JP3933778B2 - 導電性被覆用水性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性被覆用水性樹脂組成物に関するものであり、さらに詳しくは、配合時、保存時の安定性に優れ、透明性、平滑性、導電性等の良好な塗膜を形成し得る導電性被覆用水性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック類の静電塗装適性付与や静電気障害解消のための手段として、導電性プライマーや帯電防止剤等を用いてプラスチック類に導電性を付与する方法が一般的に用いられている。例えば、導電性プライマーでは、非導電体表面を導電化するために、プライマー中に導電性のフィラーや導電性添加剤を添加している。
【0003】
上記導電性フィラーとしては、導電性カーボン、銀、ニッケル、アルミニウム等を用いるプラスチック用導電性プライマー組成物(特開昭58−76266号公報、特開昭61−218639号公報、特開平2−120373号公報、特開平2−194071号公報)が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらプラスチック用導電性プライマー組成物は導電性フィラーを分散させているため、貯蔵中に導電性フィラーと樹脂成分とが分離、凝集する恐れがあり、保存安定性が悪いという欠点があった。また、これらの導電性フィラーを用いる導電性プライマーは一般的に高価格であり、さらに十分な導電性を得るためには膜厚を厚くする必要があり、コストの面で問題を有する。
【0005】
導電性を付与する添加剤として、安価な界面活性剤を用いる方法(特開平3−4970号公報)も提案されているが、環境によって導電性プライマーの導電性が変化し、特に湿度の低い環境では導電性が低下するという欠点を有する。
また、現在使用されている導電性プライマーや帯電防止剤の多くは有機溶剤系であり、環境、安全性などの問題から水系への代替が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、配合時、保存時の安定性に優れ、透明性、平滑性、導電性等の良好な塗膜を形成し得る導電性被覆用水性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題は、導電性被覆用水性樹脂組成物として、スルホン酸基および/またはカルボン酸基を有する自己ドープ型可溶性導電性ポリマー(A)と、ビニル系重合体エマルション(B)と、HLBが16以上のノニオン系界面活性剤(C)とを含有するものを用いることにより解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明に用いられる自己ドープ型可溶性導電性ポリマー(A)は、導電性被覆用水性樹脂組成物に導電性を付与するものである。ここで、自己ドープ型可溶性導電性ポリマー(A)とは、導電性を発現させるための電子供与性分子あるいは電子受容性分子(ドーパント)の構成単位をポリマー鎖中に含有しており、導電性発現のための錯体化(ドーピング)の必要のない可溶性導電性ポリマーのことである。
【0009】
上記可溶性導電性ポリマー(A)としては、スルホン酸基および/またはカルボン酸基を有する自己ドープ型可溶性導電性ポリマーであればよく、特に限定されないが、例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平1−301714号公報、特表平5−504153号公報、特表平5−503953号公報、特開平4−32848号公報、特開平4−328181号公報、特開平6−145386号公報、特開平6−56987号公報、特開平5−226238号公報、特開平5−178989号公報、特開平6−293828号公報、特開平7−118524号公報、特開平6−32845号公報、特開平6−87949号公報、特開平6−256516号公報、特開平7−41756号公報、特開平7−48436号公報、特開平4−268331号公報等に示されるものが挙げられる。
【0010】
具体的には、可溶性導電性ポリマー(A)としては、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等の骨格を繰り返し単位として含み、かつスルホン酸基および/またはカルボン酸基を有するπ共役系高分子が用いられる。この中でも、特にチエニレン、ピロリレン、フェニレンビニレン、イミノフェニレン等の骨格を有する可溶性導電性ポリマー(A)が好適に用いられる。
【0011】
チエニレン、ピロリレン、フェニレンビニレン、イミノフェニレン等の骨格を有する可溶性導電性ポリマー(A)としては、
下記一般式(1)(式中、R1,R2は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R1,R2のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)、
【化9】
【0012】
下記一般式(2)(式中、R3,R4は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R3,R4のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)、
【化10】
【0013】
下記一般式(3)(式中、R5〜R8は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R5〜R8のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)、
【化11】
【0014】
下記一般式(4)(式中、R9 〜R13は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R9 〜R13のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)、
【化12】
【0015】
および下記一般式(5)(式中、R14は−SO3 -,−SO3H,−R36SO3 -,−R36SO3H,−COOHおよび−R36COOHからなる群で選ばれ、ここでR36は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基である)、
【化13】
からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位をポリマー全体の繰り返し単位中に20〜100%含むものが挙げられる。
【0016】
また、上記可溶性導電性ポリマー(A)の中でも、下記一般式(6)(式中、yは0〜1の任意の数を示し、R15〜R32は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3 H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R15〜R32のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)で表される繰り返し単位をポリマー全体の繰り返し単位中に20〜100%含むポリアニリン系の可溶性導電性ポリマー(A)がより好適に用いられる。
【化14】
【0017】
上記ポリアニリン系の可溶性導電性ポリマー(A)中の芳香環の数に対するスルホン酸基およびカルボン酸基の数の割合は、50%のものが水に対する溶解性の点で好適に用いられ、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%以上のポリマーが用いられる。
【0018】
さらに、上記ポリアニリン系の可溶性導電性ポリマー(A)は、導電性および溶解性の点から電子供与性基を有することが好ましく、具体的にはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等が好ましく、この中でも特にアルコキシ基が好ましい。
【0019】
これらの中で、最も好ましい置換基の組み合わせを有するポリアニリン系の可溶性導電性ポリマー(A)としては、
下記一般式(7)(式中R33は、スルホン酸基、カルボン酸基、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの基であり、R34は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、テトラコシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘプトキシ基、ヘクソオキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基、テトラコソキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基からなる群より選ばれた1つの基を示し、Xは0〜1の任意の数を示し、nは重合度を示し3以上である)で表されるものが挙げられる。
【化15】
【0020】
本発明で用いられる可溶性導電性ポリマー(A)の重量平均分子量は、GPCによるポリエチレングリコール換算値で、2000〜100万のものが好ましく、より好ましくは3000〜100万であり、さらに好ましくは5000〜50万である。可溶性導電性ポリマー(A)の重量平均分子量が2000未満では、水に対する溶解性に優れるが、導電性、成膜性および膜強度が不足し、100万を越えると、導電性は優れるが、水に対する溶解性が不十分となる。
【0021】
可溶性導電性ポリマー(A)の製造方法としては、既知の方法を用いればよく、特に限定されないが、例えば、チエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン等の骨格を有する複素環化合物、アニリン化合物等の重合性単量体を化学酸化重合法、電解酸化重合法などで重合させる方法が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられるビニル系重合体エマルション(B)は、導電性被覆用水性樹脂組成物の塗工後に塗膜を形成し、この塗膜に基材密着性、耐水性および耐湿性を付与するものである。
このビニル系重合体エマルション(B)としては、ビニル重合性単量体(II)の溶液重合等によって得られるビニル系重合体を水中に乳化分散させたもの、あるいはビニル重合性単量体(II)を乳化重合したものなどが挙げられる。
【0023】
また、ビニル系重合体エマルション(B)としては、懸濁重合法により得られる酸性基含有ビニル系重合体(I)を塩基性化合物により溶解または分散させた水中にて、ビニル重合性単量体(II)を乳化重合して得られるものが、配合時、保存時のエマルションの安定性が良好であるという点で好適に用いられる。
さらに、塗工後の塗膜の耐水性、耐湿性に優れているという点で、架橋性官能基を有するビニル系重合体を用いたビニル系重合体エマルション(B)がより好適に用いられる。
【0024】
上記ビニル重合性単量体(II)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸n−ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸n−ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、
【0025】
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有ビニル重合性単量体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル重合性単量体、メタクリルアミド、アクリルアミド等のアミド基含有ビニル重合性単量体、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸等のカルボキシル基含有ビニル重合性単量体、アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル重合性単量体などが挙げられる。これらは、必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併せて使用することができる。
【0026】
上記酸性基含有ビニル系重合体(I)は、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の酸性基含有ビニル重合性単量体と、上記ビニル重合性単量体(II)の1種あるいは2種以上とから構成される。
酸性基含有ビニル系重合体(I)の固形分酸価は、50〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは70〜150mgKOH/gであり、この範囲内において溶解性と耐水性、耐湿性のバランスが特に良好となる。固形分酸価が50mgKOH/g未満では、酸性基含有ビニル系重合体(I)を塩基性化合物にて水中に溶解または分散させることが困難となり、200mgKOH/gを越えると、懸濁重合時の分散安定性が低下するとともに、得られる塗膜の耐水性、耐湿性や基材密着性が劣る。
【0027】
また、酸性基含有ビニル系重合体(I)の重量平均分子量は、5000〜50000の範囲であることが好ましく、より好ましくは8000〜20000の範囲である。重量平均分子量が5000未満では懸濁重合時の分散安定性が低下しやすく、50000を越えると、酸性基含有ビニル系重合体(I)を塩基性化合物にて水中に溶解または分散させることが困難となる。
【0028】
上記架橋性官能基は、導電性被覆用水性樹脂組成物の塗膜が形成される際に、架橋性官能基を有するビニル系重合体間を架橋し、塗膜の耐水性や耐湿性を向上させるものである。この架橋性官能基は、架橋性官能基を有するビニル重合性単量体の重合により得られるビニル系重合体エマルション(B)を用いることにより導電性被覆用水性樹脂組成物に導入される。
【0029】
この架橋性官能基としては、塗膜形成時に架橋反応が進行するものであればよく、特に限定されないが、比較的低温度の加熱で架橋反応が進行し、形成される塗膜の耐水性が良好な下記一般式(8)(式中R37は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表される官能基、
【化16】
および、アルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基が好ましい。
なお、上記のアルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基には、カルボキシル基、カルボン酸エステル基は含まれない。
【0030】
上記一般式(8)で表される架橋性官能基を有するビニル重合性単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−iso−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−n−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−iso−ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0031】
また、上記一般式(8)で表される架橋性官能基を有するビニル重合性単量体は、得られるビニル系重合体の単量体組成中1〜30重量%の範囲で用いられることが好ましく、該単量体が1重量%未満では、得られる塗膜の耐水性、耐湿性が低下する傾向にあるため好ましくなく、30重量%をこえると得られるビニル系重合体の重合時および保存時の安定性が低下する傾向にあるため好ましくない。より好ましくは、1〜15重量%の範囲であり、この範囲において塗膜の耐水性、耐湿性が特に良好となる。
【0032】
上記アルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基を有するビニル重合性単量体としては、例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等の炭素数4〜7のビニルアルキルケトン類、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール等が挙げられる。中でも、重合反応性、架橋反応性、コスト等の点で、ダイアセトンアクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトンを用いることが好ましい。
【0033】
また、アルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基を有するビニル重合性単量体は、得られるビニル系重合体の単量体組成中1〜30重量%の範囲で用いられることが好ましく、該単量体が1重量%未満では、得られる塗膜の耐水性、耐湿性が低下する傾向にあるため好ましくなく、30重量%をこえると、逆に得られる塗膜の耐水性が低下するため好ましくない。より好ましくは、1〜10重量%の範囲であり、この範囲において塗膜の耐水性、耐湿性が特に良好となる。
【0034】
本発明で用いられるビニル重合体エマルション(B)の製造方法としては、特に限定はされないが、例えば、溶液重合等で合成したビニル系重合体を水中に乳化分散する方法、ビニル重合性単量体(II)および/または架橋性官能基を有するビニル重合性単量体を乳化重合する方法などが挙げられ、この中でも、導電性被覆用水性樹脂組成物の生産性を考慮すると、乳化重合法で製造するのが好ましい。
さらに、上記乳化重合法としては、懸濁重合法により得られた酸性基含有ビニル系重合体(I)を塩基性化合物により溶解または分散させた水中にて、ビニル重合性単量体(II)および/または架橋性官能基を有するビニル重合性単量体を乳化重合する方法がより好適である。
【0035】
上記の溶液重合、乳化重合等は、公知のラジカル重合剤等を使用し、公知の重合条件で行われる。
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを使用すればよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過酸化カリウムまたは過酸化アンモニウムと、亜硫酸水素ナトリウムまたはロンガリットとの組み合わせ、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、硫酸水素ナトリウムまたはロンガリットとの組み合わせ等に代表されるレドックス系触媒などが挙げられる。
【0036】
上記ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、ビニル重合性単量体(II)および/または架橋性官能基を有するビニル重合性単量体の全量に対して0.01〜10重量%の範囲であるが、重合の進行や反応の制御を考慮すると、0.1〜5重量%の範囲が好ましい。また、ラジカル重合開始剤への活性付与のために、硫酸鉄等の2価の鉄イオンを含む化合物、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のキレート化剤などを用いることもできる。
【0037】
また、乳化重合の際には、必要に応じて公知の界面活性剤や連鎖移動剤を使用することができる。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン基を含むアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系界面活性剤、分子中にビニル重合性二重結合を有する反応性界面活性剤などが挙げられる。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメチルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物などを挙げることができる。
【0038】
乳化重合時におけるビニル重合性単量体(II)および/または架橋性官能基を有するビニル重合性単量体の仕込方法は、特に限定されず、一括仕込、適下、あるいは一部をあらかじめ反応容器に仕込み、残りを適下するなどのいずれの方法でもよい。適下する場合は、反応容器中の界面活性剤水溶液にそのまま適下してもよく、適下溶液に界面活性剤を加え、予備乳化してから反応容器に適下してもよい。
乳化重合時における反応温度は、40〜90℃の範囲が好ましい。
また、アクリル酸等の酸成分を使用する場合には、乳化重合終了時にアルカリ成分を添加し、中和することにより、エマルションの保存安定性を高めることができる。
【0039】
上記酸性基含有ビニル系重合体(I)は、公知の分散剤、開始剤、連鎖移動剤を使用し、公知の重合条件で懸濁重合法によって製造される。
分散剤としては、例えば、70〜100%のケン化度のポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸ソーダ塩、ポリアクリル酸ソーダ塩等の水溶性高分子が挙げられる。開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物などが挙げられる。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類などが挙げられる。
【0040】
上記酸性基含有ビニル系重合体(I)を水中に溶解または分散させるための塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどが挙げられる。塩基性化合物の使用量は、酸性基含有ビニル系重合体(I)中の酸性基に対して0.5〜1当量の範囲が好ましい。0.5当量未満では、酸性基含有ビニル系重合体(I)を水中に溶解または分散させることが困難になり、1当量を越えると、ビニル重合性単量体(II)の乳化重合安定性が不良となりやすい。
【0041】
また、上記酸性基含有ビニル系重合体(I)に対するビニル重合性単量体(II)の使用量は、酸性基含有ビニル系重合体(I)100重量部に対して、50〜300重量部の範囲であることが好ましい。50重量部未満では、導電性被覆用水性樹脂組成物から得られる塗膜の導電性が損なわれやすく、300重量部を越えると、ビニル重合性単量体(II)の乳化重合安定性が不良となりやすい。
【0042】
本発明に用いられるHLBが16以上のノニオン系界面活性剤(C)は、導電性被覆用水性樹脂組成物の配合時や保存時の安定性を向上させ、得られる塗膜の外観を良好にするものである。なお、HLBとはHydrophile−Lipophile Balanceの略称であり、界面活性剤等の親水性を示す指標である。HLBが16未満の場合、導電性被覆用水性樹脂組成物の配合時や保存時の安定性が悪くなり、得られる塗膜の外観も不良となる。
【0043】
上記ノニオン系界面活性剤(C)としては、例えば、HLBが16以上のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(花王(株)製、エマルゲン935、エマルゲン950、エマルゲン985等)、HLBが16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王(株)製、エマルゲン147、エマルゲン430等)などが挙げられる。中でも、HLBが16以上のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが、より少量で導電性被覆用水性樹脂組成物の配合時や保存時の安定性および得られる塗膜の外観の改良効果に優れるため好適に用いられる。
【0044】
本発明に用いられる2個以上のヒドラジン残基を有する有機ヒドラジン化合物(D)は、ビニル系重合体エマルション(B)に含有される架橋性官能基が、アルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基の場合に、架橋剤としてビニル系重合体エマルション(B)に添加される。
【0045】
上記有機ヒドラジン化合物(D)としては、炭素数が2〜10、特に炭素数が4〜6のジカルボン酸ジヒドラジド、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等、および、炭素数が2〜4の脂肪族の水溶性ヒドラジン、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等が挙げられる。中でも、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドを用いることが好ましい。
【0046】
次に本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物の配合方法を説明する。
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物の配合方法は、特に限定はされないが、例えば、あらかじめノニオン系界面活性剤(C)を含有させたビニル系重合体エマルション(B)に、可溶性導電性ポリマー(A)の水溶液を添加する方法などが挙げられる。
【0047】
また、ノニオン系界面活性剤(C)のビニル系重合体エマルション(B)への添加方法も特に限定されず、ビニル系重合体エマルション(B)の製造時に乳化重合用の界面活性剤として添加してもよく、また、乳化重合終了後に添加してもよい。
さらに、ビニル系重合体エマルション(B)に含有される架橋性官能基が、アルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基の場合は、架橋剤として、有機ヒドラジン化合物(D)をビニル系重合体エマルション(B)に添加する必要がある。
【0048】
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物に配合される可溶性導電性ポリマー(A)の重量(a)は、ビニル系重合体エマルション(B)中のビニル系重合体の重量(b)との比率(a)/(b)が、0.005〜4の範囲となるように加えるのが好ましく、より好ましくは、0.01〜2の範囲である。(a)/(b)が0.005未満では、得られる塗膜の導電性が不良となり、4を越えると、導電性被覆用水性樹脂組成物の配合時や保存時の安定性が悪くなり、得られる塗膜の耐水性や耐湿性が低下する傾向にある。
【0049】
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物に配合されるノニオン系界面活性剤(C)の重量(c)は、ビニル系重合体エマルション(B)中のビニル系重合体の重量(b)との比率(c)/(b)が、0.001〜0.1の範囲となるように加えるのが好ましく、より好ましくは、0.005〜0.05の範囲である。(c)/(b)が0.001未満では、導電性被覆用水性樹脂組成物の配合時や保存時の安定性が悪くなり、得られる塗膜の外観も不良となり、0.1を越えると、塗膜の耐水性や耐湿性が低下する傾向にある。
【0050】
また、有機ヒドラジン化合物(D)は、ビニル系重合体エマルション(B)中のアルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基のモル数(i)と、有機ヒドラジン化合物(D)中のヒドラジン残基のモル数(ii)との比率(ii)/(i)が、0.05〜5の範囲となるように加えるのが好ましく、より好ましくは、0.5〜1.5の範囲である。(ii)/(i)が0.05未満では、架橋反応の進行が不十分となり、形成される塗膜の耐水性や耐湿性が不足する傾向にあり、5を越えると、未反応の有機ヒドラジン化合物(D)により、塗膜の外観や耐水性に悪影響を与える。
【0051】
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物には、塗膜成形性を向上させるために必要に応じて助剤を添加することができる。助剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物をポリプロピレン等のプラスチック基材に塗布する場合には、塗膜の基材への密着性向上のために、塩素化ポリオレフィン等の他の樹脂のエマルションや水溶性樹脂を混合して用いてもよい。
さらに、本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0053】
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物の固形分は、任意に選択することができるが、塗工作業性、塗膜性能等を考慮すると、5〜60重量%の範囲が好ましい。
【0054】
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物は、刷毛塗装、ロール塗装、スプレー塗装、ディップ塗装等の方法でプラスチック類等の基材に塗布され、ついで常温で放置または50〜200℃で加熱することにより硬化し、塗膜を形成し、実用に供される。
【0055】
このような導電性被覆用水性樹脂組成物にあっては、可溶性導電性ポリマー(A)が水溶性であり、また、ノニオン系界面活性剤(C)を添加しているため、可溶性導電性ポリマー(A)がビニル重合体エマルション(B)と分離、凝集することがなく、配合時、保存時の安定性に優れたものとなり、透明性、平滑性、導電性などの良好な塗膜を得ることができる。また、導電性被覆用水性樹脂組成物の各成分には、水に溶解もしくは分散するものを使用しているので、有機溶剤を使用する必要がなく、環境への影響や、作業者の安全性などの問題も改善される。
【0056】
また、このような導電性被覆用水性樹脂組成物は、各種帯電防止剤、コンデンサー、電池、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、電気防食、電池の蓄電能力向上等に適用可能である。特に、架橋性の導電性被覆用水性樹脂組成物は、導電性の湿度依存性が少なく、透明性が高いため、帯電防止剤への適用が優れている。帯電防止剤の具体的用途としては、包装材料、磁気カード、磁気テープ、磁気ディスク、写真フィルム、印刷材料、離形フィルム、ヒートシールテープ・フィルム、ICトレイ、ICキャリアテープおよびカバーテープなどが挙げられる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。なお、実施例中の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0058】
(製造例1)
ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)(可溶性導電性ポリマー(A−1))の合成
攪拌機、コンデンサー、温度制御装置および適下ポンプを備えた反応容器中、2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを25℃で4mol/lのアンモニア水溶液50mlに攪拌溶解し、攪拌しながら脱イオン水100mlにペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを溶解させた水溶液を30分間かけて適下した。適下終了後、25℃で12時間さらに攪拌し、反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、重合体粉末15gを得た。この重合体の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。
【0059】
(製造例2)
ポリ(2−スルホ−1,4−イミノフェニレン)(可溶性導電性ポリマー(A−2))の合成
ポリ(2−スルホ−1,4−イミノフェニレン)を既知の方法(J.Am.Chem.Soc.,(1991),113,2665−2666)に従って合成した。得られた重合体中のスルホン酸基の数の割合は、芳香環の数に対して52%であり、体積抵抗値は50Ω・cmであった。
【0060】
(製造例3)
ポリ(2−スルホプロピル−1,4−イミノフェニレン)(可溶性導電性ポリマー(A−3))の合成
ポリ(2−スルホプロピル−1,4−イミノフェニレン)を既知の方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,(1990),180)に従って合成した。
【0061】
(製造例4)
ポリ(2−スルホプロピル−2,5−チエニレン)(可溶性導電性ポリマー(A−4))の合成
ポリ(2−スルホプロピル−2,5−チエニレン)を既知の方法(第39回高分子学会予稿集,1990,561)に従って合成した。
【0062】
(製造例5)
ポリ(2−カルボニル−1,4−イミノフェニレン)(可溶性導電性ポリマー(A−5))の合成
攪拌機、コンデンサー、温度制御装置および適下ポンプを備えた反応容器中、2−アミノアニソール−4−カルボン酸100mmolを25℃で4mol/lのアンモニア水溶液50mlに攪拌溶解し、攪拌しながら脱イオン水100mlにペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを溶解させた水溶液を30分間かけて適下した。適下終了後、25℃で12時間さらに攪拌し、反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、重合体粉末10gを得た。
【0063】
(製造例6)
ビニル系重合体エマルション(B−1)の製造
脱イオン水233部、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業(株)製アニオン系界面活性剤)3部、エマルゲン985(花王(株)製ノニオン系界面活性剤、HLB=18.9)6部を攪拌機、コンデンサー、温度制御装置、適下ポンプおよび窒素導入管を備えたフラスコに仕込み、攪拌混合した。さらに、メタクリル酸メチル(以下MMAと記す)50部、アクリル酸n−ブチル(以下BAと記す)48部、メタクリル酸(以下MAAと記す)2部からなるビニル重合性単量体(II)の混合物100部のうち20部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した後に、窒素雰囲気下で、過硫酸カリウム(以下KPSと記す)0.5部を添加した。窒素雰囲気下、30分間攪拌した後、上記単量体混合物100部のうちの残り80部を2時間かけて適下した。適下終了後、窒素雰囲気下、80℃で1時間攪拌して、ビニル系重合体エマルション(B−1)を得た。得られたエマルションの固形分は32%であった。
【0064】
(製造例7)
ビニル系重合体エマルション(B−2,4,5,8)の製造
ビニル重合性単量体(II)組成および界面活性剤を表1に記載したように変更した他は、製造例6と同様に重合を行い、ビニル系重合体エマルション(B−2,4,5,8)を得た。なお、表1に示す仕込量はすべて重量部である。
ビニル系重合体エマルション(B−5)のみ、室温まで冷却した後、アジピン酸ジヒドラジド1.9部を添加し、さらに15分間攪拌した。
【0065】
【表1】
【0066】
(製造例8)
ビニル系重合体エマルション(B−3)の製造
脱イオン水200部、ポリビニルアルコール(ケン化度80%、重合度1700)0.6部を攪拌機、コンデンサー、温度制御装置を備えたフラスコに仕込み、ポリビニルアルコールを完全に溶解させた。一度攪拌を停止して、MMA60部、メタクリル酸tert−ブチル(以下tBMAと記す)12部、BA12部、MAA16部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部、n−ドデシルメルカプタン5部を加えて再度攪拌を開始し、75℃に昇温した後、反応温度を75〜80℃に保ち、3時間反応させた。その後、90℃に昇温して1時間保持した。反応物を目開き80μmの篩いにて濾過し、乾燥して酸性基含有ビニル系重合体(I−1)を得た。表2に得られた酸性基含有ビニル系重合体(I−1)の特性を示す。
【0067】
【表2】
【0068】
上記酸性基含有ビニル系重合体(I−1)100部、脱イオン水410部を攪拌機、コンデンサー、温度制御装置、適下ポンプおよび窒素導入管を備えたフラスコに仕込んだ。攪拌しながら、28%アンモニア水10部を添加して30分攪拌を続け、さらに80℃に昇温して1時間攪拌し、酸性基含有ビニル系重合体(I−1)水溶液を得た。温度を80℃に保ったまま、窒素雰囲気下で攪拌しながら、KPS0.5部を添加した後、あらかじめMMA30部、BA60部、メタクリル酸グリシジル(GMA)10部、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業(株)製アニオン系界面活性剤)5部、脱イオン水50部の混合物を攪拌して調整したプレエマルションを1時間かけて適下した。適下終了後、80℃でさらに1時間保持して、ビニル系重合体エマルション(B−3)を得た。得られたエマルションの固形分は31%であった。
【0069】
(製造例9)
ビニル系重合体エマルション(B−6,7)の製造
単量体組成を表2に記載したように変更した他は、製造例8と同様に重合を行い、ビニル系重合体エマルション(B−6,7)を得た。なお、表2に示す仕込量はすべて重量部である。
ビニル系重合体エマルション(B−7)のみ、室温まで冷却した後、アジピン酸ジヒドラジド1.9部を添加し、さらに15分間攪拌した。
【0070】
(実施例1)
ビニル系重合体エマルション(B−1)30部を攪拌しながら、これに可溶性導電性ポリマー(A−1)の10%水溶液10部を添加し、導電性被覆用水性樹脂組成物(実施例1)を得た。得られた導電性被覆用水性樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
なお、表3に示す特性の評価は以下の方法を用いて行った。
・配合安定性:
導電性被覆用水性樹脂組成物の配合直後の安定性を目視評価した。
○ 良好
△ 凝集物生成
× 可溶性導電性ポリマー(A)水溶液を添加中に凝固
・塗膜外観:
配合した導電性被覆用水性樹脂組成物をガラス板上に塗布し、室温で1時間乾燥後、100℃で1時間加熱し、膜厚10μmの試験塗膜を形成した。試験塗膜の外観を目視評価した。
○ 平滑で透明性良好
× 表面が凸凹で不透明
・導電性:
上記試験塗膜の表面抵抗をハイレスター(三菱化学(株)製、MCP−TESTER)を用いて測定した。
・耐水性:
上記試験塗膜を25℃の水に12時間浸漬した後、目視評価した。
○ 可溶性導電性ポリマー(A)の水中への溶出なし
× 可溶性導電性ポリマー(A)が水中に著しく溶出
【0073】
(実施例4および比較例1〜3)
ビニル系重合体エマルション(B)を表3に記載したように変更した他は、実施例1と同様に配合を行い、導電性被覆用水性樹脂組成物(実施例4および比較例1〜3)を得た。なお、表3に示す配合量はすべて重量部である。得られた導電性被覆用水性樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0074】
(実施例2)
ビニル系重合体エマルション(B−2)30部にエマルゲン985(花王(株)製ノニオン系界面活性剤、HLB=18.9)0.1部を添加し、1時間攪拌した。さらに攪拌しながら、可溶性導電性ポリマー(A−1)の10%水溶液10部を添加し、導電性被覆用水溶性樹脂組成物(実施例2)を得た。得られた導電性被覆用水性樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0075】
(実施例3および5〜7)
ビニル系重合体エマルション(B)とエマルゲン985の添加量を表3に記載したように変更した他は、実施例2と同様に配合を行い、導電性被覆用水性樹脂組成物(実施例3および5〜7)を得た。得られた導電性被覆用水性樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0076】
本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物は、実施例1〜7にあるように、配合時の安定性に優れ、また、この組成物より透明性、平滑性、導電性の良好な塗膜を得ることができた。さらに、架橋性官能基を有するビニル系エマルション(B)を用いた導電性被覆用水性樹脂組成物からは、実施例4〜7にあるように、耐水性に優れた塗膜を得ることができた。これに対し、本発明の条件を満たさない導電性被覆用水性樹脂組成物は、比較例1〜3にあるように、十分な特性を示さなかった。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の導電性被覆用水性樹脂組成物にあっては、配合時、保存時の安定性に優れ、透明性、平滑性、導電性等の良好な塗膜を得ることができ、工業上非常に有益なものである。
Claims (12)
- スルホン酸基および/またはカルボン酸基を有する自己ドープ型可溶性導電性ポリマー(A)と、ビニル系重合体エマルション(B)と、HLBが16以上のノニオン系界面活性剤(C)とを含有する導電性被覆用水性樹脂組成物。
- ビニル系重合体エマルション(B)が、懸濁重合法により得られる酸性基含有ビニル系重合体(I)を塩基性化合物で溶解または分散させた水中にて、ビニル重合性単量体(II)を乳化重合して得られるエマルションであり、かつ上記酸性基含有ビニル系重合体(I)が、固形分酸価50〜200mgKOH/g、重量平均分子量5000〜50000の範囲であることを特徴とする請求項1記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- 可溶性導電性ポリマー(A)が、
下記一般式(1)(式中、R1,R2は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R1,R2のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)、
- 可溶性導電性ポリマー(A)が、
下記一般式(6)(式中、yは0〜1の任意の数を示し、R15〜R32は各々独立に、H,−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−OCH3,−CH3,−C2H5,−F,−Cl,−Br,−I,−N(R35)2,−NHCOR35,−OH,−O-,−SR35,−OR35,−OCOR35,−NO2,−COOH,−R35COOH,−COOR35,−COR35,−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、R35は炭素数1〜24のアルキル、アリールまたはアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基であり、かつ、R15〜R32のうち少なくとも一つが−SO3 -,−SO3H,−R35SO3 -,−R35SO3H,−COOHおよび−R35COOHからなる群より選ばれる基である)で表される繰り返し単位をポリマー全体の繰り返し単位中に20〜100%含み、かつ重量平均分子量が2000〜100万であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- 可溶性導電性ポリマー(A)が、
下記一般式(7)(式中、R33は、スルホン酸基、カルボン酸基、およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩からなる群より選ばれる一つの基を示し、R34は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、テトラコシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘプトキシ基、ヘクソオキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基、テトラコソキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基からなる群より選ばれる一つの基を示し、Xは0〜1の任意の数を示し、nは重合度を示し、3以上である)であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- 可溶性導電性ポリマー(A)中のすべての芳香環および複素環の数に対するスルホン酸基の数の割合が50%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- 可溶性導電性ポリマー(A)が置換基として電子供与性基を有することを特徴とする請求項6記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- 可溶性導電性ポリマー(A)が置換基として電子供与性基を有し、かつ可溶性導電性ポリマー(A)中のすべての芳香環および複素環の数に対するスルホン酸基の数の割合が80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- 可溶性導電性ポリマー(A)の電子供与基がアルコキシ基であることを特徴とする請求項7または請求項8記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- ビニル系重合体エマルション(B)が架橋性官能基を有することを特徴とする請求項1ないし9いずれか一項に記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
- ビニル系重合体エマルション(B)の有する架橋性官能基が、アルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基であり、かつビニル系重合体エマルション(B)が、2個以上のヒドラジン残基を有する有機ヒドラジン化合物(D)を含有することを特徴とする請求項10記載の導電性被覆用水性樹脂組成物。
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