JP3932609B2 - L−リボースの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はL−リボースの製造方法に関する。L−リボースは非天然糖であり、RNA構成成分である天然糖D−リボースと鏡像関係にあるため、核酸系抗ウイルス薬中間体として近年着目され、その安価な供給が望まれている。
【0002】
【従来の技術】
L−リボースの製造方法はこれまでに、幾つか報告されている。
2−アリル−オキシベンズイミダゾールとL−グルタルアルデヒドを原料とする方法〔Chemistry Letters, 1005(1981)]、
(s)−ピナンジオール(αs)−α−ブロモボロン酸エステルを用いた増炭反応による方法〔J. Org. Chem., 52, 5116(1987)]、
2,3−o−シクロヘキシリデン−(D)−グリセルアルデヒドとポリマー担持されたジオキサボロールとの縮合反応を第一工程とする方法〔Carbohydrate Research, 164, 123(1987)]
等が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの方法は、高価な原料および/または複雑な工程を経て低収率で得られる原料を用い、さらに目的L−リボースを得るためには多段階の工程を経るため、選択率および収率は満足のいくものではなく、実用的ではない。
また、L−アラビノースをモリブデン酸(IV)水溶液中で加熱することにより、L−アラビノースの2位水酸基のエピマー化反応が起こり、L−リボースが生成することが知られている〔Chem. Zvesti., 27, 547(1973)〕。この製造方法は天然糖であり比較的安価なL−アラビノースを原料として1工程でL−リボースが得られるものの、原料転化率が低く、また他の部位の水酸基も同時にエピマー化したL−キシロース、L−リキソース等が相当量副生する結果、L−リボースの収率が低くさらにはL−キシロースおよびL−リキソースとL−リボースの分離が困難なことから工業的製造方法としては満足のいくものではない。
【0004】
また、D−マンノースあるいはD−グルコース等の幾つかの糖と等モルの〔Ni(H2O)2(tmen)2]Cl2 錯体(上記、tmenは、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミンの略称であり、以下同様に記載する)を加温処理することによりD−マンノース−ニッケル−tmen錯体あるいはD−グルコース−ニッケル−tmen錯体が生成し、これを加水分解することにより対応するエピマー、例えばD−グルコースからはD−マンノースが、またD−マンノースからD−グルコースが得られることは既に報告されている〔J. Chem. Soc, Chem. Commun., 1001(1986) および659(1987)]。また、本論文において〔Ni(H2O)2(tmen)2]Cl2 錯体より活性は劣るものの、対応するCo2+、 Sr2+およびCa2+錯体も同様なエピマー化反応を誘起することが報告されている。
【0005】
該文献の記載によればニッケル−糖錯体の加水分解には希硫酸水溶液が使用され、さらに陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂で処理した後の反応液の原料糖およびエピマー化された糖の組成比は多くて1:1程度であり、コバルト、ストロンチウム、カルシウムの場合さらにエピマー化された糖の組成比は低く、原料糖の転化は充分とはいえない。また、エピマー化糖と原料糖を分離する工業的に難しい工程が必須となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
L−リボースの製造において、最も有利と考えられるL−アラビノースのエピマー化反応のモリブデン酸(IV)を用いた従来技術においては、原料転化率が低く、さらには分離困難なL−キシロースおよびL−リキソース等が副生し、実用的ではない。
本発明の目的は原料転化率が高く、不純物の副生が少ないL−リボースの経済的な製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、安価なL−アラビノースを高転化率でエピマー化し、さらにL−キシロース、L−リキソース等が副生することなく高選択率でL−リボースを製造する手法を種々検討した結果、まずニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた金属の化合物をジアミンの存在下、L−アラビノースと錯化させることにより、錯体内で速やかにエピマー化が起ってL−リボース錯体となり、この錯体から生成L−リボースを遊離させることにより効率よくL−リボースが得られることを見い出した。
【0008】
上記に鑑み、金属−L−リボース錯体の生成量を増加する手段ならびにこの錯体からL−リボースを効率よく遊離させる方法を検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、L−アラビノースに(a)ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた二価金属の化合物と(b)ジアミン化合物を添加した後、(c)蓚酸、アントラニル酸、ジメチルグリオキシム、オキシンから選ばれた化合物を添加し、L−アラビノースをエピマー化してL−リボースを製造する方法であって、(a)ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた二価金属の化合物はL−アラビノース1モルに対し、1.5〜10モルの割合で用いられることを特徴とする方法に存する。以下、本発明のL−リボースの製造方法を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
(反応試剤)
本発明に用いられるニッケル化合物は、例えば、二価のニッケル化合物であり、具体的には、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケルなどの無機塩類;ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケルなどの有機酸塩類が挙げられ、またこれらニッケル塩の水和物および1,2−ジメトキシエタン等のエチレングリコールのジアルキルエーテルあるいは次式(1)で示されるジアミン化合物
【0010】
【化2】
【0011】
〔式(1)においてR1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜16のアリール基より成る群から選ばれ、かつR1 、R2 、R3 およびR4 が同時に2以上水素原子になることはない。〕
が配位したものも含まれる。さらにアセチルアセトナトニッケル(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトニッケル(II)、ジシクロペンタジエニルニッケル(II)およびテトラメチルヘプタンジオネートニッケル(II)等の錯化合物が挙げられる。これらの中でも塩化ニッケル・六水和物が好ましい。
【0012】
本発明に用いられるコバルト化合物は、例えば、二価のコバルト化合物であり、具体的には、フッ化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、過塩素酸コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、チオシアン酸コバルト、タングステン酸コバルト、セレン酸コバルトなどの無機塩類;蓚酸コバルト、酢酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩類が挙げられ、またこれらコバルト塩の水和物および1,2−ジメトキシエタン等のエチレングリコールのジアルキルエーテルあるいは上記式(1)で示されるジアミン化合物が配位したものも含まれる。さらにアセチルアセトナトコバルト(II)、ベンゾイルアセトナトコバルト(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトコバルト(II)、コバルト(II)フタロシアニン、ジシクロペンタジエニルコバルト(II)およびコバルト(II)テトラフェニルポルフェリン等の錯化合物が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられるストロンチウム化合物は、例えば、二価のストロンチウム化合物であり、具体的には、フッ化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウムなどの無機塩類;蓚酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、2−エチルヘキサン酸ストロンチウム、1−シクロヘキシルブタン酸ストロンチウム、ネオデカン酸ストロンチウムなどの有機酸塩類が挙げられ、またこれらストロンチウム塩の水和物および1,2−ジメトキシエタン等のエチレングリコールのジアルキルエーテルあるいは前記(1)で示されるジアミン化合物が配位したものも含まれる。さらにアセチルアセトナトストロンチウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトストロンチウム(II)およびストロンチウム(II)イソプロポキシド等の錯化合物が挙げられる。
【0014】
本発明に用いられるカルシウム化合物は、例えば、二価のカルシウム化合物であり、具体的には、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヒ酸カルシウム、ボロン酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、クロム酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、セレン酸カルシウムなどの無機塩類;蓚酸カルシウム、酢酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、イソ酪酸カルシウム、ネオデカン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなどの有機酸塩類が挙げられ、またこれらカルシウム塩の水和物および1,2−ジメトキシエタン等のエチレングリコールのジアルキルエーテルあるいは前記式(1)で示されるジアミン化合物が配位したものも含まれる。さらにアセチルアセトナトカルシウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトカルシウム(II)およびカルシウム(II)メトキシド等の錯化合物が挙げられる。
【0015】
これら金属化合物(a)とL−アラビノース錯体およびL−リボース錯体の平衡値は添加するニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた金属化合物の量に依存するため、反応に用いられるこれら金属化合物(a)の量はL−アラビノース1モルに対して1モルを越える量用いることが好ましい。該モル比が1以下であるとL−アラビノースの転化率が低くL−アラビノースとL−リボースの分離が困難であり、あまり大きすぎると触媒分離操作が繁雑であり、かつ経済性にも問題がある。反応温度等の条件により一概に規定できないが特に好ましくは1.5〜10の範囲であり、更に好ましくは1.5〜2.5までの範囲である。
【0016】
これら金属化合物(a)は、使用する溶媒への溶解度を考慮し適宜選択可能であるが溶媒への溶解度の大きさおよび経済性の見地から塩化ニッケル六水和物、塩化コバルト六水和物、塩化ストロンチウム六水和物および塩化カルシウム四水和物が好ましい。塩化ニッケル六水和物は溶媒への溶解度の大きさ、入手の容易さの他、高いL−アラビノース転化率で目的L−リボースが得られるため特に好ましい。
本発明の方法ではニッケル化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物およびカルシウム化合物は、単独で使用しても良いし、二種以上を、同時に用いても良い。
本発明で使用されるジアミン化合物(b)は特に限定されるものではないが、好ましいものとして、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0017】
【化3】
【0018】
〔式(1)においてR1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜16のアリール基より成る群から選ばれ、かつR1 、R2 、R3 およびR4 が同時に2以上水素原子になることはない。〕
【0019】
ここで、アルキル基とは、C1 〜C10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル基等が例示できる。シクロアルキル基とは、C3 〜C10のシクロアルキル基を示し、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が例示できる。またアリール基は、C6 〜C16のアルキル置換芳香族化合物であり、具体的にはフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル基等が例示できる。
【0020】
反応に用いられるジアミン化合物(b)の量は、(a)金属化合物に対してモル比で0.1〜10、好ましくは1〜5である。
一般に、糖−金属(ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウム化合物)錯体の両者の結合は強固であり、この錯体からL−リボースを遊離させるためには、相当量の希硫酸水溶液が必要となる。さらに、希硫酸水溶液を大量に使用した場合においても、糖−金属錯体と遊離糖の平衡は遊離糖側に偏らず、その後の処理に使用したイオン交換樹脂に糖−金属錯体は吸着されるのでエピマー化糖の収率は大きくは向上しないこと、また等モル程度使用した金属化合物(a)ならびにその対イオンを完全に反応液から除去するためには相当量の陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が必要なことから、後述する多座配位性化合物(c)を、金属化合物(a)及びジアミン化合物(b)の添加後に加えることが好ましい。
【0021】
該多座配位性化合物の添加時期は、L−アラビノースと金属化合物(a)及びジアミン化合物(b)によるエピマー化の反応が進行した時期であれば、特に限定されないが、L−リボースの収率の観点からは、平衡状態に達した後に添加することが好ましい。本発明の製造方法によると、反応は速やかに進行し、平衡状態に到達することから多座配位性化合物(c)の添加時期は具体的には、反応温度0〜30℃で0.5〜5時間後に添加することが好ましく、1〜2時間後に添加することが特に好ましい。また、反応温度30〜100℃で0.01〜2時間後に添加することが好ましく、0.1〜1時間後に添加することが特に好ましい。添加時期が早いと、L−アラビノースの転化率が若干低くなり、また添加時期が遅いとL−アラビノースの転化率、L−リボースの収率は変わらないので経済的に得策ではない。
多座配位性化合物(c)は、金属−L−リボース錯体に対し配位子交換を起こし、中心金属により強固に配位し、反応溶液に不溶な沈澱を形成し、金属が平衡系から外れることにより遊離L−リボースの生成量を増加させる。
【0022】
本発明に用いられる多座配位性化合物(c)の配位座数は、通常、2または4である。2座配位性化合物としてはいわゆるキレート配位子が、また4座配位性化合物としてはフタロシアニン類等が挙げられる。
2座配位性化合物を配位原子の種類によって具体的に例示すると、(1)N,N配位性化合物:ジメチルグリオキシム等のα−ジオキシムおよび1,10−フェナントロリン(2)N,O配位性化合物:α−ベンゾインオキシム等のモノオキシム類、オキシン、アントラニル酸およびニトロソナフトール(3)N,S配位性化合物:ジチゾンおよび8−メルカプトキノリン(4)O,O配位性化合物:テノイルトリフルオロアセトン等のβ−ジケトン類、アリザリンS等のヒドロキシルアントラキノン類および蓚酸(5)O,S配位性化合物:チオグリコール酸、4−メチル−1,2−ジメチルカプトベンゼン等のジチオールおよびジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム等が挙げられる。
また4座配位性化合物としてはフタロシアニン、フタロシアニンテトラスルホン酸ナトリウム、テトラキス(4−クミルフェノキシ)フタロシアニン等のフタロシアニン類、オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン等のナフタロシアニン類およびエチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0023】
これら多座配位性化合物(c)は、L−アラビノース溶液に、金属化合物(a)およびジアミン化合物(b)を添加し、所定の温度、時間で金属−L−リボース錯体を生成した後、反応液に添加する方法で使用される。
ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムの金属と多座配位性化合物との錯体の沈澱形成を促進する目的で酸または塩基を反応液に添加してもよい。添加する酸あるいは塩基は、添加する多座配位性化合物(c)と金属化合物(a)との錯体形成に最適なpH範囲により決まり一概には規定できないが、通常は弱酸性から弱塩基性の範囲(pH4〜pH10)に反応液が保たれる量で添加することが望ましい。また、L−リボースが可溶な水等の溶媒を同時添加して使用しても良い。
【0024】
使用する溶媒、ジアミン化合物等により一概に規定できないが、蓚酸、ジメチルグリオキシム、1,10−フェナントロリン、オキシン、アントラニル酸、ジチゾン、8−メルカプトキノリン及び上記4座配位性化合物が、これら酸、塩基を添加することなく金属錯体の沈澱を形成し、良好な収率でL−リボースが得られるため好ましい。このうち、金属錯体形成の容易さおよび経済性の面から蓚酸、アントラニル酸、ジメチルグリオキシム、オキシン等が特に好ましい。
用いられる多座配位性化合物の量は、2座配位性化合物の場合、金属錯化合物に対してモル比で1〜10の範囲、好ましくは2〜5の範囲である。また、4座配位性化合物の場合、金属錯化合物に対してモル比で0.5〜5、好ましくは1〜2.5の範囲である。
【0025】
(反応溶媒)
本発明においては、反応系を均一にし、反応速度の向上あるいは反応操作を容易ならしめる目的で適当な極性溶媒、例えば、水;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド;スルホラン;N−メチルピロリドンもしくはアルコール類を反応溶媒として用いることができる。特に好ましい溶媒は、アルコール類であり、高いL−リボース収率が得られる。溶媒として用いるアルコールとしては、特に制限はなく経済的に有利なものであればよい。代表的なアルコール類の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、i−ブタノール、tert−ブタノール等の脂肪族1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族2価アルコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
【0026】
(反応方法・反応条件)
反応はL−アラビノース、ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた金属化合物(a)とジアミン化合物(b)を溶媒に溶解した溶液を反応装置に仕込み、充分攪拌することによって行なわれる。反応温度は0〜150℃、好ましくは20〜80℃の範囲である。反応温度を0℃より低くすると、L−リボース錯体の形成に長時間要し得策ではない。150℃より高くすると反応選択率の低下が起る傾向にある。反応時間は使用する金属化合物、ジアミン化合物および反応条件により異なるが、通常は数分から数時間で金属−L−アラビノース錯体と金属−L−リボース錯体の平衡組成に到達する。この溶液に、多座配位性化合物(c)を添加、溶解後、充分攪拌することにより生じた不溶の金属錯体をついで濾過により除去する。この際、遊離L−リボースを溶解しかつ生成金属錯体が難溶である水等の媒質を添加することが得策であり、この場合反応釜効率の向上および金属錯体の生成促進のため反応液を濃縮してもよい。
【0027】
本工程により金属−L−リボース錯体からL−リボースが遊離し、また金属は、ほぼ除去される。その後の精製処理は特には必要ないが、引き続き、残存する微量の金属および金属化合物の対アニオンを完全に除去するため、強酸性陽イオン交換樹脂(H型)および塩基性陰イオン交換樹脂(OH型ないしはHCO3 型)で処理することが特に好ましい。イオン交換樹脂での処理は、流動床、固定床式あるいは攪拌式等、一般に用いられる手法を使用することができる。
本製造方法により得られた反応液中には、従来知られているモリブデン酸(IV)を用いたL−アラビノースのエピマー化反応の場合に副生するL−キシロース、L−リキソース等が全く存在せず、未転化のL−アラビノースとL−リボースのみが存在し、L−アラビノースも分離に支障のないほど減じられているので、精製処理を行う場合には、再結晶あるいは、カルシウムを担持した強酸型イオン交換樹脂を用いたカラム精製にて高純度のL−リボースが単離可能である。
このL−リボース(2)は、次に示す工程を経て、最終目的物の核酸系抗ウィルス薬(6)に変換される。
【0028】
【化4】
【0029】
【実施例】
以下に実施例、比較例および参考例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
尚、反応液中の生成物は、液体クロマトグラフィーを用い、N−メチルピロリドンを内部標準物質とした内部標準法によって定量分析し、下式により収率、転化率および組成比を求めた。
【0030】
【数1】
【0031】
(比較例1)
冷却管および温度計を付した50mlの3口フラスコ内に、攪拌子、モリブデン酸ナトリウム・二水和物0.97g(4.01mmol)および脱イオン水30mlを入れ均一な溶液にした。これにL−アラビノース305.8mg(2.04mmol)を入れ、攪拌して均一にした後、60℃で4.5時間反応を実施した。
反応器を冷却し反応液を得た。液体クロマトグラフィーによって生成物を定量分析した結果、未反応のL−アラビノース226.7mg(1.51mmol)、L−リボース21.3mg(0.14mmol)およびL−キシロース、L−リキソース併せて5.6mg(0.04mmol)が生成していた。L−リボース収率は7.0%、L−アラビノース転化率は25.9%、組成比=1:0.09であった。
【0032】
(実施例1)
冷却管および温度計を付した300mlの3口フラスコ内に、攪拌子、塩化ニッケル・六水和物9.51g(40.0mmol)およびメタノール157mlを入れ均一な溶液にした。これにテトラメチルエチレンジアミン4.43g(38.1mmol)およびL−アラビノース3.02g(20.1mmol)を入れ、均一にした後、60℃で0.1時間攪拌した。反応器を冷却した後、反応液を1リットル容器に移した。これに希硫酸(550mL)を加えpHを6〜6.5に保ちながら25℃で5時間攪拌した。これを強酸性陽イオン交換樹脂「ダイヤイオン」”SK1BH”(三菱化学社製)360mlおよび強塩基性イオン交換樹脂「ダイヤイオン」”SAN1”(三菱化学社製)360mlを充填したカラムに通した。
得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって定量分析した結果、未反応のL−アラビノース184.1mg(1.23mmol)、L−リボース1.21g(8.05mmol)が生成していた。L−リボース収率は40%、L−アラビノース転化率は93.9%、組成比=1:6.5であった。
【0033】
(実施例2)
塩化ニッケル・六水和物の使用量を4.62g(19.4mmol)に変更した他は実施例1と同量のメタノール、テトラメチルエチレンジアミンおよびL−アラビノースを用い実施例1と同じ操作および条件で反応を実施し、後処理を行った。得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって生成物を定量分析した結果、未反応のL−アラビノース465.4mg(3.10mmol)、L−リボース0.80g(5.33mmol)が生成していた。L−リボース収率は26.7%、L−アラビノース転化率は84.5%、組成比=1:1.7であった。
【0034】
(実施例3)
冷却管および温度計を付した300mlの3口フラスコ内に、攪拌子、塩化ニッケル・六水和物9.51g(40.0mmol)およびメタノール157mlを入れ均一な溶液にした。これにテトラメチルエチレンジアミン4.43g(38.1mmol)およびL−アラビノース3.02g(20.1mmol)を入れ、均一にした後60℃で0.1時間攪拌した。反応器を冷却した後反応液を1リットル容器に移した。これに希硫酸(550mL)を加えpHを6〜6.5に保ちながら25℃で1時間攪拌した。これにアントラニル酸13.89g(101.3mmol)を添加しさらに0.6時間攪拌を継続した。生成した沈澱を濾去し、濾液を実施例1と同様の強酸性陽イオン交換樹脂360mlおよび強塩基性イオン交換樹脂360mlを充填したカラムに通した。
得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって定量分析した結果、未反応のL−アラビノース221.9mg(1.48mmol)、L−リボース1.64g(10.92mmol)が生成していた。L−リボース収率は54.3%、L−アラビノース転化率は92.7%、組成比=1:7.4であった。
【0035】
(実施例4)
冷却管および温度計を付した300mlの3口フラスコ内に、攪拌子、塩化ニッケル・六水和物9.51g(40.0mmol)およびメタノール157mlを入れ均一な溶液にした。これにテトラメチルエチレンジアミン4.43g(38.1mmol)およびL−アラビノース3.02g(20.1mmol)を入れ、均一にした後60℃で0.1時間攪拌した。反応器を冷却した後反応液を1リットル容器に移した。これに希硫酸(550mL)を加え反応液(pH10)を塩基性からpH7.5〜8にし、25℃で1時間攪拌した。これにジメチルグリオキシム9.85g(84.8mmol)を添加しさらに1.5時間攪拌を継続した。
生成した沈澱を濾去し、濾液を実施例1と同様の強酸性陽イオン交換樹脂360mlおよび強塩基性イオン交換樹脂360mlを充填したカラムに通した。得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって定量分析した結果、未反応のL−アラビノース197.8mg(1.32mmol)、L−リボース1.54g(10.26mmol)が生成していた。L−リボース収率は51.1%、L−アラビノース転化率は93.5%、組成比=1:7.8であった。
【0036】
(実施例5)
冷却管および温度計を付した300mlの3口フラスコ内に、攪拌子、塩化ニッケル・六水和物9.51g(40.0mmol)およびメタノール157mlを入れ均一な溶液にした。これにテトラメチルエチレンジアミン4.43g(38.1mmol)およびL−アラビノース3.02g(20.1mmol)を入れ、均一にした後60℃で0.1時間攪拌した。反応器を冷却した後反応液を1リットル容器に移した。これに水(550mL)を加え25℃で1時間攪拌した。蓚酸・二水和物10.59g(84.0mmol)を添加しさらに2時間攪拌を継続した。
生成した沈澱を濾去し、濾液を実施例1と同様の強酸性陽イオン交換樹脂360mlおよび強塩基性イオン交換樹脂360mlを充填したカラムに通した。得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって定量分析した結果、未反応のL−アラビノース275.99mg(1.84mmol)、L−リボース1.36g(9.08mmol)が生成していた。L−リボース収率は45.2%、L−アラビノース転化率は90.9%、組成比=1:4.9であった。
【0037】
(実施例6)
冷却管および温度計を付した3リットルの3口フラスコ内に、攪拌機、塩化ニッケル・六水和物92.6g(389.7mmol)およびメタノール1リットルを入れ均一な溶液にした。これにテトラメチルエチレンジアミン91.8g(789.9mmol)およびL−アラビノース60.5g(402.7mmol)を入れ、攪拌機を用いて均一にした後、60℃で1.5時間反応を実施した。反応器を冷却した後減圧下反応液よりメタノールを1.2リットル留去した。これに希硫酸(1.8リットル)を加えpHを6〜6.5に保ちながら25℃で1時間攪拌した。この溶液を実施例1と同様の強酸性陽イオン交換樹脂8.4リットルおよび強塩基性イオン交換樹脂3.3リットルを充填したカラムに通した。得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって定量分析した結果、未反応のL−アラビノース1.33g(8.87mmol)、L−リボース3.03g(20.14mmol)が生成していた。L−リボース収率は5.0%、L−アラビノース転化率は97.8%、組成比=1:2.3であった。
【0038】
(実施例7)
冷却管および温度計を付した3リットルの3口フラスコ内に、攪拌機、塩化ニッケル・六水和物189.9g(798.9mmol)およびメタノール2リットルを入れ均一な溶液にした。これにテトラメチルエチレンジアミン90.5g(778.8mmol)およびL−アラビノース75.0g(499.2mmol)を入れ、攪拌機を用いて均一にした後、60℃で0.5時間攪拌した。反応器を冷却した後減圧下反応液よりメタノールを1.5リットル留去した。残留液にアントラニル酸240g(1.75mol)および水2.2リットルを添加し、さらに1時間攪拌を継続した。
生成した沈澱を濾去し、濾液を実施例1と同様の強酸性陽イオン交換樹脂2リットルおよび強塩基性イオン交換樹脂1.5リットルを充填したカラムに通した。得られた溶液を液体クロマトグラフィーによって定量分析した結果、未反応のL−アラビノース5.14g(34.27mmol)、L−リボース23.72g(157.9mmol)が生成していた(組成比=1:4.6)。
【0039】
この溶液を減圧下40mlまで濃縮し、内径9.8cm、長さ103cmの円筒管にカルシウム担持強酸型イオン交換樹脂「ダイヤイオン」”UBK535”(三菱化学社製)を充填した流通管に流した。流通液は脱イオン水を用い最初の15分を空時速度(SV:h-1)0.11、15分から1.5時間を空時速度0.21、1.5時間以降、空時速度0.31で展開した。1〜1.8時間後に得られた流出液をエタノールで再結晶し、純度99.5%のL−リボース18.75gが白色結晶として得られた(収率25%)。
【0040】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、L−アラビノースから、モリブデン酸(IV)を用いる従来の方法に比し、高い転化率および収率でL−リボースを得ることができる。また、原料L−アラビノースの転化率が高く、さらにL−リキソースおよびL−キシロースが副生しないことからL−リボースの単離が容易である。
Claims (2)
- L−アラビノースに(a)ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた二価金属の化合物と(b)ジアミン化合物を添加した後、(c)蓚酸、アントラニル酸、ジメチルグリオキシム、オキシンから選ばれた化合物を添加し、L−アラビノースをエピマー化してL−リボースを製造する方法であって、(a)ニッケル、コバルト、ストロンチウムおよびカルシウムより選ばれた二価金属の化合物はL−アラビノース1モルに対し、1.5〜10モルの割合で用いられることを特徴とする方法。
- (a)ニッケル化合物が、塩化ニッケル・六水和物である請求項1に記載の製造方法。
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