JP4159293B2 - クランクシャフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクランクシャフト、特にクランクピン外周に潤滑油を供給する油路を内部に備えたクランクシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
そのような従来のクランクシャフトの一例として、特公平3−27728号公報に開示された内燃機関のクランクシャフトを、図7によって説明する。
【0003】
図7において、クランクシャフト01は鍛造で一体に成形されており、その中間部に1対のクランクウェブ02が設けられている。そして、それらクランクウェブ02はその外周部において、クランクピン03により互いに結合されている。またクランクウェブ02の中央部から外方に向かって1対のメインジャーナル04が延びている。
【0004】
上記クランクピン03には2本のコネクティングロッド05の一端が連結され、他端に連結されたピストン(図示せず)の往復運動が、このコネクティングロッド05によりクランクピン03に伝達されて、クランクシャフト01がメインジャーナル04の軸線のまわりに回転するようになっている。
【0005】
上記クランクシャフト01には、コネクティングロッド05が連結されるクランクピン03の外周を潤滑する潤滑油の供給流路が設けられている。この流路は、メインジャーナル04の軸線に沿って穿設された送油通路07、クランクピン03の軸線に沿って設けられた給油通路08、それら両通路07、08を連通する連絡通路09、および上記給油通路08とクランクピン03の外周面とを連通する給油孔010とから成る。送油通路07に導入された潤滑油は、連絡通路09、給油通路08、給油孔010を経てクランクピン03の外周に供給される。
【0006】
上記給油通路08は、クランクウェブ02の外側面からドリルで穿孔し、外側開口部を栓部材011で閉塞することにより形成される。また連絡通路09は、クランクウェブ02の外周面から穿孔し、開口部の内方にスチールボール等の栓部材012を圧入することにより形成される。送油通路07および給油孔010は、それぞれメインジャーナル04の一端面およびクランクピン03の側面から穿孔して、そのまま使用することができる。
【0007】
【解決しようとする課題】
前記のような従来のクランクシャフト01においては、連絡通路09、給油孔010の開口部を塞いでいる栓部材011、012は、通常開口部のかしめ等により抜止めがなされているが、かしめ不良などが生じた場合、油圧や遠心力によって抜けてしまう可能性があった。
【0008】
【議題を解決するための手段および効果】
前記従来の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、内部に設けられた潤滑油通路がクランクウェブの外面に形成された開口部に連通するとともに、該開口部の内方に栓部材が充填され、かつ上記クランクウェブにカウンタウェイトが固着され、上記栓部材の脱落が上記カウンタウェイトにより阻止されるようにしたクランクシャフトにおいて、前記開口部がクランクピンに隣接して前記クランクウェブの外周面に形成され、前記カウンタウェイトはリング状に形成されるとともに、該リング状部内周部分には、前記クランクウェブの全外周に亘って嵌合する凹部が形成され、前記クランクウェブの外周面に当接し、該クランクウェブの開口部を塞ぐ位置に配置されるリブを残し、該リブを挟みクランクピンに隣接して半周に亘り前記カウンタウェイトに肉抜き部が形成され、前記クランクウェブに前記カウンタウェイトの凹部がインロー嵌合されるとともに締結要素により一体化されたことを特徴とするクランクシャフトである。
【0009】
請求項1記載の発明は上記のとおり構成されているので、別体のカウンタウェイトに、クランクシャフトのバランスという本来の機能だけでなく、栓部材の抜け止め(脱落阻止)機能をも兼ねさせることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、内部に設けられた潤滑油通路がクランクウェブの外面に形成された開口部に連通するとともに、該開口部の内方に栓部材が充填され、かつ上記クランクウェブにカウンタウェイトが固着され、上記栓部材の脱落が上記カウンタウェイトにより阻止されるようにしたクランクシャフトにおいて、前記開口部がクランクピンに隣接して前記クランクウェブの外側面に形成され、前記カウンタウェイトはリング状に形成されるとともに、該リング状部内周部分には、前記クランクウェブの全外周に亘って嵌合する凹部が形成され、前記クランクウェブの外側面に当接し、クランクピンに隣接して前記カウンタウェイトに肉抜き部が形成されるとともに、前記開口部を塞ぐ突出部が前記カウンタウェイトから一体に突設され、前記クランクウェブに前記カウンタウェイトの凹部がインロー嵌合されるとともに締結要素により一体化されたことを特徴とするクランクシャフトである。
【0011】
したがって、請求項2記載の発明では、給油通路の開口部を閉塞している栓部材が油圧等により万一ゆるむ場合があっても、該栓部材の脱落が防止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を車両用エンジンに適用した一実施例におけるクランクシャフト本体の縦断面図(図2のI−I矢視断面)、図2は図1のII−II矢視横断面図である。図3は上記クランクシャフト本体に取付けられるカウンタウェイトを示すもので、(a)は内面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(a)のC−C矢視断面図である。図4は図1および図2に示されたクランクシャフト本体に図3に示されたカウンタウェイトを取付けたクランクシャフト組立状態を示す縦断面図である。
【0016】
まず図1および図2において、クランクシャフト本体1は鍛造で一体に成形されており、その中間部に1対の円形のクランクウェブ2が設けられている。そしてそれらクランクウェブ2はその外周部においてクランクピン3により互いに結合されている。またクランクウェブ2の中央部から外方へ向かって1対のメインジャーナル4が延びている。
【0017】
上記クランクピン3には図示しない2本のコネクティングロッドの一端が連結され、他端に連結されたピストン(図示せず)の往復運動がこのコネクティングロッドによりクランクピン3に伝達されて、クランクシャフト本体1がメインジャーナル4の軸線まわりに回転するようになっている。またメインジャーナル4には歯車5a,5bやスプライン6が形成されていて、図示しない変速機主軸またはトルクコンバータのポンプ、交流発電機等へ回転動力を伝達するようになっている。
【0018】
上記クランクシャフト本体1には、コネクティングロッドが連結されるクランクピン3の外周を潤滑する潤滑油の供給流路が設けられる。この流路は、メインジャーナル4の軸線に沿って穿設された送油通路7、クランクピン3内に軸線に平行に設けられた給油通路8、それら両通路7、8を連通する連絡通路9および上記給油通路8とクランクピン3の外周面とを連通する給油孔10とから成る。送油通路7に導入された潤滑油は、連絡通路9、給油通路8、給油孔10を経て、クランクピン3の外周に供給される。
【0019】
上記給油通路8は、クランクウェブ2の外側面からドリルで穿孔し、外側開口部を栓部材11で閉塞することにより形成される。また連絡通路9は、クランクウェブ2の外周面から穿孔し、開口部の内方に球状の栓部材12を充填することにより形成される。送油通路7および給油孔10は、それぞれメインジャーナル4の一端面およびクランクピン3の側面から穿孔して、そのまま使用することができる。
【0020】
次に本実施例のカウンタウェイト16は、図3に示されるようにほぼリング状に形成されており、このカウンタウェイト16が2個、図4に示されるように取付ボルト20によって前記クランクシャフト本体1に取付けられる。そしてこのカウンタウェイト16のクランクピン3側に当接する半周(図3(a),(c)の上半部)には、バランス上の軽量化のため、えぐられた空所(肉抜き部)17が形成されている。ただし、前記連絡通路9穿孔時の開口に相当する位置には、リブ18が設けられて、クランクウェブ2の外周面に当接し、その開口部を塞ぐようになっている。
【0021】
本実施例では、クランクウェブ2に連絡通路9をドリルで穿孔した時の開口位置に対応して、カウンタウェイト16にリブ18が設けられて開口部を塞ぐので、その開口部の内方に充填された栓部材12が、油圧や遠心力によってゆるむという事故が万一起きても、脱落が防止される。すなわち、クランクシャフト本体1に取付けられたカウンタウェイト16は、本来のバランス機能だけでなく、栓部材12の万一の場合の抜け止め(脱落阻止)機能をも併せ持つことになる。
【0022】
また、上記リブ18の両側には、えぐられた空所(肉抜き部)17が形成されているので、栓部材12の脱落阻止機能を損なわずにクランクシャフトを軽量化できる。
【0023】
本実施例ではまた、カウンタウェイト16がほぼリング状に形成されているので、前記空所(肉抜き部)17が設けられていても、剛性は確保される。更に、クランクシャフトの回転に伴ってカウンタウェイト16自体に作用する遠心力も周方向でバランスし、全体として大きな力にならない。
【0024】
次に図5は、本発明の他の実施例におけるカウンタウェイト26を示す図、図6は同じくクランクシャフト組立状態を示す図である。この実施例では、図5に示されるように、カウンタウェイト26のリブ28が設けられた周方向位置で、カウンタウェイト26内周面から内方へ突出する舌状の突起29が形成されている。そしてカウンタウェイト26がクランクシャフト本体1に取付けられた時、給油通路8の開口部を塞ぐ栓部材 11 が脱落するのをこの突起 29 によって阻止するようになっている(図6)。27は空所(肉抜き部)、30は取付ボルトである。
【0025】
本実施例は前記のように構成されているので、給油通路8の開口部を閉塞している栓部材11が油圧等により万一ゆるむ事故が起きた場合でも、栓部材11の脱落が防止される。その他、前記第1の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0026】
前記図4、図6においては、リブ18,28および突起29が、それぞれ給油通路8および連絡通路9の開口部を完全に塞いでいるが、これは栓部材11,12の万一の場合の脱落を阻止できさえすればよいので、開口部の少なくとも一部が塞がれているだけでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるクランクシャフト本体の縦断面図(図2のI−I矢視断面)である。
【図2】図2は図1のII−II矢視横断面図である。
【図3】図3は上記クランクシャフト本体に取付けられるカウンタウェイトを示すもので、(a)は内面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図4】図4は図1および図2に示されたクランクシャフト本体に図3に示されたカウンタウェイトを取付けたクランクシャフト組立状態を示す縦断面図でる。
【図5】図5は本発明の第2の実施例におけるカウンタウェイトを示すもので、(a)は内面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図6】図6は上記第2の実施例におけるクランクシャフト組立状態を示す縦断面図である。
【図7】図7は従来のクランクシャフトの一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…クランクシャフト本体、2…クランクウェブ、3…クランクピン、4…メインジャーナル、5a,5b…歯車、6…スプライン、7…送油通路、8…給油通路、9…連絡通路、10…給油孔、11,12…栓部材、16…カウンタウェイト、17…空所(肉抜き部)、18…リブ、20…取付ボルト、26…カウンタウェイト、27…空所(肉抜き部)、28…リブ、29…突起、30…取付ボルト。
Claims (2)
- 内部に設けられた潤滑油通路がクランクウェブの外面に形成された開口部に連通するとともに、該開口部の内方に栓部材が充填され、かつ上記クランクウェブにカウンタウェイトが固着され、上記栓部材の脱落が上記カウンタウェイトにより阻止されるようにしたクランクシャフトにおいて、
前記開口部がクランクピンに隣接して前記クランクウェブの外周面に形成され、
前記カウンタウェイトはリング状に形成されるとともに、該リング状部内周部分には、前記クランクウェブの全外周に亘って嵌合する凹部が形成され、
前記クランクウェブの外周面に当接し、該クランクウェブの開口部を塞ぐ位置に配置されるリブを残し、該リブを挟みクランクピンに隣接して半周に亘り前記カウンタウェイトに肉抜き部が形成され、
前記クランクウェブに前記カウンタウェイトの凹部がインロー嵌合されるとともに締結要素により一体化されたことを特徴とするクランクシャフト。 - 内部に設けられた潤滑油通路がクランクウェブの外面に形成された開口部に連通するとともに、該開口部の内方に栓部材が充填され、かつ上記クランクウェブにカウンタウェイトが固着され、上記栓部材の脱落が上記カウンタウェイトにより阻止されるようにしたクランクシャフトにおいて、
前記開口部がクランクピンに隣接して前記クランクウェブの外側面に形成され、
前記カウンタウェイトはリング状に形成されるとともに、該リング状部内周部分には、前記クランクウェブの全外周に亘って嵌合する凹部が形成され、
前記クランクウェブの外側面に当接し、クランクピンに隣接して前記カウンタウェイトに肉抜き部が形成されるとともに、前記開口部を塞ぐ突出部が前記カウンタウェイトから一体に突設され、
前記クランクウェブの外側面に当接し、前記開口部に相対する位置におけるクランクウェブに突出部が該開口部を塞ぐように形成され、
前記クランクウェブに前記カウンタウェイトの凹部がインロー嵌合されるとともに締結要素により一体化されたことを特徴とするクランクシャフト。
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