従来、車両において、制動時の操作力を低減するためのブレーキブースタとして、真空倍力装置(負圧式倍力装置ともいう)が採用されている。この真空倍力装置は、エンジンの吸入負圧又はバキュームポンプの負圧を倍力源とし、この負圧と大気圧との差圧を利用して車両の運転者の制動ペダル踏力以上の力を油圧を介してブレーキ装置に加えるものであり、ブレーキブースタとして最も一般的なシステムである。
例えば、特許文献1(独国特許発明第4405092C1号明細書)には、運転者の入力以外に、運転又はブレーキ操作条件に対応して、例えば、車両の運転者の制動ペダル操作速度が限界値を超えたとき(急制動時)、倍力装置内のソレノイドを励磁して入力による助勢力以外の出力を付加し発生させる「追加ジャンピング」を起こす機構を備えた真空倍力装置が提案されている。なお、「追加ジャンピング」とは、真空倍力装置の「出力/入力」の関係が入力の増加がない状態で出力値が一挙に増加することをいう。
図8は、従来例に係り、上記独国特許発明第4405092C1号明細書に提案されている真空倍力装置の入出力軸方向に沿った部分断面図である。図8を参照して、この真空倍力装置は、不図示の運転者による制動ペダル踏み込み速度の検出手段を備え、さらに装置外周部に負圧と大気圧との差圧を受けて入出力軸699に沿って摺動可能なパワーピストン622と、装置内周部(パワーピストン622内)に運転者の制動ペダル踏み力が作用する入力ロッド644とが配置されている。
そして、軸線699に沿って入力側から出力側に順に、互いに作用・反作用する、入力ロッド644に係合する伝達部材641、内周部が伝達部材641と外周部がパワーピストン622に夫々当接して、入力ロッド622と作用・反作用する反作用円板(リアクションディスク)648、反作用円板648に当接し、ブレーキ装置と油圧を介して作用・反作用する出力ロッド650を備えている。伝達部材641の外周とパワーピストン622との間には、軸線699に平行に伸在するソレノイド640が配設され、伝達部材641の外周とソレノイド内周との間には、ソレノイド640の発生する電磁力により出力側に吸引されるソレノイドプランジャ630が配置されている。ソレノイドプランジャ630は、大気弁要素632を備えている。
さらに、入力ロッド644の外周部とパワーピストン622の内周部との間に、大気弁624と負圧弁611とが設けられている。大気弁624は、パワーピストン622に係止されコイルスプリング700により出力側に付勢されている弁座660と、弁座660の出力側端面内周部に対向する前述の大気弁要素632とから構成されている。大気弁要素632は入出力軸699に沿って延長されてソレノイドプランジャ630に備えられている。大気弁要素632と伝達部材641との間には、コイルスプリング638が介装されている。さらに、負圧弁611は、弁座660と、弁座660の出力側端面外周部に対向し、大気弁要素632の外周を取り巻くようにパワーピストン622の内部に形成された負圧弁要素623とから構成されている。
大気弁要素632の出力側への移動を規制するストッパは、実質的にソレノイドブランジャ630の先端面に対向してリアクションデイスクリテーナ622に形成された面のみであると共に、伝達部材641と反作用部材648との間にはクリアランスがないために、この場合の大気弁624の開度は、ソレノイドブランジャ630の先端面とこの先端面に対向してリアクションディスクリテーナ622に形成された面との初期状態における間隔(図6に示すクリアランス)にほぼ同一であって、この間隔が最大の開度に相当する。
図8に示す真空倍力装置の動作を図8及び図9を参照して説明する。図9は真空倍力装置の性能線図であり、a線は通常ブレーキの作動線を示し、c線は上記従来の真空倍力装置のソレノイドを励磁して入力による助勢力以外の出力を付加し発生させた場合の作動線を示している。
運転者により、入力ロッド644に入力f1が加えられている状態のときには、真空倍力装置は出力a1を発生する。この入力f1が加えられる過程で緊急ブレーキ状態の検出、或いは、その他の要因により、倍力装置内のソレノイドを励磁させて入力による助勢力以外の出力を付加し発生させる場合、ソレノイド640に通電される。
ソレノイドプランジャ630はソレノイド640の発生する電磁力により出力側に移動して、ソレノイドプランジャ630の先端面はこの先端面に対向してリアクションディスクリテーナ622に形成された面に当接すると共に、ソレノイドプランジャ630に備えられた大気弁要素632も出力側に移動して大気弁624は開放され、変圧室に大気が流入し、パワーピストン622に出力側に向かう推進力が生じる。
そして、反作用部材648は、パワーピストン622からの押圧力により弾性変形することで入力部材641を押し戻す反力を印加し、入力部材641、及び、入力ロッド644は入力側へ移動するが、大気弁要素632は入力側へ移動しないため大気弁624は変わらず開放され続け、変圧室の圧力は大気圧に到達する。従って、真空倍力装置は最大助勢状態となり、出力c1を発生し、以後、真空倍力装置はc線上での作動となる。
即ち、入力f1でソレノイド640に通電がなされると、出力a1から追加ジャンピングを受けて出力c1へ一挙に飛躍することになる。
しかしながら、例えば上記特許文献1(独国特許発明第4405092C1号明細書)に提案されている、従来の真空倍力装置は以下の問題点を有する。
再度図8、図9を参照して、最大助勢状態(ソレノイド640の通電に伴い大気弁624が開放されて変圧室が大気圧に到達している状態)で真空倍力装置が出力c1を発生している状態で、入力ロッド644に加えられる入力量を減らして真空倍力装置の作動を初期位置(非作動状態)に戻そうとする場合、入力fを入力f2に減少させても真空倍力装置は最大助勢状態を維持し依然として高い出力c2を発生しており、出力c2、入力f2に到ったことを検出する不図示の検出手段によりソレノイド640への通電が遮断されて、ソレノイドプランジャ630と大気弁要素632とはコイルスプリング638の付勢力により入力側に移動され、大気弁要素632が弁座660に当接して変圧室と大気との連通が遮断され、更に弁座660が大気弁要素632に押されて弁座660は負圧弁要素623から離間し、変圧室と定圧室とが連通して変圧室と定圧室との圧力差が減少するためパワーピストン622が初期位置に戻り始め、負圧式倍力装置の出力が減少する。
即ち、運転者の負圧式倍力装置の出力減少意図に反し、入力ロッド644への入力を減少させても負圧式倍力装置は依然として高い出力を出し続け、入力f2に至って初めて出力が減少し始めるために、入力量に対して出力量が大きいという違和感が感じられるという不具合が生じている。
また、通常ブレーキの他にソレノイド640を励起させて大気弁624を開弁させることにより強制的に倍力機構を作動させて出力増を図る場合、上記従来技術の負圧式倍力装置においては倍力作用の最大助勢力を発生させているのに対し、機能上は、倍力作用の最大助勢力を発生させることが必ずしも必要とはしないのが通常であり、適正な助勢力の付加をする真空倍力装置が望まれている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、操作者の意思を率直に反映する真空倍力装置を提供することを目的とする。
さらに別の目的として、運転操作者の常用ブレーキと緊急ブレーキとの差異が少なく、且つ、滑らかなブレーキの助勢力の追加がされる真空倍力装置を提供することも目的とする。
本発明は、第1の視点において、入力を受ける入力部材と、少なくとも前記入力部材の操作に応じて制動力としての出力を発生する出力発生手段とを備え、前記出力発生手段は、前記入力と前記出力とを2つの座標とした作動線図上において通常は第1の作動線に沿って作動し、緊急ブレーキ時には第2の作動線に沿って作動し、前記第1の作動線は、出力/入力勾配が1を超える第1倍力部分と、該第1倍力部分が死点に到達した後、続いて出力/入力勾配が1となる飽和部分を含み、前記第2の作動線は、出力/入力勾配が1を超える第2倍力部分と、該第2倍力部分が死点に到達した後、続いて出力/入力勾配が1となる飽和部分を含み、緊急ブレーキ時、前記出力発生手段の作動点は、前記第1倍力部分上から前記第2倍力部分を含む前記第2の作動線上へジャンピングする、ことを特徴とするブレーキ装置を提供する。
本発明による倍力装置は、入力を受ける操作部材と、少なくとも前記操作部材が受けた入力を助勢して制動力としての出力を発生する倍力手段と、を備え、前記入力と前記出力とを2つの座標軸とした作動線図上において通常は前記入力に対する前記出力の軌跡を第1の作動線に従うように制御し、車両の走行環境の変化に応じて、前記軌跡を前記作動線図上において第2の作動線に従うように制御し、前記第2の作動線は前記入力に対する前記出力の微分係数が基本係数1より大きくなる部分を備え、前記第2の作動線上での所定の入力に対応する出力は、前記第1の作動線上での前記所定の入力に対応する出力より大きい。
本発明は、第1の視点に基づいて、前記第1の作動線は、前記倍力部分の前に出力が0の作動点から前記第1倍力部分上にジャンピングする部分を含み、前記第2の作動線上の出力量は、前記第1倍力部分上へのジャンピング量よりも大きいことを特徴とするブレーキ装置、前記第2倍力部分の傾きは、前記第1倍力部分の傾きと同じか又は大きいことを特徴とするブレーキ装置、前記出力発生手段は、緊急ブレーキ後の戻り行程において、前記第2倍力部分を含む前記第2の作動線に沿って作動する行程を有することを特徴とするブレーキ装置、前記出力発生手段が倍力装置であることを特徴とするブレーキ装置、前記倍力装置が負圧式倍力装置であることを特徴とするブレーキ装置を提供する。
本発明の真空倍力装置の作用を説明する。尚、以下の説明において出力側とはハウジング前端側を、入力側とはハウジング後端側をそれぞれ指す。
最初に本発明による第1の真空倍力装置の作用を概要する。本発明の第1の真空倍力装置は、車両の運転者の入力条件以外に運転又はブレーキ操作条件、例えば運転者の制動ペダル操作速度が限界値を超えた際に(急制動時)、倍力装置内のソレノイドを励磁して入力による助勢力以外の出力を付加する機構を備えた真空倍力装置であって、付加し発生させる助勢力が適切に設定され、復行程において真空倍力装置の出力の減少が速くなるように構成され、操作者の意思を率直に反映する。
また本発明による第2の真空倍力装置は、例えばソレノイドの作動によって追加の助勢力を出そうとする場合、低踏力域では少しの助勢力の追加で良く、高踏力域では低踏力域での助勢力よりも大きな助勢力の追加を行うことで運転操作者の常用ブレーキとの差異を少なくして且つ、滑らかなブレーキの助勢力の追加がされる。
本発明による第1の真空倍力装置の作用を以下に詳説する。運転者がブレーキペダルを急激に踏み込み、例えばペダル操作速度の検出手段がこの急激な踏み込みを検出して、この検出に従ってソレノイドが通電された場合、ブレーキ操作による伝達部材の軸方向出力側への移動によりプランジャ部材も伝達部材の移動分移動し、加えて、ソレノイドが通電されることによりプランジャ部材は更に軸方向出力側に移動し、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接することにより、プランジャ部材の軸方向に沿った出力側への移動は規制される。
伝達部材とプランジャ部材の移動に伴いコントロールバルブのシール部がパワーピストンの負圧制御用シール弁に接触して定圧室と変圧室との連通を遮断し、大気制御用シール弁がシール部から離間して変圧室内に大気が流入して圧力が上昇する。変圧室内の圧力と定圧室との圧力差により、可動壁、パワーピストンに軸方向出力側に向かって移動させる推進力が生じ、この推進力はリアクションディスクを介して出力ロッドによりハウジング外へ取り出される。
リアクションディスクは、パワーピストンからの押圧力により弾性変形することで入力側(例えば部位の出力側を向いた面)に向かって張り出して伝達部材の先端前面に当接し伝達部材(及び入力ロッド)に反力を印加する。伝達部材が軸方向入力側へ押し戻されることにより、伝達部材の当接部とプランジャ部材の当接部とが当接していることから、またリアクションディスクにより印加される反力がソレノイドの通電によるプランジャ部材への軸方向出力側への付勢力より大きいことから、プランジャ部材も軸方向に沿って入力側へ移動され、大気制御用シール部とシール部とが当接して変圧室と大気との連通が遮断される。
従って、リアクションディスクの反力と伝達部材に加えられた入力とが平衡した状態となる。このリアクションディスクの張り出し量は、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部まで出力側に移動する量に応じたものである。
この平衡状態において、伝達部材は出力側へのさらなる付勢力を入力とする際に、リアクションディスクの反力に打ち勝って伝達部材は軸方向出力側に移動し、プランジャ部材も伝達部材の移動分だけ移動し、プランジャ部材の移動によりコントロールバルブのシール部から大気制御用シール弁が離脱して変圧室内に大気が流入し圧力が上昇する。変圧室内の圧力と定圧室との圧力差により、可動壁、パワーピストンに軸方向出力方向に向かって移動させる推進力が生じ、この推進力はリアクションディスクを介して出力ロッドによりハウジング外に出力される。
リアクションディスクは、パワーピストンからの押圧力により弾性変形することで入力側(例えば部位の出力側を向いた面)に向かって張り出して伝達部材の先端前面に当接し、伝達部材(及び入力ロッド)に反力を印加する。伝達部材が軸方向入力側へ押し戻されることにより、伝達部材の当接部とプランジャー部材の当接部とが当接していることから、プランジャ部材も軸方向入力側へ移動して大気制御用シール弁とシール部とが当接し、変圧室と大気との連通が遮断される。従って、リアクションディスクの反力と伝達部材に加えられた入力とが平衡した状態となる。
この平衡状態において更に入力ロッド(伝達部材)に入力が加えられると、再び変圧室に大気が流入し、倍力は上昇する。
大気(すなわちbase or primary pressure)が変圧室に入り切り、真空倍力装置の出力する倍力が飽和すると、入力ロッド(伝達部材)への更なる入力はリアクションディスクを介して出力ロッドにより取り出される。従って、この場合真空倍力装置の出力の増加分は、入力部材(入力ロッド)に更に加えられる入力分にほぼ等しくなる。
次に復行程について説明する。ブレーキペダルが開放され、入力ロッド及び伝達部材への入力量が減少すると、伝達部材が軸方向入力側へ移動し、出力ロッドとリアクションディスクも軸方向入力側へ移動するため出力は減少する。この期間の出力の減少は入力部材への入力の減少に等しい。
更に入力ロッドへの入力が減少すると、伝達部材が軸方向入力側へ移動し、伝達部材の移動に伴いプランジャ部材も移動して、大気制御用シール弁がシール部に当接して変圧室と大気との連通を遮断し、更なる伝達部材とプランジャ部材の軸方向入力側への移動により、負圧制御用シール弁からシール部が離間して定圧室と変圧室とが連通され、定圧室と変圧室との圧力差が減少するため、可動壁、パワーピストンは入力側に向かって移動する。パワーピストンの移動により出力ロッドとリアクションディスクも軸方向入力側へ移動するため出力は減少する。この期間の出力の減少は真空倍力装置の倍力機構による倍力の減少に等しい。
入力量又は出力量の減少等を検出する手段により入力量又は出力量等が所定値に達したと判断されると、ソレノイドへの通電が遮断されて、プランジャ部材は第3付勢手段により軸方向入力側に付勢されて軸方向入力側に移動する。更なる入力部材(入力ロッド)への入力の減少により入力ロッド及び伝達部材は第2付勢手段により軸方向入力側に付勢されて軸方向入力側に移動し、真空倍力装置は初期位置、つまり非作動状態に復帰する。
また、第1の所定値と第2の所定値は、「規制する部分」と「許容する部分」が、前記装置の記載の機能を発揮するように設定される。
このようにソレノイドがプランジャ部材に作用する場合(例えばブレーキが急激に踏み込まれた場合)、「課題を解決するための手段」で述べたように、入力と出力とを2つの座標軸とした作動線図において、真空倍力装置の(入力,出力)の軌跡は第2の作動線を通る。
ソレノイドがプランジャ部材に作用しない場合(例えば通常ブレーキ)、「課題を解決するための手段」で述べたように、真空倍力装置の(入力,出力)の軌跡は第1の作動線を通る。
この両作動線の出力の差が、追加ジャンピング量に相当する。
本発明による第2の真空倍力装置の作用を説明する。運転者がブレーキペダルを急激に踏み込み、例えばペダル操作速度の検出手段がこの急激な踏み込みを検出して、この検出に従ってソレノイドが通電された場合、ブレーキ操作による伝達部材の軸方向出力側への移動によりプランジャ部材も伝達部材の移動分移動し、加えて、ソレノイドが通電されることによりプランジャ部材は更に軸方向出力側に移動し、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接することにより、プランジャ部材の軸方向に沿った出力側への移動は規制される。このプランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接するのに要した移動距離は、入力荷重に応じて変わる。以下の作用は上述した真空倍力装置と同様なので省略する。
従って、第2の真空倍力装置の内、ある視点に係る装置においては、追加ジャンピング量は入力量が変化しても実質的に同量であったが、他の視点に係る装置においては追加ジャンピング量は入力量に応じて変化する。
第2の真空倍力装置のうち、さらに別の視点の真空倍力装置によれば、前記第他の視点において、第1の所定値(距離)が入力荷重すなわちブレーキペダルの踏み込みが強いほど大きくなる。
さらに別の視点の真空倍力装置によれば、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接するのに要した移動距離は、入力荷重としてのブレーキペダルの踏み込みに応じた弾性部材の変形により変化する。つまり、入力荷重が大きければそれだけ弾性部材は変形し、また、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接するのに要する移動距離も増大することになる。
さらに別の視点の真空倍力装置の作用としては、運転者がブレーキペダルを急激に踏み込み、例えばペダル操作速度の検出手段がこの急激な踏み込みを検出して、この検出に従ってソレノイドが通電された場合、ブレーキ操作により伝達部材の構成要素の一つである入力受け部材が弾性部材を変形させながら軸方向出力側に移動し、弾性部材を介して入力受け部材が伝達部材の要素(例えば実施例においては第1伝達要素)を押すことにより、第1伝達要素ひいては伝達部材は軸方向出力側へ移動し、伝達部材の軸方向出力側への移動によりプランジャ部材も伝達部材の移動分移動し、加えて、ソレノイドが通電されることによりプランジャ部材は更に軸方向出力側に移動し、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接することにより、プランジャ部材の軸方向に沿った出力側への移動は規制される。このプランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接するのに要した移動距離は、入力荷重としてのブレーキペダルの踏み込みに応じた弾性部材の変形により変化する。つまり、入力荷重が大きければそれだけ弾性部材は変形し、また、プランジャ部材の当接部が伝達部材の当接部に当接するのに要する移動距離も増大することになる。以下の作用は上述した真空倍力装置と同様なので省略する。従って、第2の真空倍力装置のある視点の真空倍力装置においては、追加ジャンピング量は入力量が変化しても実質的に同じであったが、この視点の真空倍力装置では追加ジャンピング量は入力量が変化すると変化する。
以上説明したように、本発明によれば、例えば車両の運転者の入力条件以外に運転又はブレーキ操作条件に応じて、一例としていえば運転者の制動ペダル操作速度が限界値を超えた際に(急制動時)、倍力装置内のソレノイドを励磁して入力による助勢力以外の出力を付加する機構を備え、付加し発生させる助勢力が適切に設定され、復行程においてペダル操作の入力の減少に即応して、出力の減少が速くなるように構成され、操作者の意思を率直に反映するブレーキ装置及び倍力装置、なかでも真空倍力装置が提供される。
また、第1の所定値が入力荷重の変化に応じて変わることにより(追加ジャンピング前後の作動線の傾きが変化することにより)、運転操作者の常用ブレーキと緊急ブレーキとの差異が少なく、且つ、滑らかなブレーキの助勢力の追加がされる。
また、伝達部材を構成する要素の間に弾性体を配置することにより、伝達部材を分割構成として第1伝達要素と入力受け部材を設けたとき、入力受け部材側から第1伝達要素側への気密構成が必要となるが、この弾性体が気密封止機能を果たす。
図面を参照して、本発明の実施例を以下に説明する。なお、以下の実施例において特に理り書きがない限り、前方及び先端とは真空倍力装置の出力側の方向を、後方と後端は真空倍力装置の入力側の方向を夫々指し、入出力軸とは負圧式倍力装置の入出力軸を意味する。さらに、中心軸は入出力軸に平行であり、径方向(半径方向)とは真空倍力装置の入出力軸方向に直交する方向である。
図1は、本発明の一実施例に係る真空倍力装置の入出力軸方向に沿った断面図である。図2は図1の要部拡大図である。図3は図1の部分拡大図である。図4は本発明の一実施例に係る真空倍力装置の性能線図である。
図1を参照して、本実施例の真空倍力装置は車両のブレーキブースタに適用され、真空倍力装置の入力側に大気に通じる突出部が形成され、出力側に不図示のエンジンのインテークマニホルドに通じるインレット2aを有する略コーン状のハウジング2を備え、ハウジング2の突出部端面には運転者の操作する不図示の制動ペダルに接続する入力ロッド11と共に略入出力軸方向に進行可能な蛇ばら状の管体が接続されている。ハウジング2内及び蛇ばら状の管体内には流体通路を備える2重筒状のパワーピストン10が挿入され、入力側から出力側に順に、入出力軸に直交する面に互いに対向して、いずれも略ダイヤフラム形状のリヤ可動壁5、固定壁3、及びフロント可動壁4が納められている。
ハウジング2の後壁とリヤ可動壁5とはリヤ変圧室9を画成し、リヤ可動壁5、固定壁3及びハウジング2の側壁は、リヤ定圧室8を画成し、固定壁3とフロント可動壁4とはフロント変圧室7を画成し、フロント可動壁4とハウジング2の側壁及び前壁とはフロント定圧室6を画成する。
リヤ可動壁5の外周部は、リヤ変圧室9及びリヤ定圧室8の気密を保持するようにハウジング2により支持され、リヤ変圧室9への大気の流入とリヤ定圧室8の負圧により、リヤ可動壁5は略入出力軸に沿って出力側に移動される。この移動によって、パワーピストン10は略入出力軸に沿って移動(ストローク)される。
フロント可動壁4の外周部は、フロント変圧室7及びフロント定圧室6の気密を保持するようにハウジング2により支持され、フロント変圧室7への大気の流入とフロント定圧室6の負圧により、フロント可動壁4は略入出力軸に沿って出力側に移動される。この移動によって、パワーピストン10は略入出力軸に沿って移動(ストローク)される。
リヤ変圧室9とフロント変圧室7とから構成される変圧室の組は、互いに常時導通すると共に、大気制御用シール部23bと第2プランジャ部材25の入力側端部に設けられた大気制御用シール弁25aとの離間又は接触により、選択的に大気と連通し又大気から遮断される。リヤ定圧室8とフロント定圧室6とから構成される定圧室の組は互いに常時連通している。変圧室9、7と定圧室8、6とは、負圧制御用シール部23aとパワーピストン10の内面に入力側に向かって突出形成された負圧制御用シール弁10aとの離間又は接触により、選択的に連通又は不通とされる。
リヤ定圧室8及びフロント定圧室6は、インレット2aを介して負圧源である不図示のエンジンのインテークマニホルドと連通し、常に負圧を示している。
ハウジング2内において、ハウジング2の突出部端部から入出力軸に沿って延在し出力側が径大で略筒状のパワーピストン10内には、入力ロッド11が挿入され、弁要素等が配設されている。
リヤ可動壁5、及びフロント可動壁4の内周端部は、各変圧室9、7及び各定圧室8、6の気密を保持するように、パワーピストン10の外周部において、負圧式倍力装置である真空倍力装置の入力側から出力側へ向かって順に支持されている。
さらに、固定壁3の内周端部は、リヤ定圧室8及びフロント変圧室7の気密を保持するようにフロント可動壁4の側面に当接している。
パワーピストン10は、フロント可動壁4を介して固定壁3の内周端部に当接・摺動しながら、真空倍力装置の略入出力軸に沿ってストロークし、このストロークに伴いリヤ可動壁5及びフロント可動壁4は移動する。
真空倍力装置の入力端には入力ロッド11が配設され、入力ロッド11の後端部はハウジング2外に突出して不図示の制動ペダルに接続すると共に、前方部はハウジング2の突出部の入力側端面から、パワーピストン10内に挿入され、パワーピストン10の中心軸に沿って延在している。
ハウジング2の突出部に接続すると共に、入力ロッド11の移動に伴い圧縮変形される蛇ばら状の管体の内周に沿ってパワーピストン10の径小部が挿入され、入力側端部には、環状のフィルタ、あるいはサイレンサ等が、入力ロッド11と略同軸に嵌装されている。
入力ロッド11の外周にはリテーナが配設されている。
中心軸に沿って、このリテーナの出力側には、コントロールバルブ23が配設されている。
コントロールバルブ23は第1部材と第2部材とからなり、第1部材は負圧制御用シール部23aとこれをバックアップする環状プレートとの二部材(加硫接着されている)によって構成され、第2部材は、大気制御用シール部23bとこれを一体的に支持してバックアップする内向フランジを有した第1筒体と、円筒伸縮部23cと後端取付部材23dを有する第2筒体と、後端取付部材23dを補強する環状プレートとの四部材(加硫接着されている)によって形成され、第1筒体の先端部内周に形成した段部に第1部材を気密的に嵌合した状態で第1筒体の先端を内周に向けてかしめることにより、第1部材と第2部材は一体的に結合されている。コントロールバルブ23は後端取付部材23dにてパワーピストン10の内周面に気密的に固定されている。
コントロールバルブ23の両シール部23a、23bを両シール弁10a、25aに向けて付勢する第1付勢手段21がコントロールバルブ23の内周に配置されている。後端取付部材23dを補強する環状プレートと入力ロッド11の外周に配設されたリテーナとの間には、入力ロッド11を入力側に付勢する第2付勢手段24が圧縮介装されている。
コントロールバルブ23の第1筒体の内部に侵入している第2プランジャ部材25の大気制御用シール弁25a(図2参照)は半径内外方向に拡大され、大気制御用シール弁25aは大気制御用シール部23bと密着又は離間可能である。第2プランジャ部材25の出力側端部は第1プランジャ部材18に接続されており、第2プランジャ部材25の内周には当接面25dが形成されている。
負圧制御用シール部23aの出力側に負圧制御用シール弁10aが対向し、負圧制御用シール部23aと当接又は離間可能である。
入力ロッド11の出力側先方には、略入出力軸に沿って延在している伝達部材12(第1、第2、第3伝達要素12a、12b、12c)が配設されている。
第1伝達要素12aの入力側には当接面25dと対向する当接面12dが形成され、当接面12dから入力側に突出する筒部は入力ロッド11の球状の先端部を包むように入力ロッド11と係合している。
第2プランジャ部材25の内周には当接面12dを支持面として第2プランジャ部材25を入力側に付勢する第3付勢手段27が圧縮介装されている。当接面25dと当接面12dとは、当接又は離間可能である。
第1伝達要素12aには、当接面25dに対し、伝達部材12の過大なストロークを防止するストッパを挟んで対峙し、径外方に突出し第1プランジャ部材18の段部18eに当接又は離間可能な凸部12eが形成されている。従って、入力ロッド11と伝達部材12の軸方向出力側への移動に伴って第1プランジャ部材18及び第2プランジャ部材25も軸方向出力側への移動が可能である。
第3伝達要素12cは、リアクションディスクリテーナ16内に収容されている円板状の径大部を備え、径大部の入力側端面はリアクションディスクリテーナ16に形成された凹部底面に対向し、出力側端面はリアクションディスク14に対向している。
リアクションディスクリテーナ16は、パワーピストン10と一体又はパワーピストン10に形成され、出力側に拡開すると共に、出力側端面から延長された筒部を備えている。リアクションディスクリテーナ16の出力側端面内周部はリアクションディスク14の入力側端面外周部に当接している。リアクションディスク14は、リアクションディスククリテーナ16の筒部内周面及び出力側端面内周部に密着して嵌合している。
リアクションディスクリテーナ16の出力側端面外周部とハウジング2の内壁に接するリテーナとの間には第4付勢手段28が圧縮介装されている。
中心軸に沿って、リアクションディスク14の出力側先方には、略鋲状の出力ロッド15が配設されている。出力ロッド15の平面部入力側端面はリアクションディスク14に密着している。出力側には、不図示の油圧装置を含むブレーキ装置が配置され、出力ロッド15は油圧を介してブレーキ装置に作用し、油圧による反作用をリアクションディスク14、伝達部材12を介して入力ロッド11に及ぼす。
第1プランジャ部材18の出力側端面には凸部18aが形成され、この凸部18aと対向する凹部16aが形成されている。
第1プランジャ部材18の外周でパワーピストン10の内周面にアクチュエータであるソレノイド17が配設されている。
本実施例の構成において4つのクリアランスが設けられている。図2に示すクリアランスはいずれも無作動状態における、クリアランスを示している。
クリアランスDは、コントロールバルブ23の負圧制御用シール部23aと負圧制御用シール弁10aとのクリアランスである(静止状態又は戻り行程で変圧室7、9と定圧室6、8とが連通される時のクリアランス)。
クリアランスBは、リアクションディスクリテーナ16に形成された第1プランジャ部材18の凸部18aと、この凸部18aと対向する凹部16aの互いに対向する面同士のクリアランスである(第1、第2プランジャ18,25の吸引のためのクリアランス)。
クリアランスAは、第1伝達要素12aの当接面12dと第2プランジャ25の当接面25dとのクリアランスであり、無作動状態において第1の所定値である。クリアランスAは第1、第2プランジャ18、25が吸引されたときに「0」になり(当接面12d,25dが当接する)、いわゆるエアバルブ(伝達部材12の出力側先端から第2プランジャ25の入力側先端までの長さ)の全長は一定の短縮された状態になる。
クリアランスC1は、第3伝達要素12cの円板状の径大部出力側端面と、リアクションディスク16の入力側端面とのクリアランスである。
クリアランスC2は、無作動状態において第2の所定値であり、第3伝達要素12cの円板状の径大部の入力側端面とリアクションディスクリテーナ16に形成された凹部底面とのクリアランスである。クリアランスC2は、戻り(復)行程あるいはジャンピング特性の変化した時伝達要素12cの後退を許容する量である。
各クリアランスの関係については、少なくともC2+D≧A、好ましくはC2>Aとして、C2の値を相当量大きく設定する。またBのクリアランスはA、Cより大きくするのが好ましい。
クリアランスAの大きさが、リアクションディスク14の変形抵抗分の出力上昇量を決定する。
<作動説明>
本実施例の真空倍力装置の作動を、まず通常作動、次にソレノイド作動が追加された場合の順で説明する。
<通常作動一往行程>
往行程は空気弁座と真空弁座が(大気制御用シール弁25aが大気制御用シール部23bに、かつ負圧制御用シール弁10aが負圧制御用シール部23a)ほぼ着座した状態で開閉を行いながら進行する。従って、各クリアランスはD→0、A→A、C1→C1−D、C2→C2+Dとなる。入力がf2に達するまで入力側に流動するリアクションディスク14は伝達要素12cに到達せず僅かなジャンピング出力を出す。それ以後はクリアランス「C1−D」部分が流動してきたリアクションディスク14によって埋めつくされて、リアクションディスク14面積と伝達部材12cの先端面積比で決められる倍力比で作動線a上の作動をする。
この期間の作動は、第1の作動線上で行われる。
倍力装置の倍力飽和点(死点)を超えてからは、出力増加は入力増加分のみとなり、死点以降の線は折れた線図となる。
次に戻り行程は入力fの低減に即応し空気弁座と真空弁座が(大気制御用シール弁25aが大気制御用シール部23bに、かつ負圧制御用シール弁10aが負圧制御用シール部23a)ほぼ着座した状態で、開閉を行いながら出力側からの反力を受けて戻り、最後には出力からの反力がなくなった状態(入力f2でジャンピング出力時)以降は第2付勢手段(スプリング)24が入力ロッド11、第2プランジャ25を介してコントロールバルブ23を押し下げて、負圧制御用シール弁10aを負圧制御用シール部23aから開放してクリアランスDを確保して戻りを完了し出力「0」に到る。
<次にソレノイドが作動した状態>
ブレーキ操作により入力f1の所まで入力を加えたとき、このブレーキ操作の過程で緊急ブレーキ等の制御信号に基づいて、ブレーキ補助が必要と判断された時ソレノイドが通電を受けて第1プランジャ18が吸引される。
そしてこの結果各クリアランスは入力f1の通常作動の状態(前述)から大きく変動する。即ちソレノイド17による第1,第2プランジャ18,25の吸引によりクリアランスAについてA→0の状態となる。この結果、第2プランジャ25の後端から伝達要素12cの前端までの長さが「A」の長さ分短縮される。この短縮によって空気弁(大気制御用シール部23bと大気制御用シール弁25aとの隙間)から空気(大気)が変圧室9、7に流入し出力増加がなされる。
この後、入力f1が維持されつづけるという状態が続いた場合は、増加した出力によるリアクションディスク14の入力側への流動がなされ伝達部材12c〜入力ロッド11を押し戻して、再び、大気制御用シール弁25aが大気制御用シール部23bに、及び負圧制御用シール弁10aが負圧制御用シール部23aに(空気弁座と真空弁座が)ほぼ着座した状態に収束する。この押し戻す量は短縮量Aに等しい。
これにより各クリアランスはC1−D→C1−D+A、C2+D→C2+D−Aとなる。
即ち、入力f1でソレノイド17が作動した状態後も入力f1を維持した場合、クリアランスC1部分の増加分Aだけのリアクションディスク14流入分の出力増加が追加ジャンピング量増加となり出力は性能線図上a1点よりb1点に上昇する。そしてa1点からb1点の間が「追加ジャンピング量」である。
この状態から更に入力を増減させた時は従来の倍力装置と全く同一の作動を行い作動線aと同じ勾配をもつ入出力比で作動線b(第2の作動線)で示される作動をする。
さてここで、入力を更に増加させた場合はS点で助勢力は飽和状態となる。即ち、変圧室7、9の圧力は大気とほぼ同圧となる。これは大気圧弁が開放状態(大気制御用シール弁25aと大気制御用シール部23bとが離間状態)であることを意味している。入力ロッド11〜伝達部材12cが一体となってリアクションディスク14を出力側に押し込み大気制御用シール部23bが開放された状態となる。この状態では入力増加分と出力増加分は等しい。
さて戻り行程について説明する。飽和助勢点S以降まで作動した場合を例として説明する。
f3までの入力を与えた状態では出力はF3まで出していて、入力の減少により、出力は入力減少分のみ減少していく。従ってこの過程での戻りは遅い。
次にS点以降(矢印h)では入力の減少に対し、出力の減少はその助勢倍力比の速さで減少するため真空倍力装置の下流に設けられた不図示のマスタシリンダ側の出力側反力による戻りも急速になり戻りが急速に行われる(jを通過)。
即ち、ソレノイド作動時、入力が増減した場合でも最大助勢力を維持しつづける従来技術に対し、本実施例では従来作動(ソレノイドが非作動の場合の通常作動)と同様に入力と出力が比例的に変化しうるので、ペダル操作の違和感が無く且つ速やかな戻りが得られる。
尚、戻り行程の完了にあたっては入力f2点に達した時あるいはジャンピング点k(ジャンピング出力値Fk)に到ったことを検出し、ソレノイドの電流をカットすることで従来倍力装置と同じ作動をさせて復帰を完了させることが可能である。
本発明の他の実施例を図面を参照して説明する。
図5は本発明の他の実施例に係る真空倍力装置の入出力軸方向に沿った断面図、図6は本発明の他の実施例に係り図5の要部拡大図であり、図7は本発明の他の実施例に係る真空倍力装置の性能線図である。
なお、本発明の第2の実施例が、本発明の第1の実施例と同様の構成、動作を示す点については説明を省略する。
図5、図6を参照して、本実施例の真空倍力装置は、入力ロッド11の球状の先端部を包むように入力ロッド11と係合している入力受け部材12f(伝達部材12のメンバ)と第2伝達要素12bとの間に、入力受け部材12f及び第2伝達要素12bの外周部に接続して、凹部12hを備える第1伝達要素12aが配設されている。
第1伝達要素12aの凹部12hには弾性体13が収容されている。弾性体13の入力側端面は入力受け部材12fの出力側端面に対向し、弾性体13の出力側端面は第1伝達要素12aの凹部底面及び第2伝達要素12bの入力側先端面に対向している。
入力受け部材12fの入力側先端面である当接面12gと、第2プランジャ部材25の入力側先端部にある内周側フランジ面である当接面25gとの間には、クリアランスAが設定されている。なお、図示の状態は無作動状態のクリアランスである。
第1プランジャ部材18の出力側端面には当接面18aが形成され、リアクションディスクリテーナ16には第1プランジャ部材18の当接面18aと対向する当接面16aが形成されている。
本実施例の動作を、図5〜図7を参照して説明する。
入力ロッド11に(入力側に)入力が加えられると、弾性体13は入力受け部材12fに押されて変形する。入力受け部材12fが出力側に移動することにより、クリアランスAは拡大され、そこでソレノイド17を励磁して第1、第2プランジャ18、25を出力側に吸引すると、クリアランスAで決定されるジャンピング出力を得る。
即ち、入力をf1まで加えたとき、真空倍力措置の出力は作動線a(第1の作動線)上のa1点で示される。しかる後ソレノイド17が励磁される場合、入力f1によってクリアランスAは増大しており、この増大したクリアランスの大きさに応じた追加ジャンピング出力を得て、b1に到る。入力の増減に応じて弾性体13の変形も増減し、その結果、クリアランスAも増減する。このクリアランスの増減は、また、追加ジャンピング出力の増減を引き起こし、これらが連続的に行なわれることにより作動線(第2の作動線)bが得られる。入力の増大によりクリアランスAが増大して、追加ジャンピングが入力の増大に応じて大きくなり、その結果、作動線(第2の作動線)bの出力/入力勾配は作動線(第1の作動線)aの出力/入力勾配より大きくされる。
図7を参照して、追加ジャンピング前後の作動線(作動線aと作動線b)の傾きが変化することにより、即ち追加ジャンピング前後の作動線の傾きが変化することにより、運転操作者の常用ブレーキと緊急ブレーキとの差異が少なく、且つ、滑らかなブレーキの助勢力の追加がされる。
また、弾性体13を配置することにより、伝達部材を分割構成として入力受け部材12fを設けたとき、入力ロッド(入力受け部材12f)側から第1伝達要素12a側への気密構成が必要となるが、弾性体13が気密封止機能を果たす。
その他は、本発明の第1の実施例に係る真空倍力装置の動作と同様である。
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記態様にのみ限定されるものでなく、本発明の原理に準ずる各種態様を含むものである。