JP4599669B2 - 電気的脱イオン装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気的脱イオン装置に係り、特に脱塩室の構成を改良した電気的脱イオン装置に係り、好適には処理水流量が10L/h以下程度の小型の電気的脱イオン装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気的脱イオン装置は、電極同士の間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配列して脱塩室と濃縮室とを交互に形成し、脱塩室にイオン交換体を充填した構成を有する。この電気的脱イオン装置にあっては陽極、陰極間に電圧を印加しながら脱塩室に被処理水を流入させると共に、濃縮室に濃縮水を流入させ被処理水中の不純物イオンを除去し、脱イオン水を製造する。
【0003】
第5図はプレートアンドフレーム型の電気的脱イオン装置の基本的な構成を示す分解図である。
【0004】
陰極側のエンドプレート1に沿って陰極電極板2が配置され、この陰極電極板2の周縁部に枠状の陰極用スペーサ3が重ね合わされる。この陰極用スペーサ3の上にカチオン交換膜4、脱塩室形成用の枠状フレーム5、アニオン交換膜6及び濃縮室形成用の枠状フレーム7がこの順に重ね合わされる。このカチオン交換膜4、脱塩室形成用の枠状フレーム5、アニオン交換膜6及び濃縮室形成用の枠状フレーム7を1単位として多数重ね合わされる。即ち、膜4、フレーム5、膜6、フレーム7が連続して繰り返し積層される。最後のアニオン交換膜6に対し枠状の陽極用スペーサ8を介して陽極電極板9が重ね合わされ、その上に陽極側エンドプレート10が重ね合わされて積層体とされる。この積層体はボルト等によって締め付けられる。
【0005】
上記の脱塩室用フレーム5の内側スペースが脱塩室となっており、この脱塩室にはイオン交換樹脂等のイオン交換体5Rが充填される。濃縮室用フレーム7の内側が濃縮室となっている。この濃縮室にはメッシュスペーサなどが配置される。
【0006】
このような装置にあっては、陽極9と陰極2の間に直流電流を通じ、且つ被処理水(原水)を被処理水流入ライン11を通して脱塩室内に通水せしめ、また、濃縮水を濃縮水流入ライン12を通して濃縮室8内に通水せしめる。脱塩室内に流入してきた被処理水はイオン交換樹脂の充填層を流下し、その際、該被処理水中の不純物イオンが除かれて脱イオン水となり、これが脱イオン水流出ライン13を経て流出する。
【0007】
一方、濃縮室内に通水された濃縮水は濃縮室内を流下するときに、イオン交換膜4,6を介して移動してくる不純物イオンを受け取り、不純物イオンを濃縮した濃縮水として濃縮水流出ライン14より流出する。電極室にはそれぞれ導入ライン15,16及び取出ライン17,18を介して電極水が流通される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の電気的脱イオン装置にあっては、脱塩室内を流入部から流出部へ水が短絡的に流れやすく、水とイオン交換樹脂との接触効率が悪い。さらに、脱塩室の下部においてイオン交換樹脂が自重で圧縮され、脱塩室の上部に隙間があき、イオン交換樹脂の充填率が低くなりがちであるという短所もある。
【0009】
本発明は、このような種々の短所を克服し、水とイオン交換体との接触効率が高く、イオン交換体等の充填密度も高い電気的脱イオン装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気的脱イオン装置は、電極同士の間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成し、脱塩室にイオン交換体を充填し、脱塩室に被処理水を通水し、濃縮室に濃縮水を通水するようにした電気的脱イオン装置であって、
該カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室形成用の枠状フレームが介在されており、該枠状フレームに被処理水の流入部と、脱塩された水の流出部とが設けられている電気的脱イオン装置において、該枠状フレームの該流入部から該流出部に向って蛇行するように該脱塩室が設けられており、該枠状フレームは、略長方形状であり、その長辺方向の一端側に流入部が設けられ、他端側に流出部が設けられており、前記脱塩室は、枠状フレームの短辺方向に延在する複数の横行部と、該横行部の一端側同士を連通する縦行部とを備えており、該横行部の該長辺方向の幅は5〜15mmであり、該横行部の該短辺方向の幅は該横行部の該長辺方向の幅の2.5〜5倍であり、すべての横行部の該短辺方向の幅の総和が200〜600mmであり、枠状フレームの厚みが1〜5mmであり、該脱塩室に充填されている該イオン交換体は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであることを特徴とするものである。
【0011】
かかる電気的脱イオン装置にあっては、脱塩室内において被処理水が蛇行して流れるため、被処理水とイオン交換体との接触効率が良く、また、脱塩室内の流路長が長くなるので、優れた処理水質を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明の電気的脱イオン装置にあっては、流入部から流出部に向う方向を上下方向とした場合、脱塩室内に水平方向の横行部を複数個配設した構成となる。このため、各横行部内のイオン交換体の充填高さが小さく、イオン交換体が圧縮されにくくなり、イオン交換体の充填率が高く維持され、脱塩効率が良くなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る電気的脱イオン装置の分解斜視図、第2図は枠状フレームの正面図、第3図は電気的脱イオン装置の通水系統図である。
【0014】
第1図の通り、陰極側のエンドプレート20に沿って陰極固定板21が配置される。この陰極固定板21に陰極22が設けられている。陰極固定板21の周縁部に枠状の陰極用フレーム23が重ね合わされる。この陰極用フレーム23の上にカチオン交換膜24、脱塩室形成用の枠状フレーム25、アニオン交換膜26及び陽極用フレーム27を介して陽極固定板29が重ね合わされ、その上に陽極側エンドプレート30が重ね合わされて積層体とされる。この積層体はボルト等によって締め付けられる。陽極固定板29に陽極28が設けられている。
【0015】
上記の脱塩室用フレーム25の内側スペースが脱塩室となっており、この脱塩室にはイオン交換樹脂等のイオン交換体70が充填される。陰極及び陽極用フレーム23,27の内側が電極室となっている。この電極室にはメッシュスペーサ23A,27Aが配置される。
【0016】
陰極用フレーム23によって形成される陰極室には陰極エンドプレート20の通水用の開口(図示略)及び陰極固定板21に設けられた開口32を介して陰極用電極水がフレーム23内の上部23aに流入する。この電極水は、フレーム23内の下部23bから陰極固定板21の開口33及び陰極エンドプレート20の開口34を介して流出する。なお、この実施の形態では、第3図の通り、陰極用電極水は陽極室の流出水となっている。
【0017】
陽極用フレーム27によって形成される陽極室の上部27aには、陽極エンドプレート30の通水用の開口41及び陽極固定板29の開口42を介して原水が電極水として導入される。この電極水は、フレーム27の下部27bから陽極固定板29の開口43及び陽極エンドプレート30の開口44を介して流出する。
前述の通り、この流出水が陰極用電極水として陰極室に流通される。
【0018】
枠状フレーム(脱塩室フレーム)25は、第2図の通り、略長方形状であり、長方形の長辺方向が上下方向となるように設置される。この枠状フレーム25の上部には被処理水の流入用の開口54が設けられ、下部には処理された水(脱塩水)の流出用の開口55が設けられている。
【0019】
カチオン交換膜24及びアニオン交換膜26には、この開口54、55と重なる位置に開口52,57が設けられている。また、エンドプレート30にも、この開口54,55と重なる位置に開口50,59が設けられている。
【0020】
枠状フレーム25内の脱塩室スペースにあっては、左右の側縁部から水平横方向に延出部63が交互に延設され、これによって脱塩室内には複数の横行部60が設けられている。
【0021】
左側縁からの延出部63は右側縁には達しておらず、右側縁からの延出部63は左側縁には達しておらず、これによって横行部60の端部同士は縦行部61によって連通されている。左側縁からの延出部63と、右側縁からの延出部63とが上下方向において交互に配置されているので、縦行部61も交互に左右に配置され、これによって脱塩室が一続きの蛇行形状となる。脱塩室形状の脱塩室の上部は通水孔64を介して前記開口54に連通しており、脱塩室の下部は通水孔65を介して前記開口55に連通している。
【0022】
この通水孔64,65は脱塩室フレーム25に穿孔されたものであってもよく、フレーム25の表面に設けられた溝であってもよい。また、2枚の薄いフレーム薄体を重ね合わせて構成されたフレームの場合であれば、このフレーム薄体の重ね合わせ面に溝を形成しておくことにより流路孔を形成することができる。
【0023】
枠状フレーム25の厚さは1〜5mmである。この枠状フレーム25の横行部60の縦幅(第2図の上下方向長さ)Lは5〜15mmである。横行部60の横幅(第2図の左右方向長さ)WはLの2.5〜5倍である。すべての横行部60の横幅Wの総和(すなわちWと横行部60の数との積)は200〜600mmである。
【0024】
このように構成された電気的脱イオン装置においては、陽極28と陰極22との間に直流電圧を印加し、開口50〜54を介して原水(被処理水)を脱塩室に流入させ、脱塩された水を開口55,56,57,59を介して流出させる。陽極室には開口41,42を介して原水を流入させる。開口43,44から流出する陽極電極水を開口32を介して陰極電極室に流入させ、開口33,34を介して流出させる。この陽極室及び陰極室からの流出水には、アニオン交換膜26及びカチオン交換膜24を通過した陽イオン及び陰イオンが含まれている。
【0025】
この電気的脱イオン装置にあっては、脱塩室内の流路が蛇行しており、流入部から流出部へ短絡的に水が流れることがない。また、横行部60の縦幅が小さく、該横行部60の下部におけるイオン交換体の圧縮がなく、イオン交換体と被処理水との接触効率がよい。さらに、延出部63が無い従来例のものに比べて脱塩室内の流路長が大きく、十分に脱イオンが行われる。
【0026】
なお、第3図では、被処理水は1個の脱塩室のみを通過するよう構成されており、陽極室と陰極室が濃縮室を兼用しているが、第4図の如く、複数の脱塩室をそれらの間に濃縮室を介在させて複数個積層し、且つ各脱塩室を直列に接続してもよい。なお、第4図では3個の脱塩室と、それらの間の2個の濃縮室とが積層配置されている。濃縮室はフレーム23,27と同一のフレームによって構成されており、スペーサ23A,27Aと同一のスペーサが該濃縮室内に配置されている。各濃縮室に原水が導入され、該濃縮室からの濃縮水は電極水と共に排出される。
【0027】
なお、第3,4図のいずれの電気的脱イオン装置においても、濃縮室の形状は、第2図と同様の延出部を有した蛇行状のものであってもよく、延出部を有しない従来タイプのものであってもよい。
【0028】
第3、4図では陽極室から流出した電極水を陰極室に流通させているが、これとは逆としてもよく、また陽極室と陰極室とに別々に原水を流通させてもよい。
【0029】
本発明は、処理水量10L/h以下の小型の電気的脱イオン装置に適用することができる。この小型の電気的脱イオン装置は家庭用燃料電池との組み合わせ又はラボ用純水製造装置として好適である。
【0030】
家庭用又は車載用の小型固体高分子型燃料電池では、固体高分子の保湿又は水素ガス改質のために純水が必要であり、限られたスペースの中で連続して純水を生成できる小型の電気脱イオン装置が必要となる。本発明の電気的脱イオン装置はコンパクトであり、限られたスペースに組み込まれる用途にきわめて好適である。
【0031】
【実施例】
第1〜3図に示す電気的脱イオン装置を次の仕様にて製作した。
【0032】
枠状フレーム25の厚さ 2.5mm
横行部60の横幅W 40mm
横行部60の縦幅L 12.5mm
W/L 3.2
横行部60の数(段数) 9
W×段数 360mm
延出部63の横辺方向長さ 27.5mm
延出部63の縦辺方向長さ 5mm
陰極充填量 12.5mL
イオン交換体 :カチオン交換樹脂(ダウケミカル社 650C)と、アニオン交換樹脂(ダウケミカル社 550A)とを6:4の割合で混合したもの。
スペーサ23A,27A:目開き800μm、厚さ520μmのポリエステルメッシュ
表1の性状の原水を逆浸透膜分離装置に通水した後、3L/hの通水速度にて電気的脱イオン装置に通水したときの処理水水質を表1に示す。
【0033】
比較例1
枠状フレーム25の代りに、延出部63が無い他は同一の仕様の枠状フレームを用いた。この枠状フレームに設けられた脱塩室用スペースの大きさは縦152.5mm、横40mmである。
【0034】
表1の性状の原水を逆浸透膜分離装置に通水した後、3L/hの通水速度にて電気的脱イオン装置に通水したときの処理水水質を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、同一大きさの電気的脱イオン装置で同一条件にて通水したときに、実施例の方が比較例よりも処理水の水質が優れている。
【0037】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、脱塩室が蛇行しており、優れた処理水水質を得ることができる電気的脱イオン装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る電気的脱イオン装置の分解斜視図である。
【図2】図1の電気的脱イオン装置の枠状フレームの正面図である。
【図3】実施の形態に係る電気的脱イオン装置の通水系統図である。
【図4】別の実施の形態に係る電気的脱イオン装置の通水系統図である。
【図5】従来の電気的脱イオン装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
4 カチオン交換膜
5 枠状フレーム
5R イオン交換体
6 アニオン交換膜
24 カチオン交換膜
25 枠状フレーム
26 アニオン交換膜
60 横行部
61 縦行部
63 延出部
70 イオン交換体
Claims (1)
- 電極同士の間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成し、脱塩室にイオン交換体を充填し、脱塩室に被処理水を通水し、濃縮室に濃縮水を通水するようにした電気的脱イオン装置であって、
該カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室形成用の枠状フレームが介在されており、該枠状フレームに被処理水の流入部と、脱塩された水の流出部とが設けられている電気的脱イオン装置において、
該枠状フレームの該流入部から該流出部に向って蛇行するように該脱塩室が設けられており、
該枠状フレームは、略長方形状であり、その長辺方向の一端側に流入部が設けられ、他端側に流出部が設けられており、
前記脱塩室は、枠状フレームの短辺方向に延在する複数の横行部と、該横行部の一端側同士を連通する縦行部とを備えており、
該横行部の該長辺方向の幅は5〜15mmであり、該横行部の該短辺方向の幅は該横行部の該長辺方向の幅の2.5〜5倍であり、すべての横行部の該短辺方向の幅の総和が200〜600mmであり、
枠状フレームの厚みが1〜5mmであり、
該脱塩室に充填されている該イオン交換体は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであることを特徴とする電気的脱イオン装置。
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