JP3925195B2 - 椅子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、背と座の少なくとも一方がシェルを具備する椅子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、椅子の背及び座の構造として、外側に剛性を確保するためにシェルを配置し、シェルの内側にクッションを設けて、クッションをカバーで被覆する構造が用いられている。そして、シェルの剛性を確保しつつ、成形の容易化や材料の節約等を図るべく、シェルの一表面に縦方向、横方向、斜め方向等、一方向に直線状に延びるリブを設けているものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、リブを一方向にだけ直線的に延ばしたものとすると、リブが延びる方向に沿って折り目をつけるようにシェルを折り曲げる力に対しては、リブによる剛性確保の効果が得られない。この不具合を単純に解消するために、縦方向に延びるリブと横方向に延びるリブとをそれそれ交差させて設ける技術や、さらに斜め方向にもリブを設ける技術が知られている。ところが、このように構成すると、リブの交点部分に応力が集中してシェルが破損してしまう可能性がある。
【0004】
本発明は以上に述べた問題を解決するために、滑らかな湾曲形状をなす凹部を複数設け、これら凹部間にリブが形成させるようにしたことを特徴とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明に係る椅子は、背と座の少なくとも一方がシェルを具備したものであって、前記シェルの内面側の一表面に、輪郭形状が円形又は楕円形であるとともに厚さ寸法が他の部位より小さい複数の凹部を設け、前記凹部間に凹部よりも厚さ寸法が大きいリブが形成されるようにしているとともに、前記凹部を前記シェルの前記一表面側の略全面にわたって敷き詰めるように配置し、さらに前記リブの厚みが連続的に変化しつつ前記リブがシェルの全域に亘って滑らかに接続していること、及び前記凹部の全部又は略全部を規則的に配置したことを特徴とする。
【0006】
このようなものであれば、リブの輪郭形状が滑らかに湾曲する形状となるので、リブをあらゆる方向に延ばしたのと同様の効果が得られるとともに応力集中が起こりにくいようにでき、シェルに均一な剛性を与えるとともに耐久性の向上を図るようにすることができる。
【0007】
さらに、前記凹部を前記シェルの前記一表面側の略全面にわたって敷き詰めるように配置しているので、シェル全体にリブが形成されるようにし、シェルの全体にわたって均一な剛性を確保することができる
【0008】
加えて、前記凹部の全部又は略全部を規則的に配置しているので、リブをむらなく配置するようにでき、シェルの全体にわたって均一な剛性を確保することができる。従って、シェルに均一な剛性を与える効果をより大きなものにすることができる。ここで、規則的に配置するとは、例えば同一形状の凹部を縦横マトリクス状に配置したものや、正三角形を敷き詰めたパターンの三角形の頂点にあたる部分に同一形状の凹部の重心をそれぞれ配置したもの等、等間隔に配置することを含む概念である。
【0009】
前記シェルが、インナーシェルと、背の背面又は座の底面を形成するアウターシェルとを具備し、いずれか一方に前記凹部及び前記リブを形成すれば、座又は背もたれに掛かる荷重を均等に支持する構造部材としての役割とクッション取付部材としての役割又は椅子の外観を整える役割をそれぞれ分担させて、シェルの構造を簡単なものにすることができる。
【0010】
また、前記凹部の輪郭形状が円形をなすものであれば、リブの輪郭の曲率が変化する部分がなく、従って力の掛かる方向によらずリブの各端面に掛かる力を一定にできるので、シェルに均一な剛性を与える効果をより大きなものにできる。
【0011】
背と座の少なくとも一方にさらにクッションを具備したものであって、前記シェルの前記一表面側に前記クッションを密着させて配置したものであれば、接着材等を用いることなくクッションとシェルとが互いにずれないように固定できるようになる。
【0012】
このような椅子の具体的な態様の一例として、前記クッションに凸部を設け、この凸部と前記シェルに設けた凹部とが略隙間なく嵌りあうように構成したものを挙げることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る椅子Cは、図1、図2にその正面図及び側面図をそれぞれ示すように、キャスタ110月の脚羽根11及び脚支柱12からなる脚1と、この脚1の上部に取り付けた支持部材4と、この支持部材4に支持させた座2と、前記支持部材4に固定した座2の後方から起立する背3とを具備するものである。なお、本実施形態では、前記支持部材4は、座の上部に固定した支持部41と、この支持部41の後端部から後方かつ上方に湾曲しつつ延びる形状をなし、前記支持部41に回転可能に取り付けられたバックフレーム42と、このバックフレーム42にさらに回転可能に吊り下げて取り付けた揺動部43とからなる。この支持部材4の下部は、カバー44で覆ってある。そして、シンクロチルト可能になるように、座2の前端部を前記支持部41に、後端部を前記揺動部43にそれぞれ回転可能に支持させるとともに、前記揺動部43に背3を固定してある。ここで、シンクロチルト可能であるとは、着座者が背3を後ろに倒す(後傾させる)と、座2がその後部を沈み込ませる(後傾する)ように傾動することができることをいう。
【0015】
座2は、図3に示すように、合成樹脂製の座アウターシェル21と、この座アウターシェル21の上方に固定した座インナーシェル22と、この座インナーシェル22の上面に取り付けた座クッション23と、この座クッション23を上方から覆うとともに着座者の臀部及び大腿部を支持する座面を形成する座カバー24とからなるものである。そして、前述したようにその前端部を前記支持部41に、後端部を前記揺動部43にそれぞれ回転可能に支持させてある。
【0016】
背3は、図3に示すように、合成樹脂製の背インナーシェル31と、この背インナーシェル31の後方に固定した座アウターシェル32と、前記背インナーシェル31の前面に取り付けた背クッション33と、この背クッション33を前方から覆うとともに着座者の背を支持する背もたれ面を形成する背カバー34とからなるものである。そして、前述したように前記揺動部43に固定してある。なお、背アウターシェル32の下半部には、前記支持部材4の上部を収納して、これを覆うように溝3cが設けてある。
【0017】
しかして、前記座アウターシェル21の一表面たる上面すなわち内面には、図3及び図4に示すように、輪郭形状が滑らかに連続した曲線であるリブ2aが形成されるように平面視円形の凹部2b1を複数設けている。この円形の凹部2b1は前記上面の略前面にわたってマトリクス状(格子状)に敷き詰めるように配置してある。そして、この凹部2b1の中心を結ぶ線で構成される格子によって形成されるマスの中心に、より小さな円形の凹部2b2を設けている。この例では、格子は正方形状をなす。この座アウターシェル21は、構造部材としての機能を有する。そして、このように構成したリブ2aは特定の方向にのみ延びている直線状のものではない。また、前記リブ2aの厚みは均一でない。しかも前記リブ2aには滑らかに接続していない部分がない。さらに、前記リブ2aは座アウターシェル21の位置表面にむらなく配置してあり、このリブ2aを配置した面を上面としている。
【0018】
また、前記背アウターシェル32の一表面たる前面すなわち内面には、図3及び図5に示すように、輪郭形状が滑らかに接続した曲線であるリブ3aが形成されるように平面視円形の凹部3b1、及び前記凹部3b1より小さなこれも平面視円形の凹部3b2を複数設けている。前記凹部3b1は略円周に沿って等間隔に、また各円周が同心円をなす形状に敷き詰めるように配置している。また、前記凹部3b2も同様に略円周に沿って等間隔に、また各円周が同心円をなす形状に設けてあり、前記凹部3b1と互い違いになるように配置している。この背アウターシェル32は、構造部材としての機能を有する。そして、このように構成したリブ3aは特定の方向にのみ伸びている直線状のものではない。また、前記リブ3aの厚みは均一でない。しかも前記リブ3aには滑らかに接続していない部分がない。このリブ3aを配置した一表面を背アウターシェル32の前面とし、前記リブ3aはこの背アウターシェル32の前記前面の上半部にむらなく配置してある。
【0019】
着座時にはこれらリブ2a、3aに荷重がかかる。着座姿勢が変化すると、荷重のかかる位置が変化し、それに伴いシェル21、32が受ける力の方向が変化する。しかし、このようなリブ2a、3aは、直線状でなく、特定の方向にのみ延びているものではないので、あらゆる方向からの折り曲げ力に対して剛性を有し、しかも滑らかに接続していない部分がないので、応力が極度に集中する部分がない。このことから、座2及び背3にかかる力の方向に関係なくシェル21、32はあらゆる方向からの力に対して均一な剛性を有するようにでき、その耐久性を向上させることができる。さらに、リブ2a、3aの輪郭形状が円周からなるようにしたので、リブ2a、3aには均一に力がかかることになり、この点からもシェル21,32があらゆる方向からの力に対して均一な剛性を有する。そして、リブ2a、3aはシェル21、32の一表面に敷き詰めるように配置し、また、リブ2a、3aはシェル21、32の一表面に規則的にむらなく配置してあるので、シェル21、32は略全体にわたって均一な剛性を有する。このようにシェル21、32があらゆる方向からの力に対して均一な剛性を有するので、着座姿勢が変化した際にシェル21、32が部分的にたわむようなことがなく、また応力が集中した部分が破損するようなことが極めて起こりにくい。従って、良好な座り心地を提供できるとともに、シェル21、32自体の耐久性を向上させることができる。
【0020】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。たとえば、座2と背3の両方にリブ2a、3aを形成する必要はなく、どちらか一方にのみリブ2a、3aを形成するようにしてもよい。
【0021】
また、インナーシェル22、31を省略して、アウターシェル21、32に直接クッション23、44を取り付けるようにしてもよい。このような場合は、例えば図6に示すように、背クッション33の背もたれ面と反対側の面に凸部を設け、背アウターシェル31の凹部3bと嵌めあうようにして背クッション33を密着させて取り付けてもよい。もちろん、座2を同様に構成してもよい。このようにすれば、接着剤等を使わずにクッションがずれないようにすることができる。
【0022】
さらに、リブ2a、3aはアウターシェル21、32でなくインナーシェル22、31に設けてもよく、インナーシェル22、31の上面又は前面にリブ2a、3aを設け、クッション23、33を前述した構成と同様にインナーシェル22、31の凹部2b、3bと嵌めあうようにして取り付けてもよいし、下面又は後面にリブ2a、3aを設け、このリブ2a、3aがアウターシェル21、32に当たって荷重を受けるようにしてもよい。
【0023】
加えて、前述した実施形態のように座アウターシェル21に大小の円形の凹部2b1、2b2を組み合わせてそれぞれを縦横マトリクス状に配置する代わりに、例えば図7に示すように正三角形を敷き詰めたパターンの正三角形の頂点にあたる箇所に同一直径の円形の凹部2b1の中心をそれぞれ配置する等、凹部2bを規則的に配置してあればリブの分布をむらの無いものにできる。もちろん座インナーシェル22、背アウターシェル32、及び背インナーシェル31にこのように凹部を設けてもよい。また、リブの分布に多少むらがあっても問題でないならば凹部の配置を規則的にしないものであってもよい。
【0024】
そして、座アウターシェル21に設けた凹部2bの形状は円形である必要はなく、例えば図8に示すような大小の楕円形の凹部2b3、2b4等、輪郭形状が滑らかな曲線のみからなるものであれば凹部2bの具体的形状は問わない。もちろん座インナーシェル22、背アウターシェル32、及び背インナーシェル31に設けた凹部についても同様である。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、以上に詳述したように、背と座との少なくとも一方に備えたシェルの一表面に、輪郭形状が滑らかに接続した曲線のみからなる複数の凹部を設け、前記凹部間にリブが形成されるようにしたので、リブをあらゆる方向に延ばしたのと同様な効果が得られるとともに応力集中が起こりにくいようにできる。従ってシェルに均一な剛性を与えることができ、着座姿勢が変化した際にシェルが部分的にたわむようなことがなくなるので、良好なすわり心地を提供できるとともに、応力が集中した部分が破損するようなことが極めて起こりにくく、耐久性を向上させることができる。さらに、前記凹部を前記シェルの前記一表面側の略全面にわたって敷き詰めるように配置しているので、シェル全体にリブが形成されるようにし、シェルの全体にわたって均一な剛性を確保することができる。加えて、前記凹部の全部又は略全部を規則的に配置しているので、リブをむらなく配置するようにでき、シェルの全体にわたって均一な剛性を確保することができる。従って、シェルに均一な剛性を与える効果をより大きなものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における椅子の正面図。
【図2】同実施形態における椅子の側面図。
【図3】同実施形態における椅子の分解斜視図。
【図4】同実施形態における座アウターシェルの平面図。
【図5】同実施形態における背アウターシェルの正面図。
【図6】本発明の別実施形態における椅子の縦断面図。
【図7】本発明のさらに別実施形態における座アウターシェルの平面図。
【図8】本発明のさらに別実施形態における座アウターシェルの平面図。
【符号の説明】
C…椅子
2…座
21…座アウターシェル(アウターシェル)
22…座インナーシェル(インナーシェル)
23…座クッション
2a…リブ
2b(2b1〜2b5)…凹部
3…背
31…背アウターシェル(アウターシェル)
32…背インナーシェル(インナーシェル)
33…背クッション
3a…リブ
3b(3b1、3b2)…凹部

Claims (5)

  1. 背と座の少なくとも一方がシェルを具備したものであって、前記シェルの内面側の一表面に、輪郭形状が円形又は楕円形であるとともに厚さ寸法が他の部位より小さい複数の凹部を設け、前記凹部間に凹部よりも厚さ寸法が大きいリブが形成されるようにしているとともに、前記凹部を前記シェルの前記一表面側の略全面にわたって敷き詰めるように配置し、さらに前記リブの厚みが連続的に変化しつつ前記リブがシェルの全域に亘って滑らかに接続していること、及び前記凹部の全部又は略全部を規則的に配置したことを特徴とする椅子。
  2. 前記シェルが、インナーシェルと、背の背面又は座の底面を形成するアウターシェルとを具備し、前記インナーシェル又は前記アウターシェルのいずれか一方に前記凹部及び前記リブを形成したことを特徴とする請求項1記載の椅子。
  3. 前記凹部の輪郭形状が円形をなすものであることを特徴とする請求項1又は2記載の椅子。
  4. 背と座の少なくとも一方にさらにクッションを具備したものであって、前記シェルの前記一表面側に前記クッションを密着させて配置したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の椅子。
  5. 前記クッションに凸部を設け、この凸部と前記シェルに設けた凹部とが略隙間なく嵌りあうように構成したことを特徴とする請求項4記載の椅子。
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