JP3929889B2 - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関する。さらに詳しくは、本発明は高い剛性を有するのみならず、成形品が非常に良好な外観を示し、更に成形性、離型性、塗装性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
【0002】
本発明の樹脂組成物は自動車、建築、電気・電子機器およびその他の諸工業の分野で、高い剛性が要求される内外装部品に好適に用いられ、特に高剛性かつ良好な外観が必要な自動車内外装部品であるドアミラーまたはインナーミラー用のステー、アウターハンドルおよびワイパー部品等に好適に用いられる。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂、例えばポリアルキレンテレフタレート樹脂等は機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ、加工性が良好であるがゆえにエンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品等の広汎な用途に使用されている。
【0004】
かかる結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独でも種々の成形品に用いられているが、利用分野によってはその性質、特に機械的性質を改善する目的で、様々な強化剤、添加剤を配合することが行われてきた。そして、高い機械的強度、剛性の要求される分野においては、ガラス繊維、カーボン繊維等に代表される繊維状の強化剤を用いることが周知である。
【0005】
しかしながら、繊維状強化剤を含む結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、剛性等は確かに改善されるが、得られる成形品の表面外観が強化充填剤自体の浮き出しや、強化充填剤による流動性の低下によるフローマーク等により、不良となることがあり、良好な外観を得ることが困難である。
【0006】
特にポリブチレンテレフタレートの如く、結晶性の高いポリマーを用いる場合には、成形時の結晶化に伴い、金型への転写性も悪いため、満足する外観を得ることは困難である。
【0007】
また、意匠や機能上の目的から成形品の形状が複雑化することに伴い、単純な平板形状ではなく、リブやボスが配置された成形品が実用的に用いられるが、この場合、リブやボスの裏側にあたる部分は樹脂の収縮量や強化充填剤の配向に由来するヒケ等の外観不良を発生しやすく、満足する外観を得ることが困難である。
【0008】
これらの問題を解決する方法として、強化系ポリブチレンテレフタレート樹脂にポリエチレンテレフタレート(特許文献1)やポリカーボネート(特許文献2)等の異種ポリマーを配合することが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1のポリエチレンテレフタレートを配合する方法では、光沢は改善されるもののガラス繊維浮きやヒケの改善が不充分であり、またバリ発生等、成形性が悪化し、後加工が必要になる不具合や成形サイクルの遅延があり実用性に問題がある。また、ヒケのレベルも薄肉の成形片では悪くはないが、大型の実用部品では流動性が不充分となりヒケが改善されないという不具合があった。
【0010】
特許文献2の変性ポリブチレンテレフタレートにポリカーボネート、結晶化核剤等を配合した組成物では、比較的良好な外観・ヒケ・成形性のバランスをとることが可能であるが、そらに良好な外観・成形性(特に離型性)の向上が望まれてきている。
【0011】
また、表面外観の問題を解決するためには、タルク・炭酸カルシウム等の微粉末充填剤を添加する方法等が知られているが、このような微粉末充填剤では高い機械的強度、剛性を得ることはできない。
【0012】
一方、自動車の外板用途で際立った良光沢と耐衝撃性のバランスを実現させるために、ポリアルキレンテレフタレートや芳香族ポリカーボネートに特定の形状を有する針状の微粒子状無機質添加剤を配合することも提案されているが(特許文献3)、構造部材として好適な機械的強度や剛性が得られず、またヒケ、成形性等の改善レベルも不充分であった。
【0013】
更に、かかる分野の部品成形においては、良外観を得る目的で、樹脂温度を上げ、組成物の流動性を向上させる方法、あるいは金型温度を上げることで結晶化速度を遅らせ、転写性を向上させる方法等が一般的に用いられているが、かかる成形面での改良には限界があり、無理に樹脂温度を上げると、樹脂が熱分解し、ガスの発生・金型汚染等を引き起こす。また金型温度を上げることにより成形サイクル時間が長くなり、量産性が損なわれるなどの問題があった。また、成形性を改善するために、エステル化合物やワックス等を離型剤として用いることも一般的に知られているが、かかる離型剤の配合は塗装の乗りを悪化させるため、かかる分野での使用については制約があった。
【0014】
そのため、高い機械的強度、剛性を有し、良好な外観を有し離型性が良好であり、かつ塗装性にも優れた材料の開発が望まれていた。
【0015】
【特許文献1】
特開平8−120166号公報
【特許文献2】
特開平9−291204号公報
【特許文献3】
特開平7−149948号公報
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題に鑑み、強化充填剤を添加したポリブチレンテレフタレート樹脂組成に関して優れた表面外観性、成形性を得るため鋭意検討した。その結果、特定の変性ポリブチレンテレフタレート共重合体にポリカーボネート樹脂を併用し、かつ特定の強化充填剤と離型剤を併用することにより、多量の無機充填剤を配合しながら、得られた成形品表面は充填剤浮きが目立ち難く、非常に良好な外観を有し、かつ優れた成形性、塗装性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明は
(A) 5〜30モル%のイソフタル酸ユニットを含有する固有粘度(IV)が0.60〜0.80の変性ポリブチレンテレフタレート樹脂95〜55重量%と、
(B) ポリカーボネート樹脂5〜45重量%からなる樹脂成分 100重量部に対し、
(C) ガラス繊維と、
(D) 平均繊維長40〜200 μm の針状ケイ酸カルシウム(D-1) 、粒子径5〜60μm の粒子状もしくは板状充填剤(D-2) から選ばれる1種以上
とからなる混合充填剤((C) +(D) )40〜150 重量部及び
(E) 炭素数26以上の脂肪族カルボン酸を主たる構成成分とするエステル化合物0.1 〜5重量部
を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。
【0019】
まず、本発明の樹脂材料の基体樹脂である(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂とはテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と炭素数4のアルキレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体を重縮合反応して得られるポリブチレンテレフタレートを主成分とし、これに5〜30モル%のイソフタル酸をコモノマーユニットとして導入した共重合体である。イソフタル酸は、エステル形成可能な誘導体、例えばジメチルエステルの如き低級アルコールエステルの形で重縮合に使用し、コポリマー成分として導入することも可能である。
【0020】
ここでイソフタル酸コモノマーユニットの導入量は5〜30モル%であり、好ましくは10〜30モル%であり、特に好ましくは10〜20モル%である。導入量が5モル%未満では、結晶性が高いため、金型への転写性が悪く、充分な外観を得ることが困難である。また導入量が30モル%を超えると、本来のポリブチレンテレフタレートの優位点である強度および熱安定性の低下が大きく、かつ結晶化が著しく低下、遅延されることで、成形サイクルの低下、離型性の低下を引き起こし、実用的に用いられない問題を生じる。
【0021】
本発明で用いられる変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶剤としてo−クロロフェノールを用い、25℃で測定した固有粘度(IV)が0.60〜0.80(dl/g)、好ましくは0.60〜0.70の範囲であることが重要である。IV値が0.60より小さい場合、著しく靱性が低下し好ましくない。また、IV値が0.80より大きい場合、流動性が低下し良外観が得られず好ましくない。
【0022】
また本発明では、離型性の向上や成形サイクルの短縮を目的として、上記変性ポリブチレンテレフタレート樹脂に少量の未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を添加したものを(A) 成分として使用してもよい。未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の添加量は、変性及び未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の総重量に対して、好ましくは0〜15重量%であり、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂に含まれるイソフタル酸ユニット量が5〜30モル%であり、かつ添加後のポリブチレンテレフタレート樹脂のIV値が0.60〜0.80の範囲であれば、何れの粘度の未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂も用いることが可能である。押出し、成形条件によってIV値が変化するが、成形品のIV値が上記範囲内であれば本組成物として特に問題はない。
【0023】
次に本発明では、(B) ポリカーボネート樹脂が添加される。
【0024】
ポリカーボネート樹脂は、溶剤法、即ち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで、好適に使用し得る二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAが好ましい。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の二価フェノールで置換したものであってもよい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4 −ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物又はビス(3,5 −ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5 −ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類を挙げることができる。これら二価フェノールは二価フェノールのホモポリマー又は2種以上のコポリマーであってもよい。更に本発明で用いるポリカーボネート樹脂は多官能性芳香族化合物を二価フェノール及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0025】
本発明に用いるポリカーボネートは特に高流動性のものが好ましく、溶融粘度(300 ℃、剪断速度1000sec-1)が0.20〜0.50 kPa・sec の範囲のポリカーボネートが好ましく用いられ、より好ましくは0.20〜0.30 kPa・sec のものである。ポリカーボネートの溶融粘度が0.20未満では物性低下が著しく、また0.50を超えると流動性の大幅な低下が生じ、好ましくない。
【0026】
又、ポリカーボネート(B) の添加量は、(A) 、(B) 成分の合計中、5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%である。過少の場合は本発明の目的とする成形品の良好な外観(特にひけ)が劣り、過大の場合は成形サイクルの増加、離型性の悪化等、成形上の問題が生じ好ましくない。
【0027】
変性したポリブチレンテフタレート共重合体を単独に使用しても、ある程度外観は改善されるものの、その効果は充分ではなく、また強度低下および熱安定性の低下が大きく、強化剤の添加効果が減少する。また未変性のポリブチレンテレフタレート樹脂にポリカーボネート樹脂を添加した場合も外観改良の効果は認められるものの、その効果は充分でなく、大量に無機充填剤を添加した場合、充填剤の表面への浮き出しを抑制することは困難である。
【0028】
次に本発明で用いられる混合充填剤((C) +(D) )は、ガラス繊維(C) と、平均繊維長40〜200 μm の針状充填剤(D-1) 、粒子径5〜60μm の粒子状もしくは板状充填剤(D-2) から選ばれる1種以上との混合物であり、機械的強度、剛性および耐熱性、電気的性質等の性能に優れた成形品を得るために必須とされる成分である。強化充填剤として繊維状充填剤を単独で用いる場合、機械的特性は良好であるが、微小な凹凸状外観が目立ち外観上好ましくない。また、その他の粒子状もしくは板状充填剤を単独で用いる場合、機械的特性の低下を招き、また充填剤の大量配合により流動性の低下を招くことから、いずれも好ましくない。
【0029】
ガラス繊維(C) としては、Aガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成や、チョツプドストラント、ロービングガラス等の配合時のガラス繊維の形態を問わず、公知のいかなるガラス繊維も使用可能である。
【0030】
特に代表的なガラス繊維としては、繊維径5〜18μm のEガラス製ガラス繊維が好ましく用いられ、特に好ましくは繊維径9〜14μm のEガラス製ガラス繊維である。
【0031】
次に、針状充填剤(D-1) としては、平均繊維長40〜200 μm 、好ましくは60〜180 μm 、特に好ましくは80〜180 μm 、平均繊維径6〜14μm のケイ酸カルシウムが好ましいものとして挙げられる。
【0032】
また、粒子状もしくは板状充填剤(D-2) としては、粒子径5〜60μm 、好ましくは10〜55μm 、アスペクト比20〜50のマイカ、例えばフロゴバイトまたはマスコトバイトが、高い機械的特性を保持した上でなおかつ良外観を得るため好ましく用いられる。
【0033】
(C) +(D) 成分の混合充填剤の配合量は、(A) 成分と(B) 成分からなる樹脂成分の合計 100重量部に対し、40〜150 重量部、好ましくは60〜150 重量部である。特に好ましくは、(C) 成分が50〜120 重量部で、(D-1) 成分及び/又は(D-2) が5〜30重量部の場合である。
【0034】
(C) +(D) 成分の配合量が過小であると、外観は良好ではあるが、機械的強度や剛性(曲げ弾性率)が低く実用に耐えない、。また、過大であると、靱性の低下から機械的強度の低下を招き、また流動性の悪化や金型への転写性の悪化、充填剤の浮きなどが生じ、成形品外観を著しく悪化させるため好ましくない。
【0035】
又、これらの充填剤の使用にあたっては、必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。この例を示せば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物がいずれも好ましく用いられる。これ等の化合物は予め表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。また、併用される官能性表面処理剤の使用量は、充填剤に対し0〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0036】
次に本発明に用いられる(E) 炭素数26以上の脂肪族カルボン酸を主たる構成成分とするエステル化合物としては、炭素数26以上の脂肪族カルボン酸と1価又は多価アルコールのエステルが好ましく用いられる。
【0037】
炭素数が26未満の脂肪酸を構成成分とするエステル化合物を用いた場合、離型性は良好となるが、成形品表面への染み出しの影響からか、塗装性の低下が生じ好ましくない。
【0038】
特に好ましくは、モンタン酸エステルを70重量%以上含む脂肪酸エステルであり、モンタン酸と炭素数18〜36の1価の脂肪族アルコールのエステル、モンタン酸とエチレングリコール、グリセリンの部分エステル及び/又はフルエステル等が用いられる。
【0039】
(E) 成分のエステル化合物の配合量は、(A) 成分と(B) 成分からなる樹脂成分の合計 100重量部に対し、0.1 〜5重量部、好ましくは0.3 〜3重量部、特に好ましくは0.5 〜2重量部である。
【0040】
さらに本発明の組成物には、その目的に応じ所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を更に添加併用することができる。例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶化核剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤等を配合することが可能である。特に酸化防止剤は本発明の組成物の熱安定性を向上させるため、有効であり、具体的には、ヒンダードフェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系等の化合物が使用できる。
【0041】
その中でもヒンダードフェノール系化合物およびリン系化合物の1種または2種以上の併用が効果的である。
【0042】
特にリン系安定剤の添加は(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ポリカーボネート樹脂のエステル交換を抑制する効果が高く、得られた組成物はより高い熱安定性を示す。
【0043】
ここで使用する酸化防止剤の添加量は、(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ポリカーボネート樹脂との合計100 重量部あたり0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部である。
【0044】
また、成形性を改善する目的で、ボロンナイトライド、タルク等の公知の無機結晶化核剤や、ロジン酸誘導体、エステル金属塩等の公知の有機結晶化核剤を用いることが可能であり、(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B) ポリカーボネート樹脂との合計100 重量部あたり好ましくは0.01〜2重量部が配合される。
【0045】
かかる公知の物質は、1種のみでなく2種以上を併用してもよい。
【0046】
更に又、樹脂成分として本発明の目的を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂(例えばアクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)、軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/エチルアクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエステルエラストマーなど)を添加することもでき、これらの樹脂は、1種のみでなく2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練込押出してペレットを調製し、しかる後成形する方法、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体としてこれ以外の成分と混合し添加することは、これらの成分の均一配合を行う上で好ましい方法である。
【0048】
樹脂を金型に充填するための成形法としては、射出成形法、押出圧縮成形法等があるが射出成形法が一般的である。
【0049】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
尚、以下の例に示した物性評価の測定法は次の通りである。
(1)物性
a.流動性
東洋精機製作所製キャピログラフを使用して測定した溶融粘度を流動性として評価した。詳細な条件は以下の通りである。
【0051】
測定ポイント;SR=1000
温度;260 ℃
キャピラリー;径φ1.0
長さ;20mm
b.引張強度
ISO−527(試験片ISOタイプ型;厚み4mm)に準じて測定した。
c.曲げ強度・弾性率
ISO−178に準じて測定した。
【0052】
また外観状態および成形性については下記の方法にて測定した。
(2)表面外観
図1に示すモデル試験金型(自動車アウトドアハンドルエスカッション)を用いて下記条件にて成形したサンプルの表面状態を観察し評価した。
【0053】
成形機 住友重機械工業(株)製SG−150U SYCAP−MIV
(成形条件)
シリンダー温度(℃) ノズル 265−265−265−250
射出圧力 80MPa
射出速度 35mm/sec
金型温度 95℃
a.表面外観−1
上記成形サンプルの表面状態を目視にて観察し、充填剤の表面への浮き出し状態を評価し、下記点数をつけた。
【0054】
5;表面全体に充填剤の浮きが全くなく、均一な表面を示す
4;表面一部に充填剤の浮きがほんの僅かに見られる
3;表面一部に充填剤の浮きが見られる
2;表面数カ所に充填剤の浮きが多く見られる
1;表面全体に充填剤の浮きが激しく見られる
b.表面外観−2
上記成形サンプルのボス裏のひけレベルの状態を目視観察および輪郭形状測定機((株)ミツトヨ製SV600)にて評価し、下記点数をつけた。
【0055】
5;表面にひけマークが全く見られず、ひけレベルがほとんど0μm である
4;表面に僅かにひけが見られ、ひけレベルが5μm 以下である
3;表面に多少ひけが見られ、ひけレベルが5〜10μm である
2;表面にひけが見られ、ひけレベルが10〜20μm である
1;表面に大きくひけが見られ、ひけレベルが20μm 以上である
c.表面外観−3
上記成形サンプルの表面状態を目視にて観察し、表面のゆず肌(みかん肌)状態を評価し、下記点数をつけた。
【0056】
5;表面全体が平滑で均一である
4;表面にほんの僅かに細かい凹凸が見られる
3;表面に多少凹凸が見られる
2;表面に大きな凹凸が見られる
1;表面に大きな凹凸が見られ、且つうねりのある表面を示す
(3)成形性
図1に示すモデル試験金型(自動車アウトドアハンドルエスカッション)を用いて、下記の基本条件にて安定成形後、冷却時間を短縮し連続成形性を評価した。
【0057】
成形機 住友重機械工業(株)製SG−150U SYCAP−MIV
(基本成形条件)
シリンダー温度(℃) ノズル 265−265−265−250
射出圧力 80MPa
射出速度 35mm/sec
金型温度 95℃
成形サイクル;射出・保圧時間12sec 、冷却時間23sec 、中間時間15sec
a.成形性−1(成形サイクル)
上記基本成形条件にて成形が安定した後、冷却時間を徐々に短縮し、各時間の連続成形性を調べる。金型開き時のスプルー及びランナーの折れが発生しない最短冷却時間を限界成形サイクルとする。
b.成形性−2(離型性)
上記基本成形条件にて成形が安定した後、冷却時間を徐々に短縮した時の成形品の離型性を調べる。離型時の突出しピン跡が発生しない最短冷却時間を離型性とする。
(4)塗装性
下記条件で成形した120mm ×120mm ×3t平板に関西ペイント(株)製の二液ウレタン塗料(レタンPG60)をコート塗装し、80℃×30分乾燥後、一昼夜放置し、JIS K5400に準拠し碁盤目試験を行い塗装性を評価した。
【0058】
成形機 住友重機械工業(株)製SG−150U SYCAP−MIV
(基本成形条件)
シリンダー温度(℃) ノズル 265−265−265−250
射出圧力 80MPa
射出速度 35mm/sec
金型温度 95℃
成形サイクル;射出・保圧時間15sec 、冷却時間20sec 、中間時間15sec
実施例1〜11、比較例1〜14
表1〜2に示す各成分を表1〜2に示す割合で二軸押出機(日本製鋼製TEX30)に供給し、シリンダー温度260 ℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を用いて上記各種評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0059】
尚、実施例・比較例で用いた各成分の詳細は以下の通りである。
(A) 変性ポリブチレンテレフタレート樹脂
(A-1) ;ジメチルイソフタレートを12.5モル%共重合することにより変性したポリブチレンテレフタレート共重合体(IV=0.65);ウィンテックポリマー(株)製200JP
(A-2) ;ジメチルイソフタレートを12.5モル%共重合することにより変性したポリブチレンテレフタレート共重合体(IV=0.85);上記(A-1) を用いて、窒素通気下で170 ℃×40時間の固相重合処理を行ってIVを調整したもの
(A-0) ;未変性ポリブチレンテレフタレー樹脂(IV=0.65);ウィンテックポリマー(株)製200FP
(B) ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ユーピロンH−3000
(C) 、(D) 充填剤
・(C) ガラス繊維
日東紡(株)、CS3PE941、平均繊維径13μm
・(D-1) 針状充填剤
(D-1-1) ウォラストナイト、NYCO Minerals,Inc NAGLOS8(平均繊維径8μm 、平均繊維長136 μm 、アスペクト比17)
(D-1-2) ウォラストナイト、NYCO Minerals,Inc NAGLOS12(平均繊維径12μm 、平均繊維長156 μm 、アスペクト比13)
(D'-1-1)ウォラストナイト、NYCO Minerals,Inc NAGLOS4(平均繊維径4μm 、平均繊維長32μm 、アスペクト比8)
(D'-1-2)ウォラストナイト、NYCO Minerals,Inc NYAD G(平均繊維径40μm 、平均繊維長600 μm 、アスペクト比15)
・(D-2) 粒子状・板状充填剤
(D-2-1) フロゴバイト、(株)レプコ、S−325(平均径27μm 、アスペクト比30)
(D-2-2) マスコバイト、(株)レプコ、M−200W(平均径50μm 、アスペクト比40)
(D-2-3) マスコバイト、(株)レプコ、M−325W(平均径27μm 、アスペクト比40)
(D'-2-1)マスコバイト、(株)山口雲母工業所、マイカ粉A−11(平均径2〜3μm )
(D'-2-2)マスコバイト、(株)レプコ、M−100W(平均径65μm 、アスペクト比50)
(E) エステル化合物
(E-1) モンタン酸のエステルワックス、クラリアントジャパン(株)、Luzawax-EP、リコルブWE1
(E-2) モンタン酸のエステルワックス、ヘキストインダストリー(株)、コルブWE4
(E'-1)ソルビタン脂肪酸エステル、理研ビタミン(株)、リケマールB−150
(E'-2)ペンタエリスリトールテトラステアレート、日本油脂(株)、ユニスターH−476
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は特定組成の共重合ポリブチレンテレフタレートにポリカーボネート樹脂をブレンドし、更に特定充填剤を添加することにより、高い機械強度、剛性を有し、良好な成形性、離型性、塗装性を有しながら、非常に優れた成形品外観を示す。この組成物によって得られる成形品は特に高強度かつ良好な外観が要望される自動車・電機および建材等の内外装部品に応用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は実施例において表面外観の評価に用いたモデル試験金型の形状を示す図である。
Claims (7)
- (A) 5〜30モル%のイソフタル酸ユニットを含有する固有粘度(IV)が0.60〜0.80の変性ポリブチレンテレフタレート樹脂95〜55重量%と、
(B) ポリカーボネート樹脂5〜45重量%からなる樹脂成分 100重量部に対し、
(C) ガラス繊維と、
(D) 平均繊維長40〜200 μm の針状ケイ酸カルシウム(D-1) 、粒子径5〜60μm の粒子状もしくは板状充填剤(D-2) から選ばれる1種以上
とからなる混合充填剤((C) +(D) )40〜150 重量部及び
(E) 炭素数26以上の脂肪族カルボン酸を主たる構成成分とするエステル化合物0.1 〜5重量部
を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 - (D-2) 粒子状もしくは板状充填剤がフロゴバイトまたはマスコトバイトである請求項1記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (E) エステル化合物が、モンタン酸エステルを 70 重量%以上含む脂肪酸エステルである請求項1又は2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 請求項1〜3の何れか1項記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるドアミラー。
- 請求項1〜3の何れか1項記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるインナーミラー用のステー。
- 請求項1〜3の何れか1項記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるアウターハンドル。
- 請求項1〜3の何れか1項記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるワイパー部品。
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