JP3932635B2 - 絶縁ワニス及びこれを用いた多層プリント配線板 - Google Patents

絶縁ワニス及びこれを用いた多層プリント配線板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁ワニス及びこれを用いた多層プリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板は、通常、銅箔とプリプレグを積層、熱圧成形して得た銅張積層板に回路加工して得られる。
また、多層プリント配線板は、これらのプリント配線板同士をプリプレグを介して熱圧成形するか又は、これらのプリント配線板と銅箔とをプリプレグを介して熱圧成形して一体化して得た内層回路入り多層銅張積層板の表面に回路を形成して得られる。
【0003】
プリント配線板用のプリプレグには、従来、ガラスクロスに樹脂を含浸、乾燥し、樹脂を半硬化状態にしたガラスクロスプリプレグが、多層プリント配線板には、該ガラスクロスプリプレグの他にガラスクロスを用いないプリプレグであるフィルム形成能を有する樹脂を半硬化状態にした接着フィルム(特開平6−200216、特開平6−242465号公報参照)や該接着フィルムを銅箔の片面に形成した銅箔付き接着フィルム(特開平6−196862号公報参照)が使用されている。
なお、ここでいうフィルム形成能とは、プリプレグの搬送、切断及び積層等の工程中において、樹脂の割れや欠落等のトラブルを生じにくく、その後の熱圧成形時に層間絶縁層が内層回路存在部等で異常に薄くなったり、層間絶縁抵抗低下やショートというトラブルを生じにくい性能を意味する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電子機器の小型軽量化、高性能化、低コスト化が進行し、プリント配線板には高密度化、薄型化、高信頼性化、低コスト化が要求されている。
高密度化のためには、微細配線が必要であり、そのためには表面の平坦性が良好でかつ、寸法安定性が良好でなくてはならない。
【0005】
さらに微細なスルーホールやインタースティシャルバイアホール(IVH)が必要であり、ドリル穴加工性、レーザ穴加工性が良好であることが要求されている。
表面の平坦性を良好にするためには、多層化積層成形時の樹脂の流動性を高くする必要があり、これにはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の適用が望ましい。
【0006】
ところが、エポキシ樹脂は、成形前の段階では分子量が低いために高い流動性を示すが脆いため、シート状の絶縁材料を形成する性質を有していない。
そこで、従来はガラスクロス等の補強基材に絶縁樹脂を含浸させたプリプレグを予め作製し、これを絶縁層に用いてきた。
【0007】
しかし、従来のプリプレグに使用されているガラスクロスは、その厚さが薄くなるに従いヤーン(ガラス繊維束)同士の間の隙間が大きくなるため、厚さが薄いクロスほどヤーンが曲がったり、本来直角に交差すべき縦糸と横糸が直角でなく交差する、目曲がりと呼ばれる現象が発生しやすく、この目曲がりが原因となり、熱圧成形後に異常な寸法変化やそりを生じやすくなる。
【0008】
さらに、薄いガラスクロスほどヤーン間の隙間が大きいためプリプレグの繊維の体積分率が低くなり、層間絶縁層の剛性が低下するため、外層の回路を加工した後の部品実装工程において、たわみが大きくなりやすく、部品実装する上で障害となっている。
現在、一般に使用されているガラスクロスで最も薄いのは30μmのクロスであり、これを使用したプリプレグの厚さは40μm程度になる。これ以上にプリプレグの厚さを薄くするために、樹脂分を減らすと、内層回路の凹凸への樹脂による穴埋め性が低下しボイドが発生する。また、これ以上にガラスクロスを薄くするとクロス自体の強度が低下するため、ガラスクロスに樹脂を含浸する工程でガラスクロスが破断しやすくなり、プリプレグの製造が困難になる。
さらに、樹脂分を減らしたりガラスクロスを薄くしたガラスクロスを使用したプリプレグを用いて作製した多層プリント配線板は、「小径ドリル加工時に偏在するガラスクロスによって芯ぶれがしやすく、ドリルを折りやすい。」、「ガラス繊維の存在のため、レーザによる穴あけ性が悪く、内層回路の凹凸が表面に現れやすく表面平坦性が悪い。」等の課題を有する。
【0009】
一方、ガラスクロスのないプリプレグである接着フィルムや銅箔付き接着フィルムは、厚さをより薄くでき、小径ドリル加工性、レーザ加工性及び表面平坦性に優れる。
しかしながら、これらのプリプレグで作製した多層プリント配線板は、外層絶縁層にガラスクロス基材がないため、剛性が極めて低い。
この剛性の低さは、高温下において極めて顕著であり、部品実装工程においてたわみが生じやすく、ワイヤーボンディング性も極めて悪い。
また、外層絶縁層にガラスクロス基材がなく熱膨張率が大きいため実装部品との熱膨張の差が大きく、実装部品との接続信頼性が低く、加熱冷却の熱膨張収縮によるはんだ接続部にクラックや破断が起こり易い等、多くの問題を抱える。
したがって、現状のガラスクロスのないプリプレグである接着フィルムや銅箔付き接着フィルムを使用しては、高まる多層プリント配線板の高密度化、薄型化の要求に対応出来ない状況にある。
【0010】
そこで、従来のプリプレグでは解決できない多層プリント配線板に対する高密度化、薄型化、高信頼性化、低コスト化という課題を解決するための新規絶縁材料として、ガラスクロス等の基材を含まず、形状保持のための電気絶縁性ウィスカーを絶縁樹脂中に分散させることにより得られるワニスを、キャリア基材に流延して得られるシート状の絶縁材料が有効であることを見出してきた。
【0011】
しかし、電気絶縁性ウィスカー等の充填剤を絶縁樹脂中に複合化したシート状の絶縁材料を使用する場合、製品のカット工程における破断片の発生や、可とう性の不足により多層化工程等での取扱時に、接着フィルムが割れる等の問題が起こりやすく、破断片により、多層化のためのプレス時に外層銅箔面に打痕が発生したり、接着フィルムが割れた部分で絶縁樹脂が異常に薄くなる等の不具合が発生し、歩留りが低下する等の課題があった。
【0012】
この可とう性を向上させるためには、エポキシ樹脂中にアクリルゴムやアクリロニトリルブタジエンゴム等の各種ゴムを添加するのが通常であるが手法があるが、各種ゴムがエポキシ樹脂と相溶性が悪いため、エポキシ樹脂とゴムが分離するため、ゴム添加エポキシ樹脂を用いてプリント配線板を作製した場合、絶縁信頼性、耐熱性、耐溶剤性が悪いという課題がある。
【0013】
本発明は、絶縁信頼性及び取扱性に優れた絶縁ワニスとその絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の絶縁ワニスは、熱硬化性樹脂と電気絶縁性ウィスカーからなる絶縁ワニスであって、さらに数平均分子量が10,000以上300,000以下の高分子材料を添加したことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
(高分子材料)
本発明に用いる高分子材料としては、分子量10,000以上の、フェノキシ樹脂、難燃化されたブロム化フェノキシ樹脂、分子量が30,000〜80,000の高分子量エポキシ樹脂、さらには、分子量が80,000を超える超高分子量エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0016】
これらの高分子材料は、絶縁ワニスの樹脂固形分のうち、5〜75wt%の範囲で用いるのが好ましく、10〜60wt%がより好ましく、10〜50wt%が特性と成形性のバランスが良好であり特に好ましい。5wt%未満であると、作製した接着フィルムの取扱性向上に効果がなく、75wt%を超えると多層化のためのプレス積層時に、内層回路やスルーホールを充填するための樹脂の流動性が不足する。
【0017】
(ウィスカー)
本発明に用いるウィスカーとしては、電気絶縁性のセラミックウィスカーであり、ウィスカーの種類としては、例えば、ほう酸アルミニウム、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、窒化けい素、α−アルミナの中から選ばれた1以上のものを用いることができる。
その中でも、ほう酸アルミニウムウィスカーは、弾性率が高く、熱膨張率も小さく、しかも比較的安価である。このほう酸アルミニウムウィスカーを用いた本発明のプリプレグを使用して作製したプリント配線板は、従来のガラスクロスを用いたプリント配線板よりも、常温及び高温下における剛性が高く、ワイヤーボンディング性に優れ、電気信号の伝達特性に優れ、熱膨張率が小さく、寸法安定性に優れる。
【0018】
ウィスカーの平均直径は、0.3μm未満であると樹脂ワニスへの混合が難しくなると共に塗工作業性が低下し、3μmを超えると表面の平坦性に悪影響が出ると共に、ウィスカーの微視的な均一分散性が損なわれる。したがって、ウィスカーの平均直径は0.3μm〜3μmが好ましい。さらに同様の理由と塗工性が良い(平滑に塗りやすい)ことから、平均直径は0.5μm〜1μmの範囲がより好ましい。このような直径のウィスカーを選択することにより、従来のガラスクロスを基材としたプリプレグを使用するよりも、表面平坦性に優れたプリント配線板を得ることができる。
【0019】
また、ウィスカーの平均長さは、平均直径の10倍未満であると、繊維としての補強効果が僅かになると同時に、後述するウィスカーの樹脂層中での2次元配向が困難になるため、配線板にしたときに十分な剛性が得られない。また、ウィスカーが長すぎる場合は、ワニス中への均一分散が難しくなり、塗工性が低下する。また、ある一つの導体回路と接触したウィスカーが他の導体回路と接触する確率が高くなり、繊維に沿って移動する傾向にある銅イオンのマイグレーションによる回路間の短絡事故を起こす可能性があるという問題がある。
したがって、ウィスカーの平均長さは、平均直径の10倍以上で50μm以下の範囲であることが好ましい。このような長さのウィスカーを使用した本発明の絶縁材料を用いて作製したプリント配線板は、従来のガラスクロスを基材にしたプリプレグを使用したプリント配線板よりも、耐マイグレーション性に優れる。
【0020】
(処理液)
本発明では、絶縁樹脂とウィスカー表面との界面の密着性を向上するため、カップリング剤を用いることができ、このようなカップリング剤としては、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等があり、シラン系カップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系等がある。添加剤は何種類を併用してもよく、その配合量も特に制限はない。
【0021】
(樹脂)
本発明で使用する樹脂は、従来のガラスクロスを基材としたプリプレグに使用されている樹脂及びガラスクロス基材を含まない接着フィルム、あるいは銅箔付き接着フィルムに使用されている樹脂を使用することが出来る。ここでいう樹脂とは、樹脂、硬化剤、硬化促進剤、必要に応じて、カップリング剤や希釈剤を含むものを意味する。
【0022】
従来のガラスクロスを基材としたプリプレグに使用されている樹脂は、それ単独では、フィルム形成能がないため、銅箔の片面に塗工により接着剤層として形成し、加熱により溶剤除去し樹脂を半硬化した場合、搬送、切断及び積層等の工程中において、樹脂の割れや欠落等のトラブルを生じやすいか又は、その後の熱圧成形時に層間絶縁層が内層回路存在部等で異常に薄くなり、層間絶縁抵抗低下やショートというトラブルを生じやすかったため、従来、銅箔付き接着フィルム用途に使用することが困難であった。
しかし、本発明では、樹脂中にはウィスカーが分散され、該樹脂は充填剤により補強されているため、本発明の樹脂とウィスカーからなるプリプレグ層にはフィルム形成能が発現し、搬送、切断及び積層等の工程中において、ウィスカーを含まない場合と比べて、樹脂の割れや欠落等のトラブルを生じにくく、またウィスカーが存在するため熱圧成形時の層間絶縁層が、異常に薄くなる現象の発生も防止できる。
また、従来接着フィルムや銅箔付き接着フィルムに使用されている樹脂を用いることも効果的である。これらの樹脂は、高分子量成分等を含むことにより、樹脂単独でもフィルム形成能があるが、本発明によりウィスカーをその樹脂中に分散することにより、いっそうフィルム形成能が高められ取扱性が向上し、さらに絶縁信頼性もより高めることが可能となる。また、ウィスカーの分散によりフィルム形成能を高めた分だけ高分子量成分の添加量を減らすことも可能であり、それによって樹脂の耐熱性や接着性等を改善できる場合もある。
【0023】
樹脂の種類としては、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、けい素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂またはこれらの種々の変性樹脂類が好適である。この中で、プリント配線板特性上、特にビスマレイミドトリアジン樹脂、エポキシ樹脂が好適である。そのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂及びそれらのハロゲン化物、水素添加物、及び前記樹脂の混合物が好適である。中でも、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂またはサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性に優れ好ましい。
【0024】
(硬化剤)
このような樹脂の硬化剤としては、従来使用しているものが使用でき、樹脂がエポキシ樹脂の場合、例えばジシアンジアミド、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ポリビニルフェノール、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びこれらのフェノール樹脂のハロゲン化物、水素化物等を使用できる。中でも、ビスフェノールAノボラック樹脂は耐熱性に優れ好ましい。
この硬化剤の前記樹脂に対する場合は、従来使用している割合でよく、樹脂100重量部に対して、2〜100重量部の範囲が好ましく、さらには、ジシアンジアミドでは、2〜5重量部、それ以外の硬化剤では、30〜80重量部の範囲が好ましい。硬化剤の量が、2重量部未満であると、硬化不足を生じやすく、100重量部を超えると、未反応硬化剤が可塑剤として作用し、いずれも特性を低下させる。
【0025】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、樹脂がエポキシ樹脂の場合、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を使用する。
この硬化促進剤の前記樹脂に対する割合は、従来使用している割合でよく、樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましく、0.1〜1.0重量部の範囲がより好ましい。効果促進剤の量が、0.01重量部未満であると、硬化不足を生じ易く、20重量部を超えると、作成したワニスのポットライフの低下、コストの上昇を引き起こすため望ましくない。
【0026】
(希釈剤)
本発明で用いる熱硬化性樹脂は、溶剤にて希釈して樹脂ワニスとして使用することもできる。溶剤には、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。
この希釈剤の前記樹脂に対する割合は、従来使用している割合でよく、樹脂100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましく、30〜100重量部の範囲がさらに好ましい。希釈剤の量が1重量部未満であると、取扱性に劣り、200重量部を超えると、作業性に劣るため望ましくない。
【0027】
(その他の配合剤)
さらに本発明においては、上記した各成分の他に、必要に応じて従来より公知のカップリング剤、充填剤、イオン補足剤、高分子量樹脂等を樹脂中に適宜配合してもよい。
【0028】
(樹脂とウィスカーの割合)
樹脂への電気絶縁性ウィスカーの配合量は、樹脂固形分100重量部に対し5重量部未満であると、このプリプレグは切断時に樹脂が細かく砕けて飛散しやすくなる等の取扱性が悪くなると共に、配線板にしたときに十分な剛性が得られない。一方、ウィスカーの配合量が350重量部以上であると、熱圧成形時の内層回路の穴埋め性や回路間への樹脂充填性が損なわれ、熱圧成形後のウィスカー複合樹脂層中に、ボイドやかすれが発生しやすくなり、配線板特性を損なう恐れがある。したがって、ウィスカーの配合量は、樹脂固形分100重量部に対し5〜350重量部が好ましい。さらに、内層回路の穴埋め性や回路間への樹脂充填性に優れ、なおかつ、製造した配線板が従来のガラスクロス使用のプリプレグを用いて製造した配線板と比較し、同等または同等以上の剛性と寸法安定性とワイヤーボンディング性を持つことが出来る理由から、ウィスカーの配合量は、樹脂固形分100重量部に対し30〜230重量部であることがより好ましい。
【0029】
(混練方法)
電気絶縁性ウィスカーの分散性を向上させるために、絶縁ワニスを作製した後、らいかい機、3本ロールミルまたはビーズミル等での混練を組み合わせて行うことができる。混練後、減圧下での攪拌脱泡等によりワニス中の気泡を除去することが望ましい。
【0030】
(キャリアフィルム)
本発明において絶縁層であるウィスカー複合樹脂層(Bステージ状態)をその片面に形成する対象であるキャリアフィルムとしては、銅箔、アルミ箔等の金属箔、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、あるいは前記金属箔及びフィルムの表面を離型剤により処理したものを使用する。
【0031】
(プリプレグ層中のウィスカー配向)
本発明の電気絶縁性ウィスカーとBステージ状態の樹脂とから構成される絶縁材料の中のウィスカーは、2次元配向に近い状態(ウィスカーの軸方向が絶縁材料層の形成する面と平行に近い状態)にさせることが好ましい。
このようなウィスカーを配向させることにより、本発明の絶縁材料は良好な取扱性が得られると同時に、配線板にした時に高い剛性と良好な寸法安定性及び表面平坦性が得られる。
【0032】
(塗工方式)
上記のようにウィスカーを配向させるには、前述した好ましい範囲の繊維長のウィスカーを使用すると同時に、銅箔にウィスカーを配合した樹脂ワニスを塗工する際に、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ等の銅箔と平行な面方向にせん断力を負荷できるかあるいは、銅箔の面に垂直な方向に圧縮力を負荷できる塗工方式を採用すればよい。
【0033】
(作用)
以上で述べた本発明によれば、電気絶縁性ウィスカーを使用した絶縁ワニスにエポキシ樹脂と相溶性の高分子材料を用いることにより、接着フィルムの可とう性、取扱性を向上し、製造時の歩留りの向上をはかることができる。
また、本発明の絶縁材料を使用して作製した絶縁層は、基材がガラスクロスよりレーザに対し被加工性が良好でしかも微細なウィスカーであるため、従来のガラスクロスプリプレグを使用した絶縁層では、困難であったレーザ穴明けが容易にできる。そのため、直径100μm以下の小径のインタースティシャルバイアホール(IVH)が容易に作製可能となり、プリント配線板の回路を微細化でき、電子機器の高密度化、高性能化に大きく貢献できる。
【0034】
【実施例】
実施例1
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210)100重量部にビスフェノールAノボラック樹脂40重量部、4臭素化ビスフェノールA40重量部、イミダゾール系硬化促進剤0.4重量部からなる組成物に、臭素化フェノキシ樹脂(数平均分子量12,000)20重量部(樹脂固形分のうち10wt%)、メチルエチルケトンを加え60wt%のワニスを調整した。
得られたワニスに、平均直径0.8μm、平均繊維長20μmのほう酸アルミニウムウィスカーを30wt%になるように混合し、ビーズミルを用いて混練した後、真空脱気した。
得られたワニスを、厚さ18μmの銅箔及び厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにナイフコータにて塗工し、温度150℃で10min間加熱乾燥して、溶剤を除去すると共に、樹脂を半硬化して、ウィスカー重量分率が30wt%でウィスカーと半硬化状態にあるエポキシ樹脂からなる絶縁層の厚さが80μmと100μmの銅箔付き絶縁材料及びPETを剥離により除去して、半硬化状態のエポキシ樹脂からなる厚さ80μmの絶縁材料を作製した。
【0035】
実施例2
臭素化フェノキシ樹脂を80重量部(樹脂固形分のうち33wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0036】
実施例3
臭素化フェノキシ樹脂を300重量部(樹脂固形分のうち63wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0037】
実施例4
臭素化フェノキシ樹脂をフェノキシ樹脂(数平均分子量30,000)60重量部(樹脂固形分のうち25wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0038】
実施例5
臭素化フェノキシ樹脂を超高分子エポキシ樹脂(数平均分子量300,000)60重量部(樹脂固形分のうち25wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0039】
比較例1
臭素化フェノキシ樹脂を5重量部(樹脂固形分のうち3wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0040】
比較例2
臭素化フェノキシ樹脂を600重量部(樹脂固形分のうち77wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0041】
比較例3
臭素化フェノキシ樹脂をアクリルゴム(数平均分子量500,000)80重量部(樹脂固形分のうち33wt%)に変更した他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0042】
比較例4
臭素化フェノキシ樹脂を用いない他は、実施例1と同様にして絶縁材料を作製した。
【0043】
作製した絶縁材料に関して、以下の項目について評価を行った。
(Bステージフィルム取扱性)
取扱性はカッターナイフ及びシャーにより、樹脂の飛散等なくきれいに切断でき、絶縁材料同士のブロッキングが発生しなかったものを○、それ以外を×とした。
【0044】
(硬化物特性)
上記で作製した絶縁層の厚さ80μmの銅箔付き絶縁材料を絶縁層が向かい合うように重ねて積層し、熱圧成形した。成形後銅箔部分をエッチングにより取り除き、樹脂板を得た。
この樹脂板について弾性率、熱膨張率を測定した。弾性率はTMAの引張りモードにて、熱膨張率はTMAの引張りモードにて測定した。
【0045】
(回路充填性試験)
厚さ0.8mmのガラスエポキシ両面銅張積層板(銅箔厚18μm)にパターン(パターン幅(mm)/パターン間距離(mm)=5.0/5.0、1.0/1.0、0.5/0.5、0.2/0.2)及びスルーホール(穴径(mm)/穴ピッチ(mm)=0.3/1.27、0.3/1.9)の内層面の電極となるパターンをエッチングにより作製した後、無電解銅メッキ(15μm)を行い、回路充填性評価用内層板を作製した。この上下に上記で作製した絶縁層の厚さ80μmの銅箔付き絶縁材料を絶縁材料が回路充填性評価用内層板の電極となるパターンと接するように重ね合わせて積層し、熱圧成形した。その後、外層銅箔をエッチングにより除去し、実体顕微鏡観察により回路充填性を評価し、内層回路、絶縁材料間にボイドが発生していないものを○、それ以外を×とした。その後、スルーホール部分の断面観察を実体顕微鏡を用いて行い、スルーホール内部にボイドの発生していないものを○、それ以外を×とした。
【0046】
(表面粗さ)
作製した厚さ100μmの絶縁材料の上下に、厚さ18μmの片面粗化銅箔を該粗化面が絶縁材料に向き合うように積層し、熱圧成形した。この銅張積層板に回路加工を施し、その両面に先に作製した厚さ80μmの本発明の絶縁材料を、そのさらに外側に厚さ18μmの片面粗化銅箔を粗化面が絶縁材料に向き合うように積層し、熱圧成形し内層回路入り多層銅張積層板を作製した。
この内層回路入り多層銅張積層板の表面粗さを、触針式表面粗さ計にて測定した。測定箇所は、その直下に内層回路のある部分とない部分とを含む長さ25mmの一直線上の外層表面とした。内層回路のある部分とない部分の段差の10点平均が3μm以下であるものを○、それ以外を×とした。
【0047】
(耐電食性試験)
厚さ0.8mmのガラスエポキシ両面銅張積層板に電食試験の内層面の電極となるパターンをエッチングにより作製し、この上下に上記で作製した絶縁層の厚さ80μmの銅箔付き絶縁材料を絶縁材料が電食試験の内層面の電極となるパターンと接するように重ね合わせて積層し、熱圧成形した。得られた積層板の、内層の電極となる電食試験パターンの位置に合わせて、外層の電極となるパターンをエッチングで作製し、電食試験片を得た。この内層と外層の電極間に50Vの電圧を印加し、85℃、85%RHの雰囲気下で1000時間経過後の絶縁抵抗値を測定した。1000時間経過後の絶縁抵抗値を測定した結果、109Ω以上の良好な値を示したものを○、それ以外を×とした。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003932635
【0049】
以上の結果から、次のことが分かる。
実施例1〜5は、比較例と比較して、積層板が有する特性を下げることなく、取扱性、高耐電食性化を達成する。
したがって、本発明の絶縁ワニスは、低分子量エポキシ樹脂に電気絶縁性ウィスカーを配合した樹脂ワニスに高分子材料を配合することにより、フィルム形状とした際の絶縁材料の取扱性を向上し、製造時の歩留りを向上できる。
また、この絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を作製する際の歩留りの向上、さらに多層プリント配線板の高絶縁信頼性を達成できる。
本発明にしたがって製造した絶縁ワニスを用いて得られた絶縁材料は、電気絶縁性ウィスカーを用いた絶縁材料への高分子物質の添加により、シート状絶縁材料を形成した際の取扱性を改善できたもので、これを使用したプリント配線板は、回路充填性が良好なため多層IVH等の形成が可能で、表面が平坦で回路加工性が良く、剛性が高いため実装信頼性が高く、熱膨張率が小さいため、寸法安定性が良くなる。
【0050】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明によって、絶縁信頼性及び取扱性に優れた絶縁ワニスとその絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を提供することができる。

Claims (4)

  1. 樹脂と電気絶縁性ウィスカーからなる絶縁ワニスであって、数平均分子量が10,000以上300,000以下の高分子材料を含み、該高分子材料がフェノキシ樹脂、数平均分子量が30,000以上80,000以下の高分子量エポキシ樹脂、および数平均分子量が80,000を超える超高分子量エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、かつ該高分子材料が絶縁ワニス中の樹脂固形分の5〜75wt%の範囲で配合されることを特徴とする絶縁ワニス。
  2. 前記フェノキシ樹脂が、臭素化フェノキシ樹脂であることを特徴とする請求項に記載の絶縁ワニス。
  3. 電気絶縁性ウィスカーが、セラミックウィスカーであって、該ウィスカーの平均直径が0.3〜3.0μmの範囲にあり、平均長さが3〜50μmであるものを用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁ワニス。
  4. 請求項1〜のうちいずれかに記載された絶縁ワニスを、銅箔またはキャリアフィルムに塗布して得た絶縁材料を、内層回路板と積層した後、外層面の回路を形成し、内層回路と電気的に接続して作製したことを特徴とする多層プリント配線板。
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