JP3926474B2 - シリコーンゴム貼り積層板 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明はパッキンなどに有用なゴム貼り積層板に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
積層体に貼り合せるゴムとして、天然ゴム、塩化ゴム、塩酸ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジェンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム等が例示できる。
これらゴムは積層板と貼り合せる際に大きい接着力を備える必要があり、ゴムに重合開始剤と重合性不飽和基を1個有する単官能性モノマーを含める、或は重合開始剤と重合性不飽和基を除く官能基を有す多官能性化合物を含める事が知られている(例えば、特開平4−211431号公報参照)。
積層体に貼り合せるゴムがシリコーンゴムである場合には、シリコーンゴムが他の有機ゴムに比べて化学的に安定であって耐劣化性に優れ、熱的に安定であって−60〜260℃で十分な弾性を示すので、このシリコーンゴムと積層体との間の接着力がより大になればその使用範囲が拡大する。然し、積層体との貼り合せにおいて未だ十分な接着力が得られていない、と云う問題点がある。
【0003】
【問題点を解決するための手段】
この発明のシリコーンゴム貼り積層板は、上記問題点を解決するために、重ね合わされるプリプレグシート1枚〜数枚と未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚との間に、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シートを介在させ、または重ね合わせ面の何れかの一方の面に予め硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜を形成して介在させ、加熱加圧成形により、強い接着強さを得て一体化するようにしたのである。
【0004】
この発明に用いるプリプレグシートとは、シート状基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸乾燥して半硬化状態にしたものであり、1枚〜数枚を用いる。プリプレグシートに用いるシート状基材としては、含浸性の良い繊維材からなるものが好ましく、紙、綿布、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、芳香族ポリイミドなどの合成繊維布または不織布、ガラス繊維布または不織布、等々を例示することができる。また熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレートポリイミド、等々を例示することができる。
シート状基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸するには、熱硬化性樹脂組成物を溶液混合し、混合溶液の状態で含浸させる。溶媒として、ハロゲン系(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレンなど)、芳香属系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)を用いることができる。
【0005】
この発明に用いる硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と不飽和カルボン酸または酸無水物との反応生成物であって重合性の二重結合を実質的に含まない反応生成物、(b)トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートからなり、(a)成分と(b)成分の和100重量部を基準にして(a)成分が98〜40重量部、(b)成分が2〜60重量部である。
【0006】
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(a)成分の原料となるポリフェニレンエーテル樹脂は、次の一般式(I)で示されるものである。
【化1】
Figure 0003926474
但し、式中、mは1〜6の整数であり、Jはポリフェニレンエーテル鎖であり、Qはm=1のとき水素原子を表し、mが2以上のとき一分子中に2〜6個のフェノール性水酸基を持ち、フェノール性水酸基のオルト位およびパラ位に重合不活性な置換基を有する多官能性フェノール化合物の残基を表す。
一般式(I)で示すポリフェニレンエーテル樹脂として、限定するものではないが、2,6−ジメチルフェノールの単独重合で得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)のスチレングラフト共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジメチル−3−フェニルフェノールの共重合体、等々を好適に用いることができる。
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の(a)成分の原料となる不飽和カルボン酸または酸無水物として、限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、等を例示できる。
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の(b)成分のトリアリルイソシアヌレートは、次の構造式(II)または構造式(III)で示される三官能性モノマーであり、この官能基にはそれぞれ重合性の二重結合を一個ずつ有している。
【化2】
Figure 0003926474
【化3】
Figure 0003926474
これらの(b)成分は、架橋剤として作用すると共に、加熱時に樹脂の流動性をもたらす。架橋反応を起す温度は80〜300℃であり、より好ましくは150〜250℃である。加熱時間は1分〜10時間であり、より好ましくは1分〜5時間である。
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂は、(a)成分と(b)成分とを所定の割合に溶液混合し、混合溶液の状態でシート状に形成し、或は塗布して用いる。溶媒として、ハロゲン系(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレンなど)、芳香属系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)を用いることができる。
【0006】
この発明に用いる未加硫状態のシリコーンゴムシートとは、ジアルキルシラノールを加熱により重合させゲル状にしたものに、有機過酸化物加硫剤を混練し、これを未加硫の状態のままシート化たものである。加硫剤として、ジアルキルパーオキサイドを用いることができる。その具体例として、限定するものではないが、ジ−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドなどを例示することができる。
これら加硫剤は、ほぼ100〜105℃の温度から開裂(分解)して活性な酸素ラジカルを出し、シリコーンゴムに酸素架橋を生じる、或は側鎖メチル基のH原子がとんで隣接分子のエチレン結合によるクロスリンクを生じるものと考えられて、加硫が進む。
【0007】
この発明における加熱加圧成形の加熱温度は、プリプレグシートが適度の速さで架橋反応を進行させる温度(約80℃)以上の温度、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂が適度の速さで架橋反応を進行させる温度(約80℃)以上の温度、未加硫状態のシリコーンゴムシートが適度の速さで加硫反応を進行させる温度(約100℃)以上の温度であり、概ね100℃〜300℃の範囲にある。
【0008】
また加圧する強さは、加熱時の熱硬化性樹脂の溶融軟化に伴う樹脂流れ性および硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂の熱可塑化に伴う樹脂流れ性などにによって定まり、概ね1kg/cm〜150kg/cm、好ましくは1kg/cm〜100kg/cmである。
【0009】
このような加熱加圧条件における加熱温度により、プリプレグシートによる層(i)の熱硬化性樹脂成分は反応硬化して三次元構造に架橋する。また硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シート或は塗膜による層(ii)は反応硬化して三次元構造に架橋する。また未加硫状態のシリコーンゴムシートによる層(iii)の加硫剤成分は開裂(分解)しシリコーンゴムに酸素架橋、或は側鎖メチル基の水素原子がとんで隣接分子のエチレン結合によるクロスリンクを生じて加硫する。
プリプレグシートによる層(i)と硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シート或は塗膜による層(ii)との界面(i−ii)においては、熱硬化性樹脂の官能基が硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂の官能基と化学的に結合し、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シート或は塗膜による層(ii)と未加硫状態のシリコーンゴムシートによる層(iii)との界面(ii−iii)においては、(b)成分のトリアリルイソシアヌレートのアリル基(CH=CHCH−)の二重結合が開いてなる活性中間体のカルボアニオンと化学結合し、未加硫状態のシリコーンゴムシートによる層(iii)との界面(ii−iii)においては、トリアリルイソシアヌレートのアリル基(CH=CHCH−)の二重結合が開いてなる活性中間体のカルボアニオンを生じると共に、加硫剤が熱分解して酸素ラジカルを発生し、このラジカル反応により側鎖メチル基の水素原子がとびだし活性中間体のカルボアニオンとを生じ、この二種類のカルボアニオンが近接している場合に炭素原子どうしの共有結合、即ち、主結合として2−メチルプロピレン結合[−CHCH(CH)CH−]、副結合としてテトラメチレン結合[−CHCHCHCH−]を生じる可能性がある。即ち、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートのシート或は塗膜による層(ii)は、界面(i−ii)および界面(ii−iii)を介して架橋剤として作用しているものと考えられ、接着強さが大になるものと推察できる。
【0010】
以下この発明を実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明の範囲を実施例によって限定するものではない。
【実施例・比較例】
実施例、比較例に用いるプリプレグシート、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シート或はその塗膜、未加硫状態のシリコーンゴムシートは次のようにして得た。
【0011】
プリプレグシートは、次に示すエポキシ樹脂組成物をトルエン(溶媒)でカットしてワニス状にし、このワニスをガラスクロスシート基材に樹脂含有量が50%となるように含浸し乾燥して得た。
エポキシ樹脂組成物:
ビスフェノール型エポキシ樹脂 ……………………………………… 50重量部
ダイマー酸変性型エポキシ樹脂 ……………………………………… 30重量部
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 ……………………………… 20重量部
酸無水物硬化剤 ………………………………………………………… 36重量部
2−メチル−4−メチルイミダゾール促進剤 …………………… 0.1重量部
【0012】
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シートは、次に示す硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を60℃のトルエン(溶媒)でカットしてワニス状にし、このワニスをシート状に塗工し乾燥して得た。
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂組成物:
(a)成分のポリマーA …………………………………………… 100重量部
(b)成分のトリアリルイソシアヌレートまたはトリアリルシアヌレート …………………………………………………………………………… 25重量部
但し、ポリマーAは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)100重量部、無水マレイン酸、1.5重量部2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン1.0重量部の割合で室温で混合し、300℃で混練して得たポリマーである。
【0013】
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜は、上記硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂ワニスをリプレグシートの片面に、或は次に示す未加硫状態の厚み1.0mmのシリコーンゴムシートの片面に塗布乾燥して得た。
【0014】
未加硫状態のシリコーンゴムシートは、ポリ(ジメチルシラノール)100重量部に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(有機過酸化物加硫剤)2.0重量部を40〜50℃の温度で混練し、これを厚み1.0mmのシートに形成して得た。
【0015】
加硫シリコーンゴムシートは、上記未加硫状態のシリコーンゴムシートを温度170℃、時間1時間の条件で加温して加硫を促進させて得た。
【0016】
【実施例1】
プリプレグシート4枚、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シート1枚、未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚の順に積み重ね、この積み重ね構成体を圧力30kg/cm、温度170℃、時間5時間の条件で加熱・加圧してシリコーンゴム貼り積層板を得た。
このシリコーンゴム貼り積層板のシリコーンゴムの接着強さを、JIS−K6854「接着剤のはく離接着強さ試験方法」に基づいて測定しその結果を表1に示した。
【0017】
【実施例2】
プリプレグシート3枚の上に、片面に硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜を形成したプリプレグシート1枚を塗膜面を上にして重ね合わせ、更に未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚を重ね合わせて、全体を圧力30kg/cm、温度170℃、時間5時間の条件で加熱・加圧してシリコーンゴム貼り積層板を得た。
このシリコーンゴム貼り積層板のシリコーンゴムの接着強さを、JIS−K6854「接着剤のはく離接着強さ試験方法」に基づいて測定しその結果を表1に示した。
【0018】
【実施例3】
片面に硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜を形成した未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚の塗膜面上に、プリプレグシート4枚を重ね合わせ、全体を圧力30kg/cm、温度170℃、時間5時間の条件で加熱・加圧してシリコーンゴム貼り積層板を得た。
このシリコーンゴム貼り積層板のシリコーンゴムの接着強さを、JIS−K6854「接着剤のはく離接着強さ試験方法」に基づいて測定しその結果を表1に示した。
【0019】
【比較例1】
硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シートを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム貼り積層板を得た。
このシリコーンゴム貼り積層板のシリコーンゴムの接着強さ力を、実施例1と同様の試験方法により測定しその結果を表1に示した。
【0020】
【比較例2】
未加硫シリコーンゴムシートの代わりに加硫シリコーンゴムシートを用いた以外は実施例1と同様にして、シリコーンゴム貼り積層板を得た。
このシリコーンゴム貼り積層板のシリコーンゴムの接着強さ力を、実施例1と同様の試験方法により測定しその結果を表1に示した。
Figure 0003926474
【0021】
実施例1,2,3のシリコーンゴム貼り積層板は、共に5.0kg/25mmにおいて積層板に貼り合わされたシリコーンゴムシートが破壊し、はく離接着強さを求められなかったが、少なくとも5.0kg/25mm以上あり、比較例1〜2のはく離接着強さ1.2kg/25mmより4倍以上のものが得られた。
【0022】
【発明の効果】
この発明は、重ね合わされるプリプレグシート1枚〜数枚と未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚との間に、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シートを介在させ、または重ね合わせ面の何れかの一方の面に予め硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜を形成して介在させ、加熱加圧により一体に成形することにより、強い接着強さを有すシリコーンゴム貼り積層板を得ることができる。

Claims (4)

  1. プリプレグシート1枚〜数枚、硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂シート1枚、未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚の順に重ね合せてなる組合せ構成体を加熱加圧成形により一体化したことを特徴とするシリコーンゴム貼り積層板。
  2. プリプレグシート1枚〜数枚と、該プリプレグシート1枚〜数枚の片側面に塗布形成した硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜と、該塗膜に重ね合せた未加硫状態のシリコーンゴムシートとからなる組合せ構成体を加熱加圧成形により一体化したことを特徴とするシリコーンゴム貼り積層板。
  3. 未加硫状態のシリコーンゴムシート1枚と、該未加硫状態のシリコーンゴムシートの片側面に塗布形成した硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂塗膜と、該塗膜に重ね合せたプリプレグシート1枚〜数枚とからなる組合せ構成体を加熱加圧成形により一体化したことを特徴とするシリコーンゴム貼り積層板。
  4. 硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂の原料が(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と不飽和カルボン酸または酸無水物、(b)トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートからなり、(a)成分と(b)成分の和100重量部を基準にして(a)成分が98〜40重量部、(b)成分が2〜60重量部からなることを特徴とする請求項1〜3記載のシリコーンゴム貼り積層板。
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