JP3924509B2 - ウェハ加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にウェハを加熱する際に用いるウェハ加熱装置に関するものであり、例えば半導体ウェハや液晶装置あるいは回路基板等のウェハ上に薄膜を形成したり、前記ウェハ上にレジスト液を塗布し乾燥焼き付けしてレジスト膜を形成したりする際に好適なウェハ加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造装置の製造工程における、半導体薄膜の成膜処理、エッチング処理、レジスト膜の焼き付け処理等においては、半導体ウェハ(以下、ウェハと略す)を加熱するためにウェハ加熱装置が用いられている。
【0003】
従来の半導体製造装置は、まとめて複数のウェハを成膜処理するバッチ式のものが使用されていたが、半導体素子の配線の微細化に伴い、ウェハ熱処理温度の精度向上が必要となり、温度精度に優れた枚葉式の熱処理装置が広く使用されてきた。
【0004】
例えば、半導体製造装置の製造工程におけるウェハへの加工において、導体膜や絶縁膜の成膜処理、エッチング処理、レジスト膜の焼き付け処理等には、ウェハを加熱するためにウェハ加熱装置が用いられている。
【0005】
このようなウェハ加熱装置として、例えば特開2002−56954号公報には、図4に示すようなウェハ加熱装置が提案されている。
【0006】
このウェハ加熱装置41は、アルミニウム等からなる有底状のケース44の開口部に、板状セラミックス体の一方の主面に発熱抵抗体43を有し他方の主面にウェハを載せる載置面47を備えた均熱板42を固定してある。ウェハ加熱装置41は、ケース44の外周面に沿って支持部材46に固定した構造となっていた。
【0007】
また、このウェハ加熱装置41は、支持部材46の下部に設けられたリフトピン45によりウェハWを昇降させることにより、ウェハ加熱装置41からウェハWを脱着させるようになっていた。
【0008】
ところで、このようなウェハ加熱装置41において、ウェハWの表面全体に均質な膜を形成したり、レジスト膜の加熱反応状態を均質にしたりするためには、ウェハWの温度分布を均一にすることが重要であった。また、多数のウェハWを効率的に加熱できるようにするため、加熱冷却のタクトタイムを短くする必要があった。このため、均熱板42を構成する板状セラミックス体として窒化アルミニウムや炭化珪素等の高熱伝導率で剛性の高いセラミックスを用いて加熱冷却を有利にし、また均熱性を改善するために、均熱板42に形成される帯状の抵抗発熱体43の抵抗分布を均一になるように調整したり、帯状抵抗発熱体43を分割し分割した領域で温度分布を制御したりすることが行われていた。
【0009】
しかし、いずれも非常に複雑な構造、制御が必要になるという課題があり、簡単な構造で温度分布を均一に加熱できるようなウェハ加熱装置が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ウェハWを載置する均熱板42は、ウェハWの温度分布を均一にするように載置面47の反りと平面度を調整している。この理由は、均熱板42に反り等が生じるとウェハWと載置面47の間隔が変化しウェハWの表面の温度差が生じるからである。ウェハW表面の温度差が生じると例えばウェハWのレジスト液を乾燥硬化させる場合、硬化状態が不均一となりレジスト膜が均一とならない虞があった。
【0011】
しかしながら、従来の均熱板42をケース44に設置した状態で上記反りと平面度を保持した状態で、ケース44を支持部材46に固定する際、ケース44が支持部材46の設置面に倣うように固定されるので、支持部材46の設置面の反りや平面度の影響を受けて、均熱板42を構成する板状セラミックス体200の平面度が変化し、板状セラミックス体200の他方の主面である載置面47に設置されたウェハWの温度分布がばらついてしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、ケース44に設置した均熱板42を支持部材46等に固定したとしても均熱板42の載置面47の温度均一性に優れ、ウェハWの温度分布のバラツキがないウェハ加熱装置を提案することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のウェハ加熱装置は、板状セラミックス体の一方の主面に抵抗発熱体を備え、他方の主面にウェハ加熱面を備えた均熱板と、前記抵抗発熱体に電力を供給する給電端子と、該給電端子を囲むように均熱板と接続したケースと、該ケースを固定する支持部材と、前記ケースの外周面と支持部材の間に前記ケースの変形を防止するための応力吸収部材を備え、前記ケースは金属からなるとともに、固定された前記均熱板に対して略垂直な側面および略平行な底面を有する有底筒状に形成し、かつ、前記応力吸収部材がバネ材から成り、該バネ材のバネ定数を2〜15N/mmとしたことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1〜3を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るウェハ加熱装置1の一例を示す断面図であり、主に、均熱板2、ケース19、支持部材25とから形成されている。
【0017】
均熱板2は,炭化珪素または窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスからなる板状セラミックス体200の一方の主面を、ウェハWを載せる載置面3とするとともに、他方の主面に抵抗発熱体5を形成したものである。
【0018】
板状セラミックス体200の厚みは、2〜5mmとすることが好ましい。板状セラミックス体200の厚みが2mmより薄いと、板状セラミックス体200の強度がなくなり抵抗発熱体5の発熱による加熱時、ガス噴射口12から冷却エアーを吹き付けた際に、冷却時の熱応力に耐えきれず、板状セラミックス体200にクラックが発生する。また、板状セラミックス体200の厚みが5mmを越えると、板状セラミックス体200の熱容量が大きくなるので加熱および冷却時の温度が安定するまでの時間が長くなってしまい好ましくない。
【0019】
また逆に、板状セラミックス体200の厚みが小さく熱容量を小さくすると、有底のケース19からの熱引きにより均熱板2の温度分布が悪くなる。そこで、有底のケース19の開口部に均熱板2を設けることでケース19から均熱板2をできる限り遠ざけてケース19の外周部で保持される構造としている。
【0020】
なお、板状セラミックス体200を形成する炭化珪素質焼結体は、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤として硼素(B)と炭素(C)を添加したり、もしくはアルミナ(Al2O3)イットリア(Y2O3)のような金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工したのち、1900〜2100℃で焼成することにより得られる。炭化珪素はα型を主体とするものあるいはβ型を主体とするもののいずれであっても構わない。
【0021】
また、板状セラミックス体200を形成する窒化アルミニウム質焼結体は、主成分の窒化アルミニウムに対し、焼結助剤としてY2O3やYb2O3等の希土類元素酸化物と必要に応じてCaO等のアルカリ土類金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工した後、窒素ガス中1900〜2100℃で焼成することにより得られる。
【0022】
さらに、板状セラミックス体200の載置面3と反対側の主面には、ガラスや樹脂からなる絶縁層(不図示、以下同じ)が形成されており、この絶縁層との密着性を高める観点から、平面度20μm以下、面粗さを中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm〜0.5μmに研磨しておくことが好ましい。
【0023】
また、炭化珪素質焼結体を板状セラミックス体200として使用する場合、半導電性を有する板状セラミックス体200と抵抗発熱体5との間の絶縁を保つ絶縁層としては、ガラス又は樹脂を用いることが可能であり、ガラスを用いる場合、その厚みが100μm未満では耐電圧が1.5kVを下回り絶縁性が保てず、逆に厚みが400μmを越えると、板状セラミックス体200を形成する炭化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体との熱膨張差が大きくなり過ぎるために、クラックが発生して絶縁層として機能しなくなる。その為、絶縁層としてガラスを用いる場合、その厚みは100〜400μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは200μm〜350μmの範囲とすることが良い。
【0024】
一方、板状セラミックス体200を、窒化アルミニウムを主成分とする焼結体で形成する場合、板状セラミックス体200に対する抵抗発熱体5の密着性を向上させるため、上述と同様にガラスからなる絶縁層を形成する。ただし、抵抗発熱体5の中に十分なガラスを添加し、これにより十分な密着強度が得られる場合は、省略することが可能である。
【0025】
この絶縁層を形成するガラスの特性としては、結晶質又は非晶質のいずれでも良く、耐熱温度が200℃以上でかつ0℃〜200℃の温度域における熱膨張係数が板状セラミックス体200を構成するセラミックスの熱膨張係数に対し−5〜+5×10-7/℃の範囲にあるものを適宜選択して用いることが好ましい。即ち、熱膨張係数が前記範囲を外れたガラスを用いると、板状セラミックス体200を形成するセラミックスとの熱膨張差が大きくなりすぎるため、ガラスの焼付け後の冷却時においてクラックや剥離等の欠陥が生じ易くなるからである。
【0026】
なお、ガラスからなる絶縁層を板状セラミックス体200上に被着する手段としては、前記ガラスペーストを板状セラミックス体200の中心部に適量落とし、スピンコーティング法にて伸ばして均一に塗布するか、あるいはスクリーン印刷法、ディッピング法、スプレーコーティング法等にて均一に塗布したあと、ガラスペーストを600℃以上の温度で焼き付けすれば良い。また、絶縁層としてガラスを用いる場合、予め炭化珪素質焼結体又は窒化アルミニウム質焼結体からなる板状セラミックス体200を850〜1300℃程度の温度に加熱し、絶縁層を被着する表面を酸化処理しておくことで、ガラスからなる絶縁層との密着性を高めることができる。
【0027】
さらに、絶縁層上に被着する抵抗発熱体5材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等の金属単体を、蒸着法やメッキ法にて直接被着するか、あるいは前記金属単体や酸化レニウム(Re2O3)、ランタンマンガネート(LaMnO3)等の導電性の金属酸化物や上記金属材料を樹脂ペーストやガラスペーストに分散させたペーストを用意し、所定のパターン形状にスクリーン印刷法等にて印刷したあと焼付けして、前記導電材を樹脂やガラスから成るマトリックスで結合すれば良い。マトリックスとしてガラスを用いる場合、結晶化ガラス、非晶質ガラスのいずれでも良いが、熱サイクルによる抵抗値の変化を抑えるために結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0028】
ただし、抵抗発熱体5材料に銀(Ag)又は銅(Cu)を用いる場合、マイグレーションが発生する虞があるため、このような場合には、抵抗発熱体5を覆うように絶縁層と同一の材質からなるコート層を40〜400μm程度の厚みで被覆しておけば良い。
【0029】
抵抗発熱体5のパターン形状としては、略同心円状をしたものや渦巻き状をしたものなど、載置面3を均一に加熱できるパターン形状であれば良い。均熱性を改善するため、抵抗発熱体5を複数のパターンに分割することも可能である。またパターンの線幅や粗密を調整し、加熱電力密度に分布をつけて均熱性を改善しても良い。
【0030】
抵抗発熱体5には、金や銀、パラジウム、白金等の材質からなる給電部6が形成され、給電部6に給電端子11を接触させることにより、導通が確保されている。給電端子11と給電部6とは、導通が確保できる方法で有れば、はんだ付け、ロウ付け等の手法を用いてもよい。
【0031】
また、これまで、抵抗発熱体5を板状セラミックス体200の表面に形成するタイプのウェハ加熱装置1について説明してきたが、抵抗発熱体5は、板状セラミックス体200に埋設されていても構わない。
【0032】
例えば主成分が窒化アルミニウムからなる板状セラミックス体200を用いる場合、まず、抵抗発熱体5の材料としては窒化アルミニウムと同時焼成できる材料という観点から、WもしくはWCを用いる。板状セラミックス体200は、窒化アルミニウムを主成分とし焼結助剤を適宜含有する原料を十分混合したのち円盤状に成形し、その表面にWもしくはWCからなるペーストを抵抗発熱体5のパターン形状にプリントし、その上に別の窒化アルミニウム成形体を重ねて密着した後、窒素ガス中1900〜2100℃の温度で焼成することにより抵抗発熱体5が埋設された板状セラミックス体200を得ることが出来る。
【0033】
また、抵抗発熱体5からの導通は、窒化アルミニウム質基材にスルーホールを形成し、WもしくはWCからなるペーストを埋め込んだ後焼成するようにして表面に電極を引き出すようにすれば良い。また、給電部6は、ウェハWの加熱温度が高い場合、Au、Ag等の貴金属を主成分とするペーストを前記スルーホールの上に塗布し900〜1000℃で焼き付けることにより、内部の抵抗発熱体5の酸化を防止することができる。
【0034】
ケース19は主に金属で形成されているが、これに限定されるものではなく、樹脂等で形成しても良い。尚、金属で形成する場合、アルミニウム、SUS、超鋼等を用いることができる。また、ケース19は、側面22と底面23を有し、板状セラミックス体200は、その抵抗発熱体5が形成された面を覆うように有底のケース19に固定設置してある。また、有底のケース19には冷却ガスを排出するための孔24が施されており、板状セラミックス体200の抵抗発熱体5に給電するための給電部6に導通するための給電端子11,板状セラミックス体200を冷却するためのガス噴射口12、板状セラミックス体200の温度を測定するための測温素子10を設置してある。
【0035】
さらに、ケース19を金属で形成する場合、材質によっても異なるが、一般的なSUSの材質を用いる場合、ケース19の深さは10〜50mmで、ケース19の底面23は、均熱板2から10〜50mmの距離に設置することが望ましい。更に好ましくは20〜30mmである。これは、均熱板2とケース19との相互の輻射熱により載置面3の均熱化が容易となると同時に、外部との断熱効果があるので、載置面3の温度が一定で均熱となるまでの時間が短くなるためである。
【0036】
また、均熱板2には少なくとも3箇所の貫通孔が設けられ、ウェハのリフトピン14を上下させることにより、均熱板2へウェハを迅速に載置離脱がおこなえる。また、ウェハリフトピン14が均熱板2へ直接接触しないようにガイド部材15が設置されている。
【0037】
支持部材25は一体のリング状や分割された角形状に形成されており、材質としては炭素鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼等からなり、支持部材25の内面、特に底面でウェハ加熱装置1を支えている。
【0038】
本発明のウェハ加熱装置1は、図1に示すようにケース19を支持部材46に応力吸収部材17を介して保持することを特徴とする。応力吸収部材17としては、弾性を有する樹脂やゴムからなるものや、図2に示すようにコイル状や板状のバネ材を使用することが可能である。
【0039】
たとえば、ケース19を支持部材46に固定する際に、ナット20とボルト16の締めつけトルクを、ケース19が変形しない程度に調整し、中間支持部の微妙な反りや変形応力を応力吸収部材17により吸収して、均熱板2が変形しないようにしている。
【0040】
また、弾性を有する樹脂やゴム製の応力吸収部材17の形状は、円柱状、角柱状であっても構わないし、中実であっても内部に空隙を有していても構わない。ケース19が変形しない程度の締めつけトルクで、十分に変形できる程度の弾性を有しておれば良い。締めつけトルクとしては、20〜200cN・m程度で使用することが可能である。
【0041】
具体的には、樹脂としては、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ブチラール樹脂等を使用することができる。また、ゴムとしては、ポリブタジェンゴム、ブタジェンスチレンゴム、ブタジェンアクリロニトリルゴム、ポリクロロゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム等を使用することができる。また、バネ材としては、バネ鋼、ステンレス鋼、工具鋼、ステンレス鋼等からなるものを使用することが可能である。
【0042】
前記応力吸収部材17がないと、ケース19と支持部材46間の平行度不良があった場合、これにより、均熱板2が変形し、該均熱板2の載置面3に設置したウェハWの温度分布が目標値以下にならなくなってしまう。
【0043】
均熱板2の載置面3に載置したウェハWの温度分布を±0.5℃以下というようなレベルまで小さくするためには、均熱板2の平行度を100μm以下まで小さくする必要がある。ところが、上記支持部材46には、溶接等の処理を施す部分が多数あり、これらの部品の平行度を全て小さくするのは非常に難しい。上記のような平行度不良を緩和するためには、本発明の応力吸収部材17をケース19と支持部材46の間に形成することが好ましい。
【0044】
そして、前記応力吸収部材17を固定するネジ16の締めつけトルクは、ケース19に変形を生じない範囲に調整されており、かつその締めつけトルクによりそれぞれの部分で応力吸収部材17が十分弾性変形しなければならない。また、応力吸収部材17は、ケース19の外周部をリング状の連続体として形成される必要はなく、図4に示すようにネジ16の配置にしたがって複数用いても構わない。応力吸収部材17を用いることにより、金属ケースを固定する支持部材46の微妙な反りや変形を応力吸収部材17の変形により吸収し、これらの反りや変形が均熱板2に影響することを有効に防止することが可能となる。
【0045】
また、応力吸収部材17は、図1に示すように、ケース19と支持部材46の間にひとつの面で形成されていても構わないし、図2に示すように両者の2つの面に跨るように形成しても構わない。また、図3に示すように、応力吸収部材17としてバネ材を用いても構わない。
【0046】
ケース19は、固定された均熱板2に対して略垂直な側面および略平行な底面を有する有底筒状に形成するとともに、厚みが0.5〜5mmのアルミニウム、ステンレスや鋼等の金属からなるケース19は一般的に1〜10kgの重量であり剛性が大きいことから、これらの部材のケース19を支持部材46に固定した場合、応力吸収部材17のバネ定数は1.0〜20.0N/mmであるとケース19が変形することなくウェハW表面の温度を均一にすることができる。
【0047】
バネ定数が1.0N/mmを下回ると応力吸収部材17の変位が大きくウェハ加熱装置1が振動しウェハW表面の温度にバラツキが発生する虞があった。また、バネ定数が20.0N/mmを越えると、ケース19を応力吸収部材17を介して支持部材46に固定するとケース19が変形しウェハW表面の温度差が大きくなる。
従って、応力吸収部材17のバネ定数は1.0〜20.0N/mmがよく、更に好ましくは2〜15N/mmのものが用いられる。
【0048】
図5に示すように、ケース19と支持部材46の間に中間支持部21を設け、中間支持部21とケース19との間に応力吸収部材17を設けるようにしても構わないし、さらに、中間支持部21と支持部材46との間にも応力吸収部材17を設置するようにしても構わない。また、中間支持部21に剛性がなく、ケース19の変形に影響しない場合は、中間支持部21と支持部材46との間だけに応力吸収部材を設けても構わない。
【0049】
ウェハ加熱装置1の他の構成としては、有底のケース19内に昇降自在に設置されたウェハリフトピン14により、ウェハWを載置面3上に載せたり載置面3より持ち上げる作業がなされる。そして、ウェハWは、ウェハ支持ピン8により載置面3から浮かした状態で保持され、片当たり等による温度バラツキを防止するようにしている。
【0050】
また、このウェハ加熱装置1によりウェハWを加熱するには、搬送アーム(不図示)にて載置面3の上方まで運ばれたウェハWをウェハリフトピン14にて支持したあと、ウェハリフトピン14を降下させてウェハWを載置面3上に載せる。
【0051】
さらに、均熱板2を構成する板状セラミックス体200を炭化珪素質焼結体又は窒化アルミニウム質焼結体により形成する場合、ヤング率が200GPa以上と大きく熱を加えても変形が小さく、板厚を薄くできるため、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間及び所定の処理温度から室温付近に冷却するまでの冷却時間を短くすることができ、生産性を高めることができるとともに、板状セラミックス体200は60W/(m・K)以上の熱伝導率を有することから、薄い板厚でも抵抗発熱体5のジュール熱を素早く伝達し、載置面3の温度ばらつきを極めて小さくすることができる。
【0052】
また、抵抗発熱体5への給電方法については、有底のケース19に設置した給電端子11を板状セラミックス体200の表面に形成した給電部6にバネ(不図示)で押圧することにより接続を確保し給電する。これは、2〜5mmの厚みの板状セラミックス体200に金属からなる端子部を埋設して形成すると、該端子部の熱容量により均熱性が悪くなるからである。そのため、本発明のように、給電端子11をバネで押圧して電気的接続を確保することにより、均熱板2とそのケース19の間の温度差による熱応力を緩和し、高い信頼性で電気的導通を維持できる。さらに、接点が点接触となるのを防止するため、弾性のある導体を中間層として挿入しても構わない。この中間層は単に箔状のシートを挿入するだけでも効果がある。そして、給電端子11の給電部6側の径は、1.5〜5mmとすることが好ましい。
【0053】
また、均熱板2の温度は、板状セラミックス体200にその先端が埋め込まれた測温素子10により測定する。測温素子10としては、その応答性と保持の作業性の観点から、外径0.8mm以下のシース型の熱電対を使用することが好ましい。この測温素子10の先端部は、板状セラミックス体200に孔が形成され、この中に設置された固定部材により孔の内壁面に押圧固定することが測温の信頼性を向上させるために好ましい。同様に素線の熱電対やPt等の測温抵抗体を埋設して測温することも可能である。
【0054】
【実施例】
まず、窒化アルミニウム粉末に対し、重量換算で1.0質量%の酸化イットリウムを添加し、さらにイソプロピルアルコールとウレタンボールを用いてボールミルにより48時間混練することにより窒化アルミニウムのスラリーを製作した。
【0055】
次に、窒化アルミニウムのスラリーを200メッシュに通し、ウレタンボールやボールミル壁の屑を取り除いた後、防爆乾燥機にて120℃で24時間乾燥した。
【0056】
次いで、得られた窒化アルミニウム粉末にアクリル系のバインダーと溶媒を混合して窒化アルミニムのスリップを作製し、ドクターブレード法にて窒化アルミニムのグリーンシートを複数枚製作した。
【0057】
そして、得られた窒化アルミニムのグリーンシートを複数枚積層熱圧着にて積層体を形成した。
【0058】
しかる後、積層体を非酸化性ガス気流中にて500℃の温度で5時間脱脂を施した後、非酸化性雰囲気にて1900℃の温度で5時間の焼成を行い板状セラミックス体200を製作した。
【0059】
そして、窒化アルミニウムからなる板状セラミックス体200に研削加工を施し、板厚3mm、外径330mmの円盤状をした板状セラミックス体2を複数製作した。
【0060】
次いで板状セラミックス体200の上に抵抗発熱体5を被着するため、導電材としてAu粉末とPd粉末と、前記同様の組成からなるバインダーを添加したガラスペーストを混練して作製した導電体ペーストをスクリーン印刷法にて所定のパターン形状に印刷したあと、150℃に加熱して有機溶剤を乾燥させ、さらに550℃で30分間脱脂処理を施したあと、700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、厚みが50μmの抵抗発熱体5を形成した。抵抗発熱体5は直径方向に4分割しパターン配置は、中心部から1パターン、2パターン、4パターン、8パターンの計15パターン構成とした。しかるのち抵抗発熱体5に給電部6を導電性接着剤にて固着させることにより、均熱板2を製作した。
【0061】
また、有底のケース19は、直径330mmで底面を構成する厚み2.0mmのアルミニウムと側壁部を構成する厚み1.0mmのアルミニウムからなり、底面に、ガス噴射口12、測温素子10、給電端子7を所定の位置に取り付けた。また、ケース19の底面から均熱板2までの距離は20mmとした。その後、前記有底のケース19の開口部に、均熱板2を重ね、その外周部にボルト16を貫通させ、均熱板2と有底のケース19が直接当たらないように、SUS304からなるリング状の接触部材を介在させ、接触部材側より弾性体を介在させてネジ16とナット20を螺着し弾性的に固定した。
【0062】
そして、このようにして上記各部品を設置したケース19を標準となる評価装置の支持部材46に応力吸収部材17を介せずに載せ、均熱板2の載置面3に、外径が12インチで外径の1/3の半径6等配に6本、外径の2/3の半径の12等配に12本の測温素子を取り付けた測温用ウェハを載せて、測温用ウェハの温度分布が±0.3℃以内となることをそれぞれ確認した。
【0063】
また、均熱板2のケース19を設置する支持部材46の面の平坦度が58μm、121μm、255μmとなるものを準備し、応力吸収部材17なしに前記支持部材46に固定した場合、シリコンゴム製の厚み10mmの応力吸収部材17を介して前記支持部材46に固定した場合、ステンレス鋼からなるバネ材からなる応力吸収部材17を介して前記支持部材46に固定した場合の測温用ウェハの温度分布を測定した。
【0064】
また、図4に示したように応力吸収機構17を複数形成したものを作製して、平坦度が255μmである支持部材46にケース19を組みつけたウェハ加熱装置を作製して、同様に測温用ウェハの温度分布を測定した。
【0065】
さらに、図5に示したようにケース19と支持部材46との間に中間支持部21を設け、ケース19と中間支持部21の間に応力吸収機構17を設置し、平坦度が255μmである支持部材46に固定したウェハ加熱装置を作製して、同様に測温用ウェハの温度分布を測定した。
【0066】
また、ネジ16による締めつけトルクは、ケース19が変形しないように150cN/mmに固定して支持部材46にケース19を固定した。
【0067】
結果を、表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から判るように、応力吸収部材17を設置しなかったNo.1、4、7のうち、支持部材46の平坦度が100μmを越えるNo.4、7は、温度分布が±1.0℃を越えて大きくなった。これに対し、シリコンゴムやバネ材ならなる応力吸収部材17を設置したNo.2,3、5、6、8、9は、温度分布が変化せず、良好な温度分布を示した。
【0070】
また、応力吸収部材17を分割したNo.10も、同様に良好な温度分布を示した。支持部材46の反りや変形を応力吸収部材17の変形で吸収しやすくなるので、このように、応力吸収部材17を分割することは、有効である。
【0071】
さらに、ケース19と支持部材46の間に中間支持部21を形成し、ケース19と中間支持部21との間に応力吸収部材17を設置したNo.11も、温度分布が変化せず、良好な温度分布を示した。
【0072】
また、応力吸収部材17のバネ定数を変えた試料No.12〜17から、バネ定数が1〜20N/mmの試料No.13〜16はウェハ表面の温度分布が±0.3℃と小さく好ましいことが分った。
【0073】
しかし、バネ定数が0.5N/mmの試料No.12は温度分布が±0.6℃と大きかった。またバネ定数が30N/mmの試料No.17はウェハの温度分布が±1.2℃と大きかった。
【0074】
また、試料No.14、15から、更に好ましくはバネ定数2〜15N/mmであれば温度分布が±0.2℃と小さく好ましいことがわかる。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、ウェハ加熱面を備えた板状セラミックス体に抵抗発熱体が形成された均熱板と、該均熱板を固定するとともに前記均熱板の一方の主面を覆うケースと、該ケースの外周側を固定する支持部材とからなるウェハ加熱装置において、前記ケースと支持部材との間に前記ケースの変形応力を緩和させる応力吸収部材を備え、前記ケースは金属からなるとともに、固定された前記均熱板に対して略垂直な側面および略平行な底面を有する有底筒状に形成し、かつ、前記応力吸収部材がバネ材から成り、該バネ材のバネ定数を2〜15N/mmとしたことにより、金属ケースおよび板状セラミック体の変形を防止し、載置面に載置したウェハの温度差を小さくすることができる。
【0077】
また、前記応力吸収部材は、前記支持部材もしくは中間支持部と、金属ケースとの間に複数して設置することが、支持部材の平坦度のバラツキを応力吸収部材で吸収し易くなるので好ましい。
【0078】
このような応力吸収部材を用いることにより、金属ケースの変形を防止し、ウェハ加熱装置の載置面に載置したウェハの温度分布を小さくし、微細なパターンを有する半導体の製造に貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウェハ加熱装置を示す断面図である。
【図2】本発明のウェハ加熱装置に使用する応力吸収部材周辺の構造を示す部分断面図である。
【図3】本発明のウェハ加熱装置に使用する応力吸収部材周辺の構造を示す部分断面図である。
【図4】本発明のウェハ加熱装置に使用する応力吸収部材の設置例を示す平面図である。
【図5】本発明のウェハ加熱装置に使用する応力吸収部材周辺の構造を示す部分断面図である。
【図6】従来のウェハ加熱装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1、41:ウェハ加熱装置
2、42:均熱板
200:板状セラミックス体
3、47:載置面
5、43:抵抗発熱体
6:給電部
8:支持ピン
10:測温素子
11:給電端子
12:ガス噴射口
14、45:リフトピン
15:ガイド部材
16:ボルト
17:応力吸収部材
18:弾性体
19、44:金属ケース
20:ナット
21:中間支持材
22:側面
23:底面
46:支持部材
W:半導体ウェハ
Claims (1)
- ウェハ加熱面を備えた板状セラミックス体に抵抗発熱体が形成された均熱板と、該均熱板を固定するとともに前記均熱板の一方の主面を覆うケースと、該ケースの外周側を固定する支持部材とからなるウェハ加熱装置において、前記ケースと支持部材との間に前記ケースの変形応力を緩和させる応力吸収部材を備え、前記ケースは金属からなるとともに、固定された前記均熱板に対して略垂直な側面および略平行な底面を有する有底筒状に形成し、かつ、前記応力吸収部材がバネ材から成り、該バネ材のバネ定数を2〜15N/mmとしたことを特徴とするウェハ加熱装置。
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