JP3100353B2 - 椅 子 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は主として事務用の回
転椅子に適用して有用な座板と背凭れの揺動機構を具備
した椅子において、シートフレーム用のアウターシェル
を当該シートフレームの上面に取付けるようにした椅子
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近時、事務回転用椅子に関して掛け心地
の改善を図り、長時間に亘り着座し、様々な姿勢がとら
れても疲れの少ないシートや背凭れの揺動機構、或は、
その間での様々な姿勢変化に対応して人間工学的に追従
動作ができるシートや背凭れの揺動機構などが数多く提
案されるに至り、それらの中のいくつかは実用に供され
るものも見られるようになった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】而して、従来提案され
ているシート，背凭れ揺動機構の大半は、椅子のシート
を支持するシートフレームと、背凭れを支持する背凭れ
支持フレームとをリンク機構を介して連結し、シートの
上下揺動（沈み込み動作）と背凭れの前後揺動とを、一
定の関係の下で連動させるようにしたものである。

【０００４】しかし乍ら、従来提案されているシートと
背凭れの揺動作動を連動させるリンク機構は、構造が徒
らに複雑なため、実際にそれらの機構を採用した事務用
椅子を製造するとなると、部品点数がきわめて多くな
り、これによって単に製造コストや部品コストがアップ
するのみならず、多大な製造手間を要することとなり、
また、複雑な機構ゆえに作動が円滑軽快ではなく、それ
ゆえに着座姿勢が不自然になったり、かえって疲れ易い
などの問題が指摘されている。

【０００５】本発明はこのような点に鑑み、少ない部品
点数による構造をとることによって、製造手間，コスト
の低減を図ると共に、円滑軽快な作動が確保でき、ま
た、着座姿勢や着座感が従来の提案品よりも良好なシー
トと背凭れの揺動連動機構を具備した椅子を開発するこ
とを課題としてなされたものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
を目的としてなされた本発明の構成は、椅子のシートを
支持するシートフレームを前後に分割し、この分割部位
において前部シートフレームの後端部を脚支柱に支持さ
せると共に、該後端部と後部シートフレームの前端部の
手前を水平な連結軸を介して連結することにより、前記
脚支柱に対して後部シートフレームのみを揺動可能に設
ける一方、連結したシートフレームを上から覆うよう
に、前記連結軸に沿って屈撓自在の弾性接合部を形成し
一体成形された前記シートフレーム用のアウターシェル
を載架固定し、該アウターシェルの上にシートを設けた
ことを特徴とするものである。

【０００７】前後に二分割したシートフレームは、後部
シートフレームが前記分割点近傍に設定される水平な連
結軸において上下揺動し、かつ、前，後部シートフレー
ムの上面には、当該シートフレームの前記連結軸に沿っ
て屈撓自体の弾性接合部を有して一体形成された前記シ
ートフレーム用のアウターシェルを載架して設けるよう
にしたので、椅子のシート部の構造が簡潔になり、部品
点数が少なくなって製造が容易である上に、円滑な動作
を実現し易くなる。

【０００８】

【発明の実施の形態】次に本発明の実施例を図に拠り説
明する。図１は本発明機構の一例の概要を示す側面図、
図２は同じく平面図、図３は前部シートフレームとこれ
に連結された後部シートフレームの脚に対する関係を示
す斜視図、図４はシート部材とそのアウターシェルの関
係を示す斜視図、図５は背凭れ部材とその取付フレーム
の関係を示す斜視図、図６は図３〜図５に示した各部材
を具備して形成した事務用回転椅子の一例の側面図であ
る。

【０００９】まず、図１及び図２に於て、１は、前端側
に椅子におけるシート面の幅方向に沿って配設される水
平な第一の軸10（後述する）を支持する軸受穴２を形成
すると共に、後端側に回転椅子の脚支柱Ｐの上端側に支
持される垂直な取付穴３を形成した本体1aが平面略矩形
状で正断面がほぼ逆凹状をなす前部シートフレームであ
る。このシートフレーム１は、その本体1aの中間部が平
面から見て左右に略水平に張出した翼状部1b，1cに形成
されている。前記翼状部1b，1cは、図４，図６に示すよ
うにこの前部シートフレーム１の上面に後述するアウタ
ーシェル21，22を介して配設されるシート部材Ｓの前半
側Sfを支持すると共に、肘かけ部材Ｅの末端取付部とし
て機能する。

【００１０】また、上記シートフレーム１の本体1aの後
端には前記第一の軸10と平行な第二の軸11（後述する）
を取付けるための軸受穴４が形成されている。この軸受
穴４と上記脚支柱Ｐの取付穴３は近接させて設けると共
に、前記取付穴３の中心が、椅子のシート部材Ｓにおけ
る座位基準点Sp又はその近傍を通る垂直軸上乃至はその
近傍に位置するように位置付けて形成している。

【００１１】５は後部シートフレームで、ここでは前端
側が上記の前部シートフレーム１とほぼ同幅に形成され
た本体5aの正面から見た左，右側壁の先端側をそれぞれ
前斜下方へ少し延長した延長部5b，5cを形成すると共
に、前記両側壁の上面側には左，右に短か目の翼部5d，
5eが形成されている。

【００１２】そして、前記の後部シートフレーム５に
は、中間部が比較的大きな半径で略90度曲げて立上げら
れ、後述する背凭れ支持フレーム９の下半側9aを連結固
着するための上半側6bを具備した連結部６の下半側6aが
このフレーム５と一体化されている。

【００１３】実際には、図３に示すように後部シートフ
レーム５と連結部６とは、予め一体成形により形成され
ている。一体形成とするか別体に形成し後付け一体化す
るかは任意である。

【００１４】一方、後部シートフレーム５の前方に設け
た延長部5b，5cにおいて、当該延長部5b，5cの後端に
は、前部シートフレーム１における軸受穴４に一致する
軸受穴７が形成されると共に、当該延長部5b，5cの先端
部には上記第一の軸10と平行な向きの第三の軸12（後述
する）を取付けるための軸受穴８が形成されている。

【００１５】ここで、図１において、後部シートフレー
ム５と一体の連結部６の上半側6bの上端には、背凭れ支
持フレーム９が取付けられている。このフレーム９は、
ここではそれ自体で弾性を有すると共に側面からみて浅
い角度の略くの字状に形成されている。この取付フレー
ム９は、実際には図５に示すように、背凭れ部材Ｂのア
ウターシェル23（図５，図６参照）を兼用するように形
成されている。

【００１６】而して、上記の前部シートフレーム１の後
端部と後部シートフレーム５の前端部の手前は、その部
分に形成した軸受穴４，７に、軸受を介し又は介さずに
水平な第二の軸11を連結軸として取付けることにより、
両フレーム１，５がこの軸11を軸にして揺動可能に連結
されることとなる。実際には、前部シートフレーム１は
その後部の取付穴３が脚支柱Ｐに嵌合支持されて椅子の
脚Ｌの側と一体化されるため、現実に揺動するのは後部
シートフレーム５の側だけである。

【００１７】上記のように組上げられる前，後のシート
フレーム１と５は、それぞれに形成した軸受穴２，８に
水平な軸10，12を第一の軸，第三の軸として取付け、こ
れら両軸間に、コイルスプリング又はガススプリングに
よる緩衝部材13を架設する。

【００１８】緩衝部材13がコイルスプリングの場合、後
部シートフレーム５、及び、このフレーム５と一体の連
結部６及び背凭れ支持フレーム９は、第二の軸11を中心
とした揺動が確保され、その揺動が前記スプリングによ
り緩衝される。

【００１９】一方、緩衝部材13がガススプリングの場
合、ガスの圧縮性によりスプリングと略同様の緩衝作用
をするほか、ガスシリンダ内でのガスの流通を阻止させ
ることにより、後部シートフレーム５の沈み角度、及
び、前記フレーム５と一体の連結部６及び背凭れ取付フ
レーム９の傾き角を所望位置にロックすることが出来
る。尚、上記のコイルスプリングとガススプリングは併
用してもよいこと勿論である。

【００２０】上記のように構成される本発明椅子は、座
位基準点Spの近傍で前後に分割されたシートフレーム
１，５の上面に、シート部材Ｓが前記フレーム１，５の
前後で分割して、又は、分割しないで装着されるが、こ
こでは、前，後シートフレーム１，５の上面に、図４に
示す前記両フレーム１，５を上から覆うために連結部20
を介して一体成形したアウターシェル21，22を載架し、
このシェル21，22の上に前後一体のシート部材Ｓを載せ
て保持させている。

【００２１】上記において、前，後部のシートフレーム
１，５の上面に載架される前，後部が一体成形されたア
ウターシェル21，22は、その連結部20が前記第二の軸11
に沿って形成されており、しかも、この連結部20には屈
撓可能な弾性が付与されている。また、前，後部が一体
に形成されたアウターシェル21，22には、それらの下面
側においてそれぞれ前部シートフレーム１と後部シート
フレーム５とを嵌合収容する嵌合部21a，22aがそれぞれ
形成されており、ビス穴21b，21c、ビス穴22bにおいて
上記両シートフシ−ム１，５のビス穴にそれぞれビス21
dなどによりビス止めすることにより、それぞれの側の
フレーム１，５に取付けられる。

【００２２】一方、後部シートフレーム５と一体の連結
部６の上半側6bと，背凭れ支持フレーム９には、背凭れ
部材Ｂが、前記シート部材Ｓと別体に形成されて装着さ
れる。即ち、図３に示す後部シートフレーム５の連結部
６の上半側6bのビス穴6cには、図５に示すように、背凭
れ部材Ｂのアウターシェル23を兼用する背凭れ取付フレ
ーム９が複数のビス、ここでは３本の連結ビス23aによ
り取付けられると共に、このフレーム９、即ち、アウタ
ーシェル23の前面には、背凭れ部材Ｂが取付けられて、
図６に示すような事務用椅子の一例Chに形成される。
尚、24は前部シートフレーム１の下面側に取付けられる
シートフレームカバ−で、24aは支柱Ｐの挿通孔、24b，
24cは前記フレーム１の翼状部1b，1cに対応した翼状カ
バ−部である。

【００２３】ここで、前記の両シートフレーム１，５及
び背凭れ支持フレーム９との連結部６、並びに、背凭れ
支持フレーム９の下面や背面側に取付けられる各アウタ
ーシェル21〜23、及び、カバ−24は、例えば、ポリプロ
ピレンによる合成樹脂製であるが、材質は合成樹脂以外
であってもよい。また、アウターシェルやカバ−の形
状，構造も図示した例に限られるものではない。

【００２４】以上に説明した本発明の椅子Chにおいて
は、そのシート部材Ｓの上に位置付けられる座位基準点
Spの近くの第二の軸11を中心にしてシート部材Ｓにおけ
るシート後部Srの側が沈み込み、これと同動して背凭れ
部材Ｂの側も前記の第２軸11を中心に後傾する。

【００２５】シート後部Srの上記沈み込みに同動して後
傾する背凭れ部材Ｂはその当接面に、着座する者の背凭
れ点Bpが、角度の浅い側面略くの字状をなす背凭れ支持
フレーム９、又は、同形状の背凭れ部材Ｂ、若しくはこ
のフレーム９と前記部材Ｂの側断面形状により形成され
ていると共に、この背凭れ点Bpが緩衝部材13の作用によ
り前記第２軸11を中心にして常時前方へ向け付勢されて
いるので、シート部材Ｓに着座する者の背中の傾き度合
の如何に拘らず、常に、上記背凭れ点Bpが軸11を中心に
して着座した者の腰部を保持するように作用する。そし
て、上記の作動は部品点数が少ないゆえに円滑かつ軽快
である。

【００２６】また、シート部材Ｓは、そのシート前部Sf
の前端がシート後部Srの上記第二の軸11を中心とした沈
み込み動作又はその復帰動作によっては全く変位しない
ので、背凭れ部材Ｂを大きく後傾させたときでも、膝の
裏側が、シート部材Ｓの前端が上方に変位することによ
って持上げられるという従来のこの種揺動機構に多く見
られた不都合な現象は全く生じない。

【００２７】

【発明の効果】上記の動作をする本発明椅子は、前，後
に分割して連結軸により連結した前，後のシートフレー
ムを、一体成形した一個のアウターシェルによって上面
から被覆し、このアウターシェルの上にシート部材を架
装するように形成したから、外見上、シートフレームの
後半部のみが沈み込み動作するようには見えず、見晴え
がよい。

【００２８】しかも、上記の一体成形したアウターシェ
ルは、その前半側と後半側の連結部を屈撓可能な弾性を
付与して形成されているので、上記シートフレームの後
部側のみが沈み込み動作をしても、前記シートフレーム
の上面に載架したアウターシェルはよくその動作に追従
できるので、作動の円滑さは一切損なわれることがな
い。

【００２９】従って、本発明の椅子は、長時間着座した
まま様々な姿勢をとっても、シート後部の円滑な沈み込
み動作とこれと同動する背凭れの前後揺動動作によって
腰部や臀部に偏った負荷はかかり難く、また、着座した
者の腰部近くの衣服のめくれ上りも生じ難くなるので、
この種の椅子に長時間着座することにより生じ易かった
疲労を大幅に軽減乃至は緩和することができるという基
本的効果のほか、次の独自の効果を奏する。

【００３０】即ち、シートフレームを前後で二分し、か
つ、これらを連結軸により連結したシートフレームを有
する椅子において、そのシートフレームの上面に、前記
連結軸と対応する部位を可撓性の連結部に形成したシー
トフレーム用のアウターシェルを載架して取付ける構造
としたので、椅子のシート部の構造が簡潔になり、部品
点数も少なくなって製造が容易になる上に、円滑な揺動
動作が実現し易い。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明椅子の揺動機構の一例の概要を示
す側面図。

【図２】図２は図１の機構の平面図。

【図３】図３は前部シートフレームとこれに連結された
後部シートフレームの脚に対する関係を示す斜視図。

【図４】図４は本発明椅子におけるシート部材とシート
フレーム用のアウターシェルの関係を示す斜視図。

【図５】図５は背凭れ部材とその取付フレームの関係を
示す斜視図。

【図６】図６は図３〜図５に示した各部材を具備して形
成した事務用回転椅子の一例の側面図。

【符号の説明】

１ 前部シートフレーム ２ 第二の軸11の軸受穴 ３ 取付穴 ４，７ 第一の軸10の軸受穴 ５ 後部シートフレーム ６ 連結部 ８ 第三の軸 ９ 背凭れ支持フレーム 21〜23 シートフレーム用のアウターシェル Ｓ シート部材 Ｅ 肘かけ Ｂ 背凭れ部材 Ｐ 脚支柱 Sp 座位基準点 Bp 背凭れ点

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 邑 上 敦 郎 大阪府大阪市城東区今福東１丁目４番18 号 株式会社伊藤喜工作所内 (56)参考文献 特開 昭63−186605（ＪＰ，Ａ) 特許2709333（ＪＰ，Ｂ２) 特公 平４−68932（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A47C 1/00 A47C 3/025 A47C 7/44

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 椅子のシートを支持するシートフレーム
   を前後に分割し、この分割部位において前部シートフレ
   ームの後端部を脚支柱に支持させると共に、該後端部と
   後部シートフレームの前端部の手前を水平な連結軸を介
   して連結することにより、前記脚支柱に対して後部シー
   トフレームのみを揺動可能に設ける一方、連結したシー
   トフレームを上から覆うように、前記連結軸に沿って屈
   撓自在の弾性接合部を形成し一体成形された前記シート
   フレーム用のアウターシェルを載架固定し、該アウター
   シェルの上にシートを設けたことを特徴とする椅子。
2. 【請求項２】 椅子のシートを支持するシートフレーム
   を、座位基準点乃至はその近傍を基準にして前後に分割
   すると共に、この分割部位において前部シートフレーム
   の後端部と後部のシートフレームの前端部の手前を水平
   な連結軸を介して連結し、該後部シートフレームにおけ
   る後端側を、背凭れを支持する背凭れ支持フレームの下
   端側を取付けるために略直角に立上げた連結部としてこ
   の後部シートフレームと一体に形成する一方、当該シー
   トフレームにおける前端側を前部シートフレーム側であ
   ってその下方へ延長形成し、その延長端部と上記の前部
   シートフレームとの間に、ガススプリング等による緩衝
   部材を架設すると共に、前，後部シートフレームを上か
   ら覆うように、当該シートフレームの連結軸に沿って屈
   撓自在の弾性接合部を形成し一体成形された前記シート
   フレーム用のアウターシェルを載架固定し、かつ、前部
   シートフレームの後端部を前記座位基準点乃至はその近
   傍を通る垂直軸上において脚支柱に取付けたことを特徴
   とする椅子。