JP3928708B2 - 硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤及び該被膜を形成した物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反りがない被膜が得られる、プラスチック基材等への硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤、及び硬質保護被膜を形成した物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
光硬化型シリコーンコーティング剤は、硬化時間が短くてすみ、熱エネルギーによって損傷を受けるような基材でも、塗工後に加熱することなく光照射により硬化させることができるという利点を有し、このため様々な分野で各種の光硬化型シリコーンコーティング剤が開発されている。
【0003】
光硬化型、特に紫外線硬化型シリコーンの硬化形態は、主に次の3種類である。
(1)アクリル官能性シリコーンをラジカル開裂型光触媒の存在下に紫外線で硬化させるタイプ。
(2)Si−Vi(ビニル)基とS−H基をラジカル開裂型光触媒の存在下に紫外線で硬化させるタイプ。
(3)エポキシ官能性シリコーンをカチオン発生型触媒の存在下に紫外線で硬化させるタイプ。
【0004】
ここで、(1)のタイプは、硬化は速いが、酸素による硬化阻害があるため、不活性ガス雰囲気下で反応を行う必要があり、装置上の工夫を要し、不活性ガスのランニングコストがかかるという欠点がある。
また、(2)のタイプは、酸素による硬化阻害が少なく硬化性に優れているが、メルカプト基を含有するため、不快臭が強くて作業者にとって好ましくなく、しかも組成物の安定性が悪く、シェルフライフが短いという欠点を有する。
更に、(3)のタイプは、紫外線により硬化し、酸素による硬化阻害もなく、不快臭もなく、基材に対する密着性がよいため、非常に優れているが、反面、硬化時の雰囲気中の湿度により硬化が阻害されるという欠点を有している。
【0005】
(3)のタイプの上記した欠点を克服するため、ラジカル重合性物質と光ラジカル開始剤を添加することにより、カチオン重合とラジカル重合を同時に行わせる手法が、従来より検討されてきている。
【0006】
一方、カチオン重合系へのシリコーン化合物を導入する方法として、特開昭56−38350号公報ではエポキシ基を有するシロキサン化合物とビスアリールヨードニウム塩からなる紫外線硬化性組成物が、特開昭58−213024号公報ではエポキシ基を有するシロキサン化合物又はアクリル基を有するシロキサン化合物、更には両方の官能基を有するシロキサン化合物を紫外線硬化させることが、特開平11−104166号公報ではエポキシ変性シリコーンと光カチオン重合開始剤からなる離型フィルムが、特公平6−89109号公報、特開平7−156267号公報では脂環式エポキシ官能性シロキサン、有機脂環式ポリエポキシド、光カチオン重合開始剤からなる組成物が、特開平8−269293号公報では脂環式エポキシ基含有シリコーングラフト重合体とオニウム塩系光硬化触媒からなる組成物が開示されている。ここで挙げられているエポキシ基を有するシロキサン化合物は直鎖状ジメチルポリシロキサンの官能基の一部をエポキシ基で置換したもので、離型性を重視したものであり、いずれも柔らかい被膜を形成するコーティング剤である。
【0007】
また、特開2001−158851号公報では、エポキシ基を有する分子量500〜50万のシロキサン化合物と、光カチオン重合開始剤からなる組成物を開示している。ここで使用されるシロキサン化合物はアルコキシシランの加水分解縮合物であり、低分子量に制御することは困難であり、実施例中で合成したシロキサン化合物の分子量もいずれも2500以上であり、高硬度な被膜を得ることは困難である。
【0008】
特開平9−143248号公報では、エポキシ化合物、脂環式エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、光カチオン重合開始剤からなる組成物を開示している。このなかでエポキシ化合物として、脂環式エポキシ基を有する環状シロキサン化合物が例示されているが、オルガノシロキサンは直鎖状ジメチルポリシロキサンの末端をエポキシ基で置換したものであり、先に述べたものと同様の効果を期待するものである。
【0009】
特開2001−40066号公報においては、脂環式エポキシ基含有シリコーングラフト重合体、脂環式エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、光カチオン重合開始剤からなる組成物が開示されている。このなかで脂環式エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして、脂環式エポキシ基を有する環状シロキサン化合物や、側鎖に複数個の脂環式エポキシ基を有する環状シロキサン化合物が例示されているが、硬化膨張についての検討はなされていない。
【0010】
更に、特開2001−187812号公報では、酸化物粒子、ラジカル重合性不飽和基、エポキシ基で修飾した粒子がカール性に優れることを開示している。しかし、一般にカチオン硬化系が、ラジカル硬化系に比べて、硬化収縮がないことに着目して、ラジカル硬化系の硬化収縮を抑制したものにすぎない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、反りが殆どない被膜を形成する硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤及び該硬質保護被膜を形成した物品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、比較的低分子で、エポキシ基を多く含有する特定の脂環式エポキシ基変性シリコーンと、それに溶解可能な光酸発生剤を含有する組成物が、硬化収縮が殆どないか、もしくは硬化膨張することを見出し、更に、ラジカル硬化系、縮合硬化系等の硬化収縮のある硬化性樹脂を組み合わせることで、反りや硬化収縮が殆どない被膜を形成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
ここで、硬化膨張のメカニズムについては、エポキシ基が光照射によって発生した酸によって反応し、エポキシ環の開環と、架橋密度の高い架橋によって硬化歪みがかかり、空気中の水分等によってシロキサン結合が加水分解され、シロキサン解裂・再配列が起こることによって歪みが解消され、膨張が起こると推定している。実際に水分を含まない系では硬化膨張は起こりにくいことが確認され、一般的な空気中の環境下のわずかな水分で、本発明で見出された硬化膨張は起こるものである。
【0014】
従って、本発明は、
(A)下記一般式(1)
−R1RSiO2/2− (1)
(式中、Rは水素原子又は一価炭化水素基、R1はエポキシシクロヘキシル基を有する有機基を示す。)
で示される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR1を有し、分子量が500〜2100、R1当量(R11mol当たりの重量)が180〜220で、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物 100重量部
(B)(A)成分に溶解可能な光酸発生剤 0.1〜5重量部
(C)硬化収縮性のある硬化性樹脂 1〜400重量部
を含有することを特徴とする硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤、及び該コーティング剤を塗装・硬化してなる硬質保護被膜を形成した物品を提供する。
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤の(A)成分は、下記一般式(1)
−R1RSiO2/2− (1)
(式中、Rは水素原子又は一価炭化水素基、R1はエポキシシクロヘキシル基を有する有機基を示す。)
で示される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR1を有し、分子量が500〜2100、R1当量(R11mol当たりの重量)が180〜220で、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物である。
【0016】
上記シリコーン化合物と、後述する(B)成分の光酸発生剤及び(C)成分の硬化収縮性のある硬化性樹脂を組み合わせ、光照射することにより硬化させることで、反りのない被膜が得られる。
【0017】
(A)成分のシリコーン化合物は、1分子中に少なくとも3個のR1を有するが、R1は特に1分子中に4〜8個有することが好ましい。1分子中のR1が3個未満だと、高硬度の被膜が得られない。
【0018】
(A)成分のシリコーン化合物は、分子量が500〜2100、特に700〜1900が好ましい。分子量が500未満だと、硬化歪みが起こりにくく、2100を超え、R1当量が180〜220の化合物は、合成が困難であることがあり、工業的に好ましくない。また、R1当量(R11mol当たりの重量)は、180〜220、特に184〜216が好ましい。R1当量が180未満だと、−R1RSiO2/2−単位のみで構成した場合、合成するのは工業的に困難であり、220を超えると、R1の含有量が少なくなり、(A)成分の硬化膨張が少なくなって反りの発生があるうえ、十分な硬度が得られなくなる。
【0019】
更に、(A)成分のシリコーン化合物は、脱アルコール反応によって、硬化収縮が起こることを防ぐ点から、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物である。
【0020】
(A)成分のシリコーン化合物は、硬化膨張が起こり易い直鎖構造もしくは環構造が好ましい。直鎖構造体としては、下記一般式(2)
【化4】
(式中、R、R1は上記と同じ、R2はR又はR1を示し、aは1〜10(但し、a=1の場合は両末端のR2はR1であり、a=2の場合はR2の少なくとも一つはR1である。)、bは0〜8、a+b=2〜10の整数であり、特に、aは4〜8、bは0〜4、a+b=4〜8が好ましい。各R、R1、R2は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される直鎖状シリコーン化合物が好ましく、特に下記一般式(2’)
【化5】
(式中、R、R1、R2、a、bは上記と同じ。)
で表されるシリコーン化合物が好ましく、とりわけ下記一般式(3)
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)mSi(CH3)3 (3)
(式中、R1は上記と同じ、mは3〜10の整数、特に4〜8が好ましい。)
で表される直鎖状シリコーン化合物が好ましい。環構造としては、下記一般式(4)
【化6】
(式中、R、R1は上記と同じ、cは3〜5の整数、特に3〜4、dは0〜3の整数、特に0〜1、c+d=3〜5の整数、特に4が好ましい。)
で表される環状シリコーン化合物が好ましく、特に下記一般式(4’)
【化7】
(式中、R、R1、c、dは上記と同じ。)
で表される環状シリコーン化合物が好ましく、とりわけ下記一般式(5)
【化8】
(式中、R1は上記と同じ、nは3〜5の整数、特に4が好ましい。)
で表される環状シリコーン化合物が好ましい。
【0021】
ここで、R1は、エポキシシクロヘキシル基を有する有機基であり、具体的には3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等の3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル基が挙げられる。Rは水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては炭素数1〜20、特に1〜8のものが好ましい。具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等の一価炭化水素基や、これらの基の水素原子の一部又は全部がグリシジル基(但し、エポキシシクロヘキシル基は除く)、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基、アミノ基等で置換された基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、水素原子であり、特に好ましくはメチル基である。
【0022】
(A)成分のシリコーン化合物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンに4−ビニルシクロヘキセンオキシドを白金化合物等の触媒を用い、付加反応(ヒドロシリル化)させることによって得ることができる。
【0023】
具体的な化合物としては、下記に示すものが挙げられる。
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)5Si(CH3)3、
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)6Si(CH3)3、
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)7Si(CH3)3、
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)8Si(CH3)3、
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)9Si(CH3)3、
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)10Si(CH3)3、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)3Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)4Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)5Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)6Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)7Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)8Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)9Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)2((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)3((CH3)2SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)3((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)4((CH3)2SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)4((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)5((CH3)2SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)5((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)5((CH3)2SiO)3Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)6((CH3)2SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)6((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)6((CH3)2SiO)3Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)7((CH3)2SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)7((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)7((CH3)2SiO)3Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)7((CH3)2SiO)4Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)8((CH3)2SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)8((CH3)2SiO)2Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)8((CH3)2SiO)3Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)4(R6CH3SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)5(R6CH3SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)6(R6CH3SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)7(R6CH3SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)8(R6CH3SiO)Si(CH3)2R1、
R1(CH3)2SiO(R1CH3SiO)9(R6CH3SiO)Si(CH3)2R1、
(R1CH3SiO)3、
(R1CH3SiO)4、
(R1CH3SiO)5、
(R1CH3SiO)3((CH3)2SiO)、
(R1CH3SiO)3(C3H7(CH3)SiO)
(R1は上記と同じ、R6はメタクリロキシプロピル基を示す。)
【0024】
(B)成分は、(A)成分に溶解可能な光酸発生剤であり、光によってエポキシ環を開かせる能力のある開始剤であるならば、特に使用は限定されない。光酸発生剤としては、オニウム塩系光開始剤が好ましく、下記一般式で表されるジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、モノアリールジアルキルスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩等が挙げられる。
R7 2I+X-
R7 3S+X-
R7 2R8S+X-
R7R8 2S+X-
R7 3Se+X-
R7 4P+X-
R7N2 +X-
(式中、R7は炭素数6〜30のアリール基、R8は炭素数1〜30のアルキル基、X-はSbF6 -、AsF6 -、PF6 -、BF4 -、HSO4 -、ClO4 -、Cl-又はCF3SO3 -等の陰イオンを示す。)
【0025】
特に、(A)成分との相溶性の観点から、下記一般式(6)で示されるものが好ましい。
R4 2I+X- (6) (式中、R4は−C6H4−R5で示され、R5は炭素数6以上、好ましくは6〜24、特に6〜18のアルキル基、XはSbF6 -、AsF6 -、PF6 -、BF4 -、HSO4 -、ClO4 -、Cl-又はCF3SO3 -を示す。)
【0026】
ここで、R5の炭素数6以上のアルキル基としては、C6H13、C7H15、C8H17、C9H19、C10H21、C11H23、C12H25、C13H27、C14H29、C15H31、C16H33、C17H35、C18H37等が挙げられ、特にC12H25が好ましい。
【0027】
(B)成分の光酸発生剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜5重量部である。0.1重量部未満だと、硬化性が不十分で硬化膨張が起こらなくなり、5重量部を超えても、効果はなく、コスト的に問題が出てくる。
【0028】
(C)成分は硬化収縮性のある硬化性樹脂である。一般に、(A)成分の化合物を(B)成分で硬化させた場合には、硬化膨張するが、(C)成分の硬化収縮のある硬化性樹脂を組み合わせることにより、反りのない硬化被膜を得ることができる。
【0029】
(C)成分の硬化収縮のある硬化性樹脂としては、ラジカル硬化性樹脂、縮合硬化型樹脂等が挙げられ、中でもラジカル硬化性樹脂としては、特にアクリル系樹脂が好ましく、縮合硬化型樹脂としては、特にシリコーン系樹脂が好ましい。
【0030】
ラジカル硬化性アクリル系樹脂は、多官能(メタ)アクリレートをラジカル開始剤で重合することによって得られるものである。この場合、多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ナノンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
更に、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性官能基を有するアルコキシシランで処理したシリカゾル等を含んでいてもよく、また、下記一般式(7)〜(9)で示される(メタ)アクリロキシプロピル基を含有する環状シリコーンや、
(R7CH3SiO)3 (7)
(R7CH3SiO)4 (8)
(R7CH3SiO)5 (9)
下記一般式(10)で示される鎖状シリコーン等を使用してもよい。
(式中、R7は、(メタ)アクリロキシプロピル基、xは3〜100、yは0〜100の整数を示す。)
【0032】
ラジカル開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォルノプロパノン−1、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0033】
縮合硬化型シリコーン系樹脂としては、シラノールもしくはアルコキシ基を含有するシリコーン系樹脂であり、それらのシリコーン樹脂とエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル等の有機樹脂との反応物でもよい。
【0034】
シリコーン樹脂としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシランのアルキルアルコキシシランやテトラクロロシラン、エチルトリクロロシシラン、プロピルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシランのクロロシランやエポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基等を含有するアルコキシシラン等から選ばれる1種以上のアルコキシシランを部分加水分解もしくは完全加水分解により得られるものである。これらのシリコーン樹脂は、シラノールもしくはアルコキシ基を含有しており、硬化時に水、アルコールが発生し、体積収縮が起こる。
【0035】
これらの樹脂の添加量は、(A)成分100重量部に対して1〜400重量部、好ましくは5〜200重量部、特に好ましくは10〜100重量部である。(A)成分の硬化膨張の程度により、添加量を決めることによって、反りのない被膜が得られる。添加量が1重量部未満では、(C)成分の硬化収縮の影響が小さく、反りのある被膜となってしまい、400重量部を超えると、(C)成分の硬化収縮の影響が大きくなり、反りのある被膜となってしまう。
【0036】
本発明の上記(A)、(B)及び(C)成分を含有する硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤に、本発明の目的を損なわない範囲で有機溶剤、有機又は無機顔料、体質顔料、消泡剤、レベリング剤、滑り剤等の塗料用添加剤を配合してもよい。
【0037】
本発明の硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、TAC等のプラスチックフィルム等の表面に、通常の塗装法、例えばロールコート、グラビアコート、グラビアオフセットコート、カーテンフローコート、リバースコート、スクリーン印刷、スプレー及び浸漬法で塗装することができる。硬化塗膜の膜厚は用途により異なるが、0.5〜500μm程度、特に5〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0038】
硬化させるための光源としては、通常、200〜450nmの範囲の波長の光を含む光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することができる。照射量は特に制限されないが10〜5000mJ/cm2、特に20〜1000mJ/cm2であることが好ましい。硬化時間は通常0.5秒〜2分、好ましくは1秒〜1分である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は重量部を示す。
【0040】
合成例1(ラジカル硬化型アクリル系樹脂の合成)
スノーテックスO(日産化学製、固形分20重量%)56部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7.8部、イソプロピルアルコール155部の混合物を加熱して1時間還流させた。冷却後、上記溶液100部にトリメチロールプロパントリアクリレート31.5部とヘキサンジオールジアクリレート10.5部を加え、水酸化ナトリウムで中和した後、減圧下で溶剤を留去し、透明な溶液を得た。ダロキュアー1173(チバ製)0.3部を加えて、ラジカル硬化型アクリル系樹脂溶液(以下AC)を得た。
【0041】
合成例2(縮合硬化型シリコーン系樹脂の合成)
水3891部、キシレン654部の混合物を80℃に昇温し、そこへジメチルジクロロシラン160部、メチルトリクロロシラン153部、フェニルトリクロロシラン390部の混合物を1時間かけて滴下した。上記溶液を水洗し、溶剤を留去し、縮合硬化型シリコーン系樹脂(以下SI)を得た。
【0042】
[実施例1]
一般式(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3
(式中、Reは3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基を示す。)
で表されるシリコーン化合物100部に、(C12H25C6H4)2I+・SbF6 -2部、合成例1で合成したアクリル樹脂(AC)100部を混合して塗工液を作製した。この塗工液0.1mm厚のポリカーボネート(100×100×0.1mm)、3mm厚のポリカーボネート(100×100×3.0mm)にバーコーターNo.20で塗工した。直ちに紫外線を200mJ/cm2照射して硬化させた。
【0043】
硬化後、0.1mm厚のポリカーボネートの中心に対しての4つの角の浮き沈みを測定して、その平均値によって膜の伸縮を判定した。塗布面を上にして置いた場合に収縮して凹となる場合を+として、塗布面を下にして置いた場合に膨張して凹となる場合を−とした。その結果0mmであった。
【0044】
また、3mm厚のポリカーボネートのテーバー摩耗試験(摩耗輪:CS−10F、500g荷重、100回転)を行い、試験前後のHaze(曇り価)の変化によって、硬度を測定した。試験前後のΔHazeは15(%)であった。Haze(曇り価)の測定方法を下記に、結果を表1に示す。
Haze(曇り価)の測定法
Haze Meter NDH2000(日本電色工業社製)にて測定した。
【0045】
[実施例2]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3を(ReCH3SiO)4に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
実施例1の合成例1で合成したアクリル樹脂を、合成例2で合成したシリコーン樹脂(SI)に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
[比較例1]
実施例1のアクリル樹脂(AC)の使用量を500部に変えた以外は、実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
【0049】
[比較例2]
実施例1のアクリル樹脂(AC)の使用量を0.5部に変えた以外は、同様に行った。結果を表2に示す。
【0050】
[比較例3]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3を(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0051】
[比較例4]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3をβ−(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0052】
[比較例5]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3をRe(CH3)2SiOSi(CH3)2Reに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0053】
[比較例6]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3をRe(CH3)2SiO((CH3)2SiO)20Si(CH3)2Reに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例7]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3をRe(CH3)2SiO((CH3)2SiO)50Si(CH3)2Reに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0055】
[比較例8]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3を(CH3)3SiO(ReCH3SiO)4Si(CH3)3に変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0056】
[比較例9]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)3を(Re(CH3)2SiO)3CH3Siに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0057】
[比較例10]
実施例1の(CH3)3SiO(ReCH3SiO)8Si(CH3)33を(Re(CH3)2SiO)4Siに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
以上のように、1分子中に少なくとも3個のR1を有し、分子量が500〜2100、R1当量が180〜220で、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物、溶解可能な光酸発生剤、硬化収縮のある硬化性樹脂を含有するコーティング剤から、硬化後反りがなく、テーバー摩耗試験において、傷がつきにくい被膜が得られた。
比較例1及び2の結果から、(C)成分のアクリル樹脂の量が400部を超えるか、もしくは1部未満であると反りが発生した。
非シリコーン系の比較例3やReが2個で分子量が500未満の比較例5では反りはなかったが、傷がつき易かった。
また、アルコキシ基を有する比較例4では大きな収縮が見られた。
更に、剥離紙用途等に利用されている分子量が大きく、R1当量が大きい比較例6、7ではテーバー摩耗試験において、被膜が消失してしまうくらい、柔らかい被膜であった。
また、R1当量が220を超える比較例8や−R1CH3SiO2/2−単位を有さない比較例9、10では傷はつきにくかったが、反りが発生した。
【0060】
【発明の効果】
本発明の硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤によれば、反りがなく、テーバー摩耗試験において、傷がつきにくい被膜が得られる。
Claims (11)
- (A)下記一般式(1)
−R1RSiO2/2− (1)
(式中、Rは水素原子又は一価炭化水素基、R1はエポキシシクロヘキシル基を有する有機基を示す。)
で示される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR1を有し、分子量が500〜2100、R1当量(R11mol当たりの重量)が180〜220で、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物 100重量部
(B)(A)成分に溶解可能な光酸発生剤 0.1〜5重量部
(C)硬化収縮性のある硬化性樹脂 1〜400重量部
を含有することを特徴とする硬質保護被膜形成用光硬化性コーティング剤。 - (A)成分が下記一般式(3)
(CH3)3SiO(R1CH3SiO)mSi(CH3)3 (3)
(式中、R1は上記と同じ、mは3〜10の整数である。)
で表されるシリコーン化合物である請求項2記載のコーティング剤。 - (B)成分が下記一般式(6)
R4 2I+X- (6)
(式中、R4は−C6H4−R5で示され、R5は炭素数6以上のアルキル基、XはSbF6 -、AsF6 -、PF6 -、BF4 -、HSO4 -、ClO4 -、Cl-又はCF3SO3 -を示す。)
で表される光酸発生剤である請求項1乃至5のいずれか1項記載のコーティング剤。 - (C)成分がラジカル硬化性樹脂である請求項1乃至6のいずれか1項記載のコーティング剤。
- (C)成分がアクリル系樹脂である請求項7記載のコーティング剤。
- (C)成分が縮合硬化型樹脂である請求項1乃至6のいずれか1項記載のコーティング剤。
- (C)成分がシリコーン系樹脂である請求項9記載のコーティング剤。
- 請求項1乃至10のいずれか1項記載のコーティング剤を塗装・硬化してなる硬質保護被膜を形成した物品。
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