JP3924496B2 - ノギス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノギスに関する。
【0002】
【背景技術】
被測定物の被測定部位の長さを測定する測定器としてノギスが知られている。このノギスは、一方の測定ジョーを有する本尺と、この本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される測定ジョーを有するスライダとを備えて構成されている。
このようなノギスにおいては、測定精度を維持でき、かつ、本尺とスライダの摺動に耐える素材で構成されることが望ましい。そこで、一般に、ノギスの本尺およびスライダは、線膨張係数が小さく、かつ、耐摩耗性を備える熱処理された金属(例えば、ステンレスなど)で形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属を所望の形態に機械加工するには、大変な時間と費用を必要とする。さらに、本尺とスライダの摺動性を良好にするためには、ラッピング加工などによって本尺とスライダとの摺動面の仕上がりを精密にしなければならない。このように多くの精密加工を経て製造されるため、生産ラインの複雑化や高コストなどの問題が生じる。
【0004】
測定精度を維持するためには、線膨張を一定の範囲内に抑える必要がある。そこで、従来のノギスでは測定条件として、例えば、温度を20±10度に制限することによって線膨張による誤差を抑えている。しかしながら、高温や低温など過酷な測定環境においては、線膨張による測定誤差を生じるという問題がある。
ノギスは手で握って操作する測定器である。そのため、手の熱による温度分布によって線膨張の差異が生じ、測定誤差に繋がりやすいという問題がある。
【0005】
ノギスのように本尺とスライダの摺動機構を備えている場合、やはり、繰り返しの使用により摩耗するという問題がある。さらに、滑らかな摺動を維持するためには潤滑剤などを使用しなければならないが、潤滑剤などを使用した場合には、ゴミなどが付着しやすいという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、従来の問題を解消し、簡便に製造でき、測定精度が向上され、かつ、耐用年数が長いノギスを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のノギスは、一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、前記本尺の長手方向に沿って設けられた本尺目盛と、前記スライダに設けられ前記本尺目盛に対して補助目盛となるバーニア目盛とが設けられ、前記本尺目盛および前記バーニア目盛の少なくともいずれか一方は、これが設けられる前記本尺または前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成されていることを特徴とする。
【0008】
一般に合成樹脂は、脆弱で線膨張率が大きいものであるが、ナノスケール物質(例えば、カーボンナノファイバ)を合成樹脂の母材(例えば、ポリスチレン)に添加し、適宜諸条件を設定することにより、剛性の強化、線膨張の抑制、耐摩耗性能の向上、摩擦係数の低下、熱伝導率の向上などの効果が得られる。この理由は正確には分かっていないが、ナノスケール物質が合成樹脂内でネットワークを築くことに基づくとされている。
【0009】
よって、本尺やスライダをナノスケール物質を含む合成樹脂で形成すれば、線膨張係数を小さくすることが可能なので、線膨張による誤差を排除し精密な測定を行うことができる。線膨張係数が小さければ、測定の温度に制限を受けることなく高温や低温など過酷な条件でも精密な測定を行うことができる。
【0010】
摩擦係数が小さいことから、本尺とスライダとの摺動性がよく、潤滑剤なしでも使用できる。よって、汚れやゴミがつきにくいものとできる。耐摩耗性能が向上することから、本尺とスライダを繰り返し摺動させても摩耗することがなく、測定精度を維持することができる。
熱伝導率がよいことから、本尺を手で握って測定する場合でも手の熱が瞬時に拡散し、場所による膨張の差異を生じることがない。よって、手で握って使用しても、手の熱による測定誤差を生じることがなく、精密な測定を行うことができる。
【0011】
剛性が強化されることから、本尺およびスライダを薄型化、小型化することも可能である。
合成樹脂であるのでノギスを軽いものとすることができる。合成樹脂であるので、金属に比べて手になじみやすく金属アレルギーなどの心配もない。
ここで、本尺およびスライダの両方をナノスケール物質を含む合成樹脂で形成してもよく、また、本尺およびスライダのいずれか一方がナノスケール物質を含む合成樹脂で形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明によれば、本尺およびスライダを射出成形する際に、同時に目盛(本尺目盛、バーニア目盛 ) も射出成形によって設けることができる。よって、目盛を形成する工程を省くことができる。その結果、ノギスを簡便に製造することができ、コストを削減することができる。
従来は、本尺およびスライダを形成した後に、レーザーマーキングなどの方法により目盛を設けていたが、カーボンナノスケール物質を含んだ合成樹脂の転写性能を利用することにより、本尺およびスライダの射出成形時に目盛も形成することができる。カーボンナノスケール物質は、型転写性が良いので、精密な目盛を形成することができ、測定精度を向上させることができる。
【0013】
本尺およびスライダをナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成すれば、機械加工を必要としないので、簡便に製造することができる。よって、生産ラインや製造工程を簡素化することができ、コストを低くすることができる。
ナノスケール物質を含んだ合成樹脂は、成形性能に優れ、型からの転写性がよく、射出成形であっても精密な成形ができる。よって、簡便な製造方法でありながら、測定精度を向上させることができる。本尺とスライダの摺動面を射出成形後に表面仕上げする必要もなく、簡便であり、低コストで製造することができる。
【0014】
本発明のノギスは、一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、前記スライダは、前記本尺の長手に対して直交する方向の両端面を挟持する一対の挟持部と、前記挟持部のいずれか一方から前記本尺に押圧力を与える押圧力付与部材とを備え、前記押圧力付与部材は、前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって一体形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、スライダの挟持部が本尺の長手を挟持することによって、スライダは本尺の長手に沿って摺動自在となる。挟持部の一方に設けられた押圧力付与部材から本尺に押圧力が付与されることにより、挟持部の他方が本尺に密接され、スライダと本尺との間のがたをなくす。この押圧力付与部材がスライダとともに一体形成されているので、スライダの製造工程、組立工程が簡便となり、製造コストを削減することができる。
押圧力付与部材としては、例えば、スライダと本尺の間で、一端が挟持部に一体的に結合され、他端が本尺の方へわずかに突き出し本尺の長手と略平行に設けられた薄片のようなものでよい。
ナノスケール物質を含んだ合成樹脂に弾力を付与することができるので、この押圧力付与部材に板ばねとしての機能を発揮させることができる。よって、スライダと本尺の間に押圧機構として別個に板ばねなどを設ける必要がなくなる。その結果、部品点数が削減され、低コスト化を図ることができる。
ナノスケール物質を含んだ合成樹脂は、摺動性、耐摩耗性に優れているので、潤滑剤も必要なく、また、耐用年数も長いノギスとすることができる。
【0016】
本発明のノギスは、一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、前記スライダは、内部に電気回路を有するケース体を備え、前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、前記ケース体は、導電性を有することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂で形成された導電性を有するケース体に電気回路を収納すると、このケース体が電磁シールドとなる。よって、内部の電気回路を外部磁界および外部電界から遮蔽することができる。その結果、電気回路の損傷や誤作動を防止することができ、測定精度を精密に保つことができる。
【0018】
本発明のノギスは、一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、前記本尺の長手方向に沿って設けられた本尺目盛と、前記スライダに設けられ前記本尺目盛に対して補助目盛となるバーニア目盛とが設けられ、前記本尺目盛および前記バーニア目盛の少なくともいずれか一方は、これが設けられる前記本尺または前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成され、前記スライダは、内部に電気回路を有するケース体を備え、前記ケース体は、前記本尺の長手に対して直交する方向の両端面を挟持する一対の挟持部と、前記挟持部のいずれか一方から前記本尺に押圧力を与える押圧力付与部材とを備え、前記押圧力付与部材は、前記ケース体とともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって一体成形され、前記ケース体は、導電性を有することを特徴とする。
【0019】
本発明では、前記本尺は、長手方向に沿って導電部と非導電部が交互に形成された電極パターンを備え、前記電極パターンは、ナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成されていることが好ましい。
【0020】
ナノスケール物質を添加し、適宜諸条件を設定することにより、合成樹脂に導電性または絶縁性を付与することができる。そこで、例えば、本尺をナノスケール物質を含む合成樹脂で絶縁体として射出成形した後、さらに、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂で導電性を有する電極を二重成形してもよい。すると、電極パターンを簡便に、かつ、低コストで製造することができる。本尺とは別個に形成した電極パターンを貼り付ける場合に比べて、本尺に電極パターンに直接設ける構成であれば、電極が剥離したり、電極にそりが生じることがないので、測定精度を精密に保つことができる。
【0021】
本発明では、前記一方の測定ジョーおよび前記他方の測定ジョーの少なくともいずれか一方は、これを有する前記本尺または前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成されていることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、本尺およびスライダを射出成形する際に、同時に本尺の測定ジョーおよびスライダの測定ジョーを本尺、スライダとともに一体成形することができる。よって、ノギスを簡便に製造することができ、コストを削減することができる。
ナノスケール物質を含んだ合成樹脂は、剛性が強化される。よって、剛性を保ったまま測定ジョーを薄く細くすることができる。よって狭い被測定部位でも測定できるノギスとすることができる。また、カーボンナノスケール物質を含んだ合成樹脂で形成されることにより、測定ジョーの剛性が増すので、測定ジョーを被測定物に当接させた場合でも測定ジョーがしなるなどの変形を生じないので、測定精度を向上させることができる。
【0024】
以上において、前記ナノスケール物質は、カーボンナノファイバまたはカーボンナノチューブに代表されるカーボンナノスケール物質のいずれかであることが好ましい。
【0025】
カーボンナノスケール物質とは、カーボンナノファイバを代表として、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素原子によって構成されるナノスケール物質を意味する。このようなカーボンナノスケール物質を合成樹脂(例えば、ポリスチレン)などの母材に添加し、適宜諸条件を設定することにより、剛性の強化、線膨張の抑制、耐摩耗性能の向上、摩擦係数の低下、熱伝導率の向上などの効果が得られる。その他、導電性、絶縁性を付与することもできる。よって、このようなカーボンナノスケール物質を含んだ合成樹脂を用いて、ノギスの構成部材、例えば、本尺、スライダ、測定ジョー等を形成することにより、ノギスの性能を向上させることができる。合成樹脂であるので、射出成形によって成形することができる。その結果、製造工程を簡略化することができ、低コスト化に繋げることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
(第1実施形態)
図1に、本発明のノギスの第1実施形態として目盛式のノギスを示す。
このノギス1は、本尺11と、本尺11の長手に沿ってスライド可能に設けられたスライダ12とを備えて構成されている。
本尺11は、長手の一端側に設けられた外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112と、本尺の表面に長手に沿って設けられた本尺目盛113とを備えて構成されている。
本尺11は、外側用測定ジョー111、内側用測定ジョー112および本尺目盛113を含めてナノスケール物質としてカーボンナノファイバを含んだポリスチレンによる合成樹脂によって一体成形されている。この成形は射出成形によって形成されたものである。
【0027】
スライダ12は、スライダ本体121と、このスライダ12の一端側に設けられ本尺11の外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112とともに被測定物の被測定部位に当接される外側用測定ジョー122および内側用測定ジョー123と、本尺目盛113に対して補助目盛となるバーニア目盛124と、スライダ12とともに移動して本尺11の他端側に進退するデプスバー125と、スライダ12と本尺11との間で本尺11の長手を押圧する板ばね部126(図2参照)とを備えて構成されている。
【0028】
図2に、スライダ12を摺動方向に沿って断面した(スライスした)断面図を示す。
図2において、スライダ12は、本尺11を摺動方向に対して直角方向から挟みこむ一対の挟持部121A、121Bを備え、挟持部の一方側121Bには一端がスライダ12に一体的に連結され他端が本尺11に向かってわずかに突き出し摺動方向と略平行に設けられた押圧力付与部材としての板ばね部126が形成されている。この板ばね部126による一方の挟持部121Bから本尺11への押圧力によって、他方の挟持部121Aが本尺11に密接する構成となる。
このスライダ12は、スライダ本体121、外側用測定ジョー122および内側用測定ジョー123、バーニア目盛124、デプスバー125、板ばね部126とを含んで、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって一体成形されている。この成形は射出成形によって形成されたものである。
【0029】
このような構成によれば、次の効果を奏することができる。
(1)本尺11およびスライダ12は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成されているので、剛性の強化、線膨張の抑制、耐摩耗性能の向上、摩擦係数の低下、熱伝導率の向上、導電性または絶縁性の付与などの効果がある。
(2)剛性が強化されることから、測定ジョー(本尺11の外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112、スライダ12の外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112)を剛性を保ちつつ薄く形成することができる。よって、狭い被測定部位であっても測定することができる。測定ジョーの剛性が向上すれば、被測定物に測定ジョーを当接させた場合でも、しなりなどの変形を生じることがなく、測定精度を向上させることができる。
【0030】
(3)線膨張係数が小さいので、線膨張による本尺11の変形を抑えることができる。よって、精密な測定を行うことができる。線膨張係数が小さいので、測定の温度に制限を受けることなく高温や低温などの周囲の環境に影響されることなく精密な測定を行うことができる。
【0031】
(4)耐摩耗性能が向上することから、スライダ12を本尺11に対して繰り返し摺動させても磨耗することがなく、耐用年数が長く、かつ測定精度を長きに渡って維持することができる。
【0032】
(5)摩擦係数が小さいことから、本尺11とスライダ12の摺動性がよく、潤滑剤なしで使用できる。よって、汚れやゴミがつきにくいものとできる。
(6)熱伝導率がよいことから、本尺11を手で握って測定する場合でも手の熱が瞬時に全体に拡散し、本尺11の場所による膨張の差異を生じることがない。よって、手の熱による測定誤差を生じることがなく、精密な測定を行うことができる。
【0033】
(7)本尺11およびスライダ12が共に合成樹脂で形成されているので、ノギス1を軽いものとすることができる。よって、持ち運びやすく、操作性に優れたものとできる。合成樹脂であるので、金属に比べて、本尺11を握ったときに手になじみやすく、金属アレルギーなどの心配もない。
(8)射出成形によって形成することができるので、ノギス1の製造が簡便であり、低コストで生産することができる。この際、カーボンナノファイバを含む合成樹脂は、型転写性が良いので、射出成形の後に機械加工や表面加工を施す必要がなく簡便である。
【0034】
(9)本尺11の本尺目盛113およびスライダ12のバーニア目盛124を本尺11、スライダ12とともに射出成形で形成するので、簡便であり、低コストでノギス1を製造することができる。
(10)板ばね部126が設けられているので、スライダ12と本尺11のがたを防止することができる。この板ばね部126が、スライダ12と一体形成されているので、別個にスライダ12と本尺11との間に押圧機構などを設ける必要がなく、部品点数の削減によりコストを削減することができる。また、カーボンナノファイバを含む合成樹脂は、摺動性に優れているので、板ばね部126と本尺11との間に潤滑剤などを用いる必要もない。
【0035】
(第2実施形態)
図3に、本発明のノギスの第2実施形態としてデジタル式のノギス2を示す。基本的な構成は第1実施形態と同様であるが、第2実施形態が第1実施形態と異なるのは次の点である。
本尺11には、長手に沿って静電容量式のメインスケール114が設けられている。このメインスケール114は、電極パターンとして導電部114Aと絶縁部114Bが本尺11の長手に沿って所定のピッチで形成されている。絶縁部114Bは、本尺11自体であり、すなわち、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で本尺11が絶縁体として形成されたものである。導電部114Aは、本尺11を射出成形した後、カーボンナノファイバを含む合成樹脂で導電性が付与されたものが、本尺11の上に二重成形されたものである。
【0036】
スライダ12は、メインスケール114の電極パターンと静電結合してメインスケール114に対する相対移動量を検出する検出ヘッド(不図示)と、スライダ12の内部に設けられ検出ヘッドからの検出値を演算処理する電気回路(不図示)と、演算処理された結果を表示する表示部127とを備えて構成されている。スライダ12は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成され導電性を有する。ここで、スライダ本体121が電気回路のケース体となる。
【0037】
このような構成によれば、第1実施形態の効果(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(10)と同様の効果に加えて、次の効果を奏することができる。
(11)スライダ本体121が導電性を有するので、スライダ12が電磁シールドとなり、内部の電気回路が外部の磁界および電界から遮蔽される。その結果、スライダ12内部の電気回路が保護されるので、破損や誤作動を防ぐことができ、測定精度を精密に保つことができる。
(12)メインスケール114の電極パターンを、直接本尺11に形成している。つまり、ナノスケール物質を含む合成樹脂で絶縁体として本尺11を射出成形した後、さらに、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂で導電性を有する電極を二重成形している。よって、電極パターンを簡便に、かつ、低コストで製造することができる。さらに、本尺11とは別個に形成した電極パターンを貼り付ける場合に比べて、電極が剥離したり、電極にそりが生じることがなく、測定精度を精密に保つことができる。
【0038】
(13)スライダ12は導電性を有しているので、スライダ12と本尺11との間に静電気が帯電することがなく、メインスケール114および検出ヘッドの破損や誤作動を防止することができる。帯電を防ぐことにより、静電気によるゴミの付着なども防ぐことができる。その結果、測定精度を精密に保つことができる。
【0039】
尚、本発明のノギスは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態においては、本尺11およびスライダ12の両方をカーボンナノファイバを含む合成樹脂で形成したが、いずれか一方のみがカーボンナノファイバを含む合成樹脂で形成されてもよい。カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂は、剛性、成形性能、線膨張、耐磨耗性、摺動性等について高性能な性質を備えているので、本尺11およびスライダ12のいずれか一方がカーボンナノファイバを含む合成樹脂である場合であっても、ノギス1、2の性能は測定精度、耐用年数など種々の点で向上する。
【0040】
第1実施形態において、本尺11は、外側用測定ジョー111、内側用測定ジョー112および本尺目盛113を含めて一体として形成されているが、必ずしもこれらをすべて一体として形成する必要はない。例えば、本尺目盛113は、本尺11を射出成形した後にレーザーマーキングなどで形成されてもよい。カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂は、金属的な剛性を備えているので、射出成形の後に機械加工することができるからである。
【0041】
ナノスケール物質としては、カーボンナノファイバに限らず、カーボンナノチューブ、フラーレンなど炭素を主要構成要素とするナノスケール物質を用いることができる。
合成樹脂の母材としては、ポリスチレンやポリカーボネイトなどを用いることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明のノギスによれば、簡便に製造でき、測定精度が向上され、かつ、耐用年数が長くなるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のノギスの第1実施形態を示す図である。
【図2】 前記第1実施形態において、スライダを摺動方向に沿って断面した図である。
【図3】本発明のノギスの第2実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1、2 ノギス
11 本尺
12 スライダ
111 外側用測定ジョー
112 内側用測定ジョー
113 本尺目盛
114 メインスケール(電極パターン)
114A 導電部
114B 絶縁部
121 スライダ本体(ケース体)
121A、121B 挟持部
122 外側用測定ジョー
123 内側用測定ジョー
124 バーニア目盛
126 板ばね部(押圧力付与部材)

Claims (7)

  1. 一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、
    記本尺の長手方向に沿って設けられた本尺目盛と、前記スライダに設けられ前記本尺目盛に対して補助目盛となるバーニア目盛とが設けられ、
    前記本尺目盛および前記バーニア目盛の少なくともいずれか一方は、これが設けられる前記本尺または前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成されていることを特徴とするノギス。
  2. 一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、
    前記スライダは、前記本尺の長手に対して直交する方向の両端面を挟持する一対の挟持部と、
    前記挟持部のいずれか一方から前記本尺に押圧力を与える押圧力付与部材とを備え、
    前記押圧力付与部材は、前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって一体成形されていることを特徴とするノギス。
  3. 一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、
    前記スライダは、内部に電気回路を有するケース体を備え、
    前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され
    前記ケース体は、導電性を有することを特徴とするノギス。
  4. 一方の測定ジョーを有する本尺と、前記本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される他方の測定ジョーを有するスライダとを備えたノギスにおいて、
    前記本尺の長手方向に沿って設けられた本尺目盛と、前記スライダに設けられ前記本尺目盛に対して補助目盛となるバーニア目盛とが設けられ、
    前記本尺目盛および前記バーニア目盛の少なくともいずれか一方は、これが設けられる前記本尺または前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成され、
    前記スライダは、内部に電気回路を有するケース体を備え、
    前記ケース体は、前記本尺の長手に対して直交する方向の両端面を挟持する一対の挟持部と、
    前記挟持部のいずれか一方から前記本尺に押圧力を与える押圧力付与部材とを備え、
    前記押圧力付与部材は、前記ケース体とともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって一体成形され、
    前記ケース体は、導電性を有することを特徴とするノギス。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のノギスにおいて、
    前記本尺は、長手方向に沿って導電部と非導電部が交互に形成された電極パターンを備え、
    前記電極パターンは、ナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成されていることを特徴とするノギス。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のノギスにおいて、
    前記一方の測定ジョーおよび前記他方の測定ジョーの少なくともいずれか一方は、これを有する前記本尺または前記スライダとともにナノスケール物質を含む合成樹脂の射出成形によって形成されていることを特徴とするノギス。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のノギスにおいて、
    前記ナノスケール物質は、カーボンナノファイバまたはカーボンナノチューブに代表されるカーボンナノスケール物質のいずれかであることを特徴とするノギス。
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