JP3924121B2 - リジェネレイティブバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリジェネレイティブバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法に関する。さらに詳しくは、燃焼負荷(ターンダウン比)を従来より大幅に下げることができ、しかも熱効率がよく、炉温のハンチングも生じないリジェネレイティブバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続焼鈍炉、熱処理炉など比較的高温の加熱帯において、炉内加熱用のヒータとして、近年では省エネルギーの観点から、蓄熱型熱交換器を内蔵するラジアントチューブタイプのリジェネレイティブバーナ(以下、リジェネバーナという)が用いられている。このリジェネバーナは、蓄熱体を有する一対のバーナを備え、バーナを交互に燃焼させることにより、一方のバーナの燃焼によって生じる排気ガスの熱を他方のバーナの蓄熱体によって回収するものである。
【0003】
一般的なラジアントチューブタイプのリジェネバーナは、ラジアントチューブと、該ラジアントチューブの両端に設けられた、蓄熱体を有する一対のバーナと、該一対のバーナにそれぞれ接続された一対の燃焼通気用切替弁およびガス切替弁とから構成されている。
【0004】
一対の燃焼通気用切替弁およびガス切替弁を所定の時間間隔(20〜30秒程度)ごとに切り替えることにより、一方の燃焼を行なうバーナに大気および燃料ガスを導入させ、他方の燃焼していないバーナを通して排気および蓄熱を行なうことができる。
【0005】
このようなリジェネバーナを備えた熱処理炉の炉内温度を制御する方法として、従来より、2つの制御方法が知られている。
【0006】
まず、第1の制御方法として、ガスの流量制御弁などを用い、バーナの燃焼量を連続的に変化させる、いわゆる流量(圧力)制御と呼ばれる方法がある。たとえば、図5に示されるように、投入するガス量を半分にすることにより、燃焼負荷を50%程度に下げることができ(図5(a)参照)、さらに、燃焼負荷を下げることにより、最低で約20%程度の負荷まで下げることができる(図5(b)参照)。
【0007】
第2の制御方法は、特開平10−141614号公報に記載された方法であり、交番燃焼の燃焼期間内に、ラジアントチューブからの排気を行なわない燃焼停止時間を必要に応じて設けて燃焼時間と燃焼停止時間との割合を負荷に応じて調整することにより炉温を制御する方法である。たとえば、図6(a)に示される100%燃焼時には、一方のバーナの燃焼時間Aと他方のバーナの燃焼時間Bとが休みなく交互に燃焼するが、図6(b)に示される50%燃焼時には、燃焼時間AおよびBは50%程度になり、残りの時間は燃焼停止時間Cになる。さらに燃焼時間を下げることにより、図6(c)に示されるように、最小で約10%燃焼時まで下げることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来2つの燃焼制御方法は、いずれもターンダウン比を5%未満とすることは事実上困難である。流量制御による炉温制御の場合は、バーナ単体の性能から、ターンダウン比は20%程度が限度であり、一方、時間比例制御を用いた場合は、交番燃焼の燃焼期間内を2秒以下にすることは火炎の安定性確保の観点から困難であり、交番燃焼時間を20秒とした場合はターンダウン比が10%程度になり、30秒とした場合はターンダウン比を7%程度まで下げるのが限界である。
【0009】
本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、燃焼負荷を従来より大幅に下げることができ、しかも熱効率がよく、炉温のハンチングも生じないリジェネレイティブバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかわるリジェネバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法は、前記リジェネバーナの一対のバーナのそれぞれの燃焼時間を短くして時間比例炉温制御を行ない、
所定の燃焼負荷になったときに、前記一対のバーナに供給されるガスの流量を所定の上限値まで下げ、前記所定の燃焼負荷よりも小さい燃焼負荷に対しては、前記所定の上限値を維持しつつ燃焼時間を短くする時間比例炉温制御を行なう際に、前記ガスの流量の所定の上限値が、20〜50%に設定され、前記燃焼時間を短くする時間比例炉温制御における最低の燃焼時間が、2〜15秒に設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項にかかわるリジェネバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法は、前記リジェネバーナの一対のバーナのそれぞれの燃焼時間を短くして時間比例炉温制御を行ない、
所定の燃焼負荷になったときに、当該所定の燃焼負荷になったときの燃焼時間を維持しつつ前記一対のバーナに供給されるガスの流量を下げる流量制御に切り換える炉温制御を行なう際に、前記所定の燃焼負荷になったときの燃焼時間が、2〜15秒に設定され、前記所定の燃焼負荷になったときの燃焼時間を維持しつつ前記一対のバーナに供給されるガスの流量を下げる流量制御における最低のガス流量が20〜50%に設定されていることを特徴とする。
【0018】
なお、本発明でいう燃焼負荷とは、設計上の燃焼カロリーに対する現実の燃焼カロリーの百分率である。
【0019】
【発明の実施の形態】
つぎに図面を参照しながら、リジェネバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法をさらに詳細に説明する。図1は本発明のリジェネバーナの炉温制御方法を示す燃焼負荷の変化を示す説明図、図2は図1の流量制御を行なうための構成の一例を示す概略説明図、図3は図1の流量制御を行なうための構成の他の例を示す概略説明図および図4は本発明の炉温制御方法が適用されるリジェネバーナの断面説明図である。
【0020】
本発明の炉温制御方法が適用されるリジェネバーナとして、たとえば、図4に示されるプル方式のリジェネバーナ21は、加熱炉内部に設けられたU字状のラジアントチューブ1と、ラジアントチューブ1の両端に設けられた、蓄熱体7を有する一対のバーナ2、3と、ガス管6からバーナ2、3へのガスの供給および遮断を行なう一対のガス切替弁4、5と、一対のバーナ2、3にそれぞれ接続された燃焼通気切替用の三方弁9、10と、三方弁9、10の排気路13に設けられた排気用ブロア14とから構成されている。
【0021】
図4のプル方式のリジェネバーナ21は、排気用ブロア14により、ラジアントチューブ1内部の圧力を負圧にすることで、各バーナ2、3に取り付けられた個々の三方弁9、10の吸気路11を介して燃焼空気をラジアントチューブ1内部に供給することができる。このようなプル方式では、熱処理炉内部の材料を熱処理するのに必要な燃焼ガス量がバーナ2、3に供給され、また燃焼空気が投入されたガス量に応じて適正なガスと空気の比率となるように排気用ブロア14直前の圧力が調整される。
【0022】
図4の蓄熱体7としては、アルミナ小口径ボールまたは通気性を有するハニカム構造のセラミックスなどが採用される。
【0023】
また、図4のリジェネバーナにおいて、一対のバーナ2、3は、一方のバーナ2において、ガス管6から供給されるガスを三方弁9の吸気路11を通して導入された空気と混合させてラジアントチューブ1内部で燃焼させてチューブ1の加熱を行なう。燃焼により発生した排気ガスは、チューブ1内部を通って他方のバーナ3の蓄熱体7を通過し、そのときに排気ガスの熱は蓄熱体7を昇温させるのに用いられる。一対のバーナ2、3の燃焼は、20〜30秒程度ごとに交互に行なわれ、その結果、ラジアントチューブ1を、ほぼ一様の温度で加熱することができ、ラジアントチューブの寿命を向上することができる。なお、15はバーナ2、3の点火を行なうためのパイロットバーナである。
【0024】
以上のように構成されたリジェネバーナを備えた熱処理炉の炉温制御を行なう場合、図1(a)〜(c)に示されるようになる。まず、通常動作の場合(図1(a)参照)では、一対の前記バーナ2、3は、100%の燃焼負荷(ターンダウン比)で交互に所定の燃焼時間A、Bで燃焼する。
【0025】
ついで、それぞれのバーナ2、3の燃焼時間A、Bを短くして時間比例炉温制御を行なう。たとえば、図1(b)には、60%燃焼時の状態が示されており、燃焼時間A、Bのあいだに非燃焼時間Cがある。
【0026】
ついで、図1(c)に示されるように、時間比例制御により所定の燃焼時間(2〜15秒程度)まで下げたとき、前記一対のバーナ2、3に供給されるガスの流量を所定の上限値(20〜50%程度)まで下げる。たとえば、図1(c)では、50%の燃焼負荷のときにガスの流量を上限値(50%)に下げている。
【0027】
所定の燃焼時間は、安定した火炎を形成するという観点から2〜15秒程度に設定される。
【0028】
ガスの流量の所定の上限値は、火炎の失火防止という観点から20〜50%程度に設定される。
【0029】
さらに、図1(d)に示されるように、前記所定の燃焼負荷よりも小さい燃焼負荷に対しては、前記所定の燃焼上限値を維持しつつ燃焼時間A、Bを短縮することにより、従来より非常に小さい燃焼負荷(2〜3%程度)まで炉温制御を行なうことができる。
【0030】
以上のように、時間比例制御において、所定の燃焼負荷(たとえば、50%負荷)以下になったタイミングで各バーナ2、3の交番切替燃焼時の最大負荷の上限値を設けることにより、ターンダウン比の下方弾力性を確保し、ターンダウン比を大幅に下げることができる。
【0031】
また、前記図1(c)では、所定の燃焼負荷(50%)になったときに、ガスの流量を50%に下げるとともに燃焼時間が100%に戻り、時間比例制御を行なっているが、他の制御方法として、所定の燃焼負荷になったときに、当該所定の燃焼負荷なったときの燃焼時間を維持しつつ前記一対のバーナ2、3に供給されるガスの流量を下げる流量制御に切り換えてもよい。この場合も前述と同様に従来より非常に小さい燃焼負荷まで炉温制御を行なうことができる。
【0032】
一般的には、時間比例制御のみでは、最大燃焼時間が20秒で最低燃焼時間は2秒であるため、最小ターンダウン比が2/20=10%である。一方、流量制御では、最小ターンダウン比は、20%である。したがって、本発明の炉温制御方法では、これら時間比例制御および流量制御の相乗効果により、理論的には、最小ターンダウン比は2%まで下げることができる。
【0033】
ガスの流量制御は、プル方式の場合には、たとえば以下の方法で行なうことができる。
【0034】
供給ガスは、図2に示されるように、供給ガス圧力にて調整し、複数のリジェネバーナ21からなるゾーンにガスを供給するためのガス管6に圧力調整弁22および圧力計23を設ける。それにより、ある特定のゾーンの燃焼負荷が所定の値(たとえば50%)を下回った場合に、供給するガス量の上限値を圧力調整弁22によって設定し、時間比例制御を継続させるようになっている。
【0035】
燃焼空気は、図3に示されるように、排気ガス圧力にて調整し、排気路13に圧力調整弁24および圧力計25を設ける。それにより、ある特定のゾーンの燃焼負荷が所定の値(たとえば50%)を下回った場合に、排気管13内部の圧力の設定を変更し、吸気する燃焼空気量と相間のある排気する排ガス量に上限値を設けるようになっている。
【0036】
また、本発明の炉温制御方法の他の実施の形態として、最初に前記一対のバーナ2、3に供給されるガスの流量を下げて流量制御を行ない、所定の燃焼負荷(20〜50%程度)になったときに、一対のバーナ2、3のそれぞれの燃焼時間を所定の上限値(2〜15秒程度)まで下げ、前記所定の燃焼負荷よりも小さい燃焼負荷に対しては、前記所定の上限値を維持しつつガスの流量を下げる流量制御を行なってもよい。この制御方法でも、前述と同様に、時間比例制御および流量制御の相乗効果により、理論的には、最小ターンダウン比率は2%まで下げることができる。
【0037】
この方法における所定の燃焼負荷は、火炎の失火防止という観点から20〜50%程度に設定される。
【0038】
また、燃焼時間の所定の上限値は、安定した火炎を形成するという観点から2〜15秒程度に設定される。
【0039】
この制御方法では、所定の燃焼負荷になったときに、燃焼時間を所定の上限値に下げ、流量制御を行なっている。しかし、他の制御方法として、所定の燃焼負荷になったときに、当該所定の燃焼負荷なったときのガスの流量を維持しつつ時間比例炉温制御に切り換えてもよい。この場合も前述と同様に従来より非常に小さい燃焼負荷まで炉温制御を行なうことができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、燃焼負荷を従来より大幅に下げることができ、燃焼負荷を5%以下まで確保することができる。しかも熱効率がよく、炉温のハンチングも生じないという利点を有する。したがって、連続冷間圧延機と連続焼鈍炉を連結した設備などのような生産性の異なる種々の鋼種を炉温のハンチングなく通板することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリジェネバーナの炉温制御方法を示す燃焼負荷の変化を示す説明図である。
【図2】図1の流量制御を行なうための構成の一例を示す概略説明図である。
【図3】図1の流量制御を行なうための構成の他の例を示す概略説明図である。
【図4】本発明の炉温制御方法が適用されるリジェネバーナの断面説明図である。
【図5】従来のガスの流量制御による炉温制御方法を示す燃焼負荷の変化を示す図である。
【図6】従来の時間比例制御による炉温制御方法を示す燃焼負荷の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 ラジアントチューブ
2、3 バーナ
4、5 ガス切替弁
9、10 三方弁

Claims (2)

  1. ラジアントチューブ式リジェネレイティブバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法であって、
    前記リジェネレイティブバーナの一対のバーナのそれぞれの燃焼時間を短くして時間比例炉温制御を行ない、
    所定の燃焼負荷になったときに、前記一対のバーナに供給されるガスの流量を所定の上限値まで下げ、前記所定の燃焼負荷よりも小さい燃焼負荷に対しては、前記所定の上限値を維持しつつ燃焼時間を短くする時間比例炉温制御を行なう際に、
    前記ガスの流量の所定の上限値が、20〜50%に設定され、
    前記燃焼時間を短くする時間比例炉温制御における最低の燃焼時間が、2〜15秒に設定されている
    ことを特徴とする炉温制御方法。
  2. ラジアントチューブ式リジェネレイティブバーナを備えた熱処理炉の炉温制御方法であって、
    前記リジェネレイティブバーナの一対のバーナのそれぞれの燃焼時間を短くして時間比例炉温制御を行ない、
    所定の燃焼負荷になったときに、当該所定の燃焼負荷になったときの燃焼時間を維持しつつ前記一対のバーナに供給されるガスの流量を下げる流量制御に切り換える炉温制御を行なう際に、
    前記所定の燃焼負荷になったときの燃焼時間が、2〜15秒に設定され、
    前記所定の燃焼負荷になったときの燃焼時間を維持しつつ前記一対のバーナに供給されるガスの流量を下げる流量制御における最低のガス流量が20〜50%に設定されている
    ことを特徴とする炉温制御方法。
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