JP3935326B2 - リン酸変性エポキシ樹脂の製造方法並びに該リン酸変性エポキシ樹脂を用いる一液性熱硬化性塗料組成物及び塗膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン酸変性エポキシ樹脂の製造方法並びに該リン酸変性エポキシ樹脂を用いる一液性熱硬化性塗料組成物及び塗膜に関し、特に原料エポキシ樹脂へのリン酸基の導入量が実質的に制御できるリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法、係る方法により得られるリン酸変性エポキシ樹脂を含む一液性熱硬化性塗料組成物、及び係る一液性熱硬化性塗料組成物を硬化せしめた塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エポキシ樹脂は、その硬化物の物性が耐溶剤性、機械的強度、電気絶縁性、寸法安定性等に優れている上に加工し易いため、塗料、電気絶縁封入材料、プリント基板材料、土木建築材料、接着剤、航空機材料等の用途に幅広く使用されている。
【0003】
エポキシ樹脂としてはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂をベースとする変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、芳香族アミン型エポキシ樹脂等が知られている。これらエポキシ樹脂を硬化させるためには一般に硬化剤が必要である(必要に応じて硬化促進剤も用いられる)。硬化剤としては、工業的には脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、上記ポリアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、各種イミダゾール及びイミダゾリン化合物、ポリカルボン酸及びその酸無水物等が主として用いられ、塩酸、リン酸等の無機酸も常温硬化剤になることが知られている。
【0004】
しかし、上記公知の硬化剤をエポキシ樹脂と予め混合しておくと常温においても硬化が始まり、貯蔵安定性が悪いので、通常はその都度エポキシ樹脂と硬化剤とを使用直前に混合する必要があり(二液型)、作業効率が悪い。そのため一定の温度まで昇温すると硬化反応が始まる潜在硬化剤が各種提案されており、例えばアミン系硬化剤を芯物質とし、一定の温度で溶解する外壁膜を有するカプセル状の潜在硬化剤等が挙げられる。しかしアミン系硬化剤は人体に対して有害であるため、その使用は避けるのが好ましい。
【0005】
このため貯蔵安定性が良く、かつ無公害な一液性熱硬化性エポキシ樹脂組成物が望まれている。そこでエポキシ樹脂に無公害性硬化剤であるリン酸を導入して得られるリン酸変性エポキシ樹脂について、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させれば、硬化剤の不要な自己縮合型の樹脂が得られる可能性がある。このためにはリン酸基導入量の制御が必要であるが、リン酸は三価であるためエポキシ樹脂の架橋を誘起して反応系をゲル化させることがしばしば起こり、エポキシ樹脂のエポキシ基を開環してそこへリン酸基を導入する技術は工業的には成功していない。そこで本発明者らは特願平11-356694において、エポキシ樹脂にリン酸基を導入する技術を提案した。しかしこの方法はエポキシ樹脂に極力多くのリン酸基を導入するには有効であるが、その導入量を制御することはできなかった。
【0006】
従って本発明の目的は、原料エポキシ樹脂へのリン酸基の導入量が実質的に制御できるリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法、及び係る方法により得られるリン酸変性エポキシ樹脂を含み、貯蔵安定性に優れた一液性熱硬化性塗料組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、原料エポキシ樹脂に、そのエポキシ基1モルに対して 1.5 〜 15.0 モルの水及びリン酸基基準で 0.6 〜 2.0 モルの無水リン酸を反応させると、原料エポキシ樹脂へのリン酸基の導入量を実質的に制御しながらリン酸変性エポキシ樹脂を製造できることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法は、原料エポキシ樹脂と、水及び無水リン酸とを、活性水素を有しない水混和性有機溶媒中で反応させるものであって、前記原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、 1.5 〜 15.0 モルの前記水及びリン酸基基準で 0.6 〜 2.0 モルの前記無水リン酸を添加することを特徴とする。
【0009】
前記水混和性有機溶媒に前記原料エポキシ樹脂を溶解し、前記水を添加した後、前記無水リン酸を添加し、攪拌するのが好ましい。原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対する無水リン酸の配合割合(リン酸基基準)は、(イ) 自己縮合性エポキシ樹脂として用いる自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂を製造する場合は0.6〜1.5モルであるのが好ましく、 0.8 〜 1.2 モルであるのがより好ましく、(ロ) エポキシ樹脂の硬化剤として用いる硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂を製造する場合は0.8 〜 1.9モルであるのが好ましい。原料エポキシ樹脂は、そのエポキシ当量が170〜5000 g/当量のものを用いるのが好ましく、中でもビスフェノール型又はノボラック型であるのが好ましい。反応温度は15〜80℃であるのが好ましい。
【0010】
本発明の自己縮合型一液性熱硬化性塗料組成物は、樹脂成分として自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂のみを含み、活性水素を有しない水混和性有機溶媒を含み、加熱により自己縮合硬化することを特徴とする。これは自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂が、例えば下記式(1):
【化1】
(一般式(1)において、R1はエポキシ樹脂骨格を表す。)により表されるように、一分子中にリン酸基と原料エポキシ樹脂のエポキシ基の開環によって生じた水酸基とを有するためである。自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂は、常温では十分な貯蔵安定性を有し、加熱すると自己縮合硬化する点で画期的なリン酸変性エポキシ樹脂である。特に、原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対する無水リン酸の配合割合をリン酸基基準で0.8〜1.2モルにして製造したものは、常温では少なくとも一ヶ月間実質的に粘度変化が無く、かつ沈殿を生じない。
【0011】
汎用のエポキシ樹脂は、過剰量のケトンを添加することによりエポキシ基が保護されることが知られている(以下、この状態のエポキシ樹脂をブロックド・エポキシ樹脂という)。これはケトンに特有の作用であって、エポキシ基とケトンは会合により環状アセタール状の結合を形成する。これは平衡反応である。本発明の製造方法により得られる硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂とブロックド・エポキシ樹脂を含む組成物は、常温では実質的に硬化反応が進まず安定であるが、加熱によりケトンが解離・揮発するとリン酸基の触媒作用によりエポキシ基の架橋反応が誘起される。すなわち本発明の硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物は、エポキシ基がケトンにより保護されているブロックド・エポキシ樹脂と、硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂と、活性水素を有しない水混和性有機溶媒とを含むことを特徴とする。ケトンとしてはアセトンが好ましい。また(ブロックド・エポキシ樹脂のエポキシ基(未保護換算))/(リン酸変性エポキシ樹脂中のリン酸基)のモル比が4.0/1.0〜1.0/5.0であるのが好ましい。
【0012】
また本発明の硬化剤型及び自己縮合型一液性熱硬化性塗料組成物を硬化せしめた塗膜は、高い表面硬度、光沢、基材に対する優れた密着性等を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法並びに係る製造方法により得られるリン酸変性エポキシ樹脂を用いる一液性熱硬化性塗料組成物及び塗膜について詳細に説明する。
【0014】
[1] リン酸変性エポキシ樹脂の製造方法
本発明のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法は、原料エポキシ樹脂に、そのエポキシ基1モルに対して 1.5 〜 15.0 モルの水及びリン酸基基準で 0.6 〜 2.0 モルの無水リン酸を反応させることを特徴とする。
【0015】
(1) 原料エポキシ樹脂
原料エポキシ樹脂はエポキシ当量が170〜5000 g/当量の範囲にあるものが好ましい。170g/当量未満だとリン酸変性後の生成物の水溶性が大きくて、分離・精製が難しくなるため好ましくない。5000 g/当量以上だとエポキシ基濃度が低いためリン酸の付加量が少なくなり、熱硬化性に優れたリン酸変性エポキシ樹脂が得られない。
【0016】
原料エポキシ樹脂には特に制限はなく、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、プロピレンオキサイドビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂をベースとする変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、芳香族アミン型エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0017】
原料エポキシ樹脂としては、下記一般式(2):
【化2】
(一般式(2)において、R2はビスフェノール類から導かれる残基、或いは炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基を表し、nは重合度を表す。一般式(2)は2種以上の構成単位を含む共縮合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、東都化成(株)製YD-128及びそのシリーズ)、又は下記一般式(3):
【化3】
(一般式(3)において、R3及びR5はそれぞれ置換又は無置換のアルキレン基を表し、R4は水素、ハロゲン原子或いは置換又は無置換のアルキル基を表し、nは重合度を表す。一般式(3)は2種以上の構成単位を含む共重合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
(2) 無水リン酸の配合割合
リン酸源として無水リン酸(五酸化リン=P2O5 )を用いる。無水リン酸は反応過程においてピロリン酸又はポリリン酸を経ている可能性があるが、反応性が高く、エポキシ基へのリン酸基の導入が円滑に進む。正リン酸、亜リン酸、ホスホン酸等の化合物を用いると反応が進まず、本発明のリン酸変性エポキシ樹脂は得られない。リン酸変性エポキシ樹脂の製造方法の反応スキームを図1に示す。
【0019】
本発明のリン酸変性エポキシ樹脂は自己縮合型のエポキシ樹脂として用いる場合(自己縮合型)と、エポキシ樹脂の硬化剤として用いる場合(硬化剤型)の二通りの用途が可能であり、それぞれの用途によって製造時における無水リン酸の仕込み割合が異なる。
【0020】
(2)-(イ) 自己縮合型
自己縮合型の場合、無水リン酸の配合割合は原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、リン酸基基準で0.6〜1.5モルである必要がある。無水リン酸の配合割合を原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対してリン酸基基準で0.6〜1.5モルとすることにより、一分子中にリン酸基と原料エポキシ基の開環によって生じる水酸基を共存させることができる。その結果、常温では十分な貯蔵安定性を有するとともに加熱時には自己縮合する性質を有する。1.5モルを超えると得られた樹脂の自己縮合性が低下する。好ましくは0.8〜1.2モルである。0.8〜1.2モルとすることにより貯蔵安定性がさらに向上し、常温では少なくとも一ヶ月間実質的に粘度変化が無く、かつ沈殿を生じないものが得られる。なお自己縮合型は硬化剤型としても使用できる。
【0021】
(2)-(ロ) 硬化剤型
硬化剤型の場合、無水リン酸の配合割合は原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、リン酸基基準で0.6〜2.0モルが好ましく、0.8〜1.9モルがより好ましい。0.6モル未満ではリン酸変性の反応自体は容易に行えるが、リン酸変性の程度が低く留まらざるを得ない。2.0モルを超えると反応中にゲル化を起こし易いため、反応溶媒の使用量を増加しなければならない上(従って固形分濃度が低下する)、未反応の無水リン酸が残留し易くなり、未反応のリン酸を含む塗料組成物は、基板に含まれる金属と反応して黒錆を発生するので好ましくない。
【0022】
(3) 水の配合割合
水は原料エポキシ樹脂のエポキシ基を開環し、エポキシ樹脂に水酸基を導入するために必要である。水は原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して1.5〜15.0モル使用するのが好ましい。1.5モル未満だとエポキシ樹脂を適正割合の無水リン酸と反応させても水が不足し、反応生成物がゲル化する。一方15.0モルを超えると反応溶媒に溶解しているエポキシ樹脂の一部が析出して液相全体が白濁する上、無水リン酸と水だけが反応して生じた正リン酸等の副反応生成物が、目的物であるリン酸変性エポキシ樹脂を汚染するので好ましくない。
【0023】
(4) 溶媒
溶媒としては、原料エポキシ樹脂及び生成物であるリン酸変性エポキシ樹脂を溶解し、活性水素を有しない水混和性有機溶媒を用いる。このような溶媒として、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、下記一般式(4):
【化4】
(一般式(4)において、R6は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜9の整数を表す。)で表されるセロソルブのアルキルエステル類、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。上記の溶媒にヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を混合して使用することも差し支えない。溶媒は原料エポキシ樹脂を溶解し、水や無水リン酸も含めた反応物全体が均一な溶液となるに十分な量を用いる。好ましい溶媒の使用量は、エポキシ樹脂の濃度が50重量%以下、より好ましくは10〜40重量%程度となる量である。
【0024】
但し一般式ROHで表されるアルコール、RCOOHで表されるカルボン酸、RNH2で表される第1級アミン、R2NHで表される第2級アミン、RCONH2で表される第1級アマイド、RCONHR'で表される第2級アマイド等は分子内に活性水素を有するが故に不適当である。また炭酸エチレンもそれ自身が分解してエチレンオキシドを生成すること及びエポキシ基が開環して生じる水酸基やリン酸基と反応することから溶媒としては好ましくない。
【0025】
(5) 反応方法
原料エポキシ樹脂と溶媒とからなる溶液に対して水と無水リン酸を加えて反応させる方法として好ましい一例を挙げれば、原料エポキシ樹脂と溶媒とからなる溶液の所定量を、温度計、ジャケット又は蛇管冷却器、還流コンデンサー、撹拌機付きの反応容器に入れ、内容物を撹拌して温度を15℃まで冷却しておき、そこに所定量の水を加える。次いで所定量の無水リン酸を初期に一括投入するか又は反応過程で数回に分割して投入する。エポキシ基、水及び無水リン酸の反応が開始すると著しい発熱が起こるが、その都度冷却し80℃を超えないようにする。反応系は50〜60℃に保持するのが好ましい。50〜60℃で45〜90分間反応を行った後冷却し、撹拌を停止し、反応生成物を取り出す。
【0026】
15℃未満で反応を行うと、添加した無水リン酸が目的としているエポキシ樹脂の変性に働かずに、ポリリン酸のまま反応混合物中に残存する。一方80℃を超えると、原料エポキシ樹脂へのリン酸基導入反応と同時に、エポキシ樹脂分子間の架橋反応を誘起して反応混合物がゲル化する。いずれの場合も所望するリン酸変性エポキシ樹脂は得られない。
【0027】
(6) リン酸変性エポキシ樹脂
以上のような製造方法によりリン酸変性の程度を制御することができ、自己縮合型及び硬化剤型のリン酸変性エポキシ樹脂を得ることができる。上述の製造方法により得られる反応生成物(溶媒を含む)は、そのリン酸変性エポキシ樹脂が自己縮合型及び硬化剤型に関わらず粘稠で清澄な溶液である。またビスフェノールA型エポキシ樹脂を原料とするリン酸当量が300 g/当量以下のリン酸変性エポキシ樹脂は水溶性である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂を原料とするリン酸当量が500〜800 g/当量のリン酸変性エポキシ樹脂は水に不溶であるが、モノエタノールアミン塩水溶液中では乳化する。本発明の製造方法では水に不溶である未反応の原料エポキシ樹脂が残留しないことから、反応が完結しているものと考えられる。
【0028】
上述の図1に示すように、原料エポキシ樹脂のエポキシ基が開環し、水酸基とリン酸基が生成することにより反応が進むので、例えばジグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂を原料に用い、無水リン酸の配合割合を原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対してリン酸基基準で1モルにすると、1分子内に2個のリン酸基とエポキシ基の開環によって生じた2個の水酸基とを含むリン酸変性エポキシ樹脂が得られる。
【0029】
一般式(2)により表されるビスフェノール型エポキシ樹脂に、部分的にリン酸基を導入してなる自己縮合型のリン酸変性エポキシ樹脂の推定構造は、下記一般式(5):
【化5】
(但し一般式(5)において、V、W、X、Y及びZはそれぞれ独立に−OH基、−OP(O)(OH)2 基又は−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2 基を表し、R2は上記一般式(2)と同様の置換基を表し、nは重合度を表す。但し(−OP(O)(OH)2基の合計数)/(置換基V、W、X、Y及びZの合計数)=1.2/(n+4)〜3/(n+4)である(但し−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2基は−OP(O)(OH)2基二個分に換算する)。)により表すことができる。
【0030】
また一般式(2)により表されるビスフェノール型エポキシ樹脂に、リン酸基を導入してなる硬化剤型のリン酸変性エポキシ樹脂の推定構造は、下記一般式(6):
【化6】
(但し一般式(6)において、V、W、X、Y及びZはそれぞれ独立に上記一般式(5) と同様の置換基を表し、R2は上記一般式(2)と同様の置換基を表し、nは重合度を表す。但し(−OP(O)(OH)2基の合計数)/(置換基V、W、X、Y及びZの合計数)=1.2/(n+4)〜4/(n+4)である(但し−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2基は−OP(O)(OH)2基二個分に換算する)。)により表すことができる。
【0031】
一般式(3)により表されるノボラック型エポキシ樹脂に、部分的にリン酸基を導入してなる自己縮合型のリン酸変性エポキシ樹脂の推定構造は、下記一般式(7):
【化7】
(但し一般式(7)において、X及びYは各構成単位ごとにそれぞれ独立に−OH基、−OP(O)(OH)2基 又は−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2 基を表し、R3、R4及びR5は上記一般式(3)と同様の置換基を表し、nは重合度を表す。但し(−OP(O)(OH)2基の合計数)/(置換基X及びYの合計数)=0.3〜0.75である(但し−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2基は−OP(O)(OH)2基二個分に換算する)。)により表すことができる。
【0032】
また一般式(3)により表されるノボラック型エポキシ樹脂に、リン酸基を導入してなる硬化剤型のリン酸変性エポキシ樹脂の推定構造は、下記一般式(8):
【化8】
(但し一般式(8)において、X及びYは各構成単位ごとにそれぞれ独立に上記一般式(7)と同様の置換基を表し、R3、R4及びR5は上記一般式(3)と同様の置換基を表し、nは重合度を表す。但し(−OP(O)(OH)2基の合計数)/(置換基X及びYの合計数)=0.3〜1.0である(但し−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2基は−OP(O)(OH)2基二個分に換算する)。)により表すことができる。
【0033】
[2] 一液性熱硬化性塗料組成物
本発明の一液性熱硬化性塗料組成物には、▲1▼ 自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂を含む自己縮合型と▲2▼ 硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂を硬化剤として含む硬化剤含有型の二種がある。二種の一液性熱硬化性塗料組成物は、共にアミン系硬化剤が不要なので安全衛生上優れており、しかも常温における貯蔵安定性にも優れている。
【0034】
(1) 自己縮合型
本発明の一液性熱硬化性塗料組成物の一種は、自己縮合型のリン酸変性エポキシ樹脂を含む組成物である。係る組成物は、常温では十分な貯蔵安定性を有する。特に原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対する無水リン酸の配合割合をリン酸基基準で0.8〜1.2モルにして製造したものは、常温では少なくとも一ヶ月間実質的に粘度変化が無く、かつ沈殿を生じない。そして120℃以上、好ましくは150℃以上に加熱すると自己縮合硬化する。係る自己縮合硬化は水酸基が分子間で縮合反応することによるものであり、分子内に存在するリン酸基が触媒作用をしているものと考えられる。硬化に際して加熱時間は10〜60分間が好ましい。また加熱硬化する前に、塗装後の被膜を常温で放置して溶媒を揮発させ、見かけ上乾燥させるのが好ましい。
【0035】
このような自己縮合型一液性熱硬化性塗料組成物としては、自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂が、活性水素を有しない有機溶媒に溶解している組成物であるのが好ましい。活性水素を有しない水混和性有機溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、上記一般式(4)で表されるセロソルブのアルキルエステル類、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。上記の溶媒にヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を混合して使用してもよい。よって、本発明の自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂を製造した時に使用した溶媒を含んだままの形態で用いることが可能である。粘度は固形分濃度の調整、溶媒の選択、無機充填材の添加等の方法により調整することができる。但し高沸点溶媒を混合使用すると、焼成温度を高くする必要があるので好ましくない。
【0036】
塗料組成物の中の固形分濃度にも特に制限はないが、塗料の塗装方法、塗膜に必要な性能等に合わせ、溶媒の使用量を加減して粘度を調節すればよい。好ましい粘度は20〜400 mPa・s/25℃である。但し固形分濃度が低すぎると揮発・回収すべき溶媒量が多くなるため好ましくない。塗料組成物における当該樹脂の好ましい濃度は5〜50重量%である。
【0037】
(2) 硬化剤含有型
本発明の一液性熱硬化性塗料組成物のもう一つの種は、硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂及びブロックド・エポキシ樹脂を含む組成物である。係る組成物において、硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として機能する。
【0038】
ブロックド・エポキシ樹脂とは、エポキシ基とケトンを反応させて会合により環状アセタール状の結合を形成させた結果、エポキシ基がケトンによって保護されているものである。加熱によりケトンが解離・揮発すると、エポキシ基の架橋反応が可能となる。ブロックド・エポキシ樹脂に用いる未保護エポキシ樹脂には特に制限はなく、例えばエポキシ当量が170〜5000g/当量の範囲にあるビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂をベースとする変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及び芳香族アミン型エポキシ樹脂のいずれでも使用できる。塗料に用いるにはエポキシ当量が220 g/当量以下のビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、東都化成(株)製YD-128及びそのシリーズ)が好ましい。
【0039】
ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、シクロブタノン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトンが挙げられる。アセトンを用いるとエポキシ基からの解離及び組成物からの揮発が比較的低い温度で起こるため好ましい。ケトンは、エポキシ基1モルに対して4.0モル以上用いるのが好ましく、6.0モル以上用いるのがより好ましい。ブロックド・エポキシ樹脂は未保護エポキシ樹脂とケトンを室温で反応させることにより得られる。アセトンを例にとると、下記式(9):
【化9】
(一般式(7)において、R7はエポキシ樹脂骨格を表す。)に示すような平衡状態が形成される。アセトンは室温においてエポキシ基を保護して反応性を下げているが、昇温に伴い解離・揮発するとエポキシ基の反応性が回復する。そして硬化剤のリン酸基により誘起されたエポキシ基の架橋反応が進行する。ケトンでエポキシ基を保護せずにリン酸変性エポキシ樹脂と未保護エポキシ樹脂を混合すると、常温でも高分子化が進み、ゲル化するので貯蔵安定性が悪い。
【0040】
このような硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物は、ブロックド・エポキシ樹脂及び硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂が、活性水素を有しない有機溶媒に溶解している組成物であるのが好ましい。活性水素を有しない水混和性有機溶媒としては、上記[2](1)で挙げたものが全て使用できる。
【0041】
硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物は、ブロックド・エポキシ樹脂と硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂とを常温で混合することにより得られる。例えば、それぞれ活性水素を有しない水混和性有機溶媒に溶解したブロックド・エポキシ樹脂及び硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の溶液同士を混合すればよい。ブロックド・エポキシ樹脂と、硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の混合割合は、(ブロックド・エポキシ樹脂のエポキシ基(未保護換算))/(リン酸変性エポキシ樹脂中のリン酸基)=4.0/1.0〜1.0/5.0(モル比)の範囲が好ましく、2.0/1.0〜1.0/3.0の範囲がより好ましい。
【0042】
硬化剤含有型塗料組成物の中の固形分濃度に特に制限はなく、塗料の塗装方法、塗膜に必要な性能等に合わせ、溶媒の使用量を加減して粘度を調節すればよい。好ましい粘度は20〜400mPa・s/25℃である。但し固形分濃度が低すぎると揮発・回収すべき溶媒量が多くなるため好ましくない。好ましい当該樹脂の固形分濃度は5〜50重量%である。また高沸点溶媒を混合使用すると、焼成温度を高くする必要があるので好ましくない。
【0043】
硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物は、活性水素を有しない水混和性有機溶媒に溶解されている状態において、常温では一週間程度粘度変化が無い上、沈殿も生じず、良好な貯蔵安定性を有する。そして120℃以上、好ましくは150℃以上に加熱するとケトンが解離・揮発し、架橋反応が起こる。硬化の際の加熱時間は10〜60分間が好ましい。また加熱硬化する前に、塗装後の被膜を常温で放置して溶媒を揮発させ、見かけ上乾燥させるのが好ましい。
【0044】
(3) その他の添加物
以上説明した二種の一液性熱硬化性塗料組成物には、通常の焼付け塗料に使用される以下の添加物、例えば粘度調整の目的で添加されるシックナー、美装目的の各種着色顔料、隠蔽力を増す目的の充填材、塗面の平滑性を良くする目的で添加されるレベリング剤、基材との密着性を改良する目的で添加されるカップリング剤、従来公知の酸化防止剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、老化防止剤、難燃剤、導電剤、消泡剤等を任意に選択して添加することができる。
【0045】
[3] 塗膜
本発明の自己縮合型及び硬化剤含有型の一液性熱硬化性塗料組成物は種々の基材を塗装するために用いることができ、特に金属の塗装に好適である。基材として用いられる金属は、鉄、アルミニウム、マグネシウム等を主成分とする金属が好適に用いられ、0.01〜2.0mm厚の冷延鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板等に好適に用いられる。これらの金属の表面は、一般的にはアルマイト、リン酸処理等が施されているが、場合によってはクロム、錫、亜鉛、ニッケル等の無機金属又はその酸化物でメッキされたり、これらが蒸着されたり、あるいはシリコ−ンに代表されるケイ素化合物が蒸着されていても良い。
【0046】
塗膜は、例えば無機質基材表面に刷毛塗り、バーコーター塗り、スプレー、浸漬、ロールコート、ブレードコート、フローコート又は静電塗装その他の方法で被覆ないしは浸漬して、これを加熱硬化せしめて得られる。本発明の一液性熱硬化性塗料組成物を硬化せしめた塗膜は、基材への密着性、耐溶剤性、耐水性、硬度、光沢、対候性、防錆性等に優れている。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の製造;ビスフェノールA型)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂YD-128(東都化成(株)製、エポキシ当量=190 g/当量)95 gをジオキサン700gに溶解し、温度計、冷却器、撹拌機、添加口付ガラス製セパラブルフラスコ(内容積2リットル)に入れ、水を90g加えて透明な均一溶液を得た。このフラスコの内容物を激しく撹拌しながら外部から冷却し、14℃に達した時に、無水リン酸71gを添加口から一括投入した。反応混合物の温度は無水リン酸添加時の30℃から約10分間で70℃まで上昇したが、その後も撹拌と温度調節を続けて50〜60℃で40分間反応させた。その後、分離・精製せずにジオキサンを含む反応生成物を取り出した。
【0049】
実施例2〜5
(自己縮合型/硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の製造;ビスフェノールA型)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂であるYD-128(東都化成(株)製、エポキシ当量=190 g/当量)、YD-011(同社製、エポキシ当量=470 g/当量)、YD-012(同社製、エポキシ当量=640 g/当量)をそれぞれ用いて、水及び無水リン酸を表1に示す各割合で加えた他は実施例1と同様に行った。
【0050】
比較例1及び2
YD-128を用いて、水及び無水リン酸を表1に示す各割合で加え、反応を表1に示す条件で行った他は実施例1と同様に行った。
【0051】
実施例1〜5、比較例1及び2で得られた自己縮合型及び/又は硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の物性を以下の方法で測定した。
・ 外観:目視により観察した。
・水混和性:試料(溶媒を含むリン酸変性エポキシ樹脂)を水と1:1(重量比)で混合し、目視により観察した。
・10重量%モノエタノールアミン水溶液への混和性:試料を10重量%モノエタノールアミン水溶液と1:1(重量比)で混合し、目視により観察した。
・不揮発分濃度:試料約0.5gをアルミ皿に採取して精秤し、アセトンを加えて延ばし、120℃/60分間加熱した後の乾燥残量を測定した。
・リン酸価:1N-KOH溶液を用いて滴定し、pH=10.3の点を終点とした。不揮発分1 g当たりに換算した。
・リン酸当量:リン酸価より算出
・安定保存期間:常温(15〜20℃)において、混合系にゲル化、沈殿生成等が起こらず、かつ明らかな粘度上昇が認められない日数を調べた。
各測定結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、無水リン酸/エポキシ基のモル比(リン酸基基準)が2.0の実施例1、及び同比が1.0の実施例2は、反応初期発熱による著しい昇温が見られたが、同比が0.6の実施例3では昇温が少なかった。実施例1〜3ともゲル化することなく、均一溶液状の反応生成物(ジオキサンを含む)を得た。リン酸当量における実測値と計算値の比較から、仕込んだ無水リン酸はリン酸基として原料エポキシ樹脂にほぼ導入されており、本発明の製造方法により原料エポキシ樹脂へのリン酸基の導入量が実質的に制御できることが分かった。但し実施例3においては、リン酸当量の実測値が計算値に比べてずれているが、これはリン酸変性エポキシ樹脂分子中のピロリン酸エステル基の自己加水分解性が弱いことに原因するものと推定され、リン酸基の導入量が仕込みに対して少ないわけではない。また実施例2で得たYD-128のリン酸変性物を主剤とする均一溶液状組成物(溶媒ジオキサン、固形分濃度18.8%)は常温で安定であり、1ヶ月以上放置しても粘度上昇が起こらず、沈殿も生じなかった。
【0054】
また実施例4及び5とも比較的温和な反応経過を経て、均一溶液状の反応生成物を得た。これらの反応生成物は水に可溶ではなく、10%モノエタノールアミンの水溶液に乳化分散する程度であった。これは原料エポキシ樹脂の分子量が大きいことが原因であると思われる。
【0055】
これに対し比較例1と比較例2は、反応物が均一にならない配合条件下で反応を行ったため、発熱が小さいにもかかわらず比較例1の反応系は約10分でゲル化し、比較例2は急激な発熱を伴い約5分でゲル化し、それぞれ目的とする液状の反応生成物を取得することが出来なかった。
【0056】
実施例6〜8
(自己縮合型/硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の製造;オルトクレゾールノボラック型)
実施例1と同様の器具を用い、原料エポキシ樹脂としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂YDCN-704(東都化成(株)製、エポキシ当量=206.5 g/当量)100 gを使用し、溶媒ジオキサン700 gに溶解して、表2に示すそれぞれの割合で水と無水リン酸を加え、激しく撹拌しながら冷却下50〜60℃で約1時間反応させた。原料組成を表2に示す。
【0057】
比較例3及び4
YDCN-704を用いて、水及び無水リン酸を表2に示す各割合で加え、反応を表1に示す条件で行った他は実施例6と同様に行った。
【0058】
実施例6〜8、比較例3及び4で得られた自己縮合型及び/又は硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂の水に対する溶解性、不揮発分濃度、リン酸価及びリン酸当量を調べた結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
実施例6〜8において、いずれの場合も透明均一溶液状の反応生成物を得た。リン酸当量における実測値と計算値の比較から、仕込んだ無水リン酸はほぼリン酸基として原料エポキシ樹脂に導入されており、本発明の製造方法により原料エポキシ樹脂へのリン酸基の導入量が実質的に制御できることが分かる。一方比較例3及び4においては、反応物が均一にならない配合条件下で反応を行ったため、反応過程でゲル化を起こし、液状の反応生成物は得られなかった。
【0061】
実施例9及び 10
(自己縮合型一液性熱硬化性塗料組成物;ビスフェノールA型)
実施例2で得られた均一溶液状組成物を、清浄な鋼板の表面にバーコーターを用いて乾燥後の厚さが20μmになるように塗装し、常温乾燥後熱風乾燥炉に入れて、鋼板温度が120℃又は150℃に上昇してから30分間焼成した。
【0062】
比較例5
リン酸基を導入していないYD-128を用いて実施例9と同様に塗装後150℃で30分間焼成した。
【0063】
実施例9及び10、比較例5で得られた塗膜の物性を以下の方法で測定した。
・ 鉛筆硬度: JIS D 0202に準拠して測定した。
・ 密着性(ゴバン目試験):塗膜にカッターナイフで1mm間隔の互いに平行し、素地に達する傷を付け、次にこれと直交する同じような傷を11本付けて1mmの正方形を100個作る。これにセロテープを貼りつけ、180度方向に引き離してもはがれず残った目の数を数える。
・耐溶剤性:試料片を各々20℃の水、メタノール、アセトンにそれぞれ一液浸漬した後、塗膜の白濁、膨潤、剥離の有無を観察した。
各測定結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示すように、本発明のリン酸変性エポキシ樹脂は加熱により自己縮合硬化する性質を持っている。120℃で30分熱処理をした実施例9は、見た目は硬化しているが塗膜の硬度と耐溶剤性は十分でない。実施例10から明らかなように、150℃で30分熱処理をするとほぼ完全に硬化し、十分な物性を発現している。比較例5に示したように、未変性エポキシ樹脂をこのような条件で熱処理しても、縮合して被膜形成することはない。
【0066】
実施例 11 及び 12
(硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物;ビスフェノールA型)
主剤として、エポキシ基1モルに対して4.0モル以上のアセトンを加えたビスフェノールA型ブロックド・エポキシ樹脂(YD-128)を使用した。硬化剤として、実施例1で得た硬化剤型リン酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂のジオキサン溶液(固形分濃度23.8重量%)を使用し、表4に示す各割合で主剤と硬化剤を混合し、室温(約20℃)で静置して、経日的なゲル化進行を観察した。その結果を表4に示す。
【0067】
比較例6
主剤において、エポキシ基1モルに対するアセトンの比を表4に示すように変えた他は実施例11と同様に行った。ゲル化進行を観察した結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
本発明の硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物は、室温において1週間程度の可使時間を有していた。アセトンの配合割合が本発明の範囲の下限未満である比較例6では、可使時間が0.5日以下であった。
【0070】
実施例 13 〜 18
(硬化剤含有型一液性熱硬化性塗料組成物)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂YD-128:アセトン:ジオキサン=1:2:1(重量比)=1.00:6.55:2.16(YD-128のエポキシ基のモル数を基準とするアセトン及びジオキサンのモル比)の割合で混合した不揮発分25重量%を含有する均一溶液(A液)と、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂YDCN-704:アセトン:ジオキサン=1:3:1(重量比)=1.00:10.69:2.35(YDCN-704のエポキシ基のモル数を基準とするアセトン及びジオキサンのモル比)で混合した不揮発分20重量%を含有する均一溶液(B液)を主剤として調製した。硬化剤としては、実施例2で調製したリン酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むジオキサン溶液(不揮発分濃度18.8重量%、不揮発分のリン酸価=373.8)(K液)を使用した。A液又はB液を表5に示す各割合の不揮発分換算比でK液と混合し、乾燥後の膜厚が20μmになるようにバーコーターを用いて清浄な鋼板面にコートし、空気浴中に入れて150℃で30分間焼き付けた。その後塗膜の鉛筆硬度、ゴバン目密着性(セロテープ剥離)を測定し、更にゴバン目密着試験後の試料片を各20℃の水、メタノール、アセトンにそれぞれ一夜浸漬して、塗膜の白濁、膨潤、剥離等の異常が発生しないか観察した。これらの結果を表5に示す。
【0071】
比較例7
主剤及び硬化剤の不揮発分における(ブロックド・エポキシ樹脂のエポキシ基(未保護換算))/(リン酸変性エポキシ樹脂中のリン酸基)のモル比を6.3にした他は実施例13と同様に塗膜を作製し、評価を行った。結果を表5に示す。
【0072】
比較例8
硬化剤として正リン酸を用いた他は実施例16と同様に塗膜を作製し、評価を行った。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5から明らかなように、未変性のエポキシ樹脂(主剤)とリン酸変性エポキシ樹脂(硬化剤)の(ブロックド・エポキシ樹脂のエポキシ基(未変性換算))/(リン酸変性エポキシ樹脂中のリン酸基)のモル比を4/1〜1/5の範囲内で混合した塗料組成物は、150℃で30分間の熱処理により十分硬化し、優れた物性の塗膜となるが、同比が4/1超では硬化不十分で、満足できる物性の塗膜が得られない。また硬化剤としてリン酸変性エポキシ樹脂の代わりに正リン酸を用いると、硬化不十分である上、基板である鋼板に黒錆を発生させる。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の製造方法により、市販のビスフェノール型又はノボラック型エポキシ樹脂をリン酸変性することにより自己縮合型及び硬化剤型のリン酸変性エポキシ樹脂が得られる。自己縮合型リン酸変性エポキシ樹脂を含む塗料組成物は、一液性で常温では概ね一ヶ月以上の保存安定性があり、加熱すると硬化して硬度、密着性及び耐溶剤性に優れた塗膜を与える。またアセトンによりエポキシ基が保護されたブロックド・エポキシ樹脂と硬化剤型リン酸変性エポキシ樹脂とを含む塗料組成物は、一液性で常温では一週間程度の保存安定性があり、加熱すると硬化して硬度、密着性及び耐溶剤性に優れた塗膜を与える。従って、人体に有害な硬化剤を扱わなくてもよく、また一液性として扱えるので、現場で配合を行うという煩雑な業務から開放され、安全衛生の向上及び作業効率性向上の点で大いに優位性がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法の反応スキームである。
Claims (15)
- 原料エポキシ樹脂と、水及び無水リン酸とを、活性水素を有しない水混和性有機溶媒中で反応させるリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法であって、前記原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、 1.5 〜 15.0 モルの前記水及びリン酸基基準で 0.6 〜 2.0 モルの前記無水リン酸を添加することを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1に記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、リン酸基基準で 0.8 〜 1.9 モルの前記無水リン酸を添加することを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記水混和性有機溶媒に前記原料エポキシ樹脂を溶解し、前記水を添加した後、前記無水リン酸を添加し、攪拌することを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記原料エポキシ樹脂としてエポキシ当量が170〜5000 g/当量のエポキシ樹脂を用いることを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記原料エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記原料エポキシ樹脂としてノボラック型エポキシ樹脂を用いることを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1,3〜6のいずれかに記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、リン酸基基準で 0.6 〜 1.5 モルの前記無水リン酸を添加することを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項7に記載のリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法において、前記原料エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、リン酸基基準で 0.8 〜 1.2 モルの前記無水リン酸を添加することを特徴とするリン酸変性エポキシ樹脂の製造方法。
- 請求項7又は8に記載の製造方法により得られるリン酸変性エポキシ樹脂と、活性水素を有しない水混和性有機溶媒とを含み、前記リン酸変性エポキシ樹脂が加熱により自己縮合硬化することを特徴とする一液性熱硬化性塗料組成物。
- 請求項9に記載の一液性熱硬化性塗料組成物において、常温では少なくとも一ヶ月間実質的に粘度変化が無く、かつ沈殿を生じないことを特徴とする一液性熱硬化性塗料組成物。
- 請求項9又は10に記載の一液性熱硬化性塗料組成物を硬化せしめた塗膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるリン酸変性エポキシ樹脂と、エポキシ基がケトンにより保護されているブロックド・エポキシ樹脂と、活性水素を有しない水混和性有機溶媒とを含むことを特徴とする一液性熱硬化性塗料組成物。
- 請求項12に記載の一液性熱硬化性塗料組成物において、前記ケトンがアセトンであることを特徴とする一液性熱硬化性塗料組成物。
- 請求項12又は13に記載の一液性熱硬化性塗料組成物において、(前記ブロックド・エポキシ樹脂のエポキシ基(未保護換算))/(前記リン酸変性エポキシ樹脂中のリン酸基)のモル比が4.0/1.0〜1.0/5.0であることを特徴とする一液性熱硬化性塗料組成物。
- 請求項12〜14のいずれかに記載の一液性熱硬化性塗料組成物を硬化せしめた塗膜。
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