JP3928122B2 - 記録体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は記録体に関し、詳しくは、表面記録層に液体付着性領域と液体反撥性領域とが形成され、これに記録剤(インク)を供給して画像を形成し、これを普通紙等の転写材へ転写して画像を得るのに適した記録体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ上で組み版したデータをそのまま版に書きこむCTP版が注目されている。CTP版として、湿し水を用いない水なし版は、特別な印刷技術を持たないユーザでも使えこなせるため、次世代CTP版のひとつの候補となっている。従来、特開平7−314934号公報に示すごとく、水なしCTP版材として、最表層をシリコーン樹脂のコーティング層で形成したものが提案されている。この技術は、油性インクに対して優れた離型性を示すシリコーン樹脂を用い、画像部をレーザによるアブレーションにより機械的にシリコーン樹脂被膜を破壊・除去する方式である。ところが、この方法は、簡便である反面、シリコーン樹脂のカス(デブリ)が発生し、これを版上から除去するための洗浄手段が必要となる問題点がある。
【0003】
一方、本発明者らは、特開平3−178478号公報において、書き込み前後で何らの現像処理やデブリ処理等のプロセスを必要としない版(記録体)を提案した。更に、この記録体の改良として、本発明者らは、地肌汚れをしにくくする目的で、吸油性バインダー樹脂を記録層に含有した記録体を提案した(特開2001−191657号公報)。しかし、単に吸油性バインダー樹脂を含有しただけでは、地肌がインクに汚れにくくなる半面、画像部にインクが付着しにくくなる問題点があることがわかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インクに対して地汚れしにくく、且つ、画像部へのインク付着性が良好に保たれる記録体を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記課題は下記(1)〜(8)によって達成される。
【0006】
(1)基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、無機乃至樹脂微粒子体とを独立分散した状態で含有してなることを特徴とする記録体。
【0007】
(2)基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを独立分散した状態で含有し、且つ、これらを固定するバインダー樹脂を含有してなることを特徴とする記録体。
【0008】
(3)基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを独立分散した状態で含有し、且つ、これら部材を固定する耐油性弾性バインダー樹脂を含有してなることを特徴とする記録体。
【0010】
(4)基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを分散した状態で含有してなり、該ポリオルガノシロキサン構造を有する材料は予め架橋したポリオルガノシロキサン構造を有する微粒子状材料が記録層中に分散した後に該微粒子状材料どうしが架橋されたものであることを特徴とする記録体。
【0011】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の記録体において、波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料を記録層中に含有することを特徴とする記録体。
【0012】
(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の記録体において、基板と記録層との間に波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料を含有した層を形成したことを特徴とする記録体。
【0013】
(7)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の記録体において、微粒子体が波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料であることを特徴とする記録体。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
上記(1)の発明は、記録層に、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料(以下、F材という)と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料(以下、S材という)と、微粒子体(以下、M材という)とを独立分散した状態で含有したことを特徴とする記録体である。図1(a)に記録体断面の概念図を示す。
【0015】
図1(b)はF材とS材とM材とが独立分散した状態にあることを示す。インクが選択的に付着する機能はF材の性質を利用し、インクに対する離型性はS材の性質を利用する。記録層はM材が分散含有されていることで良好な強度をもつようになる。
図2(a)に示す如く、画像部においてはF材の液体(インクを含めて)に対する後退接触角が低いため、インクはF材に付着する。一方、図2(b)に示すごとく、地肌部では、F材の液体(インクを含めて)に対する後退接触角が高いため、F材上ではインクを弾き付着しない。さらに、S材は、ポリオルガノシロキサン構造を含有しているため、所謂WFBL理論に基づき、インクの極薄層のインクオイル層をS材表面に形成するため、インクが直接S材に接触しないため極めて強いインク離型性を示す。この結果、従来のF材のみの記録体に比べて、地肌部に対してインク離型性が増加し、地汚れを発生しにくくする。
【0016】
ところで、記録層にF材とインク離型性材料を含有すると、一般には、画像部では、後退接触角が低下しインク付着性を示すF材とインク離型性材料とのバランスによりインク付着性能が決まる。F材の割合が多ければインク付着性が増加し、少なければインクは付着しなくなる。逆に、地肌部では、インク離型性材料の割合が少なくなるとF材単独と性能が変わらない程度のインク離型性しか持たなくなる。即ち、地肌汚れの低減と画像部へのインク付着性は相反する。 本発明者らはこの相反する性質を克服するために鋭意検討した結果、インク離型性材料としてS材を用いることで、画像部のインク付着性を損なうことなく、地肌汚れに強い記録体と成りうることを発見した。しかも、両者の材料(F材、S材)は独立した形で記録層中に分散していることが望ましいことも分かった。
【0017】
F材は、前記のとおり、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料であるが、具体的には、(i)疎水基の表面自己配向機能をもつ有機化合物、又は(ii)疎水基を有する有機化合物であって疎水基が表面に配向されたものである。
【0018】
(i)にいう「表面自己配向機能」とは、ある化合物を支持体上に形成した固体又は或る化合物自体による固体を空気中で加熱すると、表面において疎水基が空気側(自由表面側)に向いて配合する性質があることを意味する。このことは(ii)においても同様にいえる。一般に、有機化合物では疎水基は疎水性雰囲気側へ向きやすい現象をもっている。これは、固−気界面の界面エネルギーが低くなるように配向する現象である。この現象は疎水基の分子長が長くなるほどその傾向が強くなるが、これは分子長が長くなると加熱による分子の運動性が上がるためである。
【0019】
更に具体的には、末端に疎水基を有する(即ち表面エネルギーを低くする)分子であると、疎水基は空気側(自由表面側)を向いて表面配向しやすい。同様に−(CH2)n−(nは12以上の整数)を含む直鎖状分子では−(CH2)n−の部分が結晶性を有するため分子鎖どうしが配向しやすい。また、フェニル基を含む分子もフェニル基の部分が平面構造であり、分子鎖どうしが配向しやすい。さらに、弗素などの電気陰性度の高い元素を含む直鎖状分子は自己凝集性が高く、分子鎖どうしが配向しやすい。
【0020】
これらの検討結果をまとめると、より好ましくは、自己凝集性の高い分子や平面構造をもつ分子を含み、かつ、末端に疎水基を有する直鎖状分子、或いは、そうした直鎖状分子を含む化合物は表面自己配向機能が高い化合物といえる。
【0021】
これまでの記述から明らかなように、表面自己配向機能と後退接触角とは関連があり、また、後退接触角と液体付着性との間にも関係がある。即ち、固体表面での液体の付着は、主に液体の固体表面でのタッキングによって生じる。このタッキングはいわば液体が固体表面を滑べる時の一種の摩擦力とみなすことができる。従って、本発明でいう“後退接触角”θrは、前記摩擦力をγfとすると、下記の関係式が成立つ(斉藤、北崎ら「日本接着協会誌」Vol.22、No.12,No.1986号)。
【数1】
cosθr=(γ/γlV)・(γs-γsl-πe+γf)
(但し、γ :真空中の固体の表面張力
γsl:固-液界面張力
γlV:液体がその飽和蒸気と接しているときの表面張力
πe:平衡表面張力
γf:摩擦張力
γs:吸着層のない固体の表面張力、である)
【0022】
従って、θrの値が低くなるときγf値は大きくなる。即ち、液体は固体面を滑べりにくくなり、その結果、液体は固体面に付着するようになる。
【0023】
これら相互の関連から推察しうるように、液体付着性は後退接触角θrがどの程度であるかに左右され、その後退接触角θrは表面自己配向機能を表面に有する部材の何如により定められる。本発明の記録体は、その表面に所望パターン領域の形成及び/又は記録剤による顕像化の必要から、必然的に、表面自己配向機能を表面に有する部材が選択される。
【0024】
本発明の記録体の記録層はS材、M材とともに「加熱状態で液体と接触させたときに後退接触角θrが低下し、空気中で再加熱すると後退接触角θrが回復する性質を有する材料」すなわちF材を含む層であるが、ここでの「液体」は、当初から液体であるものの他、蒸気あるいは後退接触角θrの低下開始温度以下で結果的に液体を生じさせる固体であってもよい。ここで蒸気とは、記録体の表面又は表面近傍で、少なくともその一部が凝縮して液体を生じ、その液体が記録体の表面を濡らすものであれば充分である。一方、ここでの固体は、後退接触角θrの低下開始温度以下で液体か、液体を発生させるか、又は、蒸気を発生させるものである。固体から発生した蒸気は記録体の表面又はその近傍で凝縮して液体を生じる。
【0025】
液体としては、水の他に、電解質を含む水溶液;エタノール、n−ブタノール等のアルコール;グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール;メチルエチルケトン等のケトン類のごとき有極性液体や、n−ノナン、n−オクタン等の直鎖状炭化水素;シクロヘキサン等の環式状炭化水素;m−キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素のごとき無極性液体が好ましい。特に有極性液体が好ましい。これらは混合体でもよく、各種分散液や液状インクも使用できる。
【0026】
結果的に液体を生じさせる蒸気としては、水蒸気の外に、接触材料の液体の蒸気が使用できるが、特にエタノールやm−キシレンなどの有機化合物の蒸気(噴霧状態を含む)が好ましい。この有機化合物の蒸気の温度は記録体の表面を形成する化合物の融点或いは軟化点以下である。
【0027】
結果的に液体を生じさせる固体としては、高級脂肪酸、低分子量ポリエチレン、高分子ゲル(ポリアクリルアミドゲル、ポリビニルアルコールゲル)、シリカゲル、結晶水を含んだ化合物などがあげられる。
【0028】
本発明で用いられるF材は、前記後退接触角変化の性質を有するポリマーであるが、このものにはフッ素原子を含むポリマーが好ましく、特に側鎖にフッ素原子を有するポリマー材料が好ましい。これらについては特開平3−178478号公報に開示されている記録層材料のうちのポリマー材料のすべてが使用できる。
【0029】
また、フッ素原子を含まないポリマーとしては、ラウリル基またはステアリル基等の長鎖のアルキル基側鎖を有するポリマーもあげられるが、本発明の記録体においては、F材として側鎖にフッ素原子を含むポリマーを用いるのが特に好ましい。
【0030】
F材のうち、フッ素を含むポリマー材料(側鎖にフッ素を有するポリマーを含む)としては、下記化合物(モノマー)の重合単位を含む共重合体が好ましい(式中のRは水素原子、メチル基、またはフッ素原子、Rfはフッ素原子含有有機基)。
【0031】
CH2=CRCOORf、
CH2=CROCORf、
CH2=CRC(O)Rf、
CH2=CRORf、
CH2=CRCONHRf、
CH2=C(CH2R)COORf、
CH2=CR(CH2)nRf。
Rfとしては下記(1)〜(15)が好ましい。
(1)−CH2CH2C8F17、
(2)−CH2CH2C10F21、
(3)−CH2CH2C12F25、
(4)−CH2(CF2)10H、
(5)−(CF2)6−O−CF2CF3、
(6)−(CH2)4−NH−CF2CF3、
(7)−(CH2)10−C8F17、
(8)−CH2NHSO2C8F17、
(9)−CH2CH2−(CF2)6CF(CF3)2、
(10)−CH2CF2CF2CF3、
(11)−CH2CH2CH2CH2CF3、
(12)−CH2(CF2)6CF3、
(13)−CH2(CF2)5CF3、
(14)−(CH2)3−CF3、
(15)−(CH2)2(CF2)5CF2Cl。
【0032】
特に下記式(1)で表されるモノマーを重合して得られる共重合体が好ましい。
【化1】
CH2=CR1COOR2(CF2)mF (1)
ただし式中の記号は下記の意味を示す。
R1:水素原子またはメチル基、
R2:−(CH2)p−(p≧1の整数)または−(CH2)q−N(R3)S02−(R3は−CH3または−C2H5、q≧1の整数)、
m≧4の整数。
【0033】
特に以下の具体的モノマーを重合して得られる共重合体が好ましい。
CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)12F、
CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、
CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、
CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、
CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)12F、
CH2=CHCOO(CH2)2N(C2H5)S02(CF2)8F、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2N(C2H5)SO2(CF2)8F。
【0034】
共重合体は上記モノマーの2種以上の共重合体であるか、上記モノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体である。特に、共重合体中のフッ素含有量を調節する等の目的で上記フッ素含有モノマーとフッ素を含有しないモノマーとの共重合体が好ましい。フッ素含有モノマーの割合は全モノマーに対して50重量%以上が好ましい。
【0035】
他の共重合性のモノマーとしては、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物を1種以上用いるのが好ましい。そのようなモノマーとしては下記のようなモノマーがある。なお、以下において、アクリレートとメタクリレートをまとめて(メタ)アクリレートと記す。
【0036】
エチレン等のオレフィン;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニル;塩化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;アルキルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類、グリシジル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート等の上記以外の(メタ)アクリレート;無水マレイン酸、ジアルキルマレート等のマレイン酸類;N−ビニルカルバゾール等。
【0037】
また、F材としては、CH2=CRCOOCH2CH2(CF2)mF(Rは水素原子またはメチル基、mは4以上の整数であり6〜14が好ましい。)で表わされるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの重合単位を含む共重合体が好ましい。パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの重合単位を含む共重合体は、上記のようなフッ素を含まないモノマーの重合単位を含むのが好ましい。
【0038】
パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの重合単位を含む共重合体中のフッ素原子の割合は、30〜50重量%が好ましい。パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの重合単位を含む共重合体は市販品を用いることができる。
【0039】
上記のモノマーから共重合体を得る方法としては後に詳しく記載するが、溶液重合、電解重合、乳化重合、光重合、放射線重合、プラズマ重合、グラフト重合、プラズマ開始重合、蒸着重合等、材料により適当な方法が選択されるが、本発明においては乳化重合が好ましい。
【0040】
本発明においては、微粒子状となったF材を用いて記録層を形成するのが好ましい。微粒子状F材の製造方法は、下記の方法が採用できる。
【0041】
[F材を乾燥し粉砕する方法]
たとえば、トリクロロトリフルオロエタンを溶媒として、パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートを溶液重合し、溶剤を留去した後、得られた固体を粉砕する。粉砕したF材を塗布液に分散させる。
【0042】
[強制乳化によりF材の水分散液を得る方法]
たとえば、F材をメチルイソブチルケトン(MIBK)等のF材を溶解し得る有機溶剤に溶解させ、溶液とする。これに、水と必要に応じて乳化剤を加え、高圧ホモジナイサーにより乳化し、有機溶剤を除去してF材の水分散体を得る。
【0043】
[前記モノマーを乳化重合させて直接F材の水分散液を得る方法]
たとえば、重合しようとするモノマーを乳化剤の存在下に水媒体中に乳化させ、撹枠下に重合させる方法である。重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等の重合開始剤、さらにγ−線等の電離性放射線等が採用されうる。また、乳化剤としては、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性の各種乳化剤のほとんど全てが使用でき、中でも後で説明する水溶性の乳化剤が好ましい。
【0044】
微粒子状F材の製造方法としては、F材を強制乳化する方法またはF材を乳化重合法によって得る方法が好ましく、特に後者が好ましい。
【0045】
S材は、下記一般式(2)に記載のごとく、ポリオルガノシロキサン構造を有する部材である。ここで、R1、R2は炭素数1〜3のアルキル基、nは100〜10000の整数である。また、これらアルキル基の変わりに、フェノール変性、エポキシ変性、アミノ変性した構造でもよい。
【化2】
【0046】
このS材はシリコーン樹脂分散液として市販されており、容易に入手することができる。
【0047】
記録層において、これらのF材及びS材は、おのおの独立に分散していることが望ましく、それぞれのドメインの大きさは、1μm〜5μm程度が望ましい。1μmよりも小さい場合、画像部において、F材にインクが付着しにくくなり、5μm以上では、地肌部でのインク離型性が落ちてしまう。
【0048】
記録層を上記F材及びS材で形成した場合、一般に被膜強度が低く、外的な擦れに対して被膜破壊を起こしやすい。このため、印刷中の紙ジャム発生時に紙と記録体とが擦れて、記録層表面に傷が入り、地汚れを発生させる恐れがある。このように、記録層の被膜強度を高める必要がある。本発明者らが鋭意検討した結果、記録層に微粒子体(M材)を分散する構成がもっとも簡単であり且つ記録層の印字適性を阻害しないことがわかった。即ち、本発明は、記録層にF材とS材が独立に分散し、且つ、その記録層中に微粒子体を分散したことを特徴とする記録体である。
【0049】
本発明の記録体においては、M材を記録層に含有することで、記録層の強度補強と同時に表面に突起を形成することで機械的擦れの頻度を下げることができる。M材の大きさは0.1〜10μmが適当である。10μmより以上であるとベタ画像部に白抜けが発生し、0.1μm未満であると被膜補強の効果がなくなる。特に好ましい大きいはおおよそ、0.1μmから5μmの範囲である。M材の記録層への含有濃度も重要な因子で、固形分比率で5〜30wt%が適当である。固形分比率で30wt%よりも多いと記録層表面が粗面化してしまい、地汚れを起こしやすくなる。また、固形分比率で5%よりも少ないと、記録層中に分散してもあまり強度補強の効果がなくなる。特に好ましい範囲としては、固形分比率で5〜20wt%である。
【0050】
微粒子体の材料としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムのごとき金属酸化物;シリカのごとき珪酸塩;けん濁重合や分散重合により微粒子化したり粉砕により微粒子化したアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などが適当である。
【0051】
この記録体の記録層が上記(1)のようにF材とS材とM材とで構成されている場合、記録層におけるF材/S材の重量割合は4/6〜7/3が適当である。
【0052】
上記の記録層は一般にフィルム基板上に形成される。記録層は、F材として例えば含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液、S材として例えばシリコーン樹脂分散液、及びM材として例えばシリカ微粒子を混合してコート液をつくり、これをフィルム基板上に塗布し、自然乾燥後120〜150℃で熱キュアを行うことにより形成できる。記録層の厚みは1〜5μmくらいが適当である。
【0053】
本発明におけるフィルム基板としては、公知の合成樹脂フィルムが挙げられる。合成樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セロハンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、ポリスルホンフィルム、およびポリオレフィンフィルム等が挙げられる。これらのうち、機械的特性、熱的特性、または価格などの理由から、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムが好ましく、特にポリエステルフィルムが好ましい。
【0054】
上記の「ポリエステルフィルム」は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とするポリエステルのフィルムを総称している。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリエチレンα,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、品質および経済性等から、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0055】
フィルム基板表面はそのままであってもよいが、本発明においては、該表面を粗面化しておくのが好ましい。粗面化の方法としては、特に限定されず、たとえば、サンドブラストによりフィルム面を削るサンドマット加工や、あらかじめフィルムに微粒子を混ぜるダイレクトマット加工や、フィルム面に微粒子を混ぜた樹脂層をコートするコーティングマット加工のいずれでもよい。フィルム基板の形状は、ベルト状、板状、ドラム状のいずれでもよく、装置の使用用途に応じて選定する。
フィルム基板の厚さは10〜200μmが好ましく、特にコスト面から、20〜100μmが好ましい。
【0056】
この記録体による画像の形成方法を図3(a)及び(b)に示す。
図3(a)は、予め、記録層全面を液体に接触した状態で加熱し、記録層全面をインク付着性状態とする。その後。画像書き込み時に、非画像部(地肌部)のみ空気中で加熱し、潜像を形成する。その後、インクの付着したインキングローラにて画像部にインクを付着させ、紙等の転写材に転写する。
一方、図3(b)は、最初の状態がインク離型性のままで、液体に接触した状態で画像部のみ選択的に加熱する。これにより画像部はインク付着性を示し、画像形成が可能となる。
【0057】
加熱源としては、サーマルヘッドのごとき接触加熱体やレーザのごとき非接触加熱源が望ましい。インクとしては、S材としてのポリオルガノシロキサンに対して優れた離型性を示す油性インクが望ましい。画像記録装置としては、オフセット印刷機や凸版印刷機のごとく、高粘度インクを用いた印字が可能な装置が望ましい。インクの粘度は、10Pa・s〜300Pa・s程度が望ましい。
【0058】
ところで、上記(1)の発明ではS材はインキング時にインクの溶剤を吸収するため若干の膨張を示す。このため、記録層被膜が柔らかくなり、擦り等の機械的影響により皮膜が破壊される恐れがある。これを防ぐために被膜強度を補強する必要がある。そこで、本発明は上記(2)の発明のように、記録層に、F材とS材とM材とを独立分散した状態で含有し、且つ、これらF材とS材とM材とを固定するバインダー樹脂を含有させることが好ましい。
【0059】
図4にその具体例を示す。3つの部材(F材、S材、M材)は独立して分散し、その間をバインダー樹脂が覆っている。F材、S材およびM材の3つの部材を固定するバインダー樹脂は、コート液に対して溶解性を示すものが望ましい。これは、前記3つの材料が独立して分散している状態でそれらの間をつなげつためにはバインダーがコート液中で分散状態ではつなぎの効率がわるく、溶解することであたかも繊維が絡まるごとくして前記3つの材料で固定することが望まれるためである。従って、コ−ト液溶媒が水ベースである場合、固定用のバインダー樹脂は水溶性樹脂が望ましい。
バインダー樹脂の例としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンやポリビニルブチラールやポリアクリルアミドなどが望ましい。また、記録体は画像書き込み処理時に液体と接触するが、記録層被膜としてこの液体に対して溶解性がないことが望ましい。従って、コート後、バインダー樹脂は架橋させておく方がより望ましい。
【0060】
また、F材とS材とM材との固定化のためのバインダー樹脂が耐油性弾性を示すとS材の膨張に伴う被膜への内部応力増加を緩和できる。そこで、上記(3)の発明のように、記録層に、F材とS材とM材とを独立分散した状態で含有し、且つ、これらF材、S材、M材を固定する耐油性弾性バインダー樹脂を含有させることが好ましい。バインダー樹脂が耐油性を有すると油性インクと接しても膨潤することがない。また、バインダー樹脂が弾性を有しているとS材の膨張に伴う被膜の内部応力増加を緩和する。ここでいう耐油性とは、10cm×10cm×1mmの大きさの樹脂をインク溶剤中に24時間含浸した後の体積膨張率が10%以下であることを言う。弾性の程度は使用目的、その他本発明の意図する範囲内で任意に規定することができる。耐油性弾性樹脂の具体例としては、インクが油性である場合、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が望ましい。
【0061】
実際に本発明の記録体を作成する際、F材及びS材の形成方法の違いにより両部材の分散状態が変わり、記録層の特性に影響を与える。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、上記(4)の発明のように、記録層が、F材と、M材と、ポリオルガノシロキサン構造を有するオイル状材料とを分散した状態で含有されており、かつ、該オイル状材料は、未架橋のオルガノシロキサンを記録層中に分散した後に架橋されたものであるのがよいことを発見した。
S材をオイル状とすることで、コート液中では、固形状のF材とオイル状S材とM材とがそれぞれ独立して分散し、基板にコート後、溶媒の蒸発した後、固形状のF材及びM材の回りに隙間なくS材が分散する。その後、S材を架橋させて固形化することで記録層被膜が形成される。図5に被膜形成過程のイメージを図示した。
オイル状S材は、O/Wエマルジョンの形態が望ましく、乳化重合や分散重合にて水系でF材を重合した水ベースの溶媒中にS材エマルジョンを混合することでコート液を調整する。
【0062】
S材においては、コート後の熱キュア時間は、S材が固形の方がS材がオイルの場合よりも短縮できる(オイルの場合、架橋反応であるため)。
そこで、上記(5)の発明のように、F材とM材と予め架橋したポリオルガノシロキサン構造を有する微粒子とで記録層形成液を調製し、これを基材上に塗布した後に、前記の予め架橋したポリオルガノシロキサン構造を有する微粒子どうしを架橋させるのが有利である。
【0063】
上記(1)〜(5)の記録体においては、F材とS材の比率が画像部へのインク付着性と地肌のインク離型性の両立を左右する。本発明者が鋭意検討した結果、上記(6)のように、F材とS材の固形分重量比率が4/6〜6/4であることが望ましいことが分かった。また、上記(2)(3)の記録体のように記録層の形成にバインダー樹脂が用いられる場合は、記録層中に占めるF材、S材の量は固形分重量がともに40〜60wt%、好ましくは45〜55wt%であり、M材の量は5〜30wt%、好ましくは10〜15wt%である。
【0064】
本発明の記録体は上記(6)のように、上記(1)〜(5)の記録体において、波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料を記録層中に含有させることが望ましい。
画像書き込み手段としては、サーマルヘッドのごとき接触加熱手段も使用できるが、接触時の機械的擦れによる擦り傷が地汚れの原因となる恐れがある。そこで、レーザのごとき非接触加熱手段の使用が有利である。このため、レーザ等の画像書き込み光源の波長に対して吸収を示す材料を記録層中に分散して含有させておくのが好ましい。光吸収部材の吸収ピークは光源によって選択するが、900nmから400nmの光に対して何れかの波長に対し吸収を示す部材が望ましい。
具体的な光吸収材料としては、カーボンブラック、フタロシアニン系色素・顔料、及びシアニン系色素・顔料などが挙げられる。これら光吸収材料の記録層への配合料は一概に決められないが、F材固形分に対して5〜20wt%が適当である。
【0065】
また、本発明の記録体は上記(7)のように上記(1)〜(5)の記録体において、基板と記録層との間に波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料を含有した層を形成することが望ましい。
先に挙げた光吸収材料を記録層中に分散させた例では、光吸収材材料によっては印字特性へ影響を与える恐れがある。そこで、記録層と基板との間に光吸収材料を含有した中間層を設け、レーザ照射時に、中間層を発熱し熱伝導により記録層表面を加熱する構成とする。こうすることで、記録層の印字特性を損なうことがなくなりが画像品質劣化を防ぐことができる。
この中間層はバインダー樹脂中に光吸収材料を分散した形態を有するが、ここで用いられるバインダー樹脂にはメアミン系樹脂やウレタン系樹脂等が挙げられる。また、中間層に含有される光吸収材料の量は一概に決められないが、5〜20wt%くらいが適当である。中間層の厚みは1μmから5μmが適当である。この時記録層の厚みが厚いと、表面まで加熱されない恐れがある。そこで記録層の厚みはできるだけ薄いほうが望ましいが、薄すぎると機械的強度が低下してしまう。中間層の厚みとしては、レーザ照射時間が1m秒以下である場合、0.5μmから2μmまでが適当である。
【0066】
さらに、本発明の記録体は上記(8)のように、上記(1)〜(5)の記録体において、記録層に分散されている微粒子体(M材)は波長400〜900nmの光に対して吸収を示すものであるのが望ましい。すなわち、記録層中における被膜強度補強のための微粒子体が光吸収剤を兼用できれば、記録層に敢えて別個に光吸収材を添加する必要がなくなり、製造上の歩留まりもよくなる。
光吸収剤を兼用できる微粒子体としては、波長400〜900μmの光に対して吸収を示す色素(例えば前記の光吸収材料)で被覆層を形成した樹脂微粒子があげられる。
【0067】
【実施例】
次に実施例、比較例をあげて本発明を具体的に説明する。ここでの部は重量基準である。
【0068】
(実施例1)
F材:含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分20wt%、旭硝子社製(商品名:アサヒガードLS317))
S材:シリコーン樹脂分散液(東レダウコーニングシリコーン、SE1950、固形分50wt%)
M材:シリカ微粒子(平均粒径1μm、富士シリシア社製)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材とS材を固形分重量比1/1にて混合し、これにさらに固形分全体の10wt%としたM材を添加し、ホモジナイザーにて分散してコート液を調製した。その後、ワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(1)の記録体を作成した。
【0069】
(比較例1)
F材:実施例1と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材液のみをワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって比較の記録体を作成した。
【0070】
続いて、これらの記録体を図3(b)に示したように、記録体表面に液体(水)を接触させた状態で600dpiサーマルヘッドにて書き込みを行って潜像が形成された記録体を作成した。この画像書き込み後の記録体を市販オフセット印刷機の版胴に張りつけ、市販水なし市販インクを用いて、市販コート紙(王子製紙製、NP1ダルコート)に印刷した。
結果をまとめて表1に示す。
表1のごとく、比較例1に較べて実施例1のほうが地肌汚れに強いことが分かった。さらに、印刷用紙(上質紙:大昭和製紙)にて記録体表面をかるく擦った後、再び印刷したところ、比較例1の記録体では擦り目が地汚れとして発生したのに対し、実施例1の記録体では擦りによる地汚れは認められなかった。
【0071】
(実施例2)
F材:含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分10wt%)
S材:シリコーン樹脂分散液(東レダウコーニング社製、シリコーンBY244、固形分50wt%)
M材:アクリル樹脂微粒子(平均粒径2μm)
バインダー樹脂:ポリビニルアルコール(重合度1900、けん価率95%)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
バインダ樹脂を10wt%水にて溶解した液に、F材液とS材液を固形分比1/1にて混合したコート液を調合し固形分全体の20wt%添加し、更に、微粒子を固形分全体の5wt%添加し、ホモジナイザーにて分散した。その後、ワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(2)の記録体を作成した。
この記録体に実施例1と同じ方法で画像書き込み、印刷を行なった。結果を表1に示す。
表1のごとく、比較例1に較べて実施例2のほうが地肌汚れに強くさらに画像濃度も高くなることが分かった。また、実施例1よりも耐刷性が向上した(実施例1は、1000枚、実施例2は5000枚)。
【0072】
(実施例3)
F材:実施例1と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分10wt%)
S材:シリコーン樹脂分散液(東レダウコーニングSE1950、固形分50wt%)
M材:酸化亜鉛微粒子(平均粒径0.5μm、日本アジオモント社製)
耐油性弾性樹脂:水性ポリウレタン樹脂(固形分5wt%)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材液とS材液とウレタン樹脂液を固形分重量比1/1/0.5にて混合し、これに更に微粒子を固形分全体の15wt%添加し、ボールミルにて分散してコート液を調製した。その後、このコート液をワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(3)の記録体を作成した。
この記録体に実施例1と同じ方法で画像書き込み、印刷を行なった。
結果を表1に示す。
表1のごとく、比較例1に比べて実施例3のほうが地肌汚れに強いことが分かった。更に実施例2よりもさらに耐刷性が向上した(6000枚)。
【0073】
(実施例4)
F材:実施例1と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分10wt%)
S材:O/W型シリコーンオイル液(信越化学社製、X52−195、固形分40wt%)
M材:表面を疎水処理したシリカ微粒子(平均粒径0.5μm、富士シリシア化学社製)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材とS材を固形分重量比1/1にて混合し、これに更に、M材を固形分全体に対して10wt%添加し、ボールミルにて分散してコート液を調製した。その後、このコート液をワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(4)の記録体を作成した。
この記録体に実施例1と同じ方法で画像書き込み、印刷を行なった。結果を表1に示す。
表1のごとく、比較例1に較べて実施例4のほうが地肌汚れに強く、画像濃度が高くなることが分かった。
【0074】
(実施例5)
F材:実施例1と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分20wt%)
S材:シリコーン樹脂分散液(固形分20wt%)
M材:酸化チタン微粒子(平均粒径1μm)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材とS材を固形分重量比1/1にて混合し、これに更にM材を10wt%添加し超音波オモジナイアーにて分散してコート液を調製した。その後、このコート液をワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(5)の記録体を作成した。
この記録体に実施例1と同じ方法で画像書き込み、印刷を行なった。結果を表1に示す。表1のごとく、比較例1に較べて実施例5のほうが地肌汚れに強いことが分かった。
【0075】
(実施例6)
F材:実施例1と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分20wt%)
S材:O/W型シリコーンオイル液(信越化学社製、X52−195、固形分40wt%)
M材:表面を疎水処理したシリカ微粒子(平均粒径0.5μm、富士シリシア化学社製)
光吸収材料:カーボンブラック(墨汁)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材とS材を固形分重量比1/1にて混合し、これに更にM材を固形分全体に対して10wt%添加し、さらに墨汁をコート液全体に対して20%添加した後、ボールミルにて分散してコート液を調製した。その後、このコート液をワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(6)の記録体を作成した。
この記録体により実施例1と同じ方法(但し、画像書き込みはドラム走査型マルチレーザ書き込み装置を用い、波長830nm、出力100mWの半導体レーザにて2540dpiの解像度で書き込みを実施した)で印刷物を得た。結果を表1に示す。表1のごとく、比較例1に較べて実施例6のほうが地肌汚れに強く、画像濃度が高くなることが分かった。
【0076】
(比較例2)
比較例1の記録体を用いて実施例6と同じの画像書き込み、印刷を行なった結果を表1に示す。表1のごとく、評価は比較例1と同程度であった。
【0077】
(実施例7)
F材:実施例と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分20wt%)
S材:O/W型シリコーンオイル液(信越化学社製、X52−195、固形分40wt%)
M材:表面を疎水処理したシリカ微粒子(平均粒径0.5μm、富士シリシア化学社製)
中間層:カーボンブラックを固形分重量比で20wt%含有したポリイソシアネート樹脂層
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材とS材を固形分重量比1/1にて混合し、これに更にM材を固形分全体に対して10wt%添加し、ボールミルにて分散してコート液を調製した。その後、このコート液をワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にて厚さ5μmの中間層を形成したPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(7)の記録体を作成した。
この記録体に実施例6と同じ方法で画像書き込み、印刷を行なった。
結果を表1に示す。表1のごとく、比較例1に較べて実施例7のほうが地肌汚れに強く画像濃度が高くなることが分かった。
【0078】
(実施例8)
F材:実施例1と同じ含フッ素アクリレート重合体の乳化重合液(固形分10wt%)
S材:O/W型シリコーンオイル液(信越化学社製、X52−195、固形分40wt%)
M材:表面をフタロシアニン系色素でコーティングしたアクリル微粒子(平均粒径2μm)
基板:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)
F材とS材を固形分重量比1/1にて混合し、これに更にM材を固形分全体に対して10wt%添加し、ボールミルにて分散してコート液を調製した。その後、このコート液をワイヤーバー(ワイヤー径0.35mm)にてPETフィルム上にコート(固形分厚み3μm)し、自然乾燥後160℃で1分間熱キュアを行なって上記(8)の記録体を作成した。
この記録体を用い実施例と同じ方法で画像書き込み、印刷を行なった。結果を表1に示す。表1のごとく、比較例1、2に較べて実施例8のほうが地肌汚れに強く画像濃度が高くなることが分かった。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、従来よりも地肌汚れにつよくなるため、画像品質が向上する。請求項2の発明によれば、請求項1に比べ、記録層被膜の機械的強度が向上するため、耐刷性がよくなる。請求項3の発明によれば、油性インクに対する耐油性が向上し、耐刷性が向上する。請求項4の発明によれば、シリコーンを固形状微粒子とするため、コート時の分散性が良く、かつ、熱キュア時間が早いため、歩留まり良く、かつ、製造時間の短縮が図れる。請求項5〜7の発明によれば、レーザ光での書き込みが行えるようになる。F材とS材の最適な配合比を提供するため、画像品質の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の記録体の断面の概念図であり、図1(b)はこれを紙面上方からみた場合の図である。
【図2】図2(a)及び(b)は記録層にインクが選択的に付着する様子を説明するための図である。
【図3】図3(a)及び(b)は記録体による画像形成が行われる様子を説明するための図である。
【図4】図4(a)は本発明の別の記録体の断面の概念図であり、図4(b)はこれを紙面上方からみた場合の図である。
【図5】図5(a)及び(b)は本発明のさらに別の記録体についてその被膜形成過程のイメージを表わした図である。
【符号の説明】
F材 液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料。
S材 ポリオルガノシロキサン構造を有する材料。
M材 微粒子体
Claims (7)
- 基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを独立分散した状態で含有してなることを特徴とする記録体。
- 基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを独立分散した状態で含有し、且つ、これらを固定するバインダー樹脂を含有してなることを特徴とする記録体。
- 基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを独立分散した状態で含有し、且つ、これら部材を固定する耐油性弾性バインダー樹脂を含有してなることを特徴とする記録体。
- 基板上に記録層を設けた記録体であって、該記録層は、液体と接触した状態で加熱・冷却すると液体との後退接触角が低下し、空気中で加熱すると後退接触角の値が回復する性質を有する材料と、ポリオルガノシロキサン構造を有する材料と、微粒子体とを分散した状態で含有してなり、該ポリオルガノシロキサン構造を有する材料は予め架橋したポリオルガノシロキサン構造を有する微粒子状材料が記録層中に分散した後に該微粒子状材料どうしが架橋されたものであることを特徴とする記録体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の記録体において、波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料を記録層中に含有することを特徴とする記録体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の記録体において、基板と記録層との間に波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料を含有した層を形成したことを特徴とする記録体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の記録体において、微粒子体が波長900nmから400nmの光に対して吸収を示す材料であることを特徴とする記録体。
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