JP3928469B2 - 電気式脱イオン装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気式脱イオン装置に係り、詳しくは単位時間当りの脱イオン水(生産水)の生産水量が少ない場合に好適な電気式脱イオン装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気式脱イオン装置は、電極(陽極と陰極)同士の間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配列して脱塩室と濃縮室とを交互に形成し、脱塩室にイオン交換樹脂を充填した構成を有する。この電気式脱イオン装置にあっては陽極、陰極間に電圧を印加しながら脱塩室に被処理水を流入させると共に、濃縮室に濃縮水を流通させて被処理水中の不純物イオンを除去し、脱イオン水を製造する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の電気式脱イオン装置は、多数のフレーム、スペーサ及びイオン交換膜を交互に積層し、さらにエンドプレートを重ねたものであり、構成が複雑である。
【0004】
また、従来の電気式脱イオン装置は、陰極と陽極との間に複数の脱塩室と濃縮室とを交互に形成したものであるため、陰極と陽極との間の電気抵抗が大きく、両極間の印加電圧が高い。さらに、従来の電気式脱イオン装置の陽極電極室においては、電極面積が大きいために、塩素等の酸化剤の発生量が多い。
【0005】
本発明は、構成が簡易であると共に、電極間の印加電圧が低く、また、陽極電極室での塩素等の発生量を低減させることも可能な電気式脱イオン装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)の電気式脱イオン装置は、陰極と陽極との間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とが1枚ずつ配置され、該陰極とカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、該陽極とアニオン交換膜との間に濃縮室兼陽極室が設けられ、該カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、該脱塩室内にイオン交換体が充填されてなる電気式脱イオン装置であって、該濃縮室兼陰極室は、該カチオン交換膜に臨む面が凹所となった陰極室用プレートの該凹所にて構成され、該濃縮室兼陽極室は、該アニオン交換膜に臨む面が凹所となった陽極室用プレートの該凹所にて構成されており、各プレートの前記凹所の底面に沿って電極が設けられていることを特徴とする。
【0007】
かかる本発明の電気式脱イオン装置は、脱塩室が1室であり、且つこの脱塩室の両側にはそれぞれ陽極室を兼ねた濃縮室と陰極室を兼ねた濃縮室とが配置されているため、電極間距離が小さく、電極間の印加電圧が低い。本発明では、脱塩室が1室であり、単位時間当たりの生産水量が少ないが、小規模実験用、小型燃料電池用などには十分に実用することができる。
【0008】
本発明の電気式脱イオン装置は、濃縮室を兼ねる各電極室が、いずれも、イオン交換膜に臨む面を凹所としたプレートの該凹所によって構成されているので、各電極室の構造が簡易であり、電気式脱イオン装置の組立てが簡易である。
【0009】
本発明では、このプレートの凹所の底面に沿って電極を設ける。この電極としては、別体の板状の電極板、例えばチタン製の薄板に白金メッキを施したものを凹所底面に取り付けてもよいが、気相又は液相成膜法により成膜された膜状であることが好ましい。
【0010】
本発明では、電極面積を小さくすることにより、陽極電極室での塩素等の酸化剤の発生を減少させることができる。電極面積を小さくするためには、凹所底面に電極をメッシュ状に設けたり、あるいは凹所の底面に凹凸を設け、この凹凸の凹部にのみ電極を設けることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る電気式脱イオン装置の概略的な縦断面図である。図2はこの電気式脱イオン装置の分解斜視図である。
【0012】
図1に示す通り、陰極1と陽極2との間にカチオン交換膜3とアニオン交換膜4とを1枚ずつ配置し、陰極1とカチオン交換膜3との間に濃縮室兼陰極室5を形成し、陽極2とアニオン交換膜4との間に濃縮室兼陽極室6を形成し、カチオン交換膜3とアニオン交換膜4との間に脱塩室7を形成している。
【0013】
この実施の形態では、濃縮室兼陰極室5及び濃縮室兼陽極室6を形成するために、それぞれ凹所11,21付きのプレート10,20を用い、脱塩室7を形成するために方形枠状のフレーム30を用いている。
【0014】
凹所11,21は、それぞれプレート10,20の対向する板面から凹設された方形のものである。凹所11はカチオン交換膜3に臨んでおり、凹所21はアニオン交換膜4に臨んでいる。凹所11,21の底面に陰極1及び陽極2が設けられている。この実施の形態では、図2の通りこれらの陰極1及び陽極2はそれぞれメッシュ状に設けられている。
【0015】
この実施の形態では、プレート10の下辺に沿って陰極電極水の通水孔12が設けられ、プレート10の上辺に沿って濃縮水兼陰極電極水の通水孔13が設けられている。各通水孔12,13はそれぞれ複数の上下方向孔よりなるノズル部を介して濃縮室兼陰極室5内に連通している。
【0016】
また、プレート20の下辺に沿って陽極電極水の通水孔22が設けられ、プレート20の上辺に沿って濃縮水兼陽極電極水の通水孔23が設けられている。各通水孔22,23はそれぞれ複数の上下方向孔よりなるノズル部を介して濃縮室兼陽極室6内に連通している。
【0017】
フレーム30にあっては、上辺に沿って原水の通水孔31が設けられ、下辺に沿って脱イオン水取出用の通水孔32が設けられている。各通水孔31,32はそれぞれ複数の上下方向孔よりなるノズル部を介して脱塩室7内に連通している。
【0018】
なお、陰極1及び陽極2を形成するには、メッシュ状の導電体を凹所11,21の底面に取り付けてもよいが、気相又は液相成膜法によりメッシュ状の膜を成膜するのが好ましい。成膜された膜の厚さは例えば0.5〜10μm程度とされるが、これに限定されない。
【0019】
このような成膜法としては、真空蒸着、スパッタリング、液相メッキなどが例示される。具体的には、ポリプロピレン製プレートの凹所底面にメッシュ状にプラズマ等の表面処理を施し、白金を1μm程度の厚さに真空蒸着させることにより、メッシュ状電極を構成することができる。
【0020】
メッシュ状電極を形成するには、メッシュ型(斜交格子型)の凹条を凹所11,21の底面に設けておき、この凹所底面の凹条にのみ成膜してメッシュ状の電極を形成してもよい。
【0021】
プレート10、フレーム30及びプレート20をそれらの間にカチオン交換膜3及びアニオン交換膜4を介して積層し、ボルト等で締め付けることにより電気式脱イオン装置の構造体が構成される。この積層体を締め付けるためにプレート10,20の外側に押え板を配置してもよいが、プレート10,20を高強度材料にて製造した場合には、押え板は不要である。
【0022】
このプレート10,20は例えばポリプロピレン等の合成樹脂製とすることができるが、材料はこれに限定されるものではない。なお、プレート10,20を合成樹脂の射出成形により製作することにより、コストダウンを図ることができる。
【0023】
この電気式脱イオン装置内部の濃縮室兼用陰極室5及び陽極室6にはそれぞれカチオン交換樹脂8が充填されている。この陰極室5及び陽極室6に充填されるイオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂や、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を混合したものであってもよいが、樹脂の強度の点からはカチオン交換樹脂を用いるのが好ましい。脱塩室7にはカチオン交換樹脂8とアニオン交換樹脂9とが混合状態にて充填されている。
【0024】
このように構成された電気式脱イオン装置においては、陰極1と陽極2との間に電圧を印加した状態にて原水を脱塩室7に導入し、脱イオン水として取り出す。陰極電極水を濃縮室兼陰極室5に流通させ、陽極電極水を濃縮室兼陽極室6に流通させる。原水中のカチオンはカチオン交換膜3を透過し、陰極電極水に混入して排出される。原水中のアニオンはアニオン交換膜4を透過して陽極電極水に混入し、排出される。
【0025】
この電気式脱イオン装置にあっては、陰極1と陽極2との間にそれぞれ1個の脱塩室7、濃縮室兼陽極室6及び濃縮室兼陰極室5のみが配置されており、陰極1と陽極2との距離が小さい。そのため、電極1,2間の印加電圧が低くても十分に電極1,2間に電流を流して脱イオン処理することができる。
【0026】
なお、電極室が濃縮室を兼ねていることから、電極水の電気伝導度が高い。これによっても、電極1,2間の印加電圧が低くても電極1,2間に十分に電流を流すことが可能となる。
【0027】
電極室兼濃縮室5,6での通水方向は、脱塩室と並流通水でも図示の向流通水でもよいが、いずれの場合でも上昇流通水であることが望ましい。これは、各電極室兼濃縮室5,6には、直流電流によってH,O等の気体が発生するので、上昇流で通水し気体の排出を促進させ偏流を防ぐためである。
【0028】
本発明において、濃縮室兼陽極室及び濃縮室兼陰極室へ通水される電極水としては、原水を分岐してそれぞれの濃縮室兼電極室へ独立して通水するのが望ましい。この通水方式によれば、従来、一方の電極室流出水を他方の電極水として使用するのと異なり、脱塩室から各濃縮室兼電極室へ移動したイオン種が会合することがないため、スケールが発生しにくくなる。
【0029】
この実施の形態では、電極1,2がメッシュ状であり、電極表面積が小さい。そのため、濃縮室兼陽極室6において塩素等の酸化剤の発生量を低減することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の電気式脱イオン装置は、構成が簡易で製作が容易であると共に、印加電圧が低くて済む。また、本発明によると、電極面積を小さくし、塩素等の酸化剤の発生量を減少させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る電気式脱イオン装置の概略的な縦断面図である。
【図2】電気式脱イオン装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 陰極
2 陽極
3 カチオン交換膜
4 アニオン交換膜
5 濃縮室兼陰極室
6 濃縮室兼陽極室
7 脱塩室
8 カチオン交換樹脂
9 アニオン交換樹脂
10,20 プレート
11,21 凹部
30 フレーム

Claims (4)

  1. 陰極と陽極との間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とが1枚ずつ配置され、
    該陰極とカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、該陽極とアニオン交換膜との間に濃縮室兼陽極室が設けられ、
    該カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、
    該脱塩室内にイオン交換体が充填されてなる電気式脱イオン装置であって、
    該濃縮室兼陰極室は、該カチオン交換膜に臨む面が凹所となった陰極室用プレートの該凹所にて構成され、
    該濃縮室兼陽極室は、該アニオン交換膜に臨む面が凹所となった陽極室用プレートの該凹所にて構成されており、
    各プレートの前記凹所の底面に沿って電極が設けられていることを特徴とする電気式脱イオン装置。
  2. 請求項において、前記電極は気相又は液相成膜法により成膜された膜状であることを特徴とする電気式脱イオン装置。
  3. 請求項2において、前記凹所の底面が凹凸面となっており、電極はこの凹凸の凹部にのみ設けられていることを特徴とする電気式脱イオン装置。
  4. 請求項ないしのいずれか1項において、前記電極はメッシュ状に形成されていることを特徴とする電気式脱イオン装置。
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