JP3928462B2 - パワートレイン並びにその検査方法及び検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワートレインとその制御のための電子制御ユニットを一対のものとして管理する製造技術における完成品の調整及び検査に関し、特に、パワートレイン個体ごとの製品特性に合わせて電子制御ユニットに内蔵させる制御用データを最適化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、車両に搭載され、そのパワートレインを構成する代表的なものとして自動変速機がある。自動変速機は、その油圧制御装置を、車両運転者の意図を反映するシフト装置(具体的には、シフト装置で作動する自動変速機側に設置のポジションセンサ)からの入力情報と、自動変速機自体の作動状況を反映する自動変速機各部に設置されたセンサからの入力情報に基づき、電子制御ユニット内のデータベースを用いたプログラムの作動により制御される。要すれば、自動変速機は、油圧制御装置として自動変速機に内蔵されるバルブボディに組込んだ各種ソレノイドバルブに電子制御ユニットから駆動信号(例えば、リニアソレノイド駆動電流値の変更)で制御される。
【0003】
ところで、従来の自動変速機の製造において、自動変速機本体とその油圧制御装置は一体化して完成品とされるのに対して、電子制御ユニットは耐熱性、耐蝕性等の理由から一体化が困難であるため別製品とされていた。したがって、自動変速機工場においては、組合せが特定されない電子制御ユニットに内蔵の初期データによっても個々の自動変速機の作動が保証されるように、自動変速機の特性を一定の規格内に収めるべく、各工程での綿密な調整と、厳格な検査により対応していた。一方、これら製品の納入を受ける車両製造工場においては、車両への搭載時にこれらを結線して、車両搭載状態で自動変速機の作動を保証するための検査工程を別途設け、その工程で電子制御ユニットに内蔵させた各自動変速機を作動させるための汎用の初期データに基づく検査を行なっていた。
【0004】
こうしたことから、電子制御ユニットによる自動変速機の制御を最適化すべく、車両ユーザによる実際の使用初期段階で自動変速機をチューニングする技術も開発されている。この技術は、ユーザが車両を走行させる過程において、油圧制御装置によるその自動変速機に最適な油圧供給量を電子制御ユニットに逐次学習補正させるものである。また、この学習補正を車両メーカの段階で行なおうとする発想の技術もあり、こうした従来技術として、米国特許第5456647号明細書に開示の技術がある。この技術は、具体的には、車両がアセンブリラインを離れる前の段階(エンドオブライン)で、自動変速機の各摩擦要素に対する油圧供給量を電子制御ユニットに学習させるものである。しかしながら、これらいずれの技術も、電子制御ユニットに予め内蔵させた初期データに基づく運転を前提として成り立つもので、自動変速機の製造における精密な調整や厳格な検査に代わり得るものではない。このように、自動変速機工場において製品個体ごとの性状に応じて電子制御ユニットの設定を最適化する調整は不可能であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、近時、電子制御ユニットを構成する回路やその保護手段による耐熱性、耐蝕性向上の研究が進み、パワートレインと電子制御ユニットの一体化が実現可能な状況となりつつある。そこで、こうしたパワートレインと電子制御ユニットを一対のものとして管理し、更には一体化する観点から従来の自動変速機の製造及び製品検査方法について検討すると、従来の製造工程では、各工程段階ごとに機械的組付け精度や作動状況が検査された上で、完成品となった段階で、個体ごとに対応するものではない電子制御ユニットと組合せて初期データに基づく調整が行なわれており、この段階でいかに高精度のチューニングがなされても、最終的な車両搭載状態でのパワートレインの最適な作動を保証することにはならない問題点があった。また、クラッチ等の係合圧の調整、すなわち電子制御ユニットから出力されるソレノイド駆動信号に対してクラッチ等の油圧サーボにバルブボディから出力される油圧の関係の調整も、自動変速機単品に対して試験用の電子制御ユニットを用い、また電子制御ユニット単品に対して試験用の自動変速機を用いて個々に行なわれており、工程数の無駄も多い。
【0006】
そこで、本発明は、パワートレインを構成する各装備品のアセンブリ段階ごとの性能検査や調整を可能な限り省いて、最終的にそれらを一対のものとし、あるいは一体化したときの製品個体の性能や特性の違いも含めて、総合した状態での組合せに固有の調整を行なうことで、車載前の検査で車載状態での製品性能を保証可能なパワートレインの調整・検査方法及び装置並びにそれにより得られるパワートレインを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のパワートレインの検査方法は、パワートレインと、少なくとも該パワートレインを制御する電子制御装置とを対応させて一対として管理する製造工程において、該電子制御ユニットに内蔵された検査用プログラムに従ってシーケンサを制御し、該シーケンサの作動に基づきパワートレインを運転し、該パワートレインの検査を行なうと共に該パワートレインに固有のデータを取得することを特徴とする。この場合の前記パワートレインの検査と、パワートレインに固有のデータの取得は、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の工程において行なうことができる。
【0008】
上記の構成における検査用プログラムは、固有のデータを取得する検査前の任意の工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みにより電子制御ユニットに内蔵される。この検査用プログラムは、検査する項目と、検査するパターンと、前記項目とパターンに従いパワートレインに検査を実行させる手段と、検査結果の収集と、収集した結果に基づく合否判定とを包含する。
【0009】
上記の構成における固有のデータは、実際にパワートレインを運転し、電子制御ユニットとパワートレインの作動を整合させる検査の過程で構築されるデータである。この固有のデータは、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の出荷検査前の任意の工程で、電子制御ユニットのメモリに格納される。上記固有のデータは、例えば、油圧制御装置のマニュアルバルブとマニュアルシャフトを介して連動するポジションセンサのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データとすることができる。また、固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の係合要素を操作する油圧サーボのピストンストロークとの関係を調整するピストンストロークデータとすることもできる。また、固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の油圧サーボに供給される油圧との関係を調整する係合圧データとすることができる。また、固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブの位置と、ポジションセンサの出力信号との関係を調整する油圧発生角データとすることができる。
【0010】
次に、本発明のパワートレインの検査装置は、パワートレインと、少なくとも該パワートレインを制御する電子制御装置とを対応させて一対として管理する製造工程における検査装置であって、該電子制御ユニットに内蔵された検査用プログラムと、該検査用プログラムに従いパワートレインを運転する運転装置と、該運転装置の運転によりパワートレインの検査を行なうと共に該パワートレインに固有のデータを取得する処理手段とを有することを特徴とする。この場合の前記パワートレインの検査と、パワートレインに固有のデータの取得は、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の工程において行なうことができる。
【0011】
上記の構成における検査用プログラムは、固有のデータを取得する検査前の任意の工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みにより電子制御ユニットに内蔵される。この検査用プログラムは、検査する項目と、検査するパターンと、前記項目とパターンに従いパワートレインに検査を実行させる手段と、検査結果の収集と、収集した結果に基づく合否判定とを包含する。
【0012】
上記の構成における固有のデータは、実際にパワートレインを運転し、電子制御ユニットとパワートレインの作動を整合させる検査の過程で構築されるデータである。この固有のデータは、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の出荷検査前の任意の工程で、電子制御ユニットのメモリに格納される。上記固有のデータは、例えば、油圧制御装置のマニュアルバルブとマニュアルシャフトを介して連動するポジションセンサのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データとすることができる。また、固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の係合要素を操作する油圧サーボのピストンストロークとの関係を調整するピストンストロークデータとすることもできる。また、固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の油圧サーボに供給される油圧との関係を調整する係合圧データとすることができる。また、固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブの位置と、ポジションセンサの出力信号との関係を調整する油圧発生角データとすることができる。
【0013】
次に、本発明の電子制御ユニット一対管理パワートレインは、パワートレインと、少なくとも該パワートレインを制御する電子制御装置とを対応させて一対として管理するパワートレインにおいて、該パワートレインの製造工程でパワートレインを運転してその検査を行なうと共にパワートレインに固有のデータを取得するための検査用プログラムが、固有のデータを取得する検査前の任意の工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みにより電子制御ユニットに内蔵されたことを特徴とする。この場合の前記検査用プログラムは、検査する項目と、検査するパターンと、前記項目とパターンに従いパワートレインに検査を実行させる手段と、検査結果の収集と、収集した結果に基づく合否判定とを包含する。
【0014】
上記のパワートレインにおける固有のデータは、実際にパワートレインを運転し、電子制御ユニットとパワートレインの作動を整合させる検査の過程で構築されるデータである。この固有のデータは、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の出荷検査前の任意の工程で、電子制御ユニットのメモリに格納される。そして、固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブとマニュアルシャフトを介して連動するポジションセンサのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データとすることができる。また、固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の係合要素を操作する油圧サーボのピストンストロークとの関係を調整するピストンストロークデータとすることもできる。また、固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の油圧サーボに供給される油圧との関係を調整する係合圧データとすることができる。また、固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブの位置と、ポジションセンサの出力信号との関係を調整する油圧発生角データとすることができる。
【0015】
【発明の作用及び効果】
本発明の請求項1に記載の構成では、パワートレインの実際の運転状態での電子制御ユニットとパワートレインの作動に基づく固有データが取得される。その結果、この固有データを用いて、電子制御ユニットとパワートレインを一対としての品質を向上させることができる。また、従来はパワートレインを構成する各々の部品に対して組立て時に厳密な調整を行ない、出荷していたのに対して、本検査方法では、組立て後の検査調整工程において、製品個体ごとの性状に応じた作動状態のデータを取得することができる。したがって、この構成によれば、各々の部品段階での調整を従来より簡略化できるため、その調整工程を簡略化することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の構成によると、電子制御ユニットとパワートレインを一体化した製品とする場合について、上記の効果を得ることができる。
【0017】
次に、請求項3に記載の構成では、プログラム内容に従う検査が自動的に実行されるため、検査の自動化による省力化が可能となり、併せて検査のチェック漏れも防ぐことができる。また、従来、検査用ソフトウェアは、完成品検査を行なう完成品検査テスタのシーケンサのメモリに格納されていたのに対して、この構成では、電子制御ユニットのメモリに格納されるため、シーケンサ内のメモリを簡略化できる。更に、電子制御ユニットがパワートレインと一対で管理されるため、シーケンサによる検査方法に比べて、より複雑、多岐な検査項目の設定が可能となる。したがって、例えばパワートレインを自動変速機とする場合、変速を細かく指定できるため、複雑な変速の調整も可能となり、調整をきめ細かく実行できる。
【0018】
更に、請求項4に記載の構成によると、検査用プログラムに設定された項目に従い、所定の手順でパワートレインの検査が実行され、必要なデータの収集と合否判定がなされるため、機種の異なるパワートレインを同じ製造ラインで製造するような場合についても、検査項目やデータ収集の漏れを防ぐことができ、しかも合否判定のばらつきも防ぐことができる。
【0019】
次に、請求項5に記載の構成では、取得される固有データが、実際の運転状態で電子制御ユニットとパワートレインの作動を検査する段階で構築される整合性のデータとなるため、従来の初期データに基づくエンドオブラインでの学習による調整に対して調整時間が短くて済み、またきめ細かな調整も可能となり、更には、学習を行なうための工程を別途設ける必要もなくなる。
【0020】
次に、請求項6に記載の構成では、調整された固有データの書込みにより、電子制御ユニットの変速機制御のためのメモリデータが各製品ごとの特性に合わせて最適化される。
【0021】
次に、請求項7に記載の構成では、油圧制御装置のマニュアルバルブと電子制御ユニットのポジションセンサのニュートラル位置を機械的な調整なしで整合させる設定が可能となる。また、調整はソフトウェアで行なわれるため、より精緻な調整が可能となる。
【0022】
次に、請求項8に記載の構成では、油圧サーボのピストンストロークが信号上で修正されるため、変速機構の組み付け工程でのスペーサ等の調整手段を用いた摩擦材の位置合わせによるピストンストロークの精密な機械的調整が不要となり、パワートレイン製造上の工程数の削減が可能となる。また、調整はソフトウェアで行なわれるため、より精緻な調整が可能となる。
【0023】
次に、請求項9に記載の構成では、油圧制御装置から係合要素の油圧サーボに出力される油圧と電子制御ユニットから出力すべきソレノイド駆動信号とを正確に対応させることができる。その結果、係合要素の特性に合わせた精密な油圧制御によるシフトショックの少ない変速制御が可能となる。
【0024】
次に、請求項10に記載の構成では、電子制御ユニット上で、油圧制御装置のマニュアルバルブからの油圧出力タイミングの正確な認識が可能となるため、ガレージシフト等、マニュアルバルブの切り換え操作が頻繁に行なわれる場合のシフトショックを軽減する制御ロジックの実行が可能となる。
【0025】
次に、請求項11に記載の構成では、パワートレインの実際の運転状態での電子制御ユニットとパワートレインの作動に基づく固有データが取得される。その結果、この固有データを用いて、電子制御ユニットとパワートレインを一対としての品質を向上させることができる。また、従来はパワートレインを構成する各々の部品に対して組立て時に厳密な調整を行ない、出荷していたのに対して、本検査装置では、組立て後の検査調整工程において、製品個体ごとの性状に応じた作動状態のデータを取得することができる。したがって、この構成によれば、各々の部品段階での調整を従来より簡略化できるため、その調整工程を簡略化することができる。
【0026】
また、請求項12に記載の構成によると、電子制御ユニットとパワートレインを一体化した製品とする場合について、上記の効果を得ることができる。
【0027】
次に、請求項13に記載の構成では、プログラム内容に従う検査が自動的に実行されるため、検査の自動化による省力化が可能となり、併せて検査のチェック漏れも防ぐことができる。また、従来、検査用ソフトウェアは、完成品検査を行なう完成品検査テスタのシーケンサのメモリに格納されていたのに対して、この構成では、電子制御ユニットのメモリに格納されるため、シーケンサ内のメモリを簡略化できる。更に、電子制御ユニットがパワートレインと一対で管理されるため、シーケンサによる検査方法に比べて、より複雑、多岐な検査項目の設定が可能となる。したがって、例えばパワートレインを自動変速機とする場合、変速を細かく指定できるため、複雑な変速の調整も可能となり、調整をきめ細かく実行できる。
【0028】
更に、請求項14に記載の構成によると、検査用プログラムに設定された項目に従い、所定の手順でパワートレインの検査が実行され、必要なデータの収集と合否判定がなされるため、機種の異なるパワートレインを同じ製造ラインで製造するような場合についても、検査項目やデータ収集の漏れを防ぐことができ、しかも合否判定のばらつきも防ぐことができる。
【0029】
次に、請求項15に記載の構成では、取得される固有データが、実際の運転状態で電子制御ユニットとパワートレインの作動を検査する段階で構築される整合性のデータとなるため、従来の初期データに基づくエンドオブラインでの学習による調整に対して調整時間が短くて済み、またきめ細かな調整も可能となり、更には、学習を行なうための工程を別途設ける必要もなくなる。
【0030】
次に、請求項16に記載の構成では、調整された固有データの書込みにより、電子制御ユニットの変速機制御のためのメモリデータが各製品ごとの特性に合わせて最適化される。
【0031】
次に、請求項17に記載の構成では、油圧制御装置のマニュアルバルブと電子制御ユニットのポジションセンサのニュートラル位置を機械的な調整なしで整合させる設定が可能となる。また、調整はソフトウェアで行なわれるため、より精緻な調整が可能となる。
【0032】
次に、請求項18に記載の構成では、油圧サーボのピストンストロークが信号上で修正されるため、変速機構の組み付け工程でのスペーサ等の調整手段を用いた摩擦材の位置合わせによるピストンストロークの精密な機械的調整が不要となり、パワートレイン製造上の工程数の削減が可能となる。また、調整はソフトウェアで行なわれるため、より精緻な調整が可能となる。
【0033】
次に、請求項19に記載の構成では、油圧制御装置から係合要素の油圧サーボに出力される油圧と電子制御ユニットから出力すべきソレノイド駆動信号とを正確に対応させることができる。その結果、係合要素の特性に合わせた精密な油圧制御によるシフトショックの少ない変速制御が可能となる。
【0034】
次に、請求項20に記載の構成では、電子制御ユニット上で、油圧制御装置のマニュアルバルブからの油圧出力タイミングの正確な認識が可能となるため、ガレージシフト等、マニュアルバルブの切り換え操作が頻繁に行なわれる場合のシフトショックを軽減する制御ロジックの実行が可能となる。
【0035】
次に、請求項21に記載の構成では、パワートレインの実際の運転状態での電子制御ユニットとパワートレインの作動に基づく固有データが取得される。その結果、この固有データを用いて、電子制御ユニットとパワートレイン一対としての品質を向上させることができる。また、従来はパワートレインを構成する各々の部品に対して組立て時に厳密な調整を行ない、出荷していたのに対して、本パワートレインでは、組立て後の検査調整工程において、製品個体ごとの性状に応じた作動状態のデータを取得することができる。したがって、この構成によれば、各々の部品段階での調整を従来より簡略化できるため、その調整工程を簡略化することができる。更に、プログラム内容に従う検査が自動的に実行されるため、検査の自動化による省力化が可能となり、併せて検査のチェック漏れも防ぐことができる。また、従来、検査用ソフトウェアは、完成品検査を行なう完成品検査テスタのシーケンサのメモリに格納されていたのに対して、この構成では、電子制御ユニットのメモリに格納されるため、シーケンサ内のメモリを簡略化できる。更に、電子制御ユニットが一対化されているため、シーケンサによる検査方法に比べて、より複雑、多岐な検査項目の設定が可能となる。したがって、例えばパワートレインを自動変速機とする場合、変速を細かく指定できるため、複雑な変速の調整も可能となり、調整をきめ細かく実行できる。
【0036】
次に、請求項22に記載の構成では、検査用プログラムに設定された項目に従い、所定の手順でパワートレインの検査が実行され、必要なデータの収集と合否判定がなされるため、同じ製造ラインで製造する機種の異なるパワートレインについても、検査項目やデータ収集の漏れを防ぐことができ、しかも合否判定のばらつきも防ぐことができる。
【0037】
次に、請求項23に記載の構成では、取得される固有データが、実際の運転状態で電子制御ユニットとパワートレインの作動を検査する段階で構築される整合性のデータとなるため、従来の初期データに基づくエンドオブラインでの学習による調整に対して調整時間が短くて済み、またきめ細かな調整も可能となり、更には、学習を行なうための工程を別途設ける必要もなくなる。
【0038】
次に、請求項24に記載の構成では、調整された固有データの書込みにより、電子制御ユニットの変速機制御のためのメモリデータが各製品ごとの特性に合わせて最適化される。
【0039】
次に、請求項25に記載の構成では、油圧制御装置のマニュアルバルブと電子制御ユニットのポジションセンサのニュートラル位置を機械的な調整なしで整合させる設定が可能となる。また、調整はソフトウェアで行なわれるため、より精緻な調整が可能となる。
【0040】
次に、請求項26に記載の構成では、油圧サーボのピストンストロークが信号上で修正されるため、変速機構の組み付け工程でのスペーサ等の調整手段を用いた摩擦材の位置合わせによるピストンストロークの精密な機械的調整が不要となり、パワートレイン製造上の工程数の削減が可能となる。また、調整はソフトウェアで行なわれるため、より精緻な調整が可能となる。
【0041】
次に、請求項27に記載の構成では、油圧制御装置から係合要素の油圧サーボに出力される油圧と電子制御ユニットから出力すべきソレノイド駆動信号とを正確に対応させることができる。その結果、係合要素の特性に合わせた精密な油圧制御によるシフトショックの少ない変速制御が可能となる。
【0042】
次に、請求項28に記載の構成では、電子制御ユニット上で、油圧制御装置のマニュアルバルブからの油圧出力タイミングの正確な認識が可能となるため、ガレージシフト等、マニュアルバルブの切り換え操作が頻繁に行なわれる場合のシフトショックを軽減する制御ロジックの実行が可能となる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の製造及び検査方法を、対象とするパワートレインを自動変速機として適用した実施形態を説明するが、それに先立ち、パワートレインを制御するための電子制御ユニットについて説明する。電子制御ユニットは、各種プログラム及びデータを記憶させた不揮発性メモリを備え、それら制御プログラム及びデータに基づきパワートレインを制御する電子制御装置を意味し、不揮発性メモリは、フラッシュメモリ又はEEPROM(Electrical Erasable PROM)から構成される。フラッシュメモリは、データの一括消去が可能なため、データの再書込みを迅速に行なうことができる利点を有する。また、EEPROMは、記憶させる情報を電気的に書込み、かつ電気的に消去できるROMであり、電子制御ユニットに実装状態で書換えでき、バックアップ電源を必要としないため、セキュリティデータや学習値の記憶等に有効であり、RAMと同様の使用が可能な特徴を有する。ただし、いずれのメモリにおいても、消したくないデータについては、例えばメモリの記憶領域を分割して書換え不能領域に書込み、あるいはソフトウェア側による規制で消去不能にする等の種々の方法でのデータ保護が可能であり、書換えたい領域のみの一括消去が可能である。
【0044】
図1は実施形態の完成品(本明細書において、自動変速機にその制御のための電子制御ユニットを結線し、あるいは一体化組み付けし更に結線した稼働可能状態をいう)検査システムの構成を模式化して概念的に示す。このシステムは、自動変速機の運転状態(エンジン駆動によるドライブ状態と車輪からの逆駆動によるコースト状態)を実現すべく、検査対象の自動変速機1にその駆動軸12を介して連結されるモータ2Aと、同じく自動変速機1にその出力軸13を介して連結されるモータ2Bと、自動変速機を制御する電子制御ユニット(以下、実施形態の説明においてECUという)3に内蔵された完成品検査用プログラムに従い制御されて両モータ2A,2Bを作動させるシーケンサ4とを運転装置として備えている。この装置は、パワートレインを自動変速機1とした場合、車両搭載状態を擬似的に再現するものであり、エンジンを再現するものがモータ2Aであり、ユーザによるレンジ切換えは、シーケンサによるレンジ切換えで再現される。これらモータ2A,2Bとシーケンサ4は、それぞれ通信ケーブル5A,5Bで接続され、シーケンサ4は個体ごとのECU3と通信ケーブル6で接続される。この場合、シーケンサ4と接続されるECU3側の接続コネクタは、車両完成状態において車両システムの例えばエンジン制御ユニット(エンジンECU)と接続するコネクタ部を用いる。また、ポジションセンサ3aは、シーケンサ4を介してECU3と機械的又は電気的に接続される。
【0045】
ここにいうポジションセンサ3aとは、運転者のシフト操作により選択されるパーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)等のレンジ位置を検出するセンサである。このセンサが従来の自動変速機で用いられる接点によりレンジ位置を検出するニュートラルスタートスイッチと組合されたタイプの接触式である場合は、ポジションセンサ3aとシーケンサ4の接続には、シフト装置のマニュアルシャフトのような機構が用いられる。また、ポジションセンサ3aが、例えば磁石とホール素子のセットによって変化する磁束からポジションを検出するタイプのような非接触式である場合は、ポジションセンサ3aとシーケンサ4は、通信ケーブルで接続してもよいし、上記と同様なマニュアルシャフトのような機構で接続してもよい。なお、図示の例では、ECU3が自動変速機1のケースに取り付けられているが、従来のように、車載状態で自動変速機1がエンジンルームに配設され、ECU3が車室内に配設されるものであっても、自動変速機1とECU3とが一対となって管理され、固有データを用いて調整できるものであれば、この完成品検査システムによる検査は可能である。更に、ECU3が例えばバルブボディ11内のような自動変速機1の他の位置に収納され、ポジションセンサ3aがケースに取り付けられる場合についても、また、ポジションセンサ3aがECU3と一体としてバルブボディ11に収納されている場合についても、あるいはポジションセンサ3aとECU3が一体として自動変速機1のケースに取り付けられる場合についても同様である。
【0046】
なお、図示されていないが、モータ2Aの駆動により駆動軸12に入力される入力回転については、製品側の自動変速機1に内蔵の入力回転数センサが検出手段となり、自動変速機の駆動軸に入力された入力回転が自動変速機内の機構により処々に変速され出力される出力回転と、モータ2Bの駆動により出力軸13に入力される逆駆動の回転については、同じく製品側の自動変速機1に内蔵又は直付けされ、出力軸から出力される速度を測定するスピードセンサが検出手段となる。また、自動変速機1内のそれぞれの摩擦係合要素の油圧については、その測定のために自動変速機1に設けた油圧計測孔に油圧センサを挿入し、それをシーケンサ4と通信ケーブルを介して接続することで検出可能とされる。この油圧検出についても、油圧センサが製品として自動変速機1に内蔵されている場合は、そのセンサがシーケンサ4と接続される。また、前記のようにECU3が、更に、自動変速機のレンジ位置を検出するポジションセンサ(非接触式サンサで構成されるものにおいては、これがスタータモータの駆動回路を作動させる信号出力手段ともなることからニュートラルスタートスイッチを兼ねるが、本明細書ではこれを、名称の統一の意味で、ポジションセンサという。)3aを一体化したものである場合、ポジションセンサ3aのセンサロータを回転制御するための操作機器も本システムに付随させることもある。
【0047】
こうした構成からなる完成品検査システムによる検査の前に、前記完成品検査用プログラムをECU3に内蔵させるべく、検査用プログラムは、検査前のいずれかの工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みがなされる。この工程は、例えば、従来のECU3製造工程における製品ソフト(車両メーカの要求仕様に対応するプログラムやデータベース)の書込み工程に置き替えることで実現される。
【0048】
この完成品検査用プログラムは、例えば自動変速機を対象とする場合、少なくとも次の機能を有するものとされる。
▲1▼検査する項目(例えば、各センサ異常の確認、1→2変速、2→1変速等の各変速自体)を有し、
▲2▼検査するパターン(例えば、1→2変速の確認が終わったら、次に2→3変速を確認する等の検査手順)を有し、
▲3▼自動変速機に対して該検査を実行し(例えば、実際に1→2変速を行うように自動変速機を制御する)、
▲4▼検査結果(例えば、1→2変速時のシフトタイム)を収集し、
▲5▼収集した結果に基づいて、良否を判定し、
▲6▼“否”であれば、固有データを算出し、ECUに書き込む。
【0049】
上記検査、調整の手順は、例えば以下のように設定される。
▲1▼センサの調整及び検査
この手順では、完成品検査用プログラムは、モータ2A及びモータ2Bに対して、自動変速機が所定の入力回転又は出力回転がなされるように指令し、ギヤ比が所定範囲内であるかを判定(確認)する。
この場合、ギヤ比とセンサ値との関係を調整するデータが固有データとして取得される。
▲2▼レンジ毎の摩擦係合要素油圧の調整及び検査
この手順では、完成品検査用プログラムは、自動変速機が所定のレンジ位置になるようシーケンサに指令し、シーケンサが所定のレンジ位置に変位された状態で所定の摩擦係合要素が係合又は解放されるように指令する。この調整及び検査は、各摩擦係合要素について個別に実施する。
ECUは、油圧センサによる摩擦係合要素の油圧や、様々なパラメータ(油温、ポジション位置、リニア竃流値)をモニタし、全てのパラメータが所定範囲内であるかを判定(確認)する。
この場合、油圧とリニア電流値との関係を調整するデータが固有データとして取得される。
▲3▼変速の学習及び検査
この手順では、完成品検査用プログラムは、自動変速機を所定のレンジ位置になるようにシーケンサに指令し、シーケンサが所定のレンジ位置に変位された状態でモータ2A及びモータ2Bに対して、自動変速機が所定の入力回転又は出力回転がなされるように指令し、所望の変速段となるように制御する(詳しくは、シフトソレノイドを切り替えるよう制御する)。
ECUは、油圧センサによる摩擦係合要素の油圧や、変速に係る様々なパラメータ(シフトタイム、油温、ポジション、リニア電流等)は出力信号で検知し、全てのパラメータが所定範囲内であるかを判定(確認)する。
この場合、▲2▼における油圧とリニア電流値との関係を調整するデータに基づいて、シフトタイムと油圧との関係を調整するデータが固有データとして取得される。詳しくは、シフトタイムを計測し、それを基準のシフトタイムと比較することで、シフトタイムが基準のシフトタイムよりも長い場合は、油圧を多くし、逆に、シフトタイムが基準のシフトタイムよりも短い場合は、油圧を少なくして、調整した油圧値を固有のデータとする。
▲4▼ その他(ロックアップ、ガレージシフト等)の制御の学習及び検査
この手順は、上記▲3▼の手順と同様である。
【0050】
完成品検査に入ると、ECU3が搭載された自動変速機1は、入力側にモータ2A、出力側にモータ2Bが機械的に接続される。両モータ2A,2Bは前記のように完成品検査を行なうシーケンサ4と通信ケーブル5A,5Bにより接続されている。またECU3は通信ケーブル6を用いてシーケンサ4と通信可能となるように接続される。更に、自動変速機1には図示しない油圧センサが接続され、その検出情報は、適宜の手段でシーケンサ4に送信される。なお、入力回転の情報と、出力回転の情報は、内部情報としてECU3により処理され、同じく自動変速機のレンジ位置を示すポジション信号も内部情報としてECU3により処理される。
【0051】
このように自動変速機を設定した状態で、シーケンサ4によるECU3からの通信ケーブル6経由の検査用プログラムの読込で、シーケンサ4が従来のモータ制御のシーケンサと同様に作動し、プログラムに従った種々の回転数とトルク出力で運転され、同時に通信によるシーケンサ4とECU3との情報の授受で、各項目に従う固有データ取得のための調整と検査が一定の手順で進行する。なお、本形態では、この調整と検査の段階で取得された固有データのECU3への書込みも併せて行われる。ここ言う固有データは、在来の初期データに対する学習による書換えのためのデータと類似するが、本発明のものは、自動変速機を種々制御するための初期データが設定されていない状態で、検査過程により、又は製造過程で構築されるECU3と自動変速機1の作動の整合性を確立するデータであり、在来の学習補正により得られるデータが、本発明の初期データ(固有データ)となるため、自動変速機の個体差を吸収する初期データの学習補正が最小限で済み、データの学習補正は、綿密な制御を行なうため、又は経時劣化などに対応するために行なわれる。ただし、初期データは、検査のために暫定的に設定される場合もあるが、自動変速機を種々制御するための初期データではない。
【0052】
検査を行なう完成品検査用プログラムの項目については、先に例示した項目の他に種々のものが想定されるが、そのうちの主なものを、対象を自動変速機とした場合について例示すると以下のものがある。
【0053】
〔ニュートラル位置調整〕
この項目は、ポジションセンサ3aが非接触式のアナログ出力センサで構成される場合に、バルブボディ11内のマニュアルバルブのニュートラル位置(この位置は、マニュアルバルブのスプールと機構的に接続されたマニュアルシャフトに付随するディテントレバーのディテントスプリングによる位置規制により機械的に規定される)に対するセンサロータの回転角(この角度は、ポジションセンサからECU3に入力される信号の大小により計測される)を、ニュートラルレンジ位置に対応する回転角度領域の初期設定用の位置、例えば、ニュートラルレンジ位置に対応する回転角度領域の中央の位置に対応させる調整処理である。この調整結果による固有データは、この製品に固有のポジションセンサ3aのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データとして取得される。このデータは、完成品検査用プログラムに学習処理ステップを内蔵させておくことで、この調整処理段階でECU3に書込まれる。
【0054】
〔ピストンストローク検出〕
この項目は、自動変速機内で所定のギヤ等の連結により変速を行なう変速機構の各クラッチやブレーキの係合要素を操作するピストンに油を供給する油圧サーボに、ピストンの動く範囲であるピストンストロークのための油圧(例えば遊びストロークを詰めるための供給油圧であるファーストフィル圧)を供給したときの、ピストンが遊びストロークを詰めるのに要する時間(係合要素がトルク容量を持ち始めるまでの時間)の調整処理である。この調整結果による固有データは、先のニュートラル位置データと同様に、ECU3への書込みのために、この製品に固有の供給油圧対ストローク時間、より具体的には、各クラッチやブレーキの係合要素を操作する油圧サーボに油圧を調圧供給する自動変速機の油圧制御のために油路の切換えを行なう制御バルブに対して信号油圧を印加するソレノイドバルブにECU3から出力すべきソレノイド駆動信号に対するピストンストローク時間を調整するピストンストロークデータとして取得される。
【0055】
〔係合圧検出〕
この項目は、変速機構の各クラッチやブレーキの係合要素を操作する油圧サーボに係合のための油圧を調圧供給する制御バルブの出力油圧と、そのときに制御バルブに信号油圧を印加するソレノイドバルブにECU3から出力すべきソレノイド駆動信号との関係の調整処理である。具体的には、ECU3から出力された所定のソレノイド駆動信号に対して、制御バルブから所定の出力油圧が出力されるように、ソレノイド駆動信号と出力油圧の整合性を調整するものである。この調整結果による固有データは、各クラッチやブレーキを制御する制御バルブとソレノイドバルブを組み合わせた状態での両者の個々の特性のばらつきを吸収した形でのソレノイド駆動信号対係合圧の関係を調整する係合圧データとして取得される。この係合圧データもこの調整処理段階でECU3に書込まれる。
【0056】
〔油圧発生角検出〕
この項目は、ポジションセンサ3aが非接触式のアナログ出力センサで構成される場合に、バルブボディ11内のマニュアルバルブのポジション移動中の段階で、その作動に連動するポジションセンサ3aの出力信号からポートの開き始めによる油圧出力の開始を割り出す調整である。具体的には、ユーザのシフトレンジの操作によってマニュアルバルブが摺動する過程において、マニュアルバルブが異なるポジションへの移動(例えば、N−DシフトやN−Rシフト)を開始する段階で、その作動によって変位する出力信号と、マニュアルバルブから所定の油圧(例えば、Dレンジ圧やRレンジ圧)を出力するポートが開き始めることによる油圧出力の所定開始時期との整合性を調整するものである。この調整結果の固有データも、この製品に固有の信号対油圧発生角の調整データとして取得される。この調整データも先の各固有データと同様にECU3に書込まれる。
【0057】
次に示す図2は、自動変速機の製造工程の一例を示す。自動変速機の製造は、先ず“メイン+ECU+V/B組立”工程で、予め他の工程で機構部品等の組み込みを終わった自動変速機本体に、ECUとバルブボディ(V/B)を組込む工程である。この場合のバルブボディは、各種バルブ等の部品の組込みと、ソレノイド組立時に、印加された所定の出力値(電流値)に対し、リニアソレノイドが所定油圧を出力するように調整する“リニア組立調整”を経たバルブボディを、バルブボディテスタによって、ECU又はバルブボディテスタから印加された所定の出力値(電流値)に対して、バルブボディ内のリニアソレノイドが所定油圧を出力するように調整する“V/Bテスター調整”を終わって搬入されたバルブボディである。なお、この工程では、当初に説明した検査システムの油圧検出方法による場合、オイルパン取付状態としているが、バルブボディに直接油圧センサを取付ける油圧検出方法を採る場合は、オイルパンは取付けずに、バルブボディを開放させておくこともある。こうして組み上がった自動変速機(A/T)を次の“A/T with ECU調整・完検”工程に移して、本発明の特徴とする完成品検査を行なう。この工程では、先に説明した各種調整学習の他に、自動変速機ハードウェアのチェック“A/Tハードチェック”を行なう。このチェック項目としては、例えば、欠品検査、ECUとワイヤコネクタの導通検査がある。この工程では、更に、完成品検査“完検”を行なう。
【0058】
その後、“後組立”工程で、オイルパンの取付け等の後組立てを行なう。更に次の“洗浄”工程で、各部の洗浄を行なう。次に“モータリング”工程では、ECUに内蔵の完成品検査プログラムに従い運転を行ない、変速作動を確認する。そして、次の“製品ソフト書込み”工程で、完成品検査プログラムソフトの消去を行ない、基本的な変速制御ロジックを含むこの製品に本来必要なソフトウェアとしての変速固定ソフトと、仕様要求に応じた製品ソフトウェアの書込みを行なう。この変速固定ソフトには、上記の他に、例えば変速機を安全側(高速段)に固定するソフトウェアを含ませることもできる。なお、この工程は、製品ソフトウェアの書込みを行なわずに、上記基本的プログラムやデータのみを書き込む“変速固定ソフト書込み”工程に代えることもできる。こうして最後の“出荷検査”工程で出荷のための最終検査を行ない、出荷となる。
【0059】
あるいは、他の形態として、前記各調整工程段階で得られる固有データを適宜の手段で保持しておき、“出荷検査”工程より前の任意の工程、例えば、前述の“A/T with ECU調整・完検”工程より前のいずれかの工程で固有データを書込み、“A/T with ECU調整・完検”工程では、最終的な完成品検査のみを行なうようにしてもよい。
【0060】
こうして、以上のシステムにより完成品検査を行なうことで、ECU−自動変速機一対としての品質が向上する。また、従来の完成品検査工程が大幅に削減されるとともに、検査システムの自動化により工程検査員を減らすことができる。また、ECU−自動変速機一対で学習調整を行なうことにより、ECU−自動変速機間の油圧発生角認識の一致性向上等機能性が向上する。
【0061】
以上、本発明を自動変速機をパワートレインとする一実施形態に基づき詳説したが、本発明の適用対象となるパワートレインは、例示のような燃焼機関を動力源とする車両における自動変速機に限るものではない。例えば、動力源としての内燃又は外燃機関(エンジン)自体、電気モータを動力源とする車両における電気モータ、燃焼機関と電気モータとを動力源とするハイブリッド車におけるエンジン及び電気モータ、それら動力源と組合される発進又は変速若しくはそれら両方の操作を自動化した有段又は無段の半自動又は全自動変速機も本発明にいうパワートレインの範疇に含まれる。なお、パワートレインを電気モータとする場合、電気モータに係る固有データとしては、例えば、そのモータ出力トルクに対応する電子制御ユニットからの制御信号としての電流又は電圧指令値がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る完成品検査システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明を適用した自動変速機の製造工程フローを示すブロック図である。
【符号の説明】
1 自動変速機(パワートレイン)
2A,2B モータ(運転装置)
3 ECU(電子制御ユニット)
3a ポジションセンサ
4 シーケンサ(運転装置)
11 バルブボディ(油圧制御装置)
Claims (28)
- パワートレインと、少なくとも該パワートレインを制御する電子制御装置とを対応させて一対として管理する製造工程において、該電子制御ユニットに内蔵された検査用プログラムに従ってシーケンサを制御し、該シーケンサの作動に基づきパワートレインを運転し、該パワートレインの検査を行なうと共に該パワートレインに固有のデータを取得することを特徴とするパワートレインの検査方法。
- 前記パワートレインの検査と、パワートレインに固有のデータの取得は、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の工程において行なわれる、請求項1記載のパワートレインの検査方法。
- 前記検査用プログラムは、固有のデータを取得する検査前の任意の工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みにより電子制御ユニットに内蔵される、請求項1又は2記載のパワートレインの検査方法。
- 前記検査用プログラムは、検査する項目と、検査するパターンと、前記項目とパターンに従いパワートレインに検査を実行させる手段と、検査結果の収集と、収集した結果に基づく合否判定とを包含する、請求項1、2又は3記載のパワートレインの検査方法。
- 前記固有のデータは、実際にパワートレインを運転し、電子制御ユニットとパワートレインの作動を整合させる検査の過程で構築されるデータである、請求項1又は2記載のパワートレインの検査方法。
- 前記固有のデータは、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の出荷検査前の任意の工程で、電子制御ユニットのメモリに格納される、請求項1〜5のいずれか1項記載のパワートレインの検査方法。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブとマニュアルシャフトを介して連動するポジションセンサのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データである、請求項1〜6のいずれか1項記載のパワートレインの検査方法。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の係合要素を操作する油圧サーボのピストンストロークとの関係を調整するピストンストロークデータである、請求項1〜7のいずれか1項記載のパワートレインの検査方法。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の油圧サーボに供給される油圧との関係を調整する係合圧データである、請求項1〜8のいずれか1項記載のパワートレインの検査方法。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブの位置と、ポジションセンサの出力信号との関係を調整する油圧発生角データである、請求項1〜9のいずれか1項記載のパワートレインの検査方法。
- パワートレインと、少なくとも該パワートレインを制御する電子制御装置とを対応させて一対として管理する製造工程における検査装置であって、該電子制御ユニットに内蔵された検査用プログラムと、該検査用プログラムに従いパワートレインを運転する運転装置と、該運転装置の運転によりパワートレインの検査を行なうと共に該パワートレインに固有のデータを取得する処理手段とを有することを特徴とするパワートレインの検査装置。
- 前記パワートレインの検査と、パワートレインに固有のデータの取得は、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の工程において行なわれる、請求項11記載のパワートレインの検査装置。
- 前記検査用プログラムは、固有のデータを取得する検査前の任意の工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みにより電子制御ユニットに内蔵される、請求項11又は12記載のパワートレインの検査装置。
- 前記検査用プログラムは、検査する項目と、検査するパターンと、前記項目とパターンに従いパワートレインに検査を実行させる手段と、検査結果の収集と、収集した結果に基づく合否判定とを包含する、請求項11、12又は13記載のパワートレインの検査装置。
- 前記固有のデータは、実際にパワートレインを運転し、電子制御ユニットとパワートレインの作動を整合させる検査の過程で構築されるデータである、請求項11、12又は13記載のパワートレインの検査装置。
- 前記固有のデータは、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の出荷検査前の任意の工程で、電子制御ユニットのメモリに格納される、請求項11〜15のいずれか1項記載のパワートレインの検査装置。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブとマニュアルシャフトを介して連動するポジションセンサのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データである、請求項11〜16のいずれか1項記載のパワートレインの検査装置。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の係合要素を操作する油圧サーボのピストンストロークとの関係を調整するピストンストロークデータである、請求項11〜17のいずれか1項記載のパワートレインの検査装置。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の油圧サーボに供給される油圧との関係を調整する係合圧データである、請求項11〜18のいずれか1項記載のパワートレインの検査装置。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブの位置と、ポジションセンサの出力信号との関係を調整する油圧発生角データである、請求項11〜19のいずれか1項記載のパワートレインの検査装置。
- パワートレインと、少なくとも該パワートレインを制御する電子制御装置とを対応させて一対として管理するパワートレインにおいて、該パワートレインの製造工程でパワートレインを運転してその検査を行なうと共にパワートレインに固有のデータを取得するための検査用プログラムが、固有のデータを取得する検査前の任意の工程で、検査用ソフトウェアのメモリへの書込みにより電子制御ユニットに内蔵されたことを特徴とする電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記検査用プログラムは、検査する項目と、検査するパターンと、前記項目とパターンに従いパワートレインに検査を実行させる手段と、検査結果の収集と、収集した結果に基づく合否判定とを包含する、請求項21記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記固有のデータは、実際にパワートレインを運転し、電子制御ユニットとパワートレインの作動を整合させる検査の過程で構築されるデータである、請求項21記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記固有のデータは、パワートレインに電子制御ユニットを一体化搭載した後の出荷検査前の任意の工程で、電子制御ユニットのメモリに格納された、請求項21、22又は23記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブとマニュアルシャフトを介して連動するポジションセンサのニュートラル位置と出力信号の関係を調整するニュートラル位置データである、請求項21〜24のいずれか1項記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の係合要素を操作する油圧サーボのピストンストロークとの関係を調整するピストンストロークデータである、請求項21〜25のいずれか1項記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のソレノイドバルブに印加する駆動信号と、変速機構の油圧サーボに供給される油圧との関係を調整する係合圧データである、請求項21〜26のいずれか1項記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
- 前記固有のデータは、油圧制御装置のマニュアルバルブの位置と、ポジションセンサの出力信号との関係を調整する油圧発生角データである、請求項21〜27のいずれか1項記載の電子制御ユニット一対管理パワートレイン。
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