JP3924994B2 - ベアリングキャップの取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランクシャフト軸受部に適用されるベアリングキャップの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのクランクシャフトを回転自在に支持する軸受部の構造として、シリンダブロックのジャーナル壁の下部に半割状のベアリングキャップを取り付け、これらジャーナル壁とベアリングキャップとの軸受面同士で、クランクシャフトのジャーナル部を上下から挟み込んで支持するものがある。
【0003】
ベアリングキャップの取付構造としてはジャーナル壁に下方からボルト締結するものが一般的だが、これに加え、側方からサイドボルトでスカート部に締結し、支持剛性を上げたものもある(特開昭61-127915 号公報等参照)。これによりクランクシャフトに作用する高い捩り、曲げ力に対抗できるようになり、エンジンの高出力化にも対応できるようになる。またスカート部の開閉振動のようなものもなくなり、振動騒音が低減される。
【0004】
これにおいて、ベアリングキャップをジャーナル壁に締結するボルトが主締結用で、これをメインボルトという。これに対しサイドボルトは補助締結用である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、クランクシャフトが燃焼圧力に起因して回転されるとき、ベアリングキャップにはクランクシャフト中心回りに回ろうとする回転力が働く。サイドボルトで側方からの締結を行なうのはこの回転力に対抗するためである。よってサイドボルトの高さ位置はクランクシャフト中心からできるだけ遠ざけた位置、即ちできるだけ下方とするのが良い。
【0006】
一方、シリンダブロックの前端にはフロントカバーが、後端にはフライホイールハウジングが結合される。フロントカバー内にはクランクシャフトの回転力をカムシャフトやポンププーリ等に伝達すべく、動力伝達機構が収容されており、これがギア式やチェーン式等のオイル潤滑を必要とするものである場合、フロントカバー内ではオイルが循環、飛散等されることになる。またフライホイールハウジング内でもオイルリターン等によりオイルが循環、飛散等されている。よって各部材の結合部ではオイル漏れがなきよう、十分なシール性能が要求される。
【0007】
図5にシリンダブロックa前端とフロントカバーbとの結合例を示す。図示するようにこれらの下部にはオイルパンcも結合されている。フロントカバーbのシリンダブロックaへの結合は、フロントカバーbの前方(図中左方)からボルト(図示せず)を用いて行う。なおオイルパンcのシリンダブロックa及びフロントカバーbへの結合も下方からボルト(図示せず)を用いて行う。
【0008】
この場合、3部品が交わるA部においてシールが甘くなる傾向にある。よってシールを確実にするためには、フロントカバーbの取付ボルトの位置を、A部付近に、即ちできるだけ下方に設定するのが望ましい。
【0009】
ところが、シリンダブロック前端部にもジャーナル壁やベアリングキャップが存在し、サイドボルトも存在する。サイドボルトも上述したようにできるだけ下方とした方がよいので、このときサイドボルトと上記取付ボルトとの間で干渉が問題となる。
【0010】
そして、後方のシリンダブロックとフライホイールハウジングとの結合部においても、同様の問題が発生する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリンダブロックのジャーナル壁の下部にベアリングキャップをメインボルトで締結し、そのベアリングキャップをシリンダブロックのスカート部にサイドボルトで締結するベアリングキャップの取付構造において、シリンダブロック前後方向における最前方又は最後方に位置するサイドボルトの高さ位置を、それら中間に位置するサイドボルトの高さ位置より高く設定し、他方、シリンダブロックの前端壁又は後端壁にフロントカバー又はフライホイールハウジングを結合するための結合面を形成し、この結合面と上記フロントカバー又はフライホイールハウジングとを複数の締結ボルトで締結すると共に上記締結面で最下方に位置する締結ボルトを、上記最前方又は最後方に位置するサイドボルトの下方となるように設定したものである。
【0012】
こうすると、サイドボルトが、フロントカバー取付ボルト又はフライホイールハウジング取付ボルトの上方に逃げるようになるため、互いの干渉が防止される。
【0013】
一般に、クランクシャフトに作用する曲げ力、捩り力が最大となるのはクランクシャフト長手方向の中間部である。つまりクランクシャフトを振動体とすると、クランクシャフトの中間部が振動の腹、両端部が振動の節となる。よって中間部の支持剛性に比べ両端部の支持剛性は若干下げることが可能である。よって本発明のように最前方又は最後方のサイドボルトを中間のサイドボルトより高くしても、剛性的には問題ない。これによって支持剛性とシール性との両者を両立させることが可能となるのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0015】
図1乃至図4に本発明が適用されるエンジンのシリンダブロック1が示されている。例えば図1において左側が前方、右側が後方である。かかるシリンダブロック1はV8エンジンのもので、左右のバンク2,3にそれぞれ四つずつシリンダボア4が直列的に形成されている。図2に示すように、ブロック前後方向のほぼ同一位置において、左右一つずつ、シリンダボア4が形成され、これら左右二個で一組とされた計四組のシリンダボア組5が、ブロック前後方向に沿って直列されている。そしてこれらシリンダボア組5を仕切るように、ジャーナル壁6がシリンダブロック1に一体に形成されている。ジャーナル壁6は、最前方のシリンダボア組5の前方と、最後方のシリンダボア組5の後方にも設けられる。つまり図3、図4に示すように、これら最前方及び最後方のジャーナル壁6F,6Rが、シリンダブロック1の前端壁7F及び後端壁7Rの一部となっている。こうして四組のシリンダボア組5の前後に隣接してジャーナル壁6が設けられるため、ジャーナル壁6は計五つあることになる。シリンダブロック1の下部の両側方にはスカート部8が一体に形成される。
【0016】
各ジャーナル壁6の下部にベアリングキャップ9が取り付けられている。図2に詳細に示すように、ジャーナル壁6とベアリングキャップ9とに互いに組み合わされて円となる半円状の軸受面10,11が設けられ、これら軸受面10,11でクランクシャフト(図示せず)のジャーナル部が挟まれて回転自在に支持される。
【0017】
ベアリングキャップ9は、その上面9aがジャーナル壁6の下面12に接合され、その左右両側の上部側面13がスカート部8の内方に形成された上部嵌合面14に嵌合され、その左右両側の下部ボス部15がスカート部8の下端位置付近で内側方に突出形成されたボス部16に接合される。そして軸受面10,11の左右両外側で、主締結用のメインボルト17がベアリングキャップ9のボルト挿通穴18に下方から上方へと縦方向に挿入され、ジャーナル壁6の雌ネジ穴19に螺合締結されて、ベアリングキャップ9の主たる取り付けがなされる。
【0018】
一方、補助締結用のサイドボルト20が、スカート部8のボルト挿通穴21に左右外側から横方向に挿入され、ベアリングキャップ9の雌ネジ穴19に螺合締結されて、ベアリングキャップ9の補助的な取り付けがなされる。なおボルト挿通穴21はボス部16の中心に、雌ネジ穴19は下部ボス部15の中心に、それぞれ沿って設けられる。
【0019】
上述のように、クランクシャフト回転中にベアリングキャップ9がクランクシャフト中心回りの回転力を受けることから、これに対抗すべく、サイドボルト20の高さ位置はベアリングキャップ9の下端付近に設定される。
【0020】
ところで、図1に示すように、最前方及び最後方のサイドボルト20F,20Rの高さ位置は、それら中間に位置するサイドボルト20Mの高さ位置より僅かに高い位置に設定されている。即ち、ここでは中間のサイドボルト20Mの高さ位置は三つとも等しくされるが、最前方及び最後方のサイドボルト20F,20Rの高さ位置は、それら中間のサイドボルト20Mの高さ位置よりHF ,HR だけ高い。なおこれに対応して最前方及び最後方のボス部16、下部ボス部15、ボルト挿通穴21及び雌ネジ穴19の位置も上げられる。これにより以下のような利点がある。
【0021】
図4はシリンダブロック1を後方から見たときの図だが、これから分かるようにシリンダブロック1の後端壁7Rにはフライホイールハウジング(図示せず)を結合するための後部結合面21が形成されている。この後部結合面21には複数のボルト穴22が設けられている。ボルト穴22の内周には雌ネジが施される。
【0022】
上述のように、フライホイールハウジングのボルト結合位置はできるだけ下方の方がよいので、後部結合面21の最下部の位置にボルト穴22Dが設けられている。この場合、最後方のサイドボルト20Rとの干渉が問題になるが、前述の通りサイドボルト20Rが高い位置にあるので、サイドボルト20Rをボルト穴22Dひいてはこれに螺合される取付ボルトの上方に逃がすことができ、干渉を避けられる。つまりボルト穴22Dないし取付ボルトの上方をサイドボルト20Rが垂直に通過する格好となる。こうしてシリンダブロック1、フライホイールハウジング及びオイルパン(図示せず)の三者の交点部分で、シール性を確保し、オイル漏れを確実に防止できる。
【0023】
前方のフロントカバー取付部にも同様のことがいえる。図3はシリンダブロック1を前方から見たときの図だが、これから分かるようにようにシリンダブロック1の前端壁7Fにはフロントカバー(図示せず)を結合するための前部結合面23が形成されている。この前部結合面23にも同様に内周に雌ネジが施されたた複数のボルト穴24が設けられる。
【0024】
前部結合面23の最下部の位置にボルト穴24Dが設けられるが、前述の通りサイドボルト20Fが高い位置にあるので、サイドボルト20Fをボルト穴24Dないしこれに螺合される取付ボルトの上方に逃がすことができ、サイドボルト20Fと取付ボルトの干渉を防止できる。そしてシリンダブロック1、フロントカバー及びオイルパンの三者の交点部分でも、シール性が確保され、オイル漏れが確実に防止される。
【0025】
一方、このようにしても剛性的には問題が生じない。即ち、クランクシャフトに作用する曲げ力、捩り力が最大となるのはクランクシャフト長手方向の中間部である。逆に両端部ではそれらの力が最小か、少なくとも中間部よりは小さい。仮にクランクシャフトを振動体とすれば、クランクシャフトの中間部が振動の腹、両端部が振動の節となる。よって中間部の支持剛性に比べ両端部の支持剛性は若干下げることが可能である。それ故、このように最前方又は最後方のサイドボルト20F,20Rを中間のサイドボルト20Mより高くしても、剛性的には問題ない。つまりクランクシャフトの振動の節でサイドボルトを高くするため、問題視する程度に支持剛性を下げることがない。これによって支持剛性とシール性との両者を両立させることが可能になるのである。
【0026】
以上、本発明の実施の形態は上述のものに限られない。例えば最前方又は最後方の一方のサイドボルトのみを高くしてもよい。上記実施形態ではメインボルトを下方から挿入して主締結を行なったが、長いメインボルトをジャーナル壁に上方から縦貫通させ、これで主締結を行なってもよい。ベアリングキャップとスカート部との補助締結方法も上述の方法に限定されず、必要なければ左右の一方にのみサイドボルトを設けることも可能である。上記実施形態ではフロントカバーやフライホイールハウジングを取り付ける場合のボルト干渉を問題としたが、これら部材はフロントカバーやフライホイールハウジングに限定されず、他の部材でもよい。中間サイドボルトの高さ位置は必ずしも等しくなくてよく、最前方と最後方とのサイドボルトは同一高さでも、異なった高さでもよい。要は、中間サイドボルトの任意の一本に対し、最前方又は最後方の少なくとも一本のサイドボルトが高ければよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0028】
(1) フロントカバー、フライホイールハウジング等の取付ボルトとサイドボルトとの干渉を防止でき、シール性を確保できる。
【0029】
(2) クランクシャフトの支持剛性を依然確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の左縦断側面図で、シリンダブロック前後方向の中間部における断面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図1の右側面図である。
【図5】シリンダブロック、フロントカバー及びオイルパンの三者の結合状態を示す部分正面図である。
【符号の説明】
1 シリンダブロック
6 ジャーナル壁
6F 最前方のジャーナル壁
6R 最後方のジャーナル壁
8 スカート部
9 ベアリングキャップ
17 メインボルト
20 サイドボルト
20F 最前方のサイドボルト
20R 最後方のサイドボルト
20M 中間のサイドボルト
Claims (1)
- シリンダブロックのジャーナル壁の下部にベアリングキャップをメインボルトで締結し、そのベアリングキャップをシリンダブロックのスカート部にサイドボルトで締結するベアリングキャップの取付構造において、シリンダブロック前後方向における最前方又は最後方に位置するサイドボルトの高さ位置を、それら中間に位置するサイドボルトの高さ位置より高く設定し、他方、シリンダブロックの前端壁又は後端壁にフロントカバー又はフライホイールハウジングを結合するための結合面を形成し、この結合面と上記フロントカバー又はフライホイールハウジングとを複数の締結ボルトで締結すると共に上記締結面で最下方に位置する締結ボルトを、上記最前方又は最後方に位置するサイドボルトの下方となるように設定したことを特徴とするベアリングキャップの取付構造。
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