JP3925336B2 - 内燃機関の停止・始動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのように、その始動のためには、いわゆるクランキングを必要とする内燃機関を、所定の条件の成立によって自動的に停止また始動する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
排ガスの低減および燃費の向上などの要請に基づいて、車両が一時的に停止してエンジンをアイドリングする場合には、できるだけエンジンを止めることが奨励されている。その場合のエンジンの停止およびその後の再始動は、運転者がメインスイッチあるいはイグニッションスイッチを人為的に操作しておこなうことになり、必ずしも充分には励行されない場合がある。そこで、この種の停止と再始動とを自動的におこなう制御が開発されており、これがいわゆるエコラン制御と称される制御である。
【0003】
その一例が特開平9−79062号公報に記載されている。この公報に記載された装置では、エンジン回転数がアイドル回転数以下、車速が停車状態、シフトポジションがニュートラル、自動変速機コントローラが停止許可信号を出力していることを、自動停止条件とし、この条件が成立したときにエンジンの自動停止制御を実行するように構成されている。また、シフトポジションがニュートラル、エンジン回転数が停止状態、アクセルアイドル状態または始動スイッチが操作されたことを、自動始動条件とし、この条件が成立したときに自動始動制御を実行するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の公報に記載された発明では、エンジンの始動の際にスタータによってエンジンを強制的に回転させるように構成されているので、スタータの歯車をエンジンの歯車に噛み合わせる必要上、エンジンの始動制御のための条件としてエンジンが停止していることを設定してある。言い換えれば、エンジンの停止の判断が成立するまでは、エンジンの始動制御を開始することができない。
【0005】
したがって、いわゆるエコラン制御が実行されていることにより、車両の停止とともにエンジンの自動停止制御が実行され、その直後もしくはこれとほぼ同時にエンジンの再始動要求があった場合、従来の装置では、エンジンの回転が止まるまで、スタータによるエンジンの再始動をおこなうことができないので、エンジンの停止の判断が成立するまで、再始動制御の開始を待たなければならない。そのため、上述した従来の装置では、エンジンの再始動制御に遅れが生じる場合があり、これが運転者に対して違和感を持たせる要因になる場合がある。
【0006】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、内燃機関の自動停止直後の再始動制御の遅れを回避することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、燃料の供給によって運転される内燃機関と、停止している前記内燃機関を強制的に回転させる外部動力装置と、前記内燃機関から駆動輪に至る動力伝達系統に設けられたクラッチ機構とが車両に搭載されており、この車両が停止して前記内燃機関を停止させる停止条件が成立すると、前記内燃機関における燃料の供給を停止する停止制御を実行し、前記内燃機関が停止していることを含む所定の始動条件が成立することにより前記外部動力装置を駆動して前記内燃機関の始動制御を実行する内燃機関の停止・始動制御装置において、前記車両が停止して前記停止条件が成立した場合は、前記クラッチ機構のトルク容量を増大させて、前記内燃機関の回転方向とは反対方向に前記内燃機関に対して作用するトルクを増大させることにより、前記内燃機関の回転数の低下を促進する回転数低下促進手段を備えていることを特徴とする制御装置である。
【0010】
したがって、この請求項1の発明では、車両が停止して内燃機関を停止させる条件が成立すると、内燃機関における燃料の供給が停止され、かつ、回転数低下促進手段によって内燃機関の回転数の低下が促進され、停止に到る時間が短縮される。その回転数の低下促進制御は、内燃機関の回転方向に対して反対方向のトルクを作用させることにより実行され、具体的には、車両が停止していて駆動輪が止まっている場合に、クラッチ機構のトルク容量を増大し、負トルクを内燃機関に作用させることによって実行される。このようにして、内燃機関が停止するまでの時間が短縮される。その結果、内燃機関の停止条件が成立した直後に内燃機関の再始動の条件が成立した場合に、再始動制御を開始できるまでの時間が短縮され、再始動の応答性が向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図に示す具体例に基づいて説明する。この発明で対象とする車両用の内燃機関1は、シリンダ、ピストン、燃焼室などを有する複数の気筒(図示せず)と、燃焼室に燃料を供給する燃料噴射装置1Aと、出力軸としてのクランクシャフト1Bとを有し、ピストンとクランクシャフト1Bとがコンロッドにより連結されている。つまり、内燃機関1は、燃料の燃焼により発生する熱エネルギを、機械エネルギに変換する動力装置であり、そのクランクシャフト1Bの回転数が所定回転数以上になるまでは、自律回転することが困難である。したがって、内燃機関1を始動させる場合には、スタータモータ2などの外部動力装置によって強制的に回転させるようになっている。なお、内燃機関1としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。以下、この実施例では、内燃機関1を、便宜上、エンジン1と記す。
【0022】
また、図3に示すように、このエンジン1のクランクシャフト1Bには、ロックアップクラッチ3を備えたトルクコンバータ4が連結され、そのトルクコンバータ4の出力側に変速機5が連結されている。そのトルクコンバータ4は従来知られている伝動機構であって、流体によってトルクを増幅して伝達機能を有する。さらに、トルクコンバータ4の入力側の部材と出力側の部材とを直接連結するように、ロックアップクラッチ3が配置されている。また、変速機5は、有段式の自動変速機、あるいは無段変速機、もしくは手動変速機、さらには各種の変速モードを設定可能なマルチモード変速機であって、その変速機5から出力されたトルクがデファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7に伝達されるように構成されている。
【0023】
上記のスタータモータ2および燃料噴射装置1Aを含むエンジン1の制御を実行するエンジン用電子制御装置(E−ECU)8と、前記ロックアップクラッチ3を含む変速機5の制御を実行する変速機用電子制御装置(T−ECU)9とが設けられている。これらの電子制御装置8,9は、マイクロコンピュータを主体として構成されたものであって、エンジン用電子制御装置8は、各種のセンサ、例えば、エンジン回転数センサ、車速センサ、ブレーキスイッチ、アクセル開度センサ、イグニッションスイッチ、エコラン用メインスイッチ、クランク角センサ21などのセンサから入力されたデータに基づいて演算をおこない、演算結果に基づいてエンジン1の出力の制御を実行することに加えて、エンジン1の自動停止および自動再始動の制御を実行するように構成されている。また、変速機用電子制御装置9は、変速比の制御に加えて、前記ロックアップクラッチ3の係合・解放の制御およびそのスリップ制御を実行するように構成されている。
【0024】
上記のエンジン1および変速機5を搭載した車両は、いわゆるエコラン制御を実行できるように構成されている。ここで、エコラン制御とは、排ガスの排出量を削減し、同時に燃費を向上させるために、車両が停止している状態でのエンジン1のアイドリング時にエンジン1を自動的に停止させ、また発進の要求が検出された場合に、エンジン1を自動的に再始動する制御である。その制御を実行するための電子制御装置(ECO−ECU)10が設けられている。
【0025】
この電子制御装置10は、上記の各電子制御装置8,9と同様に、マイクロコンピュータを主体として構成されたものであって、入力されたデータに基づいて演算をおこない、エンジン1の停止要求信号や再始動要求信号を前記エンジン用電子制御装置8に出力し、また前記ロックアップクラッチ3の係合要求信号や解放要求信号を前記変速機用電子制御装置9に出力するように構成されている。このエコラン用電子制御装置10に入力されるデータの例を挙げると、エンジン回転数NE 、車速V、ブレーキ信号、アクセル開度信号などがエコラン用電子制御装置10に入力される。
【0026】
さらに、エンジンルーム内には、オルタネータ11およびエアコン用コンプレッサ12が設けられており、クランクシャフト1Bと、オルタネータ11およびエアコン用コンプレッサ12とが、巻き掛け伝動装置13により動力伝達可能に連結されている。エアコン用コンプレッサ12は、エアコン用の冷媒を圧縮して輸送する装置であり、可変容量型のコンプレッサが用いられている。また、前記オルタネータ11とバッテリ14とキャパシタ15とDCDCコンバータ16と電気負荷19とを有する電気回路17が形成されており、オルタネータ11およびDCDCコンバータ16を制御する電子制御装置18が設けられている。ここで、バッテリ11の設定電圧よりもキャパシタ15の設定電圧の方が高い。そして、オルタネータ11の駆動により得られた電力をバッテリ14に蓄電することができるとともに、バッテリ14の電力を、その電圧を昇圧してキャパシタ15に供給することもできる。さらに、バッテリ14の電力またはキャパシタ15の電力を、電気負荷(電力消費装置)19に供給することもできる。
【0027】
電子制御装置18は、上記の各電子制御装置8,9,10と同様に、マイクロコンピュータを主体として構成されたものであって、各電子制御装置8,9,10,18同士の間で、相互にデータの送信・受信がおこなわれる。そして、オルタネータ11で発電をおこなう場合の励磁電流および出力電流が、電子制御装置18により制御され、バッテリ14からキャパシタ15に供給される電力の電流値が、電子制御装置18により制御される。さらにまた、エアコン用コンプレッサ12の容量を制御する電子制御装置20が設けられている。電子制御装置18,20は、上記の各電子制御装置8,9,10と同様に、マイクロコンピュータを主体として構成されたものであって、各電子制御装置8,9,10,18,20同士の間で、相互にデータの送信・受信がおこなわれる。
【0028】
上記のエンジン1を対象としたこの発明に係る制御装置は、エコラン用メインスイッチがオフされている場合は、イグニッションスイッチの信号に基づいて、エンジン1の始動・停止が制御される。イグニッションスイッチは、イグニッションキーの操作位置、具体的にはロック、アクセサリ、オン、スタートの各操作位置を検知するものである。そして、エンジン1の停止状態で、イグニッションスイッチにより、オンについでスタートが検知された場合に、エンジン1が始動される。これに対して、エンジン1の運転状態で、イグニッションスイッチにより、オンからアクセサリに変更されたことが検知された場合は、燃料供給が停止されて、エンジン1が停止する。
【0029】
これに対して、エコラン用メインスイッチがオンされている場合は、イグニッションスイッチの信号以外の条件に基づいて、エンジン1の始動(運転)・停止が制御される。すなわち、イグニッションスイッチによりオンが検知されている状態で、エンジン1の停止・始動(運転)がおこなわれる。このエコラン制御によりエンジン1を停止する場合は、燃料供給が停止されることに加えて、燃料噴射装置1A以外の装置により、エンジン回転数の低下が促進される。
【0030】
このように、いわゆるエコラン制御によって所定の条件が成立することによりエンジン1を自動停止する場合に、エンジン回転数NE の低下を促進する制御を実行するように構成されている。以下、エコラン制御の起動状態で、エンジン1を停止する場合に、エンジン回転数NE の低下を促進する制御例を順次説明する。
【0031】
(第1の制御例)
図1のフローチャートを説明する。図1において、先ず、エコラン制御中か否かが判断される(ステップS1)。これは、例えば、エコラン制御のオン・オフを切り換えるエコラン用メインスイッチ(図示せず)が設けられている場合には、そのエコラン用メインスイッチがオンされているか否かに基づいて判断することができる。
【0032】
このステップS1で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくリターンする。これとは反対に肯定的に判断された場合には、エンジン1の停止条件が成立しているか否かが判断される(ステップS2)。この停止条件は、例えば、車両が停止していること(車速Vがゼロであること)、アクセルオフであること(アクセル開度がゼロであること)、ブレーキ・オンであること(制動操作されていること)などである。
【0033】
この停止条件が成立していないことによりステップS2で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくリターンする。これに対して停止条件が成立していることによりステップS2で肯定的に判断された場合には、エンジン1の停止制御が実行される(ステップS3)。この制御は、通常のエコラン制御での自動停止と同様の制御であり、具体的には、燃料の供給を停止する制御(フューエルカット制御)がその一例である。
【0034】
また、ロックアップクラッチ(L/U)3の係合制御が実行される(ステップS4)。この係合制御は、要は、ロックアップクラッチ3のトルク容量を増大する制御であり、ロックアップクラッチ3を完全係合させる制御以外に、ロックアップクラッチ3のスリップ回転数を低下させるように係合油圧を高くする制御であってもよい。
【0035】
ロックアップクラッチ3を係合させれば、エンジン1に連結されている入力側の部材と駆動輪7に連結されている出力側の部材とが機械的に連結されることになるが、この制御が実行される時点では車両が停止していて駆動輪7の回転が止まっているので、エンジン1に対してはその回転方向とは反対方向のトルク(負トルク)が作用し、その回転数が引き下げられる。すなわちエンジン回転数の低下が促進される。
【0036】
したがって、ステップS4の制御に続いて、エンジン1が停止したか否か(NE =0か否か)が判断される(ステップS5)。このステップS5で否定的に判断された場合には、ステップS3に戻ってロックアップクラッチ4の係合制御が継続される。これとは反対にステップS5で肯定的に判断された場合には、ロックアップクラッチ3を解放する制御が実行される(ステップS6)。エンジン1の再始動に備えるためである。
【0037】
したがって、図1に示す制御によれば、車両が停止し、かつ制動操作されているなどのエンジン1の自動停止の条件が成立した場合には、エンジン1の停止制御と併せてエンジン回転数NE を強制的に低下させる制御が実行される。そのため、エンジン1の回転が止まるまでの時間が短縮される。言い換えれば、スタータモータ2を駆動させる条件の成立までの時間が短縮される。したがって、エンジン1の自動停止の制御が開始された直後に、エンジン1の再始動の条件が成立するなどの場合に、エンジン1の再始動制御を開始するまでの時間が短くなり、このような場合の再始動の応答性が良好になる。
【0038】
図2は、上記の図1に示す制御をおこなった場合のタイムチャートであって、制動操作されてブレーキ信号がオンとなっており、それに伴って車速Vが次第に低下している過程で、車速Vが予め定めた基準車速V1 になると、ロックアップクラッチ3を解放するロックアップ・オフ信号(L/U OFF信号)が出力される(t1 時点)。車速Vが更に低下し、ついに停車すると(t2 時点)、エコラン制御におけるエンジン1の停止条件が成立し、エンジン1の停止要求信号がオンとなる(t3 時点)。それに伴って、燃料の供給停止信号(フューエルカット信号:F/C信号)がオンとなる(t4 時点)。
【0039】
このようなエンジン1の停止制御と同時に、あるいはその直後にロックアップクラッチ3のオン信号(L/U ON信号)が出力され、ロックアップクラッチ3が係合方向に制御される(t5 時点)。その結果、エンジン回転数NE が急激に低下し、ついにはエンジン1の回転が止まる(t6 時点)。これと同時にロックアップクラッチ3の解放信号(L/U OFF信号)が出力される。
【0040】
上記のようにエンジン1を停止させた直後、もしくはエンジン1の停止とほぼ同時にブレーキ・オフとなってエンジン1の再始動条件が成立すると(t7 時点)、それに伴ってフューエルカット信号がオフとなる(t8 時点)。すなわちエンジン1の回転状態に応じて燃料を供給することが可能な状態になる。
【0041】
また、その直後にスタータモータ2のオン信号が出力され(t9 時点)、スタータモータ2が駆動されてエンジン1が強制的に回転させられる。その結果、エンジン回転数NE が増大し(t10時点)、自立回転するようになる。その状態でスタータモータ2のオフ信号が出力される(t11時点)。
【0042】
これに対してロックアップクラッチ3を係合させない従来例では、すなわちエンジン回転数NE の低下を促進する制御を実行しない場合には、図2に破線で示すように、エンジン回転数NE の低下が緩慢となり、エンジン1の停止時期すなわちスタータモータ2を駆動する条件が成立する時点が、t12時点にまで遅延する。したがって、スタータモータ2のオン信号がt13時点に出力され、その直後のt15時点にエンジン回転数NE が増大し始める。
【0043】
このように、エンジン1の停止条件の成立に伴ってロックアップクラッチ3を係合させることにより、エンジン回転数NE の立ち上がり時期を、図2に符号T1 で示す時間、早めることができ、その分、エンジン1の再始動の応答性を良好にすることができる。
【0044】
すなわち、イグニッションキーの操作によりエンジン1が停止された場合は、その直後に、イグニッションキーが再度操作されてエンジン1を始動する事態が発生する可能性は低い。また、このような事態が発生した場合でも、ドライバーが自らイグニッションキーを操作しているのであるから、エンジン1を停止してから、再度始動するまでに所定時間以上が経過したとしても、違和感はない。これに対して、エコラン制御によるエンジンの自動停止・始動制御は、道路状況によるもの、例えば、道路が渋滞している場合などにおこなわれる。このため、渋滞が解消されて車両が発進できることになった時点で、エンジン1が迅速に始動されることが望ましい。そして、この実施例によれば、このような状況において、停止したエンジン1を再始動するまでに要する時間を可及的に短くすることができ、ドライバビリティを向上させることができるのである。
【0045】
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS4の機能的手段が、この発明における回転数低下促進手段に相当する。
【0046】
(第2の制御例)
つぎに、エコラン制御の起動状態で、エンジン1を停止する場合に、エンジン回転数の低下を促進するための他の制御例を説明する。図3に示す構成においては、エンジン1の動力によりオルタネータ11が駆動されて発電し、その電力がバッテリ14に供給される。このため、オルタネータ11の発電状態、および電気負荷19の消費電力を制御すれば、オルタネータ11により発生する回生制動力、すなわち、エンジン回転数の低下を促進するトルク(負荷トルク)が変化する。また、エンジン1の動力によりエアコン用コンプレッサ12が駆動されており、冷媒が輸送される。このため、エアコン用コンプレッサ12の容量を制御する要求を発生させれば、エンジン回転数の低下を促進する負荷トルクが変化する。
【0047】
以下、エンジン回転数を低下させる制御と、オルタネータ11の制御またはエアコン用コンプレッサ12の制御または電気負荷19の制御とを協調させる制御例を、図4のフローチャートに基づいて説明する。まず、エンジン1を停止させる要求(アイドルストップ要求)が発生する(ステップS11)。このステップS11は、図1のステップS2で肯定的に判断されたことを意味する。
【0048】
このステップS11についで、エンジン回転数を低下させるトルク(負荷トルク)を増加する指示を出力するとともに(ステップS12)、燃料噴射装置1Aによるフューエルカット制御を実行する(ステップS13)。さらに、エンジン1の回転数を低下させる負荷トルクが増加して(ステップS14)、エンジン回転数の低下が促進され、かつ、エンジン1が停止して(ステップS15)、この制御ルーチンを終了する。
【0049】
図4のステップS12では、具体的にはオルタネータ11の励磁電流の指示値を100パーセントとする処理をおこない、ステップS14ではオルタネータ11の出力電流を上昇させる処理をおこなうことができる。このような処理をおこなう場合のタイムチャートの一例を、図5に基づいて説明する。まず、エンジン1の停止要求が発生する時刻t1以前においては、フューエルカット信号がオフされ、オルタネータの励磁電流が0パーセントよりも高く、かつ、100パーセントよりも低い値に制御され、オルタネータの出力電流が零アンペアよりも高い値に制御され、エンジン回転数が所定の回転数となっている。前記オルタネータの出力電流に応じて、エンジン回転数を低下させる負荷トルク(ニュートン・メートル)が決定される。
【0050】
時刻t1でエンジンの停止要求が発生すると、フューエルカット信号がオンされ、かつ、オルタネータの励磁電流の指示値が実線で示すように100パーセントに変更され、オルタネータの出力電流およびエンジン回転数を低下させる負荷トルクが実線のように上昇し、エンジン回転数が実線のように低下する。その後、エンジン回転数の低下により、オルタネータの出力電流および負荷トルクが低下し始める。そして、時刻t2において、エンジン回転数が零となり、かつ、オルタネータの励磁電流が零パーセントとなり、かつ、オルタネータの出力電流および負荷トルクが零となる。
【0051】
ついで、時刻t4でエンジンの始動要求が発生すると、フューエルカット信号がオフされるとともに、スタータモータによりエンジンがクランキングされて、エンジン回転数が上昇する。その後、オルタネータの励磁電流が高められるとともに、時刻t5以降は、でエンジン回転数が所定のアイドリング回転数に制御される。
【0052】
これに対して、エンジンの停止要求が発生した場合に、オルタネータの励磁電流を高める制御を実行しない比較例を、図5の破線に示す。この比較例では、時刻t1以降においても、オルタネータの励磁電流が、時刻t1以前と略同じに制御される。このため、時刻t1以降においても、オルタネータの出力電流および負荷トルクも、時刻t1以前と略同じとなる。
【0053】
そして、オルタネータの励磁電流が、時刻t2以後に低下されて、オルタネータの出力電流および負荷トルクも、時刻t2以後に低下する。このため、エンジン回転数は、時刻t2を過ぎるまで徐々に低下する。そして、時刻t3でエンジン回転数が零となる。このように、実施例と比較例とを比べると、エンジン停止要求が発生してから停止するまでの時間は、時刻t2と時刻t3との間に相当する所定時間T1分、実施例の方が短くなる。なお、前記ステップS12、ステップS14において、エアコン用コンプレッサの容量を最大にする制御を実行した場合でも、負荷トルクが増加するため、前述と同様の効果を得られる。
【0054】
(第3の制御例)
つぎに、エコラン制御の起動状態で、エンジン1を停止する場合に、エンジン回転数の低下を促進する他の制御例を、図6のフローチャートに基づいて説明する。この図6においても、図4のフローチャートとほぼ同じ処理がおこなわれる。図6においては、ステップS12において、オルタネータ11の励磁電流指示を100パーセントにし、かつ、バッテリ14からキャパシタ15に供給する電力量を増加する処理がおこなわれる。この図6のフローチャートに対応するタイムチャートの一例を、図7に基づいて説明する。なお、図7において、図6のフローチャートに相当する経時変化は実線で示されている。
【0055】
まず、エンジン1の停止要求が発生する時刻t1以前においては、フューエルカット信号、オルタネータの励磁電流、オルタネータの出力電流、エンジン回転数が、図5の場合と同様に制御されている。また、バッテリからキャパシタに電流を流すフラグはオフされている。そして、時刻t1において、エンジン停止要求が発生すると、フューエルカット信号がオンされ、かつ、オルタネータの励磁電流の指示値が100パーセントになり、バッテリからキャパシタに電流を流すフラグがオンされる。すると、キャパシタに供給される電力の電流が増加する。つまり、オルタネータで発電された電力を受け入れるバッテリの空き容量が増加し、オルタネータの出力電流を可及的に高めることができる。
【0056】
このようにして、エンジン回転数の低下を促進する負荷トルクが増加して、かつ、エンジン回転数が低下する。そして、エンジン回転数の低下にともない、オルタネータの出力電流および負荷トルクも低下する。その後、時刻t2でエンジン回転数が零となり、かつ、オルタネータの励磁指示が零パーセントとなり、かつ、バッテリからキャパシタに電流を流すフラグがオフされる。ついで、オルタネータの出力電流および負荷トルクが低下して零となり、かつ、キャパシタに供給される電力の電流が低下して零となる。その後、時刻t4でエンジン始動要求が発生するとフューエルカット信号がオフされ、かつ、スタータモータが駆動されてエンジン回転数が上昇するとともに、燃料の噴射および燃焼がおこなわれて、時刻t5以降は所定のエンジン回転数に制御される。
【0057】
一方、上記の図7に破線で示されているものは、第2の制御例に対応する。すなわち、時刻t1以降はエンジン回転数が低下する。また、オルタネータの出力電流および負荷トルクが一旦増加し、時刻t2以前に、オルタネータの出力電流および負荷トルクが低下する。そして、時刻t3でエンジン回転数が零となり、かつ、オルタネータの励磁指示が零パーセントとなっている。さらに、キャパシタに供給される電流は、第2の制御例では増加されない。
【0058】
そして、時刻t1から時刻t2の間では、オルタネータの出力電流および負荷トルクは、第3の制御例の方が第2の制御例よりも高い。また、エンジン回転数が零となるタイミングは、第3の制御例の方が第2の制御例よりも所定時間T1早い。なお、図5および図7において、時刻および時間には対応関係はない。
【0059】
ところで、図6のフローチャートを実行する場合に、ステップS12とステップS13とは、ほぼ同時におこなうこともできるが、ステップS13の処理を開始する前に、ステップS12の処理を開始することもできる。このような制御を実行する場合のタイムチャートの一例を、図8に基づいて説明する。
【0060】
この図8のタイムチャートにおいて、時刻t1以前では、フューエルカット信号、オルタネータに対する励磁指示、オルタネータの出力電流および負荷トルク、エンジン回転数などは、図5のタイムチャートと同じである。また、図8のタイムチャートにおいて、時刻t1以前では、キャパシタ15に対する電力の供給状態は零パーセントを越え、かつ、100パーセント未満に設定されており、キャパシタに対する充電電流も、所定値となっている。
【0061】
ついで、時刻t1でエンジンの停止要求が発生すると、オルタネータの励磁指示が100パーセントになり、オルタネータの出力電流および負荷トルクが上昇する。また、キャパシタに対する充電量が100パーセントに制御され、キャパシタに供給される電力の電流が増加する。この時点では、フューエルカット信号はオフされたままである。このため、フューエルカット信号がオンされる前に、オルタネータの出力電流および負荷トルクが最大となる。なお、エンジンの停止要求が発生すると、エンジンの吸気バルブを閉じる制御が開始される。
【0062】
そして、時刻t2でエンジンの吸気バルブが閉じる制御が完了すると、フューエルカット信号がオンされるとともに、オルタネータの出力電流および負荷トルクが低下し、かつ、キャパシタに対する充電電流も低下する。つまり、時刻t1と時刻t2との間で、オルタネータの出力電流および負荷トルクが最大に維持される。
【0063】
さらに、時刻t3になるとエンジン回転数が零となり、かつ、オルタネータ励磁指示が零パーセントに制御され、かつ、オルタネータ出力電流が零アンペアとなり、かつ、キャパシタに対する充電指示が零パーセントに制御される。その後、時刻t5でエンジンの始動要求が発生すると、スタータモータが駆動されてエンジン回転数が上昇するとともに、フューエルカット信号がオフされて、エンジン回転数が所定の回転数に制御される。
【0064】
このように、図6のフローチャートにおいて、ステップS13の処理よりもステップS12の処理を先におこなうことにより、オルタネータの励磁指示時刻に対して、実際の出力電流が最大となる時刻に遅れが生じた場合でも、オルタネータの出力電流が最大に制御される時間を、可及的に長く保持することができる。したがって、エンジン回転数の低下を促進する機能が一層向上する。
【0065】
この図8においては、比較例が破線で示されている。すなわち、時刻t1以降におけるオルタネータ励磁指示は、時刻t1以前と同じに制御されている。時刻t1以後におけるオルタネータ出力電流および負荷トルクは、時刻t1以前と同じに制御されている。また、時刻t1以降におけるャパシタの充電電流は、時刻t1以前におけるキャパシタの充電電流と同じとなっている。そして、時刻t2でフューエルカット信号がオンされると、エンジン回転数が低下し始め、かつ、オルタネータの出力電流および負荷トルクが低下し始める。また、オルタネータの励磁指示が零パーセントに制御され、かつ、キャパシタに対する充電指示が零パーセントになっている。そして、時刻t4でエンジン回転数が零となっている。そして、エンジン回転数が零となるタイミングは、実施例の方が比較例よりも時間T1早い。なお、図5および図7において、時刻および時間には対応関係はない。
【0066】
このように、第3の制御例によれば、エンジン1の回転による運動エネルギを、オルタネータ11により電気エネルギに変換することができ、エネルギの有効利用を図ることができる。ここで、図4および図6に示された機能的手段を説明すれば、ステップS11ないしステップS15がこの発明の回転数低下促進手段に相当する。
【0067】
(第4の制御例)
この制御例は、図6のステップS14以降の処理の一部を変更する制御例である。この第4の制御例では、エンジン1が、4気筒のディーゼルエンジンであり、燃料噴射形式が独立噴射形式である場合を例として説明する。まず、停止しているエンジン1を始動させる場合の制御・作用を説明する。以下の説明では、便宜上、1つの気筒の動作について説明する。このクランクシャフト1Bのクランキングにより、ピストンが上死点から下死点に向けて下降するとともに、吸気ポートが開放されて燃焼室内に空気が供給される。この工程が吸気行程である。
【0068】
その後、クランクシャフト1Bの回転により、前記ピストンが下死点から上死点に向けて上昇する。この場合は、吸気ポートおよび排気ポートが共に閉じられており、シリンダ内の空気が圧縮され、シリンダ内が高温・高圧になる。この工程が圧縮行程である。例えば、圧縮行程の終了時に、インジェクタにより燃焼室内に燃料が噴射されると、燃料が自己着火により燃焼・爆発し、その発熱エネルギーによりピストンが下方に押し下げられる。この工程が爆発(燃焼)工程である。
【0069】
このようにして、ピストンが下方に押し下げられると、その力がコネクティングロッドを介してクランクシャフト1Bに伝達され、クランクシャフト1Bが回転する。このようにして、ピストンが下死点付近まで押し下げられると、排気ポートが開放されて、ピストンの上昇にともないシリンダ内のガスを、排気ポートを介して外部に排気する。この工程が排気行程である。このようにして、ピストンが上死点に到達し、前記吸気行程に移行する。なお、いずれか2つのピストンが上死点から下死点に向けて動作する際には、他の2つのピストンが下死点から上死点に向けて動作する。
【0070】
上記の説明は、一つのピストンの動作に関するものであるが、第1の気筒♯1のピストンと第4の気筒♯4のピストンとが、シリンダの軸線方向において同一の位置に位置し、第2の気筒♯2のピストンと第3の気筒♯3のピストンとが、シリンダの軸線方向において同一の位置に位置する。なお、シリンダの軸線方向において、第1の気筒♯1のピストンおよび第4の気筒♯4のピストンと、第2の気筒♯2のピストンおよび第3の気筒♯3のピストンとは、異なる位置に位置しており、その位置の差をクランクシャフト1Bの回転角度で示せば180度である。また、同一の位置に位置する2つのピストンに対応する気筒であっても、その行程は異なる。
【0071】
例えば、第1の気筒♯1が吸気行程にあれば、第2の気筒♯2が圧縮行程にあり、第3の気筒♯3が排気行程にあり、第4の気筒♯4が燃焼行程にある。また、第1の気筒♯1が圧縮行程にあれば、第2の気筒♯2が燃焼行程にあり、第3の気筒♯3が吸気行程にあり、第4の気筒♯4が排気行程にある。さらに、第1の気筒♯1が燃焼行程にあれば、第2の気筒♯2が排気行程にあり、第3の気筒♯3が圧縮行程にあり、第4の気筒♯4が吸気行程にある。さらにまた、第1の気筒♯1が排気行程にあれば、第2の気筒♯2が吸気行程にあり、第3の気筒♯3が燃焼行程にあり、第4の気筒♯4が圧縮行程にある。そして、シリンダの軸線方向における各ピストンの位置、言い換えれば、各気筒がどの行程にあるかという判別、いわゆる気筒判別は、クランク角センサ21の信号に基づいておこなうことができる。クランクシャフト1Bの外周にはギヤ(図示せず)が形成されており、そのギヤの欠け歯部がクランク角センサ21により検知される。
【0072】
つぎに、図9のフローチャートおよび図10のタイムチャートに基づいて制御例を具体的に説明する。まず、図6のステップS14についで、エンジン回転数が所定回転数Aまで低下すると、オルタネータ11の励磁のデューティ制御を開始するとともに、その時点で第3の気筒♯が圧縮行程にあることに基づき、第4の気筒で圧縮行程が終了した時点で、エンジン回転数が零となるように、第4の気筒♯4の位置の目標値Atar を算出する(ステップS14A)。すなわち、クランクシャフト1Bの回転方向における目標停止位相を算出する。この目標停止位相は、クランクシャフト1Bの回転方向において、クランク角センサ21と前記欠け歯部とが、所定の円周長未満の範囲内に位置するように決定される。なお、オルタネータの励磁をデューティ制御する所定回転数Aは、予めエンジン用電子制御装置8などに記憶されている。
【0073】
そして、現在圧縮行程にある第3の気筒♯3の位置と、ステップS14Aで算出した目標値とに基づいて、PIDブロック図に基づいてオルタネータの励磁電流を算出し、オルタネータ11の励磁電流を制御する(ステップS14B)。このオルタネータ11の励磁電流の制御模式図を、図11に示す。また、このステップS14Bでは、エンジン1が停止し、かつ、次回のエンジン1の始動時に第2の気筒♯2で圧縮行程が開始されること、および、第3の気筒♯3が圧縮行程となった時に燃料噴射・着火がおこなわれることを記憶する。上記のステップS14Bの後、エンジン1が停止する(ステップS15)。
【0074】
このステップS15の後、エンジン1の始動要求が発生すると(ステップS16)、エンジン1を始動させる制御を実行し(ステップS17)、この制御ルーチンを終了する。このステップS17においては、スタータモータ2が駆動されてエンジン1がクランキングされるとともに、燃料噴射・着火がおこなわれてエンジン1の回転数が上昇する。
【0075】
この図9のフローチャートに対応するタイムチャートの一例を、図12に実線で示す。まず、エンジンにオルタネータ停止要求が発生する時刻t1以前においては、エンジン回転数が所定回転数以上に制御されているとともに、フューエルカット信号がオフされ、オルタネータの励磁指示が所定値に制御され、オルタネータの出力電流および負荷トルクが所定値に制御されている。
【0076】
時刻t1でエンジンの停止要求が発生すると、オルタネータの励磁指示が100パーセントに高められて、オルタネータの出力電流および負荷トルクが上昇する。なお、この時点ではフューエルカット信号はオフされたままである。
【0077】
その後、時刻t2でフューエルカット信号がオンされると、エンジン回転数およびオルタネータの出力電流および負荷トルクが低下し始める。そして、時刻t3から、オルタネータの励磁のデューティ制御が開始されて、時刻t4でエンジン回転数が零となり、かつ、オルタネータの出力電流および負荷トルクが零となっている。ついで、時刻t6でエンジンの始動要求が発生すると、フューエルカット信号がオフされ、かつ、スタータモータが駆動されてエンジン回転数が上昇し、かつ、燃料の着火が開始される。そして、時刻t7以降はエンジン回転数が所定の回転数に制御されている。
【0078】
つぎに、比較例の制御を図12に破線で示す。この比較例においては、時刻t1以降のオルタネータの励磁指示は、時刻t1前のオルタネータの励磁指示と同じに制御されている。したがって、時刻t1以降のオルタネータの出力電流および負荷トルクも、時刻t1前のオルタネータの出力電流および負荷トルクと同じとなる。そして、時刻t3からオルタネータの励磁指示が低下し、かつ、時刻t4からオルタネータの出力電流および負荷トルクが低下している。さらに、時刻t5でエンジン回転数が零となり、かつ、オルタネータの励磁指示が零パーセントとなり、かつ、オルタネータの出力電流および負荷トルクが零となっている。
【0079】
その後、時刻t6でエンジン始動要求が発生すると、スタータモータが駆動されてエンジン回転数が上昇し、時刻t7以降で着火がおこなわれ、かつ、時刻t8以降にエンジン回転数が所定回転数に制御されている。
【0080】
このように、図9のフローチャートでは、エンジン1を停止する時に、クランク角センサ21と欠け歯部とが接近した状態で、クランクシャフト1Bを停止させる。このため、ステップS17において、クランキングを開始してから気筒判別を完了するまでの時間を、短縮することができる。したがって、エンジン1の始動要求が発生してから、エンジン回転数が所定回転数に到達するまでの時間は、実施例の所定時間TT2の方を、比較例の所定時間TT1よりも短くすることができ、エンジン1の始動性が向上する。なお、図12のタイムチャートにおいても、エンジン回転数が零となるタイミングは、実施例の方が比較例よりも所定時間T1だけ早いことは、他の制御例と同じである。
【0081】
なお、図9のフローチャートでは、第3の気筒♯3が圧縮行程にあるときにオルタネータの励磁のデューティ制御が開始され、エンジン1の始動時における圧縮行程が第2の気筒♯2でおこなわれ、第3の気筒♯3で燃料噴射・着火がおこなわれる場合を説明しているが、各行程と各気筒との対応関係は、クランクシャフト1Bの回転方向における欠け歯の位置と、クランク角センサ21の位置との関係により異なる。
【0083】
また、各制御例によれば、エンジン回転数の低下を促進するために、専用の装置を設け必要はない。したがって、部品点数の増加を抑制でき、装置の大型化・大重量化および製造コストの上昇を抑制できる。また、第2の制御例ないし第4の制御例では、エンジン1の回転による運動エネルギを、オルタネータ11により電気エネルギに変換することができ、エネルギの有効利用を図ることができる。さらに、ステップS13の処理よりも前に、ステップS12の処理を実行すれば、オルタネータ11による発電量を可及的に増加することができる。したがって、エネルギの回収効率が一層向上する。
【0084】
また、各制御例によれば、停止制御によりエンジン1を停止させる燃料噴射装置1Aと、回転数低下促進手段の機能を達成するために動作するロックアップクラッチ3、発進クラッチ、オルタネータ11、エアコン用コンプレッサ12、キャパシタ15、バッテリ14、DCDCコンバータ16、電気負荷19、電気回路17とは、エンジン1に対する回転数の制御原理が異なるため、より確実にエンジン1の回転数を制御できる。
【0085】
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、この発明におけるクラッチ機構は、上述したロックアップクラッチ3以外に、摩擦式のいわゆる発進クラッチであってもよい。すなわち、エンジンから駆動輪に至る動力伝達系統に介装されたクラッチであって、走行の際に係合させられ、また停車時に解放状態もしくはスリップ状態に制御されるクラッチ機構であってもよい。また、そのクラッチ機構を、エンジンの停止条件の成立に伴って係合させ、その後に解放する場合、所定の時間の経過によって解放制御するように構成してもよい。
【0086】
さらに、この発明では、エンジンに対してその回転方向とは反対方向のトルクを作用させてその回転数を低下させればよいので、何らかの負荷トルクを発生する部材をエンジンに連結してその回転数を低下させるように構成してもよい。そして、この発明における外部動力装置は、モータ・ジェネレータなどの前記スタータモータ以外の機構であってもよい。
【0087】
さらに、第2の制御例ないし第4の制御例においては、オルタネータの回生制動により負荷トルクを増加しているが、負荷トルクを増加するための発電機の電気的制動としては、発電制動、逆相制動、渦電流制動などが挙げられる。さらに、エンジンの停止条件が成立した場合に、第1の制御例と、第2の制御例ないし第4の制御例の少なくとも一つとを並行して実行することにより、エンジン回転数の低下を促進することもできる。
【0088】
ここで、図3に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、エンジン1がこの発明の内燃機関に相当し、スタータモータ2、モータ・ジェネレータ(図示せず)が、この発明の外部動力装置に相当し、ロックアップクラッチ3および発進クラッチが、この発明のクラッチ機構に相当する。
【0089】
各実施例に開示された特徴的な構成を記載すれば以下のとおりである。すなわち、外部動力装置によって強制的に回転させて自立回転させる内燃機関を搭載した車両について、イグニッションスイッチがオンされている状態で、イグニッションスイッチの信号とは異なる停止条件が成立した場合は、第1の回転数制御装置の機能により前記内燃機関を停止させる制御を実行し、前記内燃機関が停止していることを含む所定の始動条件が成立した場合は、前記外部動力装置を駆動して前記内燃機関の始動制御を実行する内燃機関の停止・始動制御装置において、前記停止条件が成立した場合に、第1の回転数制御装置とは回転数の制御原理が異なる第2の回転数制御装置により、前記内燃機関の回転数の低下を促進する回転数低下促進手段を備えていることを特徴とする内燃機関の停止・始動制御装置である。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、車両が停止して内燃機関の自動停止条件が成立すると、内燃機関における燃料の供給が停止され、かつ、クラッチ機構のトルク容量を増大することにより、内燃機関に対して回転方向のトルクとは反対方向のトルクを作用させて、その内燃機関の回転数の低下を促進し、内燃機関の停止までの時間を短縮できるので、内燃機関の再始動のための条件として内燃機関の停止を含んでいても、内燃機関の停止条件が成立した直後に内燃機関の再始動の条件が成立した場合、内燃機関の再始動の条件の成立から内燃機関が回転し始めるまでの時間を短縮でき、その再始動の応答性を向上させ、運転者の違和感を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 図1に示す制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図3】 この発明で対象とする内燃機関を搭載した車両の駆動系統を模式的に示すブロック図である。
【図4】 図3に示す車両の他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図5】 図4に示す制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図6】 図3に示す車両の他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図7】 図6に示す制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図8】 図6に示す制御を実行した場合のタイムチャートの他の例を示す図である。
【図9】 図6に示す制御の一部を変更した例を示すフローチャートである。
【図10】 図9に示すフローチャートに対応するタイムチャートの一例を示す図である。
【図11】 図9に示すフローチャートで実行する処理の概念図である。
【図12】 図9に示すフローチャートに対応するタイムチャートの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 1A…燃料噴射装置、 1B…クランクシャフト、 2…スタータモータ、 3…ロックアップクラッチ、 7…駆動輪、 8…エンジン用電子制御装置、 9…変速機用電子制御装置、 10…エコラン用電子制御装置、 11…オルタネータ、 12…エアコン用コンプレッサ、 14…バッテリ、 15…キャパシタ、 16…DCDCコンバータ、 17…電気回路、 19…電気負荷。
Claims (1)
- 燃料の供給によって運転される内燃機関と、
停止している前記内燃機関を強制的に回転させる外部動力装置と、
前記内燃機関から駆動輪に至る動力伝達系統に設けられたクラッチ機構と
が車両に搭載されており、この車両が停止して前記内燃機関を停止させる停止条件が成立すると、前記内燃機関における燃料の供給を停止する停止制御を実行し、前記内燃機関が停止していることを含む所定の始動条件が成立することにより前記外部動力装置を駆動して前記内燃機関の始動制御を実行する内燃機関の停止・始動制御装置において、
前記車両が停止して前記停止条件が成立した場合は、前記クラッチ機構のトルク容量を増大させて、前記内燃機関の回転方向とは反対方向に前記内燃機関に対して作用するトルクを増大させることにより、前記内燃機関の回転数の低下を促進する回転数低下促進手段を備えていることを特徴とする内燃機関の停止・始動制御装置。
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