JP3932327B2 - ペースト状無機粉体樹脂組成物及びその焼結体の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性焼結体用のペースト状無機粉体樹脂組成物に関し、より詳細には、誘電体、強誘電体、光半導体又は強靱性体等の機能性無機粉体と有機バインダーとを含有するペースト状樹脂組成物が、無溶剤型であって、塗布性、形体賦形性、焼結性に優れ、基板上等に塗布・焼結させた機能性焼結体及びその層を形成させるペースト状無機粉体樹脂組成物に関する。
また、本発明は、このペースト状無機粉体樹脂組成物を用いて機能性焼結体又はその層の形成方法及びその機能性焼結体が誘電性ガラス体であるプラズマディスプレイパネル板の製造方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エレクトロニクス機器の多機能化、高性能化、小型・薄型化等に伴い、その中核を担う半導体デバイスは、各種のエレクトロニクス製品、各種の製造工程に用いる機械装置に、又は自動車、飛行機、船舶、エアコン、炊飯器、VTR等において、コンピュータ(マイコン)等のメモリに、ロジック及びアナログに多種多様のICチップとして組み込まれている。
【0003】
また、近年の情報化社会への急速な進展に伴って、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)は、電話、オーディオ、DVD、サーバ等に、CCD(固体撮像素子)は、VTR、デジタルカメラ、胃カメラ、人工衛星に、また、プリンター、ファクシミリ、複写機等の電子写真画像形成装置等に、また、フラッシュメモリは、携帯電話、電子手帳、ICカード等に、更には、モデム用ICは、情報通信、インターネット等のように挙げることができる。
【0004】
このようにICチップ、それを用いる周辺機器には、各種の機能を発揮させるエレクトロニクス部材が機能性部材として用いられている。また、このような部材の機能特性を、電気的に、絶縁性、誘電性、強誘電性、半導体性又は導電性等に分類することができる。
【0005】
また、このような機能性部材を実用に供するには、その機能材が耐熱性で、機械的に耐久性(強度、硬さ、耐擦傷性又は強靱性)であることが望まれる。そのためから、これらの耐熱、機械的耐久性等を兼ね備えた機能性ガラス材や、機能性セラミックス材が、絶縁体層、誘電体層、絶縁体層−誘電体層、絶縁体層−誘電体層−導電体層、絶縁体層−誘電体層−導電体層−絶縁体層、絶縁体層−誘電体層−導電体層−誘電体層等として単独材、または、積層複合材として広く用いられている。
【0006】
例えば、情報を画像表示させて伝達させるディスプレイ(画像表示装置)において、従来のCRTディスプレイに代替できる液晶ディスプレイ(LCD)等も、その画像表示面の大型化、高精細化、高精彩化、広視野角化、高画質化等が求められている。
このような中で、これらを実現させる可能性が高く、従来のCRTディスプレイに代替できるディスプレイとして、プラズマディスプレイ(PDP)や、正面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SCE)等のフラットパネルディスプレイ(平面画像)が挙げられる。
【0007】
このようなディスプレイに用いられているガラスパネル基板面には、例えば、CVD・焼結法、スパッタ法、又は誘電体ペーストを塗布・焼結法等で、誘電体層が薄膜形成されている。また、この焼結誘電体層上に放電空間を仕切る焼結誘電体の隔壁パターンが設けられている。また、強誘電体層としては、積層圧電セラミックス、積層セラミックコンデンサ等が挙げられる。また、ディスプレイパネルの外表面に光半導体膜を形成させて防汚性を発揮させたり、また、基材面に抗菌性を付与させる光半導体膜が形成されている。更には、各種の基板、基材表面の機械的耐久性を向上させるためから、例えば、強靱性等の機械的強度を付与させるセラミックス層が施されている。
【0008】
このような状況にあって、例えば、特開平10−144213号公報には、プラズマディスプレイ用のガラス基板上に設ける誘電性部材を焼結形成させるに用いるアルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、ガラス粉末及び溶剤等からなるアルカリ可溶型感光性ガラスペースト組成物が記載されている。
【0009】
また、特開平11−323147号公報には、プラズマディスプレイ用のガラス基板上に焼結形成させる誘電性部材として、ガラス及びセラミックスの微粒子と、酸価が60以下のアクリル系共重合体のオリゴマー又はポリマーを含有する感光性有機成分とを含有する誘電体ペーストが記載されている。
【0010】
更には、特開平6−104578号公報には、絶縁層とする高誘電率又は低誘電率の誘電体層形成用のグリーンシートに代わって、ガラス、アルミナ等の無機粉体と、メチルメタクリレートと光重合単量体ジエチレングリコールジアクリレート及び光重合開始剤等を有機バインダーとする、スクリーン印刷法や、バーコーダー塗布法で形成できる感光性樹脂バインダーの結晶化ガラスペーストが記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、各種のエレクトロニクス製品及びその周辺機器用として、例えば、基板上に形成された絶縁体膜、誘電体膜、コンデンサ用焼結体膜、圧電体膜、焦電体膜、電磁波遮蔽膜、熱伝導性膜等の機能性セラミックス層からなる機能性部材が用いられている。
そこで、各種の基板上や基材面に各種の機能性セラミックス層を形成させるには、既に上述した如く、CVD法、スパッタ法等による薄膜層を形成させるか、基板上に機能性無機粉体粒子を溶剤、バインダー樹脂等でスラリー化させ、このスラリーを用いてグリーンシートを作成するか、又はそのペーストを塗布させた後、乾燥、キュア、プレー焼成させて溶剤や、バインダー樹脂等を熱履歴下に除去させ、焼結させて焼結機能層の単層又は積層体を形成させている。
【0012】
また、このようなスラリーや、ペーストに含有されている溶剤は、機能性無機粉体やバインダー樹脂の分散媒体として用いられていて、特に、スラリーの流動化剤であって、ペーストの塗布付与材である。また、溶剤種の選択は、良好なシートの作成や、ペーストに良好な塗布性を発揮させる等の観点からも重要な添加材である。
従って、従来法によって調製される、スラリー化を介して形成される焼結前の前駆体であるグリーンシートや、塗布用のペースト中には、多量の溶剤が含有されている。
【0013】
このように、基板上等に塗布されたペースト層や、積層形成されたグリーンシート層や、そのグリーンシート上に塗布されたペースト層等を焼結させるに際しては、乾燥、キュア、プレー焼成等の焼結前の熱履歴下において、溶剤、バインダー樹脂等を十分に熱分解・揮発させて飛散除去させなければならない。
しかしながら、従来法のように、溶剤を使用する限りにおいて、この処理工程においては、塗布層等に、気泡孔、亀裂、撓み、剥離、収縮等を生じさせる傾向にある。従って、このようなトラブルを防止するためから、必要に応じては、所定の厚さの塗布層を形成させるに多数回に分けて塗布させているのが実状である。
【0014】
また、ペースト等の調製や、ペースト等の焼結前の焼熱履歴下においては、従来法のように溶剤を使用する場合には、その作業環境は、揮発・分解発生する有機物によって、著しく汚染される傾向にあり、労働安全衛生の立場から好ましくない。また、近年の地球環境保全の立場からも、このような有機物を飛散させることは地球環境を汚染させる他に、地球温暖化の要因にもなることから、溶剤型から無溶剤型への転換は、極めて重要な課題である。
【0015】
そこで、従来からこのような分野で使用されている溶剤は、その多くの沸点が80〜260℃の範囲にあって、例えば、n−メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の高沸点の多価アルコール誘導体や、エチルセロソルブ、キシレン等の高沸点の芳香族化合物、乳酸メチル、乳酸エチル、ケトン類、テルペン類が挙げられる。
【0016】
以上から、本発明の目的は、機能性焼結体を形成させる機能性無機粒子を、従来法の溶剤型のペースト状樹脂組成物に代替することができ、無溶剤型であるが塗布性、焼結前の形体賦形性を有している。また、従来法に比べて厚塗り塗布ができ、良好な機能性焼結体又はその積層膜等を形成することができる機能性無機粉体を含有するペースト状無機粉体樹脂組成物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、このようなペースト状無機粉体樹脂組成物を用いて各種の機能性焼結体の形成方法を提供することである。
更にはまた、このような機能性焼結体の形成方法を用いて、その焼結体が誘電体層であるプラズマディスプレイパネル基板の製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した課題に鑑みて、鋭意検討した結果、機能性焼結体を形成させる機能性無機粉体が、誘電体、強誘電体、半導体又は強靱性体等であって、これらのペースト状無機粉体樹脂組成物を調製し、塗布後のそのバインダー樹脂等の揮発・熱分解温度をより低下させることに着目した。
その結果、その樹脂組成物が無溶剤であるが、基板上への塗布性を損ねることなく、しかも、焼結前の熱履歴を通して塗布ペースト層に形体賦形性を維持させることができるペースト状の機能性無機粉体樹脂組成物を見出して、本発明を完成させるに至った。
【0018】
本発明によれば、機能性無機粉体からなる機能性焼結体を形成させるために用いるペースト状の機能性無機粉体樹脂組成物が無溶剤型であるが、基板上への塗布性を損ねることなく、しかも、焼結前のキュア処理を含めての有機ビヒクルを熱履歴下で除去させるプレー焼成を通して塗布ペースト層に形態賦形性を維持させることができる。また、本発明によれば、塗布後のプレー焼成において、形成された塗布層又は型枠流込み形成物に、気泡孔等のピンホールや、クラックや、撓みや又は収縮等を起こさせないことを特徴とする機能性無機粉体を含有する無溶剤型のペースト状無機粉体樹脂組成物(以後、単に機能性樹脂ペーストと称す)を提供する。
【0019】
すなわち、絶縁性(又は誘電体性)、強誘電性、半導体性及び強靱性の機能性無機粉体を含有し、全体をペースト状にするバインダー樹脂成分であるビヒクル成分が、(A)重量平均分子量(Mw)が500〜10000で、ガラス転移温度(Tg)が−80〜50℃の(メタ)アクリル系低重合体と、(B)分子量が100〜5000で、重合性不飽和基を2〜6個有する重合性多官能モノマーとを含有していることを特徴とする。このバインダー樹脂成分であるビヒクル成分中に、(C)平均粒子径が0.1〜20μmである少なくとも1種の機能性無機粒子を含有させてなる機能性樹脂ペーストである。
【0020】
これにより従来のペースト状樹脂組成物とは異なり、(A)と(B)とを含有するバインダー樹脂成分であるビヒクル成分は、そのビヒクルの主成分である(A)なる(メタ)アクリル系低重合体が、特定(Mw)の低重合体又はこの重合体に、(B)なる低分子量の重合性多官能モノマーとを組合わせたことにより、本発明によるビヒクル成分は、全く溶剤成分を含有されていない無溶剤型でありながら、溶剤性を兼ね備えた流動性粘性体であり、また、機能性無機粉体との濡れ性を有し、その機能性樹脂ペーストは良好な塗布性を発揮させる。
【0021】
また、塗布層を形成させているビヒクル成分に機能性無機粉体を含有させた機能性樹脂ペースト層には、(B)なる低分子量体の重合性多官能モノマーを組合わせていることから、塗布後の塗布ペースト層を熱又はUV等で重合硬化(キュア)させることで、塗布後の機能性樹脂ペースト層に優れた形体賦形性を付与させることができる。
【0022】
また、キュア後の塗布層を形成させているビヒクル成分中には、従来法のビヒクルとは異なり溶剤が含有されていない。しかも、そのバインダー樹脂成分であるビヒクル成分が、特定の低重合体からなることから、キュア後において、ビヒクル成分が焼結前のプレー焼成の低温度熱履歴下で熱分解・揮発して容易に飛散除去されるので、塗布ペースト層中には、従来のビヒクルのように熱履歴下に発生しがちなコーキング等による炭素質分等を残留させない。
【0023】
また、本発明によれば、機能性無機粉体を含有する無溶剤型ペースト状無機粉体樹脂組成物を用いてその無機粉体からなる機能性焼結体を形成させる方法において、(A)重量平均分子量(Mw)が500〜10000で、ガラス転移温度(Tg)が−80〜50℃の範囲にある(メタ)アクリル系重合体100重量部当たり、(B)分子量が100〜5000で、重合性不飽和基を2〜6個有する重合性多官能モノマー10〜900重量部と、重合開始剤とを含有する、粘度(23℃)が、0.01〜10[Pa・s]であるビヒクル成分を調製する。このビヒクル成分に、(C)平均粒子径が0.1〜20μmの範囲にある機能性無機物粒子の少なくとも1種以上の機能性無機粉体を含有させて、無溶剤型ペースト状無機粉体樹脂組成物(又は機能性樹脂ペースト)を調製する。次いで、この機能性樹脂ペーストを基板上等に塗布させた後、その塗布層を重合硬化(キュア)させる。次いで、熱履歴下に塗布層中のビヒクル成分を揮発・熱分解させて除去させた後、更なる昇温下に焼結させることを特徴とする機能性焼結体の形成方法を提供する。
【0024】
また、本発明によれば、上述した機能性樹脂ペーストを、上述した機能性焼結体の形成方法を用いて、その機能性粉体に、誘電体ガラス粉体を用いたペースト状ガラス粉体樹脂組成物とすることで、誘電体ガラス膜を施したガラス基板に誘電体ガラスからなる隔壁パターンを設けることを特徴とするプラズマディスプレイパネル基板の製造方法を提供する。
【0025】
すなわち、プラズマディスプレイ基板用のガラス基板上に、(C)なる機能性無機粉体が誘電性ガラスであって、ビヒクルを形成している上述する(B)なる重合性多官能モノマーが、例えば、光重合性であって、UV重合開始剤を含有してなるペースト状ガラス粉体樹脂組成物を塗布させた後、UV重合硬化させて誘電体ガラス成形膜を形成させる。
次いで、この誘電体ガラス成形膜上に、ペースト状誘電体ガラス粉体樹脂組成物で誘電体ガラス隔壁パターンを形成させ、同様にUV重合硬化させた後、この誘電体ガラス成形膜と誘電体ガラス隔壁パターンとを同時に、熱履歴下にキュアさせて、その樹脂組成物を分解除去させる。
次いで、更なる昇温下に同時に焼結させて、焼結誘電体膜を施したガラス基板面に誘電体ガラス隔壁パターンを設けたプラズマディスプレイ基板が得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明による機能性焼結体又はその層を形成させる機能性無機粉体を含有する無溶剤型ペースト状無機粉体樹脂組成物の実施の形態について更に説明する。
【0027】
そこで、本発明による機能性焼結体用の無溶剤型ペースト状無機粉体樹脂組成物(以下、単にペースト状樹脂組成物と称す)においては、そのペーストを形成させるバインダー樹脂組成物(又は有機ビヒクル)が、無溶剤型であって、(メタ)アクリル系の特定の低重合体と、重合性不飽和基を2〜6個有する重合性多官能モノマーとを含有している。
本発明におけるこのビヒクルは、好ましくは、この特定の低重合体100重量部に対して、この重合性多官能モノマーが10〜900重量部の範囲にある樹脂組成物であることが特徴である。
【0028】
本発明においては、この重合性多官能モノマーの含有量が、上述した下限値の10重量部未満であると、塗布後にペースト層を重合硬化させても、その塗布ペースト層の形体を充分に保持させることができずペースト樹脂組成物の賦形性を低下させる。一方、上限値の900重量部を超えても、必要以上に樹脂成分の含有量を増やすだけで、また、増大分に相当する必要以上の賦形性を発揮させないことから、単に経済的に不利になるだけである。
【0029】
また、このビヒクルの樹脂組成物の23℃での粘度が、0.01〜10Pa・s、好ましくは、0.05〜8Pa・sの範囲にある。この粘度が下限値未満であると、充填する無機粉体の表面濡れ性にもよるが、安定したペーストが得られなく、塗布性又は賦形性を低下させるし、一方、上限値を超えると、無機粉体の充填量が著しく低下させるだけでなく、ペーストの塗布性を著しく低下させる。
【0030】
また、本発明においては、既に上述した如く、ペーストを形成させるビヒクルは、無溶剤型であって、形成されたペースト状樹脂組成物は、塗布性、賦形性に優れ、しかも、乾燥・仮焼・焼結を通して、従来のビヒクルに比べて、より低温度である250〜550℃、より好ましくは、300〜500℃の温度範囲において、ビヒクル成分がほぼ完全に、揮発・熱分解させて飛散除去させることを特徴にしている。
【0031】
また、上述したビヒクルの樹脂成分であるこの重合性不飽和基を2個〜6個有する重合性多官能モノマーは、本発明において、熱重合性であっても、UV等の光重合性の何れであっても適宜好適に使用することができるが、好ましくは、熱重合性多官能モノマーよりは、UV等の光重合性多官能モノマーである方が、ペースト状無機粉体樹脂組成物のポットライフの観点から好適である。
【0032】
すなわち、UV重合性であることにより、予め、ビヒクル中に光重合開始剤を含有させておいても、ビヒクルの粘度を経時的に増加させることがなく、本発明によるペースト状無機粉体樹脂組成物のポットライフを損ねさせることがない。しかしながら、この重合性多官能モノマーが、熱重合性モノマーである場合には、熱重合開始剤が予め熱重合性モノマーに経時的に接触することで、ビヒクルの粘度を増加させることから、予め熱重合開始剤を機能性無機粉体の含有する(メタ)アクリル系の低重合体中に溶解させてペーストとした後、塗布する直前にこのペーストに熱重合性モノマーを混ぜて、本発明によるペースト状無機粉体樹脂組成物として使用することができる。
【0033】
このような本発明によるビヒクルを用いたペースト状の機能性無機粉体樹脂組成物中には、後述する各種の機能性無機粉体が、上述した(メタ)アクリル系の低重合体の100重量部当たり、平均粒子径0.1〜20μmの機能性無機酸化物粒子を、100〜9000重量部の範囲で含有させることができる。
そこで、上述した粘度範囲にある本発明によるビヒクルに、上述した範囲で充填できる機能性無機粉体は、得られたペースト状樹脂組成物が上述した塗布性、賦形性を損なわせぬ範囲において、可能な限りその充填量が高めであることが好ましい。
【0034】
このような充填量は、特に、その無機粉体が持つビヒクルとの濡れ性や(その粉体自体が持つ吸油量に依存する)、また、無機粉体の細密充填の観点から、粒子径及び粒度分布や、球状、針状、不定形等の粒子形状等に大きく影響される。従って、一概には特定することができないが、ペースト中の粉体粒子を細密充填状態にさせる観点から、好ましくは、粒子形状がほぼ球状で、上述した平均粒子径を満たし、且つ適度の粒度分布を有する機能性無機粉体が好適である。
【0035】
そこで、既に上述した如く、本発明によるバインダー樹脂組成物を構成する(メタ)アクリル系重合体としては、下記する重合性モノマーの特定の低重合体を適宜に使用することができる。
【0036】
本発明において、このような低重合体用の重合性モノマーとして、例えば、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等を挙げることができ、本発明では、これらの少なくとも1種以上のモノマーを適宜に使用することができる。
【0037】
これらのモノマーからの所定Mwの低重合体を調製するには、例えば、既に本発明者らによって特許出願されている特開2000−128911号公報に記載する塊状重合方法に準拠させることで適宜好適に調製することができる。
すなわち、下記一般式[I]で表される少なくとも1個のチオール基と2級水酸基とを有する化合物を、上述した(メタ)アクリル系モノマーの重合性不飽和化合物の塊状重合用触媒に用いるものである。
【0038】
【化1】
但し、一般式[I]において、R1〜R5 は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数C1〜C12のアルキル基であり、R6たは、水酸基、炭素数C1〜C12のアルコキシ基及び炭素数C1〜C12のアルキル基より選ばれた少なくとも1種類の基である。また、少なくとも1個のチオール基(−SH)と2級水酸基を有していることが特徴である。
これを重合開始剤及び反応制御剤とするこの塊状重合法においては、実質的に無溶剤型で反応を進捗させることができ、上述した反応性の高いモノマーであっても、反応を暴走させることなく重合反応を進捗できる。その結果、分子量分布の狭い低重合体を安定に塊状重合させられる。
【0039】
そこで、一般式[I]で表される化合物として、例えば、チオグリセロール、1−メルカプト−3,4−プロパンジオール、2−メルカプト−3−ブタノール、2−メルカプト−3,4−ブタンジオール、1−メルカプト−2,3−ブタンジオール、1−メルカプト−2−ブタノール、2−メルカプト−3,4,4’−ブタントリオール、1−メルカプト−3,4−ブタンジオール、1−メルカプト−3,4,4’−ブタントリオール等を挙げることができる。本発明おいては、これらの化合物のうち、塊状重合用の触媒として、チオグリセロールが特に好適に用いられる。
【0040】
また、次式[II]で表される有機金属化合物(メタロセン化合物)とチオール類からなる塊状重合用触媒を用いて重合性不飽和化合物を重合させる塊状重合方法に準拠させることでも適宜好適に調製することができる。
【0041】
【化2】
だだし、上記式[II]において、Mは、周期律表4A属、4B属、5A属、5Bの金属、クロム、ルテニウムおよびパラジウムよりなる群から選ばれる金属である。具体的にはMは、チタン、ジルコニウム、クロム、ルテニウム、バナジウム、パラジウム、錫などである。
また、式[II]において、R1およびR2は、それぞれ独立に、
置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、
置換基を有することもある脂環族炭化水素基、
置換基を有することもある芳香族炭化水素基、
置換基を有することもあるケイ素含有基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基、水素原子または単結合のいずれかである。
さらに、R1およびR2が共同して該2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR1またはR2は、共同して環状構造を形成していてもよい。
また、式[II]において、aおよびbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子または水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基であり、nは0または金属Mの価数−2の整数である。
【0042】
式[II]で表される有機金属化合物として、例えば、ジシクロペンタジエン−Ti−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Ti−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,5,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル等のチタノセン化合物;ジシクロペンタジエン−Zr−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Zr−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル等のジルコノセン化合物;ジシクロペンタジエル−V−クロライド、ビスペンタメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド等を挙げることができる。これらの有機金属化合物は単独又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0043】
この有機金属化合物は、触媒量として、重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常、1〜0.001重量部、好ましくは、0.01〜0.005重量部の量で好適に使用される。
また、チオール類としては、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン等のアルキルチオール類、ヘニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、β−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、チオフェーニル等を挙げることができる。この触媒において、有機金属化合物が反応全体に活性化触媒的に作用し、チオール類は重合開始作用があり、チオール類の使用量は、分子量、重合率に影響を与える傾向がある。
従って、有機金属化合物とチオール類との添加割合は、通常、100:1〜1:50000の範囲のモル比で適宜に使用することができる。また、重合速度や重合度を調整する目的で、ジスフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物を併用して使用することができる。
【0044】
本発明においては、既に上述した(メタ)アクリル系重合体としては、好ましくは、重量平均分子量Mwが500〜10000、更に好ましくは、1000〜7000の範囲にある低重合体を適宜好適に使用することができる。
このMwが下限値未満では、重合硬化させた塗布ペースト層の形体賦形性が低下し、また、機能性無機粉体に十分な結着性が発現されない。一方、このMwが上限値を超えると樹脂粘度が高くなり、ペースト粘度を下げるため、モノマー成分を増やしたり、粉体濃度を下げたり等の調整を要して経済的に不利になることから好ましくない。
【0045】
また、本発明においては、この低重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、−80〜50℃の範囲にあることが好適である。このTgがこの範囲から外れると、すなわち、Tgが50℃を超えると重合硬化後の塗膜の可撓性が悪く、また、ビヒクルの粘度が高くなり、スクリーン塗工時の刷毛切れ性、塗工性を低下させる傾向にある。一方、Tgが−80℃より低い場合、重合硬化後の塗膜の形体賦形性が悪く、また、焼成時のフィラー保持性を低下させる等の理由から好ましくない。
【0046】
また、本発明においては、この低重合体の酸価が、好ましくは、60〜180mg・KOH/gの範囲にあることが好適である。
すなわち、本発明においては、既に公知のペースト用バインダー樹脂であって、側鎖にカルボキシル基と不飽和基を有するアクリル系共重合体の低重合体の傾向とは異なり、そのペースト状組成物の経時的な粘度上昇によって、塗布性が損なわれることがない。
特に、本発明においては、用いる機能性無機粉体の表面濡れ性等にも影響されるが、その酸価が上述した範囲から外れると、本発明のペースト状樹脂組成物中の機能性無機粉体に対して、分散剤としての効果を損なう傾向から好ましくない。
【0047】
また、本発明において、ラジカル反応をする重合性不飽和基を複数個(2〜6個)有する重合性多官能モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリススリトールペンタ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等に代表される多官能アクリレートや、これらに対応するメタアクリレートモノマーが挙げることができる。
【0048】
特に、UV硬化型である場合に、光重合開始剤として、ベンゾフェノン、ο−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノアセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジべンジルケトン、フロオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリ)フェニル−ブタン−1、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(ρ−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(ρ−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(ο−メトキシカルボニル)オキシム、ベンゾチアゾールジスルフィド等を挙げることができ、これらの光重合開始剤の1種又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0049】
これらの光重合開始剤は、(B)の100重量部に対して、0.05〜5重量部を添加することができる。
添加量が下限値よりも少ないとペースト状樹脂組成物の光硬化性が低く好ましくなく、また、上限値以上に添加させても添加量の割合ほど光硬化性を向上させることはない。
【0050】
また、必要に応じて、ラジカル反応を誘起させる光重合開始剤に併用させて、光重合開始助剤を用いて、光重合開始反応を促進させ、重合硬化を効率的にすることができる。このような光重合開始助剤として、例えば、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の脂肪族、芳香族アミンを挙げることができる。
【0051】
これらの光開始助剤は、光重合開始剤1重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲で添加できる。
また、このようにペースト状樹脂組成物を感光性樹脂組成物にすることで、レジスト塗布層としてパターン形成をすることができるので、適宜ホトレジスト法による所定のパターン形成をすることができる。
【0052】
このような本発明によるビヒクルを用いることにより、ペースト状の機能性無機粉体樹脂組成物中には、後述する各種の機能性無機粉体を、上述した低重合体の100重量部当たり、平均粒子径0.1〜20μmの機能性無機酸化物粒子を、100〜9000重量部、好ましくは、300〜7000重量部の範囲で含有させることができる。
上述した粘度範囲にある本発明によるビヒクルに、上述した範囲で充填できる機能性無機粉体は、得られたペースト状樹脂組成物が上述した塗布性、賦形性を損なわせない限りにおいて、可能な限りその充填量が高めであることが好ましい。
【0053】
この充填量は、特に、その無機粉体が持つビヒクルとの濡れ性や(その粉体自体が持つ吸油量に依存する)、また、無機粉体の細密充填の観点から、粒子径及び粒度分布や、球状、針状、不定形等の粒子形状等に大きく影響される。
従って、一概には特定することができないが、細密充填の観点から、好ましくは、粒子形状がほぼ球状で、上述した平均粒子径を満たし、且つ適度の粒度分布を有するものが好適である。
【0054】
また、必要に応じて、このビヒクルに他の添加剤として、可塑剤、分散剤、増粘剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤又は熱重合禁止剤等を適宜に添加することができる。
例えば、ペーストの流動性を向上させる目的で添加される可塑剤としては、 ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレーチ、ポリアルキレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、ポリエチレンオキシド等が挙げられ、特に、光硬化性感度を損ねない範囲において添加することができる。
【0055】
<各種の機能性焼結体>
本発明によれば、既に上述した無溶剤型のバインダー樹脂組成物(ビヒクル)に、各種の機能性無機粉体を含有させて、塗布性、賦形性等に優れるペースト状無機粉体樹脂組成物を調製することができる。
このペーストを用いて通常の塗布法によって、各種の基板上に塗布させて、広く実用に供せられている機能性焼結体(又はその層)を形成させることができる。
そこで、このような機能性焼結体としては、例えば、電気的、機械的な機能性部材とすると、その機能特性からすると、絶縁体、誘電体、強誘電体、半導体、及び強靱性体等を挙げることができる。
【0056】
本発明によるペースト状の誘電体無機粉体樹脂組成物を介して、誘電体(又はその層や、膜)を形成させるために、好適な無機酸化物粒子としては、従来から公知である、その焼結温度が低いガラス系から、より焼結温度が高めであるセラミックス系等がある。
前者のガラス系の誘電体無機粉体としては、好ましくは、アルカリ金属や、アルカリ土類金属を実質的に含まれない系であることから、例えば、酸化ビスマス、酸化珪素、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等を主成分とする、ZnO−B2O3−SiO2系、PbO−B2O3−SiO2系、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3系、PbO−ZnO−B2O3−SiO2系等を挙げることができる。
その焼結温度は、550〜600℃であることから、例えば、ガラス基板上に焼き付けて、焼結誘電体層を形成させることができる。そのなかでも、より低温度(500℃以下)の系として、酸化亜鉛を主成分とするZnO−B2O3−SiO2系の誘電体無機粉体を挙げることができる。本発明においては、これらの系のガラス粉末を適宜に用いることができるが、必要に応じて、これらのガラス系を構成するそれぞれの酸化物粒子の組合わせ混合粉体であっても適宜好適に用いることができる。
【0057】
また、必要に応じて、このような低融点ガラスの誘電体ペースト樹脂組成物に、アルミナ等の低誘電率の粉体や、チタン酸バリウム等の高誘電率粉体や、その他の窒化珪素、炭化珪素のセラミックス粉体や、他の高融点ガラス等の単独又は2種以上を組合わせてフィラーとして添加することができる。
【0058】
上述したチタン酸バリウム等の誘電体機能性粉体としては、高誘電率であるペロブスカイト型複合酸化物であるチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ネオジウム等を挙げることができる。また、低誘電率の誘電体機能性粉体としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、コージエライト、結晶化ガラス等を挙げることができる。
このような誘電体層が設けられている基板としては、例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイ基板を挙げることができる。特に、上述したフィラーが白色である場合には、プラズマディスプレイパネルにおいて、表示光の反射を向上させることができて、高い輝度の画像を得ることができる。
【0059】
また、強誘電体層を搭載する各種のエレクトロニックチップ材として、積層セラミックコンデンサ、積層圧電セラミック素子、積層セラミックフィルタ等を挙げることができる。その強誘電体層を形成させるペロブスカイト型複合酸化物粒子としては、例えば、Pb(Zn,Nb)O3、Pb(Fe,Nb)O3、Pb(Fe,W)O3、Pb(Mg,Nb)O3、Pb(Ni,W)O3、Pb(Mg,W)O3、BaTiO3、SrTiO3、CaTiO3、PbTiO3、Pb(Zr,Ti)O3、Ba(Ti,Sn)O3、Bi4Ti3O12、(Ba,Sr、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Zr、Ti)O3、(Ba,Sr、Ca)(Zr、Ti)O3等を挙げることができる。
上述したこれらの各種の機能性焼結体の焼結温度は、通常、700〜1300℃であるが、焼結性、焼結温度の低下、熱膨張率等の改良・改善等から、必要に応じて、既に上述したガラス系誘電体を適宜組合わせ使用することができる。
【0060】
また、半導体酸化物粉体としては、例えば、TiO2、MgO、NiO、Mn2O3(MnO2、MnO)、SnO2、ZnO、Fe3O4、V2O5等が挙げられ、なかでも、TiO2、MgO、NiO、Mn2O3、Fe3O4、Co2O3、その他スピネル型酸化物は温度に敏感な半導体として、その焼結体はサーミスタとして利用される。また、光半導体等の各種のセンサー層として形成させることができる。
【0061】
また、本発明において、機能性無機酸化物粉体の焼結セラミックスとして、例えば、摺動部材として用いられる耐熱安定性に優れた高靱性焼結体として、Y2O3や、CeO2、Al2O3が添加された、Y2O3−ZrO2、Y2O3−ZrO2−Al2O3、Y2O3−CeO2−ZrO2系の部分安定化ジルコニアを用いた焼結セラミックスを挙げることができる。
【0062】
また、このような各種の機能性焼結体(層)を形成させるには、通常、CVD法、スパッタリング法等による薄膜や、セラミックグリーンシートを介しての焼結された機能性単独層や、これらの積重ね又は組合わせ積層体として形成されている。
【0063】
本発明においては、ペースト状無機粉体樹脂組成物を、基板上又は基板用グリーンシート上に、塗布させて塗布層を形成させる塗布法としては、スクリーン印刷法、バーコーター法、 ロールコーター法、スリットダイコーター法、ドクターブレードコーター法等の塗布法が挙げられる。
【0064】
また、これらの中でも、例えば、プラズマディスプレイパネルの隔壁を形成させる方法として、スクリーン印刷法、サンドブラスト法及び感光性ペースト法(ホトレジスト形成法)が挙げられ、適宜好適に使用することができる。
そこで、本発明のように、ペースト状樹脂組成物を感光性樹脂組成物とすることができる場合には、これらの塗布法に係わって、本発明では、好ましくは、レジスト形成法(フォトリソグラフィー)で、塗布・パターン露光させて、現像・キュア・焼結させて機能性焼結層をパターン形成させることができる。
【0065】
<プラズマディスプレイパネル板の製造>
上述した如く、塗布性、賦形性に優れる本発明によるペースト状の誘電体ガラス樹脂組成物を用いて、ガラス誘電体の隔壁が設けられているプラズマディスプレイパネル板の製造方法について以下に説明する。
本発明によるペースト状誘電体ガラス樹脂組成物を用いて、このプラズマディスプレイパネル板を製造するに際して、そのバインダー樹脂組成物の重合硬化が、熱重合硬化性又はUV重合硬化性の何れかであっても、特に限定することなく用いることができるが、好ましくは、隔壁形成をサンドブラスト法によらずに、ホトレジスト形成法を用いられることから、好ましくは、UV重合硬化性である方が、ハンドリング性の観点から好適である。
【0066】
そこで、プラズマディスプレイパネル用の通常の方法で誘電体膜を形成させたガラス基板上に、バーコーター法によって、誘電体ガラス粉体を含有する感光性樹脂組成物をバインダー樹脂で調製したペースト状樹脂組成物を塗布させた層に、隔壁用パターンマスクを介して、UV照射させてUV隔壁パターン硬化させる。
次いで、塗布された未硬化層のペースト状樹脂組成物をエッチングで除去し、隔壁パターンを形成させた。次いで、常温〜200℃の温度で、隔壁パターン層をキュアした後、200〜350℃でバインダー樹脂分を分解除去させる。次いで、500〜600℃の昇温下に、焼結させて、ガラス基板上の誘電体膜に、賦形性、寸法性、密着性の良好な誘電体ガラスの隔壁を形成されたプラズマディスプレイパネル板が得られる。
【0067】
【実施例】
以下に、本発明を更に実施例によって説明するが、本発明はこれらにいささかも限定されるものではない。
【0068】
(参考例1)
バインダー樹脂組成物(ビヒクル)を構成させる(A)(メタ)アクリル系重合体成分を調製する。
撹拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、2−エチルヘキシルメタクリレート100重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に加熱した。
次いで、十分に窒素ガス置換したチオグリセロール7重量部を撹拌下のフラスコ内に添加した。その後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却及び加温を2時間行った。その後続けて、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、冷却及び加温を行いながら、更に重合反応を6時間行い、次いで、アゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を添加し、更に2時間95℃にて重合を行った。
【0069】
上記のようにして合計で10時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にハイドロキノンを0.05重量部添加して反応物(a−1)を得た。
得られた重合反応物(a−1)の単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定した結果、その重合率が99.1%であった。
また、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=3600、Mn=1700であり、分散指数=2.3であり、23℃における粘度が320(Pa・s)である(メタ)アクリル系重合体の低重合体であった。
【0070】
(参考例2)
参考例1において、使用するモノマーをMMA(メチルメタクリレート)、添加するチオグリセロールを23重量部として以外は参考例1と同様にして重合させて反応物(a−2)[(A)(メタ)アクリル系重合体成分])を得た。
得られた重合反応物(a−2)の単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定した結果、重合率が98.7%であった。
また、そのGPCにより測定した分子量は、Mw=1080、Mn=770であり、分散指数=1.4であり、23℃における粘度が2.0(Pa・s)であるメチルメタクリル系重合体の低重合体であった。
【0071】
(参考例3)
参考例1において、チオグリセロールの添加量を3.7重量部とした以外には、参考例1と同様にして重合させて反応物(a−3)[(A)(メタ)アクリル系重合体成分])を得た。
得られた重合反応物(a−3)の単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定した結果、重合率が99.5%であった。
また、そのGPCにより測定した分子量は、Mw=7300、Mn=4200であり、分散指数=1.7であり、23℃における粘度は、980(Pa・s)である(メタ)アクリル系重合体の低重合体であった。
【0072】
実施例1
200mlビーカーに、参考例1で得られた(メタ)アクリル系重合体の低重合体(a−1)50重量部と、重合性多官能モノマーであるエチレングリコールジメタクリレート50重量部とを採り、十分均一になるまで、攪拌混合を行い本発明に用いるアクリル系のバインダー樹脂組成物(ビヒクル)の(b−1)を得た。得られた、ビヒクル(b−1)の粘度は、23℃で0.078(Pa・s)であった。
【0073】
(熱重合性ペースト及びその硬化)
次いで、ガラス粉末として、酸化亜鉛82重量%、酸化ホウ素8重量%、酸化珪素10重量%の組成比のガラスフリット粉体80重量部に、上記ビヒクル(b−1)20重量部と、ラジカル開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノール0.8重量部と、禁止剤としてハイドロキノン0.05重量部とを十分に混練させて、ガラス粉体のペースト状誘電体樹脂組成物(c−1)を調製した。得られたそのペースト(c−1)の粘度は、0.7(Pa・s)であった。
【0074】
次いで、上記ペースト(c−1)をガラス基板上にバーコーターにて、膜厚70μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、120℃で5分間加熱重合硬化を行った。得られた塗膜厚みは67μmと殆ど体積減少もなく、表面のひび割れ等も見られなかった。しかも、その加熱重合硬化に際して、塗布層は流れ崩れることなく良好な形体賦形性を付与させることができた。
【0075】
(UV重合性ペースト及びその硬化)
ガラス粉末として、酸化亜鉛82重量%、酸化ホウ素8重量%、酸化珪素10重量%の組成比のガラスフリット粉体80重量部に、上記ビヒクル(b−1)20重量部と、UVラジカル開始剤としてイルガノックスI−369 0.4重量部と、禁止剤としてハイドロキノン0.01重量部とを混練させて、ガラス粉体のペースト状誘電体樹脂組成物(d−1)を調製した。得られたそのペースト(d−1)の粘度は、0.7(Pa・s)であった。
【0076】
次いで、上記ペースト(d−1)をガラス基盤上にバーコーターにて、膜厚70μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、光源として高圧水銀灯を用い、照射強度214mW/cm2、積算光量1930mJ/cm2に成るよう、塗膜表面から、UV露光を行った。
得られた塗膜厚みは69μmと殆ど体積減少もなく、表面のひび割れ等も見られず、しかも、そのUV重合硬化に際して、塗布層は流れ崩れることなく良好な形体賦形性を付与させることができた。
【0077】
(プレー焼成及び焼結)
次いで、基板上にペーストc−1及びd−1を塗布・熱及びUV重合硬化させた上記の試験体のc−1及びd−1を大気下の常温から350℃まで20分間で昇温させ、350℃で20分間、加熱処理を行った。その結果、各試験体の塗布層中のビヒクルの有機樹脂分を完全に熱分解・揮散除去させることができた。
なお、同様の試験体を別途作成し、同様にして窒素雰囲気下で加熱処理をおこなったが、何れの試験体の塗布層中の有機樹脂分を除去させることができた。
すなわち、加熱処理を通しての目視観察では、塗布層上には、残渣や煤などが見られず、また、その表面及びサンドペーパを掛けて削りとられた表面のそれぞれを、MEKを湿らせたガーゼで拭いたが、ガーゼ上には汚れ成分が付着しなかった。
【0078】
次いで、上記したプレー焼成で有機樹脂分を除去した試験体のc−1及びd−1を、更に、大気下の20分間で350℃から550℃に昇温させて、その温度で35分間保持させて塗布層のガラス粉体を焼結させた。その結果、目視的に焼結層に剥離、亀裂等の異常がなく、良好なガラス粉体の焼結層が得られた。
【0079】
実施例2
200mlビーカーに、参考例2で得られたメチルメタアクリル系重合体の低重合体(a−2)の65重量部と、エチレングリコールジメタクリレート35重量部とを採り、十分均一になるまで攪拌混合させて本発明に用いるアクリル系のバインダー樹脂組成物(ビヒクル)の(b−2)を得た。得られた、ビヒクル(b−2)の粘度は、23℃で0.052(Pa・s)であった。
【0080】
(熱重合性ペースト及びその硬化)
このビヒクル(b−2)20重量部に、実施例1において、ラジカル開始剤を1.2重量部とした以外は、実施例1と同様にしてガラス粉体のペースト状誘電体樹脂組成物(c−2)を調製した。得られたそのペースト(c−2)の粘度は、0.61(Pa・s)であった。
【0081】
次いで、上記ペースト(c−2)をガラス基盤上にバーコーターにて、膜厚70μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、120℃で5分間加熱重合を行った。得られた塗膜厚みは65μmと殆ど体積減少もなく、表面のひび割れ等も見られなく、しかも、その熱重合硬化に際して、塗布層は流れ崩れることなく良好な形体賦形性を付与させることができた。
【0082】
(UV重合性ペースト及びその硬化)
ビヒクル(b−2)20重量部に、実施例1と同様にしてUV重合性のガラス粉体のペースト状誘電体樹脂組成物(d−2)を調製した。得られたそのペースト(d−2)の粘度は、0.62(Pa・s)であった。
次いで、得られたUV硬化性のペースト(d−2)を実施例1と同様にしてガラス基板上にバーコーターにて、膜厚70μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、実施例1と同様の条件で、UV露光を行い塗布ペースト層を重合硬化させた。得られた塗膜厚みは69μmと殆ど体積減少もなく、表面のひび割れ等も見られず、しかも、そのUV重合硬化に際して、塗布層は流れ崩れることなく良好な形体賦形性を付与させることができた。
【0083】
(プレー焼成及び焼結)
次いで、ガラス基板上にペーストc−2及びd−2を塗布・熱及びUV重合硬化させた上記試験体のc−2及びd−2を実施例1と同様の条件でプレー焼成させて、各試験体の塗布層中の有機ビヒクルを除去するための加熱処理(プレー焼成)を行った。その結果、実施例1の試験体と同様に、各試験体の塗布層中のビヒクルの有機樹脂分を完全に熱分解・揮散除去させることができた。
なお、同様の試験体を別途作成し、同様にして窒素雰囲気下で加熱処理をおこなったが、何れの試験体において、その塗布層中の有機樹脂分を除去させることができた。
【0084】
すなわち、実施例1の試験体と同様に、加熱処理を通しての目視観察では、塗布層上には、残渣や煤などが見られず、また、その表面及びサンドペーパを掛けて削りとられた表面のそれぞれを、MEKを湿らせたガーゼで拭いたが、ガーゼ上には汚れ成分が付着しなかった。
また、上記したプレー焼成で有機樹脂分を除去した試験体のc−2及びd−2を実施例1の試験体と同様に焼結させた。その結果、目視的に焼結層に剥離、亀裂等の異常がなく、良好なガラス粉体の焼結層が得られた。
【0085】
実施例3
200mlビーカーに、参考例3で得られたメタクリル系重合体の低重合体(a−3)の70重量部と、エチレングリコールジメタクリレート30重量部とを採り、十分均一になるまで攪拌混合させて本発明に用いるアクリル系のバインダー樹脂組成物(ビヒクル)の(b−3)を得た。得られた、ビヒクル(b−2)の粘度は、23℃で7.3(Pa・s)であった。
【0086】
(熱重合性ペースト及びその硬化)
このビヒクル(b−3)20重量部に、実施例1において、ラジカル開始剤を0.6重量部とした以外は、実施例1と同様にしてガラス粉体のペースト状誘電体樹脂組成物(c−3)を調製した。得られたそのペースト(c−3)の粘度は、7.6(Pa・s)であった。
【0087】
次いで、上記ペースト(c−3)をガラス基盤上にバーコーターにて、膜厚70μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、120℃で5分間加熱重合を行った。得られた塗膜厚みは68μmと殆ど体積減少もなく、表面のひび割れ等も見られなく、しかも、その熱重合硬化に際して、塗布層は流れ崩れることなく良好な形体賦形性を付与させることができた。
【0088】
(UV重合性ペースト及びその硬化)
ビヒクル(b−3)20重量部に、実施例1と同様にしてUV重合性のガラス粉体のペースト状誘電体樹脂組成物(d−3)を調製した。得られたそのペースト(d−3)の粘度は、7.6(Pa・s)であった。
次いで、得られたUV硬化性のペースト(d−3)を実施例1と同様にしてガラス基板上にバーコーターにて、膜厚70μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、実施例1と同様の条件で、UV露光を行い塗布ペースト層を重合硬化させた。得られた塗膜厚みは69μmと殆ど体積減少もなく、表面のひび割れ等も見られず、しかも、そのUV重合硬化に際して、塗布層は流れ崩れることなく良好な形体賦形性を付与させることができた。
【0089】
(プレー焼成及び焼結)
次いで、ガラス基板上にペーストc−3及びd−3を塗布・熱及びUV重合硬化させた上記試験体のc−3及びd−3を実施例1と同様の条件でプレー焼成させて、各試験体の塗布層中の有機ビヒクルを除去するための加熱処理(プレー焼成)を行った。その結果、実施例1の試験体と同様に、各試験体の塗布層中のビヒクルの有機樹脂分を完全に熱分解・揮散除去させることができ、同様に、加熱処理を通しての目視観察や、塗布素中のMEKを湿らせたガーゼでの拭いで、残査、コーキング質が確認されなかった。また、上記したプレー焼成で有機樹脂分を除去した試験体のc−3及びd−3を実施例1の試験体と同様に焼結させた。その結果、目視的に焼結層に剥離、亀裂等の異常がなく、良好なガラス粉体の焼結層が得られた。
【0090】
比較例1
比較例1においては、実施例2において用いたMw1080のメタクリル系重合体の低重合体(a−2)に代えて、Mw500未満のものを用いてビヒクルを調製した。その結果、ビヒクルはしゃぶしゃぶ状で、塗布性が著しく低下し、しかも、溶剤性、塗布後のキュアを最適にさせるため、重合性多官能モノマーをビヒクル成分として組合わせることができず、その結果、ペーストの賦形性を著しく低下させた。
【0091】
比較例2
比較例2においては、実施例3において用いたMw7300のメタクリル系重合体の低重合体(a−3)に代えて、Mw10000を超えるMw10160のものを用いてビヒクルを調製した。その結果、塗布後のペースト層をキュアさせて、塗布ペースト層に形体賦形性を発揮させる多官能モノマーを組合わせ配合量も増加させることになり、ビヒクルコストを経済的に不利にさせるだけでなく、塗布性、粉体の充填量を低下させることになり、そのために溶剤を添加さた溶剤型ビヒクルとなる。
【0092】
実施例4
実施例1において、使用したガラス粉末の代わりにCeO213mol%、ZrO287mol%の組成比の部分安定化ジルコニア100重量部に対して、アルミナ15重量部を混合させた平均粒子径3.5μmの粉体85重量部に、ビヒクル(b−1)20重量部と、UVラジカル開始剤としてイルガノックスI−369 0.4重量部と、禁止剤としてハイドロキノン0.01重量部とを混練させて、部分安定化ジルコニア系粉体のペースト状高強靱性粉体樹脂組成物(d−4)を調製した。得られたそのペースト(d−4)の粘度は、0.78(Pa・s)であった。
【0093】
次いで、上記ペースト(d−4)をアルミナ基板上にバーコーターにて、膜厚50μmに成るように塗布し、窒素雰囲気下で、光源として高圧水銀灯を用い、照射強度214mW/cm2、積算光量1930mJ/cm2に成るよう、塗膜表面から、UV露光を行った。
次いで、大気下又は窒素雰囲気下の常温から350℃まで20分間で昇温させ、350℃で20分間、加熱処理を行った。その結果、各試験体の塗布層中のビヒクルの有機樹脂分を完全に熱分解・揮散除去させることができた。
【0094】
また、UVキュア後の有機ビヒクル除去のプレー焼成の熱履歴下において、塗布層の撓み、崩れ等がなく、塗布層の形体賦形性が良好であつた。
また、この有機ビヒクル除去された後の更なる昇温下(400〜1000℃)で塗布層の形体賦形性を損ねることがなかった。その結果、目視的に焼結層に剥離、亀裂等の異常がなく焼結させることができた。
【0095】
【発明の効果】
以上から、本発明によれば、誘電体等の機能性焼結体の形成用に用いる機能性無機粉体を含有するペースト状樹脂組成物において、そのバインダー樹脂組成物(ビヒクル)は、Mwが500〜10000程度の低重合体の(メタ)アクリル系重合体と、熱硬化又はUV硬化性の低分子量の重合性多官能モノマーとを含有する無溶剤型の流動粘性体である。
【0096】
これによって、本発明によるビヒクルは、無溶剤であるが、溶剤性を兼ね備えた塗布性に優れ、また、塗布後の塗布層が重合硬化されて、機能性無機粉体に賦形性を賦与させる。しかも、低温度で容易に熱分解除去されることから、良好な焼結性を発揮させるビヒクルを提供できる。
その結果、塗布層には、気泡孔や、亀裂や、撓みや、収縮等を防止させられ、更なる昇温下で塗布された機能性無機粉体の燒結性を向上させる。
【0097】
また、従来法の溶剤型のビヒクルに比較して、ペースト中の機能性無機粉体の充填量を高められることで、塗布層のキュア及び焼結させる熱履歴下における熱収縮等を低下させることができ、寸法安定性の焼結体を形成することができる。
【0098】
更にはまた、ペースト調製、その塗布後の熱履歴下における揮発、分解蒸発する有機成分を低下させられることから、これらを扱う作業環境及び地球環境保全の立場から、環境汚染等を低減できるビヒクルを提供できる。
Claims (12)
- 機能性焼結体を形成させるために用いる機能性無機粉体を含有するペースト状無機粉体樹脂組成物であって、
(A)重量平均分子量(Mw)が500〜10000範囲にあって、ガラス転移温度(Tg)が−80〜50℃範囲にある(メタ)アクリル系低重合体と、
(B)分子量が100〜5000で、重合性不飽和基を2〜6個有する重合性多官能モノマーと、
(C)平均粒子径が0.1〜20μmの範囲にある機能性無機粒子の少なくとも1種以上である前記機能性無機粉体とを含有し、
前記(A)の100重量部当たり、前記(B)が10〜900重量部の範囲で含有する粘度(23℃)が0.01〜10[Pa・s]の有機ビヒクル成分に、
前記(C)が100〜9000重量部の範囲で含有する塗布性、賦形性及び焼結性に優れていることを特徴とするペースト状無機粉体樹脂組成物。 - 前記機能性無機粉体が、元素周期表の第IIa及びb族元素、第IIIa及びb族元素、第IVa及びb族元素、第Va及びb族元素、第VIa族元素の群から選ばれる少なくとも1種の無機元素を含む無機粒子であることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 前記機能性無機粉体が、酸化ビスマス、酸化ホウ素及び酸化珪素系、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム及び酸化リチウム系、酸化鉛、酸化ホウ素及び酸化珪素系、又は酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素及び酸化珪素系の群から選ばれる少なくとも1種の誘電体ガラス粒子であることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 前記機能性無機粉体が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸カルシウム、チタン酸ネオジウム又はチタン酸ジルコン酸鉛の群から選ばれる少なくとも1種のペロブスカイト型の強誘電体複合酸化物粒子であることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 前記機能性無機粉体が、請求項3に記載する誘電体ガラス粒子の何れかと、請求項4に記載する強誘電体複合酸化物粒子の何れかとの組合わせであることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 前記機能性無機粉体が、光半導体性の酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 前記機能性無機粉体が、半導体性の酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 前記機能性無機粉体が、部分安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項1に記載のペースト状無機粉体樹脂組成物。
- 機能性無機粉体を含有する無溶剤型ペースト状無機粉体樹脂組成物を用いてその無機粉体からなる機能性焼結体を形成させる方法において、
(A)重量平均分子量Mwが500〜10000で、ガラス転移温度(Tg)が−80〜50℃範囲にある(メタ)アクリル系低重合体100重量部当たり、
(B)分子量が100〜5000で、重合性不飽和基を2〜6個有する光重合性多官能モノマーを10〜900重量部の範囲で含有させて、粘度(23℃)が0.01〜10[Pa・s]範囲にあるビヒクル成分を調製し、
次いで、前記ビヒクル成分に、(C)平均粒子径が0.1〜20μmの範囲にある機能性無機粒子の少なくとも1種以上である前記機能性無機粉体を添加させてペースト状無機粉体樹脂組成物を調製し、
次いで、塗布後の前記ペースト状無機粉体樹脂組成物のグリーンシート層を、UV照射下に重合硬化させ、
次いで、温度250〜550℃の熱履歴下に前記ビヒクル成分を揮発・熱分解させて飛散除去させ、更なる昇温下に焼結させることを特徴とする機能性焼結体の形成方法。 - 機能性無機粉体を含有する無溶剤型ペースト状無機粉体樹脂組成物を用いてその無機粉体からなる機能性焼結体を形成させる方法において、
(A)重量平均分子量Mwが500〜10000で、ガラス転移温度(Tg)が−80〜50℃範囲にある(メタ)アクリル系低重合体100重量部当たり、
(B)分子量が100〜5000で、重合性不飽和基を2〜6個有する光重合性多官能モノマーを10〜900重量部の範囲で含有させて、粘度(23℃)が0.01〜10[Pa・s]範囲にあるビヒクル成分を調製し、
次いで、前記ビヒクル成分に、(C)平均粒子径が0.1〜20μmの範囲にある機能性無機粒子の少なくとも1種以上の前記機能性無機粉体を添加させてペースト状無機粉体樹脂組成物を調製し、
次いで、塗布後の前記ペースト状無機粉体樹脂組成物のグリーンシート相を、温度80〜180℃の加熱下に熱重合硬化させ、
次いで、温度250〜550℃の熱履歴下に前記ビヒクル成分を揮発・熱分解させて飛散除去させ、更なる昇温下に焼結させることを特徴とする機能性焼結体の形成方法。 - 請求項9又は10に記載する機能性焼結体の形成方法において、前記機能性焼結体が、誘電体ガラス粒子及び/又はペロブスカイト型の強誘電体複合酸化物粒子である機能性無機粉体からなることを特徴とする誘電性焼結体の形成方法。
- プラズマディスプレイ基板用のガラス基板上に、請求項3又は4に記載するペースト状無機粉体樹脂組成物を塗布させた後、重合硬化させて誘電体ガラス成形膜を形成させ、
次いで、前記誘電体ガラス成形膜上に前記ペースト状無機粉体樹脂組成物で誘電体ガラス隔壁パターンを形成させ、重合硬化させた後、温度250〜550℃の熱履歴下に前記ペースト状無機粉体樹脂組成物中のビヒクル成分を熱分解させて飛散除去させて、更なる昇温下に同時に焼結させることを特徴とするプラズマディスプレイパネル板の製造法。
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