、80℃の乾燥機で2分間乾燥してマスキングテーブを得た。
【0028】
比較例3
単量体組成をメタクリル酸メチル10重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル45重量部、アクリル酸エチル42重量部に変更したこと以外は比較例2と同様にして共重合体を得た。その後、そのポリマー溶液を用い、トリレンジイソシアネートの配合量をポリマー固形分100重量部に対して6重量部(共重合体の水酸基1当量あたり2.98当量)に変更したこと以外は、比較例2と同様に行い、マスキングテープを得た。
【0029】
比較例4
単量体組成をアクリル酸ブチル100重量部、アクリル酸5重量部に変更した以外は比較例2と同様にして共重合させポリマーを得た。さらにこの溶液を用いて、ポリマー固形分100重量部に対してトリレンジイソシアネートのかわりにテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン5重量部を添加したこと以外は、比較例2と同様の方法を用いて、マスキングテープを得た。
【0030】
評価試験
上記の実施例1、2および比較1〜4のマスキングテープにおける各物性は、以下の方法によって測定した。これらの結果を表1に示す。
【0031】
1)粘着剤の弾性率
各実施例、比較例で得られた粘着剤溶液を、剥離処理したポリエステルフィルムに塗布膜が固形分で7μmになるように塗布した後、80℃の乾燥機で2分間乾燥した。粘着剤層を指先で気泡が入らないように巻きこんで円柱状にして弾性率測定用サンプルを得た。インストロン型引張試験機を使用し、チャック間を10mm、引張速度300mm/minの条件で測定した荷重−伸び曲線の接線による計算値から粘着剤の弾性率を求めた。
【0032】
2)初期粘着力
マスキングテープを幅20mm、長さ200mmの短冊状にカットし、ポリイミドフイルム及び防錆剤としてベンゾトリアゾールを塗布した銅箔に2kgのローラーを1往復させて貼付した。貼付30分後に、マスキングテープをインストロン型引張試験機にて引張速度300mm/minで180°方向に引き剥がした時の粘着力を測定した。
【0033】
3)加温加湿後粘着力
2)で作製したサンプルを50℃×95RH%の恒温槽中に24時間放置し、インストロン型引張試験機にて引張速度300mm/minおよび30m/minで180°方向に引き剥がした時の粘着力を測定した。
【0034】
4)液侵入性
3)において作製したサンプルを60℃の温水に浸漬し、液侵入した長さを評価した。
【0035】
5)汚染性
3)において剥離した銅箔面の汚染変色を評価した。○:汚染なし、×:汚染変色あり。
【0036】
6)防錆剤剥がれ
3)において銅箔より剥離したものの銅箔表面の防錆剤の剥がれを目視で評価した。○:剥がれなし、×:剥がれあり。
【0037】
【表1】
Figure 0003936253
*剥離;被着体よりマスキングテープが脱落。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、本発明のマスキングテープは、耐メッキ液浸入性に優れ、メッキ後の剥離性がよく、非メッキ部分の耐汚染性、耐変色性、防錆剤の耐剥がれ性に優れる。

Claims (2)

  1. 基材の片面に粘着剤層を有する金属メッキ用マスキングテープにおいて、前記粘着剤層が、(a)メタクリル酸メチルモノマー5〜45重量%、(b)水酸基を含有しかつ(a)と共重合し得るモノマー0. 5〜15重量%、(c)残部が、上記(a)および(b)と共重合可能な、アクリル酸アルキルモノマーおよび/または(a)以外のメタクリル酸アルキルモノマーからなる共重合体を、イソシアネート基を2つ以上有する多官能性イソシアネート化合物で架橋してなる重合体を含有し、架橋後の弾性率が50〜750N/cm2 である粘着剤により形成されていることを特徴とする金属メッキ用マスキングテープ。
  2. 前記多官能性イソシアネート化合物の配合量が、前記共重合体に含有される水酸基1当量あたり0.2〜1当量である請求項1記載の金属メッキ用マスキングテープ。
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